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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145850
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20241004BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241004BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241004BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20241004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 31/131 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/41
A61Q19/10
A61Q19/00
A61K8/24
A61P43/00 121
A61P19/00
A61K31/131
A61K31/195
A61K8/44
A61K9/08
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058387
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】澤田 桃
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD26Q
4C076DD26T
4C076DD26Z
4C076FF36
4C076FF52
4C076FF61
4C076FF63
4C083AB281
4C083AB282
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC271
4C083AC272
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC621
4C083AC622
4C083AD202
4C083AD212
4C083CC03
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE12
4C083FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206FA01
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA09
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む組成物の変質を抑制する技術を提供する。
【解決手段】ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンと、塩基性リン酸緩衝剤と、を含む、水性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンと、塩基性リン酸緩衝剤と、を含む、水性組成物。
【請求項2】
前記塩基性リン酸緩衝剤が、リン酸一水素塩を含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記塩基性リン酸緩衝剤が、リン酸一水素ナトリウムである、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記水性組成物のpHが7以上14以下である、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項5】
トラネキサム酸をさらに含む、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項6】
洗浄剤またはその原料である、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項7】
角質除去剤またはその原料である、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項8】
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物の臭い抑制剤であって、塩基性リン酸緩衝剤を有効成分として含む、臭い抑制剤。
【請求項9】
アミン臭抑制剤である、請求項8に記載の臭い抑制剤。
【請求項10】
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物のpH変化抑制剤であって、塩基性リン酸緩衝剤を有効成分として含む、pH変化抑制剤。
【請求項11】
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物に、塩基性リン酸緩衝剤を添加することを含む、臭いの抑制方法。
【請求項12】
前記臭いがアミン臭である、請求項11に記載の臭いの抑制方法。
【請求項13】
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物に、塩基性リン酸緩衝剤を添加することを含む、pH変化の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(Diisopropylamine dichloroacetate:DADA)は、特許文献1に記載のように、真皮マトリックス成分安定作用を有する化合物として知られている(請求項3等)。
【0003】
また、DADAを化粧料に配合する技術として、特許文献2および3に記載のものがある。
特許文献2には、クロラッパタケの子実体、クロラッパタケの菌糸体培養物、クロラッパタケの子実体抽出物又はこれらの混合物を含有する化粧料について記載されており(請求項1)、ジイソプロピルアミンジクロロ酢酸をローションに配合しうることが記載されている(段落0030:処方例4~6)。
【0004】
また、特許文献3には、カンゾウ、ソウハクヒ、スギナ、アロエ、キンギンカ、オウバク、ガイヨウ及びゲンチアナからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するコラーゲン合成促進剤について記載されており(請求項1)、ジイソプロピルアミンジクロロ酢酸をローションに配合しうることが記載されている(段落0052~0054:処方例4~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-63563号公報
【特許文献2】特開2005-89389号公報
