(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145856
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】温湿度計測装置、及び、温湿度計測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20241004BHJP
G01N 29/032 20060101ALI20241004BHJP
G01K 11/24 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N29/024
G01N29/032
G01K11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058398
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】518212241
【氏名又は名称】公立大学法人公立諏訪東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 毅
【テーマコード(参考)】
2F056
2G047
【Fターム(参考)】
2F056VS02
2F056VS03
2F056VS04
2F056VS07
2F056VS10
2G047AA01
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC16
2G047BC19
(57)【要約】
【課題】屋外に設置した場合にあっても、音波のシグナルを検出して、温湿度を計測することができる、温湿度計測装置を提供すること。
【解決手段】温湿度計測装置100は、音波260を放射する送信部150、第1の音波伝播路161、第1の受信部181、第2の音波伝播路162、第2の受信部と182を備える測定部を含む。第1の音波伝播路161は、第1の回転楕円弧の内面の一部を構成する第1の反射板201を備え、第2の音波伝播路162は、第2の回転楕円弧の内面の一部を構成する第2の反射板202を備える。送信部は、共有されている、第1の回転楕円弧の第1の焦点141a及び第2の回転楕円弧の第1の焦点142aの位置に配置され、第1の反射板201及び第2の反射板202は、第1の音波伝播路161における音波260の伝播距離と第2の音波伝播路162における音波260の伝播距離とが異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を使って温湿度を計測する温湿度計測装置であって、
音波を放射する送信部と、第1の音波伝播路と、第1の受信部と、第2の音波伝播路と、第2の受信部と、を備える測定部を備え、
前記第1の音波伝播路は、第1の回転楕円弧の内面の一部を構成する第1の反射面を備える第1の反射板を備え、
前記第2の音波伝播路は、第2の回転楕円弧の内面の一部を構成する第2の反射面を備える第2の反射板を備え、
前記第1の反射板及び前記第2の反射板は、前記第1の回転楕円弧の第1の焦点の位置及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置を共有するように配置され、
前記送信部は、共有されている、前記第1の回転楕円弧の第1の焦点及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置に配置され、
前記第1の受信部は、前記第1の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、
前記第2の受信部は、前記第2の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、
前記第1の反射板及び前記第2の反射板は、前記第1の音波伝播路における音波の伝播距離と前記第2の音波伝播路における音波の伝播距離とが異なるように構成されていること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温湿度計測装置であって、
演算部をさらに有し、
前記演算部は、前記第1の音波伝播路における音波の伝播時間、及び/又は、前記第2の音波伝播路における音波の伝播時間に基づいて仮温度を計算すること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の温湿度計測装置であって、
前記演算部は、前記第1の音波伝播路における音波の減衰量と前記第2の音波伝播路における音波の減衰量とを比較し、湿度を計算すること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温湿度計測装置であって、
前記演算部は、前記仮温度及び前記湿度に基づいて実温度を計算すること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の温湿度計測装置であって、
前記測定部は、第3の音波伝播路と、第3の受信部と、第4の音波伝播路と、第4の受信部と、をさらに備え、
前記第3の音波伝播路は、第3の回転楕円弧の内面の一部を構成する第3の反射面を備える第3の反射板を備え、
前記第4の音波伝播路は、第4の回転楕円弧の内面の一部を構成する第4の反射面を備える第4の反射板を備え、
前記第3の反射板は、前記第3の回転楕円弧の第1の焦点の位置を、前記第1の反射板の前記第1の回転楕円弧の第1の焦点の位置及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置と共有するように配置され、
前記第4の反射板は、前記第4の回転楕円弧の第1の焦点の位置を、前記第1の反射板の前記第1の回転楕円弧の第1の焦点の位置、前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置、及び、前記第3の回転楕円弧の第1の焦点の位置、と共有するように配置され、
前記第3の受信部は、前記第3の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、
前記第4の受信部は、前記第4の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、
