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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145861
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F25B1/00 311Z
F25B1/00 331E
F25B1/00 396G
F25B1/00 396Z
F25B1/00 396A
F25B1/00 396U
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058404
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田林 保則
(72)【発明者】
【氏名】安尾 晃一
(72)【発明者】
【氏名】阪口 栄穂
(57)【要約】
【課題】圧縮行程を経た冷媒が湿り状態となることを回避することである。
【解決手段】制御部(80)は、圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)に送るインジェクション動作を実行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(20)と、凝縮器(30,32)と、膨張機構(31)と、蒸発器(32,30)とを有するとともに、冷媒が循環することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路(12)と、
前記冷媒回路(12)を制御する制御部(80)とを備え、
前記冷媒回路(12)は、
前記凝縮器(30,32)で凝縮した液冷媒が流れる液流路(28)と、
前記液流路(28)と前記圧縮機(20)の圧縮室(22a)とを連通させるインジェクション流路(51)と、前記液流路(28)の冷媒と前記インジェクション流路(51)の冷媒とを熱交換させる熱交換器(52)と、前記インジェクション流路(51)における前記熱交換器(52)の上流側に設けられる減圧弁(53)とを有するインジェクション回路(50)とを備え、
前記制御部(80)は、前記圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、前記インジェクション流路(51)の冷媒を前記圧縮機(20)に送るインジェクション動作を実行させる
冷凍装置。
【請求項2】
前記インジェクション回路(50)は、
前記熱交換器(52)を流出した冷媒が流れる主流路(54)と、
前記主流路(54)と前記圧縮機(20)の圧縮室(22a)の圧縮途中とを繋ぐ中間流路(55)と、
前記主流路(54)と前記圧縮機(20)の圧縮室(22a)の吸入側とを繋ぐ吸入流路(56)と、
前記主流路(54)と前記中間流路(55)とを連通させる第1状態と、該主流路(54)と前記吸入流路(56)とを連通させる第2状態とに切り換わる切換機構(60)とを有し、
前記制御部(80)は、
前記切換機構(60)を第1状態とし、前記圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、前記インジェクション流路(51)の冷媒を前記圧縮機(20)の前記圧縮室(22a)の圧縮途中に送る第1インジェクション動作と、
前記切換機構(60)を第2状態とし、前記圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、前記インジェクション流路(51)の冷媒を前記圧縮機(20)の前記圧縮室(22a)の吸入側に送る第2インジェクション動作とを実行させる
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記制御部(80)は、
前記冷媒回路(12)の高低差圧を示す指標が所定値より大きい場合に、前記第1インジェクション動作を実行させ、
前記高低差圧を示す指標が所定値より小さい場合に、前記第2インジェクション動作を実行させる
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記高低差圧を示す指標は、前記蒸発器(32,30)が設置される室外の空気の温度、前記圧縮機(20)の回転数、または前記凝縮器(30,32)の負荷に関する指標を含む
請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記制御部(80)は、
前記インジェクション動作において、吐出過熱度が所定の目標値に近づくように、前記減圧弁(53)の開度を制御する
請求項1~4のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記冷媒回路(12)の前記冷媒は、45℃に相当する飽和圧力が2MPa以下である
請求項1~4のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記冷媒回路(12)の前記冷媒は、プロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234fy)のいずれか1種の冷媒からなる単一冷媒、または該いずれか1種の冷媒を含む混合冷媒である
