(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014585
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】サクション基礎
(51)【国際特許分類】
E02D 27/52 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117528
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】東谷 修
(72)【発明者】
【氏名】中西 文雄
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA61
(57)【要約】
【課題】サクション基礎の撤去を容易にする。
【解決手段】サクション基礎100は、天井壁11と天井壁11から下方に延びる側周壁12とを有する基礎本体10と、側周壁12の内側において天井壁11よりも下方に位置する仕切板13と、仕切板13の傾きを変化可能に仕切板13を支持する吊り索14とを備えている。仕切板13は、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において地盤Gと接触し、充填材5が充填される充填空間Sの下部を区画する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁と前記天井壁から下方に延びる側周壁とを有する基礎本体と、
前記側周壁の内側において前記天井壁よりも下方に位置する仕切板と、
前記仕切板の傾きを変化可能に前記仕切板を支持する支持部とを備え、
前記仕切板は、前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において地盤と接触し、充填材が充填される充填空間の下部を区画するサクション基礎。
【請求項2】
請求項1に記載のサクション基礎において、
前記支持部は、前記基礎本体から前記仕切板を吊り下げる吊り索であるサクション基礎。
【請求項3】
請求項1に記載のサクション基礎において、
前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において、前記充填空間を複数の分割空間に区画する隔壁をさらに備え、
前記仕切板は、前記分割空間ごとに設けられているサクション基礎。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のサクション基礎において、
前記仕切板に作用する荷重を検出する荷重計をさらに備えるサクション基礎。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のサクション基礎において、
前記基礎本体には、前記サクション基礎の撤去時に前記基礎本体の内部に給水するための給水孔が形成され、
前記給水孔は、前記仕切板よりも下方に位置しているサクション基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、サクション基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中の地盤に設置されるサクション基礎が知られている。例えば、特許文献1には、頂版部とスカート部とを備え、スカート部を水底地盤に貫入させるサクション基礎が開示されている。このサクション基礎が地盤に貫入された状態において、サクション基礎の内部には、地盤と頂版部とスカート部とで区画された領域が形成され得る。この領域には、サクション基礎の地盤への貫入後にグラウト等の充填材が充填される。これにより、サクション基礎の安定性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のようなサクション基礎においては、充填材が地盤の砂又は泥と混ざり合う可能性がある。その場合、充填材と地盤とが一体化して、サクション基礎の撤去が困難になる虞がある。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サクション基礎の撤去を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたサクション基礎は、天井壁と前記天井壁から下方に延びる側周壁とを有する基礎本体と、前記側周壁の内側において前記天井壁よりも下方に位置する仕切板と、前記仕切板の傾きを変化可能に前記仕切板を支持する支持部とを備え、前記仕切板は、前記側周壁が水中の地盤に貫入された状態において地盤と接触し、充填材が充填される充填空間の下部を区画する。
【発明の効果】
【0007】
前記サクション基礎によれば、サクション基礎の撤去を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、地盤に設置されたサクション基礎の模式図である。
【
図2】
図2は、基礎本体を中心とする、サクション基礎の模式的な拡大図である。
【
図3】
図3は、サクション基礎を沈設する前の状態を示す説明図である。
【
図4】
図4は、基礎本体が地盤に貫入され、仕切板が地盤に到達した状態を示す説明図である。
【
図5】
図5は、基礎本体が地盤に貫入され、仕切板が地盤に倣って傾いた状態を示す説明図である。
【
図6】
図6は、充填材を充填完了後のサクション基礎の模式的な拡大図である。
【
図7】
図7は、撤去時のサクション基礎の模式的な拡大図である。
【
図8】
図8は、変形例1に係るサクション基礎の、基礎本体を中心とする模式図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係るサクション基礎の底面図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係るサクション基礎の、基礎本体を中心とする模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、地盤Gに設置されたサクション基礎100の模式図である。
