(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145930
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】全固体電池、全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241004BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241004BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058542
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古田 照実
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ04
5H029HJ00
5H029HJ12
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA22
5H050CA25
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050CB25
5H050DA09
5H050GA03
5H050GA04
5H050HA00
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】全固体電池の正極において、正極活物質層と絶縁部材の境目に電流が集中することを抑制し、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極側で局所的にリチウムが析出することを抑制する。
【解決手段】正極集電体11に正極活物質層12が形成された全固体電池用正極10と、負極集電体31に負極活物質層32が形成された全固体電池用負極30と、全固体電池用正極10と全固体電池用負極30の間に配置された固体電解質層20と、を備え、全固体電池用正極10は、正極集電体11と、正極集電体11に形成された正極活物質層12と、正極活物質層12の外周に設けられた絶縁部材13と、を備え、正極活物質層12は、正極集電体11から離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部12aを有し、負極活物質層32は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む、全固体電池1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に正極活物質層が形成された全固体電池用正極と、
負極集電体に負極活物質層が形成された全固体電池用負極と、
前記全固体電池用正極と前記全固体電池用負極の間に配置された固体電解質層と、を備え、
前記全固体電池用正極は、正極集電体と、前記正極集電体に形成された正極活物質層と、前記正極活物質層の外周に設けられた絶縁部材と、を備え、
前記正極活物質層は、前記正極集電体から離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部を有し、
前記負極活物質層は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む、全固体電池。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記正極集電体に向かって広がるように傾斜する第2の傾斜部を有する、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の全固体電池の製造方法であって、
正極集電体上に、前記正極集電体に向かって広がるように傾斜する傾斜部を有する絶縁部材を、間隔を置いて複数形成する工程と、
前記正極集電体上において、隣り合う前記絶縁部材の間に正極活物質層を形成して、全固体電池用正極を得る工程と、
固体電解質層を介して、前記全固体電池用正極と全固体電池用負極を積層する工程と、
を有する、全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記正極活物質層を形成した後に、前記正極集電体、前記正極活物質層および前記絶縁部材を加圧する加圧工程を有する、請求項3に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記加圧工程の後に、前記絶縁部材および前記正極集電体を切断する切断工程を有する、請求項4に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池、および全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、例えば、正極集電体上に電極合剤を塗工して正極活物質層を形成し、さらに、正極活物質層の外周に絶縁部材を形成したシートに対して、正極活物質層の上面に固体電解質を配置したシートを、任意の形状に切り出し、正極、負極を交互に積層して、プレス成形することにより製造されている。
【0003】
このようにして得られた全固体電池の正極では、正極活物質層が、正極集電体に向かって広がるように傾斜する傾斜部を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正極活物質層が、正極集電体に向かって広がるように傾斜する傾斜部を有する場合、正極活物質層と絶縁部材の境目に電流が集中し、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極側で局所的にリチウムが析出することが課題である。
【0006】
本願は上記課題の解決のため、全固体電池の正極において、正極活物質層と絶縁部材の境目に電流が集中することを抑制し、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極側で局所的にリチウムが析出することを抑制することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]正極集電体に正極活物質層が形成された全固体電池用正極と、
