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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145906
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電気分解装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20241004BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241004BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20241004BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C25B9/00 A
C25B9/60
C25B9/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058492
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】川口 佳之
【テーマコード(参考)】
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB07
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB16
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB38
4D061GB18
4K021AB07
4K021BA02
4K021CA01
4K021CA02
4K021CA15
4K021DA09
4K021DA15
4K021DC07
4K021EA07
(57)【要約】
【課題】効率よく電気分解を行うことができる電気分解装置を提供する。
【解決手段】電気分解装置1は、ケース11と、第一電極板2a及び第二電極板2bと、を有している。ケース11は、内部空間111に水を導入する水導入部12と、内部空間111から水を導出する水導出部と、を有している。第一電極板2aは、ケース11の内部空間111における水導入部12と水導出部との間に配置されている。第二電極板2bは、ケース11の内部空間111における、第一電極板2aに対向する位置に配置されている。第一電極板2aと第二電極板2bとの間には電極間空間21が形成されている。内部空間111における、水導入部12の開口121と電極間空間21との間には流路調整部14が配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解する電気分解装置であって、
前記水が流通する内部空間と、前記内部空間に前記水を導入する水導入部と、前記内部空間から前記水を導出する水導出部と、を有するケースと、
前記内部空間における前記水導入部と前記水導出部との間に配置された第一電極板と、
前記内部空間における、前記第一電極板に対向する位置に配置された第二電極板と、を有し、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に電極間空間が形成されており、
前記ケースは、前記内部空間における、前記水導入部の開口と前記電極間空間との間に配置された流路調整部を有している、電気分解装置。
【請求項2】
前記ケースの前記内部空間は、前記水導入部の開口と前記電極間空間との間に、前記水導入部の開口の流路断面積及び前記電極間空間の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水分配空間を有している、請求項1に記載の電気分解装置。
【請求項3】
前記ケースの前記内部空間は、前記電極間空間と前記水導出部の開口との間に、前記電極間空間の流路断面積及び前記水導出部の開口の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水合流空間を有している、請求項1に記載の電気分解装置。
【請求項4】
前記第一電極板及び前記第二電極板は、その端縁の少なくとも一部に直線部を有しており、前記流路調整部は前記直線部における一方の端点と他方の端点との間に対面する位置に配置されている、請求項1に記載の電気分解装置。
【請求項5】
前記第一電極板から前記第二電極板までの距離が前記水導入部の開口の円相当径よりも小さい、請求項1に記載の電気分解装置。
【請求項6】
前記電気分解装置は、前記ケースの内表面と前記第一電極板との間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第一シール材と、前記ケースの内表面と前記第二電極板との間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第二シール材と、を有しており、前記ケースは、その内表面から突出し、前記第二電極板を貫通して前記第一電極板に当接した第一ボスと、前記第一電極板を貫通して前記第二電極板に当接した第二ボスと、を有している、請求項1に記載の電気分解装置。
【請求項7】
前記第一シール材は、前記第一電極板の端縁に沿って配置された第一外周シール部を有しており、前記第二シール材は、前記第二電極板の端縁に沿って配置された第二外周シール部を有している、請求項6に記載の電気分解装置。
【請求項8】
前記第一シール材は、前記第一外周シール部の内側に配置された第一電極支持部を有しており、前記第二シール材は、前記第二外周シール部の内側に配置された第二電極支持部を有している、請求項7に記載の電気分解装置。
【請求項9】
前記第一電極支持部は前記第一外周シール部に連なっており、前記第二電極支持部は前記第二外周シール部に連なっている、請求項8に記載の電気分解装置。
【請求項10】
前記第一電極板及び前記第二電極板の形状は長方形状であり、前記流路調整部は、前記第一電極板及び前記第二電極板の短辺に対面する位置に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の電気分解装置。
【請求項11】
前記第一電極板及び前記第二電極板の短辺の長さが前記水導入部の開口の円相当径よりも大きい、請求項10に記載の電気分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水を電気分解することにより得られる電解水は、電気分解によって生じた化学物質に応じて種々の機能を有している。例えば、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン、塩素酸イオンなどの塩素原子を有する化学物質を含む電解水には、除菌や消毒、消臭などの種々の効果が期待されている。
【0003】
水を電気分解するための電気分解装置は、互いに対向して配置された一対の電極を有しており、電極間に電圧を印加することにより、電極間に存在する水の電気分解を行うことができるように構成されている。例えば特許文献1には、間隔を開けて互いに対向して配置された複数の電極と、前記複数の電極のうちで第1の電極を固定可能であり、内面から立設する突起部を有する第1のケースと、前記複数の電極のうちで第2の電極を支持可能な第2のケースと、を備え、前記複数の電極のうちの前記第2の電極以外の電極は、前記突起部が貫通可能な電極孔を有し、前記電極孔を貫通した前記突起部は、前記第1の電極以外の電極と当接することにより、前記複数の電極の互いの間隔を所定の距離にそれぞれ確保することを特徴とする電解槽が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-67758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電解槽は、電解槽に供給する水の水質や電気分解の条件等によっては電気分解の効率が不十分となり、電気分解によって生じる化学物質の濃度を十分に高くできないことがあった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、効率よく電気分解を行うことができる電気分解装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、水を電気分解する電気分解装置であって、
前記水が流通する内部空間と、前記内部空間に前記水を導入する水導入部と、前記内部空間から前記水を導出する水導出部と、を有するケースと、
前記内部空間における前記水導入部と前記水導出部との間に配置された第一電極板と、
前記内部空間における、前記第一電極板に対向する位置に配置された第二電極板と、を有し、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に電極間空間が形成されており、
前記ケースは、前記内部空間における、前記水導入部の開口と前記電極間空間との間に配置された流路調整部を有している、電気分解装置にある。
【発明の効果】
【0008】
前記電気分解装置のケースは、その内部空間における、水導入部の開口と電極間空間との間に配置された流路調整部を有している。前記特定の位置に設けられた流路調整部は、水導入部から導入された水が電極間空間内に流入する前に水の流れの向きを変更することができる。そして、流路調整部によって水導入部から流入する水の流れの向きを変更することにより、水導入部から流入した水が電極間空間内に均一に広がりやすくなる。その結果、電極間空間における水の電気分解の効率を高め、電気分解によって生じる化学物質の濃度を容易に高めることができる。
