(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145935
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】成形体、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20241004BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241004BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20241004BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20241004BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241004BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20241004BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20241004BHJP
B29C 48/32 20190101ALI20241004BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/36 ZAB
B32B27/18 D
B32B1/08 B
B05D7/02
B05D7/24 303E
B05D3/02 Z
B05D7/24 301E
B05D5/12 C
B29C48/32
B29C48/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058551
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】村島 健介
(72)【発明者】
【氏名】福留 明日香
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4D075BB24Y
4D075BB24Z
4D075BB93Y
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4F207KW50
(57)【要約】
【課題】ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂)成分を含む基材層の表面に帯電防止層が積層された成形体であって、成形直後であっても優れた帯電防止性を有する成形体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む基材層と、その表面にモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される帯電防止剤成分(B)を含む帯電防止層とを積層させた、成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む基材層と、
その表面に帯電防止剤成分(B)を含む帯電防止層が積層された成形体であって、
前記帯電防止剤成分(B)は、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される脂肪酸エステルであって、炭素数が6、8、10、12の飽和脂肪酸残基を有する脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含み、
前記帯電防止剤成分(B)は、前記基材層表面における単位面積あたりの重量が5.0μg/cm2以上100μg/cm2未満となるように前記帯電防止層に含まれている、成形体。
【請求項2】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)が、3―ヒドロキシブチレート単位と、その他のヒドロキシアルカノエート単位を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系共重合体を含む、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系共重合体が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
樹脂チューブである、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項5】
前記帯電防止層は、前記基材層の内側または外側の一方の表面に積層されている、請求項4に記載の樹脂チューブ。
【請求項6】
前記帯電防止剤層は、前記基材層の内側および外側の両方の表面に積層されている、請求項4に記載の樹脂チューブ。
【請求項7】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む混合物を、先端にダイスを装着した押出機に投入し、前記ダイス出口における前記混合物の温度が150℃以上175℃未満となるように前記混合物を溶融押出する第1工程と、
前記ダイス出口から吐出した前記混合物を、30℃以上90℃未満の水と接触させて基材層を形成する第2工程と、
前記帯電防止剤成分(B)を含む水系分散液(C)を前記基材層表面に塗布して帯電防止剤層を形成する第3工程と、
40℃以上100℃未満の雰囲気下で帯電防止層を乾燥させる第4工程とを、順次含む、請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
前記水系分散液(C)中において、前記帯電防止剤成分(B)の固形分濃度が0.1wt%以上10wt%未満である、請求項7に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
前記水系分散液は、水とエタノールを含み、水とエタノールの体積比率(水の体積/エタノール体積)が100/0~50/50である、請求項7に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂)成分を含む基材層の表面に帯電防止剤層が積層された、成形体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄プラスチックによる環境問題がクローズアップされている。中でも、廃棄プラスチックによる海洋汚染は深刻であり、自然環境下で分解する生分解性樹脂の普及が期待されている。
【0003】
