(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145931
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/476 20060101AFI20241004BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61F13/476
A61F13/15 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058544
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 奈都美
(72)【発明者】
【氏名】寒川 裕太
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA08
3B200BB03
3B200BB21
3B200CA13
3B200DA12
3B200DB20
3B200DC02
3B200DC07
3B200EA07
(57)【要約】
【課題】効率的且つ効果的に冷感を知覚させることができる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】吸収体と、該吸収体よりも着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、該吸収体よりも着用者の非肌対向面側に位置する裏面シートとを備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及びこれに直交する横方向を有する吸収性物品である。前記吸収体の外縁から外方に延出し前記吸収性物品の輪郭を形成するフラップ部を有し、少なくとも該フラップ部における肌対向面を形成する周辺不織布を有しており、前記周辺不織布は、前記表面シートと重なる重なり領域を有し、該重なり領域がポリエチレン樹脂を含み且つ体積充填率が3.5%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、該吸収体よりも着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、該吸収体よりも着用者の非肌対向面側に位置する裏面シートとを備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及びこれに直交する横方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収体の外縁から外方に延出し前記吸収性物品の輪郭を形成するフラップ部を有し、少なくとも該フラップ部における肌対向面を形成する周辺不織布を有しており、
前記周辺不織布は、前記表面シートと重なる重なり領域を有し、該重なり領域がポリエチレン樹脂を含み且つ体積充填率が3.5%以上である、吸収性物品。
【請求項2】
前記周辺不織布は、前記吸収体の外縁よりも内方に位置する中央延在部を有し、該中央延在部が前記重なり領域を形成している、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記周辺不織布は、前記重なり領域における体積充填率が、前記表面シートの体積充填率よりも1%以上高い、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記周辺不織布は、前記重なり領域における接触冷感qmaxが、前記表面シートの接触冷感qmaxよりも0.05W/m2以上高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記フラップ部は、前記吸収性物品の前記横方向の両側部に沿ったサイドフラップ部を有しており、
前記サイドフラップ部の肌対向面を形成する前記周辺不織布が、前記重なり領域を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記裏面シートは、透湿性シートにより形成されており、
前記フラップ部において前記周辺不織布と前記裏面シートとが直接一体化されている、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記周辺不織布は、少なくとも前記重なり領域において、平均繊維径が3.3dtex以下である短繊維を含んでいる、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記周辺不織布は、前記重なり領域の接触冷感qmaxが0.1W/m2以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記周辺不織布の肌対向面に、該周辺不織布と前記表面シートとを接合する線状エンボス部が形成されており、該線状エンボス部が蛇行しながら前記縦方向に延びている、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記重なり領域が、ナイロンとポリエチレン樹脂とを含む繊維によって構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収体が、吸水性ポリマーがシートに担持された吸収性シートを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収体が、吸水性ポリマー及び吸水性繊維を含有する積繊体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記表面シートは、0.5gf/cm2荷重下におけるKES圧縮変形量が0.15mm以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記表面シートと前記吸収体との間にセカンドシートが配されており、該セカンドシートは冷涼剤を含み、該冷涼剤が前記縦方向又は前記横方向において前記フラップ部側に偏在している、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記重なり領域は、幅が4mm以上である部分を有している、請求項1~14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼感や冷感を知覚させることができる構成を具備させる観点から、繊維の物性や物品の構成について種々の検討がされている。例えば特許文献1には、20℃から30℃における繊維軸方向の熱伝導率が5W/mK以上の有機高分子繊維を少なくとも1種類含み、20℃から30℃における厚み方向の熱伝導率が0.08W/mK以上で、接触冷温感が0.13W/cm2以上である、布帛が開示されている。
【0003】
特許文献2には、吸収体の横方向両側部から外側に延出するサイドフラップに冷感剤が塗布された吸収性物品が開示されている。
【0004】
特許文献3には、鞘部ポリマーがポリアミド、芯部ポリマーがポリエーテルエステルアミド共重合体で構成され、無機粒子を繊維全体で0.1~5重量%含有する繊維及びこれを用いた布帛が開示されている。
【0005】
また特許文献4には、鞘層がポリエチレンで、芯層がナイロン又はポリエステルである複合繊維の糸を編立てたニット生地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-236130号公報
【特許文献2】特開2016-120208号公報
【特許文献3】特開2016-204784号公報
【特許文献4】実用新案登録第3226090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生理用ナプキン等の体液の吸収に用いられる吸収性物品は、複数の不織布を含んで構成されることが一般的である。このような吸収性物品が使用前又は着用時に肌に触れると、着用者に温感を知覚させ、使用時の蒸れ等の不快感を想起させることがある。斯かる不快感を低減する観点から、吸収性物品に、冷感を知覚させることが可能な構成を具備させることは有効である。しかしながら特許文献1、3及び4には、吸収性物品に関し、効率的且つ効果的に冷感を知覚させる点について特段の検討はなされていなかった。また、特許文献2の技術は、効率的且つ効果的に冷感を知覚させる点に改善の余地があった。
【0008】
したがって、本発明は、効率的且つ効果的に冷感を知覚させることができる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸収体と、該吸収体よりも着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、該吸収体よりも着用者の非肌対向面側に位置する裏面シートとを備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及びこれに直交する横方向を有する吸収性物品に関する。