負極集電体に負極活物質層が形成された全固体電池用負極と、
前記全固体電池用正極と前記全固体電池用負極の間に配置された固体電解質層と、を備え、
前記全固体電池用正極は、正極集電体と、前記正極集電体に形成された正極活物質層と、前記正極活物質層の外周に設けられた絶縁部材と、を備え、
前記正極活物質層は、前記正極集電体から離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部を有し、
前記負極活物質層は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む、全固体電池。
【0008】
本発明の全固体電池は、正極活物質層が正極集電体から離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部を有するため、正極活物質層と絶縁部材の境目に電流が集中することを抑制でき、金属リチウムまたはリチウム合金を含む全固体電池用負極側で局所的にリチウムが析出することを抑制できる。
【0009】
[2]前記絶縁部材は、前記正極集電体に向かって広がるように傾斜する第2の傾斜部を有する、[1]に記載の全固体電池。
【0010】
絶縁部材が、正極集電体に向かって広がるように傾斜する第2の傾斜部を有するため、正極活物質層と絶縁部材の境目に電流が集中することを抑制できる。
【0011】
[3][1]または[2]に記載の全固体電池の製造方法であって、
正極集電体上に、前記正極集電体に向かって広がるように傾斜する傾斜部を有する絶縁部材を、間隔を置いて複数形成する工程と、
前記正極集電体上において、隣り合う前記絶縁部材の間に正極活物質層を形成して、全固体電池用正極を得る工程と、
固体電解質層を介して、前記全固体電池用正極と全固体電池用負極を積層する工程と、
を有する、全固体電池の製造方法。
【0012】
本発明の全固体電池の製造方法によれば、本発明の全固体電池が得られる。
【0013】
[4]前記正極活物質層を形成した後に、前記正極集電体、前記正極活物質層および前記絶縁部材を加圧する加圧工程を有する、[3]に記載の全固体電池の製造方法。
【0014】
正極活物質層を形成した後に、正極集電体、正極活物質層および絶縁部材を加圧する加圧工程を有すると、正極集電体から離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部を有する正極活物質層を容易に形成することができる。
【0015】
[5]前記加圧工程の後に、前記絶縁部材および前記正極集電体を切断する切断工程を有する、[4]に記載の全固体電池の製造方法。
【0016】
加圧工程の後に、絶縁部材および正極集電体を切断する切断工程を有すると、所定の大きさの全固体電池が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全固体電池の正極において、正極活物質層と絶縁部材の境目に電流が集中することを抑制し、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極側で局所的にリチウムが析出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る全固体電池の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る全固体電池の電流密度をシミュレーションした結果を示す図である。
【
図3】従来の全固体電池の一例を示す断面図である。
【
図4】従来の全固体電池の電流密度をシミュレーションした結果を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る全固体電池の製造方法を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る全固体電池の製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
[全固体電池]
図1は、本発明の実施形態に係る全固体電池の一例を示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は図示するものに限られないものとする。
【0021】
全固体電池1は、全固体電池用正極(以下、「正極」と略すこともある。)10と、固体電解質層20と、全固体電池用負極(以下、「負極」と略すこともある。)30とを備える。全固体電池1では、固体電解質層20を介して、正極10と負極30が積層されている。
【0022】
正極10は、正極集電体11と、正極集電体11の一方の主面11aに形成された正極活物質層12と、正極活物質層12の外周に設けられた絶縁部材13とを備える。
正極活物質層12は、正極集電体11の一方の主面11aから離れる方向に向かって(正極活物質層12の厚み方向に向かって)広がるように傾斜する第1の傾斜部12aを有する。第1の傾斜部12aの正極集電体11の一方の主面11aに対する角度は、特に限定されず、正極活物質層12の容量や、固体電解質層20の厚み等に応じて調整される。本実施形態では、全固体電池1の電流密度をシミュレーションにより導き出し、そのシミュレーションによる結果に基づいて、第1の傾斜部12aの正極集電体11の一方の主面11aに対する角度を調整する。
【0023】
絶縁部材13は、正極集電体11の一方の主面11aに向かって(正極集電体11の厚み方向に向かって)広がるように傾斜する第2の傾斜部13aを有する。第2の傾斜部13aの正極集電体11の一方の主面11aに対する角度は、特に限定されず、正極活物質層12の容量や、固体電解質層20の厚み等に応じて調整される。
【0024】
負極30は、負極集電体31と、負極集電体31の一方の主面31a形成された負極活物質層32とを備える。
【0025】
(正極)
正極集電体11は、導電率が高い少なくとも1つの物質で構成されるのが好ましい。
