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特開2024-145894一液型塗料組成物、塗装方法、塗装体、および塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145894
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】一液型塗料組成物、塗装方法、塗装体、および塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20241004BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241004BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241004BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241004BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/61
C09D5/00 D
B05D5/00 F
B05D7/14 L
B05D7/14 N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058472
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】行森 靖高
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075AE08
4D075CA33
4D075DB01
4D075DB02
4D075DC01
4D075DC05
4D075EA07
4D075EA41
4D075EB33
4D075EC13
4D075EC15
4J038DB061
4J038DB431
4J038HA216
4J038HA286
4J038HA376
4J038KA05
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA03
4J038NA12
4J038NA24
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】有機溶剤の含有量が少なく、塗装作業性が良好であり、かつ耐水性、耐食性および付着性に優れた下塗り層を形成することが可能な一液型塗料組成物、これを用いる塗装方法、塗装体および塗膜を提供する。
【解決手段】変性エポキシ樹脂(A)と、前記変性エポキシ樹脂(A)以外であって、1分子中に複数のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(B)と、顔料(C)と、有機溶剤(D)と、を含む一液型塗料組成物であって、前記エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量が300~1500であり、前記変性エポキシ樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)の質量比率((A)/(B))が、20/80~65/35であり、固形分中に占める前記顔料(C)の含有量が50~80質量%である、一液型塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性エポキシ樹脂(A)と、
前記変性エポキシ樹脂(A)以外であって、1分子中に複数のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(B)と、
顔料(C)と、
有機溶剤(D)と、を含む一液型塗料組成物であって、
前記エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量が300~1,500であり、
前記変性エポキシ樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)の質量比率((A)/(B))が、20/80~65/35であり、
固形分中に占める前記顔料(C)の含有量が50~80質量%である、一液型塗料組成物。
【請求項2】
前記一液型塗料組成物は、フォードカップNo.4で測定したときの23℃における粘度が10~40秒である、請求項1に記載の一液型塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(B)が、分子量の異なる複数のエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の一液型塗料組成物。
【請求項4】
前記一液型塗料組成物の固形分中に占める、前記顔料(C)と樹脂固形分(前記一液型塗料組成物に含まれる全ての樹脂固形分の合計)との質量比(顔料/樹脂固形分)が、2.5~3.8である、請求項1に記載の一液型塗料組成物。
【請求項5】
金属基材の上に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の一液型塗料組成物を塗装して下塗り層を形成した後、前記下塗り層の上に上塗り塗料を塗装して上塗り層を形成する、塗装方法。
【請求項6】
金属基材の上に、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の一液型塗料組成物を塗装して形成した下塗り層と、
前記下塗り層の上に上塗り塗料を塗装して形成した上塗り層とを有する塗膜を備える、塗装体。
【請求項7】