【特許文献3】特開2005-120108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者がDADAを組成物中に配合することを検討したところ、DADAが配合された水性組成物は変質しやすいことが新たに見出された。
【0007】
そこで、本発明においては、DADAを含む組成物の変質を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の組成物、抑制剤および方法が提供される。
[1] ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンと、塩基性リン酸緩衝剤と、を含む、水性組成物。
[2] 前記塩基性リン酸緩衝剤が、リン酸一水素塩を含む、[1]に記載の水性組成物。
[3] 前記塩基性リン酸緩衝剤が、リン酸一水素ナトリウムである、[1]または[2]に記載の水性組成物。
[4] 前記水性組成物のpHが7以上14以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の水性組成物。
[5] トラネキサム酸をさらに含む、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の水性組成物。
[6] 洗浄剤またはその原料である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の水性組成物。
[7] 角質除去剤またはその原料である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の水性組成物。
[8] ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物の臭い抑制剤であって、塩基性リン酸緩衝剤を有効成分として含む、臭い抑制剤。
[9] アミン臭抑制剤である、[8]に記載の臭い抑制剤。
[10] ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物のpH変化抑制剤であって、塩基性リン酸緩衝剤を有効成分として含む、pH変化抑制剤。
[11] ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物に、塩基性リン酸緩衝剤を添加することを含む、臭いの抑制方法。
[12] 前記臭いがアミン臭である、[11]に記載の臭いの抑制方法。
[13] ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含む水性組成物に、塩基性リン酸緩衝剤を添加することを含む、pH変化の抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、DADAを含む組成物の変質を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは二種以上組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0011】
(水性組成物)
本実施形態において、水性組成物は、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(DADA)と、塩基性リン酸緩衝剤と、を含む。
水性組成物は、好ましくは液状の組成物である。
【0012】
本実施形態においては、水性組成物中にDADAおよび塩基性リン酸緩衝剤を組み合わせて含むため、水性組成物の変質を好適に抑制することができる。さらに具体的には、本実施形態によれば、中性~塩基性のpH領域、好ましくは塩基性のpH領域におけるDADAを含む水性組成物の変質を抑制することができる。
【0013】
ここで、水性組成物の変質抑制として、具体的には、水性組成物のアミン臭抑制が挙げられる。DADAを含む水性組成物においてアミン臭が生じる原因として、DADAを構成するジイソプロピルアミンが揮発することが考えられるが、本実施形態においては、水性組成物が塩基性リン酸緩衝剤を含むため、アミン臭の発生を好適に抑制することができる。
【0014】
また、水性組成物の変質抑制の他の例として、水性組成物のpH変化抑制が挙げられる。DADAを含む水性組成物において、たとえば上述のようにDADAを構成するジイソプロピルアミンが揮発した場合、水性組成物のpHが初期の値から変化してしまうことが考えられるが、本実施形態においては、水性組成物が塩基性リン酸緩衝剤を含むため、pH変化を好適に抑制することができる。
【0015】
また、本実施形態においては、たとえば、pH変化抑制効果およびアミン臭等の臭いの抑制効果のバランスに優れる水性組成物を得ることもできる。
【0016】
水性組成物のpHは、変質の発生の抑制効果向上の観点から、好ましくは7以上であり、より好ましくは7超である。
また、水性組成物のpHは14以下であり、水性組成物を皮膚等に適用する際の皮膚への刺激抑制の観点から、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下、さらに好ましくは8未満である。
【0017】
水性組成物は、具体的には皮膚に適用され、好ましくは皮膚に直接または水に溶かす等希釈して適用される。
また、水性組成物は、シートマスク、ふきとりシート、化粧用コットン等の基材に含浸される含浸液として皮膚に適用されてもよい。
【0018】
水性組成物は、好ましくは皮膚化粧料等の化粧料;または、皮膚外用剤等の外用剤であり、医薬部外品(薬用化粧料等)または医薬品であってよく、好ましくは化粧料、皮膚外用剤または医薬部外品(薬用化粧料等)である。
【0019】
また、水性組成物は、中性~塩基性のpH領域における変質抑制効果により優れるものであることから、上記pH領域にある各種組成物に用いることができ、たとえば皮膚洗浄剤等の洗浄剤またはその原料、あるいは、角質除去剤等の除去剤またはその原料とすることができる。同様の観点から、水性組成物は、たとえばニートソープまたはその原料であってもよい。
洗浄剤や除去剤の剤形として、たとえば、固体、ジェル、乳化状(クリーム、ミルク等)、液状が挙げられる。このうち、固体の洗浄剤の具体例として、洗顔石けん、浴用石けん、薬用石けん、化粧石けん等の固形石けん;粉末洗浄剤等が挙げられる。固形石けんとして、たとえば機械練り石けんおよび枠練り石けんが挙げられる。
また、液状の除去剤の具体例として、角質除去用ふきとり用薬用化粧料、角質除去用ふきとり用化粧料等が挙げられる。
以下、水性組成物の構成成分をさらに具体的に説明する。
【0020】
(DADA)
DADAは公知の物質であり、たとえば日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。DADAは公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0021】
