(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145912
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】皮膚外用剤及びマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20241004BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20241004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241004BHJP
A61K 35/618 20150101ALI20241004BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241004BHJP
A61K 36/65 20060101ALI20241004BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/98
A61Q19/00
A61K35/618
A61P43/00 111
A61K36/65
A61P43/00 121
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058499
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166959
【氏名又は名称】御木本製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 宏大
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA111
4C083CC03
4C083EE12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB16
4C087CA03
4C087MA02
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC20
4C087ZC75
4C088AB58
4C088AD08
4C088BA10
4C088MA02
4C088MA63
4C088ZA89
4C088ZC20
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的はマトリックスメタロプロテアーゼを阻害する皮膚外用剤に関する。
さらに詳しく述べればシワ防止、老化防止用の皮膚外用剤、さらには慢性関節リウマチや変形性関節症の滑膜及び慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防剤を得ることにある。
【解決手段】
黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスの組み合わせがマトリックスメタロプロテアーゼ-1を阻害することがわかり、これを用いて上記の課題が解決できることがわかった。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスを含有する、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスの質量比を1:0.05~5とする、請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスを有効成分とする、皮膚のシワ防止剤。
【請求項4】
黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスを有効成分とする、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項5】
前記マトリックスメタロプロテアーゼが、マトリックスメタロプロテアーゼ-1である、請求項4記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項6】
前記黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスの質量比を1:0.05~5とする、請求項4乃至請求項5のいずれかに記載のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
【請求項7】
皮膚のシワ防止のための、黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼを阻害し、シワ防止、老化防止用の皮膚外用剤や慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワやきめの消失、弾力性の低下等については、加齢のほか紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等のある種の外的因子により亢進する。
これらの変化をミクロ的にみれば、コラーゲン、エラスチン等の真皮マトリックス成分が減少し、この変化を誘導する因子として、特にマトリックスプロテアーゼの関与が指摘されてきている。
【0003】
マトリックスメタロプロテアーゼ( matrix metalloproteinase) は、細胞外マトリックスのタンパク質成分を分解する金属酵素の総称であり、通常以下の5群に分類されている。
コラゲナーゼ群には、MMP-1(間質コラゲナーゼ)、MMP-8、MMP-13等が含まれる。MMP-13にはタイプIコラーゲン等の分解作用を有する。
ゼラチナーゼ群には、MMP-2、MMP-9等が含まれる。これらMMP-2、9は、基底膜成分であるタイプIVコラーゲンやラミニン、真皮マトリックス成分のエラスチン等を分解する酵素として知られている。MMP-2は、紫外線の照射によりその発現が大きく増加するMMP-1によっても、活性化され、肌の老化は一層進む事となる(非特許文献1)。
ストロムライシン群には、MMP-3、MMP-10等が含まれる。これらMMP -3、10は、基底膜成分であるプロテオグリカンや、タイプIVコラーゲン、ラミニン、その他フィブロネクチン等を分解する酵素として知られている。
膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ群には、MMP-14、MMP-15、MMP-16、及びMMP-17が含まれる。
その他の群としてMMP-7、MMP-11、及びMMP-12が含まれる。MMP-12はマクロファージで発現するマクロファージエラスターゼ(HME)とも称され、マトリックスメタロプロテアーゼファミリーの一メンバーであり、エラスチンを分解する。また、エラスチンの他に、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンなどのマトリックス、ノンマトリックス成分を分解する。
また、これらのマトリックスメタロプロテアーゼと各種疾患との関係が徐々に明らかになってきており、慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防にマトリックスメタロプロテアーゼが深く関与している。(特許文献1)
【0004】
マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤としては、フラボン類およびアントシアニジン、エスクレチン誘導体、スルフォニルアミノ酸誘導体、TIMPsなどが知られているが、活性、体内での吸収、毒性などを考慮すると、新しいマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤が望まれる。(特許文献2~5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-344672号公報
【特許文献2】特開平8-104628号公報
【特許文献3】特開平8-183785号公報
【特許文献4】特開平9-309875号公報
【特許文献5】特開平10-17492号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】皮膚老化・美白・保湿化粧品の開発 株式会社シーエムシー発行 P54,2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はマトリックスメタロプロテアーゼを阻害する皮膚外用剤と、慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、クロチョウガイの真珠や貝殻の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物及びボタンエキスを含有する製剤に、マトリックスメタロプロテアーゼを阻害する作用があることがわかった。
【0009】
即ち、本発明の課題は、以下の<1>~<7>の手段により解決された。
<1>黒蝶貝の真珠層から得られたタンパク質の加水分解物(以下、黒蝶貝コンキオリン加水分解物ともいう)及びボタンエキスを含有する、皮膚外用剤。
<2>前記黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの質量比をを1:0.05~5とする、皮膚外用剤。
<3>黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスを有効成分とする、皮膚のシワ防止剤。
<4>黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスを有効成分とする、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
<5>前記マトリックスメタロプロテアーゼが、マトリックスメタロプロテアーゼ-1である、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
<6>前記黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの質量比をを1:0.05~5とする、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤。
<7>皮膚のシワ防止のための、黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスを配合するため、マトリックスメタロプロテアーゼを阻害する作用を持ち、シワ防止、老化防止用の皮膚外用剤や慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例として、黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの組み合わせによる、マトリックスメタロプロテアーゼ-1遺伝子の発現阻害を表すグラフである。
【
図2】比較例1として、黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びドクダミエキスの組み合わせによる、マトリックスメタロプロテアーゼ-1遺伝子の発現阻害を表すグラフである。
【
図3】比較例2として、黒蝶貝コンキオリン加水分解物及び褐藻エキスの組み合わせによる、マトリックスメタロプロテアーゼ-1遺伝子の発現阻害を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとし、「約」は、その後に続く数字の±20%の範囲内を意味するものとする。
【0013】
<1>黒蝶貝コンキオリン加水分解物
コンキオリンは、アコヤガイ、クロチョウガイ、シロチョウガイ、マベ、アワビ、イケチョウガイ等の真珠や貝殻の真珠層に含まれるタンパク質の名称で、本願ではこのうちクロチョウガイの真珠及び/又は貝殻を用いる。この真珠及び/又は貝殻から炭酸カルシウムを除いた(脱灰)のちに加水分解することによって、コンキオリンの加水分解物が得られる。
【0014】
脱灰は酸類(通常は安価な塩酸がもっともよく利用される)で、水不溶性の炭酸カルシウムから塩化カルシウム等の水によく溶解する物質に変化させ、デカンテーション、遠心分離、濾過等の方法で、水不溶性のコンキオリンと分ける。コンキオリン以外の物質も不溶物の中に含まれるが特に問題ない。
このコンキオリンを酸、アルカリやタンパク分解酵素で分解する。酸であれば、塩酸、硫酸、リン酸、乳酸、蟻酸、シュウ酸、マレイン酸、サリチル酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸が例示され、この中から1種以上を選択して加水分解する。また、酸加水分解した後、タンパク分解酵素でさらに分解するなど、2種以上の方法を利用することもできる。
必要な加水分解を行ったら、酸を用いた場合は中和し、製剤として用いやすいようにpHを中性付近にする。中和剤として特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示できる。
中和すると塩が生じるため、場合によっては製剤を作成する場合に障害になるので塩を除く操作を行う。
脱塩の方法は特に限定はなく、イオン交換樹脂、電気透析等の方法がある。しかしコストがかかるので、特開昭62-223104号公報や特願2012-148228号等の方法を取ると安価にそして不純物も減少させたコンキオリンの加水分解物を得ることができる。
【0015】
本発明の黒蝶貝コンキオリン加水分解物の製剤への配合量は、目的や剤型その他の要因で大きく変わるが、好ましくは製剤の0.000001質量%以上であり、より好ましくは0.00001質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。なお、黒蝶貝コンキオリン加水分解物は、製剤への投入操作を簡便にするためや、その成分の防腐や安定性確保のためなどで、多価アルコール水溶液等に予め溶解しておいてもよい。前記配合量は、得られた固形分(以下、純分ともいう)としての量である。
【0016】
<2>ボタンエキス
ボタンエキスは、ボタン由来の抽出物自体のみならず、これらの抽出物の画分、精製した画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとする。またボタン由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