請求項6に記載の塗装体を構成する塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型塗料組成物、塗装方法、塗装体、および塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輛産機などに使用される金属基材用の下塗り塗料としては、優れた耐水性および耐食性を有することが必要であり、特に塗装時に混合する手間や可使時間を考慮する必要が無いという観点から、前記性能を有する一液型塗料が求められる。加えて、大型の塗装物を効率よく塗装するため、塗料固形分が高く膜厚がつきやすい塗装作業性に優れる塗料が求められる。
【0003】
従来の一液型塗料としては、例えば、特許文献1には、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)、特定構造を有する脂肪族第二アミンを含むアミン類(b)及び(半)乾性油脂肪酸(c)を反応させて得られる変性エポキシ樹脂(D)及び脂肪族炭化水素溶剤を含む溶剤(E)からなる変性エポキシ樹脂溶液(F)を含有してなり、前記溶剤(E)中の脂肪族炭化水素溶剤の割合が30~70重量%である塗料組成物が開示されていて、実施例では有機溶剤の含有量が約50質量%の一液型エポキシ樹脂塗料が例示されている。また、特許文献2には、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、およびアミン類からなるアミン変性エポキシ樹脂、ならびにポリイソシアネート類の反応物であるウレタン変性エポキシ樹脂が塗料用樹脂として開示されている。さらに、特許文献3には、少なくとも、アミン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびアクリル変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の変性エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、顔料ならびに溶剤を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物に対する前記溶剤の含有量が40質量%以下である塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-231853号公報
【特許文献2】特開2018-030997号公報
【特許文献3】特開2020-152877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3のいずれも一液型塗料が開示されているが、塗装作業性、特にエアレススプレー塗装における塗装作業性、耐水性、耐食性および付着性が不十分である。したがって、従来技術よりさらに優れた塗装作業性、耐水性および耐食性を有する一液型塗料が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、塗料固形分が高く、塗装作業性が良好であり、かつ耐水性、耐食性および付着性に優れた下塗り層を形成することが可能な一液型塗料組成物、これを用いる塗装方法、塗装体および塗膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、本発明の特徴を列記する。
(1)変性エポキシ樹脂(A)と、前記変性エポキシ樹脂(A)以外であって、1分子中に複数のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(B)と、顔料(C)と、有機溶剤(D)と、を含む一液型塗料組成物であって、前記エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量が300~1500であり、前記変性エポキシ樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)の質量比率((A)/(B))が、20/80~65/35であり、固形分中に占める前記顔料(C)の含有量が50~80質量%である、一液型塗料組成物。
(2)前記一液型塗料組成物は、フォードカップNo.4で測定したときの23℃における粘度が10~40秒である、(1)に記載の一液型塗料組成物。
(3)前記エポキシ樹脂(B)が、重量平均分子量の異なる複数のエポキシ樹脂を含む、(1)に記載の一液型塗料組成物。
(4)前記一液型塗料組成物の固形分中に占める、前記顔料(C)と樹脂固形分(前記一液型塗料組成物に含まれる全ての樹脂固形分量の合計)との質量比(顔料/樹脂固形分)が、2.5~3.8である、(1)に記載の一液型塗料組成物。
【0008】
(5)金属基材の上に(1)ないし(4)のいずれかに記載の一液型塗料組成物を塗装して下塗り層を形成した後、前記下塗り層の上に上塗り塗料を塗装して上塗り層を形成する、塗装方法。
(6)金属基材の上に、(1)ないし(4)のいずれかに記載の一液型塗料組成物を塗装して形成した下塗り層と、
前記下塗り層の上に上塗り塗料を塗装して形成した上塗り層とを有する塗膜を備える、塗装体。
(7)(6)に記載の塗装体を構成する塗膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、塗料固形分が高く、塗装作業性が良好であり、かつ耐水性、耐食性および付着性に優れた下塗り層を形成することが可能な一液型塗料組成物、これを用いる塗装方法、塗装体、および塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一液型塗料組成物、これを用いる塗装方法、塗装体および塗膜を詳細に説明する。