前記第1の反射板、前記第2の反射板、前記第3の反射板及び前記第4の反射板の中から任意の3つの反射板を選択したときに、選択可能な前記3つの反射板のすべての組み合わせにおいて、前記3つの反射板は、それぞれの音波伝播路における前記音波の伝播方向を示す方向ベクトルが同一平面上に存在しないように配置されていること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の温湿度計測装置であって、
制御部をさらに有し、
前記制御部は、前記送信部を制御して、周波数が20kHz以上1MHz以下の音波を、時間間隔をおいて放射させること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載の温湿度計測装置であって、
前記制御部は、前記送信部を制御して、時間とともに周波数が変化するチャープ波を放射させること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の温湿度計測装置であって、
前記測定部を回動させる回動部を有すること、を特徴とする温湿度計測装置。
【請求項9】
音波を放射する送信部と、第1の音波伝播路と、第1の受信部と、第2の音波伝播路と、第2の受信部と、を備える測定部と、を備える温湿度計測装置を用いる温湿度計測方法であって、
前記第1の音波伝播路は、第1の回転楕円弧の内面の一部を構成する第1の反射面を備える第1の反射板を備え、
前記第2の音波伝播路は、第2の回転楕円弧の内面の一部を構成する第2の反射面を備える第2の反射板を備え、
前記送信部は、前記第1の回転楕円弧の第1の焦点及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置に配置され、
前記第1の受信部は、前記第1の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、
前記第2の受信部は、前記第2の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、
前記送信部から、前記第1の反射面及び前記第2の反射面に向けて音波を放射させる放射ステップと、
前記放射ステップにおいて放射した音波を、前記第1の反射面又は前記第2の反射面で反射させる反射ステップと、
前記反射ステップで反射した音波を、前記第1の受信部又は前記第2の受信部で受信する受信ステップと、
前記第1の音波伝播路における音波の伝播時間及び/又は前記第2の音波伝播路における音波の伝播時間に基づいて仮温度を計算する仮温度計算ステップと、
前記第1の音波伝播路における音波の減衰量及び前記第2の音波伝播路における音波の減衰量に基づいて湿度を計算する湿度計算ステップと、
前記仮温度と前記湿度とに基づいて実温度を計算する実温度計算ステップと、を備えることを特徴とする温湿度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温湿度計測装置、及び、温湿度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中を伝播する超音波の伝播速度が気体の温度や湿度に依存することを利用して、超音波の伝播速度から気体の温度や湿度を計測する温度計測装置、温湿度計測装置が知られている(特許文献1、非特許文献1等)。
【0003】
特許文献1には、空気を含む気体中において、超音波送信素子と反射板とを距離L/2の間隔をおいて配置し、超音波送信素子から超音波を送信して反射板に超音波をあて、反射波が戻ってくるまでの時間を測定し、温度を算出する温度計測装置が記載されている。
【0004】
非特許文献1には、超音波が湿潤空気中を伝播されるとき、湿度に応じて超音波が減衰することに着目し、超音波が、超音波送信素子から送信され、受信素子で受信されるまでの、時間と減衰とを計測することにより、超音波が伝播する空気の温度と湿度とを同時に計測する、温湿度センサーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】茂木貴弘,「超音波の音速と減衰に基づく温湿度計測法に関する研究」 筑波大学学位論文 公開日:2014年11月10日,[令和4年4月5日検索],インターネット<URL:http://hdl.handle.net/2241/00122433>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先行技術文献に記載された温湿度計測装置や温湿度計測方法では、受信器で受信され、又は、検出される信号の強度が弱く、ノイズの影響を受けやすいことがある。特に、温湿度計測装置を屋外に設置した場合には、雨、霧等の周辺環境の影響により、検出される信号がノイズに埋もれてしまい、温湿度を正確に測定することが難しい、という課題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温湿度を計測する環境が良好でない場合であっても、シグナルを検出することが可能であり、温湿度を正確に測定することができる温湿度計測装置を提供すること、又は、温湿度を正確に測定することができる温湿度測定方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の温湿度計測装置は、音波を使って温湿度を計測する温湿度計測装置であって、音波を放射する送信部と、第1の音波伝播路と、第1の受信部と、第2の音波伝播路と、第2の受信部と、を備える測定部を備え、前記第1の音波伝播路は、第1の回転楕円弧の内面の一部を構成する第1の反射面を備える第1の反射板を備え、前記第2の音波伝播路は、第2の回転楕円弧の内面の一部を構成する第2の反射面を備える第2の反射板を備え、前記第1の反射板及び前記第2の反射板は、前記第1の回転楕円弧の第1の焦点の位置及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置を共有するように配置され、前記送信部は、共有されている、前記第1の回転楕円弧の第1の焦点及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置に配置され、前記第1の受信部は、前記第1の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、前記第2の受信部は、前記第2の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、前記第1の反射板及び前記第2の反射板は、前記第1の音波伝播路における音波の伝播距離と前記第2の音波伝播路における音波の伝播距離とが異なるように構成されている。