請求項1~4のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルを行う冷凍装置が知られている。特許文献1の冷凍装置は、給湯装置に適用される。給湯装置の熱源装置には、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を有する冷媒回路が設けられる。冷媒回路では、圧縮機で圧縮した冷媒が、凝縮器(放熱器)で凝縮する。凝縮した冷媒は、膨張弁で減圧され、蒸発器で蒸発した後、圧縮機に吸い込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-81132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒回路に用いられる冷媒によっては、圧縮機での圧縮後の冷媒がガス単相状態にならない、あるいはガス単相状態の冷媒の過熱度がほとんどないことがある。これは、冷媒の特性に起因する。具体的には、冷媒は、モリエル線図上での圧縮行程での等エントロピー線における飽和曲線側への傾きが大きい特性を有することがある。このようにして圧縮行程を経た冷媒は、いわゆる湿り状態となり、圧縮機が故障してしまうという問題があった。特に、冷凍サイクルでの駆動圧力が比較的低い、いわゆる低圧冷媒を用いる場合、このような問題が顕著になる。
【0005】
本開示の目的は、圧縮行程を経た冷媒が湿り状態となることを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、冷凍装置を対象とする。冷凍装置は、圧縮機(20)と、凝縮器(30,32)と、膨張機構(31)と、蒸発器(32,30)とを有するとともに、冷媒が循環することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路(12)と、前記冷媒回路(12)を制御する制御部(80)とを備える。冷媒回路(12)は、前記凝縮器(30,32)で凝縮した液冷媒が流れる液流路(28)と、前記液流路(28)と前記圧縮機(20)の圧縮室(22a) とを連通させるインジェクション流路(51)と、前記液流路(28)の冷媒と前記インジェクション流路(51)の冷媒とを熱交換させる熱交換器(52)と、前記インジェクション流路(51)における前記熱交換器(52)の上流側に設けられる減圧弁(53)とを有するインジェクション回路(50)とを備える。制御部(80)は、前記圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、前記インジェクション流路(51)の冷媒を前記圧縮機(20)に送るインジェクション動作 を実行させる。
【0007】
第1の態様では、制御部(80)がインジェクション回路(50)を制御することで、インジェクション動作が行われる。インジェクション動作において、熱交換器(52)では、液流路(28)の液冷媒と、インジェクション流路(51)において減圧弁(53)で減圧された後の冷媒とが熱交換する。これにより、インジェクション流路(51)の液冷媒は過熱状態のガス冷媒となる。このガス冷媒を圧縮機(20)に送ることで、圧縮行程における冷媒のエンタルピが増大する。これにより、圧縮後の冷媒の吐出過熱度を増大できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記インジェクション回路(50)は、前記熱交換器(52)を流出した冷媒が流れる主流路(54)と、前記主流路(54)と前記圧縮室(22a)の圧縮途中とを繋ぐ中間流路(55)と、前記主流路(54)と前記圧縮室(22a)の吸入側とを繋ぐ吸入流路(56)と、前記主流路(54)と前記中間流路(55)とを連通させる第1状態と、該主流路(54)と前記吸入流路(56)とを連通させる第2状態とに切り換わる切換機構(60)とを有する。前記制御部(80)は、前記切換機構(60)を第1状態とし、前記圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、前記インジェクション流路(51)の冷媒を前記圧縮機(20)の前記圧縮途中に送る第1インジェクション動作と、前記切換機構(60)を第2状態とし、前記圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、前記インジェクション流路(51)の冷媒を前記圧縮機(20)の前記圧縮途中に送る第2インジェクション動作とを実行させる。
【0009】
第2の態様では、制御部(80)が切換機構(60)を制御することにより、第1インジェクション動作と、第2インジェクション動作とを切り換えることができる。第1インジェクション動作では、熱交換器(52)で過熱状態となったガス冷媒が、中間流路(55)を介して圧縮室(22a)の圧縮途中に送られる。これにより、圧縮行程における冷媒のエンタルピが増大し、圧縮後の冷媒の吐出過熱度を増大できる。第2インジェクション動作では、熱交換器(52)で過熱状態となったガス冷媒が、吸入流路(56)を介して圧縮室(22a)の吸入側に送られる。これにより、圧縮行程における冷媒のエンタルピが増大し、圧縮後の冷媒の吐出過熱度を増大できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記制御部(80)は、前記冷媒回路(12)の高低差圧を示す指標が所定値より大きい場合に、前記第1インジェクション動作を実行させ、前記高低差圧を示す指標 が所定値より小さい場合に、前記第2インジェクション動作を実行させる。
【0011】
