(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145882
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】インバートブロックの配設時仮設備
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20241004BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20241004BHJP
E21D 11/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E21D11/04 Z
E21D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058440
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 修一
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】有川 健
(72)【発明者】
【氏名】石田 明浩
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155CA08
2D155GC06
2D155GD05
2D155KC06
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】一方の片側領域において、インバートブロックを、他方の片側領域での車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く縦横に連設配置して設置できるようにするインバートブロックの配設時仮設備を提供する。
【解決手段】道路トンネルの一方の片側領域55Aの作業ヤード71における、敷設領域72の敷き並べ始端部72bよりも後方側のスペース73に、ブロック吊込み用揚重機74が据え付けられている。敷設領域72における敷き並べ終端部72c側のスペース75に、ブロック設置用揚重機76が据え付けられている。敷設領域72に順次設置された、PCaコンクリートブロック20の上面部に配設されて、ブロック搬送コンベア装置77が、敷き並べ始端部72bからブロック設置用揚重機76に隣接する部分まで、継ぎ足し可能に延設して設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数車線の道路トンネルにおける横断方向の一方の片側領域に設営された作業ヤードで、他方の片側領域での車両の通行を可能にしたまま、インバート部覆工体を構成するPCaコンクリートブロックによる複数のインバートブロックを、インバート部に縦横に敷き並べて設置する工程において採用される、インバートブロックの配設時仮設備であって、
前記PCaコンクリートブロックは、前記インバート部覆工体の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部及び下面部を有する六面体形状のブロックとして形成されるようになっていると共に、隣接する前記PCaコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部に設置され、且つトンネルの軸方向にもまた、隣接する前記PCaコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、連設して配置されてインバート部に設置されるようになっており、
前記片側領域の作業ヤードにおいて、PCaコンクリートブロックが敷き並べられる敷設領域の底盤部が整地されている状態で、前記敷設領域の敷き並べ始端部よりも敷き並べ方向の後方側のスペースに、ブロック吊込み用揚重機が、移動可能に据え付けられていると共に、前記敷設領域における、前記敷き並べ始端部よりも敷き並べ方向の前方の敷き並べ終端部側のスペースに、ブロック設置用揚重機が移動可能に据え付けられており、且つ前記敷設領域における前記敷き並べ始端部から前方の敷き並べ終端部に向けて順次設置された、前記PCaコンクリートブロックの上面部に配設されて、前記敷き並べ始端部から前記ブロック設置用揚重機の作業半径内の領域まで延設して設けられる、ブロック搬送コンベア装置を備えており、該ブロック搬送コンベア装置は、前記PCaコンクリートブロックが前記敷き並べ始端部から前記敷き並べ終端部に向けて敷き並べ方向に順次設置されて行くのに伴って、敷き並べ方向に継足し可能に設けられている道路トンネルにおけるインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項2】
前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記ブロック吊込み用揚重機と前記ブロック設置用揚重機とが、運転席を対向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されている請求項1記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項3】
前記運転席を対向させた角度範囲は、運転席が互いに真正面を向いて対向する状態から、左右に60度以内で旋回する角度範囲となっている請求項2記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項4】
前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記敷設領域の前記敷き並べ始端部よりも敷き並べ方向の後方側のスペースには、前記ブロック吊込み用揚重機と離間して、補助ブロック吊込み用揚重機が、移動可能に据え付けられており、且つ該補助ブロック吊込み用揚重機の作業半径内の領域から、前記ブロック吊込み用揚重機の作業半径内の領域まで延設して、補助ブロック搬送コンベア装置が配設されている請求項1又は2記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項5】
前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記ブロック吊込み用揚重機と前記補助ブロック吊込み用揚重機とが、運転席を背向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されている請求項4記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項6】
前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記補助ブロック吊込み用揚重機よりも敷き並べ方向の後方側のスペースに、前記PCaコンクリートブロックを積み込んだ搬送車両が、敷き並べ方向の前方側に荷台を向けた状態で、敷き並べ方向に移動するようになっている請求項4記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項7】
前記ブロック吊込み用揚重機が、クローラクレーンとなっており、前記ブロック設置用揚重機が、バックフォーとなっている請求項1又は2記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【請求項8】
前記ブロック搬送コンベア装置が、ローラコンベアとなっており、前記PCaコンクリートブロックは、これらのローラコンベアに載置された状態で、延設方向に搬送されるようになっている請求項1又は2記載のインバートブロックの配設時仮設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバートブロックの配設時仮設備に関し、特に、複数車線の道路トンネルの一方の片側領域において、他方の片側領域での車両の通行を可能にしたまま、インバートブロックを敷き並べて設置する際に用いられる、インバートブロックの配設時仮設備に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルによる複数車線の道路トンネルは、岩盤等の自立していて比較的安定した地盤を掘削して形成されるトンネルであり、掘削された内壁面は、コンクリートやモルタルによる一次覆工や二次覆工によって覆われるようになっている。すなわち、山岳トンネルの内壁面は、例えば発破等を実施しながらトンネルを掘削した後に、好ましくはモルタルやコンクリートを吹付けて一次覆工を行うことにより防護層を形成してから、形成した一次覆工による防護層の内側に、例えば公知のトンネル覆工型枠を設置して、トンネルの側壁部から上部のアーチ形状部分に、コンクリートによる所定の厚さの覆工体を、二次覆工として形成する。さらに、先行して形成されたトンネルの両側の側壁部から上部のアーチ形状部分に至る覆工体における、一対の側壁部の下端部の受台部の間の部分に、底部のインバート部の覆工体を、トンネルの横断方向にコンクリートを用いて所定の厚さで一体として形成することにより、山岳トンネルの内壁面の全周を、二次覆工によって連続して覆うようになっている。
【0003】
また、山岳トンネルは、比較的安定した地盤を掘削して形成されるものであることから、例えば数十年以上前に構築されたトンネルは、インバート部の覆工体を省略して、トンネルの側壁部から上部のアーチ形状部分に至る領域にのみ、覆工体を形成して二次覆工を行っているものがある。このようなインバート部の覆工体を省略した山岳トンネルに対しては、例えば将来、底盤部の盤膨れ等による影響が生じないように、インバート部の覆工体を新たに形成することが検討されている。
【0004】