【0009】
以上のように、前記の態様によれば、効率よく電気分解を行うことができる電気分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1における電気分解装置の斜視図である。
図2図2は、実施例1における電気分解装置の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線矢視断面における、水導入部近傍の拡大図である。
図4図4は、図1のIII-III線矢視断面における、水導出部近傍の拡大図である。
図5図5は、図3のV-V線矢視断面図である。
図6図6は、実施例1における電気分解装置のケース本体部の上面図である。
図7図7は、実施例1における電気分解装置のケース蓋部の下面図である。
図8図8は、実施例1における第一電極板の上面図である。
図9図9は、実施例1における第一シール材の上面図である。
図10図10は、実施例2における電解水吐出ユニットの全体の構成を示す説明図である。
図11図11は、実施例2における電解水吐出ユニットの電解水生成部の概略構成を示す説明図である。
図12図12は、実施例2における水栓の側面図である。
図13図13は、実施例2における水栓の上面図である。
図14図14は、図13のXIV-XIV線一部矢視断面図である。
図15図15は、実施例3における、電解水吐出ユニットが取り付けられたキッチンユニットの上面図である。
図16図16は、実施例3における、キッチンユニットの側面図である。状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記電気分解装置における第一電極板は、ケースの内部空間における水導入部と水導出部との間に配置されている。より具体的には、第一電極板は、その少なくとも一部が水導入部の開口と、水導出部の開口とを結ぶ直線状の領域内に含まれるように配置されていればよい。電極間空間により均等に水を流し、電気分解の効率を高める観点からは、第一電極板は、水導入部の開口と、水導出部の開口とを結ぶ直線状の領域内に第一電極板の重心が含まれるように配置されていることが好ましい。
【0012】
第二電極板は、ケースの内部空間における、第一電極板に対向する位置に配置されている。第二電極板を第一電極板に対向する位置に配置することにより、第一電極板と第二電極板との間に電極間空間を形成することができる。
【0013】
第一電極板から第二電極板までの距離は、第一電極板と第二電極板との間に印加する電圧の高さ、電極間空間を流れる水の水質及び所望の流量等に応じて適宜設定すればよい。第一電極板から第二電極板までの距離は水導入部の開口の円相当径よりも小さいことが好ましい。このように、電極間の隙間を比較的小さくすることにより、流路調整部によって流れの向きを変更された水が、電極間空間内により均一に進入しやすくなる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0014】
また、第一電極板から第二電極板までの距離は、0.3mm以上0.7mm以下であることが好ましい。第一電極板と第二電極板との間隔を、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.65mm以下、さらに好ましくは0.6mm以下、特に好ましくは0.55mm以下とすることにより、水の電気分解を効率よく行い、電気分解によって生じる化学物質の濃度を高めることができる。また、第一電極板と第二電極板との間隔を、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.35mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上、特に好ましくは0.45mm以上とすることにより、電気分解に伴って生じる析出物等の異物が第一電極板と第二電極板との間に詰まりにくくなる。
【0015】
第一電極板から第二電極板までの距離の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した第一電極板から第二電極板までの距離の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、第一電極板から第二電極板までの距離の好ましい範囲は、0.35mm以上0.65mm以下であってもよく、0.4mm以上0.6mm以下であってもよく、0.45mm以上0.55mm以下であってもよい。これらの電気分解の効率向上の効果と、異物の詰まりの抑制の効果とをバランス良く得る観点からは、第一電極板と第二電極板との間隔を0.5mmとすることが最も好ましい。
【0016】
第一電極板及び第二電極板の形状は、種々の態様を取り得る。例えば、第一電極板及び第二電極板は、正方形及び長方形等の四角形状を有していてもよく、円形、長円形及び楕円形等の円形状を有していてもよい。例えば、第一電極板及び第二電極板の形状が、正方形や長方形などのように、その端縁の少なくとも一部に直線部を有している場合、流路調整部は直線部における一方の端点と他方の端点との間に対面する位置に配置されていることが好ましい。この場合には、水導入部から流入した水を流路調整部によって流路調整部の左右に分配し、電極間空間内に水をより均一に進入させることができる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。この効果をより高める観点からは、流路調整部は直線部の中央に対面する位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
第一電極板及び第二電極板の形状が長方形状である場合、流路調整部は、第一電極板及び第二電極板の短辺に対面する位置に配置されていることが好ましい。この場合、水導入部から流入した水が、流路調整部によって流れの向きを変更された後に第一電極板の短辺と第二電極板の短辺との間から電極間空間に進入する。そして、電極間空間内に進入した水が、第一電極板及び第二電極板の長辺に沿う方向に流れることにより、電極間空間内において水が電気分解される時間をより長くすることができる。以上の結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0018】
また、第一電極板及び第二電極板の形状が長方形状である場合、第一電極板及び第二電極板の短辺の長さが前記水導入部の円相当径の直径よりも大きいことが好ましい。この場合には、電極間空間の流路断面積をより広くし、電極間空間内を流れる水の流速を適度に低下させることができる。その結果、電極間空間内において水が電気分解される時間をより長くし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0019】
ケースの内部空間において第一電極板及び第二電極板の位置を保持する方法は特に限定されることはなく、種々の態様を取り得る。例えば、ケースがプラスチック等の合成樹脂から構成されている場合、第一電極板及び第二電極板は、インサート成形等の方法によってケースと一体化されていてもよい。また、第一電極板及び第二電極板は、ケースの内部空間に設けられた爪部や、ケースの内部空間に立設されたボス等によりケースに係合されていてもよい。
【0020】
また、電気分解装置は、ケースの内表面と第一電極板との間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第一シール材と、ケースの内表面と第二電極板との間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第二シール材と、を有していてもよい。ゴムやエラストマーからなるシール材は適度な柔軟性を有している。そのため、各電極板とケースとの間にシール材を設けることにより、何らかの理由でケースの内表面に歪みなどがある場合においても、ケースの内表面から各電極板までの距離のばらつきを第一シール材及び第二シール材の弾性変形によって吸収することができる。それ故、各電極板とケースの内表面との間にゴムまたはエラストマーからなるシール材を設けることにより、第一電極板と第二電極板との間の隙間の大きさをより均一にすることができる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0021】
また、各電極板とケースの内表面との間にシール材が設けられている場合、ケースは、その内表面から突出し、第二電極板を貫通して第一電極板に当接した第一ボスと、第一電極板を貫通して第二電極板に当接した第二ボスと、を有していることが好ましい。すなわち、各電極板が、シール材とボスとによって支持されていることが好ましい。この場合には、第一電極板と第二電極板との間の隙間の大きさを均一にする効果をより確実に得ることができる。さらに、第一ボス及び第二ボスを電極間空間内に配置することにより、電極間空間内の水の流れを適度に乱し、電極間空間内の水を攪拌することができる。これにより、電気分解の効率をより高めることができる。
【0022】