【0011】
<一液型塗料組成物>
本発明の一液型塗料組成物は、変性エポキシ樹脂(A)と、変性エポキシ樹脂(A)以外であって、1分子中に複数のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(B)と、顔料(C)と、有機溶剤(D)と、を含む一液型塗料組成物であって、エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量が300~1500であり、変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の質量比率((A)/(B))が、20/80~65/35であり、固形分中に占める顔料(C)の含有量が50~80質量%である。
【0012】
<変性エポキシ樹脂(A)>
本発明の一液型塗料組成物は、エポキシ樹脂が用いられる。特に、変性エポキシ樹脂(A)は、硬化剤を使用することなく単独で成膜可能なエポキシ樹脂であることから一液型塗料組成物に用いられる。本発明の一液型塗料組成物における変性エポキシ樹脂(A)としては、アルキド変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられる。特に、アルキド変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびアクリル変性エポキシ樹脂から選択される変性エポキシ樹脂であることが好ましく、さらに、アルキド変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の一液型塗料組成物は、変性エポキシ樹脂(A)が、1種の変性されたエポキシ樹脂を含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0013】
変性エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000~70,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が上記範囲であれば、比較的低粘度な樹脂溶液が得られ、塗料として適した粘度へ調整する際に有機溶剤(D)の添加量を抑えることができる。
変性エポキシ樹脂(A)の固形分含有量は、防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、一液型塗料組成物の固形分100質量%に対し、4~30質量%、好ましくは5~15質量%である。
なお、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とし、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。
【0014】
変性エポキシ樹脂(A)は、樹脂溶液の状態において、JIS-K-5600-2-2:1999に準じて測定した25℃におけるガードナー粘度がG~Z1のものが好ましく、特にP~Yであるものが好ましい。変性エポキシ樹脂(A)溶液の粘度が前記範囲であると、塗料として適した粘度へ調整する際に有機溶剤(D)の添加量を抑えることができる。
【0015】
本発明の変性エポキシ樹脂(A)は、従来公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品として入手することも可能である。市販品としては、例えば、DIC社製のエピクロンシリーズやアルキディアシリーズ、荒川化学工業社製のアラキードシリーズやモデピクスシリーズ、三井化学社製のエポキーシリーズ、レゾナック社製のフタルキッドシリーズ等が挙げられる。
【0016】
<エポキシ樹脂(B)>
また、本発明の一液型塗料組成物は、1分子中に複数のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(B)を含有する。エポキシ樹脂(B)として、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、脂環族型エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂が挙げられる。
これらの中でも、基材との密着性に優れる塗膜を容易に形成できることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型、ビスフェノールAD型およびビスフェノールF型のエポキシ樹脂から選択される1種以上であることがより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量は、300~1,500の範囲が好ましく、エポキシ当量は、150~1,000の範囲が好ましい。また、エポキシ樹脂(B)を2種以上用いる場合、少なくとも1種のエポキシ樹脂(B1)は、重量平均分子量が500~1,500であることが好ましく、(B1)とは異なるエポキシ樹脂(B2)は、重量平均分子量が300~500であることが好ましい。このとき、エポキシ樹脂(B1)とエポキシ樹脂(B2)との固形分における質量比率((B1)/(B2))が、50/50~90/10であることが好ましく、55/45~80/20であることが更に好ましい。
また、エポキシ樹脂(B)の含有量は、基材との付着性に優れる塗膜を得ることができる等の点から、一液型塗料組成物の固形分100質量%に対し、7~40質量%、好ましくは8~20質量%である。