そのような生分解性樹脂としては種々のものが知られているが、中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂、特に3-ヒドロキシブチレート(以下、「3HB」と称することがある。)と3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、「3HH」と称することがある。)との共重合体(以下、「PHBH」と称することがある。)は、多くの微生物種の細胞内にエネルギー貯蔵物質として生産、蓄積される熱可塑性ポリエステルであり、土中だけでなく、海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記の問題を解決する素材として注目されている。
【0004】
PHBHは3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合比率や重量平均分子量を比較的容易に制御できる材料であるため、引張特性や曲げ特性などを、目的とする用途、形態に合わせて容易に調節可能である。近年ではこの特長を生かしてフィルムやストローなど、多くの食品接触用途に展開されている。
【0005】
他方、PHBHは静電気を帯びやすく、成形体の搬送工程や成形体の二次加工工程での帯電がしばしば問題になる。過度な帯電は工程中の塵や埃、金属のカスなどを引き寄せる原因となり、フィルムやストローなどに異物が混入するリスクを高めることになる。特許文献1には、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂またはポリブチレンサクシネート系樹脂に対し、特定の脂肪族ポリエステル系樹脂の帯電防止剤を混練し、表面抵抗率を低下させた帯電しにくい樹脂組成物およびその利用技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の樹脂組成物を含む成形体は、帯電防止剤の成形体表面へのブリードアウト等により帯電防止性を発現すると考えられ、成形直後から数日間は帯電防止性が十分に発現しないことがあり、改善の余地があった。ストローやカトラリー等の食品接触用品の製造から製品パッケージ工程において成形体への異物付着を抑制する観点で、成形直後から速やかに、十分な帯電防止性を有していることが求められていた。また、混練される帯電防止剤は成形体を構成する樹脂に対する可塑化効果があるため、予期せず成形体を軟化させてしまったり、経時に伴うブリードアウトによって機械特性が変化したりすることがしばしば問題となっていた。
【0008】
本発明は上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂)成分を含む基材層の表面に帯電防止層が積層された成形体であって、成形直後であっても優れた帯電防止性を有する成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)に対し、特定の飽和脂肪酸残基を持つグリセリン系脂肪酸エステルからなる帯電防止剤成分を特定量含む帯電防止層を積層させた成形体において、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む基材層と、その表面に帯電防止剤成分(B)を含む帯電防止層が積層された成形体であって、
前記帯電防止剤成分(B)は、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される脂肪酸エステルであって、炭素数が6、8、10、12の飽和脂肪酸残基を有する脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含み、前記帯電防止剤成分(B)は、前記基材層表面における単位面積あたりの重量が5.0μg/cm2以上100μg/cm2未満となるように前記帯電防止層に含まれている、成形体に関する。
【0011】
また、本発明は、樹脂チューブである、成形体にも関する。
【0012】
また、本発明は、 ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む混合物を、先端にダイスを装着した押出機に投入し、前記ダイス出口における前記混合物の温度が150℃以上175℃未満となるように前記混合物を溶融押出する第1工程と、
前記ダイス出口から吐出した前記混合物を、30℃以上90℃未満の水と接触させて基材層を形成する第2工程と、
前記帯電防止剤成分(B)を含む水系分散液(C)を前記基材層表面に塗布して帯電防止剤層を形成する第3工程と、
40℃以上100℃未満の雰囲気下で帯電防止層を乾燥させる第4工程とを、順次含む上記記載の成形体の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分を含む基材層と、基材層の表面に帯電防止層とを含む、成形直後であっても優れた帯電防止性を有する成形体およびその製造方法を提供することができる。本発明の積層体により、成形体の生産効率や品質を改善することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
[ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分]
本実施形態に係る成形体における基材層は、以下に説明するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含むが、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他添加剤を含むことができる。
【0016】
[ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)]
本実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂(以下、P3HBと称することがある。)は、3-ヒドロキシブチレート単位を有する重合体である。
【0017】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、特に微生物から産生されるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が好ましい。微生物から産生されるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂においては、3-ヒドロキシブチレート単位が、全て(R)-3-ヒドロキシブチレート単位として含有される。