さらに、例えば数十年以上前に構築された既存の山岳トンネルに、インバート部の覆工体を新たに形成する場合、トンネルでの通行を全面的に遮断することなく、他方の片側領域での通行を確保したまま、一方の片側領域で工事を行なえるようにすることが望ましいことから、山岳トンネルのインバート部の覆工体を、トンネルの横断方向における片側領域毎に施工できるようにする技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の山岳トンネルにおけるインバートの形成方法では、一方の片側領域にインバート部覆工体を形成する複数のブロックを設置する作業に、多くの手間を要することから、本願出願人は、例えば特願2023-058334において、複数のブロックとして、インバート部覆工体の湾曲する横断面形状に沿った、湾曲する上面部及び下面部を有する六面体形状のブロックを用いることで、これらの複数のブロックを効率良く縦横に連設配置して設置できるようにする共に、隣接するこれらのブロックの間に保持された隙間部分に、充填固化材を充填して硬化させることによって、これらの複数のブロックを一体化させて、山岳トンネルによる道路トンネルの各々の片側領域に、インバート部覆工体を構成するインバート部構造体を、効率良く形成できるように技術を開示している。
【0007】
一方、複数車線の道路トンネルにおける横断方向の一方の片側領域において、複数の六面体形状のブロックを用いて、インバート部覆工体を構成するインバート部構造体を、他方の片側領域での通行を確保したまま形成しようとする場合、一方の片側領域に設営された作業ヤードは、横幅の狭い作業ヤードとなるため、他方の片側領域の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く施工できるようにするには、特に六面体形状のブロックを縦横に敷き並べる際に使用する重機等の配置や、ブロックの搬送手段等に関して、さらに改善を施す必要を生じることになる。
【0008】
本発明は、複数車線の道路トンネルにおける横断方向の一方の片側領域に設営された横幅の狭い作業ヤードにおいて、インバート部構造体を形成する複数の六面体形状のプレキャストコンクリート製のブロック(PCaコンクリートブロック)を、他方の片側領域での車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く縦横に連設配置して設置できるようにして、これらの縦横に連設配置されたPCaコンクリートブロックが一体化されたインバート部構造体を、効率良く施工できるようするインバートブロックの配設時仮設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数車線の道路トンネルにおける横断方向の一方の片側領域に設営された作業ヤードで、他方の片側領域での車両の通行を可能にしたまま、インバート部覆工体を構成するPCaコンクリートブロックによる複数のインバートブロックを、インバート部に縦横に敷き並べて設置する工程において採用される、インバートブロックの配設時仮設備であって、前記PCaコンクリートブロックは、前記インバート部覆工体の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部及び下面部を有する六面体形状のブロックとして形成されるようになっていると共に、隣接する前記PCaコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部に設置され、且つトンネルの軸方向にもまた、隣接する前記PCaコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、連設して配置されてインバート部に設置されるようになっており、前記片側領域の作業ヤードにおいて、PCaコンクリートブロックが敷き並べられる敷設領域の底盤部が整地されている状態で、前記敷設領域の敷き並べ始端部よりも敷き並べ方向の後方側のスペースに、ブロック吊込み用揚重機が、移動可能に据え付けられていると共に、前記敷設領域における、前記敷き並べ始端部よりも敷き並べ方向の前方の敷き並べ終端部側のスペースに、ブロック設置用揚重機が移動可能に据え付けられており、且つ前記敷設領域における前記敷き並べ始端部から前方の敷き並べ終端部に向けて順次設置された、前記PCaコンクリートブロックの上面部に配設されて、前記敷き並べ始端部から前記ブロック設置用揚重機の作業半径内の領域まで延設して設けられる、ブロック搬送コンベア装置を備えており、該ブロック搬送コンベア装置は、前記PCaコンクリートブロックが前記敷並べ始端部から前記敷き並べ終端部に向けて敷き並べ方向に順次設置されて行くのに伴って、敷き並べ方向に継足し可能に設けられている道路トンネルにおけるインバートブロックの配設時仮設備を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記ブロック吊込み用揚重機と前記ブロック設置用揚重機とが、運転席を対向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記運転席を対向させた角度範囲は、運転席が互いに真正面を向いて対向する状態から、左右に60度以内で旋回する角度範囲となっていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記敷設領域の前記敷き並べ始端部よりも敷き並べ方向の後方側のスペースには、前記ブロック吊込み用揚重機と離間して、補助ブロック吊込み用揚重機が、移動可能に据え付けられており、且つ該補助ブロック吊込み用揚重機の作業半径内の領域から、前記ブロック吊込み用揚重機の作業半径内の領域まで延設して、補助ブロック搬送コンベア装置が配設されていることが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記ブロック吊込み用揚重機と補助ブロック吊込み用揚重機とが、運転席を背向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記片側領域の作業ヤードにおいて、前記補助ブロック吊込み用揚重機よりも敷き並べ方向の後方側のスペースに、前記PCaコンクリートブロックを積み込んだ搬送車両が、敷き並べ方向の前方側に荷台を向けた状態で、敷き並べ方向に移動するようになっていることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記ブロック吊込み用揚重機が、クローラクレーンとなっており、前記ブロック設置用揚重機が、バックフォーとなっていることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明のインバートブロックの配設時仮設備は、前記ブロック搬送コンベア装置が、ローラコンベアとなっており、前記PCaコンクリートブロックは、これらのローラコンベアに載置された状態で、延設方向に搬送されるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の本発明のインバートブロックの配設時仮設備によれば、複数車線の道路トンネルにおける横断方向の一方の片側領域に設営された横幅の狭い作業ヤードにおいて、インバート部構造体を形成する複数の六面体形状のPCaコンクリートブロックを、他方の片側領域での車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く縦横に連設配置して設置できるようにして、これらの縦横に連設配置されたPCaコンクリートブロックが一体化されたインバート部構造体を、効率良く施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るインバートブロックの配設時仮設備を説明する、(a)は略示縦断面図、(b)は略示平面図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るインバートブロックの配設時仮設備を用いて、トンネルの横断方向におけるインバート部の両側にインバート部構造体が各々形成された、山岳トンネルを例示する略示横断面図である。
【
図3】インバート部構造体が、トンネルの横断方向にけるインバート部の全域に亘って両側に形成された状態を説明する、
図1をA-A方向から見た略示上面図である。
【
図4】他方の片側領域での車両の通行を可能にしたまま、一方の片側領域でPCaコンクリートブロックを敷き並べた状態を説明する山岳トンネルの略示横断面図である。
【
図5】本発明の好ましい一実施形態に係るインバートブロックの配設時仮設備を説明する要部平面図である。
【
図6】本発明の好ましい一実施形態に係るインバートブロックの配設時仮設備を説明する要部縦断面図である。
【
図7】トンネルの横断方向にける一方の片側領域に設けられた、インバート部構造体の略示上面図である。
【
図8】
図7のC-Cに沿った、充填固化材が充填される前の状態の略示断面図である。
【
図9】インバート部構造体を構成するPCaコンクリートブロックの斜視図である。
【
図10】(a)は、インバート部構造体を構成するPCaコンクリートブロックの上面図、(b)は(a)を右側から見た横断方向の側面図、(c)は(a)を正面側から見た軸方向の側面図である。
【
図11】ボルト挿通螺着孔を説明する、ボルト挿通螺着孔が形成された部分に沿ったPCaコンクリートブロックの横断方向の略示断面図である。
【
図12】受台部との間の隙間、隣接するPCaコンクリートブロックとの間の隙間、及六面体形状の下面部の下方の隙間に充填固化材が充填された状態を説明する略示断面図である。
【
図13】充填材注入孔及び開閉バルブを説明する、充填材注入孔が形成された部分に沿ったPCaコンクリートブロックの横断方向の略示断面図である。
【
図14】充填固化材の注入状況を説明するインバート部構造体の略示上面図である。
【
図15】PCaコンクリートブロックの中央部側の面に形成された凹凸の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)、(b)に示す本発明の好ましい一実施形態に係るインバートブロックの配設時仮設備70は、は、
図2に示す既設の山岳トンネル30において、トンネルの内壁面を覆うようにして先行して形成されている、両側の側壁部31aから上部のアーチ形状部分31bに至る領域の覆工体31と連続させて、山岳トンネル30の底盤部分30aにインバート部覆工体32を新たに形成する際に、当該インバート部覆工体32の構成部分となる左右両側のインバート部構造体10を、トンネルの横断方向の中心線Cを挟んで片側ずつ、各々形成する際に、インバート部構造体10を形成する複数の六面体形状のインバートブロックであるPCaコンクリートブロック20を、効率良く縦横に敷き並べてゆくための仮設の設備として用いられるものである。