導電性が高い物質としては、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか1つの金属元素を含む金属又は合金、あるいはカーボン(C)の非金属が挙げられる。導電性の高さに加えて、製造コストも考慮すると、アルミニウム、ニッケル又はステンレスが好ましい。更に、アルミニウムは、正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応し難い。そのため、正極集電体11にアルミニウムを用いると、全固体電池1の内部抵抗を低減することができる。
【0026】
正極集電体11の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状、不織布状、発泡状等を挙げることができる。また、正極活物質層12との密着性を高めるために、正極集電体11の表面にカーボンなどが配置されていてもよいし、表面が粗化されていてもよい。
【0027】
正極活物質層12は、リチウムイオンと電子を授受する正極活物質を含む。正極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の正極に適用可能な公知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、固溶体酸化物(Li2MnO3-LiMO2(M=Co、Niなど))、リチウム-マンガン-ニッケル-コバルト酸化物(LiNixMnyCozO2、x+y+z=1)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO4)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;Li2S、CuS、Li-Cu-S化合物、TiS2、FeS、MoS2、Li-Mo-S化合物等の硫化物;硫黄とカーボンの混合物;等が挙げられる。正極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0028】
正極活物質層12は、正極10の導電性を向上させる観点から、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては一般的に全固体型リチウムイオン電池に使用可能な導電助剤を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック等のカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛粉末;カーボンナノチューブ等の炭素材料、を挙げることができる。導電助剤は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0029】
また、正極活物質層12は、正極活物質同士及び正極活物質と正極集電体11とを結着させる役割をもつバインダーを含んでもよい。
【0030】
本実施形態では、正極活物質層12は、正極集電体11の一方の主面11aに形成されているが、これに限らず、正極活物質層12が、正極集電体11の両主面に形成されていてもよい。また、正極活物質層12が、メッシュ状、不織布状、発泡状等の3次元的な多孔質構造である場合、正極活物質層12は、正極集電体11と一体的に設けられてもよい。
【0031】
絶縁部材13を形成する絶縁材料は、特に限定されないが、例えば、アルミナ等の絶縁性酸化物、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の樹脂、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のゴム等が挙げられる。
【0032】
(固体電解質層)
固体電解質層20は、正極活物質層12と負極活物質層32の間に配置されている。
【0033】
上記固体電解質としては、リチウムイオン伝導性及び絶縁性を有するものであれば特に制限は無く、一般的に全固体型リチウムイオン電池に用いられる材料を用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質、リチウム含有塩などの無機固体電解質や、ポリエチレンオキシドなどのポリマー系の固体電解質、リチウム含有塩やリチウムイオン伝導性のイオン液体を含むゲル系の固体電解質等を挙げることができる。これらのうち、リチウムイオンの高い導電特性とプレスによる構造成形性や界面接合性が良好である観点からは、硫化物固体電解質材料であるのが好ましい。
固体電解質材料の形態としては、特に制限は無いが、例えば、粒子状を挙げることができる。
【0034】
固体電解質層20は、機械的強度や柔軟性を付与するための粘着剤を含んでいてもよい。
【0035】
固体電解質層20は、多孔性基材と、該多孔性基材に保持された固体電解質とを有するシート状であってもよい。上記多孔性基材の形態としては、特に制限は無いが、例えば、織布、不織布、メッシュクロス、多孔性膜、エキスパンドシート、パンチングシート等が挙げられる。これらの形態のうち、固体電解質の充填量をより高められる取扱性の観点から、不織布が好ましい。
【0036】
上記多孔性基材は、絶縁性材料により構成されていることが好ましい。これにより、固体電解質層20の絶縁性を向上させることができる。絶縁性材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ビニロン、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース、アクリル樹脂等の樹脂材料;麻、木材パルプ、コットンリンター等の天然繊維、ガラス等が挙げられる。
【0037】
(負極)
負極集電体31は、正極集電体11と同様、導電率が高い少なくとも1つの物質で構成されるのが好ましい。導電性が高い物質としては、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか1つの金属元素を含む金属又は合金、あるいはカーボン(C)の非金属が挙げられる。導電性の高さに加えて、製造コストも考慮すると、銅、ニッケル又はステンレスが好ましい。さらに、ステンレスは、正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応し難い。そのため、負極集電体31にステンレスを用いると、全固体電池の内部抵抗を低減することができる。
【0038】