図2は、基礎本体10を中心とする、サクション基礎100の模式的な拡大図である。
【0011】
サクション基礎100は、水上又は水中に構造体を設置するための基礎であり、水中の地盤Gに沈設される。
図1の例では、サクション基礎100は、風車60を洋上に設置するための基礎である。サクション基礎100は、天井壁11と天井壁11から下方に延びる側周壁12とを有する基礎本体10と、側周壁12の内側において天井壁11よりも下方に位置する仕切板13と、仕切板13の傾きを変化可能に仕切板13を支持する吊り索14とを備えている。天井壁11、側周壁12及び仕切板13は、鋼板で形成されている。
【0012】
基礎本体10は、天井が閉塞され且つ底が開放された容器状に形成されている。天井壁11は、略円盤状に形成されている。側周壁12は、軸心Xの方向に延びる略円筒状に形成され、天井壁11の周縁に接続されている。以下、「周方向」とは、特に断りが無い限り、側周壁12の周方向を意味する。この例では、側周壁12は軸心Xを中心とする略円筒状に形成されているので、「周方向」は、軸心Xを中心とする周方向を意味する。
【0013】
天井壁11には、支柱6が設けられている。支柱6は、天井壁11の中心に配置され、天井壁11から鉛直方向の上方に延びている。支柱6の上端は、基礎本体10が地盤Gに沈設された状態において、水面よりも上方に位置している。支柱6に、風車60が設置されている。
【0014】
基礎本体10は、側周壁12が地盤Gに貫入されることによって、地盤Gに設置、即ち、沈設される。地盤Gに設置されたサクション基礎100においては、側周壁12に摩擦力が作用する。これにより、サクション基礎100は、地盤Gに強固に固定されている。それに加えて、サクション基礎100に外力が作用した場合には、基礎本体10の内部に負圧が発生し、引き抜き抵抗が増加する。これにより、サクション基礎100の安定性が確保される。
【0015】
基礎本体10が地盤Gに設置された状態において、基礎本体10の内部には地盤Gを構成する土粒子が充填されている。仕切板13は、側周壁12が地盤Gに貫入された状態において地盤Gと接触している。この状態において、基礎本体10の内部は、土粒子で完全に満たされておらず、基礎本体10の内部には、充填材5が充填される充填空間Sが形成されている。充填空間Sは、基礎本体10(詳しくは、天井壁11と側周壁12)と仕切板13とによって形成される。すなわち、仕切板13は、充填空間Sの下部を区画する。
【0016】
仕切板13の平面形状は、側周壁12の内周面の断面形状と略同じである。具体的には、仕切板13は、略円盤状に形成されている。また、仕切板13の外径は、側周壁12の内径よりもわずかに小さい。仕切板13の外周縁と側周壁12の内周面との間には、隙間が形成されている。仕切板13は、周囲の側周壁12に固定されておらず、充填空間S内で軸心Xに対する傾きを変更するように移動することができる。
【0017】
吊り索14は、基礎本体10から仕切板13を吊り下げる。吊り索14の上端は、天井壁11に取り付けられている。吊り索14の下端は、仕切板13に取り付けられている。吊り索14は、可撓性を有し、自在に変形できる。例えば、吊り索14は、ロープ、チェーン又はワイヤ等で形成されている。吊り索14は、金属、樹脂又は繊維等の柔軟な材質で形成されている。吊り索14は、支持部の一例である。
【0018】
この例では、サクション基礎100は、3本の吊り索14を備えている。仕切板13は、3本の吊り索14によって基礎本体10(具体的には天井壁11)から吊り下げられている。仕切板13の荷重は、3本の吊り索14に支持されている。3本の吊り索14は、軸心Xを中心とする周方向へ等間隔で配置されている。尚、
図1等においては、2本の吊り索14のみが模式的に図示されている。
【0019】
仕切板13は、吊り索14に支持されていることによって、傾き(具体的には、軸心X又は天井壁11に対する傾き)を自在に変更することができる。例えば、仕切板13は、地盤Gへの基礎本体10の貫入前においては、天井壁11と略平行となっている。軸心Xの方向における仕切板13と側周壁12の下端との距離は、地盤Gに貫入される側周壁12の軸心Xの方向への長さよりも長い。地盤Gに貫入される側周壁12の軸心Xの方向への長さは、サクション基礎100に搭載される構造体に作用する設計荷重等に基づいて決められる。基礎本体10が地盤Gに貫入された状態において、仕切板13は、地盤Gと接触する。すなわち、吊り索14の長さは、基礎本体10の貫入状態において、仕切板13が地盤Gに接触する長さに設定されている。仕切板13は、地盤Gの表面に倣うように傾きを変更し、地盤Gの表面と略平行となる。
【0020】
さらに、サクション基礎100は、仕切板13に作用する荷重を検出する荷重計15をさらに備えている。例えば、荷重計15は、ロードセルである。この例では、荷重計15は、天井壁11の下面に取り付けられている。荷重計15には、吊り索14が連結されている。すなわち、吊り索14は、荷重計15を介して天井壁11に取り付けられている。荷重計15には、吊り索14を介して仕切板13の荷重が作用する。
【0021】
基礎本体10には、充填管21が設けられている。充填管21は、充填空間Sに充填材5を充填するための管である。充填管21は、側周壁12において充填空間Sに接続されている。側周壁12には、
図2に示すように、充填空間Sと連通する連通孔22が形成されている。充填管21は、連通孔22に接続されている。つまり、充填管21は、連通孔22を介して充填空間Sに連通している。充填管21の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ23が設けられている(
図1参照)。バルブ23は、充填管21の開通及び遮断を切り替える。
【0022】