第3の態様では、冷媒回路(12)の高低差圧が大きい場合には、第1インジェクション動作により、中間圧のガス冷媒を圧縮室(22a)の圧縮途中に送る。これにより、圧縮後の冷媒の吐出過熱度を増大できる。一方、冷媒回路(12)の高低差圧が小さい場合には、冷媒回路(12)の高圧と中間圧との差が小さくなる。このため、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)に送るための差圧を十分に確保できない。そこで、制御部(80)は、冷媒回路(12)の高低差圧が小さい場合には、第2インジェクション動作を実行させる。第2インジェクション動作は、冷媒回路(12)の高圧と低圧との差圧により、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)に送る。このため、このような条件下においても、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)に送ることができ、圧縮後の冷媒の吐出過熱度を増大できる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様において、前記高低差圧を示す指標は、前記蒸発器(32,30)が設置される室外の空気の温度、前記圧縮機(20)の回転数、または前記凝縮器(30,32)の負荷に関する指標を含む。
【0013】
第4の態様では、制御部(80)は、蒸発器(32,30)が設置される室外の空気の温度、圧縮機(20)の回転数、または凝縮器(30,32)の負荷に関する指標を用いて、高低差圧が所定値より大きいか小さいかを判定する。
【0014】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記制御部(80)は、前記インジェクション動作において、吐出過熱度が所定の目標値に近づくように、前記減圧弁(53)の開度を制御する。
【0015】
第5の態様では、減圧弁(53)の開度を制御することにより、圧縮機(20)から吐出される冷媒の吐出過熱度が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記冷媒回路(12)の冷媒は、45℃に相当する飽和圧力が2MPa以下である。
【0017】
第6の態様では、冷媒が、45℃に相当する飽和圧力が2MPa以下であるので、圧縮後の冷媒が特に湿り状態になり易くなる。これに対し、インジェクション動作を行うことで、圧縮後の冷媒の過熱度を増大できる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記冷媒回路(12)の前記冷媒は、プロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234fy) のいずれか1種の冷媒からなる単一冷媒、または該いずれか1種の冷媒を含む混合冷媒である。
【0019】
第7の態様の冷媒を用いると、圧縮後の冷媒が特に湿り状態になり易くなる。これに対し、インジェクション動作を行うことで、圧縮後の冷媒の過熱度を増大できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る給湯装置の配管系統図である。
図2図2は、給湯装置の主要機器を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る給湯装置の配管系統図であり、第1インジェクション動作の冷媒の流れを付している。
図4図4は、実施形態に係る給湯装置の配管系統図であり、第2インジェクション動作の冷媒の流れを付している。
図5図5は、第1インジェクション動作および第2インジェクション動作の切り換えを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0022】
(1)冷凍装置の概要
図1に示す本実施形態の冷凍装置は、給湯装置(10)に適用される。給湯装置(10)は、一般家屋などで利用される温水を生成する。給湯装置(10)は、熱源ユニット(11)を有する。熱源ユニット(11)は、室外に配置される。熱源ユニット(11)には、冷媒回路(12)が設けられる。冷媒回路(12)は、冷媒が循環することで冷凍サイクルを行う。冷媒回路(12)は、主な機器として、圧縮機(20)、利用側熱交換器(30)、膨張弁(31)、および熱源側熱交換器(32)を有する。冷媒回路(12)は、四方切換弁(33)、ブリッジ回路(40)、およびインジェクション回路(50)を有する。
【0023】
(1-1)圧縮機
圧縮機(20)は、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(20)は、例えばスクロール圧縮機で構成される。圧縮機(20)は、ケーシング(21)と、ケーシング(21)内に収容される圧縮機構(22)、電動機(23)、及び駆動軸(24)を有する。圧縮機構(22)の内部には、冷媒を圧縮する圧縮室(22a)が形成される。圧縮機構(22)は、駆動軸(24)を介して電動機(23)と連結する。電動機(23)によって駆動軸(24)が回転されると、圧縮機構(22)が駆動される。その結果、吸入管(25)から圧縮機構(22)に冷媒が吸い込まれ、圧縮機構(22)で冷媒が圧縮される。圧縮機構(22)から吐出された冷媒は、ケーシング(21)の内部空間から吐出管(26)を介して冷媒回路(12)に流出する。圧縮機(20)は、ケーシング(21)内が吐出冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム式である。吸入管(25)には、液冷媒を貯留するアキュムレータ(27)が設けられる。
【0024】
(1-2)利用側熱交換器