水性組成物中のDADAの含有量は、化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品等の様々な用途に供し易くする観点から、水性組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上である。
また、水性組成物の変質抑制効果をより安定的に得る観点から、水性組成物中のDADAの含有量は、水性組成物全体に対して、好ましくは1.25質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.75質量%以下である。
【0022】
(塩基性リン酸緩衝剤)
塩基性リン酸緩衝剤は、塩基性リン酸塩であって、pH調整作用を有し、好ましくは緩衝作用を有する。
塩基性リン酸塩のカチオンとして、具体的には、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ベリリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;およびアンモニウムイオンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
塩基性リン酸塩のアニオンとして、PO4 3-、HPO4 2-等のオルトリン酸イオン;および縮合リン酸イオンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
水性組成物中での溶解性向上の観点から、塩基性リン酸塩は好ましくは水溶性である。
【0023】
塩基性リン酸塩が塩基性であることは、公知の方法により確認することができる。たとえば、塩基性リン酸塩が水溶性であれば、水溶液のpHを市販のpHメーター等で測定すればよく、塩基性リン酸塩水溶液のpHは、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上であり、また、好ましくは14以下、より好ましくは13以下である。
【0024】
塩基性リン酸緩衝剤の具体例として、リン酸一水素ナトリウム(リン酸二ナトリウム)、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
水性組成物の変質抑制効果向上の観点から、塩基性リン酸緩衝剤は、好ましくは、リン酸一水素塩であり、より好ましくはリン酸一水素ナトリウムである。
【0026】
水性組成物中の塩基性リン酸緩衝剤の含有量は、水性組成物の変質抑制効果をより安定的に得る観点から、水性組成物全体に対して、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。
また、水性組成物の変質抑制効果をより安定的に得る観点から、水性組成物中の塩基性リン酸緩衝剤の含有量は、水性組成物全体に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
水性組成物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。
【0028】
(水)
水性組成物は、具体的には水を含む。
水として、具体的には、化粧品、医薬部外品、医薬品等の種々の製剤に使用されるものが挙げられ、さらに具体的には、精製水、温泉水、深層水および植物の水蒸気蒸留水からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0029】
水性組成物中の水の含有量は、たとえば、水性組成物中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。
また、水性組成物中の水の含有量は、水溶性全体に対して、たとえば70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、また、具体的には100質量%未満であり、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98.5質量%以下である。
【0030】
(トラネキサム酸)
水性組成物は、水性組成物の変質抑制効果向上の観点、および、水性組成物に抗炎症作用、メラニン産生抑制作用等のさらなる効果を付与する観点から、好ましくはトラネキサム酸をさらに含む。
トラネキサム酸は公知の化合物である。トラネキサム酸は公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0031】
水性組成物中のトラネキサム酸の含有量は、水性組成物の変質抑制効果向上の観点、および、有効性(たとえば、抗炎症作用・メラニン産生抑制作用)の観点から、水性組成物全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上である。
また、水性組成物中における溶解性低下の抑制の観点から、水性組成物中のトラネキサム酸の含有量は、水性組成物全体に対して好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以下である。
【0032】
(pH調整剤)
水性組成物は、塩基性リン酸緩衝剤以外のpH調整剤を含んでもよい。
かかる成分として、たとえば、リン酸等の無機酸およびその塩(リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等);有機酸およびその塩;酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸等);塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン等);中性アミノ酸(グリシン等);ならびに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。水性組成物の変質抑制効果向上の観点から、塩基性リン酸緩衝剤以外のpH調整剤は、好ましくは塩基性リン酸緩衝剤以外のリン酸塩であり、より好ましくはリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはリン酸二水素ナトリウムである。
pH調整剤の量は、たとえば、塩基性リン酸緩衝剤の種類や量に応じて調整することができ、さらに具体的には水性組成物全体に対して0.01~10質量%程度であってもよく、0.01~5質量%程度であってもよく、0.01~1質量%程度であってもよい。
【0033】
(その他成分)
本実施形態において、水性組成物は、上述の成分以外の成分、たとえば、油脂(植物油等)、ロウ類、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油等の油性成分;紫外線吸収剤;紫外線散乱剤;保湿剤;界面活性剤;水溶性高分子;増粘剤;皮膚保護剤;植物抽出物;防腐剤;金属イオン封鎖剤;酸化防止剤;パール剤;着色剤;清涼剤;香料からなる群から選択される一種または二種以上を含んでもよい。