基礎本体10には、第1排水管41が設けられている。第1排水管41は、基礎本体10の内部の水を強制的に排出するための管である。第1排水管41は、天井壁11において充填空間Sに接続されている。天井壁11には、
図2に示すように、排水孔42が貫通形成されている。排水孔42には、第1排水管41が接続されている。すなわち、第1排水管41は、排水孔42を介して充填空間Sに連通している。第1排水管41の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ43が設けられている(
図1参照)。バルブ43は、第1排水管41の開通及び遮断を切り替える。
【0023】
第1排水管41には、図示省略の排水ポンプが接続される。排水ポンプの作動により、基礎本体10の内部の水が第1排水管41を介して基礎本体10の外部に排出される。第1排水管41は、地盤Gへの基礎本体10の貫入時に使用される。第1排水管41を介して排水を行うことによって、基礎本体10の地盤Gへの貫入が促進される。
【0024】
基礎本体10には、第2排水管44が設けられている。第2排水管44は、基礎本体10の内部の水を自然に排出するための管である。第2排水管44は、天井壁11において充填空間Sに接続されている。天井壁11には、
図2に示すように、排水孔45が貫通形成されている。排水孔45には、第2排水管44が接続されている。すなわち、第2排水管44は、排水孔45を介して充填空間Sに連通している。第2排水管44の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ46が設けられている(
図1参照)。バルブ46は、第2排水管44の開通及び遮断を切り替える。
【0025】
第2排水管44には、排水ポンプが接続されていない。第2排水管44は、基礎本体10の内部の水圧等によって基礎本体10の内部から押し出される水を成り行きで排出する。第2排水管44は、充填空間Sへの充填材5の充填時に使用される。第2排水管44を介して排水を行うことによって、充填空間S内の水と充填材5との置き換わりが促進される。
【0026】
基礎本体10には、給水管31が設けられている。給水管31は、サクション基礎100を撤去する際に基礎本体10の内部へ給水するための管である。側周壁12には、
図2に示すように、給水孔32が貫通形成されている。給水孔32は、仕切板13よりも下方に位置している。給水孔32には、給水管31が接続されている。すなわち、給水管31は、給水孔32を介して基礎本体10の内部空間のうち仕切板13よりも下方の空間に連通している。給水管31の上部(具体的には、水面よりも上方の部分)には、バルブ33が設けられている(
図1参照)。バルブ33は、給水管31の開通及び遮断を切り替える。
【0027】
給水管31には、図示省略の給水ポンプが接続されている。給水ポンプの作動により、基礎本体10の内部のうち仕切板13よりも下方の空間に水が供給される。給水管31は、サクション基礎100の撤去時に使用される。給水管31を介して給水を行うことによって、基礎本体10の地盤Gからの浮上が促進される。
【0028】
風車60は、サクション基礎100に設置される構造体の一例である。風車60は、タワー61と、タワー61に設けられたロータ62とを有している。タワー61は、基礎本体10の支柱6に設置されている。ロータ62は、タワー61の先端部に回転自在に設けられている。
【0029】
続いて、サクション基礎100の設置方法について説明する。
図3は、サクション基礎100を沈設する前の状態を示す説明図である。
図4は、基礎本体10が地盤Gに貫入され、仕切板13が地盤Gに到達した状態を示す説明図である。
図5は、基礎本体10が地盤Gに貫入され、仕切板13が地盤Gに倣って傾いた状態を示す説明図である。
図6は、充填材5を充填完了後のサクション基礎100の模式的な拡大図である。
【0030】
まず、
図3に示すように、風車60が設置されていない状態の基礎本体10が設置現場まで曳航される。その後、基礎本体10の地盤Gへの沈設が開始される。詳しくは、基礎本体10は、自重又はバラスト荷重によって海底に沈んでいく。側周壁12の下端部は、基礎本体10の自重又はバラスト荷重によって地盤Gに或る程度貫入する。仕切板13は、まだ地盤Gに接触していない。3本の吊り索14が、浮力の分だけ減少した、仕切板13の荷重を支えている。
【0031】
作業者が排水ポンプを作動させることによって、基礎本体10の内側の水が第1排水管41を介して排出される。このとき、バルブ23、バルブ33及びバルブ46が閉じ、バルブ43が開いている。側周壁12の内周面と仕切板13の外周縁との間には隙間が形成されている。さらに、仕切板13は、多孔質で形成されている。そのため、仕切板13よりも下方の水は、側周壁12と仕切板13との隙間、及び、仕切板13の細孔を通過して、仕切板13よりも上方へ、即ち、充填空間Sへ進入することができ、第1排水管41を介して排出される。
【0032】
これにより、基礎本体10にサクション荷重が作用し、側周壁12は、地盤Gにさらに貫入していく。やがて、
図4に示すように、仕切板13が地盤Gに接触する。仕切板13が地盤Gに接触したか否かは、荷重計15の検出結果に基づいて判断できる。荷重計15による検出荷重が減少することによって、仕切板13が地盤Gに接触したと判定することができる。
【0033】
このとき、仕切板13が全体的に地盤Gと接触するまで、地盤Gへの側周壁12の貫入が継続される。
【0034】
例えば、地盤Gの表面が水平に対して傾斜している場合、
図4に示すように、仕切板13の一部だけが地盤Gに接触する。仕切板13の荷重の一部を地盤Gが支える。仕切板13のうち地盤Gに接触した部分に近い吊り索14の張力が弱まるため、対応する荷重計15の検出荷重は小さくなる。一方、仕切板13のうち地盤Gに接触した部分から離れた吊り索14の張力はそれほど弱まらないため、対応する荷重計15の検出荷重はそれほど小さくならない。