一実施形態において、前記吸収性物品は、前記吸収体の外縁から外方に延出し該吸収性物品の輪郭を形成するフラップ部を有し、少なくとも該フラップ部における肌対向面を形成する周辺不織布を有していることが好ましい。
一実施形態において、前記周辺不織布は、前記表面シートと重なる重なり領域を有し、該重なり領域がポリエチレン樹脂を含み且つ体積充填率が3.5%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性物品によれば、肌に触れたときの冷感を効率的且つ効果的に知覚させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの肌対向面側(表面シート側)を一部破断して示す平面図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明に係る線状エンボス部のバリエーションを説明するための略示図面である。
【
図4】
図4(a)は、
図1に示す表面シートの斜視図であり、
図4(b)は断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す
図1相当図である。
【
図6】
図6は、本発明の吸収性物品のさらに別の実施形態を示す
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1(以下、単に「ナプキン1」ともいう。)が示されている。
ナプキン1は、
図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有している。ナプキン1は、縦方向Xにおいて、着用時に着用者の外陰部などの排泄部と対向配置される領域を含む排泄部対向領域Bと、該排泄部対向領域Bよりも縦方向X前側(着用者の腹側)に配される前方領域Aと、該排泄部対向領域Bよりも縦方向X後側(着用者の背側)に配される後方領域Cとを有し、その3つに区分される。
【0013】
本明細書において「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面である。肌対向面は、着用者の肌に相対的に近い側の面であり、非肌対向面は、着用者の肌から相対的に遠い側の面である。
本明細書において「着用時」及び「着用状態」は、通常の適正な着用位置、すなわち吸収性物品の適正な着用位置が維持されて着用された状態を意味する。
【0014】
ナプキン1は、
図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5を有している。吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、体液を吸収保持する吸収体4と、該吸収体4よりも着用者の肌対向面側に位置し、着用者の肌と接触し得る表面シート2と、該吸収体4よりも着用者の非肌対向面側に位置する裏面シート3とを備えている。
本実施形態の表面シート2は、横方向Yの長さ(幅)が、吸収体4の横方向Yにおける幅と略等しく、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。本実施形態の裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出している。
また本実施形態のナプキン1は、吸収体4及び表面シート2との間に配されたセカンドシート7を備えている。表面シート2及びセカンドシート7はともに繊維シートである。
【0015】
ナプキン1は、吸収体4の外縁(周縁)から外方に延出し、ナプキン1の輪郭を形成するフラップ部6を有している。フラップ部6は、吸収体4の非配置領域となっている。
本実施形態のフラップ部6は、吸収性本体5における排泄部対向領域Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部6W,6Wを有している。
【0016】
本実施形態のように吸収性物品がウイング部6Wを有する場合、排泄部対向領域Bは、縦方向Xにおいてウイング部6Wを有する領域である。具体的には、一対のウイング部6W,6Wそれぞれにおける縦方向Xの前方側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線と、一対のウイング部6W,6Wそれぞれの後方側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線とに挟まれた領域が、排泄部対向領域Bである。
本実施形態のナプキン1において、一対のウイング部6W,6Wは、ナプキン1を横方向Yに二等分して縦方向Xに延びる縦中心線CLを基準として左右対称に形成されており、一方のウイング部6Wにおける前記前方側の付け根と他方のウイング部6Wのそれとは、縦方向Xにおいて同位置に存する。
【0017】
本実施形態の排泄部対向領域Bでは、
図1に示すように、フラップ部6を形成するシート材60,60が横方向Yの外方に向かって張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部6W,6Wが延設されている。ウイング部6Wは、
図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有している。ウイング部6Wの非肌対向面には、該ウイング部6Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部6Wは、ショーツ等といった着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。なお、ウイング部6Wは、着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるため、前記ウイング部粘着部の形成面であるウイング部6Wの非肌対向面は、その使用時に着用者の肌側に向けられ、肌対向面となる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
【0018】
吸収性物品がウイング部を有しない場合、排泄部対向領域Bは、排泄部と対向する領域であればよく、典型的には、該吸収性物品を縦方向Xに三等分したときの中央に位置する領域である。
【0019】
本実施形態のフラップ部6は、吸収体4の両側縁4S,4Sよりも横方向Yの外方に位置する一対のサイドフラップ部6S,6Sと、前方領域Aにおいて該吸収体4の縦方向Xの端部よりも該縦方向X外方に位置する前方フラップ部6Aと、後方領域Cにおいて該吸収体4の縦方向Xの端部よりも該縦方向X外方に位置する後方フラップ部6Cとを有する。サイドフラップ部6Sは、ナプキン1の横方向Yの両側部に沿っている。前方フラップ部6A及び後方フラップ部6Cは、ナプキン1の縦方向X両端部において、吸収体の両側縁4S,4Sを縦方向X外方に延長させたときの延長線VL,VLどうし間に位置する(
図1参照)。
本実施形態のサイドフラップ部6Sは、排泄部対向領域Bにおいて、前記のウイング部6Wを有している。
【0020】
フラップ部6は、吸収体4外縁の内外に跨ぐように配置されたシート部材によって構成されている。ナプキン1は、少なくともフラップ部6における肌対向面を形成する周辺不織布60を有している。本実施形態の周辺不織布60は、吸収体4外縁の内外を跨ぐように該吸収体4の肌対向面側に配され、フラップ部6の肌対向面を形成している。
本実施形態のフラップ部6は、該フラップ部6の肌対向面を形成する周辺不織布60と、吸収体4の外縁から外方に延出した裏面シート3とを含んで構成されている。詳細には、サイドフラップ部6S,6Sが、周辺不織布60及び裏面シート3により構成され、前方フラップ部6A及び後方フラップ部6Cの横方向Y両側に位置する両側部それぞれが、周辺不織布60、表面シート2及び裏面シート3によって構成されている。また、前方フラップ部6A及び後方フラップ部6Cの横方向Y中央部は、表面シート2及び裏面シート3によって構成されている。斯かる形態に加えてフラップ部6は、吸収体4の外縁から外方に延出したセカンドシート7を更に含んで構成されていてもよい。
フラップ部6を構成する複数のシート部材(例えば周辺不織布60及び裏面シート3)どうしは、接着剤、熱又は超音波による融着等の接合手段によって互いに接合されている。
【0021】