【0020】
本実施形態では、山岳トンネル30は、例えば数十年前に構築されたトンネルとなっており、掘削の対象となる地盤が安定していたことから、施工時には、トンネル内壁面を覆う覆工体31は、両側の側壁部31aから上部のアーチ形状部分31bのみに形成されていたが、年月を経たことで、底盤部分30aの盤膨れ等による影響が懸念されるようになってきたため、
図3にも示すように、左右両側のインバート部構造体10による、新たなインバート部覆工体32を形成するようになっている。
【0021】
また、既存の山岳トンネル30に新たにインバート部覆工体32を形成する場合、トンネルでの通行を全面的に遮断することなく、通行路での通行を確保したまま、工事を行なえるようにすることが望ましいことから、本実施形態では、
図4に示すように、トンネルの横断方向における他方の片側領域55Bの通行路60での通行を確保したまま、一方の片側領域55Aにおいて、インバート部構造体10を形成する各工程が実施されるようになっている。本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70は、複数車線の道路トンネル30における横断方向の一方の片側領域55Aにおいて、インバート部覆工体32を構成するインバート部構造体10を、複数の六面体形状のPCaコンクリートブロック20を一体化して形成する際に、これらの複数の六面体形状のPCaコンクリートブロックを、他方の片側領域55Bでの車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く、縦横に連設配置して設置できるようにするための設備として設けられたものとなっている。
【0022】
そして、本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70は、
図1(a)、(b)に示すように、複数車線の山岳トンネルによる道路トンネル30における横断方向の一方の片側領域55Aに設営された作業ヤード71で、他方の片側領域55Bでの車両の通行を可能にしたまま、インバート部覆工体32を構成するPCaコンクリートブロック20による複数のインバートブロックを、インバート部33に縦横に敷き並べて設置する工程において採用される、仮設の設備であって、PCaコンクリートブロック20は、
図7~
図10(a)~(c)に示すように、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有する六面体形状のブロックとして形成されるようになっていると共に、隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置され、且つトンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置されてインバート部33に設置されるようになっている。
図5及び
図6にも示すように、片側領域55Aの作業ヤード71において、PCaコンクリートブロック20が敷き並べられる敷設領域72の底盤部72aが整地されている状態で、敷設領域72の敷き並べ始端部72bよりも敷き並べ方向Xの後方側のスペース73に、ブロック吊込み用揚重機74が、移動可能に据え付けられていると共に、敷設領域72における、敷き並べ始端部72bよりも敷き並べ方向Xの前方の敷き並べ終端部72c側のスペース75に、ブロック設置用揚重機76が移動可能に据え付けられている。且つ敷設領域72における敷き並べ始端部72bから前方の敷き並べ終端部72cに向けて順次設置された、PCaコンクリートブロック20の上面部に配設されて、敷き並べ始端部72bからブロック設置用揚重機76機の作業半径内の領域まで延設して設けられる、ブロック搬送コンベア装置77を備えており、このブロック搬送コンベア装置77は、PCaコンクリートブロック20が敷並べ始端部72bから敷き並べ終端部72cに向けて敷き並べ方向Xの順次設置されて行くのに伴って、敷き並べ方向Xに継足し可能に設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、好ましくは片側領域55Aの作業ヤード71において、ブロック吊込み用揚重機74とブロック設置用揚重機76とが、運転席を対向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されている。好ましくは運転席を対向させた角度範囲は、運転席が互いに真正面を向いて対向する状態から、左右に60度以内で旋回する角度範囲となっている。
【0024】
さらに、本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70では、
図1(a)、(b)に示すように、好ましくは片側領域55Aの作業ヤード71において、敷設領域72の敷き並べ始端部72bよりも敷き並べ方向Xの後方側のスペース73には、ブロック吊込み用揚重機74のさらに後方側にと離間して、補助ブロック吊込み用揚重機78が、移動可能に据え付けられており、且つこの補助ブロック吊込み用揚重機78の作業半径内の領域から、ブロック吊込み用揚重機74の作業半径内の領域まで延設して、補助ブロック搬送コンベア装置79が配設されている。
【0025】
さらにまた、本実施形態では、好ましくは片側領域55Aの作業ヤード71において、ブロック吊込み用揚重機74と補助ブロック吊込み用揚重機78とが、運転席を背向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されている。また好ましくは片側領域55Aの作業ヤード71において、補助ブロック吊込み用揚重機78よりも敷き並べ方向Xの後方側のスペースに、PCaコンクリートブロック20を積み込んだ運搬車両80であるトラックが、敷き並べ方向Xの前方側に荷台を向けた状態で、敷き並べ方向Xに移動するようになっている。
【0026】
本実施形態では、一方の片側領域55A及び他方の片側領域55Bにおいて形成されるインバート部構造体10は、
図7及び
図8に示すように、複数のPCaコンクリートブロック20を、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部33に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置してインバート部33に設置することで形成されたブロック群20X,10Yを、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間の隙間21bに、充填固化材22を充填して硬化させることによって(
図11参照)、硬化した充填固化材22を介して一体化されて形成されるものとなっている。
【0027】
すなわち、本実施形態では、インバート部構造体10は、山岳トンネル30のインバート部33におけるトンネルの横断方向の少なくとも片側領域に設けられて、インバート部覆工体32を構成する、PCaコンクリートブロック20を用いたインバート部33の構造体であって、PCaコンクリートブロック20は、
図9及び
図10(a)~(c)に示すように、各々、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有する六面体形状のブロックとして形成されている。これらの複数のPCaコンクリートブロック20は、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間に、隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置されていると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロックとの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置されてインバート部33に設置されている。これらの縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20は、
図2、
図3、及び
図12に示すように、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20との間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填されて硬化した、充填固化材22を介して一体化された状態で、インバート部覆工体32の少なくとも一部として、インバート部覆工体32の片側部分を構成している。
【0028】
また、本実施形態では、複数のPCaコンクリートブロック20は、好ましくはトンネルの横断方向の横幅x、トンネルの軸方向の縦幅y、及び高さzが等しくなった、同様の六面体形状を備えるように形成されている(
図9、
図10(a)~(c)参照)。縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20は、充填固化材22が充填された、トンネルの横断方向に隣接するPCaコンクリートブロック20との間の軸方向に延設する隙間21b、及びトンネルの軸方向に隣接するPCaコンクリートブロック20との間の横断方向に延設する隙間21bが、好ましくはいずれも直線状に連続しているいも状に配置されて、インバート部33に設置されている(
図3、
図7参照)。充填固化材22が充填された、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、及び隣接するPCaコンクリートブロックとの間の隙間21bは、好ましくは15~30mm程度の間隔幅の隙間となっている。
【0029】
本実施形態では、インバート部構造体10を構成する複数のPCaコンクリートブロック20は、上述のように、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接する当該PCaコンクリートブロック20との間に、充填固化材22が充填される隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接する当該PCaコンクリートブロックとの間に充填固化材22が充填される隙間21bを保持した状態で連設して配置されて、縦横に並べてインバート部33に設置されるものとなっている。またPCaコンクリートブロック20は、