【0035】
この状態から側周壁12が地盤Gへさらに貫入すると、吊り索14が撓んで、仕切板13が地盤Gの表面に倣って傾いていく。やがて、
図5に示すように、仕切板13は、地盤Gの表面と略平行となり、全体的に地盤Gに接触する。
【0036】
以下、説明の便宜上、仕切板13が地盤Gの表面に倣うように地盤Gと接触すること、即ち、仕切板13が全体的に地盤Gと接触することを「全体接触」と称する。全体接触においては、仕切板13が地盤Gの表面と略平行になるように地盤Gに接触している。ただし、地盤Gの表面は、凹凸又はうねりがあり、平坦とは限らないので、仕切板13が部分的に地盤Gの表面と接触する場合、又は、仕切板13が地盤Gの表面と完全な平行とならない場合も多い。そのような場合も「全体接触」に含まれる。
【0037】
仕切板13が地盤Gに全体接触した状態においては、仕切板13の荷重のほとんどを地盤Gが支える。荷重計15には、対応する吊り索14の荷重だけが作用する。つまり、仕切板13が地盤Gに全体接触したか否かは、荷重計15の検出荷重に基づいて判断することができる。例えば、全ての荷重計15の検出荷重が所定の閾値以下となることによって、全体接触を判定することができる。所定の閾値は、全ての荷重計15で共通であっても、荷重計15ごとに独立に設定されていてもよい。例えば、所定の閾値は、仕切板13の荷重が地盤Gによって支えられていると判断できる程度に小さい値であり得る。例えば、所定の閾値は、仕切板13が地盤Gに接触する前の荷重を基準に所定の割合まで減少した値であり得る。
【0038】
地盤Gへの基礎本体10の貫入は、仕切板13が地盤Gに全体接触するまで継続される。仕切板13が地盤Gに全体接触すると、排水ポンプによる排水が停止され、地盤Gへの基礎本体10の貫入が完了する。
【0039】
基礎本体10の貫入が完了した状態では、基礎本体10の内部のうち仕切板13よりも下方は地盤Gを構成する土粒子で満たされる。基礎本体10の内部のうち仕切板13の上方には、天井壁11、側周壁12及び仕切板13によって区画された充填空間Sが形成されている。貫入の完了時においては、充填空間Sは、水で満たされている。
【0040】
この状態から、充填空間Sに充填材5が充填される。まず、作業者によってバルブ23及びバルブ46が開かれる。バルブ33及びバルブ43は閉じられている。それから、充填管21を介して充填材5が充填空間Sへ充填されていく。連通孔22から充填空間Sへ流入した充填材5は、充填空間S内に拡がっていく。充填空間Sの水は、第2排水管44を介して充填空間Sの外部へ排出される。充填材5の比重は充填空間Sの水(この例では、海水)よりも大きいので、充填空間Sでは、下部に充填材5が沈殿し、上部に水が滞留する。第2排水管44が接続される排水孔45は、天井壁11に形成されている。そのため、充填空間Sの水は排水孔45から円滑に排出されていく。こうして、充填空間Sにおいて水と充填材5とが円滑に置き換わっていく。
【0041】
ここで、充填空間Sの下部は仕切板13で区画されている。そのため、充填材5は、地盤Gとの接触が抑制される。充填材5の一部は、側周壁12と仕切板13との隙間から地盤Gに接触するものの、大半の充填材5は、仕切板13上に堆積していく。これにより、充填材5が地盤Gの砂又は泥と混ざり合うことが抑制される。さらに、仕切板13上に充填材5が堆積することによって、仕切板13が地盤Gを押し固め、仕切板13と地盤Gとの密着度が向上する。
【0042】
充填空間Sが充填材5で満たされた後も充填材5の充填が継続されると、余剰の充填材5は第2排水管44を介して充填空間Sから排出される。そのため、作業者は、第2排水管44を介して充填材5が漏れ出てくることをもって、充填空間Sが充填材5で満たされたことを知ることができる。
【0043】
充填空間Sへの充填材5の充填が完了すると、充填管21を介した充填材5の充填を停止する。その後、バルブ23及びバルブ46が閉じられる。
【0044】
充填材5が硬化すると、基礎本体10の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。これにより、サクション基礎100の安定性が向上する。
【0045】
次に、基礎本体10に風車60が設置される。詳しくは、支柱6に風車60が設置される。これにより、サクション基礎100は、
図1に示すように設置され、サクション基礎100の設置が完了する。
【0046】
サクション基礎100には、供用期間が設定されている。供用期間の経過後には、サクション基礎100は撤去される。
図7は、撤去時のサクション基礎100の模式的な拡大図である。
【0047】
サクション基礎100が撤去される際には、基礎本体10の内部へ給水が行われる。詳しくは、まず、風車60が基礎本体10から取り外される。その後、作業者がバルブ33を開き、給水管31の給水ポンプを作動させることによって、給水管31を介して基礎本体10の内部のうち仕切板13よりも下方に水が供給される。給水によって仕切板13よりも下方の地盤Gが緩むと共に、給水の圧力によって基礎本体10に浮上する方向への力が作用する。これにより、
図7に示すように、地盤Gからの基礎本体10の浮上が促進される。サクション基礎100が無振動・無騒音で撤去され得る。
【0048】
充填空間Sの下部は仕切板13によって区画されているので、充填空間Sの下部の充填材5のほとんどは、仕切板13と接触し、地盤Gとは接触していない。仕切板13と地盤Gとは単に接触しているだけなので、仕切板13は、地盤Gから容易に離脱することができる。充填材5のほとんどは地盤Gと一体化していないので、充填材5が基礎本体10の浮上を阻害することもない。
【0049】
このようなサクション基礎100によれば、基礎本体10の内部の充填空間Sの下部が仕切板13により区画されているので、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことが防止される。充填材5と地盤Gとの一体化が防止されるので、サクション基礎100の撤去が容易となる。