第一シール材は、第一電極板の端縁に沿って配置された第一外周シール部を有しており、第二シール材は、前記第二電極板の端縁に沿って配置された第二外周シール部を有していることが好ましい。このように、各電極板とケースの内表面との間にシール材の外周シール部を配置することにより、水導入部から流入した水が各電極板とケースとの間の隙間に進入することを抑制し、電極間空間に進入する水の割合をより大きくすることができる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0023】
また、第一シール材は、第一外周シール部の内側に配置された第一電極支持部を有しており、前記第二シール材は、第二外周シール部の内側に配置された第二電極支持部を有していることが好ましい。この場合には、各電極板の外周部分をシール材の外周シール部で支持するとともに、各電極板の外周部分の内側をシール材の電極支持部で支持することができる。その結果、電極間空間内における、第一電極板から第二電極板までの距離のばらつきをより小さくし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0024】
第一電極支持部は、第一外周シール部とは別の部材であってもよいが、第一電極支持部が第一外周シール部に連なっていることが好ましい。同様に、第二電極支持部は第二外周シール部とは別の部材であってもよいが、第二電極支持部は第二外周シール部に連なっていることが好ましい。このように、各シール材における電極支持部を外周シール部と一体に形成することにより、電極板とケースの内表面との間の空間を、外周シール部及び電極支持部によって複数の領域に区画することができる。これにより、電極間空間を流れる水が、第一ボスと第一電極板との間の隙間や、第二ボスと第二電極板との間の隙間から各電極板とケースの内表面との間の空間へより進入しにくくなる。その結果、電極間空間に進入する水の割合をより大きくし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0025】
ケースの内部空間には、流路調整部が設けられている。また、流路調整部は、水導入部の開口と電極間空間との間に配置されている。流路調整部を前記特定の位置に配置することにより、水導入部から流入した水の流れの向きを変更し、電極間空間における広い範囲に水を進入させることができる。
【0026】
流路調整部は、その少なくとも一部が水導入部の開口に対面するように配置されていればよい。すなわち、流路調整部は、水導入部の開口の全面と対面していてもよく、水導入部の開口の一部と対面していてもよい。また、流路調整部の形状は特に限定されることはなく、角柱状や円柱状等の種々の態様を取り得る。
【0027】
ケースの内部空間は、水導入部の開口と電極間空間との間に、水導入部の開口の流路断面積及び電極間空間の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水分配空間を有していることが好ましい。電極間空間の上流に水分配空間を設けることにより、水導入部から流入した水を一旦水分配空間に貯留することができる。また、水分配空間は電極間空間よりも流路断面積が大きいため、水分配空間から電極間空間に水が進入する際の流路抵抗を適度に高めることができる。その結果、水分配空間内の水を電極間空間内により均一に進入させ、電気分解の効率をより高めることができる。
【0028】
また、ケースの内部空間は、電極間空間と水導出部の開口との間に、電極間空間の流路断面積及び水導出部の開口の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水合流空間を有していることが好ましい。この場合には、電極間空間を通過した後の水の流路抵抗をより低減することができる。その結果、電極間空間における水の流れをより均一し、電気分解の効率をより高めることができる。
【実施例0029】
(実施例1)
前記電気分解装置の実施例を、図1図7を参照しつつ説明する。本例の電気分解装置1は、水を電気分解することができるように構成されている。図1及び図2に示すように、電気分解装置1は、ケース11と、第一電極板2a及び第二電極板2bと、を有している。図3及び図4に示すように、ケース11は、水が流通する内部空間111と、内部空間111に水を導入する水導入部12と、内部空間111から水を導出する水導出部13と、を有している。第一電極板2aは、ケース11の内部空間111における水導入部12と水導出部13との間に配置されている。第二電極板2bは、ケース11の内部空間111における、第一電極板2aに対向する位置に配置されている。第一電極板2aと第二電極板2bとの間には電極間空間21が形成されている。また、ケース11は、内部空間111における、水導入部12の開口121と電極間空間21との間に配置された流路調整部14を有している。以下、電気分解装置1のより詳細な構成を説明する。
【0030】
A.電気分解装置1
図1に示すように、本例の電気分解装置1におけるケース11の形状は直方体状である。図2に示すように、電気分解装置1のケース11は、有底箱状のケース本体部3と、ケース本体部3の開口を覆う蓋部4とから構成されている。ケース11の長手方向における一方の端部には水導入部12が設けられており、他方の端部には水導出部13が設けられている。
【0031】
図2に示すように、ケース本体部3と蓋部4との間には、第一シール材15、第一電極板2a、第二電極板2b、第二シール材16及びOリング17が収容されている。ケース本体部3と蓋部4とは、ケース本体部3に保持されるナット18と、蓋部4及びケース本体部3に挿通され、ナット18に締結されるボルト19とによって互いに固定されている。
【0032】
以下において、ケース11の長手方向を「縦方向X」、ケース本体部3と蓋部4との並び方向を「高さ方向Z」といい、縦方向及び高さ方向の両方に直交する方向を「横方向Y」という。また、縦方向Xにおける、水導出部13から水導入部12へ向かう向きを「前方X1」といい、水導入部12から水導出部13へ向かう向きを「後方X2」という。そして、高さ方向Zにおける、蓋部4からケース本体部3へ向かう向きを「下方Z1」といい、ケース本体部3から蓋部4へ向かう向きを「上方Z2」という。なお、前述した方向に関する表現は、電気分解装置1が実際に使用される際の前後方向や上下方向等とは何ら関係がない。
【0033】
B.ケース11
図1に示すように、本例の電気分解装置1におけるケース11は直方体状の形状を有している。縦方向Xの寸法は17mmであり、横方向Yの寸法は44mmであり、高さ方向Zの寸法は16mmである。
【0034】
図2に示すように、ケース本体部3は、高さ方向Zから視た平面視における中央部に位置するケース底壁31と、ケース底壁31の外周端縁から上方Z2に立設されたケース側壁32と、ケース側壁32の上端から外方に延出した本体フランジ33とを有している。
【0035】
図6に示すように、ケース底壁31は、縦方向Xにおける中央に位置し、第一電極板2aが配置される底壁中央部311と、底壁中央部311の前方X1に位置する底壁前端部312と、底壁中央部311の後方X2に位置する底壁後端部313と、を有している。底壁中央部311には、後述する第一シール材15に対応した形状を有する溝からなる底壁溝部314と、底壁中央部311から上方Z2に立設された8個の第一ボス315(315a~315e)とが設けられている。
【0036】
8個の第一ボス315のうち2個の第一ボス315cは、底壁中央部311における縦方向Xの中央部に位置している。また、2個の第一ボス315cは、横方向Yに互いに間隔をあけて配置されている。8個の第一ボス315のうち他の2個の第一ボス315aは、底壁中央部311における第一ボス315cの前方X1に位置しており、さらに他の2個の第一ボス315eは、底壁中央部311における第一ボス315cの後方X2に位置している。これらの第一ボス315a及び第一ボス315eは、第一ボス315cと同様に横方向Yに互いに間隔をあけて配置されている。
【0037】
また、8個の第一ボス315のうち、1個の第一ボス315bは、底壁中央部311の前方X1に配置された第一ボス315aと縦方向Xの中央部に配置された第一ボス315cとの間において、横方向Yの中央に配置されている。そして、8個の第一ボス315のうち、残る1個の第一ボス315dは、底壁中央部311の後方X2に配置された第一ボス315eと縦方向Xの中央部に配置された第一ボス315cとの間において、横方向Yの中央に配置されている。
【0038】
底壁前端部312と底壁中央部311との間、及び底壁後端部313と底壁中央部311との間には底壁仕切り部316(316a、316b)が設けられている。底壁仕切り部316は、底壁前端部312、底壁後端部313及び底壁中央部311よりも上方Z2に突出している。
【0039】
底壁仕切り部316の横方向Yにおける中央には、周囲よりも上方Z2に突出した仕切り凸部317が設けられている。図3に示すように、2つの仕切り凸部317(317a、317b)のうち前方X1の仕切り凸部317aは、後述するように、水導入部12の開口121と電極間空間21との間に配置されており、流路調整部14を構成している。また、図4に示すように、2つの仕切り凸部317のうち後方X2の仕切り凸部317bは、水導出部13の開口131と電極間空間21との間に配置されている。
【0040】
図3及び図4に示すように、ケース側壁32は、ケース底壁31の外周端縁から上方Z2に立設されている。ケース側壁32の周囲にはOリング17が配置されている。Oリング17は、ケース側壁32と、後述する蓋側壁42との間の隙間を閉鎖している。
【0041】