本実施形態の周辺不織布60は、フラップ部6の肌対向面を形成するとともに、一対の防漏カフ60b,60bを形成する(
図2参照)。一対の防漏カフ60b,60bは、周辺不織布60が表面シート2に接合さていない自由端60cと、表面シート2に接合された固定端(図示せず)とを有している。防漏カフ60bは、固定端から自由端60cが起立することで、側方への横漏れを防止する。防漏カフ60bは、接着剤や熱エンボス等の公知の接合手段によって周辺不織布60を表面シート2に部分的に接合することで形成される。
【0022】
周辺不織布60は、表面シート2と重なる重なり領域61を有している(
図1参照)。本実施形態の周辺不織布60は、平面視において吸収体4の外縁よりも内方に位置する中央延在部62を有し、平面視において該中央延在部62が表面シート2と重なる重なり領域61を形成している。中央延在部62は、縦方向Xに延びており、吸収体4の縦方向Xに沿う両側部と平面視において重なっている。
周辺不織布60は、吸収体4の外縁よりも内方に位置する重なり領域61を有していてもよく、吸収体4の外縁の内外を跨いで位置する重なり領域61を有していてもよい。
【0023】
重なり領域61と着用者の肌との接触面積をより確実に確保する観点から、重なり領域61は幅が4mm以上である部分を有していることが好ましく、該重なり領域61の幅が4mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることが更に好ましく、また、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることがより好ましい。
本実施形態では、重なり領域61が中央延在部62により形成されているので、該中央延在部62の幅W1が4mm以上であることが好ましい。上記と同様の観点から、中央延在部62の幅W1(
図1参照)は、好ましくは4mm以上15mm以下、より好ましくは6mm以上12mm以下である。
周辺不織布60がサイドフラップ部6Sの肌対向面を形成する場合、重なり領域61の前記幅W1は該領域61の横方向Yの長さであり、周辺不織布60が前方フラップ部6A又は後方フラップ部6Cの肌対向面を形成する場合、重なり領域61の幅W1は該領域61の縦方向Xの長さである。
【0024】
本実施形態の周辺不織布60において重なり領域61は、ポリエチレン樹脂を含んでいる。換言すると本実施形態の周辺不織布60は、ポリエチレン樹脂を含有する繊維を構成繊維として含む。
一般的に、ポリエチレン樹脂は、有機高分子材料の中でも熱伝導性が高いことが知られている。したがって、ポリエチレン樹脂自体が有する高い熱伝導性を発揮させるとともに、ポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂以外の樹脂との間に生じる界面に起因する熱伝導性の低下を抑制して、使用者に冷感を知覚させやすくする観点から、重なり領域61の構成繊維は、少なくとも外表面全域にポリエチレン樹脂を有していることが好ましく、繊維全体がポリエチレン樹脂で形成されていることがより好ましい。このような繊維としては、(i)繊維の外表面及び内部がともにポリエチレン樹脂からなる態様、すなわち繊維の構成樹脂がポリエチレン樹脂のみである態様や、(ii)ポリエチレン樹脂からなる低融点成分と、低融点成分よりも融点の高い高融点成分とを含み、低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を繊維長さ方向に連続して存在している二成分系の複合繊維の態様等が挙げられる。
【0025】
前記(i)の態様の具体例としては、構成樹脂として単一種類のポリエチレン樹脂からなる繊維や、構成樹脂として複数種類のポリエチレン樹脂のみからなる繊維が挙げられる。前記(ii)の態様の具体例としては、(a)高融点成分としてポリエチレン樹脂以外の樹脂を芯とし、芯の表面を覆うように、低融点成分としてポリエチレン樹脂の鞘が形成された芯鞘繊維や、(b)ポリエチレン樹脂を低融点成分とし、ポリエチレン樹脂以外の樹脂を高融点成分とし、低融点成分であるポリエチレン樹脂が繊維表面の少なくとも一部を繊維長さ方向に沿って連続して存在するサイドバイサイド繊維等が挙げられる。
前記(i)及び(ii)のポリエチレン樹脂を含有する繊維は、中実であってもよく、中空であってもよい。熱伝導性を高めて使用者に冷感を知覚させやすくする観点から、好ましくは中実の繊維である。
【0026】
重なり領域61に含まれるポリエチレン樹脂、すなわち重なり領域61の構成繊維に含まれるポリエチレン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、並びにエチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して若しくは組み合わせて用いることができる。
ポリエチレン樹脂としてエチレン-プロピレン共重合体を用いる場合、共重合体中のエチレン単位の割合は、熱伝導性を高める観点から、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
また、共重合体中のプロピレン単位の割合は、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0027】
ポリエチレン樹脂のみからなる繊維としては、HDPEのみからなる繊維(すなわちHDPEが100質量%である繊維)や、上述した各種ポリエチレンを複数用いた芯鞘繊維又はサイドバイサイド繊維が挙げられる。
ポリエチレン樹脂のみを用いた芯鞘繊維又はサイドバイサイド繊維としては、例えば、芯及び鞘にそれぞれ融点が異なるHDPEを用いた繊維や、芯にLDPE及びLLDPEのうち一種以上を用い且つ鞘にHDPEを用いた芯鞘繊維、芯にHDPEを用い且つ鞘にLLDPEを用いた芯鞘繊維、LLDPEを用いた繊維の表面の少なくとも一部にHDPEが繊維長さ方向に沿って連続して存在するサイドバイサイド繊維等が挙げられる。
ポリエチレン樹脂のみからなる繊維において、ポリエチレン樹脂の種類あるいは組み合わせについては、上述した内容に限定されず適用可能である。
【0028】
これらのうち、熱伝導率が高い物性を有し、使用者に対して冷感をより強く知覚させることを可能にする観点から、ポリエチレン樹脂としてHDPEを含むことが好ましく、HDPEのみからなることがさらに好ましい。すなわち、HDPE単独で用いることがさらに好ましい。
【0029】
前記(ii)の態様のように、重なり領域61の構成繊維がポリエチレン樹脂以外の他の樹脂を含有する場合、当該他の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン等のポリエチレン樹脂以外のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリパーフルオロエチレン等のフッ素樹脂、並びにナイロンなどが挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
重なり領域61の構成繊維が前記(ii)の態様である場合、該構成繊維は、ナイロンとポリエチレン樹脂とを含むことが好ましい。すなわち重なり領域61は、ナイロンとポリエチレン樹脂とを含む繊維によって構成されていることが好ましい。この場合、重なり領域61の構成繊維は、例えば、ナイロンとポリエチレン樹脂とを含む芯鞘繊維及びサイドバイサイド繊維の少なくとも一方を含む。前記芯鞘繊維は、ナイロンを芯としポリエチレン樹脂を鞘とするものであり、前記サイドバイサイド繊維はナイロンとポリエチレン樹脂とが繊維表面の少なくとも一部を繊維長さ方向に沿って連続して存在するものである。重なり領域61の構成繊維がナイロンとポリエチレン樹脂とを含むことによって、後述する冷感を知覚し得るナプキン1の製造効率をより向上できる。
【0031】
重なり領域61に含まれる樹脂の全質量に対するポリエチレン樹脂の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、一層好ましくは100質量%以下であり、より一層好ましくは100質量%である。
【0032】
本実施形態の周辺不織布60において重なり領域61は、体積充填率が3.5%以上である。斯かる体積充填率を具備することによって、重なり領域61では、熱伝導性の低い空気の含有量が少なくなるので熱の移動性を高めることができ、これに起因して重なり領域61と接触した際の冷感をより強く知覚させることができる。接触した際の冷感をより効果的に知覚させる観点から、重なり領域61の体積充填率は、好ましくは7.0%以上、より好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは14.0%以上、さらに一層好ましくは20.0%以上である。