利用側熱交換器(30)は、第1流路(30a)と第2流路(30b)とを有する熱交換器である。利用側熱交換器(30)は、例えばプレート型熱交換器で構成される。利用側熱交換器(30)の第1流路(30a)は、冷媒回路(12)に接続する。利用側熱交換器(30)の第2流路(30b)は、水回路(13)に接続する。水回路(13)は、給湯タンク(図示省略)と接続する。利用側熱交換器(30)は、第1流路(30a)の冷媒と、第2流路(30b)の水とを熱交換させる水熱交換器である。具体的には、利用側熱交換器(30)では、第1流路(30a)の冷媒によって、第2流路(30b)の水が加熱される。加熱された水は、水回路(13)を介して給湯タンクに貯留される。給湯タンクの温水は、浴槽、シャワーなどの利用対象に適宜供給される。
【0025】
(1-3)膨張弁
膨張弁(31)は、冷媒を減圧する減圧機構である。膨張弁(31)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成される。
【0026】
(1-4)熱源側熱交換器
熱源側熱交換器(32)は、空気と冷媒とを熱交換させる空気熱交換器である。熱源側熱交換器(32)は、フィンアンドチューブ式である。熱源側熱交換器(32)は、その伝熱管を流れる冷媒と、伝熱管の周囲を流れる室外空気とを熱交換させる。熱源側熱交換器(32)の近傍には、室外ファン(34)が配置される。室外ファン(34)は、熱源側熱交換器(32)を通過する空気を搬送する。室外ファン(34)は、プロペラファンで構成される。
【0027】
(1-5)四方切換弁
四方切換弁(33)は、冷媒回路(12)の冷媒の循環方向を正逆反転させる流路切換機構である。四方切換弁(33)は第1状態と第2状態とに切り換わる。四方切換弁(33)が第1状態になると、冷媒回路(12)で第1冷凍サイクルが行われる。四方切換弁(33)が第2状態になると、冷媒回路(12)で第2冷凍サイクルが行われる。第1冷凍サイクルは、温水を再生するための加熱サイクルである。第2冷凍サイクルは、熱源側熱交換器(32)を除霜するためのデフロストサイクルである。
【0028】
四方切換弁(33)は、第1ポート(33a)と第2ポート(33b)と第3ポート(33c)と第4ポート(33d)とを有する。第1ポート(33a)は、圧縮機(20)の吐出側と吐出管(26)を介して接続される。第2ポート(33b)は、圧縮機の吸入側と吸入管(25)を介して接続される。第3ポート(33c)は、利用側熱交換器(30)の第1流路(30a)のガス端部と連通する。第4ポート(33d)は、熱源側熱交換器(32)の液端部と連通する。第1状態(図1の実線で示す状態)の四方切換弁(33)は、第1ポート(33a)と第3ポート(33c)とを連通させ且つ第2ポート(33b)と第4ポート(33d)とを連通させる。第2状態(図1の破線で示す状態)の四方切換弁(33)は、第1ポート(33a)と第4ポート(33d)とを連通させ且つ第2ポート(33b)と第3ポート(33c)とを連通させる。
【0029】
(1-6)液流路
冷媒回路(12)は、凝縮器(30,32)で凝縮した液冷媒が流れる液流路(28)を有する。液流路(28)の一端は、利用側熱交換器(30)の液端部と接続する。液流路(28)の他端は、熱源側熱交換器(32)のガス端部と接続する。
【0030】
(1-7)ブリッジ回路
ブリッジ回路(40)は、液流路(28)に接続される。ブリッジ回路(40)は、冷媒の流れを一方向のみに規制する回路である。ブリッジ回路(40)は、第1管(41)、第2管(42)、第3管(43)、および第4管(44)がブリッジ状に接続されて構成される。具体的には、第1管(41)の流出端と第2管(42)の流出端とは、液流路(28)の流入端と接続する。第3管(43)の流入端と、第4管(44)の流入端とは、液流路(28)の流出端と接続する。第1管(41)の流入端と、第3管(43)の流入端とは、利用側熱交換器(30)の第1流路(30a)の液端部と連通する。第2管(42)の流入端と、第4管(44)の流出端とは、熱源側熱交換器(32)の液端部と連通する。
【0031】
第1管(41)には第1逆止弁(CV1)が、第2管(42)には第2逆止弁(CV2)が、第3管(43)には第3逆止弁(CV3)が、第4管(44)には第4逆止弁(CV4)がそれぞれ設けられる。第1逆止弁(CV1)、第2逆止弁(CV2)、第3逆止弁(CV3)、および第4逆止弁(CV4)は、図1の矢印で示す方向の冷媒の流れを許容し、その逆方向の冷媒の流れを禁止する。
【0032】
(1-8)インジェクション回路
インジェクション回路(50)は、液流路(28)の冷媒を圧縮機(20)に導入するための回路である。インジェクション回路(50)は、インジェクション流路(51)と、熱交換器である内部熱交換器(52)と、減圧弁(53)とを有する。
【0033】
インジェクション流路(51)は、液流路(28)と圧縮機(20)の圧縮室(22a)とを連通させる。具体的には、インジェクション流路(51)の一端は、液流路(28)におけるブリッジ回路(40)と膨張弁(31)の間に接続する。インジェクション流路(51)の他端側は2つに分岐する。2つの分岐部の一方は、圧縮室(22a)の圧縮途中に直に連通し、他方は吸入管(25)を介して圧縮室(22a)に連通する。
【0034】
より詳細には、インジェクション流路(51)は、主流路(54)と、中間流路(55)と、吸入流路(56)とを有する。主流路(54)の一端は、液流路(28)に接続する。主流路(54)の中途部には、内部熱交換器(52)の第3流路(52a)が接続する。主流路(54)の他端には、中間流路(55)と吸入流路(56)とが接続する。主流路(54)は、内部熱交換器(52)を流出した冷媒が流れる。中間流路(55)は、主流路(54)と圧縮室(22a)の圧縮途中とを繋ぐ。吸入流路(56)は、主流路(54)と圧縮室(22a)の吸入側とを繋ぐ。具体的には、吸入流路(56)は、主流路(54)と吸入管(25)とを繋ぐ。