【0018】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレート単位(特に、一般式(1)で表される単位)を、全構成単位の50モル%以上含むことが好ましく、60モル%以上含むことがより好ましく、70モル%以上含むことが更に好ましい。ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、重合体の構成単位として、3-ヒドロキシブチレート単位のみを含むものであってもよいし、3-ヒドロキシブチレート単位と1種又は2種以上の3-ヒドロキシブチレート単位以外の3-ヒドロキシアルカノエート単位や、その他の単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位等)を含むものであってもよい。
【0019】
本実施の形態に係るポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)において、3-ヒドロキシブチレート単位は、全て(R)-3-ヒドロキシブチレート単位であることが好ましい。
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体であることが好ましい。
【0020】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(略称:P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(略称:P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(略称:P3HB4HB)等が挙げられる。特に、成形体への加工性と、得られる成形体の物性を両立させる観点から、ポリ3-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(PHB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHB3HV3HH)ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(PHB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)(PHB3HO)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)(PHB3HOD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)(PHB3HD)、を好ましく用いることができ、特に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)が好ましく、工業的に生産が容易であることからPHB3HHであることが最も好ましい。
【0021】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲であればポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート等の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等、P3HB以外の生分解性樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0022】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、樹脂材料に通常添加される他の添加剤、例えば、無機充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤、その他の副次的添加剤を1種または2種以上添加してもよい。ただしこれらは任意の成分であり、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)はもちろん、これらの成分を含有しないものであってもよい。任意成分としては、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)の成形安定性をさらに改善することができるという観点から、滑剤、無機充填剤の使用が好ましい。
【0023】
前記滑剤としては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の飽和または不飽和の脂肪酸アミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のアルキレン脂肪酸アミド等の脂肪族アミド化合物やペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0024】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)における滑剤の配合量は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)100重量部に対して0.1~2重量部であることが好ましく、0.2~1重量部がさらに好ましい。配合量を0.1重量部以上とすることにより、滑剤配合による剥離性改善効果を得ることができる。逆に配合量が2重量部を超えると、圧着時に滑剤がブリードして冷却ロール等の圧着面に付着し、長時間の連続加工が困難になる問題がある。
【0025】
前記無機充填材としては、例えば、平均粒子径が0.5μm以上の、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、クレイ、カオリン、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0026】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)における無機充填剤の配合量は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)100重量部に対して0.5~5重量部であることが好ましく、1~3重量部がさらに好ましい。配合量を0.5重量部以上とすることにより、無機充填剤配合による剥離性改善効果を得ることができる。逆に配合量が5重量部を超えると、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)層に割れが生じ易くなる場合がある。
【0027】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の中で、特にPHBHは繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、結果として、ヤング率、耐熱性等の物性を容易に調整することができ、かつ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であることから、工業的に特に有用なプラスチックである。
【0028】