なお、エポキシ当量は、JIS K 7336:2001の規格に準拠して測定した。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂(B)は、従来公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品として入手することも可能である。市販品としては、例えば、「E-028」(大竹明新化学(株)製、エポキシ当量180~190、固形分100%)、「jER807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~175、固形分100%)、「E-028-90X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液、重量平均分子量370、エポキシ当量200~210、固形分90%、「HP-820」(DIC(株)製、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量150~200、固形分100%)、「jER828」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量370、エポキシ当量184~194、固形分100%)、「jER834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量470、エポキシ当量230~270、固形分100%)、「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液、重量平均分子量470、エポキシ当量270~320、固形分85%)、「jER1001」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量900、エポキシ当量450~500、固形分100%)、「E-001-75」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液、重量平均分子量900、エポキシ当量600~660、固形分75%)等が挙げられる。
【0019】
ここで、変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の固形分における質量比率((A)/(B))は、20/80~65/35の範囲であることが好ましい。前記比率において、変性エポキシ樹脂(A)が20質量%未満でエポキシ樹脂(B)が80質量%を超えると、形成される塗膜の架橋密度が低下し、耐水性や耐食性が低下する恐れがある。また、変性エポキシ樹脂(A)が65質量%を超えてエポキシ樹脂(B)が35質量%未満になると、塗料粘度が上昇することによる塗装お性の低下や、可撓性が低下することによる基材との付着性の低下が生じる恐れがある。さらに、質量比率((A)/(B))が30/70~55/45の範囲であることがより好ましい。
【0020】
<その他の樹脂>
さらに、本発明の一液型塗料組成物は、本発明の効果に影響のない範囲で性能を改良するという目的で、その他の樹脂類、たとえば、アクリル系共重合体類、繊維素系化合物類、アクリル化アルキド樹脂類、アルキド樹脂類、シリコーン樹脂類、フッ素樹脂類または変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂類など、通常塗料に配合することができる樹脂を、適宜、併用することもできる。
【0021】
<顔料(C)>
本発明の一液型塗料組成物は、顔料(C)を含む。顔料(C)としては、優れた耐水性、耐食性、防錆性を併せ持つ塗膜を形成するため、体質顔料(C1)に加えて、着色顔料(C2)、防錆顔料(C3)等を含むことができる。
【0022】
また、本発明の一液型塗料組成物において、塗膜形成成分の固形分中における顔料(C)の含有量は、50~80質量%の範囲であることが好ましく、60~80質量%の範囲であることがさらに好ましい。顔料(C)の含有量が50質量%未満であると、特に耐食性が低下し、80質量%を超えると、付着性及び耐水性の低下や、塗膜の成膜が困難となる。
【0023】
<<体質顔料(C1)>>
体質顔料(C1)は、白色ないし無色の顔料である。屈折率が低いため、展色剤に混和しても隠蔽性にほとんど影響を与えないことから、増量剤として着色力や光沢、強度、使用感などの調整に使われる。体質顔料(C1)は、公知の材料が使用でき、例えば、沈降性硫酸バリウム、シリカ、クリストバライト、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、および酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0024】
<<着色顔料(C2)>>
着色顔料(C2)としては、その組成から無機顔料と有機顔料に大別され、耐食性を考慮し、特に無機顔料を含むことが好ましい。無機顔料としては、公知の材料が使用でき、例えば、酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。
【0025】
<<防錆顔料(C3)>>
防錆顔料としては、公知の材料が使用でき、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。特に、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム等が好ましい。本発明の一液型塗料組成物中において、固形分中の防錆顔料の含有量は、1~15質量%であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の一液型塗料組成物に含まれる顔料(C)は、吸油量が5~20ml/100gの範囲である体質顔料(C1)を含むことが好ましく、吸油量が8~16ml/100gの範囲であることがさらに好ましい。