【0035】
内部熱交換器(52)は、第3流路(52a)と第4流路(52b)とを有する熱交換器である。内部熱交換器(52)は、例えばプレート型熱交換器で構成される。第3流路(52a)は、インジェクション流路(51)の中途部、具体的には主流路(54)の中途部に接続する。第3流路(52a)は、主流路(54)における減圧弁(53)よりも下流側に位置する。第4流路(52b)は、液流路(28)の中途部に接続する。第4流路(52b)は、液流路(28)においてブリッジ回路(40)の下流側に位置する。第4流路(52b)は、液流路(28)においてインジェクション流路(51)の接続部よりも上流側に位置する。内部熱交換器(52)は、第3流路(52a)の冷媒と、第4流路(52b)の冷媒とを熱交換させる。具体的には、内部熱交換器(52)では、第3流路(52a)の冷媒によって、第4流路(52b)の冷媒が加熱される。第3流路(52a)では、液冷媒の過冷却度が増大する。第4流路(52b)では、液冷媒が蒸発し、冷媒の過熱度が増大する。
【0036】
減圧弁(53)は、主流路(54)に設けられる。減圧弁(53)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成される。減圧弁(53)は、主流路(54)を流れる液冷媒を減圧する。
【0037】
インジェクション回路(50)は、切換機構(60)を有する。切換機構(60)は、主流路(54)と中間流路(55)とを連通させる第1状態と、主流路(54)と吸入流路(56)とを連通させる第2状態とに切り換わる。本実施形態の切換機構(60)は、第1開閉弁(61)と、第2開閉弁(62)とで構成される。第1開閉弁(61)および第2開閉弁(62)は、電磁開閉弁である。第1開閉弁(61)は、中間流路(55)に設けられる。第2開閉弁(62)は、吸入流路(56)に設けられる。第1開閉弁(61)が開き、第2開閉弁(62)が閉じることで、主流路(54)と中間流路(55)とが連通し、主流路(54)と吸入流路(56)が遮断される第1状態となる。第1開閉弁(61)が閉じ、第2開閉弁(62)が開くことで、主流路(54)と中間流路(55)とが遮断され、主流路(54)と吸入流路(56)とが連通する第2状態となる。
【0038】
吸入流路(56)には、第2開閉弁(62)の下流側に減圧機構であるキャピラリーチューブ(63)が設けられる。
【0039】
(1-9)センサ
図1および図2に示すように、給湯装置(10)は、複数のセンサを備える。複数のセンサは、吐出温度センサ(71)と、吐出圧力センサ(72)と、吸入圧力センサ(73)と、吸入温度センサ(74)と、室外温度センサ(75)と、水温度センサ(76)とを含む。
【0040】
吐出温度センサ(71)は、吐出管(26)に設けられる。吐出温度センサ(71)は、圧縮機(20)から吐出される冷媒の温度を検出する。吐出圧力センサ(72)は、吐出管(26)に設けられる。吐出圧力センサ(72)は、冷媒回路(12)の高圧ガスラインの高圧圧力を検出する。吸入温度センサ(74)は、吸入管(25)に設けられる。吸入温度センサ(74)は、圧縮機(20)に吸入される冷媒の温度を検出する。吸入圧力センサ(73)は、吸入管(25)に設けられる。吸入圧力センサ(73)は、低圧ガスラインの低圧圧力を検出する。室外温度センサ(75)は、室外に設置される。室外温度センサ(75)は、室外空気の温度を検出する。水温度センサ(76)は、水回路(13)に設けられる。具体的には、例えば水温度センサ(76)は、水回路(13)における第2流路(30b)の下流側に配置される。
【0041】
図2に示すように、給湯装置(10)は、圧縮機(20)の回転数を計測する回転数検知部(77)を備える。回転数検知部(77)は、例えば電動機(23)の電流値やトルクなどを用いて、圧縮機(20)の回転数を求める。
【0042】
(1-10)制御部
給湯装置(10)は、制御部(80)を有する。制御部(80)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0043】
制御部(80)は、給湯装置(10)の動作、冷媒回路(12)の動作、および各機器を制御する。具体的には、制御部(80)は、圧縮機(20)の運転および停止と、圧縮機(20)の回転数と、膨張弁(31)の開度と、四方切換弁(33)の状態と、室外ファン(34)の運転および停止と、室外ファン(34)の回転数と、減圧弁(53)の開度とを制御する。制御部(80)は、切換機構(60)の状態、具体的には、第1開閉弁(61)の開閉状態、および第2開閉弁(62)の開閉状態を制御する。制御部(80)には、上述した複数のセンサの検出値が入力される。
【0044】
(1-11)操作部
給湯装置(10)は、操作部()を有する。操作部は、例えばリモートコントローラで構成される。オペレータは、操作部()を操作することで、給湯装置(10)の運転や設定を変更する。オペレータは、操作部()を操作することにより、水回路(13)の水の目標温度を設定できる。
【0045】
(2)冷媒