PHBHの具体的な製造方法は、例えば、国際公開第2010/013483号に記載されている。また、PHBHの市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet」(登録商標)などが挙げられる。
【0029】
前記PHBH中の3-ヒドロキシヘキサノエート(3HH)の割合は、特に限定されないが、3HHの割合が2mol%以上25mol%未満であることが好ましく、3mol%以上15mol%以下であることがより好ましい。ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)に含まれるPHBH中の3HHの割合が2mol%以上であると融点が高くなりすぎず分解温度と加工温度との差を大きく設けることができるため安定した押出加工が可能となる。また、3HHの割合が25mol%未満%であるPHBHは、結晶化速度が遅くなりすぎず、PHBHを含むペレット状のコンパウンドの製造が比較的容易である。3HHの割合は、PHBHを構成する全モノマーに対する3HHのモノマー比率であり、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法やNMR測定することにより求めることができる。尚、PHBHが複数含まれる場合は、PHBHの全成分に含まれる構成モノマー全量に対する割合である。
【0030】
本実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)全体の重量平均分子量(以下、Mwと称することがある)は、適切な結晶化速度と機械強度を両立する観点から10万以上75万未満であれば好ましく、20万以上65万未満がより好ましく、25万以上55万未満がさらに好ましい。なお、重量平均分子量が10万未満では、加温時の溶出物が多くなる可能性があり、食品容器としては使用できない場合があるだけでなく、押出加工時にも分解物の寄与が大きくなり、押出加工性が不安定化する可能性がある。また75万を超えると、溶融粘度が高くなるために、押し出された成形体の表面に荒れが生じるなど、外観上にも問題が生じる可能性がある。なお、本願において、PHBHの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)によって、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。
【0031】
本実施形態において、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)には重量平均分子量の異なる複数種のPHBHを混合して用いることが出来る。
【0032】
尚、複数種のPHBHを混合して用いる場合、あるいは、他の樹脂成分を混合する場合における、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)の樹脂成分の重量平均分子量とは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)全体の重量平均分子量を指す。
【0033】
[帯電防止層]
本実施形態に係る成形体における帯電防止層は、以下に説明する帯電防止剤成分(B)を含むが、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他添加剤を含むことができる。
【0034】
[帯電防止剤成分(B)]
本実施形態に係る帯電防止剤成分(B)は水または水/エタノールからなる水系溶媒への溶解性あるいは分散性に優れており、かつPHBHとの濡れ性が良好なものが少なくとも1種類以上含まれていることが望ましく、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる脂肪酸エステルの群から選ばれる、炭素数が6,8、10、12の飽和脂肪酸残基を有する脂肪酸エステルの少なくも1種を含んでいる。これにより、得られる成形体はPHBH表面に対してむらなく塗膜を形成し、高い帯電防止性を発現できる傾向がある。前記グリセリン系脂肪酸エステルのこれらは1種類で用いることもできるし、必要に応じて2種類以上の樹脂を任意の割合で混合して用いることもできる。
【0035】
本実施形態にかかる成形体において、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分としてなる基材層の表面に対する帯電防止剤成分(B)の単位面積あたりの重量は5.0μg/cm2以上100μg/cm2未満である。5.0μg/cm2未満であると帯電防止効果が十分に発揮されなくなり、100μg/cm2以上であると、水系分散液を塗布した後に乾燥するのが困難になり成形体同士が貼り付いてしまう場合があったり、過剰に積層された帯電防止剤成分が搬送工程を汚染し、流れてきた成形体が搬送工程で装置に貼り付いてしまったりするといった可能性がある。尚、基材層の表面に対する帯電防止剤成分(B)の単位面積あたりの重量の下限は、10.0μg/cm2以上が好ましく、15.0μg/cm2以上好ましく、その上限は、80μg/cm2以下が好ましく、60μg/cm2以下がより好ましい。
【0036】
〔帯電防止剤成分(B)の水系分散液〕
本発明に係る帯電防止剤成分を水系分散液として用いる場合、水系分散液中に含まれる帯電防止剤成分の固形分濃度は0.1wt%以上10wt%未満であることが好ましい。0.1wt%未満であるとポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする成形体表面への濡れ性に優れないために十分な量の帯電防止剤成分を積層することができず、目的とする効果が十分に得られにくい場合がある。10wt%以上であると分散性にすぐれず凝集体を形成してしまうために、例えばスプレーノズルによる噴霧法を用いた際にはノズルを詰まらせてしまう可能性があるだけでなく、過剰に塗布された帯電防止剤成分が工程との接触により、工程を汚染してしまうおそれがある。
【0037】
また水系分散液を構成する液体としては水のみから構成されても良い。ここでいう水とは、イオン交換されていない通常の市水であっても構わないし、帯電防止剤成分の分散性への影響が軽微である場合にはイオン交換された純水であっても構わない。また、帯電防止剤成分の分散性やポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする成形体との濡れ性を改善するといった目的から、アルコールを混合しても良い。この際、得られる成形体が食品接触用途である場合や、その後に乾燥工程を必要とする場合には、アルコールはエタノールであることが望ましい。ここで、アルコール成分としてエタノールを用いる場合は、水との体積比率(水の体積/エタノール体積)は100/0~50/50の範囲であることが好ましい。エタノールの体積が50%を超えると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする成形体との濡れ性が良くなりすぎるために、その後の乾燥特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0038】