【0050】
また、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことが防止されるので、固結した充填材5の強度を向上させることもできる。
【0051】
仕切板13は基礎本体10に対して傾きが変化可能に支持されているので、基礎本体10を地盤Gへ貫入させていくときに自然と仕切板13が地盤Gと全体的に接触する状態になる。つまり、充填空間Sの下部を区画する仕切板13を地盤Gの表面に倣うように接触させることができる。これにより、仕切板13と地盤Gとの隙間を低減することができ、ひいては、充填材5と地盤Gとの間に介在する水を低減することができる。その結果、充填材5の荷重を仕切板13を介して地盤Gに適切に作用させ、サクション基礎100の安定性を向上させることができる。
【0052】
さらに、傾きの変化可能な仕切板13の支持を吊り索14によって実現しているので、仕切板13の傾きを容易且つ自在に変化できる。つまり、吊り索14は、可撓性を有し、自在に変形できる。そのため、仕切板13の傾きも自在に変化する。結果として、地盤Gの表面形状に柔軟に対応させて、仕切板13を傾かせることができる。
【0053】
それに加えて、荷重計15を設けることによって、地盤Gへの仕切板13の接触、さらには全体接触を容易に判定することができる。仕切板13は基礎本体10の内部に配置されているため、地盤Gへの基礎本体10の貫入時には仕切板13を視認することが難しい。例えば、基礎本体10の貫入量等に基づいて、地盤Gへの仕切板13の接触を予測することはできる。それに対し、荷重計15を設けることによって、荷重計15の検出結果に基づいて地盤Gへの仕切板13の接触を精度よく判定することができる。さらには、荷重計15の検出結果に基づいて、仕切板13の荷重が地盤Gによってどの程度支持されているかを判定することができる。それにより、仕切板13が地盤Gによって部分的に支持されているのか、完全に支持されているのか等、地盤Gによる仕切板13の支持状況を判定することができる。
【0054】
さらに、荷重計15を複数設けることによって、仕切板13のどの部分が地盤Gにどの程度支持されているかを判定することができる。つまり、複数の荷重計15の検出結果に基づいて、地盤Gに対する仕切板13の傾きを判定することができる。
【0055】
また、荷重計15は、基礎本体10の貫入量の管理にも有益である。基礎本体10に対する仕切板13の配置を適切に設定することによって、基礎本体10の貫入量が所定の値に達したか否かを荷重計15の検出結果に基づいて判定することができる。
【0056】
このような基礎本体10において給水孔32を仕切板13よりも下方に設けることによって、サクション基礎100の撤去時の仕切板13及び充填材5の浮上、ひいては、基礎本体10の浮上を促進することができる。つまり、サクション基礎100の撤去を容易にすることができる。
【0057】
〈変形例1〉
変形例1に係るサクション基礎200について説明する。
図8は、変形例1に係るサクション基礎200の、基礎本体を中心とする模式図である。
図9は、変形例1に係るサクション基礎200の底面図である。
図8は、地盤Gへの貫入が完了し、充填材5を充填する前の基礎本体210を示している。
図9においては、第1排水管41等の管類の図示が省略されている。
【0058】
サクション基礎200は、充填空間Sが複数の空間に仕切られている点で、サクション基礎100と異なる。サクション基礎200の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0059】
サクション基礎200は、天井壁11と天井壁11から下方に延びる側周壁12とを有する基礎本体210と、側周壁12の内側において天井壁11よりも下方に位置する仕切板213と、仕切板213の傾きを変化可能に仕切板213を支持する吊り索14と、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において充填空間Sを複数の空間に区画する隔壁216とを備えている。
【0060】
隔壁216は、天井壁11に接続されている。隔壁216は、天井壁11から側周壁12と同じ方向、即ち、軸心Xの方向へ延びている。隔壁216は、側周壁12にも接続されている。隔壁216の軸心Xの方向への寸法は、側周壁12よりも短い。つまり、隔壁216の下端は、側周壁12の下端よりも上方に位置している。ただし、隔壁216は、基礎本体210が地盤Gに貫入された場合に隔壁216も地盤Gに貫入されるだけの長さを有している。
【0061】
基礎本体210の内部は、隔壁216によって、下方に開放する複数の空間に区画されている。詳しくは、
図9に示すように、隔壁216は、格子状に形成されている。基礎本体210の内部は、天井壁11、側周壁12及び/又は隔壁216によって9個の空間に分割されている。分割された各空間に仕切板213が設けられ、分割空間s1が形成される。仕切板213のそれぞれは、分割空間s1の下部を区画している。複数の仕切板213は、全体として、充填空間Sの下部を区画している。
【0062】
仕切板213は、多孔質の板で形成されている。各仕切板213は、対応する空間の断面形状と略同じ形状をしている。ただし、各仕切板213は、その周囲の側周壁12又は隔壁216との間に隙間を有している。つまり、仕切板213は、周囲の側周壁12又は隔壁216に固定されておらず、移動することができる。
【0063】
各仕切板213は、吊り索14によって支持されている。吊り索14は、天井壁11に連結されている。各仕切板213は、複数の(例えば、3本の)吊り索14によって支持されている。尚、