ここで、吸油量は、JIS規格(JIS K 5101-13-1)による亜麻仁油を用いた精製あまに油法で測定する。
吸油量が20ml/100gを超える顔料(C)を多く含む場合、一液型塗料組成物の粘度を低下させるためにより多くの有機溶剤や樹脂が必要となるため、塗膜強度の低下や、環境への負荷が大きくなることが挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の一液型塗料組成物における固形分中の顔料(C)と、樹脂固形分(前記一液型塗料組成物に含まれる全ての樹脂固形分の合計)との質量比(顔料/樹脂固形分)が、2.5~3.8であることが好ましい。(顔料/樹脂固形分)を2.5~3.8の範囲とするために、例えば、上述したように、吸油量の低い顔料を選択している。(顔料/樹脂固形分)が2.5未満では塗料粘度が著しく上昇するため塗装作業性が劣るほか、耐食性が低下する。また、(顔料/樹脂固形分)が3.8を超えると、塗膜強度が低下し、付着性及び耐水性が低下する恐れがあり、更には成膜不良により耐水性、耐食性及び付着性が低下する恐れがある。
【0028】
<有機溶剤(D)>
本発明の一液型塗料組成物に用いる有機溶剤(D)としては、特に限定されないが、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-2-メトキシプロピル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシプロピル-2-アセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート等のグリコールエステル系溶剤、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、アセチルアセトン等のケトン系溶剤、分子式C2n+2で表せる飽和鎖状化合物で直鎖、および分岐構造を有するオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン等のパラフィン系炭化水素溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のナフテン系炭化水素溶剤等が挙げられる。その中でも、グリコールエステル系溶剤、ケトン系溶剤を含むことが好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
<<ケトン系有機溶剤(D1)>>
本発明の一液型塗料組成物における有機溶剤(D)は、ケトン系有機溶剤(D1)を含有することが好ましく、有機溶剤(D)の全量におけるケトン系有機溶剤(D1)の含有量は、20~40質量%の範囲であることが好ましい。さらに、ケトン系有機溶剤(D1)の中でも、SP値(溶解パラメータ)が9.0~10.0の範囲にあるものが特に好ましく、樹脂を溶解する能力が高いことから、塗料組成物における有機溶剤(D)の含有量が少ない場合であっても、良好な塗装作業性を有することが可能となる。具体的には、メチルイソブチルケトン(SP値:9.0)、メチルエチルケトン(SP値:9.5)等が挙げられる。
【0030】
ここで、SP値とは、相溶性を判断する際の目安となるもので、種々の計算方法や実測方法がある。本発明の一液型塗料組成物におけるSP値は、構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)で示される。有機溶剤のSP値は、Hoyの提唱した蒸気圧法を用い、文献[K.L.Hoy,J.Paint Technology,42,(541),76(1970)]に記載された方法に準拠して計算した値である。
【0031】
<<グリコールエステル系有機溶剤(D2)>>
本発明の一液型塗料組成物における有機溶剤(D)は、グリコールエステル系有機溶剤(D2)を含有することが好ましい。グリコールエーテル系溶剤(D2)は、ヒドロキシ基を介する水素結合が多く、分子間力が強いために、分子量の割に融点や粘度が高く、かつ、溶剤としてエポキシ樹脂を溶解しやすい。また、乾燥性が比較的遅いことから、塗装後の塗膜外観が良好となる。
【0032】
本発明の一液型塗料組成物に対する有機溶剤(D)の含有量は、25~45質量%の範囲であることが好ましく、30~40質量%の範囲であることが特に好ましい。有機溶媒(D)の含有量を比較的少なくすることで、塗装時や塗装後の揮発性有機化合物(VOC)の量を削減し、環境への負荷を軽減することができる。
本発明の一液型塗料組成物において、有機溶剤(D)の含有量を上記範囲とする方法としては、例えば、比較的低粘度の変性エポキシ樹脂(A)と、低分子量のエポキシ樹脂(B)を用いることや、吸油量が5~20ml/100gと比較的低い体質顔料(C1)を含むこと、顔料(C)と樹脂成分との比率である(顔料/樹脂固形分)を2.5~3.8の範囲とすること、変性エポキシ樹脂(A)やエポキシ樹脂(B)に対して、溶解性の高い溶剤を用いること、等が挙げられる。これらを選択的に組み合わせることによって、有機溶剤(D)が比較的少ない含有量であっても、フォードカップNo.4で測定したときの23℃における粘度が10~40秒と低粘度の一液型塗料組成物を得ることができる。
【0033】
<その他の添加剤(E)>