風合いを良好にする観点から、重なり領域61の体積充填率は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは50.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下である。
【0033】
体積充填率は、実体積に対する見かけ体積の百分率として表すことができ、以下の方法により測定できる。
まず、測定対象の不織布(例えば、重なり領域61)を所定面積切り取って測定サンプルとし、その質量(g)を測定する。測定サンプルを切り取る際の所定面積は1cm四方が好ましいが、その寸法にて測定サンプルを切り出せない場合は、測定対象となる重なり領域61の坪量が目視にて均一である領域の中で、できる限り大きな領域となる幅及び長さで切り取る。そして、測定サンプルの質量及び面積から、測定サンプルの坪量A(g/cm2)を算出する。
また、測定サンプルの厚みB(cm)を測定する。測定サンプルの厚みB(cm)は、レーザー変位計(株式会社キーエンス製、LK-080。本明細書におけるレーザー変位計は全てこれである。)を用いる。まず、12.59g(直径55mm)のプレートのみをレーザー変位計に載置して厚みを測定し、これをゼロとしてゼロ点調整を行う。次いで、測定サンプルの上に前記プレートを載置した状態で、該測定サンプルの厚みB(cm)を測定する。斯かる厚みBの測定では、前記プレートの載置によって、4.9mN/cm2の荷重が測定サンプルに付与される。
次いで測定サンプルを構成する繊維の構成成分の比重C(g/cm3)を用いて、以下の式(I)から、体積充填率(%)を算出する。重なり領域61を構成する繊維が二種以上の樹脂を含む場合は、各構成樹脂の質量割合に基づく比重の和を比重Cとして用いる。例えば、比重C1(g/cm3)の構成成分と、比重C2(g/cm3)の構成成分とが30:70の質量割合である二成分系の繊維を含んでいる場合は、比重C(g/cm3)は、「0.3×比重C1+0.7×比重C2」と算出される。
体積充填率(%)=100×(A)/(B×C)・・・(I)
【0034】
測定対象の構成部材を吸収性物品から取り出す場合、吸収性物品にコールドスプレーを吹きかけ、ホットメルト接着剤を固化させてから測定対象の構成部材(例えば周辺不織布60)を丁寧に剥がすことで、該構成部材が得られる。斯かる方法は、本明細書の他の測定にも適用される。
【0035】
以下、「ポリエチレン樹脂を含み且つ体積充填率が3.5%以上である」という構成を、構成(1)ともいう。本実施形態の周辺不織布60は、その全体が前記構成(1)を具備しているため、重なり領域61も前記構成(1)を具備している。斯かる形態に代えて、周辺不織布60は、重なり領域61のみが前記構成(1)を具備していてもよく、重なり領域61に加え該重なり領域以外の他の領域が部分的に、前記構成(1)を具備していてもよい。
【0036】
周辺不織布60は、吸収体4の外縁を跨いで外方に延出しているので、ナプキン1を下着に貼り付ける着用動作時や、着用状態において、着用者の肌と接触し易い。斯かる周辺不織布60では、重なり領域61がポリエチレン樹脂を含み且つ体積充填率が3.5%以上である〔前記構成(1)〕ので、該重なり領域61における熱伝導率によって肌と接触したときに効果的に冷感を知覚させることができる。また本実施形態のナプキン1は、肌と接触し易い部位に前記構成(1)を具備させるため、該構成(1)を具備する構成部材の使用量を抑えられる。このように本実施形態のナプキン1は、効率的且つ効果的に冷感を知覚させることができる。
【0037】
サイドフラップ部6S、前方フラップ部6A及び後方フラップ部6Cの何れか一方の肌対向面を形成する周辺不織布60において、重なり領域61が前記構成(1)を具備していてもよい。本実施形態のナプキン1は、サイドフラップ部6Sの肌対向面を形成する周辺不織布60が、前記構成(1)を具備する重なり領域61を有している(
図1参照)。斯かる構成により、前記構成(1)を具備するシート部材の使用量をより抑えることができるので、より効率的に冷感を知覚させることができる。
【0038】
前述した冷感をより確実に知覚させる観点から、重なり領域61は、熱伝導率が所定の値以上である繊維を、該重なり領域61の表面の少なくとも一部に含有することが好ましい。
詳細には、重なり領域61は、熱伝導率が好ましくは0.11W/mK以上、より好ましくは0.13W/mK以上、更に好ましくは0.15W/mK以上である繊維を表面の一部に含有することが好適である。
また、重なり領域61は、熱伝導率が0.4W/mK以下の繊維を表面の一部に含有することが現実的である。
斯かる熱伝導率を有する繊維は、該繊維の表面の熱伝導率が前記の範囲内となっている。
重なり領域61は、例えば、上述したポリエチレン樹脂を含有する繊維を構成繊維として含むことによって、前記の熱伝導率をより容易に得ることができる。
【0039】
熱伝導率の測定は、例えば以下の方法で測定することができる。まず、前述した方法により重なり領域61から測定サンプルを採集する。次いで、測定サンプルを、プレス機等の加温加圧設備に導入して、不織布又は繊維原料の融点以上の温度で加熱しながら加圧し、厚み1mm程度のフィルム状試料とする。このとき、試料中に空気が残存しないように、加圧条件を適宜調整する。
そして、定常熱伝導率測定装置(KES-F6、カトーテック株式会社製)を用いて、30℃の熱板から試料を介して20℃の熱板へ移動した熱移動量に基づいて、熱伝導率を測定する。この測定を一つのフィルム状試料につき10箇所測定し、これらのうち最も高い値を熱伝導率(W/mK)とする。
【0040】
周辺不織布60は、少なくとも重なり領域61において、短繊維を含んでいることが好ましい。短繊維は、その繊維長が90mm以下の繊維を意味する。重なり領域61が短繊維を含むことで、肌との接触面積が増えるため、より冷感を知覚し易くなる。斯かる接触面積をより増加させる観点から、重なり領域61が含まれる短繊維の繊維長は、好ましくは30mm以上60mm以下、より好ましくは40m以上55mm以下である。
繊維の繊維長は、捲縮がかかった状態であった場合はそのまま繊維を伸ばさずに測定する。繊維長の測定では、なるべく繊維の曲がりが生じないように静置し繊維の端点から端点までの距離を定規で10本測定し、それら繊維長の算術平均値を、繊維の繊維長とする。
【0041】
前述の肌との接触面積をより増加させる観点から、重なり領域61に含まれる短繊維は、平均繊維径が好ましくは3.3dtex以下、より好ましくは2.8dtex以下であり、また好ましくは1.3dtex以上3.3dtex以下、より好ましくは2.0dtex以上2.8dtex以下である。
繊維の平均繊維径(dtex)は以下の方法により測定される。
【0042】
〔平均繊維径(dtex)の測定方法〕
まず、吸収性物品から前述した方法により周辺不織布60を取り出し、荷重がかかっていない状態の周辺不織布60を、50mm×100mm(面積5000mm2)の長方形状に切り出して測定用サンプルを作製する。次いで、電子顕微鏡を用いて測定用サンプルの表面(重なり領域61の肌対向面)を観察し、任意の繊維10本を対象として繊維太さを実測する。そして、この実測した繊維太さの算術平均値Dn(μm)を算出する。
次いで、示差走査熱量測定器(DSC)を用いて、測定用サンプルの表面における繊維の構成樹脂を特定し、理論繊維密度Pn(g/cm3)を求める。得られた繊維太さの算術平均値Dn(μm)及び理論繊維密度Pn(g/cm3)から、繊維長さ10000m当たりの重さ(g)を算出して、この算出された値を重なり領域61の繊維の平均繊維径(dtex)とする。
【0043】
肌と接触したときの冷感をより知覚し易くして、冷涼性をより確実に得る観点から、周辺不織布60は、重なり領域61の接触冷感qmaxが、好ましくは0.1W/m2以上、より好ましくは0.15W/m2以上であり、また好ましくは0.4W/m2以下、より好ましくは0.3W/m2以下であり、また好ましくは0.1W/m2以上0.4W/m2以下、より好ましくは0.15W/m2以上0.3W/m2以下である。斯かる接触冷感qmaxは、重なり領域61の表面温度よりも10℃高い熱原体を該重なり領域61に98mN/cm2の接触圧で接触させたときの接触冷感qmaxである。
【0044】