尚、水/エタノールを混合液の体積比率は、95/5~55/45がより好ましく、90/10~60/40の範囲であることが特に好ましい。
〔成形体の製造方法〕
本実施形態に係る成形体の製造法は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む混合物を溶融押出する工程(第1工程)、溶融した混合物を冷却することにより基材層を形成する工程(第2工程)および、基材層の表面に帯電防止剤成分(B)を含む水系分散液をコーティングして帯電防止層を形成する工程(第3工程)および、帯電防止層を乾燥させる工程(第4工程)を含む製造方法により製造することができる。
(第1工程および第2工程)
本実施形態に係る成形体の製造方法において、基材層は一般的な方法により、各成分を溶融混錬することで製造でき、例えば、先端にダイスを装着した押出機に各成分を投入し、各成分を含む樹脂の混合物を溶融混錬することにより製造することができる。
溶融混錬後にペレット化し、該ペレットを再度溶融し成形することもできる。以下、具体的に説明する。
【0039】
まず、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)および必要に応じて任意の添加剤を添加し、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融混練して各成分の混合物を作製し、溶融状態の該混合物を冷却固化することにより基材層を形成することができる。
【0040】
該混合物をストランド状に押し出してからカットして、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの粒子形状のペレットを得てもよい。作製されたペレットは、40~80℃で十分に乾燥させて水分を除去した後、次の成形に付することが望ましい。
【0041】
前記溶融混練を実施する際の温度は、使用する樹脂の融点、溶融粘度等によるため一概には規定できないが、溶融混練物のダイス出口での樹脂の混合物の温度が150℃以上175℃未満であることが好ましく、155℃以上170℃以下であることがより好ましく、158℃以上167℃以下であることがさらに好ましく、160℃以上165℃以下であることが特に好ましい。溶融混練物の樹脂温度が150℃未満であると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)が未溶融となる場合があり、175℃を超えると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)が熱分解する場合がある。
【0042】
また、ダイス出口から吐出した溶融状態の混合物は、固化を促進する点で、30℃以上90℃未満の水槽中で5秒以上20秒未満冷却することが好ましい。
【0043】
即ち、実施形態に係る成形体の製造方法において、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む混合物を、先端にダイスを装着した押出機に投入し、前記ダイス出口における前記混合物の温度が150℃以上175℃未満となるように前記混合物を溶融押出する工程(第1工程)と、
前記ダイス出口から吐出した前記混合物を、30℃以上90℃未満の水と接触させて基材層を形成する工程(第2工程)とを、順次含むことが好ましい。
【0044】
(第3工程および第4工程)
本実施形態に係る成形体の製造方法において、帯電防止層を基材層に積層する方法としては特に限定されないが、均一でむらなく積層することで十分な帯電防止効果を得る観点から、水系分散液の塗布によって行うことが好ましい。水系分散液を塗布する方法としては、得られた成形体全面に亘ってコーティングされる方法であればよく、例えば水系分散液を溜めた水槽のなかをくぐらせる方法や、送液ポンプを用いて液滴をかける方法などが挙げられるが、塗布する量の調整が容易であり、かつ生産ラインへの組み込みがしやすいといった観点からはスプレーノズルを用いた噴霧法を好ましく用いることができる。
また塗布された帯電防止剤成分の水系分散液は、塗布された成形体同士または成形体と搬送工程との間での貼りつきなどの問題が生じない限りは特に後処理を必要としないが、必要に応じて、乾燥オーブンを通過させるなどの方法を用いることができる。このとき乾燥オーブンの温度は40℃以上100℃未満であれば良好な乾燥状態を得ることができる。
【0045】
即ち、実施形態に係る成形体の製造方法において、前記第1工程及び前記第2工程に続けて、前記帯電防止剤成分(B)を含む水系分散液(C)を前記基材層表面に塗布して帯電防止剤層を形成する工程(第3工程)と、40℃以上100℃未満の雰囲気下で帯電防止層を乾燥させる工程(第4工程)とを、順次含むことが好ましい。
【0046】
尚、帯電防止層の塗布量は特に限定されないが、基材層表面に存在する帯電防止剤成分の量を適切な範囲に調整しつつ、かつ効率よく生産を行えるといった観点からは、基材層の表面における単位面積あたりの重量が例えば、10μg/cm2以上200μg/cm2未満となるように形成されることが好ましい。
【0047】
〔樹脂チューブ〕
本実施形態に係る樹脂チューブの肉厚は、例えばストローとして飲料を飲む際の吸引で潰れることなく、適度な柔軟性を有していることから割れにくく、指先などを突いたりした際に怪我をしにくく、かつ海水中でも速やかに生分解することから、0.01mm以上0.6mm以下が好ましく、0.05mm以上0.5mm以下がより好ましく、0.1mm以上0.4mm以下がさらに好ましい。また、該樹脂チューブの外径は、特に限定されないが、ストローとして飲料を飲む際の使用のしやすさから、2~10mmが好ましく、4~8mmがより好ましく、5~7mmがさらに好ましい。生分解性樹脂チューブの断面形状は、略円形であるが、ストローやパイプとしての利用性の観点から、真円に近いほど好ましい。よって、該樹脂チューブの断面形状の偏平度[100×(外径最大値-外径最小値)/外径最大値]は、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることがよりさらに好ましい。なお、偏平度が0%であるとは、断面形状が真円であることを意味する。