図6に示すように、ケース側壁32のうち、底壁前端部312に連なる第一側壁部321には、水導入部12が設けられている。水導入部12は、水が流通するチューブを接続することができるように構成された管状の形状を有している。また、水導入部12は、第一側壁部321の横方向Yにおける中央に開口121を有している。水導入部12の開口121は、ケース底壁31の前方X1に設けられた底壁仕切り部316a及び仕切り凸部317aに対面している。本例の水導入部12の開口121は円形であり、その直径は3.2mmである。なお、水導入部12の開口121の形状は円形に限定されることはない。水導入部12の開口121は、例えば四角形状や楕円形状、長円形状などの円形以外の形状を有していてもよい。
【0042】
ケース側壁32のうち、底壁後端部313に連なる第二側壁部322には、水導出部13が設けられている。水導出部13は、水導入部12と同様に、水が流通するチューブを接続することができるように構成された管状の形状を有している。また、水導出部13は、第二側壁部322の横方向Yにおける中央に開口131を有している。水導出部13の開口131は、ケース底壁31の後方X2に設けられた底壁仕切り部316b及び仕切り凸部317bに対面している。本例の水導出部13の開口131は円形であり、その直径は3.2mmである。なお、水導出部13の開口131の形状は円形に限定されることはない。水導出部13の開口131は、例えば四角形状や楕円形状、長円形状などの円形以外の形状を有していてもよい。
【0043】
本体フランジ33は、ケース側壁32の上端から外方に延出している。本体フランジ33には、ボルト19を挿通するためのボルト挿通孔331と、ナット18を保持するナット受け部(図示略)とが設けられている。ボルト挿通孔331は、本体フランジ33を高さ方向Zに貫通している。また、ナット受け部は、本体フランジ33の下面に設けられており、ナット18に対応した形状に陥没している。
【0044】
図2に示すように、蓋部4は、高さ方向Zから視た平面視における中央部に位置するケース頂壁41と、ケース頂壁41から上方Z2に立設された蓋側壁42と、蓋側壁42の上端から外方に延出した蓋フランジ43とを有している。
【0045】
図7に示すように、ケース頂壁41は、縦方向Xにおけるケース頂壁41の中央に位置し、第二電極板2bが配置される頂壁中央部411と、頂壁中央部411の前方X1に位置する頂壁前端部412と、頂壁中央部411の後方X2に位置する頂壁後端部413とを有している。頂壁中央部411には、後述する第二シール材16に対応した形状を有する溝からなる頂壁溝部414と、頂壁中央部411から下方Z1に立設された8個の第二ボス415(415a~415e)とが設けられている。
【0046】
8個の第二ボス415のうち2個の第二ボス415cは、頂壁中央部411における縦方向Xの中央部に位置している。また、第二ボス415cは、横方向Yに互いに間隔をあけて配置されている。8個の第二ボス415のうち他の2個の第二ボス415aは、頂壁中央部411における第二ボス415cの前方X1に位置しており、さらに他の2個の第二ボス415eは、頂壁中央部411における第二ボス415cの後方X2に位置している。これらの第二ボス415a及び第二ボス415eは、第二ボス415cと同様に横方向Yに互いに間隔をあけて配置されている。
【0047】
また、8個の第二ボス415のうち、1個の第二ボス415bは、頂壁中央部411の前方X1に配置された第二ボス415aと縦方向Xの中央部に配置された第二ボス415cとの間において、横方向Yの中央に配置されている。そして、8個の第二ボス415のうち、残る1個の第二ボス415dは、頂壁中央部411の後方X2に配置された第二ボス415eと縦方向Xの中央部に配置された第二ボス415cとの間において、横方向Yの中央に配置されている。
【0048】
頂壁前端部412と頂壁中央部411との間、及び頂壁後端部413と頂壁中央部411との間には頂壁仕切り部416(416a、416b)が設けられている。頂壁仕切り部416は、頂壁前端部412、頂壁後端部413及び頂壁中央部411よりも下方Z1に突出している。また、頂壁仕切り部416の横方向Yにおける中央、つまり、底壁中央部311の仕切り凸部317と対応する位置には、周囲よりも上方Z2に陥没した仕切り凹部417が設けられている。2つの仕切り凹部417(417a、417b)のうち前方X1の仕切り凹部417aは、図3に示すように、水導入部12の開口121に対面している。また、2つの仕切り凹部417のうち後方X2の仕切り凹部417bは、図4に示すように、水導出部13の開口131に対面している。
【0049】
図3及び図4に示すように、蓋側壁42は、ケース頂壁41の外周端縁から上方Z2に立設されている。ケース11において、蓋側壁42はケース側壁32と対面する位置に配置されている。また、蓋側壁42とケース側壁32との間には、ケース11の内部空間111からケース11の外部への水の漏出を抑制するためのOリング17が配置されている。
【0050】
図7に示すように、蓋フランジ43は、蓋側壁42の上端から外方に延出している。蓋フランジ43には、ボルト19を挿通するためのボルト挿通孔431が設けられている。ボルト挿通孔431は、本体フランジ33におけるボルト挿通孔331に対応する位置に配置されており、蓋フランジ43を高さ方向Zに貫通している。
【0051】
図3及び図4に示すように、ケース本体部3と蓋部4との間には、ケース11の内部空間111が形成されている。ケース11の内部空間111には、第一電極板2a、第二電極板2b、第一シール材15及び第二シール材16が配置されている。
【0052】
C.第一電極板2a
図3及び図4に示すように、第一電極板2aは、ケース本体部3における底壁中央部311の上方Z2に配置されている。第一電極板2aと底壁中央部311との間には第一シール材15が介在している。また、第一電極板2aの上方Z2の表面には蓋部4のケース頂壁41に立設された第二ボス415が当接している。すなわち、第一電極板2aは、第一シール材15と第二ボス415とによって支持されている。
【0053】
本例の第一電極板2aは、金属から構成されており、その表面に電気分解を促進させるための触媒が付着している。図2及び図8に示すように、第一電極板2aの形状は長方形であり、第一ボス315に対応する位置に、第一ボス315が挿通されるボス挿通孔22aが設けられている。また、第一電極板2aの長辺の後端には、第一電極板2aを外部回路と電気的に接続するための第一端子部23aが設けられている。第一端子部23aは、第一電極板2aから横方向Yに延出しており、図1に示すように第一端子部23aの先端がケース側壁32を貫通してケース11の外部に露出している。また、図2に示すように、第一端子部23aとケース側壁32との隙間は、端子シール材24aによって閉鎖されている。
【0054】
D.第二電極板2b
図3及び図4に示すように、第二電極板2bは、蓋部4における頂壁中央部411の下方Z1に配置されている。第二電極板2bは第一電極板2aと対面しており、第一電極板2aと第二電極板2bとの間に電極間空間21が形成されている。本例における電極間空間21の高さ方向Zにおける内寸法、つまり、第一電極板2aから第二電極板2bまでの高さ方向Zにおける距離は約0.5mmである。
【0055】
第二電極板2bと頂壁中央部411との間には第二シール材16が介在している。また、第二電極板2bの下方Z1の表面にはケース本体部3の底壁中央部311に立設された第一ボス315が当接している。すなわち、第二電極板2bは、第二シール材16と第一ボス315とによって支持されている。
【0056】
本例の第二電極板2bは、第一電極板2aと同様に金属から構成されており、その表面に電気分解を促進させるための触媒が付着している。図2に示すように、第二電極板2bの形状は長方形であり、第二ボス415に対応する位置に、第二ボス415が挿通されるボス挿通孔22bが設けられている。また、第二電極板2bの前端には、第二電極板2bを外部回路と電気的に接続するための第二端子部23bが設けられている。第二端子部23bは、第二電極板2bから第一端子部23aの延出方向と同一の方向に延出しており、図1に示すように第二端子部23bの先端がケース側壁32を貫通してケース11の外部に露出している。また、図2に示すように、第二端子部23bとケース側壁32との隙間は、端子シール材24bによって閉鎖されている。
【0057】
E.第一シール材15
本例の第一シール材15は、ゴムまたはエラストマーから構成されている。図3及び図4に示すように、第一シール材15は、ケース本体部3の底壁中央部311における底壁溝部314に保持されている。第一シール材15は、底壁中央部311と第一電極板2aとの間に介在しており、第一電極板2aを下方Z1から支持している。図9に示すように、第一シール材15は、第一電極板2aの外周端縁に沿った長方形の形状を有する第一外周シール部151と、第一外周シール部151の一方の長辺から他方の長辺までにわたって横方向Yに延在する複数の第一電極支持部152とを有している。
【0058】
F.第二シール材16