図9及び
図10(a)~(c)に示すように、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備える、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有すると共に、前後一対の平坦な軸方向対向面20cと左右一対の平坦な横断方向対向面20dとを有する、六面体形状のブロックとして形成されている。横断面視における上面部20a及び下面部20bは、曲率半径が例えば14000mm~145000mm程度に緩やかに湾曲させることができる。
【0030】
さらに、これらのPCaコンクリートブロック20には、各々六面体形状の上面部分における4辺部に、隣接するPCaコンクリートブロック20をボルト部材(図示せず。)を用いて連結するための、ボルトボックス23又は雌ネジアンカー24が埋設固定されている。ボルトボックス23は、PCaコンクリートブロック20の上面部20aに開口しており、雌ネジアンカー24は、側面部の軸方向対向面20cや横断方向対向面20dの上端部に開口している。また
図11に示すように、PCaコンクリートブロック20には、六面体形状を上下方向に貫通するボルト挿通螺着孔25が、二等辺三角形状の各々の角部分に配設されて3箇所に形成されている(
図10(a)参照)。各々のボルト挿通螺着孔25には、上下方向の中間部よりも下方部分に、高さ調整ボルト26が螺着される雌ネジ部材25aが固着されている。各々のボルト挿通螺着孔25の雌ネジ部材25aが固着された部分から、上方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20の上面部20aに開口する、大ラッパ状凹部25bが形成されていると共に、雌ネジ部材25aが固着された部分から、下方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20の下面部20bに開口する、小ラッパ状凹部25cが形成されている。これらのボルト挿通螺着孔25には、高さ調整ボルト26が挿通され、雌ネジ部材25aに螺着されることによって、当該高さ調整ボルト26が、下端部26aをPCaコンクリートブロック20の下面部20bから進退可能に突出させた状態で、取り付けられることになる。また大ラッパ状凹部25bや小ラッパ状凹部25cは、上方や下方の開口に向かってテーパー状に拡径するラッパ形状を備えているので、これらのラッパ状凹部25b,25cを形成するためにコンクリート打設用の箱形型枠に取り付けられた箱抜き部材を、コンクリートが硬化した後に、スムーズに取り除くことが可能になる。このような観点から、テーパー状に拡径するラッパ形状の大ラッパ状凹部25bや小ラッパ状凹部25cのテーパー勾配は、ボルト挿通螺着孔25の中心軸に対して10%以上の傾きとなっていることが好ましい。
【0031】
3箇所のボルト挿通螺着孔25は、
図10(a)に示すように、PCaコンクリートブロック20の上面部20aにおいて、好ましくは底辺部を一方の軸方向対向面20c側にこれと平行に配置し、頂部を他方の軸方向対向面20c側に配置した、仮想の二等辺三角形状(一点鎖線参照)の各角部分に配設されて、形成されている。
【0032】
本実施系形態では、PCaコンクリートブロック20の上面部側から見て、仮想の二等辺三角形状によって囲まれる内側に、PCaコンクリートブロック20の重心が配置されるようになっていることが好ましく、仮想の二等辺三角形状の図心の位置に、PCaコンクリートブロック20の重心が配置されるようになっていることが特に好ましい。これらによって、3箇所の高さ調整ボルト26によるPCaコンクリートブロック20の高さや傾きの調整を、より安定した状態で精度良く行うことが可能になると共に、精度良く高さや傾きが調整されたPCaコンクリートブロック20を、3箇所の高さ調整ボルト26によってより安定した状態で支持することが可能になる。
【0033】
さらにまた、これらのPCaコンクリートブロック20のうちの一部のPCaコンクリートブロック20’(
図7参照)には、
図12及び
図13に示すように、六面体形状を上下方向に貫通する、充填材注入孔27が形成されている。各々の充填材注入孔27には、上下方向の中間部分に、開閉バルブ部材28の雄ネジ部が螺着される雌ネジ部材27aが固着されている。各々の充填材注入孔27の雌ネジ部材27aが固着された部分から、上方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20’の上面部20aに開口する、上部側ラッパ状凹部27bが形成されていると共に、雌ネジ部材27aが固着された部分から、下方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20’の下面部20bに開口する、下部側ラッパ状凹部27cが形成されている。これらの充填材注入孔27には、開閉バルブ部材28の雄ネジ部が雌ネジ部材27aに螺着されて、ハンドル部28aがPCaコンクリートブロック20’の上面部20aの上方に配置されることによって、PCaコンクリートブロック20’の上面部20aでの作業によりハンドル部28aの開閉操作が可能な状態で、開閉バルブ部材28がPCaコンクリートブロック20’に着脱可能に取り付けられることになる。また上部側ラッパ状凹部27bや下部側ラッパ状凹部27cは、上方や下方の開口に向かってテーパー状に拡径するラッパ形状を備えているので、これらのラッパ状凹部27b,27cを形成するためにコンクリート打設用の箱形型枠に取り付けられた箱抜き部材を、コンクリートが硬化した後に、スムーズに取り除くことが可能になる。このような観点から、これらのラッパ状凹部27b,27cのテーパー勾配もまた、充填材注入孔27の中心軸に対して10%以上の傾きとなっていることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、六面体形状のPCaコンクリートブロック20’を上下方向に貫通する充填材注入孔27は、好ましくはPCaコンクリートブロック20’の上面部20aの中央部分に配設して形成することができる(
図10(a)参照)。充填材注入孔27は、特に、最も低い位置に配置される中央部側ブロック20Bの中央部分に配設して形成されていることが好ましい。
【0035】
また、本実施形態では、これらのPCaコンクリートブロック20(20’)には、好ましくは六面体形状の前後一対の平坦な軸方向対向面20c及び左右一対の平坦な横断方向対向面20dの各々に、対向する他の対向面20c,20dとの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持するための、スペーサ治具29a、29bを取り付け可能となっている(
図9、
図10(b),(c)参照)。好ましくは六面体形状の上面部20aには、各々のPCaコンクリートブロック20を吊り上げる際に用いる、複数の吊り治具29cが埋設固定されている(
図9、
図10(a)参照)。
【0036】
そして、本実施形態では、これらのPCaコンクリートブロック20は、例えば製造工場において、上述の所定の六面体形状に沿った形状に組み付けた箱形型枠の内部に、コンクリートを打設して硬化させた後に、所定の養生期間を経過させて脱型することで、好ましくは横幅xが1385~1435mm程度、縦幅yが730mm程度、高さzが500mm程度の大きさの、上面部20a及び下面部20bが湾曲する六面体形状を備えるように形成されると共に、1300kg程度の重量を有することになる。例えば箱形型枠の内部に段取り筋を配置し、これに支持させて、上述のボルトボックス23や雌ネジアンカー24、及びボルト挿通螺着孔25や充填材注入孔27のための箱抜き部材等を取り付けておくことによって、これらをPCaコンクリートブロック20に埋設固定したり、仮固定したりできるようになっている。本実施形態では、インバートブロックとして用いるPCaコンクリートブロック20の大きさや形状、重量等は、片側領域55Aの作業ヤード71において、他方の片側領域55Bでの車両の通行等に影響を及ぼすことなく使用することが可能な、揚重機等の能力に応じて、適宜設計することができる。例えばPCaコンクリートブロック20の重量は、好ましくは1000~1500kgとすることができる。
【0037】
また、本実施形態では、複数のPCaコンクリートブロック20は、同様の六面体形状を備えるように形成されているので、使用する箱形型枠の種類を限定して、効率良く製造することが可能になると共に、同様の重量のブロックとなるため、揚重時や搬送時の作業性が向上し、且つ一方の片側領域55Aの作業ヤード71において、吊り上げたり据え付けたりする際に同じように取り扱うことが可能なので、例えばいも状に配置されるように各々のPCaコンクリートブロック20を所定の位置に精度良く設置する作業を、容易に行うことが可能になる。製造時のコストを削減することも可能になる。
【0038】
本実施形態では、インバート部構造体10は、上述のように、トンネルの横断方向における中央を挟んだ両側の領域を一対の片側領域として、各々の片側領域55A,55Bにおいて施工されるようになっている(
図2、
図3参照)。インバート部33におけるトンネルの横断方向の中央には、上述のように、各々の片側領域55A,55Bでインバート部構造体10を施工する際に、他方の片側領域55Bの通行路60に影響が及ばないようにするための山留板部材57を支持するH型鋼35が、トンネルの軸方向に所定の間隔をおいて、フランジ部35aをトンネルの軸方向に沿わせた状態で、インバート部33の地盤に打ち込むことによって、複数立設させておくことができる。このため、これらのH型鋼35が立設する位置における、トンネルの横断方向の中央側においてトンネルの軸方向に隣接する一対のPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの中央側の端部には、これらの間の隙間21bを挟んだ両側の角部分に、矩形断面形状を有する切欠き凹部20eを形成しておくことができる(