図8では、各仕切板213につき2本の吊り索14が図示されている。各仕切板213は、吊り索14に支持されていることによって、傾き(具体的には、軸心X又は天井壁11に対する傾き)を自在に変更することができる。複数の仕切板213は、互いに独立に吊り索14によって支持されている。そのため、複数の仕切板213は、傾きを互いに独立に変更することができる。
【0064】
基礎本体210には、1本の第1排水管41が設けられている。隔壁216は、隣接する分割空間s1を連通させる連通孔が形成されている。つまり、複数の分割空間s1は、互いに連通している。そのため、基礎本体210の貫入時には1本の第1排水管41によって複数の分割空間s1の水を排出することができる。同様に、基礎本体210には、1本の第2排水管44が設けられている。充填材5の充填時には1本の第2排水管44によって複数の分割空間s1の水を排出することができる。
【0065】
ただし、基礎本体210には、複数の分割空間s1に対応する複数の充填管21が設けられている。各分割空間s1に1本の充填管21が接続されている。つまり、複数の分割空間s1には、対応する充填管21を介して互いに独立に充填材5が充填される。尚、
図8においては、充填管21が1本のみ図示されている。
【0066】
このように構成されたサクション基礎200は、サクション基礎100と同様に、基礎本体210が設置現場まで曳航され、自重又はバラスト荷重によって基礎本体210の沈設が開始される。その後、排水ポンプが作動され、基礎本体210の内側の水が第1排水管41を介して排出される。各仕切板213の外周縁と側周壁12又は隔壁216との間には隙間が形成されている。さらに、仕切板213は、多孔質で形成されている。そのため、仕切板213よりも下方の水は、仕切板213と側周壁12又は隔壁216との隙間、及び、仕切板213の細孔を通過して、仕切板213よりも上方へ、即ち、分割空間s1へ進入することができる。複数の分割空間s1は連通しているので、基礎本体210内の水は、最終的に、1つの分割空間s1に接続された第1排水管41から排出される。
【0067】
これにより、基礎本体210にサクション荷重が作用し、側周壁12は、地盤Gにさらに貫入していく。基礎本体210では、側周壁12に加えて、隔壁216も地盤Gに貫入されていく。やがて、仕切板213が地盤Gに接触する。仕切板213は、傾きを変化可能に吊り索14によって支持されているので、地盤Gに全体接触する。各仕切板213の動作は、サクション基礎100の仕切板13と同様である。それに加えて、複数の仕切板213は互いに独立に吊り索14に支持されているので、それぞれの仕切板213が対応する地盤Gに全体接触する。複数の仕切板213は、全体としてより一層、地盤Gの表面形状に倣った形状となる。
【0068】
各仕切板213が地盤Gに全体接触したか否かは、荷重計15の検出荷重に基づいて判断される。全ての仕切板213が地盤Gに全体接触するまで地盤Gへの側周壁12の貫入が継続される。全ての仕切板213が地盤Gに全体接触すると、排水ポンプによる排水が停止され、地盤Gへの基礎本体210の貫入が完了する。
【0069】
基礎本体210の貫入が完了した状態から、充填空間S、即ち、分割空間s1に充填材5が充填される。まず、作業者によってバルブ23及びバルブ46が開かれ、バルブ43が閉じられる。基礎本体210は、複数の分割空間s1に対応する複数の充填管21を有している。そのため、各分割空間s1には、対応する充填管21を介して充填材5が充填される。充填材5は流動性が低いので、分割空間s1ごとに充填管21を設けることによって、充填空間Sの全体として充填材5を満遍なく充填することができる。一方、水の流動性は充填材5に比べて高いので、一の分割空間s1に接続された1本の第2排水管44から排出される。
【0070】
各分割空間s1の下部は仕切板213で区画されている。そのため、充填材5は、地盤Gとの接触が抑制される。充填材5の一部は、仕切板213と側周壁12又は隔壁216との隙間から地盤Gに接触するものの、大半の充填材5は、仕切板213上に堆積していく。これにより、充填材5が地盤Gの砂又は泥と混ざり合うことが抑制される。
【0071】
充填空間Sへの充填材5の充填が完了すると、充填管21を介した充填材5の充填を停止する。その後、バルブ23及びバルブ46が閉じられる。
【0072】
充填材5が硬化すると、基礎本体210の荷重が充填材5を介して地盤Gへ適切に作用するようになる。これにより、サクション基礎200の安定性が向上する。
【0073】
最終的に、基礎本体210に風車60が設置され、サクション基礎200の設置が完了する。
【0074】
サクション基礎200を撤去する際には、基礎本体210の内部へ給水が行われる。詳しくは、まず、風車60が基礎本体210から取り外される。その後、作業者が給水管31の給水ポンプを作動させることによって、給水管31を介して基礎本体210の内部のうち仕切板213よりも下方に水が供給される。給水によって仕切板213よりも下方の地盤Gが緩むと共に、給水の圧力によって基礎本体210に地盤Gから浮上する方向への力が作用する。これにより、地盤Gからの基礎本体210の浮上が促進される。サクション基礎200が無振動・無騒音で撤去され得る。
【0075】
充填空間Sの下部は仕切板213によって区画されているので、充填空間Sの下部の充填材5のほとんどは、仕切板213と接触し、地盤Gとは接触していない。仕切板213と地盤Gとは単に接触しているだけなので、仕切板213は、地盤Gから容易に離脱することができる。充填材5のほとんどは地盤Gと一体化していないので、充填材5が基礎本体210の浮上を阻害することもない。
【0076】
このように構成されたサクション基礎200においては、基礎本体210の内部の充填空間Sの下部が仕切板213により区画されているので、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことが防止される。充填材5と地盤Gとの一体化が防止されるので、サクション基礎200の撤去が容易となる。
【0077】