【0010】
[2]本発明の温湿度計測装置においては、演算部をさらに有し、前記演算部は、前記第1の音波伝播路における音波の伝播時間、及び/又は、前記第2の音波伝播路における音波の伝播時間に基づいて仮温度を計算すること、が好ましい。
【0011】
[3]本発明の温湿度計測装置においては、前記演算部は、前記第1の音波伝播路における音波の減衰量と前記第2の音波伝播路における音波の減衰量とを比較し、湿度を計算すること、が好ましい。
【0012】
[4]本発明の温湿度計測装置においては、前記演算部は、前記仮温度及び前記湿度に基づいて実温度を計算すること、が好ましい。
【0013】
[5]本発明の温湿度計測装置においては、前記測定部は、第3の音波伝播路と、第3の受信部と、第4の音波伝播路と、第4の受信部と、をさらに備え、前記第3の音波伝播路は、第3の回転楕円弧の内面の一部を構成する第3の反射面を備える第3の反射板を備え、前記第4の音波伝播路は、第4の回転楕円弧の内面の一部を構成する第4の反射面を備える第4の反射板を備え、前記第3の反射板は、前記第3の回転楕円弧の第1の焦点の位置を、前記第1の反射板の前記第1の回転楕円弧の第1の焦点の位置及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置と共有するように配置され、前記第4の反射板は、前記第4の回転楕円弧の第1の焦点の位置を、前記第1の反射板の前記第1の回転楕円弧の第1の焦点の位置、前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置、及び、前記第3の回転楕円弧の第1の焦点の位置、と共有するように配置され、前記第3の受信部は、前記第3の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、前記第4の受信部は、前記第4の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、前記第1の反射板、前記第2の反射板、前記第3の反射板及び前記第4の反射板の中から任意の3つの反射板を選択したときに、選択可能な前記3つの反射板のすべての組み合わせにおいて、前記3つの反射板は、それぞれの音波伝播路における前記音波の伝播方向を示す方向ベクトルが同一平面上に存在しないように配置されていること、が好ましい。
【0014】
[6]本発明の温湿度計測装置においては、制御部をさらに有し、前記制御部は、前記送信部を制御して、周波数が20kHz以上1MHz以下の音波を、時間間隔をおいて放射させること、が好ましい。
【0015】
[7]本発明の温湿度計測装置においては、前記制御部は、前記送信部を制御して、時間とともに周波数が変化するチャープ波を放射させること、が好ましい。
【0016】
[8]本発明の温湿度計測装置においては、前記測定部を回動させる回動部を有すること、が好ましい。
【0017】
[9]本発明の温湿度測定方法は、音波を放射する送信部と、第1の音波伝播路と、第1の受信部と、第2の音波伝播路と、第2の受信部と、を備える測定部と、を備える温湿度計測装置を用いる温湿度計測方法であって、前記第1の音波伝播路は、第1の回転楕円弧の内面の一部を構成する第1の反射面を備える第1の反射板を備え、前記第2の音波伝播路は、第2の回転楕円弧の内面の一部を構成する第2の反射面を備える第2の反射板を備え、前記送信部は、前記第1の回転楕円弧の第1の焦点及び前記第2の回転楕円弧の第1の焦点の位置に配置され、前記第1の受信部は、前記第1の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、前記第2の受信部は、前記第2の回転楕円弧の第2の焦点の位置に配置され、前記送信部から、前記第1の反射面及び前記第2の反射面に向けて音波を放射させる放射ステップと、前記放射ステップにおいて放射した音波を、前記第1の反射面又は前記第2の反射面で反射させる反射ステップと、前記反射ステップで反射した音波を、前記第1の受信部又は前記第2の受信部で受信する受信ステップと、前記第1の音波伝播路における音波の伝播時間及び/又は前記第2の音波伝播路における音波の伝播時間に基づいて仮温度を計算する仮温度計算ステップと、前記第1の音波伝播路における音波の減衰量及び前記第2の音波伝播路における音波の減衰量に基づいて湿度を計算する湿度計算ステップと、前記仮温度と前記湿度とに基づいて実温度を計算する実温度計算ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の温湿度計測装置、及び、温湿度測定方法は、音波伝播路において、回転楕円弧の一方の焦点の位置に配置された送信部から音波を放射し、回転楕円弧の一部を構成する反射面で音波を反射させ、回転楕円弧の他方の焦点の位置に配置された受信部で音波を受信する。
【0019】
このとき、反射面が回転楕円弧の一部を構成しているので、送信部から放射された音波は、どの向きに向かって放射された音波でも、反射面で反射して受信部の位置に集まり、受信部で受信することができる。これにより、送信部から送信した音波を受信部で直接受信する場合に比べ、効率よく音波を受信することができようになる。この結果、温湿度を計測する環境が良好でない場合であっても、信号を検出することが可能であり、温湿度を正確に測定することができる温湿度計測装置を提供すること、又は、温湿度を正確に測定することができる温湿度測定方法を提供することができる。
【0020】
さらに、本発明の温湿度計測装置、及び、温湿度測定方法は、第1の音波伝播路における音波の伝播距離と第2の音波伝播路における音波の伝播距離とが異なるように構成されている。これにより、第1の音波伝播路を伝播された音波の減衰量と第2の音波伝播路を伝播された音波の減衰量とが異なることになる。第1の音波伝播路を伝播された音波の減衰量と第2の音波伝播路を伝播された音波の減衰量とを比較することによって、温湿度計測装置が設置された場所の湿度、実温度を、計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る温湿度計測装置100を説明するために示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る温湿度計測装置100を説明するために示す図である。
【
図3】実施形態1に係る温湿度計測装置100を説明するために示すブロック図である。