接触冷感qmaxは、肌が物体に触れたときに冷たく感じる皮膚感覚を数値化したものである。この接触冷感は、肌が物体に触れたときの、肌から物体への熱の移動量によって異なり、熱の移動量が多いほど、触れたときに冷たく感じる。接触冷感qmaxは、この肌から物体への熱の移動量の最大値に対応するものであり、接触冷感qmaxの値は、物体に触れたときに冷たく感じる場合ほど大きく、温かく感じる場合ほど小さくなる。
接触冷感qmaxは、以下の方法で測定することができる。
【0045】
〔接触冷感qmaxの測定方法〕
吸収性物品から測定対象の不織布を前述した方法により取り出し、該不織布から長さ1cm×幅1cmの試験片を切り出す。重なり領域61の接触冷感を測定する場合は、周辺不織布60にける重なり領域61から前記の試験片を切り出す。切り出した試験片は、室温23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置する。
次いで、前記の環境下で、試験片を測定台に載せ、両面テープを用いて測定台に試験片を固定する。測定台としては、気体や液体を熱媒体として用いた恒温装置を用いる。
そして測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7 サーモラボII)及び該装置の測定マニュアルに従い、試験片に熱原体を接触させて、該試験片の接触冷感qmaxを測定する。具体的には、前記熱原体として、面積が9.0cm2であり且つ質量が9.8gである純銅板の温度を33℃(試験片の表面温度より10℃高い温度)に調整し、該純銅板を、接触圧1kPaで試験片に接触させる。この接触の瞬間の熱流量の値をゼロとして、純銅板を試験片に接触した状態の熱流量の最大値を測定する。斯かる測定を5回行い、これら複数の測定値の算術平均値を、接触冷感qmax(W/m2)とする。
【0046】
熱伝導性の低い空気を含み難くするとともに、風合い及び着用感をより向上させる観点から、周辺不織布60の坪量は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは30g/m2以上、そして、好ましくは90g/m2以下、より好ましくは70g/m2以下である。
【0047】
裏面シート3は、液難透過性、液不透過性又は撥水性のものが用いられ、透湿性の樹脂フィルム等の透湿性シートを好ましく用いることができる。
本実施形態の裏面シート3は、フラップ部6において周辺不織布60と接合によって直接一体化されている。この場合、裏面シート3は透湿性シートにより形成されていることが好ましい。斯かる構成により、周辺不織布60と一体化した裏面シート3から外部に熱を逃がし易くなり、下着にナプキン1を装着する際に手で触れることになるフラップ部6における冷涼性をより向上できる。
裏面シート3と周辺不織布60との一体化は、接着剤等の接合によりなされていてもよく、融着によりなされていてもよい。
【0048】
本実施形態のナプキン1は、フラップ部6の肌対向面に線状エンボス部9が形成されており、該線状エンボス部9によって周辺不織布60が吸収性本体5に接合されている。本実施形態の線状エンボス部9は、周辺不織布60と表面シート2とを接合しており、該線状エンボス部9よりも横方向Yの内方端部が自由端部となり、前述した防漏カフ60bを形成している。
線状エンボス部9は、周辺不織布60、表面シート2を構成する繊維が、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工によって圧密化された部位であり、熱伝導率が高い部位となっており、手等の肌と接触したときに冷感をより知覚させ易い。
【0049】
本実施形態の線状エンボス部9は、ナプキン1の全長に連続して縦方向Xに延びている。手等の肌と接触し易くする観点から、線状エンボス部9は蛇行しながら縦方向Xに延びていることが好ましい。「蛇行しながら縦方向Xに延びる」とは、線状エンボス部9が部分的に縦方向Xに対し角度を有するように、該縦方向Xに延びていることを意味する。斯かる形態として、
図1に示すように、線状エンボス部9がジグザグ状であるものや、平面視において横方向Yの外方及び内方に向かって交互に突出する凸部を有した波状のもの〔
図3(a)参照〕、該線状エンボス部9全体が円弧状に湾曲したもの〔
図3(b)参照〕、複数の円弧が間欠的に配置された形状〔
図3(c)参照〕、又はこれらを組み合わせた形状であってもよい。
肌との接触をより容易にする観点から、線状エンボス部9の幅は、好ましくは1mm以上3mm以下、より好ましくは1.3mm以上2mm以下である。
【0050】
本実施形態のナプキン1では、重なり領域61とともに表面シート2も肌に接触し易い部位となっている。表面シート2は、公知の液透過性シートを用いることができ、例えば公知の各種製法により製造された単層又は多層構造の不織布等を用いることができる。
重なり領域61における接触時の冷感をより知覚させる観点から、重なり領域61と表面シート2とで以下のように物性を異ならせることが有効である。
周辺不織布60は、重なり領域61における体積充填率が、表面シート2の体積充填率よりも高いことが好ましい(重なり領域61>表面シート2)。この場合、重なり領域61と表面シート2とが肌に触れたときに、表面シート2と比較されることで重なり領域61における冷感をより強く知覚し得る。
斯かる効果をより確実に奏させる観点から、重なり領域61と表面シート2との体積充填率の差は、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上であり、また好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下であり、また好ましくは1%以上20%以下、より好ましくは5%以上15%以下である。
【0051】
上記と同様の観点から、表面シート2の体積充填率は、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上であり、また好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下であり、また好ましくは2%以上5%以下、より好ましくは3%以上4%以下である。
【0052】
また周辺不織布は、重なり領域61が表面シート2よりも接触冷感qmaxが高いことが好ましい(重なり領域61>表面シート2)。この場合も、表面シート2と比較されることで重なり領域61における冷感をより強く知覚し得る。
斯かる効果をより確実に奏させる観点から、重なり領域61と表面シート2との接触冷感qmaxの差は、好ましくは0.05W/m2以上、より好ましくは0.08W/m2以上であり、また好ましくは0.2W/m2以下、より好ましくは0.15W/m2以下であり、また好ましくは0.05W/m2以上0.2W/m2以下、より好ましくは0.08W/m2以上0.15W/m2以下である。
【0053】
上記と同様の観点から、表面シート2の接触冷感qmaxは、好ましくは0.03W/m2以上、より好ましくは0.04W/m2以上であり、また好ましくは0.07W/m2以下、より好ましくは0.06W/m2以下であり、また好ましくは0.03W/m2以上0.07W/m2以下、より好ましく0.04W/m2以上0.06W/m2以下である。
【0054】
表面シート2との比較で、重なり領域61における冷感をより知覚させる観点から、表面シート2に含まれる樹脂の全質量に対するポリエチレン樹脂の含有量は、好ましくは30質量%以上70質量%以下、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0055】
本実施形態の表面シート2は、圧縮変形性を有することが好ましい。この場合、周辺不織布60が着用者の肌に触れたときに、重なり領域61において該周辺不織布60がこれと重なる表面シート2の変形に追従して容易に変形できる。この変形により、重なり領域61と着用者の肌との接触面積を高めて、冷感を着用者に効果的に知覚させることができる。
上記の効果をより確実に奏させる観点から、表面シート2は、0.5gf/cm2(4.9mN/cm2)荷重下での圧縮変形量が、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.2mm以上であり、また好ましくは0.15mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上1.0mm以下である。
【0056】