また、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことが防止されるので、固結した充填材5の強度を向上させることもできる。
【0078】
さらに、隔壁216によって区画された、充填空間Sの分割空間s1のそれぞれに仕切板213が設けられている。これにより、分割空間s1のそれぞれにおいて仕切板213の傾きを地盤Gに対応させることができる。結果として、複数の仕切板213を全体としてより柔軟に地盤Gの表面形状に倣った形状とすることができる。
【0079】
〈変形例2〉
変形例2に係るサクション基礎300について説明する。
図10は、変形例2に係るサクション基礎300の、基礎本体を中心とする模式図である。
【0080】
サクション基礎300は、仕切板13が側周壁12から吊り下げられている点で、サクション基礎100と異なる。サクション基礎300の構成のうち、サクション基礎100と同様の構成については、サクション基礎100と同様の符号を付して説明を省略する。
【0081】
サクション基礎300は、天井壁11と天井壁11から下方に延びる側周壁12とを有する基礎本体310と、側周壁12の内側において天井壁11よりも下方に位置する仕切板13と、仕切板13の傾きを変化可能に仕切板13を支持する吊り索14とを備えている。
【0082】
基礎本体310は、側周壁12から基礎本体310の内側へ延びる複数の梁317をさらに有している。複数の梁317は、軸心Xを中心とする周方向に間隔を空けて配列されている。例えば、梁317は、側周壁12の内周面から軸心Xを中心とする半径方向へ延びている。
【0083】
吊り索14は、梁317に連結されている。つまり、仕切板13は、梁317及び吊り索14を介して側周壁12から吊り下げられている。
【0084】
サクション基礎300の設置方法等は、サクション基礎100と同様である。サクション基礎300においても、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことを仕切板13によって防止することができる。
【0085】
つまり、仕切板13は、天井壁11からではなく、側周壁12から吊り下げられる構成であってもよい。尚、吊り索14が連結される部材は、梁317に限定されない。例えば、軸心Xを中心とする周方向へ側周壁12の内周面に沿って延びる円環状の壁が側周壁12に設けられていてもよい。吊り索14は、該壁に連結されていてもよい。
【0086】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0087】
基礎本体10,210,310の形状は、略円筒状に限られるものではない。基礎本体10,210,310は、天井壁及び側周壁を有し且つ底が開放された形状であれば、任意の形状に形成することができる。例えば、基礎本体10,210,310は、断面が略四角形や略五角形等の角筒状に形成されていてもよい。また、基礎本体10は、天井壁が湾曲したドーム状に形成されていてもよい。
【0088】
基礎本体10,210,310の材質は、鋼板に限定されず、任意の材質であってもよく、例えばコンクリートであってもよい。また、仕切板12,213は、鋼板に限定されず、任意の材質であってもよく、例えばコンクリートであってもよい。
【0089】
また、地盤Gに貫入された基礎本体10,210,310の内部空間の全てが充填空間Sでなく、内部空間の一部が充填空間Sであってもよい。例えば、サクション基礎100において、天井壁11と仕切板13との間に、基礎本体10の内部空間を上下に分割する隔壁を設け、隔壁よりも下の空間を充填空間Sとしてもよい。つまり、隔壁、側周壁12及び仕切板13によって充填空間Sが区画され、隔壁よりも上方の空間には充填材5が充填されなくてもよい。例えば、サクション基礎200において、分割空間s1の全てに充填材5が充填されなくてもよい。例えば、9つの分割空間s1のうち軸心Xが通過する中央の分割空間s1には充填材5が充填されなくてもよい。このように基礎本体10,210,310の内部空間の一部だけが充填空間Sとして区画されていてもよく、その場合には充填空間Sとして機能する分割空間s1に仕切板が設けられていればよい。
【0090】
さらに、サクション基礎100に設置される構造体は、風車60に限られるものではない。構造体は、風況観測塔又はケーソン等であってもよい。基礎本体10,210,310には、支柱6が設けられていなくてもよい。
【0091】
仕切板13,213は、分割されていてもよい。すなわち、サクション基礎100,200,300において、1つの空間に各1つの仕切板13,213が配置されている。しかし、1つの空間に配置された仕切板13,213が分割されていてもよい。例えば、サクション基礎100,300の仕切板13が分割されていてもよい。サクション基礎200の分割空間s1に配置されたそれぞれの仕切板213が分割されていてもよい。これにより、仕切板13,213の全体的な形状をより柔軟に変形させることができ、地盤Gの表面形状により一層倣うことができる。
【0092】
仕切板13,213の支持部は、吊り索14に限定されない。仕切板13,213の傾きを変化可能に仕切板13,213を支持する限りは、支持部として任意の構成を採用することができる。例えば、支持部は、コイルバネ等の弾性部材であってもよい。仕切板13,213は、コイルバネ等によって天井壁11又は側周壁12から吊られていてもよい。あるいは、支持部は、ユニバーサルジョイント等の支持機構であってもよい。仕切板13,213は、ユニバーサルジョイント等に支持されることによって、基礎本体10,210,310に対して傾きを変化させることができる。
【0093】
仕切板13が地盤Gに全体接触したか否かを荷重計15の検出荷重に基づいて判定する方法は、前述の方法に限定されない。例えば、基礎本体10,210,310の貫入量に対する荷重計15の検出荷重の変化率が全ての荷重計15に関して所定の閾値以下となることによって、全体接触を判定してもよい。このように、様々な方法によって、荷重計15の検出荷重に基づいて全体接触を判定することができる。