【
図4】実施形態1に係る温湿度計測装置100の測定部110の測定原理を説明するために示す図である。
【
図5】従来技術に係る温度測定装置900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記す。)を説明する。以下に記載する実施形態は、発明を実施するための好適な形態を示すものであって、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが、本発明に必須であるとは限らない。
【0023】
1.実施形態1(温湿度計測装置)
図1は、実施形態1に係る温湿度計測装置100を説明するために示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る温湿度計測装置100を説明するために示す図である。
図2(a)は、温湿度計測装置100の正面図であり、
図2(b)は、温湿度計測装置100の平面図である。
図3は、実施形態1に係る温湿度計測装置100を説明するために示すブロック図である。なお、図面において、符号の表示を省略することがある。
【0024】
実施形態1に係る温湿度計測装置100は、
図1及び
図2に示すように、測定部110と、基台部310とを備える。測定部110は、送信部150、6つの音波伝播路である第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166、及び、6つの受信部である第1の受信部181~第6の受信部186を備える。なお、以後の説明において、第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166の全て又は一部を指して音波伝播路160と記すことがある。また、第1の受信部181~第6の受信部186全て又は一部を指して受信部180と記すことがある。
【0025】
温湿度計測装置100は、制御部320及び演算部330を備える(
図3参照)。制御部320及び演算部330は、基台部310の中に収容されていてもよい。
【0026】
1-1.測定部
1-1-1.音波伝播路
第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166は、それぞれ、第1の反射板201~第6の反射板206を備える。第1の反射板201~第6の反射板206は、それぞれ、音波260を反射させる、第1の反射面221~第6の反射面226を備える。第1の反射面221~第6の反射面226は、それぞれ、回転楕円弧の内面の一部を構成する。ここで、回転楕円弧とは、楕円の弧を、当該楕円の長軸又は短軸を回転軸として回転させたときに得られる立体で、それぞれ、楕円回転体241~246の外郭に相当する。なお、以後の説明において、第1の反射板201~第6の反射板206の全て又は一部を指して、反射板200と記すことがある。また、第1の反射面221~第6の反射面226の全て又は一部を指して、反射面220と記すことがある。
【0027】
なお、
図2(a)において、第3の音波伝播路163、第3の反射板203及び第3の受信部183は、第5の反射板205、第5の受信部185等の後方に存在するため、正面から視認することができない。このため、
図2(a)においては、第3の音波伝播路163、第3の反射板203及び第3の受信部183の記載を省略している。
【0028】
実施形態1に係る温湿度計測装置100は、第1の反射板201及び第2の反射板202が、第1の音波伝播路161における音波260の伝播距離と第2の音波伝播路162における音波260の伝播距離とが異なるように構成されている。かかる構成を採用することの効果については、後で説明する。
【0029】
反射板200を構成する材料は、音波260を反射する材料であれば、制限なく使用することができる。反射板200の材料として、金属、プラスチック、樹脂、等を例示することができる。温湿度計測装置100を屋外に設置する場合には、温湿度計測装置100が設置される場所における環境、材料の耐候性を考慮して、反射板200の材料を選択することが好ましい。
【0030】
反射板200の大きさは、特に制限はないが、例えば、音波伝播路160における音波260の伝播方向の長さが10cm~20cm程度である。また、音波260の伝播方向に垂直方向の長さ(幅)は、設置する反射板200の枚数を考慮して適宜決定することができるが、例えば、1cm~4cm程度である。
【0031】
楕円回転体241は、2つの焦点(第1の焦点241a、第2の焦点241b)を備える。また、楕円回転体242~246は、楕円回転体241と同様に、それぞれ、2つの焦点(第1の焦点242a~246a、第2の焦点242b~246b)を備える。
【0032】
第1の反射板201~第6の反射板206は、それぞれの第1の焦点241a~246aの位置を共有するように配置されている。
【0033】
第1の反射板201~第6の反射板206の、それぞれの第1の焦点241a~246aを共有する位置には、送信部150が配置されている。これにより、6つの音波伝播路160に、一つの送信部150によって、同時に、音波260を放射することができる。
【0034】
第1の反射板201~第6の反射板206の第2の焦点241b~246bの位置には、それぞれ、第1の受信部181~第6の受信部186が配置されている。
【0035】
以下、反射面220が、回転楕円弧の内面の一部を構成することによる効果を説明する。ここでは、第1の音波伝播路161を例にとって説明する。
【0036】
図4は、実施形態1に係る温湿度計測装置100の測定部110の測定原理を説明するために示す図である。
図5は、従来技術に係る温度測定装置900を説明するために示す図である。
【0037】
図4に示すように、第1の反射面221を構成する回転楕円弧の第1の焦点241aの位置に送信部150が配置され、送信部150は、音波260を第1の反射面221に向けて放射する。音波260は第1の反射面221で反射し、第2の焦点241bの位置に配置した第1の受信部181において、受信される。
【0038】
このとき、第1の反射面221を回転楕円弧の内面の一部を構成する形状とすることにより、送信部150から放射された音波260は、どの向きに向かって放射された音波260であっても、第1の反射面221におけるいずれかの点で反射して、第2の焦点241bに到達する。これにより、送信部150から放射された音波260を、第1の受信部181において、効率よく受信することができる。