圧縮変形量は、例えば、カトーテック株式会社製のKES‐FB-3圧縮試験機を用いて測定することができる。測定対象の表面シート2から一定の大きさの切片をサンプルとして用いる。サンプルを圧縮試験機の試験台に取り付け、面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は0.02mm/sec、圧縮最大荷重は9.8mN/cm2(1gf/cm2)とする。無荷重時の厚みを厚みT0(mm)とし、4.9mN/cm2(5gf/cm2)荷重時の厚みを厚みTm(mm)としたときに、圧縮変形量(mm)は、厚みT0から厚みTmを差し引いた「T0-Tm」として算出することができる。斯かるサンプル厚みの測定には、例えばレーザー変位計を用いて行う。
【0057】
圧縮変形量が前記の範囲となる表面シート2としては、肌対向面側に凹凸形状を有するものが好適に用いられる。本実施形態の表面シート2は、斯かる凹凸形状を有するシートの一実施形態である。
本実施形態の表面シート2は、
図4(a)に示すように、第1面F1及びその反対側の面である第2面F2を有し、
図4(b)に示すように、第1面F1を形成する第1繊維層11と、第2面F2を形成する第2繊維層12とが積層した積層不織布である。この第1繊維層11に複数の凸部14が形成されている。この第1面F1が表面シート2の肌対向面となり、第2面F2が表面シート2の非肌対向面となる。本実施形態の表面シート2は、第1繊維層11及び第2繊維層12が一体化された複数のエンボス部13を有し〔
図4(b)参照〕、第1繊維層11及び第2繊維層12が複数のエンボス部13によって部分的に接合されている。エンボス部13は、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工をする方法、又は超音波エンボス加工をする方法等によって形成できる。斯かるエンボス加工でエンボス部13を形成した場合、エンボス部13は表面シート2の構成繊維が他の部位よりも高密度化した部分となる。エンボス部13は、エンボス加工に代えて、接着剤を用いた接着により形成してもよい。
【0058】
本実施形態の表面シート2は、
図4(a)に示すように、第1面F1側に、第1面F1側に突出する複数の凸部14と、これを囲む線状の凹部15とを有している。斯かる凹部15はエンボス部13によって形成されている〔
図4(b)参照〕。凹部15は、格子状に配置されており、該格子状の凹部15で区画される各領域に凸部14が形成されている。この表面シート2は、
図4(b)に示すように、凸部14の内部が第1繊維層11及び第2繊維層12の各構成繊維で満たされた中実構造となっており、主に第1繊維層11が第1面F1側に突出している。また、凹部15の底部は、第1繊維層11及び第2繊維層12の各構成繊維が圧密化され接合された接合部(エンボス部)13となっている。
本実施形態のエンボス部13は、線状エンボス部であるが、該エンボス部13の平面視形状は特に制限されず、円形、楕円形、三角形若しくは矩形又はこれらの組み合わせ等であってもよく、直線や曲線等の線状に形成してもよい。
【0059】
凹凸形状の成形性の観点から、本実施形態の表面シート2は、第1繊維層11が熱伸長性繊維を含み、第2繊維層12が非熱伸長性繊維を含むことが好ましい。
熱伸長性繊維は、加熱によってその長さが伸びる繊維であり、温度が90℃以上、好ましくは、110℃~140℃で伸長する繊維である。熱伸長性繊維は、熱処理により繊維が伸長する結果、非伸長性の繊維に比べて繊維空間が大きくなる。斯かる繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びる繊維、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。
非熱伸長性繊維は、加熱によってその長さが実質的に伸びない繊維である。
熱伸長性繊維及び非熱伸長性繊維としては、例えば、特開2005-350836号公報の段落[0013]、[0037]~[0040]に記載のもの、特開2011-127258号公報の段落[0012]、[0024]~[0046]に記載のもの等を用いることができる。
【0060】
第1繊維層11が熱伸長性繊維を含み、第2繊維層12が非熱伸長性繊維を含む場合、表面シート2は、例えば以下の方法により製造できる。非熱伸長性繊維を含むウエブと、熱伸長性繊維を含むウエブとを積層し、これにエンボス加工を施して両ウエブを部分的に接合する。これにより、2個のウエブが積層した積層体が得られる。積層体における非熱伸長性繊維を含むウエブは第2繊維層12となり、熱伸長性繊維を含むウエブは第1繊維層11となる。
次いで、前記積層体に対し、第1繊維層11に含まれる熱伸長性繊維の熱伸長開始温度以上の温度で熱処理を施す。熱処理には、恒温乾燥機やエアスルー熱処理機を用いることができる。斯かる熱処理により、第1繊維層11の構成繊維を伸長させ、接合部によって取り囲まれた領域に位置する第1繊維層11を第1面F1側に突出させて、凹凸(三次元的立体形状)を形成する。このようにして、第1面F1側に凹凸を有する、表面シート2が得られる。
【0061】
表面シート2は、第1繊維層11が非熱収縮性繊維を含み、第2繊維層12が熱収縮性繊維を含むことで、第1繊維層11に凹凸形状が形成されていてもよい。この場合、非熱収縮性繊維は、熱収縮性を示さない繊維、及び後述する第2繊維層12に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮開始温度では実質的に熱収縮しない繊維の双方を含む。
熱収縮性繊維は、熱の付与によって収縮する、熱収縮性を有する繊維である。斯かる熱収縮性繊維は、加熱処理によって熱収縮したものであるが、依然として熱収縮性を有する。熱収縮性繊維としては、前記の熱可塑性樹脂からなり且つ熱収縮性を有するものが好適に用いられる。
第1繊維層11に非熱収縮性繊維を含ませ、第2繊維層12に熱収縮性繊維を含ませることで、熱処理により、表面シート2の第1繊維層11に凹凸を容易に形成することができる。
【0062】
熱収縮性繊維として、螺旋状の捲縮繊維、より具体的には潜在捲縮性繊維が挙げられる。潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型又はサイドバイサイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9-296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。
【0063】
第1繊維層11が非熱収縮性繊維を含み、第2繊維層12が熱収縮性繊維を含む場合、表面シート2は、例えば以下の方法により製造できる。熱収縮性繊維からなるウエブと、非熱収縮性繊維を含むウエブとを積層し、これにエンボス加工を施して両ウエブを部分的に接合する。これにより、2個のウエブが積層した積層体が得られる。次いで、前記積層体に対し熱処理を施す。熱処理は、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上の温度に設定する。斯かる熱処理には、恒温乾燥機やエアスルー熱処理機を用いることができる。この熱処理により、第2繊維層12の構成繊維(熱収縮性繊維)を収縮させ、接合部13によって取り囲まれた領域に位置する第1繊維層11を第1面F1側に突出させて、凹凸(三次元的立体形状)を形成する。このようにして、第1面F1側に凹凸を有する、表面シート2が得られる。
【0064】
また、凹凸形状を有する表面シート2としては、特開2015-112343号公報に記載の、積層された第1繊維層11及び第2繊維層12が、複数の接合部13において互いに接合されており、且つ第1繊維層11が、接合部13以外の部位において第2繊維層12から離れる方向に突出して凸部14を形成しているものを用いてもよい。斯かる凸部14は、内部が中空構造になっている。
表面シート2の肌対向面に形成される凸部14は中空構造であっても中実構造であってもよいが、圧縮変形量を前記の範囲にし易くする観点から、該凸部14は中実構造になっていることが好ましい。
【0065】
熱伝導性の低い空気を含み難くするとともに、風合い及び着用感をより向上させる観点から、表面シート2の坪量は、好ましくは18g/m2以上、より好ましくは25g/m2以上、そして、好ましくは80g/m2以下、より好ましくは70g/m2以下である。
表面シート2との比較で、重なり領域61における冷感をより知覚させる観点から、重なり領域61の坪量は、表面シート2の坪量よりも大きいことが好ましい。
上記と同様の観点から、重なり領域61と表面シート2との坪量の差は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは30g/m2以上、また好ましくは60g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下である。