本発明の一液型塗料組成物は、その他に、艶消し剤、可撓性付与剤、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、粘性調整剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ止め剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電性滑剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。添加剤(E)の含有量は、本発明の一液型塗料組成物において、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0034】
<<顔料分散剤(E1)>>
本発明の一液型塗料組成物は、顔料分散剤として、塗料組成物の粘度の低下を図り、顔料の沈降防止と平滑な表面を形成するために用いることができる。この分散剤としては、特に限定されないが、高分子量のものが好ましく、市販の高分子分散剤として、例えば、Disperbyk111、160、161、162、163、164、166、168、170、171、182、2000、2001、2070、2150、2163(いずれもビックケミー・ジャパン社製);EFKAPX4300、PX4310、PX4320、PX4330、PX4340、PX4350、PA4400、PA4401、PA4402、PA4403、PA4450、PX4700、PX4701、PX4731、PX4732(いずれもEFKA社製);Dispex Ultra4585(BASF社製)、Solsperse 24000、32550(いずれも日本ルーブリゾール社製)、Ajisper PB821、PB-822およびPB-823(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0035】
<粘度>
本発明の一液型塗料組成物は、フォードカップNo.4で測定したときの23℃における粘度が10~40秒であることが好ましく、15~30秒であることが更に好ましい。一液型塗料組成物の粘度を10~40秒の範囲とすることで、塗装作業性、特にエアレススプレーを用いて塗装する際の吐出性や塗装後の仕上がり外観が良好となる。また、フォードカップNo.4による粘度の測定方法としては、まず、塗料組成物を十分に攪拌した後、水平に固定したフォードカップNo.4のオリフィスを指で押さえ一杯まで注ぎ入れる。次いで、指を離すと同時に時間の計測を開始し、フォードカップNo.4からの塗料組成物の流出が途切れるまでの時間(秒)を計測し、計測した時間を粘度とする。
【0036】
<一液型塗料組成物の製造方法>
本発明の一液型塗料組成物は、特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。例えば、変性エポキシ樹脂(A)、重量平均分子量が300~1500であるエポキシ樹脂(B)、顔料(C)及び有機溶剤(D)と、必要に応じて適宜選択される各種添加剤(E)とをディスパーにて混合し、均一に分散させることで製造することができる。
【0037】
<塗膜の形成方法>
金属基材の上に、本発明の一液型塗料組成物を塗装して下塗り層を形成することができる。下塗り層としては、好ましくは乾燥膜厚が20~150μmであり、25~60μmであることがより好ましい。本発明の一液型塗料組成物は、変性エポキシ樹脂(A)と、低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)を固形分の質量比率((A)/(B))が20/80~65/35の範囲となるように配合することにより、塗装作業性が良好であり、かつ基材との付着性、耐水性および耐食性に優れた塗膜を形成することができる。特に、顔料(C)と樹脂固形分の質量比(顔料/樹脂固形分)を2.5~3.8とすることや、吸油量が5~20ml/100gと比較的低い顔料を含むこと、変性エポキシ樹脂(A)や低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(B)に対して溶解性の高い有機溶剤(D)を選定することで、高固形分の塗料であっても、フォードカップNo.4で測定したときの23℃における粘度が10~40秒、好ましくは15~30秒と塗装作業性に優れる一液型塗料組成物が得られ、下塗塗料として好適な塗膜が形成可能である。
また、本発明の一液型塗料組成物を下塗り層とし、その上に一液型又は二液型の塗料を塗装することで、上塗り層を設けることができる。上塗り層としては、耐候性を付与するため、特に、二液型のウレタン樹脂系塗料による塗膜であることが好ましい。
【0038】
<塗装方法>
本発明の一液型塗料組成物の塗装方法としては、特に制限されず、公知の塗装方法、例えば、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、エアスプレー法とエアレススプレー法等を含むスプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。
本発明の一液型塗料組成物は、比較的高固形分であるにも関わらず塗料粘度が低いため、エアレススプレー法により塗装が可能である。エアレススプレー法は、細いノズル先端に高圧力をかけて大気中に噴出させ、空気との衝突によって塗料を微粒化して塗装する方法であり、塗料の飛散が少ないため塗着効率が高く、付着性の良好な塗膜が得られる。
【0039】
<塗装体>