本実施形態の冷媒回路(12)には、いわゆる低圧冷媒が用いられる。低圧冷媒は、45℃に相当する飽和圧力が2MPa以下であることが好ましい。低圧冷媒としては、プロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234fy) のいずれか1種の冷媒からなる単一冷媒、またはこれらのいずれか1種の冷媒を含む混合冷媒が用いられる。混合冷媒は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234fy)と、ジフルオロメタン(R32)との2種からなる冷媒で有ることがあってもよい。混合冷媒は、78.5重量%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234fy)と、21.5重量%のジフルオロメタン(R32)との2種からなる冷媒(R454C)であってもよい。
【0046】
(3)運転動作
給湯装置(10)の運転動作について説明する。給湯装置(10)は、加熱運転とデフロスト運転とを行う。加熱運転は、利用側熱交換器(30)によって水を加熱する運転である。加熱運転では、利用側熱交換器(30)が凝縮器(放熱器)として機能し、熱源側熱交換器(32)が蒸発器として機能する第1冷凍サイクルが行われる。デフロスト運転は、熱源側熱交換器(32)に付着した霜を融かす運転である。デフロスト運転では、熱源側熱交換器(32)が凝縮器(放熱器)として機能し、熱源側熱交換器(32)が蒸発器として機能する第2冷凍サイクルが行われる。
【0047】
加熱運転の基本的な冷媒の流れについて図3を参照しながら説明する。加熱運転において、制御部(80)は、圧縮機(20)および室外ファン(34)を運転させ、四方切換弁(33)を第1状態とし、膨張弁(31)の開度を調節する。圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、利用側熱交換器(30)の第1流路(30a)を流れる。利用側熱交換器(30)では、第1流路(30a)の冷媒が、第2流路(30b)の水に放熱する。その結果、第2流路(30b)の水が加熱される。利用側熱交換器(30)で凝縮した冷媒は、第1管(41)を通過し、液流路(28)を流れる。液流路(28)の冷媒は、膨張弁(31)で減圧された後、第4管(44)を通過し、熱源側熱交換器(32)を流れる。熱源側熱交換器(32)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。熱源側熱交換器(32)で蒸発した冷媒は、圧縮機(20)に吸入される。
【0048】
(4)低圧冷媒の課題
上述したように、冷媒回路(12)の冷媒は、いわゆる低圧冷媒である。このような冷媒は、圧縮機(20)で圧縮された後の冷媒が過熱状態になりにくく、過熱状態になったとしても過熱度が大きくなりにくい特性を有する。つまり、このような冷媒は、モリエル線図上での圧縮行程における等エントロピー線の傾きが大きく、等エントロピー線が乾き飽和蒸気線に沿うような特性を有する。このため、圧縮機(20)で圧縮された冷媒が、気液二相状態になったり、ガス状態であっても過熱度が極めて低くなったりすることがある。このようにして、冷媒がいわゆる湿り状態になることで、圧縮機(20)が故障してしまうという問題が生じる。
【0049】
(5)インジェクション動作
本実施形態では、上記の課題を解決するために、インジェクション動作を行う。インジェクション動作は、第1インジェクション動作と第2インジェクション動作とがある。第1インジェクション動作は、中間圧の冷媒を圧縮室(22a)の圧縮途中に送る動作である。第2インジェクション動作は、低圧の冷媒を圧縮室(22a)の吸入側に送る動作である。
【0050】
(5-1)第1インジェクション動作
図3に示すように、加熱運転では、第1インジェクション動作が行われる。第1インジェクション動作では、制御部(80)が切換機構(60)を第1状態とする。具体的には、制御部(80)は、第1開閉弁(61)を開状態とし、第2開閉弁(62)を閉状態とする。制御部(80)は、減圧弁(53)の開度を調節する。
【0051】
第1インジェクション動作では、利用側熱交換器(30)で凝縮した後の冷媒の一部が、インジェクション流路(51)に流入する。インジェクション流路(51)の冷媒は、減圧弁(53)で中間圧にまで減圧された後、内部熱交換器(52)の第3流路(52a)を流れる。内部熱交換器(52)では、第3流路(52a)を流れる中間圧の液冷媒と、第4流路(52b)を流れる高圧の液冷媒とが熱交換する。その結果、第3流路(52a)の冷媒が蒸発する。第3流路(52a)で蒸発した後のガス冷媒は、中間流路(55)を流れ、圧縮機(20)の圧縮室(22a)の圧縮途中に送られる。
【0052】
このように、内部熱交換器(52)で蒸発した冷媒を圧縮室(22a)の圧縮途中に送ることで、圧縮室(22a)の冷媒の過熱度を増大できる。その結果、圧縮機(20)から吐出される冷媒の過熱度が大きくなる。これにより、圧縮機(20)で圧縮された冷媒が、いわゆる湿り状態になることを抑制でき、圧縮機(20)の故障を抑制できる。
【0053】
第1インジェクション動作では、中間圧の冷媒を圧縮室(22a)に送るので、低圧の冷媒を圧縮室(22a)に送る場合と比較して、圧縮機構(22)の仕事量を減らすことができる。第1インジェクション動作では、後述する第2インジェクション動作と異なり、熱源側熱交換器(32)を流れる冷媒の流量が減ることはないので、熱源側熱交換器(32)の吸熱量も十分に確保できる。
【0054】
(5-2)第2インジェクション動作
図4に示すように、加熱運転では、第2インジェクション動作が行われる。第2インジェクション動作では、低圧の冷媒を圧縮室(22a)の吸入側に送る動作である。第2インジェクション動作では、制御部(80)が切換機構(60)を第2状態とする。具体的には、制御部(80)は、第1開閉弁(61)を閉状態とし、第2開閉弁(62)を開状態とする。制御部(80)は、減圧弁(53)の開度を調節する。
【0055】