【0034】
このうち、保湿剤の具体例として、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、メチルグルセス-10等の多価アルコールが挙げられる。水性組成物中の保湿剤の含有量は、水性組成物全体に対してたとえば0.1~20質量%とすることができる。
界面活性剤として、具体的には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。このうち、非イオン性界面活性剤として、たとえば、ポリソルベート-80等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、PEG-60水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。水性組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は、水性組成物全体に対してたとえば0.01~2質量%とすることができる。
皮膚保護剤の具体例として、トレハロースが挙げられる。水性組成物中の皮膚保護剤の含有量は、水性組成物全体に対してたとえば0.01~1質量%とすることができる。
防腐剤の具体例として、フェノキシエタノールが挙げられる。水性組成物中の防腐剤の含有量は、水性組成物全体に対してたとえば0.01~1質量%とすることができる。
【0035】
本実施形態において、水性組成物は、たとえば、DADA、塩基性リン酸緩衝剤および適宜他の配合成分を混合する工程を含む製造方法により得ることができる。他の配合成分は、たとえば水性組成物の剤形や求める性能に応じて選択することができる。
また、水性組成物が外用剤であるとき、水性組成物はたとえば第18改正日本薬局方等に記載される通常の方法に従って製造することができる。
【0036】
(臭い変化抑制剤、臭いの抑制方法)
本実施形態において、臭い変化抑制剤は、DADAを含む水性組成物の臭いを、好ましくはアミン臭を抑制するものであり、塩基性リン酸緩衝剤を有効成分として含む。
また、臭いの、好ましくはアミン臭の抑制方法は、DADAを含む水性組成物に、塩基性リン酸緩衝剤を添加することを含む。
前述のとおり、DADAを含む水性組成物中に塩基性リン酸緩衝剤を配合することにより、水性組成物におけるアミン臭等の臭いの発生を効果的に抑制することができる。
【0037】
(pH変化抑制剤、pH変化の抑制方法)
本実施形態において、pH変化抑制剤は、DADAを含む水性組成物のpH変化を抑制するものであって、塩基性リン酸緩衝剤を有効成分として含む。
また、pH変化の抑制方法は、DADAを含む水性組成物に、塩基性リン酸緩衝剤を添加することを含む。
前述のとおり、DADAを含む水性組成物中に塩基性リン酸緩衝剤を配合することにより、水性組成物のpH変化を効果的に抑制することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1~11、比較例1~4)
本例では、水性組成物を調製し、評価した。
【0041】
(水性組成物の調製方法)
表1~表3に記載の成分を室温(25℃)にて混合、溶解し、各例の水性組成物を得た。
【0042】
(評価)
各例で得られた水性組成物を50gガラス瓶に入れ、50℃にて1週間(表1~表3中「1w」)保存した。保存後のpH変化および臭いを以下の手順で評価した。
【0043】
(pH)
各例の水性組成物の保存前後のpHをpHメーターF-52(堀場製作所製)にて測定した。保存前後のpHの差(絶対値)に基づき以下の基準で評価し、AおよびBを合格とした。評価結果を表1~表3にあわせて示す。
A:0.1以下
B:0.1超0.25以下
C:0.25超0.5以下
D:0.5超
【0044】
(臭い)
各例の保存後の水性組成物のアミン臭の有無を以下の手順で評価した。
すなわち、各例で得られた水性組成物を50gガラス瓶に入れ、アミン臭の有無を以下の基準で評価した。以下のAおよびBを合格とした。評価結果を表1~表3にあわせて示す。
A:臭いなし
B:わずかに臭いあり
C:臭いあり
D:強い臭いあり
なお、各例の水性組成物は、保存前においてはいずれもアミン臭はなかった(上記A評価)。
【0045】
(総合評価)
pHおよび臭いの評点のうち、より低評価(Dに近い)のものを各例の総合評価結果とし、AおよびBを合格とした。評価結果を表1~表3にあわせて示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
(比較例5~8)
本例では、塩基性リン酸緩衝剤を含まず、グリシンや水酸化ナトリウムを含む水性組成物を調製し、評価した。
【0050】
(水性組成物の調製方法)
表1~表3に記載の水性組成物と同様の方法で、表4に記載の成分を室温(25℃)にて混合、溶解し、各例の水性組成物を得た。
【0051】
(評価)
各例で得られた水性組成物を50gガラス瓶に入れ、50℃にて2日間(表4中「2d」)保存した。保存後のpH変化および臭いを、表1~表3に記載の水性組成物と同様の手順で評価した。評価結果を表4にあわせて示す。
【0052】
(総合評価)
表1~表3に記載の水性組成物と同様、pHおよび臭いの評点のうち、より低評価(Dに近い)のものを各例の総合評価結果とし、AおよびBを合格とした。評価結果を表4にあわせて示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4より、塩基性リン酸緩衝剤を含まない水性組成物は、50℃にて保管後2日目の時点で変質し、pH変化および臭い(アミン臭)の発生がみられた。
【0055】
表1~表4より、pHが約7.0の場合(表1)、比較例1および2では保存によるpH変化が大きかったのに対し、各実施例ではこれを好適に抑制することができた。
また、pHが約7.5または8.0の場合、グリシンを含む比較例5~8(表4)では、2日保存後においてpH変化および臭いが発生した。具体的には、pHが約7.5または8.0の場合、比較例5~8では保存によるpH変化が大きく、pHが約8.0の場合、比較例7および8では保存による臭いの発生が大きかった。また、グリシンを含まない比較例3および4(表2、表3)では、臭いの発生は抑制されたが保存によるpH変化が大きかった。これに対し、各実施例(表2、表3)では、同程度のpHの比較例に比べて水性組成物の50℃における保存安定性に優れており、pH変化および臭いの発生を抑制する効果のバランスに優れていた。
【0056】
(処方例1~6)
以下の表5に記載の処方で、常法により水性組成物(角質除去剤)が調製される。表5における各成分量の単位は質量%である。
【0057】
【表5】