【0094】
充填管21、給水管31第1排水管41及び第2排水管44等の個数は、前述の構成の個数に限定されない。例えば、1つの充填空間S又は1つの分割空間s1に、複数の充填管21が接続されていてもよい。また、分割空間s1のそれぞれに第1排水管41又は第2排水管44が接続されていてもよい。給水管31が複数設けられていてもよい。
【0095】
さらに、サクション基礎100の構成及び変形例1、2の構成は、適宜組み合わせて採用することができる。
【0096】
以上のように、本開示の技術をまとめると以下の通りである。
【0097】
[1]サクション基礎100,200,300は、天井壁11と前記天井壁11から下方に延びる側周壁12とを有する基礎本体10,210,310と、前記側周壁12の内側において前記天井壁11よりも下方に位置する仕切板13、213と、前記仕切板13,213の傾きを変化可能に前記仕切板13,213を支持する吊り索14(支持部)とを備え、前記仕切板13,213は、前記側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において地盤Gと接触し、充填材5が充填される充填空間Sの下部を区画する。
【0098】
この構成によれば、充填空間Sの下部が仕切板13,213により区画されているので、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことが防止される。充填材5と地盤Gとの一体化が防止されるので、サクション基礎100,200,300の撤去が容易となる。
【0099】
[2] [1]に記載のサクション基礎100,200,300において、前記支持部は、前記基礎本体10,210,310から前記仕切板13,213を吊り下げる吊り索14である。
【0100】
この構成によれば、吊り索14は、可撓性を有し、自在に変形できるので、仕切板13,213の傾きを自在に変更できる。そのため、仕切板13,213の傾きを地盤Gの表面形状に柔軟に対応させることができる。
【0101】
[3] [1]又は[2]に記載のサクション基礎200において、前記側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において、前記充填空間Sを複数の空間に区画する隔壁216をさらに備え、前記仕切板213は、前記隔壁216によって区画された分割空間s1ごとに設けられている。
【0102】
この構成によれば、充填空間Sは単一の空間ではなく、複数の分割空間s1に分割されている。そして、分割空間s1ごとに仕切板213が設けられている。そのため、各分割空間s1において、充填材5と地盤Gの砂又は泥等とが混ざり合うことが防止される。さらに、結果として、充填空間Sの下部は、分割された複数の仕切板213によって区画されることになる。それにより、複数の仕切板213のそれぞれが地盤Gの表面形状に対応して変動するので、複数の仕切板213の全体として、より柔軟に地盤Gの表面形状に倣うことができる。
【0103】
[4] [1]乃至[3]の何れか1つに記載のサクション基礎100,200,300において、前記仕切板13,213に作用する荷重を検出する荷重計15をさらに備える。
【0104】
この構成によれば、仕切板13,213が直接視認できなくても、荷重計15の検出結果に基づいて仕切板13,213が地盤Gに接触したか否かを判定することができる。その結果、基礎本体10,210,310を地盤Gに貫入させる際に、仕切板13,213を地盤Gに確実に接触させることができる。
【0105】
[5] [1]乃至[4]の何れか1つに記載のサクション基礎100,200,300において、前記基礎本体10,210,310には、前記サクション基礎100,200,300の撤去時に前記基礎本体10,210,310の内部に給水するための給水孔32が形成され、前記給水孔32は、前記仕切板13,213よりも下方に位置している。
【0106】
この構成によれば、サクション基礎100,200,300の撤去時に、仕切板13,213よりも下方に給水することができ、水圧によって仕切板13,213を押し上げることができる。結果として、基礎本体10、210,310の地盤Gからの浮上を促進することができる。
【0107】
[6]天井壁11と前記天井壁11から下方に延びる側周壁12とを有する基礎本体10と、前記側周壁12の内側において前記天井壁11よりも下方に位置し、前記側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において地盤Gと接触する仕切板13(接触部材)と、前記仕切板13を支持する吊り索14(支持部)と、前記仕切板13に作用する荷重を検出する荷重計15をさらに備える。
【0108】
つまり、仕切板13は、接触部材として機能し、吊り索14は、支持部として機能する。基礎本体10の内部に充填材5は充填されなくてもよい。充填空間Sは必須ではない。仕切板13は、側周壁12が水中の地盤Gに貫入された状態において地盤Gと接触する機能を有してればよく、充填空間Sの下部を区画する必要はない。すなわち、接触部材の形状は、板状に限定されない。
【0109】
この構成によれば、地盤Gへの側周壁12の貫入時に、荷重計15の検出荷重に基づいて仕切板13が地盤Gに接触したか否かを判定することができる。つまり、貫入前において仕切板13の位置、即ち、高さを適切に設定することによって、荷重計15の検出荷重に基づいて側周壁12の貫入量を適切に判定することができる。
【符号の説明】
【0110】
100,200,300 サクション基礎
10,210,310 基礎本体
11 天井壁
12 側周壁
13,213 仕切板
14 吊り索
15 荷重計
216 隔壁
32 給水孔
S 充填空間
s1 分割空間(空間)
G 地盤