第2インジェクション動作では、利用側熱交換器(30)で凝縮した後の冷媒の一部が、インジェクション流路(51)に流入する。インジェクション流路(51)の冷媒は、減圧弁(53)で低圧にまで減圧された後、内部熱交換器(52)の第4流路(52b)を流れる。内部熱交換器(52)では、第3流路(52a)を流れる低圧の液冷媒と、第4流路(52b)を流れる高圧の液冷媒とが熱交換する。その結果、第3流路(52a)の冷媒が蒸発する。第3流路(52a)で蒸発した後のガス冷媒は、吸入流路(56)および吸入管(25)を流れ、圧縮機(20)の圧縮室(22a)の吸入側に送られる。
【0056】
このように、内部熱交換器(52)で蒸発した冷媒を圧縮室(22a)の吸入側に送ることで、圧縮室(22a)の冷媒の過熱度を増大できる。その結果、圧縮機(20)から吐出される冷媒の過熱度が大きくなる。これにより、圧縮機(20)で圧縮された冷媒が、いわゆる湿り状態になることを抑制でき、圧縮機(20)の故障を抑制できる。
【0057】
第2インジェクション動作では、高圧と低圧の差圧により、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)に吸入させる。このため、冷媒を導入するための差圧を十分に確保できる。その結果、高低差圧が低い条件下においても、液流路(28)の液冷媒を圧縮機(20)に確実に送ることができる。
【0058】
(5-3)インジェクション動作の切り換え、および減圧弁の制御
加熱運転では、制御部(80)は、冷媒回路(12)の高低差圧を示す指標に基づいて第1インジェクション動作と第2インジェクション動作とが切り換えて行われる。加熱運転では、制御部(80)は、吐出過熱度に基づいて減圧弁(53)の開度が調節される。この制御の詳細について図5を参照しながら説明する。
【0059】


ステップST11において、加熱運転を開始する指令が制御部(80)に入力されると、制御部(80)は、ステップST12において、制御部(80)は、加熱運転を実行させるように冷媒回路(12)を制御する。これにより、上述したように冷媒回路(12)では、第1冷凍サイクルが実行される。なお、ステップST12では、制御部(80)は、加熱運転の開始時において、第1開閉弁(61)および第2開閉部()と閉状態とする。これにより、加熱運転の開始時には、第1インジェクション動作や第2インジェクション動作は実行されない。なお、制御部(80)は、加熱運転の開始時において、第1開閉弁(61)を開状態とし、第2開閉弁(62)を閉状態としてもよい。この場合、加熱運転の開始時において、第1インジェクション動作が行われる。
【0060】
ステップST13において、制御部(80)は、冷媒回路(12)の高低差圧を示す指標を取得する。高低差圧を示す指標は、冷媒回路(12)の高圧に関する指標と、冷媒回路(12)の低圧に関する指標との差である。本実施形態では、高圧に関する指標として、高圧圧力センサ()の検出圧力が用いられる。低圧に関する指標として、低圧圧力センサ()の検出圧力が用いられる。つまり、制御部(80)は、高圧圧力センサ()で検出した高圧圧力(PH)と、低圧圧力センサ()で検出した低圧圧力(PL)との差(PH-PL)を、高低差圧を示す指標Nとして取得する。
【0061】
ステップST14において、指標Nが所定値より大きい場合、つまり、高低差圧が所定値より大きい場合、制御部(80)は、ステップST15において、第1インジェクション動作を実行させる。第1インジェクション動作は、冷媒回路(12)の中間圧と、冷媒回路(12)の低圧圧力(圧縮機(20)の吸入側の圧力)との差圧を用いて、液冷媒()の冷媒を圧縮機(20)に導入する。このため、高低差圧が十分に大きい条件では、中間圧と低圧との差圧も十分に確保でき、液冷媒()を十分に圧縮機(20)に導入できる。これにより、加熱運転のCOPなどの効率を向上できる。
【0062】
ステップST15において、指標Nが所定値より大きくない場合、つまり、高低差圧が所定値以下である場合、制御部(80)は、ステップST16において、第2インジェクション動作を実行させる。高低差圧が小さい条件下では、中間圧力と低圧圧力との差が小さくなる。特に、上述した低圧冷媒では、そもそもの高低差圧がかなり小さいので、中間圧力と低圧圧力との差圧もこれに応じて極めて小さくなる。このため、このような条件下では、第1インジェクション動作により、液流路(28)の冷媒を圧縮機(20)に十分に供給できない可能性がある。これに対し、第2インジェクション動作は、冷媒回路(12)の高圧と、冷媒回路(12)の低圧圧力(圧縮機(20)の吸入側の圧力)との差圧を用いて、液冷媒()の冷媒を圧縮機(20)に導入する。このため、高低差圧が小さい条件であっても、高圧と低圧との差圧により液冷媒()を十分に圧縮機(20)に導入できる。
【0063】
第1インジェクション動作や第2インジェクション動作が実行された後には、ステップST17~ST20において、制御部(80)は、圧縮機(20)から吐出された吐出過熱度に基づいて減圧弁(53)の開度を調整する。制御部(80)は、吐出温度センサ(71)で検出した吐出冷媒の温度から、吐出圧力センサ(72)で検出した圧力に相当する飽和温度を差し引くことで吐出過熱度を求める。
【0064】
ステップST17において、吐出過熱度が第1温度T1よりも低い場合、インジェクション動作を実行しても、未だ吐出過熱度が低い状態である。そこで、制御部(80)は、この条件が成立する場合、ステップST18において減圧弁(53)の開度を小さくする。その結果、内部熱交換器(52)では、第3流路(52a)で蒸発する冷媒の過熱度が大きくなるので、圧縮機(20)の吐出過熱度を増大できる。
