(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145911
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20241004BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/49
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058498
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166959
【氏名又は名称】御木本製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】對島 ユキ
(72)【発明者】
【氏名】世古 夏美
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC711
4C083AC712
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD332
4C083AD572
4C083CC03
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】
肌のうるおいを保ちつつもべたつきを抑えた使用感を有する、保湿効果に優れた外用組成物に関する。
【解決手段】
以下の成分を含有し、成分A:成分Bの質量比が1:0.9~4.7であり、成分A:成分Cの質量比が1:0.4~2であることを特徴とする外用組成物。
A)ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル 0.3 ~ 8.0質量%
B)グリセリン 0.5 ~12.0質量%
C)ジグリセリン 0.1 ~ 5.0質量%
D)ヒドロキシプロリン 0.05~ 0.3質量%
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含有し、成分A:成分Bの質量比が1:0.9~4.7であり、成分A:成分Cの質量比が1:0.4~2であることを特徴とする外用組成物。
A)ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル 0.3 ~ 8.0質量%
B)グリセリン 0.5 ~12.0質量%
C)ジグリセリン 0.1 ~ 5.0質量%
D)ヒドロキシプロリン 0.05~ 0.3質量%
【請求項2】
前記成分A)が、プロピレンオキサイドの付加モル数が5~20であることを特徴とする請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
成分E)として、ベタイン0.5~3.0質量%を含有することを特徴とする請求項2に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記成分A)の含有量が0.5~6.0質量%であり、かつ、前記成分A:成分Bの質量比が1:1~4.7であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿成分の組み合わせにより、肌のうるおいを保ちつつもべたつきを抑えた使用感を有する、保湿効果に優れた外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の水分を適正な範囲に保つことは皮膚の健康の面から非常に大切なことであり、保湿を目的とした化粧品等の外用組成物は多く見られる。
皮膚の保湿に関与する物質については種々検討されており、現在は1,3-ブチレングリコールやソルビトールなどの多価アルコールやヒアルロン酸などのムコ多糖類、その他多数の保湿剤が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多価アルコールは、配合量を高めると保湿効果が高まることは周知であるが、保湿効果の向上と同時にべたつきも相乗的に増強されてしまい、外用組成物中への高配合は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、次のような製剤が本発明の課題を解決することがわかった。
【0006】
以下の成分を含有し、成分A:成分Bの質量比が1:0.9~4.7であり、成分A:成分Cの質量比が1:0.4~2であることを特徴とする外用組成物。
A)ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル 0.3 ~ 8.0質量%
B)グリセリン 0.5 ~12.0質量%
C)ジグリセリン 0.1 ~ 5.0質量%
D)ヒドロキシプロリン 0.05~ 0.3質量%
【0007】
前記成分A)が、プロピレンオキサイドの付加モル数が5~20であることを特徴とする外用組成物。
【0008】
成分E)として、ベタイン0.5~3.0質量%を含有することを特徴とする外用組成物。
【0009】
前記成分A)の含有量が、0.5~6.0質量%であり、かつ、前記成分A:成分Bの質量比が1:1~4.7であることを特徴とする外用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外用組成物は、肌のうるおいを保ちつつもべたつきを抑えた使用感を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】表3に係る保湿性試験(角層水分量の変化率)の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0013】
<1>成分A:ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル
本発明における成分A、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルは、ジグリセリンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合したものである。これらのうち、プロピレンオキサイドの付加モル数が5~20モルであるプロピレンオキサイドジグリセリルエーテルがより好ましい。市販品としてはユニルーブDGP-700(化粧品表示名称:PPG-9ジグリセリル)(日油社製)、SY-DP9(化粧品表示名称:PPG-9ジグリセリル)、SY-DP14(化粧品表示名称:PPG-14ポリグリセリル-2エーテル)(阪本薬品工業社製)等が挙げられる。
【0014】
本発明の外用組成物100質量%中の成分Aの含有量は、保湿効果とべたつきのない使用感の観点から、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは8.0質量%以下であり、より好ましくは6.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0015】
<2>成分B:グリセリン
本発明における成分B、グリセリンは、グリセロールとも呼ばれる3価のアルコールである。医薬部外品原料規格に収載されている「濃グリセリン」等を用いることができる。
【0016】