本例の第二シール材16は、ゴムまたはエラストマーから構成されている。図3及び図4に示すように、第二シール材16は、蓋部4の頂壁中央部411における頂壁溝部414に保持されている。第二シール材16は、頂壁中央部411と第二電極板2bとの間に介在しており、第二電極板2bを上方Z2から支持している。図2に示すように、第二シール材16の形状は第一シール材15と同様である。すなわち、第二シール材16は、第二電極板2bの外周端縁に沿った長方形の形状を有する第二外周シール部161と、第二外周シール部161の一方の長辺から他方の長辺までにわたって横方向Yに延在する複数の第二電極支持部162とを有している。
【0059】
G.内部空間111
図3及び図4に示すように、ケース11は、ケース底壁31、ケース側壁32、Oリング17、蓋側壁42及びケース頂壁41によって囲まれた内部空間111を有している。図3に示すように、内部空間111の前方X1の端部には水分配空間112が設けられている。また、図4に示すように、内部空間111の後方X2の端部には水合流空間113が設けられている。水分配空間112と水合流空間113とは、両者の間に配置された電極間空間21を介して連通している。
【0060】
図3に示すように、水分配空間112は、水導入部12の開口121と電極間空間21との間に設けられている。また、水分配空間112は、水導入部12の開口121の流路断面積及び電極間空間21の流路断面積よりも大きな流路断面積を有している。より具体的には、本例の水分配空間112は、図5に示すように、縦方向Xに垂直な断面において、水導入部12の開口121から横方向Yの両側に延出した形状を有している。これにより、水分配空間112の流路断面積は水導入部12の開口121の流路断面積よりも大きくなっている。
【0061】
また、水分配空間112の高さ方向Zにおける内寸法、つまり、底壁前端部312から頂壁前端部412までの高さ方向Zにおける距離は、電極間空間21の高さ方向Zにおける内寸法、つまり、第一電極板2aから第二電極板2bまでの高さ方向Zにおける距離よりも大きくなっている。また、水分配空間112の横方向Yにおける内寸法及び電極間空間21の横方向Yにおける内寸法は、ケース側壁32のうち、横方向Yの一方に設けられた第三側壁部323から横方向Yの他方に設けられた第四側壁部324までの距離と概ね等しい。これにより、水分配空間112の流路断面積は電極間空間21の流路断面積よりも大きくなっている。
【0062】
図5に示すように、水分配空間112と電極間空間21との間は、ケース底壁31の前方X1に設けられた底壁仕切り部316aと、ケース頂壁41の前方X1に設けられた頂壁仕切り部416aとによって区画されている。底壁仕切り部316aと頂壁仕切り部416aとの間には隙間が形成されており、水導入部12から流入した水は、底壁仕切り部316aと頂壁仕切り部416aとの間の隙間から電極間空間21に流入することができる。
【0063】
また、水導入部12の開口と電極間空間21との間には流路調整部14が設けられている。本例の流路調整部14は、より具体的には、底壁前端部312と底壁中央部311との間に設けられた底壁仕切り部316aである。
【0064】
図3に示すように、電極間空間21は、縦方向Xにおける水分配空間112の後方X2に配置されている。電極間空間21には、ケース本体部3に設けられた第一ボス315及び蓋部4に設けられた第二ボス415が立設されている。電極間空間21内に流入した水は、これらのボスによって流れを乱されつつ、電極間空間21の後方X2に配置された水合流空間113に導かれる。
【0065】
図4に示すように、水合流空間113は、電極間空間21と水導出部13の開口131との間に設けられている。図には示さないが、水合流空間113と電極間空間21との間は、ケース底壁31の後方X2に設けられた底壁仕切り部316b(図6参照)と、ケース頂壁41の後方X2に設けられた頂壁仕切り部416b(図7参照)とによって区画されている。底壁仕切り部316bと頂壁仕切り部416bとの間には隙間が形成されており、電極間空間21から流入した水は、底壁仕切り部316bと頂壁仕切り部416bとの間の隙間から水合流空間113に流入することができる。
【0066】
水合流空間113は、水導出部13の開口131の流路断面積及び電極間空間21の流路断面積よりも大きな流路断面積を有している。より具体的には、本例の水合流空間113は、図5に示す水分配空間112と同様に、縦方向Xに垂直な断面において、水導出部13の開口131から横方向Yの両側に延出した形状を有している。これにより、水合流空間113の流路断面積は水導出部13の開口131の流路断面積よりも大きくなっている。
【0067】
また、図4に示すように、水合流空間113の高さ方向Zにおける内寸法、つまり、底壁後端部313から頂壁後端部413までの高さ方向Zにおける距離は、電極間空間21の高さ方向Zにおける内寸法、つまり、第一電極板2aから第二電極板2bまでの高さ方向Zにおける距離よりも大きくなっている。さらに、図には示さないが、水合流空間113の横方向Yにおける内寸法及び電極間空間21の横方向Yにおける内寸法は、第三側壁部323から第四側壁部324までの距離(図5参照)と概ね等しい。これにより、水合流空間113の流路断面積は電極間空間21の流路断面積よりも大きくなっている。
【0068】
次に、電気分解装置1に水を供給した際の水の流れを説明する。電気分解装置1の水導入部12に水を供給すると、まず、水導入部12の開口121からケース11の内部空間111に水が流入する。図4に示すように、水導入部12の開口から流入した水は、流路調整部14としての仕切り凸部317aによって電極間空間21に直接流入することを妨げられ、水分配空間112内に貯留される。水分配空間112内に貯留された水は、底壁仕切り部316aと頂壁仕切り部416aとの間の隙間から電極間空間21に流入する。そして、第一電極板2aと第二電極板2bとの間において水の電気分解が行われる。
【0069】
電極間空間21を通過した水は、底壁仕切り部316bと頂壁仕切り部416bとの間の隙間から水合流空間113に流入する。水合流空間113内の水は、その後、水導出部13から電気分解装置1の外部に導出される。
【0070】
次に、本例の電気分解装置1の作用効果を説明する。図3及び図5に示すように、電気分解装置1のケース11は、その内部空間111における、水導入部12の開口121と電極間空間21との間に配置された流路調整部14を有している。前記特定の位置に設けられた流路調整部14は、水導入部12から導入された水が電極間空間21内に流入する前に水の流れの向きを変更することができる。そして、流路調整部14によって水導入部12から流入する水の流れの向きを変更することにより、水導入部12から流入した水が電極間空間21内に均一に広がりやすくなる。その結果、電極間空間21における水の電気分解の効率を高め、電気分解によって生じる化学物質の濃度を容易に高めることができる。
【0071】
また、図5に示すように、ケース11の内部空間111は、水導入部12の開口121と電極間空間21との間に、水導入部12の開口121の流路断面積及び電極間空間21の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水分配空間112を有している。電極間空間21の上流に水分配空間112を設けることにより、水導入部12から流入した水を一旦水分配空間112に貯留することができる。また、水分配空間112は電極間空間21よりも流路断面積が大きいため、水分配空間112から電極間空間21に水が進入する際の流路抵抗を適度に高めることができる。その結果、水分配空間112内の水を電極間空間21内により均一に進入させ、電気分解の効率をより高めることができる。
【0072】
また、図4に示すように、ケース11の内部空間111は、電極間空間21と水導出部13の開口131との間に、電極間空間21の流路断面積及び水導出部13の開口131の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水合流空間113を有している。このように、電極間空間21の下流に水合流空間113を設けることにより、電極間空間21を通過した後の水の流路抵抗をより低減することができる。その結果、電極間空間21における水の流れをより均一し、電気分解の効率をより高めることができる。
【0073】
図5に示すように、第一電極板2aから第二電極板2bまでの距離は水導入部12の開口121の円相当径よりも小さい。このように、電極間の隙間を比較的小さくすることにより、流路調整部14によって流れの向きを変更された水が、電極間空間21内により均一に進入しやすくなる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0074】
第一電極板2a及び第二電極板2bは、その端縁の少なくとも一部に直線部を有しており、流路調整部14は直線部における一方の端点と他方の端点との間に対面する位置に配置されている。より具体的には、図5に示すように、流路調整部14は、長方形状の第一電極板2a及び第二電極板2bにおける短辺の中央に対面している。そのため、流路調整部14は、水導入部12から流入した水を流路調整部14の左右に分配し、電極間空間21内に水をより均一に進入させることができる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0075】
また、流路調整部14は、長方形状の第一電極板2a及び第二電極板2bの短辺に対面する位置に配置されているため、電極間空間21内に進入した水を、第一電極板2a及び第二電極板2bの長辺に沿う方向に流すことができる。その結果、電極間空間21内において水が電気分解される時間をより長くし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0076】