図8参照)。これらの両側の角部分の切欠き凹部20eによって、各々のインバート部構造体10のトンネルの横断方向の中央側の端面部(中央側端面部)10Bに、H型鋼35の一方のフランジ部を配設させるフランジ配設凹部10aを、H型鋼35が立設する部分に設けることができる。
【0039】
すなわち、各々の片側領域55A,55Bのインバート部構造体10を構成する複数のPCaコンクリートブロック20によるブロック群20X,20Y(
図2参照)における、H型鋼35が立設する部分に配置されるPCaコンクリートブロック20(中央部側ブロック20B)は、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備える、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有すると共に、前後一対の平坦な軸方向対向面20cと左右一対の平坦な横断方向対向面20dとを有する六面体形状のブロックとして形成されており(
図10(a)~(c)参照)、いずれか1箇所の軸方向対向面20cと横断方向対向面20dとの角部分に、
図7に示すように、例えばH型鋼35のフランジ部35aの横幅の1/2以上の幅の辺部を有するように切り欠かれた、矩形断面形状を備える切欠き凹部20eが、上面部20aから下面部20bに亘って連続して設けられている。これによって、H型鋼35が立設する部分でトンネルの軸方向に隣接する、一対の中央部側ブロック20Bの中央側の端部には、これらの切欠き凹部20eによって、H型鋼35のフランジ部をかわすことが可能な、フランジ配設凹部10aが形成されることになる。
【0040】
そして、本実施形態では、インバート部構造体10を構成するこれらの複数のPCaコンクリートブロック20は、
図7及び
図8に示すように、側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cに隣接して配置される受台部側ブロック20Aと、インバート部の横断方向中央部側に配置される中央部側ブロック20Bと、これらの間に配置される一又は複数の中間部ブロック20C(本実施形態では、一の中間部ブロック20C)とを含んだ複数の横断方向ブロック列20Dを有しており、これらのPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、隣接する受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20C(横断方向ブロック列20D)との間に隙間21bを保持した状態で連設して配置されて、縦横に並べてインバート部33に設置されるようになっている。インバート部構造体10を施工する際に用いるこれらの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、以下のようなインバート部におけるPCaブロックの設置方法によって、施工することが可能である。
【0041】
すなわち、本実施形態では、トンネルの横断方向に連設する各々の横断方向ブロック列20Dの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、
図8に示すように、受台部側ブロック20Aを受台部31cに隣接させて設置して仮固定手段36により仮固定した後に、仮固定された受台部側ブロック20Aに隣接させて、中間部ブロック20C及び中央部側ブロック20Bを順次設置することで、トンネルの横断方向に連設する各列(横断方向ブロック列)20Dの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、インバート部33に設置するようになっている。
【0042】
例えば、受台部側ブロック20Aを受台部31cに隣接させて設置して仮固定手段36により仮固定した後に、仮固定された受台部側ブロック20Aに隣接させて、中間部ブロック20Cを設置し、設置した中間部ブロック20Cと受台部側ブロック20Aとの隣接箇所において、横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23を介して、ボルト部材(図示せず)により仮固定してから、各々のPCaコンクリートブロック20A,20Cの高さ及び位置を調整した後に、ボルト部材を本締めする。引き続いて、中間部ブロック20Cに隣接させて、中央部側ブロック20Bを設置し、設置した中央部側ブロック20Bと中間部ブロック20Cとの隣接箇所において、横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20C,20Bの上面部20aに配設されたボルトボックス23を介して、ボルト部材により仮固定してから、中央部側ブロック20Bの高さ及び位置を調整した後に、ボルト部材を本締めすることによって、トンネルの横断方向に連設する各横断方向ブロック列20Dの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、インバート部33に設置することができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、受台部側ブロック20Aを受台部31cに隣接させて仮固定する仮固定手段36は、好ましくは受台部31cに埋設したホールインアンカー36aに取り付けられた係止部材と、受台部側ブロック20Aに設けられたボルトボックス23や吊り治具29cに取り付けられた係止部材とに両端部が係止された、ワイヤ、チェーン等の索条体36bによるものとすることができる。ワイヤ、チェーン等の索条体36bには、係止される両端部の間の長さを調整可能な、例えばターンバックル等による伸縮調整手段36cを設けることができる。これによって受台部31cと、隣接する受台部側ブロック20Aとの間に保持される隙間21aの間隔幅を、調整可能とすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの高さの調整は、
図11に示すように、上述の3箇所に形成されたボルト挿通螺着孔25に各々螺着された、3本の高さ調整ボルト26を用いて実施することができるようになっている。すなわち、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cには、ボルト挿通螺着孔25が、上下方向に貫通して3箇所に形成されていると共に、各々のボルト挿通螺着孔25には、高さ調整ボルト26が、下端部26aをPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bから下方に突出させることが可能な状態で取り付けられている。縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部20bの下方の隙間21cに、充填固化材22を充填する工程(
図12参照)に先立って、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上方からの回転操作によって、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cにおける、3本の高さ調整ボルト26のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bからの突出長さを変化させて、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの、高さ及び傾きを調整する工程を行なうようになっている。
【0045】
上述のように、本実施形態では、各々のボルト挿通螺着孔25の上下方向の中間部よりも下方部分に、好ましくはナット部材が、雌ネジ部材25aとして固着されおり、このナット部材25aに高さ調整ボルト26が螺着されることによって、高さ調整ボルト26が、下端部26aをPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bから下方に突出させることが可能な状態で取り付けられている。また高さ調整ボルト26の下端部26aには、傾動自在な接地用アジャスタ26bを取り付けておくことができる。これによって高さ調整ボルト26の下端部26aを、安定した状態で、下面部20bの下方の、充填底面部26cとなる例えば地盤面に、接地させることができるようになっている。接地用アジャスタ26bは、高さ調整ボルト26を上方に後退させた際に、ボルト挿通螺着孔25の開口周縁部をテーパー状に切り欠いて、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bに形成された、下方に向けて拡径する上述の小ラッパ状凹部25cに、収容できるような形状とすることも可能である。
【0046】