負極集電体31の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状、不織布状、発泡状等を挙げることができる。また、負極活物質層32との密着性を高めるために、負極集電体31の表面にカーボンなどが配置されていてもよいし、表面が粗化されていてもよい。
【0039】
負極活物質層32は、リチウムイオンと電子を授受する負極活物質を含む。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の負極に適用可能な公知の負極活物質を用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした合金系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム、リチウム合金;リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti5O12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0040】
負極活物質層32は、導電助剤及びバインダー等を含んでいてもよい。これらの材料としては、特に制限は無いが、例えば、上述した正極活物質層12に用いられる材料と同様のものを用いることができる。
【0041】
上述したように、本実施形態の全固体電池1によれば、正極10の正極活物質層12は、正極集電体11の一方の主面11aから離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部12aを有するため、正極活物質層12と絶縁部材13の境目に電流が集中することを抑制できる。その結果、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極30側で局所的にリチウムが析出することを抑制できる。
【0042】
ここで、全固体電池1の電流密度をシミュレーションした結果を
図2に示す。
図2において、上部破線は全電流密度(大きさ)を示し、下部破線はy方向の電流密度を示し、実線はx方向の電流密度を示す。
図2に示すように、全固体電池1では、電流の集中が観測されない。
図1に示すように、絶縁部材13は、正極集電体11の一方の主面11aに向かって広がるように傾斜する第2の傾斜部13aを有する。従って、全固体電池1では、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極30側で局所的にリチウムが析出することを抑制できる。
【0043】
図3に、従来の全固体電池の一例の断面図を示す。
図3において、
図1に示す構成と同一の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
全固体電池200では、正極活物質層12は、正極集電体11の一方の主面11aから離れる方向に向かって狭まるように傾斜する第1の傾斜部12aを有する。また、絶縁部材13は、正極集電体11の一方の主面11aに向かって狭まるように傾斜する第2の傾斜部13aを有する。
【0044】
ここで、全固体電池200の電流密度をシミュレーションした結果を
図4に示す。
図4において、上部破線は全電流密度(大きさ)を示し、下部破線はy方向の電流密度を示し、実線はx方向の電流密度を示す。
図4に示すように、全固体電池200では、電流の集中が観測された。従って、全固体電池200では、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極30側で局所的にリチウムが析出する。
【0045】
[全固体電池の製造方法]
図5は、本発明の実施形態に係る全固体電池の製造方法を示す断面図である。
図6は、本発明の実施形態に係る全固体電池の製造方法を示す平面図である。
図5および
図6において、
図1に示す構成と同一の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は図示するものに限られないものとする。
【0046】
本実施形態の全固体電池の製造方法は、正極集電体上に、前記正極集電体に向かって広がるように傾斜する傾斜部を有する絶縁部材を、間隔を置いて複数形成する工程(以下、「絶縁部材形成工程」と言う。)と、前記正極集電体上において、隣り合う前記絶縁部材の間に正極活物質層を形成して、全固体電池用正極を得る工程(以下、「正極形成工程」と言う。)と、固体電解質層を介して、前記全固体電池用正極と全固体電池用負極を積層する工程(以下、「積層工程」と言う。)とを有する。
【0047】
(絶縁部材形成工程)
絶縁部材形成工程では、絶縁材料塗工装置110により、正極集電体11の一方の主面11aに、絶縁材料53を塗工し、絶縁材料53を硬化させて、正極集電体11の一方の主面11aに向かって広がるように傾斜する第2の傾斜部13aを有する絶縁部材13を、間隔を置いて複数形成する。
【0048】
(正極形成工程)
正極形成工程では、正極合剤塗工装置120により、正極集電体11の一方の主面11aにおいて、隣り合う絶縁部材13の間に正極活物質を含む正極合剤を塗工して正極活物質層12を形成して、正極10を得る。
【0049】
(加圧工程)
正極形成工程において、正極活物質層12を形成した後に、加圧ローラー130により、正極集電体11、正極活物質層12および絶縁部材13を加圧する加圧工程を有することが好ましい。加圧工程により、隣り合う絶縁部材13の間に、正極集電体11の一方の主面11aから離れる方向に向かって広がるように傾斜する第1の傾斜部12aを有する正極活物質層12を容易に形成することができる。
【0050】
(切断工程)
正極形成工程において、加圧工程の後に、絶縁部材13および正極集電体11を切断する切断工程を有することが好ましい。切断工程により、所定の大きさの全固体電池1が得られる。
【0051】
本実施形態の全固体電池の製造方法によれば、上述の実施形態の全固体電池が得られる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 全固体電池
10 全固体電池用正極(正極)
11 正極集電体
12 正極活物質層
13 絶縁部材
20 固体電解質層
30 全固体電池用負極(負極)
31 負極集電体
32 負極活物質層