本発明の一液型塗料組成物は、例えば、塗装対象として建築物や構築物等の構造物、車両(自動車等)、家具、建具、電子機器(家電機器等)やそれらの部品の金属基材表面に塗膜を有するものが挙げられる。金属基材としては、特に限定されるものではないが、その形状は、例えば板状、シート状、箔状等である。また、該基材を構成する金属としては、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、中でも、鉄鋼が好ましい。さらに、金属基材としては各種表面処理、例えば酸化処理が施されてもよい。一例として、アルマイト処理、リン酸塩処理、クロメート処理、ノンクロメート処理等の方法で鉄鋼、アルミニウムに酸化処理を施した基材を用いることができる。また、金属基材には、金属薄膜を表面に備える各種プラスチック基材も含まれる。金属の成膜には、蒸着、スパッタ、メッキ法等が利用できる。金属薄膜としては、アルミニウム、錫、亜鉛、金、銀、白金、ニッケル等の金属の薄膜が挙げられる。
本発明の一液型塗料組成物の塗布量は、塗布される基材の種類や用途に応じて変えることができる。
【実施例0040】
<実施例1~12、比較例1~5の調製>
表1および表2に示す配合(数値は質量%である)によって、変性エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、顔料(C)と有機溶剤(D)およびその他の原料をディスパーにて均一に分散するよう混合し、一液型塗料組成物(実施例1~12、比較例1~5)を得た。
NVとは、樹脂中における不揮発分(%)を示している。なお、不揮発分は、塗料組成物を、測定条件:130℃、40分で乾燥させた際に残存する成分をいう。
【0041】
使用した原料の詳細および配合例を表1に示す。
(A-1)アルキド変性エポキシ樹脂溶液(商品名:アラキード9212、荒川化学工業社製、NV:40%、溶剤成分:キシレン、シクロヘキサノン、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、n-ブタノール)
(A-2)アルキド変性エポキシ樹脂溶液(商品名:フタルキッドE9500、レゾナック社製、NV:40%、溶剤成分:ブチルアルコール、キシレン、トルエン)
(A-3)脂肪酸変性エポキシ樹脂溶液(NV:60%)
【0042】
<脂肪酸変性エポキシ樹脂溶液の調整>
(A-3)脂肪酸変性エポキシ樹脂溶液は、以下のように調製した。
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管を備えた反応容器にエポキシ樹脂(jER1001、三菱ケミカル社製)36質量部、大豆油24質量部、酢酸ブチル15質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル12質量部を仕込み、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、250℃で酸価が3mgKOH/g以下に達するまで反応を行った後、冷却した。次に、イプゾール100(炭化水素系溶剤混合物、出光興産社製)13質量部を仕込み、目的とする脂肪酸変性エポキシ樹脂溶液(A-3)(不揮発分60質量%)を得た。
【0043】
(B1-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液(商品名:jER1001、三菱ケミカル社製、NV:70%、溶剤成分:キシレン、エポキシ当量450~500、重量平均分子量900)
(B2-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液(商品名:jER828、三菱ケミカル社製、NV:100%、エポキシ当量184~194、重量平均分子量370)
(B2-2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液(商品名:jER834X90、三菱ケミカル社製、NV:90%、エポキシ当量230~270、重量平均分子量470)
【0044】
(C1-1)体質顔料:重質炭酸カルシウム(商品名:DURCAL5、OMYA-SAS社製、NV:100%、吸油量:16mL/100g)
(C1-2)体質顔料:硫酸バリウム(商品名:Sparwite W-20HB、Shino-can-mivronized社製、NV:100%、吸油量:9mL/100g)
(C1-3)体質顔料:沈降性硫酸バリウム(商品名:沈降性硫酸バリウム、川津産業社製、NV:100%、吸油量:20mL/100g)
(C2-1)着色顔料:酸化チタン(商品名:TITONER-5N、堺化学工業社製、NV:100%、吸油量:20mL/100g)
(C3-1)防錆顔料;リンモリブデン酸アルミニウム(商品名:LFボウセイPM-300、キクチカラー工業社製、NV:100%、吸油量:31mL/100g)
(C3-2)防錆顔料:酸化亜鉛(商品名:酸化亜鉛2種、堺化学工業社製、NV:100%、吸油量:13mL/100g)
【0045】
(D1-1)ケトン系溶剤(メチルエチルケトン)
(D2-1)グリコールエステル系溶剤(3-メトキシ-1-ブチルアセテート)
(D-1)芳香族化合物含有溶剤(キシレン)
(D-2)アルコール系溶剤(ブチルアルコール)
【0046】
(E1-1)顔料分散剤(商品名:DISPER-BYK2155、ビックケミージャパン社製、ブロック共重合物、NV:99%)
(E1-2)顔料分散剤(商品名:DISPER-BYK2163、ビックケミージャパン社製、ブロック共重合物、NV:45%)
(E-1)シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業社製、エポキシ基含有シランカップリング剤、NV:100%)
(E-2)沈殿防止剤(商品名:ディスパロン4200-200、楠本化成社製、酸化ポリオレフィン系沈殿防止剤、NV:20%)
(E-3)たれ止め剤(商品名:ペントン34、田辺化学工業社製、4級アミンとベントナイトクレイの反応物、NV:20%)