また、本実施形態では、高さ調整ボルト26の上端部26dは、好ましくは角形断面となるように形成されており、この上端部26dに、回転操作治具として例えばインサート用エクステンションバーを係止して、高さ調整ボルト26の回転操作を行なうことで、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aの上方での作業によって、高さ調整ボルト26の下端部26aの、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bからの突出長さを、容易に変化させることができるようになっている。ボルト挿通螺着孔25には、上述のように、雌ネジ部材であるナット部材25aが固着された部分から上方に向かって拡径して、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに開口する、大ラッパ状凹部25bが形成されている。下端部26aが充填底面部26cに接地するように調整された後の高さ調整ボルト26の上端部26dが、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aから突出していたり、上面部20aに近接していたりしていて、大ラッパ状凹部25bに仕上げ用の充填材が充填された際に、上端部26dの上方に十分な被り厚さを確保できない場合には、この大ラッパ状凹部25bにおいて、高さ調整ボルト26の上端部26dを、必要な長さで適宜切断することができる。これによって、ボルト挿通螺着孔25に充填されたモルタル等の仕上げ用の充填材による、所望の被り厚さを確保できるようにして、高さ調整ボルト26が腐食しないようにすることが可能になる。高さ調整ボルト26の上端部26dを切断する作業は、上方に向かって拡径する大ラッパ状凹部25bにおいて十分な作業スペースを確保できるので、スムーズに行なうことができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、上述のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを用いたインバート部構造体10において、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、隣接する当該PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持した状態で、縦横に連結配置してインバート部33に一体として設置するための連結部の構造として、以下のようなインバート部構造体におけるPCaブロックの連結部構造37を採用できるようになっている。
【0048】
すなわち、本実施形態では、
図7、
図8、及び
図10(a)~(c)に示すように、PCaブロックの連結部構造37は、トンネルの横断方向に隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの当該横断方向に対向する各一対の横断方向対向面20dの間に、いずれか一方の対向面に固着された横断方向スペーサ治具29a(
図10(b)参照)を、好ましくは少なくとも3箇所に配置して介在させると共に、これらの横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着された、ボルト部材(図示せず。)の締着力によって、トンネルの横断方向に隣接する各一対のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、横断方向対向面20dの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持した状態で、連結するようになっている。またトンネルの軸方向に隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの当該軸方向に対向する各一対の軸方向対向面20cの間に、いずれか一方の軸方向対向面20cに固着された軸方向スペーサ治具29b(
図10(c)参照)を、好ましくは少なくとも3箇所に配置して介在させると共に、これらの軸方向対向面20cと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着された、ボルト部材(図示せず。)の締着力によって、トンネルの軸方向に隣接する各一対のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、軸方向対向面20cの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持した状態で、連結するようになっている。横断方向スペーサ治具29aや軸方向スペーサ治具29bは、ボルトボックス23が設けられた位置で、横断方向対向面20dや軸方向対向面20cに取り付けておくこともできる。
【0049】
本実施形態では、横断方向スペーサ治具29a及び/又は軸方向スペーサ治具29bを、好ましくはいずれか一方の対向面20c、20dに貼り付けて固着された、モルタルブロックによるものとすることができる。モルタルブロックによるスペーサ治具29a,29bは、対向面20c、20dから取外し可能に取り付けておき、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを本締めして連結した後に、取り外すようにすることもできる。横断方向スペーサ治具29a及び/又は軸方向スペーサ治具29bは、好ましくはいずれか一方の対向面10c、10dに埋設された雌ネジインサートにねじ込まれることで、突出長さを調整可能に固着された、雄ネジ部材によるものとすることもできる。
【0050】
いずれか一方の横断方向対向面20dや軸方向対向面20cに固着された、好ましくは少なくとも3箇所に配置された横断方向スペーサ治具29aや軸方向スペーサ治具29bは、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの重心位置よりも下方の領域において、少なくとも2箇所に固着されていることが好ましい。これによって、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを設置する際に、特別な装置を使用することなく、隙間21a,21bが精度良く設けられたことを確認することが困難な、重心位置よりも下方の領域に、所定の間隔の隙間21a,21bを、安定した状態で精度良く適切に形成することが可能になる。
【0051】
横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着されたボルト部材や、軸方向対向面20cと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着されたボルト部材は、好ましくは一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dと近接する上面部20aに配設されたボルトボックス23と、他方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dに埋設された雌ネジアンカー24とに跨って、締着されるようになっていても良い。好ましくは一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dと近接する上面部20aに配設されたボルトボックス23と、他方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dと近接する上面部20aに配設されたボルトボックス23とに跨って、締着されるようになっていても良い。
【0052】
そして、本実施形態では、これらの縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、
図12に示すように、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間と連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填されて硬化した、充填固化材22を介して一体化された状態で、インバート部覆工体32の少なくとも一部を構成するようになっている。本実施形態では、以下のような施工方法によって、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに、充填固化材22を充填するようになっている。
【0053】
すなわち、本実施形態において、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに、充填固化材22を充填するには、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20a、妻側端面部10A(
図7、
図14参照)及び中央側端面部10B(
図7、
図12参照)において開口する隙間21a,21bの開口部分を閉塞した状態とする。しかる後に、例えば
図12~
図14に示すように、トンネルの軸方向に連設する複数の中央部側ブロック20Bのうち1又は2以上に、上下方向に貫通して設けられた中央部側の充填材注入孔27dから、及びトンネルの軸方向に連設する複数の受台部側ブロック20Aのうち1又は2以上に、上下方向に貫通して設けられた受台部側の充填材注入孔27eから、充填固化材22をこれらの隙間21a,21bに順次注入するようになっている。好ましくは
図14に示すように、例えば中央部側の充填材注入孔27dから充填固化材22の注入を始めて、受台部31c側の充填材注入孔27eに切り替えて充填固化材22をさらに注入した後に、受台部側ブロック20Aの上面部20aに保持された受台部31cとの間の隙間21aの開口部分から、充填固化材22が流出するのを確認して、充填固化材22の充填を終了するようになっている。受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eを使用することなく、中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dのみを使用して充填固化材22を注入し、受台部側ブロック20Aの上面部20aに保持された受台部31cとの間の隙間21aの開口部分から、充填固化材22が流出するのを確認して、充填固化材22の充填を終了することもできる。
【0054】
また、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aにおける隙間21a,21b,21dの開口部分を閉塞する帯板状型枠41aには、適宜の位置から延設させて、上面部20aにおける隙間21a,21b,21dと連通するエア抜きホース42(
図12参照)を取り付けておくことが好ましい。これによって、充填固化材22が充填される際に、エア抜きホース42を介して、隙間21a,21b,21dからのエア抜きを効果的に行うことが可能になると共に、これらのエア抜きホース42から充填固化材22が流出することによって、充填固化材22が充填されたことを確認することが可能になる。
【0055】
そして、本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70は、上述のようなインバート部覆工体10を、トンネルの横断方向の片側領域55A,55B毎に施工する際に、
図1(a)、(b)及び