また、第一電極板2a及び第二電極板2bの短辺の長さは水導入部12の開口の円相当径よりも大きい。これにより、電極間空間21の流路断面積をより広くし、電極間空間21内を流れる水の流速を適度に低下させることができる。その結果、電極間空間21内において水が電気分解される時間をより長くし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0077】
また、図3及び図4に示すように、電気分解装置1は、ケース11の内表面と第一電極板2aとの間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第一シール材15と、ケース11の内表面と第二電極板2bとの間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第二シール材16と、を有しており、ケース11は、その内表面から突出し、第二電極板2bを貫通して第一電極板2aに当接した第一ボス315と、第一電極板2aを貫通して第二電極板2bに当接した第二ボス415と、を有している。このように、各電極板をシール材とボスとによって支持することにより、第一電極板2aと第二電極板2bとの間の隙間の大きさをより均一にすることができる。さらに、第一ボス315及び第二ボス415を電極間空間21内に配置することにより、電極間空間21内の水の流れを適度に乱し、電極間空間21内の水を攪拌することができる。これにより、電気分解の効率をより高めることができる。
【0078】
図2に示すように、第一シール材15は、第一電極板2aの端縁に沿って配置された第一外周シール部151を有しており、第二シール材16は、第二電極板2bの端縁に沿って配置された第二外周シール部161を有している。このように、各電極板とケース11の内表面との間にシール材の外周シール部を配置することにより、水導入部12から流入した水が各電極板とケース11との間の隙間に進入することを抑制し、電極間空間21に進入する水の割合をより大きくすることができる。その結果、電気分解の効率をより高めることができる。
【0079】
また、第一シール材15は、第一外周シール部151の内側に配置された第一電極支持部152を有しており、第二シール材16は、第二外周シール部161の内側に配置された第二電極支持部162を有している。そのため、各電極板の外周部分をシール材の外周シール部で支持するとともに、各電極板の外周部分の内側をシール材の電極支持部で支持することができる。その結果、電極間空間21内における、第一電極板2aから第二電極板2bまでの距離のばらつきをより小さくし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0080】
さらに、第一電極支持部152は第一外周シール部151に連なっており、第二電極支持部162は第二外周シール部161に連なっている。このように、各シール材における電極支持部を外周シール部と一体に形成することにより、電極板とケース11の内表面との間の空間を、外周シール部及び電極支持部によって複数の領域に区画することができる。これにより、電極間空間21を流れる水が、第一ボス315と第一電極板2aとの間の隙間や、第二ボス415と第二電極板2bとの間の隙間から各電極板とケース11の内表面との間の空間へより進入しにくくなる。その結果、電極間空間21に進入する水の割合をより大きくし、電気分解の効率をより高めることができる。
【0081】
図3及び図4に示すように、第一ボス315は、第一電極板2aを貫通し、電極間空間21内に突出して配置されている。そのため、電極間空間21内を流れる水を第一ボス315によって攪拌することができる。さらに、図6に示すように、横方向Yに互いに並んだ第一ボス315a、315c、315eと、横方向Yの中央に設けられた第一ボス315b、315dとが、縦方向Xに間隔をあけて交互に配置されている。第一ボス315をこのように配置することにより、電極間空間21内の水をより効率よく攪拌することができる。これにより、電気分解の効率をより高めることができる。
【0082】
図3及び図4に示すように、第二ボス415は、第二電極板2bを貫通し、電極間空間21内に突出して配置されている。そのため、電極間空間21内を流れる水を第二ボス415によって攪拌することができる。さらに、図7に示すように、横方向Yに互いに並んだ第二ボス415a、415c、415eと、横方向Yの中央に設けられた第二ボス415b、415dとが、縦方向Xに間隔をあけて交互に配置されている。第二ボス415をこのように配置することにより、電極間空間21内の水をより効率よく攪拌することができる。これにより、電気分解の効率をより高めることができる。
【0083】
また、図1及び図2に示すように、ケース本体部3と蓋部4とは、ケース本体部3に保持されたナット18と、蓋部4に挿通されたボルト19とによって締結されている。このように、ケース本体部3と蓋部4とをねじの締め付けによって締結することにより、高さ方向Zにおける第一電極板2aと第二電極板2bとの距離をより容易に所望の値に設定するとともに、設定した値を維持することができる。また、この場合には、例えば電気分解装置1の修理が必要となった際等に、ケース本体部3と蓋部4とを容易に分離することができ、電気分解装置1のメンテナンス性をより向上させることができる。
【0084】
(実施例2)
本例では、図10図14を参照しつつ実施例1の電気分解装置1を備えた電解水吐出ユニット5の例を説明する。なお、本実施例以降の実施例において用いる符号のうち既出の実施例において用いた符号と同一の符号は、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を表す。
【0085】
電気分解装置1の用途は特に限定されることはなく、電解水を必要とする種々の装置に組み込むことができる。電気分解装置1は、例えば、キッチンユニットや洗面台、手洗い器等の水回り設備に用いることができる。これらの水回り設備に電気分解装置1を組み込み、電気分解装置1において生成した電解水を水回り設備の水栓から吐出させることにより、除菌や消毒、消臭などの種々の効果を期待することができる。
【0086】
図10に示すように、本例の電解水吐出ユニット5は、水を電気分解する電気分解装置1と、電気分解装置1を通過した電解水を吐出する水栓6と、を有している。水栓6は、電解水を吐出する吐出部64を備えた第一端部61と、基台への取り付け部621を備えた第二端部62と、を有している。図12に示すように、吐出部64は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、吐出部64から吐出される電解水の吐出方向641が鉛直下方に対して第二端部62側に傾斜するように構成されている。
【0087】
図10に示すように、本例の電解水吐出ユニット5は、電気分解装置1を備えた電解水生成部7と、水栓6と、を有している。電解水生成部7と水栓6とは、電解水チューブ51及び制御ケーブル761を介して接続されている。図11に示すように、電解水生成部7は、直方体状の筐体72と、給水配管に接続され、電解水の原料となる水を採取する取水部73と、取水部73から電気分解装置1への水の供給と供給停止とを切り替える電磁弁部74と、電気分解装置1と、電気分解装置1を通過した電解水から異物を除去するストレーナ75と、電磁弁部74及び電気分解装置1の動作を制御する制御部76とを有している。
【0088】
取水部73は、筐体72の角部を貫通している。取水部73は、筐体72の外部に給水配管を接続する配管接続部731を有している。また、取水部73は、筐体72の内部において電磁弁部74に接続されている。取水部73は、給水配管の水を配管接続部731から採取し、電磁弁部74に供給することができるように構成されている。
【0089】
電磁弁部74は、取水部73に接続され、電気分解装置1への水の供給と供給停止とを切り替える開閉弁741と、開閉弁741に接続され、電気分解装置1に送出する水の圧力を調整する減圧弁742と、減圧弁742に接続され、電気分解装置1から取水部73への水の逆流を防止する逆止弁743と、を有している。電磁弁部74は、制御部76からの制御信号を受けて、開閉弁741が開放された状態と閉止された状態とを切り替えることができるように構成されている。電磁弁部74は、開閉弁741を開放することにより、給水配管から流入した水の圧力を減圧弁742によって調整した後、逆止弁743を介して電気分解装置1に水を供給することができる。
【0090】
電磁弁部74を通過した水は、電気分解装置1に供給される。電気分解装置1は、電気分解装置1の筐体72内において、その長手方向が筐体72の対角線に沿うようにして配置されている。このように、電気分解装置1を筐体72の対角線に沿って配置することにより、電解水生成部7の体積の増大を回避しつつ、電気分解装置1内において水が電気分解される時間をより長くすることができる。これにより、電解水中の電気分解によって生じる化学物質の濃度をより高めることが期待できる。
なお、図1及び図2においては、便宜上、電気分解装置1の形状を簡略化して記載した。
【0091】