【0039】
従来技術に係る温度測定装置900においては、
図5に示すように、送信部951から放射された音波971のうち、受信部961に向かって進んだ音波しか、受信部961において受信することができなかった。しかし、実施形態1に係る温湿度計測装置100においては、送信部150から放射された音波260は、どの向きに向かって放射された音波260であっても、反射面221が存在する領域に到達すれば、第1の反射面221で反射し、第1の受信部181に集まる。この結果、音波260の受信効率を格段に向上させることができる、という効果を奏する。
【0040】
さらに、第1の反射面221を回転楕円弧の内面の一部を構成する形状にすることにより、第1の音波伝播路161における音波260の伝播距離を、第1の反射面221における音波260の反射位置に関係なく、一定にすることができる。
【0041】
音波260の伝播距離とは、送信部150から放射された音波260が、第1の反射面221上の任意の点241cにおいて反射し、第1の受信部181で受信されるまでの伝播距離である。ここで、送信部150は、回転楕円弧の第1の焦点241aの位置に配置され、第1の受信部181は、回転楕円弧の第2の焦点241bの位置に配置されている。また、第1の反射面221は、回転楕円弧の内面の一部を構成する。
【0042】
回転楕円弧の第1の焦点241aから回転楕円弧の弧上の任意の点241cまでの距離と、当該点241cからの第2の焦点241bまでの距離との和は一定である。すなわち、音波260の伝播距離は、音波260が第1の反射面221で反射する位置に関係なく一定であるということができる。さらに、送信部150において、同時に放射された音波260は、第1の反射面221において音波260が反射する位置に関係なく、第1の受信部181に同時に到達することができる。
【0043】
第1の反射面221における音波260の反射位置によって音波260の伝播距離が異なる場合には、第1の受信部181で受信した信号を、音波260の伝播距離に応じて加工する処理が必要になる場合がある。しかし、実施形態1に係る温湿度計測装置100においては、音波260が第1の反射面221において反射した位置に関係なく第1の受信部181に同時に到達するので、音波260が第1の反射面221において反射した位置を考慮することなく、第1の受信部181で受信した信号を以後の演算処理において使用することができる。
【0044】
1-1-2.送信部
送信部150は、音波260を放射する。また、送信部150は、反射面220における回転楕円弧の第1の焦点241a~246aの位置に配置される。なお、上記したように、反射板200は、それぞれの回転楕円弧の第1の焦点241a~246aの位置を共有するように配置されているので、送信部150は、6つの反射板201~206の一方の焦点241a~246aによって共有されている位置に配置されることになる。
【0045】
送信部150は、第1の反射面221~第6の反射面226に向かって音波260を放射する。
なお、本出願において「音波」とは、いわゆる広義の音波を意味し、対象が気体、液体、固体を問わず弾性体を伝播することができる、あらゆる弾性波の総称としての音波をさす。すなわち、人間や動物の可聴周波数の弾性波である狭義の音波に加え、人間の可聴周波数より高い周波数を有する弾性波である超音波を含む。音波は、例えば、周波数が10,000Hz以上50,000Hz以下の波長を有する弾性波であってもよい。なお、送信部150が放射する音波の波長は、送信部150における放射効率、受信部180における受信感度を考慮して決定してもよい。
【0046】
1-1-3.受信部
第1の受信部181~第6の受信部186は、送信部150から放射され、第1の反射面221~第6の反射面226で反射した音波260を、それぞれ、受信する。第1の受信部181~第6の受信部186は、第1の反射面221~第6の反射面226のそれぞれに備えられており、第1の反射板201~第6の反射板206における、それぞれの回転楕円弧の第2の焦点141c~146cの位置に配置されている。
【0047】
送信部150及び受信部180は、
図1に示すように、支持部材によって反射板200に固定されている。送信部150及び受信部180は、1つの支持部材により支持されてもよく、2つ以上の支持部材により支持されてもよい。なお、
図2においては、送信部150及び受信部180を支持する支持部材の表示を省略している。
【0048】
測定部110は、基台部310に載置されている。基台部310の構造及び形状に特段の制限はないが、温湿度計測装置100を屋外に設置する場合には、温湿度計測装置100が風雨に晒されたときにも、安定に機能することができる構造であることが好ましい。基台部は、測定部110を載置する載置台317と、回動部315(
図3参照)とを備える。
【0049】
回動部315は、例えば、基台部310の内部に配置され、載置台317を回動させることにより、測定部110を回動軸L(
図2参照)の周りに回動させる。回動部315として、例えばモーターを例示することができる。温湿度計測装置100が回動部315を備えることにより、測定部110を任意の角度に回動させ、測定部110の向きを任意の向きに配置することができる。
【0050】
1-2.制御部
制御部320は、送信部150、受信部180、及び、演算部330を制御する。
すなわち、制御部320は、送信部150を制御して、送信部150から音波260を放射させる。制御部320は、受信部180を制御し、受信部180が受信した音波260に含まれる信号を、演算部330に送るよう制御する。制御部320は、演算部330を制御し、受信部180から送られてきた信号に基づいて、仮温度、湿度、及び、実温度を計算させる。
【0051】
さらに、制御部320は、送信部150を制御して送信部150から音波260を放射させるとき、音波260を、ある時間間隔をおいて放射させてもよい。ここで、「時間間隔をおいて」とは、仮温度、湿度、又は、実温度を測定、計算するために必要なときに、音波260を放射するという意味であり、仮温度、湿度、及び、実温度を測定、計算するために必要が無いときには、音波260を放射しないという意味である。これにより、仮温度等を測定するための電力を節約することができる。これは、温湿度計測装置100を、外部から電力の供給を受けることができない山間地、離島等に設置する場合には、特に有効である。