図4に示すように、例えば他方の片側領域55Bの通行路60での通行を確保したまま、一方の片側領域55Aにおいて、インバート部覆工体32を構成するPCaコンクリートブロック20による複数のインバートブロックを、インバート部33に縦横に敷き並べて設置する際に採用されて、複数の六面体形状のPCaコンクリートブロックを、他方の片側領域55Bでの車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く縦横に連設配置して設置できるようにする設備となっている。
【0056】
すなわち、本実施形態では、
図5及び
図6にも示すように、片側領域55Aの作業ヤード71において、上述のように、PCaコンクリートブロック20が敷き並べられる敷設領域72の底盤部72aが整地されている状態で、敷設領域72の敷き並べ始端部72bよりも敷き並べ方向Xの後方側のスペース73に、ブロック吊込み用揚重機74を移動可能に据え付けると共に、敷設領域における、敷き並べ始端部72bよりも敷き並べ方向Xの前方の敷き並べ終端部72c側のスペース75に、ブロック設置用揚重機76を移動可能に据え付ける。また、敷設領域72における敷き並べ始端部72bから前方の敷き並べ終端部72cに向けて順次設置された、PCaコンクリートブロック20の上面部に配設して、敷き並べ始端部72bからブロック設置用揚重機76の作業半径内の領域まで延設して設けられる、ブロック搬送コンベア装置77を設置する。このブロック搬送コンベア装置77は、PCaコンクリートブロック20が敷並べ始端部72bから敷き並べ終端部72cに向けて敷き並べ方向Xに順次設置されて行くのに伴って、敷き並べ方向Xに適宜継ぎ足してゆくことができるようになっている。
【0057】
本実施形態では、ブロック吊込み用揚重機74は、好ましくはクローラクレーンとなっており、ブロック設置用揚重機76は、好ましくはバックフォーとなっている。またブロック搬送コンベア装置77として、好ましくはローラコンベアを用いることができる。敷設領域72の敷き並べ方向Xの敷き並べ始端部72bよりも後方側のスペース73において、ブロック吊込み用揚重機74によって吊り上げられたPCaコンクリートブロック20は、好ましくは湾曲する下面部20bを載置面として、一対の平坦な軸方向対向面20cをローラコンベア77の延設方向に沿わせた状態で、ローラコンベア77に載置するこができる。これによって各々のPCaコンクリートブロック20は、ローラコンベア77の複数のローラを回転させながら移動して、敷き並べ方向Xの敷き並べ終端部72c側のスペース75における、ブロック設置用揚重機76に隣接する部分まで、スムーズに安定して搬送されるようになっている。
【0058】
また本実施液体では、PCaコンクリートブロック20の運搬車両80(
図1参照)であるトラックは、他方の片側領域55Bでの通行に影響が及ばないように、他方の片側領域55Bから作業ヤード71に横入れされることなく、好ましくは一方の片側領域55Aの車線上で、後方側から作業ヤード71まで移動できるようになっている。移動してきたトラック80に積み込まれているPCaコンクリートブロック20は、ブロック吊込み用揚重機74によって作業ヤード71に荷降ろしできるようになっている。荷降ろしされたPCaコンクリートブロック20は、例えばブロック吊込み用揚重機74によって適宜吊り上げられて、敷き並べられたPCaコンクリートブロック20の上面部に設置されたローラコンベア77の、敷き並べ方向Xの敷き並べ始端部72b側の端部に、順次吊り降ろして載置できるようになっている。ローラコンベア77の敷き並べ始端部72b側に載置されたPCaコンクリートブロック20は、例えば作業員の手作業により押し出されて、ローラコンベア77に沿って、始端部72b側のブロック吊込み用揚重機74の前方の、敷き並べ方向Xの終端部72c側のスペース75に据え付けられている、ブロック設置用揚重機76の作業半径内の領域まで、スムーズに移動させることができるようになっている。
【0059】
ブロック設置用揚重機76が据え付けられた、作業ヤード71における敷設領域72の敷き並べ終端部72c側のスペース75では、ブロック吊込み用揚重機74と運転席を対向させたて配置された当該ブロック設置用揚重機76によって、ローラコンベア77に沿って隣接する部分まで搬送されてきたPCaコンクリートブロック20を吊り上げて、180度旋回することなく、好ましくは左右に60度以内の旋回角度で、運転席を対向させたまま、他方の片側領域での車両の通行に影響が及ばないようにしながら、敷設領域72の所定の位置に順次設置して行くこが可能になる。また、ブロック搬送コンベア装置77は、PCaコンクリートブロック20が敷並べ始端部72bに向けて敷き並べ方向Xに順次設置されて行くのに伴って、敷き並べ方向Xに適宜継ぎ足してゆくことができるので、ブロック設置用揚重機76を、正対させたまま後退させつつ、同様の作業を繰り返すことによって、複数のPCaコンクリートブロック20を、運転席をブロック吊込み用揚重機74と対向させたまま、縦横に連設配置されるように効率良く設置してゆくことが可能になる。
【0060】
これらによって、本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70によれば、複数車線の道路トンネルにおける横断方向の一方の片側領域55Aに設営された横幅の狭い作業ヤード71において、インバート部構造体10を形成する複数の六面体形状のPCaコンクリートブロック20を、他方の片側領域55Bでの車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く縦横に連設配置して設置できるようにして、これらの縦横に連設配置されたPCaコンクリートブロック20が一体化されたインバート部構造体10を、効率良く施工することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態では、好ましくは
図1(a)、(b)に示すように、片側領域55Aの作業ヤード71において、敷設領域72の敷き並べ始端部92bよりも敷き並べ方向Xの後方側のスペース73には、ブロック吊込み用揚重機74のさらに後方側に離間して、
好ましくはクローラクレーンからなる補助ブロック吊込み用揚重機78が、移動可能に据え付けられており、且つこの補助ブロック吊込み用揚重機78の作業半径内の領域から、ブロック吊込み用揚重機74の作業半径内の領域まで延設して、好ましくはローラコンベアからなる補助ブロック搬送コンベア装置79が配設されている。片側領域55Aの作業ヤード71において、好ましくはブロック吊込み用揚重機74と補助ブロック吊込み用揚重機78とが、運転席を背向させた角度範囲でのみ旋回するように配置されている。これによって、好ましくは補助ブロック吊込み用揚重機78を用いて、トラックに積み込まれているPCaコンクリートブロック20を、旋回幅を大きくすることなく荷降ろししたり、適宜吊り上げて、補助ブロック搬送コンベア装置79における敷き並べ始端部72b側の端部に載置したりすることが可能なる。また、補助ブロック搬送コンベア装置79を介してブロック吊込み用揚重機74に隣接する部分まで搬送されてきたPCaコンクリートブロック20は、運転席が背向するブロック吊込み用揚重機74によって、旋回幅を大きくすることなく吊り上げて、敷き並べられたPCaコンクリートブロック20の上面部に設置されたローラコンベア77の、敷き並べ始端部72b側の端部に、順次吊り降ろすことが可能になる。これらによって、インバート部構造体10を形成する複数の六面体形状のPCaコンクリートブロック20を、さらに効率良く、他方の片側領域55Bでの車両の通行に影響を及ぼすことなく、縦横に連設配置して設置することが可能になる。
【0062】
さらに、本実施形態では、片側領域55Aの作業ヤード71において、好ましくは補助ブロック吊込み用揚重機78よりも敷き並べ方向Xの後方側のスペースに、PCaコンクリートブロック20を積み込んだ運搬車両80である例えばトラックが、敷き並べ方向Xの前方側に荷台を向けた状態で、敷き並べ方向Xに移動してくるようになっている。補助ブロック吊込み用揚重機78を用いて、トラック80に積み込まれているPCaコンクリートブロック20を、旋回幅を大きくすることなく荷降ろししたり、適宜吊り上げて、補助ブロック搬送コンベア装置79における敷き並べ始端部72b側の端部に載置したりできるようになっている。これによって、一方の片側領域55Aの作業ヤード71において、ブロック設置用揚重機76、ブロック吊込み用楊重機74、補助ブロック吊込み用揚重機78等の重機を180度旋回させることなく、PCaコンクリートブロック20を設置する作業を行なうことが可能になると共に、PCaコンクリートブロック20を積み込んだ運搬車両80が、敷き並べ方向Xの前方側に荷台を向けた状態で作業ヤード71に移動するので、運搬車両80を他方の片側領域55Bから横入れさせることなく、一方の片側領域65Aにおいて、効率良く作業することが可能になる。
【0063】
本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70は、山岳トンネル30による複数車線の道路トンネルにおける他方の片側領域55Bを、新たに一方の片側領域とし、インバート部構造体10の施工が終了した一方の片側領域55Aを、他方の片側領域として、施工が終了した一方の片側領域55Aでの車両の通行を確保したまま、新たに一方の片側領域となった他方の片側領域55Bにおいてインバート部構造体10を施工する場合にも、当該配設時仮設備70を、新たに一方の片側領域となった他方の片側領域55Bに設営した作業ヤードに設けて、使用することもできる。すなわち、一方の片側領域55Aで形成したインバート部構造体10の上方を埋め戻して、通行路を復旧することにより車両の通行を確保した状態で、他方の片側領域55Bを新たに一方の片側領域としてインバート部構造体10の施工する際にも、縦横に敷き並べられる複数のPCaコンクリートブロック20を、他方の片側領域での車両の通行に影響を及ぼすことなく、効率良く設置できるようにするための設備として、本実施形態のインバートブロックの配設時仮設備70を採用することができる。