制御部76は、図には示さない配線を介して開閉弁741に接続されており、開閉弁741が開放された状態と閉止された状態とを切り替えることができるように構成されている。また、制御部76は、図には示さない配線を介して電気分解装置1に接続されており、電気分解装置1の第一電極板2a及び第二電極板2bに電力を供給することができるように構成されている。さらに、制御部76は、制御ケーブル761を介して後述する水栓6の非接触式スイッチ65(図10参照)に接続されている。開閉弁741及び電気分解装置1の動作は、非接触式スイッチ65の操作信号に応じて制御される。これらの制御部76の動作は、例えば、電子回路などによって実現することができる。
【0092】
電気分解装置1を通過した水は、ストレーナ75によって異物を除去された後、電解水チューブ51を介して水栓6に供給される。
【0093】
図12に示すように、水栓6の本体は金属管60から構成されている。水栓6の第一端部61及び第二端部62は、それぞれ一方向に延在した直管状の形状を有しており、第一端部61と第二端部62とが接続部63を介して接続されている。また、第一端部61は、第二端部62の延在方向とは異なる方向に延在している。より具体的には、本例の第一端部61は、第二端部62の延在方向とのなす角度θ1が約72°となる方向に延在している。
【0094】
第二端部62は、水栓6を基台に取り付けるための取り付け部621を有している。取り付け部621は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、第二端部62が基台から鉛直上方に延出するように設けられている。
【0095】
本例の水栓6は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、第一端部61が水平方向Hに対して上方に傾斜する形状を有している。より具体的には、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、第一端部61の延在方向と水平方向Hとのなす角度θ2は約18°となる。
【0096】
なお、本例においては、水栓6の第一端部61が延在している方向を「前後方向x」といい、前後方向xにおける、接続部63から第一端部61の先端へ向かう向きを「前方x1」、第一端部61の先端から接続部63へ向かう向きを「後方x2」という。また、水栓6の第二端部62が延在している方向を「上下方向z」といい、上下方向zにおける、取り付け部621から接続部63へ向かう向きを「上方z1」、接続部63から取り付け部621へ向かう向きを「下方z2」という。これらの水栓6に関する向きの記載は、実施例1における電気分解装置1の方向に関する記載とは無関係である。さらに、水栓6の前後方向及び上下方向に関する表現は、水栓6を基台に取り付けた状態における実際の水栓6の向きとも無関係である。
【0097】
図12に示すように、第一端部61の先端は、前方x1へ向かうほどその厚みが薄くなるようなくさび状の形状を有している。また、図10図12及び図13に示すように、第一端部61の先端には、電解水の吐出と吐出停止とを切り替えるための非接触式スイッチ65が設けられている。図13に示すように、非接触式スイッチ65の検知範囲は概ね上方z1を向いており、非接触式スイッチ65の上方z1に手をかざすことにより、電解水の吐出と吐出停止とを切り替えることができるように構成されている。
【0098】
図14に示すように、水栓6の第一端部61の筒内には、電解水チューブ51が接続されるアダプタ66と、電解水の吐出口642を備えた吐出部64と、アダプタ66から吐出部64に電解水を導く流路部材67と、が設けられている。
【0099】
アダプタ66及び流路部材67は、第一端部61の筒内に配置されており、電解水生成部7から吐出部64までの電解水の経路の一部を構成している。アダプタ66は、後方x2、つまり、接続部63側に突出したチューブ接続部661を有している。チューブ接続部661には電解水チューブ51が接続されている。流路部材67は、アダプタ66の前方x1に設けられており、その内部に、アダプタ66の内部空間662と連通した電解水流路671を有している。電解水チューブ51から供給される電解水は、アダプタ66の内部空間662及び電解水流路671を通り、吐出部64へ導かれる。
【0100】
吐出部64は、流路部材67の前方x1の端部に取り付けられている。本例の吐出部64は円柱状の形状を有しており、高さ方向Zの下方z2に引いた基準線に対して吐出部64の中心軸線が後方x2に傾斜するように配置されている。また、吐出部64の下方z2の端部は、第一端部61における金属管60の外表面よりも外方に突出している。
【0101】
吐出部64の下方z2の端面の中央には、電解水が吐出される吐出口642が設けられている。
【0102】
吐出部64は、電解水を霧状に吐出することができるように構成されている。より具体的には、本例の吐出部64は、図12に示すように、吐出口642を頂点とする円錐状の範囲Sに電解水を吐出するように構成されている。また、吐出部64は、電解水の吐出方向641、つまり、円錐状の吐出範囲Sにおける頂点と底面の中央とを結ぶ方向が、高さ方向Zの下方z2に引いた基準線Lに対して後方x2に傾斜した方向となるように構成されている。より具体的には、本例の水栓6における電解水は、電解水の吐出方向641と、基準線Lとのなす角度θ3が4°となるように、基準線Lに対して後方x2に傾斜した方向に吐出される。
【0103】
前述したように、本例の水栓6は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において第二端部62が鉛直上方に延在するように構成されている。従って、取り付け部621を基台に取り付けた状態において吐出部64から吐出される電解水の吐出方向641は、鉛直下方に対して第二端部62側に傾斜した方向となる。
【0104】
第一端部61の先端には、非接触式スイッチ65が設けられている。本例の非接触式スイッチ65は、具体的には赤外線センサであり、図14に示すように、第一端部61の先端に内蔵されたスイッチ基板651と、スイッチ基板の上方に設けられた赤外線透過部652とを有している。スイッチ基板651は、図には示さないが、人体から放射された赤外線を検出する赤外線検出部を有しており、赤外線透過部652を通過した赤外線が赤外線検出部において検出された場合に操作信号を発生するように構成されている。また、赤外線透過部652は、人体から放射された赤外線を透過する材料から構成されている。
【0105】
スイッチ基板651において発生した操作信号は、制御ケーブル761を介して電解水生成部7の制御部76に伝達される。そして、制御部76は、スイッチ基板651から操作信号を受信したとき、つまり、非接触式スイッチ65の検知範囲が手などで遮られたときに、電解水の吐出と吐出停止とを切り替えるように構成されている。
【0106】
第一端部61の先端と吐出口642との間には、発光装置68が設けられている。発光装置68は、電解水が吐出されているときに点灯し、電解水の吐出が停止しているときに消灯するように構成されている。本例の発光装置68は、具体的には発光ダイオードである。また、発光装置68は、吐出口642から吐出される電解水に光が照射されるように配置されている。
【0107】
次に、本例の電解水吐出ユニット5の作用効果を説明する。図12に示すように、電解水吐出ユニット5における水栓6の吐出部64は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、吐出部64から吐出される電解水の吐出方向641が鉛直下方に対して第二端部62側に傾斜するように構成されている。このように、吐出部64から第二端部62側に向けて電解水を吐出することにより、吐出部64から吐出される電解水が洗浄対象物に当たった後に、電解水の飛沫が水栓6の取り付け部621側に跳ね返りやすくなる。その結果、洗浄対象物に当たった後に、使用者に向かって跳ね返る電解水の飛沫を低減することができる。
【0108】
また、吐出部64の少なくとも一部は周囲よりも外方に突出している。そのため、例えば、吐出部64から吐出される電解水を別の容器に採取する際に、吐出部64における外方に突出している部分を目安にして、電解水を採取する容器を容易に吐出部64に配置することができる。その結果、電解水を採取する操作をより簡便に行うことができる。
【0109】
水栓6は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、第一端部61が水平方向に対して上方に傾斜する形状を有している。それ故、第一端部61から基台までの距離をより容易に大きくし、洗浄対象物を第一端部61の下方に配置しやすくなる。その結果、洗浄対象物を洗浄する作業の作業性をより向上させることができる。
【0110】
水栓6の第一端部61は、その先端に電解水の吐出と吐出停止とを切替可能に構成された非接触式スイッチ65を有しており、非接触式スイッチ65は、取り付け部621を基台に取り付けた状態において、非接触式スイッチ65の検知範囲が上方を向くように配置されている。このように、非接触式スイッチ65を用いて電解水の吐出と吐出停止とを切り替えることにより、電解水の吐出と吐出停止とを切り替えるために使用者が水栓6を触る必要がなくなる。その結果、水栓6をより衛生的に使用することができる。さらに、非接触式スイッチ65の検知範囲を上方に向けることにより、電解水の吐出と吐出停止との切り替え操作をより容易に行うことができる。
【0111】