【0065】
ステップST19において、吐出過熱度が第2温度T2よりも高い場合、吐出過熱度が過剰に高い。そこで、制御部(80)は、この条件が成立する場合、ステップステップST20において減圧弁(53)の開度を大きくする。その結果、内部熱交換器(52)では、第3流路(52a)で蒸発する冷媒の過熱度が小さくなるので、圧縮機(20)の吐出過熱度を低減できる。
【0066】
ステップST21において、制御部(80)に加熱運転を終了させる指令が入力されると、制御部(80)は、圧縮機(20)を停止させ、加熱運転を停止させる。
【0067】
(6)実施形態の効果
制御部(80)は、圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)に送るインジェクション動作を実行させる。これにより、圧縮機(20)の吐出過熱度が大きくなり易い冷媒を用いたとしても、吐出過熱度を低減でき、圧縮機(20)の故障を回避できる。その結果、給湯装置(10)の信頼性を確保できる。
【0068】
制御部(80)は、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)の圧縮室(22a)の圧縮途中に送る第1インジェクション動作と、圧縮機(20)の吐出過熱度を増大させるように、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)の圧縮室(22a)の吸入側に送る第2インジェクション動作とを実行させる。これにより、運転条件において、インジェクション流路(51)の冷媒を圧縮機(20)の圧縮途中に導入させたり、圧縮機(20)の吸入側に導入させたりできる。第1インジェクション動作では、給湯装置(10)の効率を向上できる。第2インジェクション動作では、冷媒を圧縮機(20)に導入するための差圧を十分に確保できる。
【0069】
制御部(80)は、冷媒回路(12)の高低差圧を示す指標が所定値より大きい場合に、第1インジェクション動作を実行させ、高低差圧を示す指標が所定値より小さい場合に、第2インジェクション動作を実行させる。このため、高低差圧を示す指標が所定値より大きい場合には、給湯装置(10)の効率を向上できる。高低差圧を示す指標が所定値より小さい場合には、冷媒を圧縮機(20)に確実に導入でき、給湯装置(10)の信頼性を確保できる。
【0070】
また、高低差圧が低い条件下において、仮に中間圧を用いて第1インジェクション動作を制御する場合、中間圧の絶対値が小さくなることに起因して第1インジェクション動作の制御性が悪化する可能性がある。これに対して、第2インジェクション動作を実行する場合には、このような不具合も回避できる。
【0071】
制御部(80)は、インジェクション動作において、吐出過熱度が所定の目標値に近づくように、減圧弁(53)の開度を制御する。これにより、吐出過熱度を十分に確保できるとともに、吐出過熱度が過剰に大きくなることも抑制できる。
【0072】
(7)その他の実施形態
以上の実施形態は、以下のような構成としてもよい。
【0073】
制御部(80)は、高低差圧を示す指標を圧力センサ以外のパラメータを用いて取得してもよい。高低差圧を示す指標としては、回転数検知部(77)で取得した圧縮機(20)の回転数や、電動機(23)の電流値を用いてもよい。高圧に関する指標としては、利用側熱交換器(30)の負荷を用いてもよい。この負荷としては、水温度センサ(76)で検出した水の温度の絶対値や、目標温度と水の温度との差を用いることができる。低圧に関する指標としては、室外温度センサ(75)で検出した室外空気の温度を用いてもよい。
【0074】
第1インジェクション動作と、第2インジェクション動作とを切り換えるための切換機構(60)は、三方弁であってもよい。あるいは、切換機構(60)は、1つのポートを閉塞した四方切換弁であってもよい。
【0075】
第2冷凍サイクル(デフロストサイクル)において、第1インジェクション動作や第2インジェクション動作を行ってもよい。制御部(80)は、給湯装置(10)(冷凍装置)の運転時において、第1インジェクション動作のみを実行してもよいし、第2インジェクション動作のみを実行してもよい。
【0076】
冷凍装置は、給湯装置(10)でなくてもよく、冷凍サイクルを行う装置であれば、他の装置であってもよい。他の装置としては、空気の温度を調節する空気調和装置、冷蔵庫や冷凍庫などの空気を冷却する冷却装置、海上コンテナやトレーラの庫内を冷却する輸送用冷凍装置などがある。
【0077】
制御部(80)は、冷凍装置とネットワークを介して接続されてもよい。この場合、制御部(80)は、中央管理装置やサーバ装置に設けられてもよい。
【0078】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0079】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上に説明したように、本開示は、冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0081】
12 冷媒回路
20 圧縮機
22a 圧縮室
28 液流路
30 利用側熱交換器(凝縮器、蒸発器)
31 膨張弁(膨張機構)
32 熱源側熱交換器(蒸発器、凝縮器)
50 インジェクション回路
51 インジェクション流路
52 内部熱交換器(熱交換器)
53 減圧弁
54 主流路
55 中間流路
56 吸入流路
60 切換機構
80 制御部
図1
図2
図3
図4
図5