【0052】
なお、音波260を放射する時間と、音波260を放射しない時間とは、それぞれ、所定の時間に設定してもよく、都度時間に設定してもよい。また、省電力という観点からは、音波260を放射しない時間を、音波260を放射する時間より長く設定することが好ましいが、音波260を放射する時間を、音波260を放射しない時間より長く設定しても、一定の効果を得ることはできる。
【0053】
また、送信部150が放射する音波260の周波数は、20kHz以上1MHz以下であることが好ましい。
【0054】
さらに、制御部320は、送信部150を制御して送信部150から音波260を放射させるとき、音波260として周波数が時間と共に変化するチャープ波を放射させてもよい。
【0055】
温湿度計測装置100は、仮温度を測定するときに、送信部150からパルス波からなる音波260を放射させ、受信部180で受信させる。このとき、送信部150と受信部180との間で、音波260を音波伝播路160に伝播させ、送受信信号から伝播時間を測定する。受信信号は、送信部150や受信部180の特性、雑音の影響を受けるため、パルス信号の立ち上がりにより伝播時間を測定することは難しい。
【0056】
音波260の伝播時間を測定するとき、送信信号と受信信号の2つの信号が最も一致する時間を求める相互相関法を用いることが好ましい。相互関数法においては、時間tにおける送信信号s1(t)と受信信号s2(t)の相互相関関数x(τ)について、相互相関数が最大ピークとなる時刻τを求める。
【0057】
ここで、送信部150が放射する送信信号として、周波数が時間とともに変化するチャープ信号を放射させることが好ましい。チャープ信号は、単なる正弦バースト信号に比べると、自己相関関数におけるピークが鋭いという特徴を有する。チャープ波を音波260の伝播時間を測定するために使用すると、雑音を抑えることができ、高い精度で伝播時間を測定することができる。
【0058】
制御部は、回動部315を制御して、測定部110の向きを回動させる。測定部110を回動させることにより、受信部180の感度の初期的なばらつき、経時的な感度の変化、反射板200の汚れが原因となる感度のばらつき、等を校正することができる。
【0059】
受信部180の校正方法として、いくつかの方法が考えられるが、一例をあげると、測定部110を回動させることにより、所定の回動位置に、音波伝播路160を順番に配置する。このとき、音波260の伝播速度、減衰係数を計測し、他の音波伝播路160における計測結果と比較することにより、受信部180の校正をする方法を例示することができる。
【0060】
1-3.演算部
演算部330は、第1の音波伝播路161における音波260の伝播時間に基づいて仮温度を計算することが好ましい。また、演算部330は、第2の音波伝播路162における音波の伝播時間に基づいて仮温度を計算することが好ましい。さらに、演算部330は、第1の音波伝播路161における音波の伝播時間、及び、第2の音波伝播路162における音波の伝播時間に基づいて仮温度を計算することが好ましい。
【0061】
ここで「仮温度」とは、湿潤気体について、同じ圧力、同じ密度を持つ乾燥空気の温度のことをいう。また、「実温度」とは、湿潤気体、乾燥気体を問わず、その気体が有する実際の温度のことをいう。
【0062】
仮温度は、第1の音波伝播路161における音波260の伝播距離と第1の音波伝播路161における音波260の伝播時間とから、音波260の伝搬速度を計算し、例えば以下に示す乾燥空気における気温と音速の関係式を使って、仮温度を計算することができる。音波260の伝播時間は、送信部150が音波260を放射した時刻と、第1の受信部181が音波260を受信した時刻との時間差である。
【数1】
ここで音速C’
thは、湿度0%RHの乾燥空気における音速、Tは、実温度、T
0は、基準温度(293.15K)、C
0は、基準温度における音速であり、下式で表され定数である。
【数2】
ここで、γaは、比熱比(1.413)、Rは、気体定数(=8.314)、μは、媒質分子1mol当たりの質量(2.896×10
-2)である。
【0063】
または、第2の音波伝播路162における音波260の伝播距離と第2の音波伝播路162における音波260の伝播時間とから、音波260の伝搬速度を計算し、仮温度を計算してもよい。
【0064】
演算部216は、第1の音波伝播路161における音波260の減衰量と第2の音波伝播路162における音波260の減衰量とを比較し、湿度を計算することが好ましい。具体的には、音波260が空気中を伝播するとき、空気の吸音性によって、音波260の振幅は伝搬距離に対して指数関数的に減衰する。このときの空気中における音波260の減衰は、空気の物性値である減衰係数により決定することができる。
【0065】
ここで、第1の音波伝播路161と第2の音波伝播路とは、同一の環境下に設置されていることから、減衰係数と湿度とは一意に対応する。湿度は、減衰係数から公知の方法により求めることができる。例えば、減衰係数と湿度との関係を測定しておき、測定により求めた減衰係数を、減衰係数と湿度との関係に適用することにより、計算することができる。あるいは、減衰係数と湿度との関係を表す関係式を求め、かかる関係式に減衰係数を適用することにより、湿度を求めることができる。
【0066】
演算部216は、仮温度及び湿度に基づいて、実温度を計算することが好ましい。例えば、実温度は、以下に示す計算式により計算することができる。
T=Tv/(1+0.61w)
ただし、Tは実温度、Tvは仮温度、wは水蒸気の混合比である。
【0067】
上記した説明においては、第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166のうち、第1の音波伝播路161における音波260の伝搬距離と第2の音波伝播路162における音波260の伝搬距離とが異なるように、第1の反射板201及び第2の反射板202が構成されている場合について説明した。しかし、第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166のうち、音波伝播路160における音波260の伝播距離が異なるように構成される反射板200は、第1の反射板201と第2の反射板202の2つであるの場合に限定されない。すなわち、第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166から選択される任意の3個、又は、任意の3個以上の音波伝播路160において、音波260の伝播距離が各々異なるように構成されていてもよい。