(E-4)消泡剤(商品名:フローレンAC300F、共栄社化学社製、アクリル系消泡剤、NV:77%)
(E-5)表面調整剤(商品名:KF-69、信越シリコーン社製、シリコーンオイル系表面調整剤、NV:1%)
【0047】
表1および表2は、配合処方に従って調製した実施例1~12、比較例1~5を示している。
また、固形分に占める変性エポキシ樹脂(A)、固形分に占めるエポキシ樹脂(B)、固形分に占める顔料(C)等の塗料の固形分濃度(質量%)と、塗料組成物に占める有機溶剤(D)の含有量(質量%)、変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との質量比((A)/(B))、固形分に占める顔料/樹脂固形分の質量比(顔料/樹脂固形分)を示している。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
<塗膜の形成方法>
リン酸鉄処理を施した冷間圧延鋼板上に、実施例1~12及び比較例1~5で得られた塗料組成物を、エアレススプレーを用いて、乾燥膜厚が35~45μmとなるように塗装し、80℃で30分間乾燥させて、試験塗板を形成した。
【0051】
<塗料性能・塗膜性能の評価>
実施例1~12及び比較例1~5で得られた塗料組成物、試験塗板について、塗料粘度、塗装作業性、耐水性、耐食性、および付着性を次の方法で評価した。結果を表3に示している。
【0052】
<<塗料粘度>>
実施例1~12及び比較例1~5で得られた塗料組成物を十分に攪拌した後、水平に固定したフォードカップNo.4のオリフィスを指で押さえ一杯まで注ぎ入れる。次いで、指を離すと同時に時間の計測を開始し、フォードカップNo.4からの塗料組成物の流出が途切れるまでの時間(秒)を計測し、計測した時間を粘度とした。
【0053】
<<塗装作業性>>
実施例1~12及び比較例1~5で得られた樹脂組成物を、無希釈で乾燥膜厚が35~45μmとなるようエアレススプレーを用いて塗装を行い、その仕上がり外観観察結果から塗装作業性を評価した。
◎:塗料が均一に広がっており、目視では凹凸が確認できず、塗付面の仕上がりがよい。
〇:塗料の一部が均一に広がらず、塗布面にわずかな凹凸が目視にて確認でき、塗付面の仕上がりはやや劣るが、塗装作業性に問題はない。
×:塗料が全体的に均一に広がらず、塗付面の仕上がりが悪い。
【0054】
<<付着性>>
実施例1~12及び比較例1~5で得られた試験塗板の表面カッターで切り込みを入れて、1mm角の碁盤目を100マス作り、その上に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、次の基準で評価した。
◎:塗膜の剥離は全く認められない。
○:碁盤目の淵部分に剥離が見られるが、付着性に問題はない。
×:基材部分から塗膜の剥離が認められる。
【0055】
<<耐水性>>
実施例1~12及び比較例1~5で得られた試験塗板を23℃の脱イオン水に360時間浸漬した後、表面の水滴をふき取った直後の塗膜外観および付着性を評価した。
◎:塗膜に膨れがなく、付着性の評価にも塗膜の剥離は全く認められない。
○:塗膜に膨れがなく、碁盤目の淵部分に剥離は認められるが、付着性に問題はない。
×:塗膜に膨れがある、または基材部分から塗膜の剥離が認められる。
【0056】
<<耐食性>>
耐塩水噴霧性試験:実施例1~12及び比較例1~5で得られた試験塗板の表面にカッターナイフでクロスカットを入れた。該試験塗板を35℃で144時間塩水噴霧試験に供し、錆の発生を観察し、カット部からの異常幅を次の基準で評価した。
◎:クロスカット部以外に錆、膨れが認められず、錆はカット部より1mm未満である。
○:クロスカット部以外に錆、膨れが認められず、錆はカット部より1~3mm以内である。
×:塗膜全体に錆・膨れが認められる。
【0057】
【表3】
【0058】
表3に示す結果から、実施例1~12の一液型塗料組成物は、フォードカップNo.4で測定する23℃における粘度が10~40秒の範囲内にあった。また、塗装作業性、耐水性、耐食性、付着性のいずれも評価結果が「◎」または「〇」で、実用上の問題はなく、優れた性能を有する。
【0059】
比較例1の一液型塗料組成物は、変性エポキシ樹脂(A)を含まないことにより、塗膜の架橋密度が低下し、耐水性および防食性の評価結果が「×」で、劣っていた。
【0060】
比較例2の一液型塗料組成物は、変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の質量比率((A)/(B))において変性エポキシ樹脂(A)の含有割合が少ないことから、塗膜の架橋密度が低下し、耐水性および防食性の評価結果が「×」で、劣っていた。
【0061】
比較例3の一液型塗料組成物は、変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の質量比率((A)/(B))においてエポキシ樹脂(B)の含有割合が少ないことから、塗料粘度が高く、塗装作業性の評価結果が「×」で、劣っていた。
【0062】
比較例4の一液型塗料組成物は、エポキシ樹脂(B)を含まないことから、塗料粘度が非常に高く、形成する塗膜の可撓性も低下しているため、塗装作業性および付着性の評価結果が「×」で、劣っていた。
【0063】
比較例5の一液型塗料組成物は、固形分中に占める顔料(C)の含有量が少ないため、塗膜強度が低下し、耐食性の評価結果が「×」で、劣っていた。
【0064】
これらの実施例1~12および比較例1~5の結果から、本発明の一液型塗料組成物は、塗料粘度、塗装作業性、耐水性、耐食性、および付着性のいずれの性能とも、実用上問題がなく、優れていることが分かった。