第一端部61は、電解水が吐出されているときに点灯するように構成された発光装置68を有しており、発光装置68は、吐出部64と第一端部61の先端との間に配置されている。発光装置68は、吐出部64から吐出された電解水に光を照射し、電解水を目立たせることができる。これにより、電解水が吐出されているか否かを使用者がより容易に判断することができる。さらに、第一端部61に発光装置68を設けることにより、例えば、吐出部64から吐出される電解水を別の容器に採取する際に、発光装置68の光を目安にして、電解水を採取する容器を容易に吐出部64に配置することができる。その結果、電解水を採取する操作をより簡便に行うことができる。
【0112】
また、吐出部64は、電解水を噴霧可能に構成されている。それ故、電解水吐出ユニット5は、比較的少量の電解水で洗浄対象物を効率よく洗浄することができる。
【0113】
以上のように、本例の電解水吐出ユニット5は、洗浄対象物に当たった後に、使用者に向かって跳ね返る電解水の飛沫を低減することができる。
【0114】
(実施例3)
本例においては、図15図16を参照しつつ、実施例2の電解水吐出ユニット5が組み込まれたキッチンユニット8の例を説明する。
【0115】
図15に示すように、キッチンユニット8は、基台としてのキッチンシンク81と、キッチンシンク81に取り付けられ、水道水が吐出される主水栓82と、電解水吐出ユニット5と、を有している。電解水吐出ユニット5の水栓6は、キッチンシンク81における主水栓82の隣に取り付けられている。なお、本例においては、電解水吐出ユニット5の水栓を「電解水水栓6」という。なお、図15及び図16においては、便宜上、電解水生成部の記載を割愛した。
【0116】
本例のキッチンユニット8における電解水水栓6は、取り付け部621を中心として旋回することができるように取り付けられている。電解水水栓6を、取り付け部621を中心として旋回させることにより、電解水による洗浄が不要な場合に電解水水栓6をキッチンシンク81の上方から退避させ、キッチンユニット8の使い勝手を向上させることができる。
【0117】
また、電解水水栓6は、図12に示すように、第一端部61を使用者に向けた状態において、その吐出部64が主水栓82の吐出口821よりも使用者に近い位置に配置されていてもよい。前述したように、電解水水栓6は、電解水を第二端部62側、つまり、使用者から遠ざかる方向に吐出するように構成されている。そのため、電解水水栓6の吐出部64をより使用者に近い位置に配置することにより、使用者が電解水を用いて洗浄対象物を洗浄する際に、使用者に向かって跳ね返る電解水の飛沫を低減しつつ、より使用者に近い位置で洗浄作業を行うことができる。これにより、キッチンユニット8の使い勝手をより向上させることができる。
【0118】
本例のキッチンシンク81において、図15に示す、電解水水栓6の取り付け部621から吐出部64までの水平方向における距離Aは150mm以上250mm以下であり、取り付け部621から吐出部64までの鉛直方向における距離Bは100mm以上180mm以下であることが好ましい。電解水水栓6における取り付け部621と吐出部64との位置関係を前記特定の範囲内とすることにより、吐出部64から吐出される電解水をより容易に洗浄対象物に当て、キッチンユニット8の使い勝手をより向上させることができる。
【0119】
同様の観点から、キッチンシンク81における、取り付け部621が設けられた淵811から吐出部64までの水平方向における距離Cは150mm以上160mm以下であることが好ましい。また、キッチンシンク81の使い勝手をより向上させる観点からは、キッチンシンク81からの電解水水栓6の高さDは180mm以上220mm以下であることが好ましい。
【0120】
本例のキッチンユニット8におけるキッチンシンク81には、電解水を斜め後方に吐出するように構成された電解水水栓6が取り付けられている。前述したように、電解水水栓6から吐出される電解水の吐出方向を鉛直下方に対して後方に傾斜した方向とすることにより、洗浄対象物から使用者へ向かって跳ね返る電解水の飛沫を低減することができる。
【0121】
また、キッチンシンク81の底面812は、通常、キッチンシンク81の奥に設けられた排水口813に向かって緩やかに傾斜している。そのため、電解水水栓6から吐出される電解水の吐出方向を鉛直下方に対して後方に傾斜した方向とすることにより、キッチンシンク81の底面812に着水した電解水が、底面812の傾斜に沿って排水口813へ導かれやすくなる。これにより、電解水がキッチンシンク81の底面812に滞留しにくくなり、キッチンシンク81への汚れなどの付着をより低減する効果が期待できる。
【0122】
さらに、洗浄対象物を電解水で洗浄する際に、洗浄対象物を、使用者から離れるほど低くなるように傾けた状態で電解水に当てることにより、洗浄対象物の表面における電解水の流速を早くすることができる。これにより、洗浄対象物をより容易に洗浄する効果が期待できる。
【0123】
以上、実施例に基づいて前記電気分解装置の態様を説明したが、本発明に係る電気分解装置の具体的な態様は実施例の態様に限定されることはなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0124】
例えば、前記電気分解装置は、以下の〔1〕~〔11〕に係る態様を取り得る。
〔1〕水を電気分解する電気分解装置であって、
前記水が流通する内部空間と、前記内部空間に前記水を導入する水導入部と、前記内部空間から前記水を導出する水導出部と、を有するケースと、
前記内部空間における前記水導入部と前記水導出部との間に配置された第一電極板と、
前記内部空間における、前記第一電極板に対向する位置に配置された第二電極板と、を有し、
前記第一電極板と前記第二電極板との間に電極間空間が形成されており、
前記ケースは、前記内部空間における、前記水導入部の開口と前記電極間空間との間に配置された流路調整部を有している、電気分解装置。
【0125】
〔2〕前記ケースの前記内部空間は、前記水導入部の開口と前記電極間空間との間に、前記水導入部の開口の流路断面積及び前記電極間空間の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水分配空間を有している、〔1〕に記載の電気分解装置。
〔3〕前記ケースの前記内部空間は、前記電極間空間と前記水導出部の開口との間に、前記電極間空間の流路断面積及び前記水導出部の開口の流路断面積よりも大きな流路断面積を有する水合流空間を有している、〔1〕または〔2〕に記載の電気分解装置。
【0126】
〔4〕前記第一電極板及び前記第二電極板は、その端縁の少なくとも一部に直線部を有しており、前記流路調整部は前記直線部における一方の端点と他方の端点との間に対面する位置に配置されている、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の電気分解装置。
〔5〕前記第一電極板から前記第二電極板までの距離が前記水導入部の開口の円相当径よりも小さい、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の電気分解装置。
〔6〕前記電気分解装置は、前記ケースの内表面と前記第一電極板との間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第一シール材と、前記ケースの内表面と前記第二電極板との間に介在し、ゴムまたはエラストマーからなる第二シール材と、を有しており、前記ケースは、その内表面から突出し、前記第二電極板を貫通して前記第一電極板に当接した第一ボスと、前記第一電極板を貫通して前記第二電極板に当接した第二ボスと、を有している、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の電気分解装置。
【0127】
〔7〕前記第一シール材は、前記第一電極板の端縁に沿って配置された第一外周シール部を有しており、前記第二シール材は、前記第二電極板の端縁に沿って配置された第二外周シール部を有している、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の電気分解装置。
〔8〕前記第一シール材は、前記第一外周シール部の内側に配置された第一電極支持部を有しており、前記第二シール材は、前記第二外周シール部の内側に配置された第二電極支持部を有している、〔7〕に記載の電気分解装置。
〔9〕前記第一電極支持部は前記第一外周シール部に連なっており、前記第二電極支持部は前記第二外周シール部に連なっている、〔8〕に記載の電気分解装置。
【0128】
〔10〕前記第一電極板及び前記第二電極板の形状は長方形状であり、前記流路調整部は、前記第一電極板及び前記第二電極板の短辺に対面する位置に配置されている、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の電気分解装置。
〔11〕前記第一電極板及び前記第二電極板の短辺の長さが前記水導入部の開口の円相当径よりも大きい、〔10〕に記載の電気分解装置。
【符号の説明】
【0129】
1 電気分解装置
11 ケース
111 内部空間
12 水導入部
121 開口
13 水導出部
131 開口
14 流路調整部
2a 第一電極板
2b 第二電極板
21 電極間空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16