【0068】
例えば、
図1及び
図2に示す温湿度計測装置100は、第1の音波伝播路161における音波260の伝搬距離は、第2の音波伝播路162~第6の音波伝播路166における音波260における音波260の伝播距離より長くなるように構成されている。また、第2の音波伝播路162における音波260の伝播距離は、第3の音波伝播路163~第6の音波伝播路166における音波260の音波伝播距離より長くなるように構成されている。第3の音波伝播路163~第6の音波伝播路166における音波260の音波伝播距離は同じ長さになるように構成されている。
【0069】
すなわち、第1の音波伝播路161における音波260の伝搬距離は、第2の音波伝播路162における音波260における音波260の伝播距離と異なるように構成され、第3の音波伝播路163における音波260の伝播距離は、第1の音波伝播路161における音波260の伝搬距離、及び、第2の音波伝播路162における音波260の伝搬距離とは異なる距離に構成されている。
【0070】
これにより、第1の音波伝播路161における音波260の伝播時間及び減衰量と第2の音波伝播路162における音波260の伝播時間及び減衰量とから湿度及び実温度を計算することができる。また、第2の音波伝播路162における音波260の伝播時間及び減衰量と第3の音波伝播路163における音波260の伝播時間及び減衰量とから湿度及び実温度を計算することができる。さらに、第3の音波伝播路163における音波260の伝播時間及び減衰量と第1の音波伝播路161における音波260の伝播時間及び減衰量とから湿度及び実温度を計算することができる。それぞれの音波伝播路160の組み合わせから得られた湿度及び実温度の結果を比較し、補正を行うことによって、測定誤差を小さくすることができる。
【0071】
実施形態1に係る温湿度計測装置によれば、反射面220が回転楕円弧の一部を構成しているので、送信部150から放射された音波260は、どの向きに向かって放射された音波でも、反射面220で反射して受信部180の位置に集まり、受信部180で受信することができる。これにより、送信部150から送信した音波260を受信部で直接受信する場合に比べ、効率よく音波260を受信することができる。この結果、温湿度を計測する環境が良好でない場合であっても、信号を検出することが可能であり、温湿度を正確に測定することができるようになる。
【0072】
さらに、実施形態1に係る温湿度計測装置によれば、第1の音波伝播路161における音波260の伝播距離と第2の音波伝播路162における音波の伝播距離とが異なるように構成されている。これにより、第1の音波伝播路161を伝播された音波260の減衰量と第2の音波伝播路162を伝播された音波260の減衰量とが異なることになる。第1の音波伝播路161を伝播された音波の減衰量と第2の音波伝播路162を伝播された音波の減衰量とを比較することによって、温湿度計測装置が設置された場所の湿度、実温度を、計算することができる。
【0073】
1-4.温湿度計測方法
次に、実施形態1に係る温湿度計測方法について説明する。
温湿度計測方法は、音波260を放射する送信部150と、第1の音波伝播路161と、第1の受信部181と、第2の音波伝播路162と、第2の受信部182と、を備える測定部110と、を備える温湿度計測装置100を用いる。
【0074】
第1の音波伝播路161は、第1の回転楕円弧の内面の一部を構成する第1の反射面221を備える第1の反射板201を備え、第2の音波伝播路162は、第2の回転楕円弧の内面の一部を構成する第2の反射面222を備える第2の反射板202を備える。送信部150は、第1の回転楕円弧の第1の焦点241a及び第2の回転楕円弧の第1の焦点242aの位置に配置されている。第1の受信部181は、第1の回転楕円弧の第2の焦点241bの位置に配置され、第2の受信部182は、第2の回転楕円弧の第2の焦点242bの位置に配置されている。
【0075】
温湿度計測方法は、放射ステップと、反射ステップと、受信ステップと、仮温度計算ステップと、湿度計算ステップと、実温度計算ステップとを備える。
【0076】
放射ステップは、送信部150から、第1の反射面221及び第2の反射面222に向けて音波260を放射させるステップである。反射ステップは、放射ステップにおいて放射した音波260を、第1の反射面221又は第2の反射面222で反射させるステップである。受信ステップは、反射ステップで反射した音波260を、第1の受信部181又は第2の受信部182で受信するステップである。
【0077】
仮温度計算ステップは、第1の音波伝播路161における音波260の伝播時間及び/又は第2の音波伝播路162における音波260の伝播時間に基づいて仮温度を計算するステップである。
【0078】
湿度計算ステップは、第1の音波伝播路161における音波260の減衰量及び第2の音波伝播路162における音波260の減衰量に基づいて湿度を計算するステップである。
【0079】
実温度計算ステップは、仮温度と湿度とに基づいて実温度を計算するステップである。
【0080】
実施形態1に係る温湿度計測方法によれば、反射面220が回転楕円弧の一部を構成しているので、送信部150から放射された音波260は、どの向きに向かって放射された音波でも、反射面220で反射して受信部180の位置に集まり、受信部180で受信することができる。これにより、送信部150から送信した音波260を受信部で直接受信する場合に比べ、効率よく音波260を受信することができる。この結果、温湿度を計測する環境が良好でない場合であっても、信号を検出することが可能であり、温湿度を正確に測定することができるようになる。
【0081】
2.温湿度計測装置(実施形態2)
次に、実施形態2に係る温湿度計測装置105について説明する。実施形態2に係る温湿度計測装置105は、実施形態1の温湿度計測装置100の機能に加え、風向及び風速を測定することができる。なお、実施形態2の温湿度計測装置105は、すでに説明した実施形態1に係る温湿度計測装置100と同じ構造により実現することができることから、実施形態1の説明で使用した
図1~
図3を使用して説明する。また、実施形態1と説明が重複する場合は、適宜説明を省略する。
【0082】