【0066】
本実施形態のナプキン1は、
図2に示すように、表面シート2と吸収体4との間に配されたセカンドシート7を備えている。セカンドシート7は、その幅(横方向Yの長さ)が、吸収体4の幅(横方向Yの長さ)よりも短いことが好ましく、縦方向Xの長さは、吸収体4の縦方向Xの長さよりも長く、ナプキンの縦方向Xの全長に連続して配されていることが好ましい。セカンドシート7は、表面シート2及び吸収体4とは別体の、当該技術分野においてサブレイヤーシートとも呼ばれるシートである。
セカンドシート7としては、表面シート2と同様に、不織布等の液透過性シートを用いることができる。
【0067】
冷涼性をより向上させる観点から、セカンドシート7が冷涼剤を含んでいることが好ましい。この場合、セカンドシート7において冷涼剤は、縦方向X又は横方向Yにおいてフラップ部6側に偏在していることが好ましい。これにより、周辺不織布60の重なり領域61における冷涼性をより向上できる。
前記の「偏在」の形態としては、セカンドシート7の中央部よりも周縁部(フラップ部6側)に冷涼剤が多く分布している形態の他、該中央部に冷涼剤が存在せず、該周縁部に冷涼剤が存在する形態も含まれる。後者の場合、セカンドシート7において、冷涼剤は、該セカンドシート7と重なる吸収体4の周縁から縦方向X内方又は横方向Y内方15mm以内の領域に存在していることが好ましい。
また、セカンドシート7において冷涼剤は、サイドフラップ部6S,6S側、前方フラップ部6A側、及び後方フラップ部6C側の少なくとも一方に偏在していてもよく、これらのうちの二以上に偏在していてもよい。
【0068】
前記の冷涼性をより向上させる観点から、冷涼剤は以下のように分布させることが好ましい。
セカンドシート7は、中央部よりも周縁部の方が、冷涼剤の含有量が1質量%以上多いことが好ましく、2質量%以上多いことがより好ましい。冷涼剤の含有量は、中央部及び周縁部それぞれの平均含有量である。周縁部は、セカンドシート7と重なる吸収体4の周縁から縦方向X内方又は横方向Y内方2mm以内の領域であり、中央部は該周縁部よりも縦方向X又は横方向Yの内側に位置する領域である。
【0069】
冷涼剤としては、着用者の肌に接触したときに着用者に冷たさを感じさせるものを用いることができる。例えば、i)皮膚の神経にある受容体活性化チャネル(TRPM8)に作用するものでもよく、ii)気化熱により周囲の温度を下げるものでもよい。
前記i)の冷感剤の具体例として、メントール(例えば、l-メントール)及びその誘導体(例えば、乳酸メンチル)、サリチル酸メチル、カンファー、キュウリエキス、植物(例えば、ミント、ユーカリ、ナツメグ)由来の精油を例示できる。
前記ii)の冷感剤の具体例として、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールを例示できる。
【0070】
本実施形態のナプキン1は、表面シート2、セカンドシート7、及び吸収体4が圧搾溝8によって部分的に接合されている。圧搾溝8は、表面シート2、セカンドシート7及び吸収体4が、裏面シート3側に一体的に凹陥してなる溝であり、該溝の底部が吸収体4まで至っている(
図2において図示せず)。すなわち圧搾溝8では、表面シート2とセカンドシート7とが一体的に圧密化されている。
本実施形態の圧搾溝8は、前方領域Aから排泄部対向領域Bを介して後方領域Cまで縦方向Xに延在する環状の線状溝となっている。圧搾溝8は、縦中心線CLに対して線対称の形状を有している。圧搾溝8では、表面シート2、セカンドシート7及び吸収体4に関して、構成部材である各々の繊維の密度が、該圧搾溝8の周囲部の密度よりも高くなっている。このような圧搾溝8は、吸収体4の平面方向への体液の拡散を抑制して、ナプキン1の周囲から液漏れを効果的に防止することができる。
【0071】
吸収体4は、
図1に示すように、ナプキン1(吸収性本体5)の縦方向Xに延在している。本実施形態の吸収体4は、前方領域Aから排泄部対向領域Bを介して後方領域Cに延在している。
本実施形態の吸収体4は、吸水性ポリマー41がシートに担持された吸収性シート40(以下、「高充填吸収体」ともいう)を含んで構成されている(
図2参照)。吸収性シート40は、シート状に成型されている吸収体のことであり、一般的に吸水性材料を堆積させた積繊体を含む吸収体とは区別される。吸収性シートの代表的なものとしては、特許2963647号記載のものや、特許2955223号記載のものなどが挙げられる。吸収性シートとしては、湿潤状態の高吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維どうしの間や高吸水性ポリマーと構成繊維との間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとしては、特開平8-246395号公報記載の方法にて製造されたパルプを含む吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び高吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、パルプを含む紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後に高吸水性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸水性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることができる。これらの吸収性シートは、一枚を所定形状に裁断してシート状吸収体として用いることができる。
【0072】
吸収性シート40を含む吸収体は、吸水性材料を堆積させてなる積繊体を含む吸収体に比して厚みを小さくすることができ、熱伝導性の低い空気を含み難い。これにより熱の移動性を高めることができ、ナプキン1に触れたときの冷感をより一層知覚させることが可能になる。
本実施形態の吸収性シート40は、第1吸収性シート40a及び第2吸収性シート40bの2枚の吸収性シート40を含み、これら吸収性シート40a,40bが複数層積層された積層構造を有している(
図2参照)。吸収体4は、中央吸収部4aと、該中央吸収部4aの肌対向面を被覆する表面吸収部4bと、該中央吸収部4aの非肌対向面を被覆する裏面吸収部4cとを有し、これら各吸収部4a,4b,4cは、第1吸収性シート40a及び第2吸収性シート40bが折り畳まれることによって形成されている。第1吸収性シート40aは、その縦方向Xに沿う両側部が、非肌対向面側に折り返した状態で折り畳まれることによって、二層構造を有する中央吸収部4aを形成している。また、第2吸収性シート40bは、その縦方向Xに沿う両側部が、非肌対向面側に折り返した状態で且つ中央吸収部4aの外面を被覆するように折り畳まれることによって、表面吸収部4b及び裏面吸収部4cそれぞれを形成している。第2吸収性シート40bにおいて、中央吸収部4aの肌対向面を被覆する部分(層)が表面吸収部4bを構成し、該中央吸収部4aの非肌対向面を被覆する部分(層)が裏面吸収部4cを構成している。
【0073】
吸収性シート40を含む吸収体の厚みt1(
図2参照)は、好ましくは1mm以上4mm以下、より好ましくは2mm以上3mm以下である。
本明細書において吸収体の厚みt1は、以下の方法により測定される。
先ず、測定対象の吸収体4を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように置き、5cN/cm
2の荷重下での厚みを測定する。厚みの測定は、例えば、厚み計(尾崎製作所社製、PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGE SR5-C)を用いる。測定の際、厚み計の先端部と測定対象物との間に、荷重が5cN/cm
2となるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、厚みを測定する。吸収体がコアラップシートを含んで構成されている場合は、該コアラップシートを含んで吸収体の厚みを測定する。
【0074】
ナプキン1の柔軟性とふっくらとした触感をより向上させる観点からは、吸収体4は、吸水性ポリマー及び吸水性繊維を含有する積繊体を含むことが好ましい。吸水性ポリマー及び吸水性繊維としては、例えばパルプを始めとするセルロース等の親水繊維の積繊体、該親水繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体、吸水性ポリマーの堆積体等が挙げられる。この場合、吸収体4は、積繊体からなる吸収性コアと、該吸収性コアの表面を被覆するコアラップシートとを具備することが好ましい。