上記エキスを抽出する場合、その抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができるが、非極性溶媒での抽出や超臨界二酸化炭素抽出、水蒸気蒸留等の方法も用いることができる。
上記エキスの具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられるが、抽出方法はこれに限定されない。
【0017】
本発明のボタンエキスの製剤への配合量は、目的や剤型その他の要因で大きく変わるが、好ましくは製剤の0.000001質量%以上であり、より好ましくは0.00001質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。なお、ボタンエキスは、製剤への投入操作を簡便にするためや、その成分の防腐や安定性確保のためなどで、多価アルコール水溶液等に予め溶解しておいてもよい。前記配合量は、純エキス分(以下、純分ともいう)としての量である。
【0018】
本発明における黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの他に、医薬品、食品、化粧品に利用できる原料とともに、製剤を作成するか、既存の医薬品、食品、化粧品にこれらを加えて利用することもできる。黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスを製剤に配合する場合は、その配合比率を純分の質量比として、好ましくは1:0.05~5、より好ましくは1:0.1~2、さらに好ましくは1:0.5~1とすることが望ましい。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は化粧品、医薬部外品、医薬品を含み、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、皮膚外用剤に通常用いられている成分、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0020】
本発明の、皮膚のシワ防止剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤及び皮膚のシワ防止のための黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの使用について、投与経路として経口、注射、外用が挙げられる。
【実施例0021】
以下、具体的な実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の態様にのみ限定されない。
【0022】
<実施例1>黒蝶貝コンキオリン加水分解物
細断したクロチョウガイ貝殻1kgに水120kgを加え、ゆっくり撹拌しながら徐々に塩酸を1kg加え、1日放置した。さらに塩酸を1kg加え、2日放置した。さらに塩酸を200g加え、1日放置した。
これに水酸化ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと加え、pH7.0になるように調整した。これを遠心分離し、沈殿を得た。この沈殿に水2kgを加えよく撹拌した後遠心分離し、沈殿を得た。この操作をさらに2回繰り返した。この沈殿に水10kgを加えよく撹拌した後、1日放置後遠心分離し、沈殿を得た。
この沈殿を冷却器の付いたフラスコに入れ、水を100gと硫酸30gを加え、110℃に設定したマントルヒーターで加温しながら18時間加温した。冷却後、撹拌しながら、水酸化カルシウム25gを徐々に加えて1時間撹拌した。
さらに徐々に水酸化カルシウムを加えてpHを7.0にした。この液を遠心分離し、上澄みを得た。これにエタノールを2倍量加え撹拌した。4℃で2日間静置した後、ろ過し、ろ液を得た。これをエバポレートした後、凍結乾燥した。
【0023】
<実施例2>ボタンエキス
ボタン Paeonia suffruticosa Andrews(Paeonia moutan Sims)(Paeoniaceae)の根皮にエタノール溶液を加えて抽出し、抽出液を得た。次に抽出液を冷凍処理し、ろ過してろ液を得た。このろ液の溶媒を減圧留去により除去した。得られた残留物に1,3-ブチレングリコール及び水を加えて溶かし、ろ過した。
【0024】
<マトリックスメタロプロテアーゼ阻害確認試験>
新生児包皮由来の線維芽細胞を用いて、細胞外マトリックス及び細胞外マトリックスの分解酵素の発現量を試験した。すなわち、線維芽細胞を50~70%コンフルエントになるまで培養後、作用培地に置き換え、37℃、5%CO2インキュベータ中で2日間培養した。培養後、RNA回収試薬を用いて、Total RNAを抽出し、2.5μgのRNAから逆転写酵素を用いて、cDNAを合成した。遺伝子発現比較は、Realtime PCRsystemを用い、SYBR Green法を用いたΔΔCT法にて、上述遺伝子の発現量を測定した。内部標準としてGAPDHを使用した。
黒蝶貝コンキオリン加水分解物は、図中の濃度になるように純分を作用培地に溶解した。また、ボタンエキスは純分約1%の溶液を、図中の濃度になるように作用培地に溶解した。
【0025】
図1に示すように黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの組み合わせはそれぞれを単体で作用させた時よりもマトリックスメタロプロテアーゼ-1遺伝子の発現を阻害した。
【0026】
比較例1として黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びドクダミエキスの組み合わせの試験結果を
図2に、比較例2として黒蝶貝コンキオリン加水分解物と褐藻エキスの組み合わせの試験結果を
図3に示した。
ドクダミエキスは純分約1%の溶液を、図中の濃度になるように作用培地に溶解した。また、褐藻エキスは、図中の濃度になるように純分を作用培地に溶解した。
黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びドクダミエキスの組み合わせ、及び、黒蝶貝コンキオリン加水分解物と褐藻エキスの組み合わせでは、いずれにおいても単体で作用させた時の効果を上回らなかった。
【0027】
なお、比較例のドクダミエキス及び褐藻エキスは以下のとおり作成した。
【0028】
<ドクダミエキス>
ドクダミ(Houttuynia cordata Thunb.(Saururaceae)の開花期の地上部に、1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて抽出し、冷所処理、調製、ろ過した(純エキス分を純分ともいう)。
【0029】
<褐藻エキス>
褐藻イシゲ科イシゲ属海藻に精製水を加えて抽出し、この抽出液にエタノールを加え、タンパク質、多糖体を除いた上澄みを乾燥した(固形分を純分ともいう)。
【0030】
本願において、黒蝶貝コンキオリン加水分解物及びボタンエキスの組み合わせはそれぞれを単体で作用させた時よりもマトリックスメタロプロテアーゼ-1遺伝子の発現を阻害し、シワ防止、老化防止用の皮膚外用剤や、慢性関節リウマチ、動脈硬化、変形性関節症、歯周疾患、異所性脈管形成、腫瘍性浸潤および転移、潰瘍形成、骨疾患、血管再閉塞、血管再狭窄、HIV感染症、または糖尿病合併症の治療および予防剤に利用することができる。