実施形態2に係る温湿度計測装置105は、
図1~
図3に示すように、測定部110と基台部310とを備える。測定部110は、送信部150と、第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166と、第1の受信部181~第6の受信部186とを備える。第1の音波伝播路161~第6の音波伝播路166は、それぞれ、第1の反射板201~第6の反射板206を備える。第1の反射板201~第6の反射板206は、それぞれ、回転楕円弧の内面の一部を構成し、音波260を反射させる第1の反射面221~第6の反射面226を備える。
【0083】
温湿度計測装置105は、第1の反射板201~第4の反射板204の中から任意の3つの反射板200を選択したときに、選択可能な3つの反射板200のすべての組み合わせにおいて、3つの反射板200は、それぞれの音波伝播路160における音波260の伝播方向を示す方向ベクトルが同一平面上に存在しないように配置されている。
【0084】
第1の反射板201~第4の反射板204の4つの反射板の中から任意の3つの反射板200を選択する選択方法として、4つの選択肢がある。第1の反射板201~第4の反射板204は、この4つの組み合わせ全てについて、選択された3つの反射板200が、それぞれの音波伝播路160における音波260の伝播方向を示す方向ベクトルが同一平面上に存在しないように配置されている。すなわち、選択された3つの反射板200は、それぞれの音波伝播路160における音波260の伝播方向を示す方向ベクトルを有する。ここで、3つの反射板200がそれぞれ有するベクトルが、同一平面上には存在しないという意味である。
【0085】
かかる構成を採用することにより、音波260の伝播方向が異なる音波伝播路160を伝播する音波260の伝播速度を測定することが可能になる。温湿度計測装置105を設置した場所に風が吹いている場合、音波伝播路160を伝播する音波260の伝播速度は、温湿度計測装置105が設置された場所に吹いている風向及び風速の影響を受ける。
【0086】
具体的には、温湿度計測装置105を設置した場所における風が、音波260の伝播方向に対して追い風に当たる場合は、音波260の伝播速度は大きくなり、向かい風に当たる場合は、音波260の伝播速度260は小さくなる。音波260の伝播方向が異なる3つの音波伝播路160について、音波260の伝播速度を測定することにより、温湿度計測装置105が設置された場所の、風向及び風速を計測することができる。
【0087】
なお、音波260の伝播時間の測定結果から風向及び風速を計算する方法は、公知の方法によることができる。
【0088】
ここで、風向及び風速は、3次元空間中で任意の向きと大きさを持つことができるから、3変数のベクトルとして取り扱う必要がある。そのため、温湿度計測装置105は、それぞれの音波伝播路160が立体的な3次元形状をしている。また、選択した3つの反射板200は、音波伝播路160における音波260の伝播方向のベクトルが同一平面内にないように配置されている必要がある。
【0089】
温湿度計測装置105は、4つの反射板200の中から任意の3つの反射板200を選択し、選択した3つの反射板200は、それぞれの音波伝播路160における前記音波の伝播方向を示す方向ベクトルが同一平面上に存在しないように配置されている。これにより、風向風速ベクトルを表す3変数を、計算により求めることができる。
【0090】
さらに、選択可能な3つの反射板200の全ての組み合わせにおいて、それぞれの音波伝播路における前記音波の伝播方向を示す方向ベクトルが同一平面上に存在しないように配置されているという条件を満たす。これにより、反射板200の組み合わせごとに風向及び風速を計測することができる。また、組み合わせごとに計測した風向及び風速を互いに補正することにより、誤差を軽減し、高い精度で風向及び風速を計測することが可能になる。
【0091】
また、実施形態2に係る温湿度計測装置105は、温湿度計測装置105を設置した場所に風が吹いている場合に、仮温度、湿度及び実温度を計測するとき、風向及び風速を考慮して、仮温度、湿度及び実温度の計測精度を高めることができる。
【0092】
すなわち、上記した実施形態1に係る温湿度計測装置100においては、温湿度計測装置100を設置した場所に風が吹いている場合に、仮温度、湿度及び実温度を正確に計測できない場合がある。例えば、実施形態1に係る温湿度計測装置100により仮温度を測定する場合に、風の影響を考慮して、仮温度を計測することはできない。
【0093】
一方、実施形態2の温湿度計測装置105は、温湿度計測装置105が設置された場所に風が吹いている場合であっても、風向及び風速を測定することができるので、風の影響を考慮して、仮温度、湿度及び実温度を補正することができる。この結果、高い精度で仮温度、湿度及び実温度を計測することができる。
【0094】
実施形態2に係る温湿度計測装置105は、実施形態1に係る温湿度計測装置100が奏する効果に加え、温湿度計測装置105が設置された場所の、風向及び風速を計測することができる。さらに、温湿度計測装置105が設置された場所に風が吹いている場合であっても、風の影響を考慮して、仮温度、湿度及び実温度を高い精度で計測することができる。
【符号の説明】
【0095】
100…温湿度計測装置、105…温湿度計測装置、110…測定部、150…送信部、160…音波伝播路、161…第1の音波伝播路、162…第2の音波伝播路、163…第3の音波伝播路、164…第4の音波伝播路、165…第5の音波伝播路、166…第6の音波伝播路、180…受信部、181…第1の受信部、182…第2の受信部、183…第3の受信部、184…第4の受信部、185…第5の受信部、186…第6の受信部、201…第1の反射板、202…第2の反射板、203…第3の反射板、204…第4の反射板、205…第5の反射板、206…第6の反射板、220…反射面、221…第1の反射面、222…第2の反射面、223…第3の反射面、224…第4の反射面、225…第5の反射面、226…第6の反射面、241,242,243,244,245,246…楕円回転体、241a,242a,243a,244a,245a,246a…楕円回転体の第1の焦点、241b,242b,243b,244b,245b,246b…楕円回転体の第2の焦点、260…音波、310…基台部、315…回動部、317‥載置台、320…制御部、330…演算部