【0064】
そして、本実施形態では、一方の片側領域55A及び他方の片側領域55Bにおいて各々形成されたインバート部構造体10は、
図2及び
図3に示すように、これらが一体となってインバート部覆工体32を構成する、横断方向の全域のインバート部構造体50を形成するようになっている。
【0065】
すなわち、横断方向の全域のインバート部構造体50は、山岳トンネルのインバート部33におけるトンネルの横断方向の全域に設けられて、インバート部覆工体32を構成する、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを用いた構造体であって、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、上述のように、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有する六面体形状のブロックとして形成されている。
図2及び
図3に示すように、トンネルの横断方向の一方の片側領域55A及び他方の片側領域55Bの各々において、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cが、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロックとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置されていると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置されてインバート部33に設置されていることで、一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yが形成されている。且つトンネルの横断方向の中央部分において、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間には、間隔部分51が保持されている。一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yにおいて各々縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、隣接する各々の受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間の間隔部分51、及びこれらの隙間21a,21bや間隔部分51と連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填されて硬化した、充填固化材22を介して一体化された状態で、インバート部覆工体32を構成するようになっている。
【0066】
また、本実施形態では、充填固化材22が充填された、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間の隙間21bは、好ましくは15~30mmの間隔幅の隙間となっており、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間の間隔部分51は、好ましくは100~130mmの間隔幅の間隔部分となっている。
【0067】
さらに、本実施形態では、一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yにおいて各々縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、充填固化材22が充填された、トンネルの横断方向に隣接するPCaコンクリートブロックの間の軸方向に延設する隙間21b、及びトンネルの軸方向に隣接するPCaコンクリートブロックの間の横断方向に延設する隙間が、好ましくはいずれも直線状に連続しているいも状に配置されて、インバート部33に設置されている。
【0068】
さらにまた、本実施形態では、間隔部分51に面している、一方側ブロック群20Xの最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの中央部側の面、及び前記他方側ブロック群の最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの中央部側の面には、例えば
図15に示すように、充填固化材22との付着力を向上させる凹凸52が形成されていることが好ましい。
【0069】
充填固化材22との付着力を向上させる凹凸52は、好ましくは隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置されている各々のPCaコンクリートブロック20における、保持された隙間21a,21bを挟んで対向する横断方向対向面20dに形成することもできる。充填固化材22との付着力を向上させる凹凸52は、好ましくは隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21bを保持した状態で、トンネルの軸方向に連設して配置されてインバート部33に設置されている各々のPCaコンクリートブロック20における、保持された隙間21bを挟んで対向する軸方向対向面20cに形成することもできる。
【0070】
また、本実施形態では、一方側ブロック群20Xの最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bと、他方側ブロック群20Yの最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bとは、長尺ボルト部材(図示せず、)を介して連結されていることが好ましい。これによって、一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yの設置精度を確保することが可能なると共に、これらのブロック群20X,20Yの間の部分のせん断強度を確保することが可能になる。
【0071】
本実施形態では、上述のトンネルの横断方向の全域のインバート部構造体50は、以下のようの施工方法によって、形成することができる。すなわち、本実施形態では、インバート部構造体50の施工方法は、トンネルの横断方向の一方の片側領域55Aにおいて、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部33に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置してインバート部33に設置することで、一方側ブロック群20Xを形成する工程と、縦横に連設して配置された一方側ブロック群20Xの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接する前記PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填固化材22を充填して硬化させる工程と、トンネルの横断方向の他方の片側領域55Bにおいて、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部33に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接する前記PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置してインバート部33に設置することで、他方側ブロック群20Yを形成する工程と、縦横に連設して配置された他方側ブロック群20Yの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに加えて、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間隔部分51にも充填固化材22を充填して硬化させる工程とを含んで構成されており、これによって、トンネルの横断方向の全域に設けられてインバート部覆工体32を構成するインバート部構造体50を、容易に形成することが可能になる。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、ブロック吊込み用揚重機や補助ブロック吊込み用揚重機は、クローラクレーンとなっている必要は必ずしも無く、レッカー車、ラフター車、ユニック車等の、その他の種々の揚重用の重機を用いることができる。ブロック搬送コンベア装置や補助ブロック搬送コンベア装置は、ローラコンベアである必要は必ずしも無く、延長方向に継ぎ足し可能なその他の種々のコンベア状の搬送装置であっても良い。電動式の搬送装置を用いることもできる。
【符号の説明】
【0073】
10 インバート部構造体
20,20’ PCaコンクリートブロック(インバートブロック)
21a 受台部との間の隙間
21b 隣接するPCaコンクリートブロックとの間の隙間
21c 下面部の下方の隙間
21d 既設インバート部構造体との間の隙間
22 充填固化材
23 ボルトボックス
24 雌ネジアンカー
25 ボルト挿通螺着孔
26 高さ調整ボルト
27 充填材注入孔
28 開閉バルブ部材
30 山岳トンネル(道路トンネル)
30a 底盤部分
31 覆工体
31a 側壁部(側壁部覆工体)
31b アーチ形状部分
31c 受台部
32 インバート部覆工体
33 インバート部
35 H型鋼
36 仮固定手段
37 PCaブロックの連結部構造
42 エア抜きホース
50 トンネルの横断方向の全域のインバート部構造体
51 一方側ブロック群と他方側ブロック群との間の間隔部分
55A 一方の片側領域
55B 他方の片側領域
60 通行路
70 インバートブロックの配設時仮設備
71 作業ヤード
72 敷設領域
72a 底盤部
72b 敷き並べ始端部
72c 敷き並べ終端部
73 敷設領域の敷き並べ始端部よりも後方側のスペース
74 ブロック吊込み用揚重機(クローラクレーン)
75 敷設領域における敷き並べ終端部側のスペース
76 ブロック設置用揚重機(バックフォー)
77 ブロック搬送コンベア装置
78 補助ブロック吊込み用揚重機
79 補助ブロック搬送コンベア装置
80 運搬車両(トラック)
X 敷き並べ方向