前記の積繊体を含む吸収体の厚みは、好ましくは3.0mm以上13.0mm以下、より好ましくは4.0mm以上8.0mm以下である。
【0075】
図5及び
図6に、本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す。以下の
図5及び
図6に示す実施形態の説明は、上述した実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、上述した実施形態についての説明が適宜適用される。
【0076】
図5に示すナプキン1aは、後方フラップ部6Cの肌対向面を形成する周辺不織布60が、前記構成(1)を具備する重なり領域61aを有している。本実施形態のナプキン1aは、中央延在部62に前記構成(1)を具備する重なり領域を有しておらず、吸収体4の縦方向X端部よりも縦方向X外方に前記構成(1)を具備する重なり領域61aを有している。このように、ナプキンは、吸収体4の外縁よりも外方に、前記構成(1)を具備する重なり領域61を有していてもよい。
本実施形態のナプキン1aは、後方フラップ部6C側に前記構成(1)を具備する重なり領域61aを有するので、着用状態において広範囲に肌(例えば臀部)と接触して冷感をより効果的に知覚させることができる。また、着用状態において接触し易い部位のみに前記構成(1)を具備するシート部材を使用するので、該シート部材の使用量を低減できる。
【0077】
上述した実施形態の裏面シート3は、フラップ部6において周辺不織布60と接合によって直接一体化されていたが(
図2参照)、裏面シート3と周辺不織布60とは間接的に一体化されていてもよい。例えば
図6に示すナプキン1bのように、周辺不織布60と裏面シート3との間に表面シート2が介在してもよい。斯かる形態では、表面シート2が吸収体4の外縁よりも外方に延出し、一対のウイング部6W,6Wを含んだ領域まで延在している。すなわち、重なり領域61が吸収体4の外縁の内外を跨いで位置し、ウイング部6Wの横方向Y外方端まで延在している。この場合、前記構成(1)を具備する重なり領域61は、吸収体4外縁の内外に跨ぐように配置されていてもよく、サイドフラップ部6Sの横方向Y側縁まで延在していてもよく、さらにウイング部6W,6Wを含んだ領域まで延在していてもよい。
【0078】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜、変更可能である。
例えば、上述の実施形態は、周辺不織布60が、中央延在部62を有し、中央延在部62が重なり領域61を形成していたが、該中央延在部62を有していなくてもよい。この場合、肌と吸収性本体5(表面シート)とが周辺不織布60を介さず直接接触し得る面積を、広く確保することができるため、体液等の吸収効率を高く維持することが可能になる。周辺不織布60が中央延在部62を有しない場合、前記構成(1)を具備する重なり領域61は、吸収体4の外縁よりも外方に形成されていることが好ましい。
【0079】
また本発明の吸収性物品には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、前述したナプキンの他に、例えば、生理用ショーツ、失禁パッド、使い捨ておむつ等が包含される。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に限定されない。
【0081】
〔実施例1〕
実施例1では、
図1に示すような、吸収性本体5とサイドフラップ部6S,6Sとを有するナプキン1を作製した。表面シート2は、芯がPETであり且つ鞘がPEであるPET/PE芯鞘繊維(繊維径2.4dtex、繊維長51mm)から構成されたものを用いた。この表面シート2は、坪量が28g/m
2であり、体積充填率が3%であった。裏面シート3は、ナプキン(花王株式会社製、商品名 ロリエ スリムガード)の裏面シートを、コールドスプレーを噴霧した後、破れないように慎重に剥がして用いた。吸収体4には、
図2に示すような、2枚の吸収性シートを複数層積層して作製した(
図2参照)。斯かる吸収体4の厚みt1は、4mm以下であった。表面シート2は、吸収体4と幅が略等しく、吸収体4よりも縦方向Xの長さが長く、吸収体4の肌対向面全域を被覆するものであった。
サイドフラップ部6Sは、吸収性本体5の肌対向面側の両側部に周辺不織布60を配して、これを接着剤によって裏面シート3と一体化することで形成した。斯かる周辺不織布60は、吸収体4の両側縁の内外を跨ぐように、すなわち中央延在部62を有し、重なり領域を形成するように配した。この重なり領域の幅は11mmであった。周辺不織布60は、芯がナイロンであり且つ鞘がPEであるナイロン/PE芯鞘繊維(繊維径2.4dtex、繊維長51mm)から構成されたものを用いた。周辺不織布60は、坪量が38g/m
2であり、体積充填率が11%であった。すなわち、この周辺不織布60は前記構成(1)を具備するものであった。
【0082】
〔実施例2及び3〕
実施例2では、坪量及び体積充填率が異なる周辺不織布60を用いた点以外は、実施例1と同様の方法によりナプキンを作製した。
実施例3では、坪量が異なる周辺不織布60を用いた点、及び吸収性シートに代えて吸水性ポリマー及び吸水性繊維を含有する積繊体を用いた点以外は、実施例1と同様の方法によりナプキンを作製した。積繊体における吸水性ポリマーの坪量は50g/m2であり、吸水性繊維の坪量は300g/m2であり、該積繊体の厚みは4.5mmであった。
【0083】
〔実施例4〕
実施例4では、吸収体4の外縁から外方に延出した表面シート2と裏面シート3とを接合し、吸収性本体5の両側部であって表面シート2上に周辺不織布60を配して、該表面シート2と周辺不織布60とを接着剤により一体化することで、
図6に示すようなナプキン1bを作製した。すなわち、周辺不織布60と裏面シート3とは直接一体化されていない。斯かる点以外は、実施例1と同様の方法により、ナプキンを作製した。
【0084】
〔比較例1〕
比較例1では、表面シート2と周辺不織布60とが重ならないように、吸収性本体5の両側部に周辺不織布60を配し、該周辺不織布60と裏面シート3とを接着剤によって一体化した。具体的には、周辺不織布60を吸収体4とも表面シート2とも重ならないように、該吸収体4の両側縁よりも横方向Y外方に配した。斯かる点以外は、実施例1と同様の方法によりナプキンを作製した。
【0085】
各実施例のナプキンでは、サイドフラップ部6Sの肌対向面を形成する周辺不織布60の重なり領域61の幅が4mm以上であった。
また、周辺不織布60における重なり領域61及び表面シート2それぞれの接触冷感qmax、表面シート2の圧縮変形量(mm)を上述した方法により測定した。これらの測定結果を下記表1に示す。
下記表1における比較例1の「重なり領域と表面シートとの体積充填率の差」及び「重なり領域と表面シートとの接触冷感qmaxの差」の値は、「周辺不織布と表面シートとの体積充填率の差」及び「周辺不織布と表面シートとの接触冷感qmaxの差」の値である。
【0086】
〔冷感の官能評価〕
10名の専門パネラーに、各実施例及び比較例のナプキンの肌対向面に触れてもらい、以下の基準で冷感の評価をしてもらった。本評価に用いたナプキンはそれぞれ、23℃環境下に放置して環境温度と等しくなった状態のものを使用した。評価点の算術平均値が高いほど、ナプキンの冷感を効果的に知覚させやすいことを意味する。結果を以下の表1に示す。
【0087】
10~9点:冷感が強く感じられ、冷感に非常に優れる。
8~7点:冷感を良好に知覚できる。
6~5点:冷感を知覚できる。
4~3点:冷感があまり感じられない。
2~1点:冷感が全く感じられない。
【0088】
【0089】
表1に示すように、各実施例のナプキンはいずれも冷感の評価が7点以上であり、重なり領域を有しない比較例1のナプキンに比して、接触したときの冷感を強く知覚できるものであった。斯かる結果から、前記構成(1)を具備する周辺不織布60が、表面シート2と重なる重なり領域61を有することで、接触したときの冷感をより知覚させられることが示された。表1の結果から、実施例2と他の実施例との比較から、重なり領域と表面シートとの間の体積充填率の差を大きくすることが、冷感の知覚に有効であることが示された。さらに実施例1と実施例3との比較から、吸収体に吸収性シートを用いることが、また実施例1と実施例4との比較から、周辺不織布60と裏面シート3とを直接一体化することが、冷感の知覚に有効であることが示された。