本発明の外用組成物100質量%中の成分Bの含有量は、保湿効果とべたつきのない使用感の観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは12.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以下である。
【0017】
<3>成分C:ジグリセリン
本発明における成分C、ジグリセリンは、2個のグリセリンが脱水縮合した二量体である。市販品としては、ジグリセリンS(阪本薬品工業社製)、ユニグリG-2(日油社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明の外用組成物100質量%中の成分Cの含有量は、保湿効果とべたつきのない使用感の観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.6質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下である。
【0019】
本発明における成分A:成分Bの質量比が1:0.9~4.7であり、成分A:成分Cの質量比が1:0.4~2であることが好ましく、前記成分A:成分Bの質量比が1:1~4.7であることがさらに好ましい。
【0020】
<4>成分D:ヒドロキシプロリン
本発明における成分D、ヒドロキシプロリンは、プロリンのγ炭素原子にヒドロキシ基が結合した構造をしており、光学活性体でもラセミ体でもよいが、L体が特に好ましい。ヒドロキシ基はシスでもトランスでもよい。その生理学的に許容される塩形態には、例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩;各種有機アミン、例えばトリエチルアミン塩等を挙げることができ、これらも用いることができる。
市販品としては、L-オキシプロリン(日本理化学薬品社製)、L-ヒドロキシプロリン(協和発酵バイオ社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明の外用組成物100質量%中の成分Dの含有量は、保湿効果とべたつきのない使用感の観点から、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0022】
<5>成分E:ベタイン
本発明における成分E、ベタインは、グリシンベタインとも呼ばれるトリメチルグリシンである。市販品としては、アミノコート(登録商標)(旭化成ファインケム社製)、GENENCARE OSMS BA(DuPont de Nemours社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の外用組成物100質量%中の成分Eの含有量は、保湿効果とべたつきのない使用感の観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下である。
【0024】
本発明の外用組成物は、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、外用組成物に通常用いられている成分、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0025】
本発明の外用組成物は、スクワラン等の炭化水素油やジメチルポリシロキサン等のシリコーン油、パルミチン酸セチル等のエステル油、ステアリルアルコール等の炭素数14以上の高級アルコール、等の油剤を多く含有すると希望する使用感が得られない場合があるため、油剤を配合する場合は8質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の外用組成物は、これに限定されないが、ローション、乳液、クリーム等の化粧料や医薬部外品として使用することができる。剤型として具体的には、ゲル状、ペースト状、液状、クリーム状などにできる。
【実施例0027】
以下、具体的な実験例をあげて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の態様にのみ限定されない。
【0028】
表1に実施例と比較例、及びそれらの使用感(べたつきのなさ)の評価結果を記載した。
配合量は質量部を示し、製法は以下の通りである。
成分Fの一部をとり、成分A~E及びGを混合し、成分Hを加えたのち、成分Fにて100質量%とし、外用組成物を得た。
【0029】
【0030】
表2に実施例と比較例、及びそれらの使用感(べたつきのなさ)の評価結果を記載した。
配合量は質量部を示し、製法は以下の通りである。
実施例4~7及び比較例3は、成分Bの一部をとり、成分Hと混合し乳化する。別に、成分Fの一部をとり、成分A~E、G、I~Kを混合し、先の乳化部を加えて混合する。成分Lを加えたのち、成分Fにて100質量%とし、外用組成物を得た。
実施例8は、成分Bの一部と、成分Gの一部と、成分Hをとり、成分Fの一部と混合し乳化する。別に、成分Fの一部をとり、成分A~E、G、I~Kを混合し、先の乳化部を加えて混合する。成分Lを加えたのち、成分Fにて100質量%とし、外用組成物を得た。
【0031】
【0032】
表3に実施例と比較例を記載した。また、
図1にこれらの保湿性試験(角層水分量の変化率)の評価結果を記載した。
表3の配合量は質量部を示し、製法は以下の通りである。
成分Fの一部をとり、成分A~E及びGを混合し、成分Hを加えたのち、成分Fにて100質量%とし、外用組成物を得た。比較例4は成分Aを含有せず、比較例5は成分Aの代わりに成分A’を配合した。
【0033】
【0034】
なお、表1乃至表3における注は以下の通りである。
注1) 商品名 SY-DP14T(阪本薬品工業社)
注2) 商品名 アミノコート(旭化成ファインケム社)
注3) 商品名 L-ヒドロキシプロリン(協和発酵バイオ社)
【0035】
表1及び表2の各組成物について評価(1)を行い、その結果を表1及び表2にそれぞれ示した。また、表3の各組成物について評価(2)を行い、その結果を
図1に示した。
【0036】
評価(1)べたつきのなさ
<評価方法>
評価専門パネル20名により、各試料の塗布直後のべたつき感のなさを評価した。
<評価基準>
20名中16名以上がべたつき感がないと回答した:◎
20名中12名以上がべたつき感がないと回答した:○
20名中8名以上がべたつき感がないと回答した :△
20名中8名未満がべたつき感がないと回答した :×
【0037】
評価(2)保湿性試験(角層水分量の変化率)
<試験方法>
実施例9、比較例4及び比較例5の組成物を肌に塗布した場合の肌水分量を皮膚角層水分量測定装置により測定した。(n=12、21±1℃、相対湿度45%、SKICON-200EX(IBS社製))
被験者の試験部位を洗顔フォームで洗浄後、恒温恒湿条件で安静にし、初期値を測定した。試料を塗布し、1分間放置した後にティッシュでふき取った。ふき取り後10分、30分、60分後に角層水分量をそれぞれ測定した。
角層水分量はその変化率を、試験品塗布前(初期値)の測定値を0とした数値で表した。
【0038】
実施例1~8はいずれもべたつき感の少ない使用感であり、実施例9は比較例と比べて角層水分量が高く、長時間にわたって保湿力が持続する傾向が見られる優れた保湿効果を持つ組成物であった。