樹脂チューブの長さは、特に限定されないが、該樹脂チューブをストローとして使用する場合、該樹脂チューブの長さは、ストローとして飲料を飲む際の使用のしやすさから、50~350mmが好ましく、70~300mmがより好ましく、90~270mmがさらに好ましい。該樹脂チューブがストローとして使用される場合、二次加工されていないチューブであってもよいし、ストッパー部の形成や蛇腹部の形成などの二次加工が施されたチューブであってもよい。
【0048】
本実施形態に係る樹脂チューブは、公知の方法によって製造することができ、例えば、本実施の形態にかかる樹脂組成物と任意の添加剤のブレンド物を押出機中で溶融した後、押出機出口に接続されている環状ダイから押出して水中に投入して固化させることでチューブ状に成形することによって製造することができる。
【0049】
本実施形態に係る樹脂チューブは、基材層上の帯電防止層がチューブの内側または外側のいずれかの表面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよいが、より高い防塵効果を発揮することで異物の混入率を下げられる観点からは、両面に形成されていることが好ましい。このとき、外面と内面に形成される帯電防止層の厚みは同じであっても良いし、必要に応じて異なっていても良い。
【0050】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む基材層と、
その表面に帯電防止剤成分(B)を含む帯電防止層が積層された成形体であって、
前記帯電防止剤成分(B)は、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される脂肪酸エステルであって、炭素数が6、8、10、12の飽和脂肪酸残基を有する脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を含み、
前記帯電防止剤成分(B)は、前記基材層表面における単位面積あたりの重量が5.0μg/cm2以上100μg/cm2未満となるように前記帯電防止層に含まれている、成形体。
[項目2]
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)が、3―ヒドロキシブチレート単位と、その他のヒドロキシアルカノエート単位を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系共重合体を含む、項目1に記載の成形体。
[項目3]
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系共重合体が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される少なくとも1種である、項目1~3のいずれか1項目に記載の成形体。
[項目4]
樹脂チューブである、項目1~4のいずれか1項目に記載の成形体。
[項目5]
前記帯電防止層は、前記基材層の内側または外側の一方の表面に積層されている、項目4に記載の樹脂チューブ。
[項目6]
前記帯電防止剤層は、前記基材層の内側および外側の両方の表面に積層されている、項目4に記載の樹脂チューブ。
[項目7]
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)を含む混合物を、先端にダイスを装着した押出機に投入し、前記ダイス出口における前記混合物の温度が150℃以上175℃未満となるように前記混合物を溶融押出する工程(第1工程)と、
前記ダイス出口から吐出した前記混合物を、30℃以上90℃未満の水と接触させて基材層を形成する工程(第2工程)と、
前記帯電防止剤成分(B)を含む水系分散液(C)を前記基材層表面に塗布して帯電防止剤層を形成する工程(第3工程)と、
40℃以上100℃未満の雰囲気下で帯電防止層を乾燥させる工程(第4工程)とを、順次含む、項目1~4のいずれか1項目に記載の成形体の製造方法。
[項目8]
前記水系分散液(C)中において、前記帯電防止剤成分(B)の固形分濃度が0.1wt%以上10wt%未満である、項目7に記載の成形体の製造方法。
[項目9]
前記水系分散液は、水とエタノールを含み、水とエタノールの体積比率(水の体積/エタノール体積)が100/0~50/50である、項目7又は8に記載の成形体の製造方法。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0052】
〔使用原料〕
各実施例及び比較例では以下の原料を使用した。
(ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A))
実施例および比較例で使用したポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)に用いたPHBH粉体は国際公開公報WO2019-142845に記載の方法に準拠して製造した。具体的な処方を以下に示す。
【0053】
PHBHパウダー:重量平均分子量50万、PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が9モル%であるPHBHパウダー
(帯電防止剤)
ポエムDL-100(ジグリセリンモノラウレート):理研ビタミン株式会社製;脂肪酸残基中に炭素数12の飽和脂肪酸残基を主成分として含む
ポエムM-100(グリセリンモノカプリレート):理研ビタミン株式会社製;脂肪酸残基中に炭素数8の飽和脂肪酸残基を主成分として含む
ポエムM-300(グリセリンモノラウレート):理研ビタミン株式会社製;脂肪酸残基中に炭素数12の飽和脂肪酸残基を主成分として含む
リケマールS-100(グリセリンモノステアレート):理研ビタミン株式会社製;脂肪酸残基中に炭素数18の飽和脂肪酸残基を主成分として含む
リケマールL-250A(ソルビタンラウレート):理研ビタミン株式会社製;脂肪酸残基中に炭素数12の飽和脂肪酸残基を主成分として含む
(実施例1)
[帯電防止成分(B)の水系分散液の作製]
帯電防止剤成分(B)として、ポエムDL-100を用い、ポエムDL-100の固形分濃度が1.0%になるようにイオン交換水を添加し、卓上型超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、品番:VS100III)で30分間撹拌することで水系分散液を得た。
【0054】
[樹脂組成物のストランドの作製]
PHBHパウダー(100重量部)に対し、結晶核剤および滑剤としてベヘン酸アミド(0.5重量部)をドライブレンドし、2軸押出機を用いて、押出機を出た直後のダイス出口樹脂温度が168℃、となるように溶融混練してストランド状に押出し、40℃(固化温度1)の水に通して固化させてカットすることでペレットを得た。なおこのとき、温水中を通過する時間は15秒となるように調整した。
【0055】
[樹脂チューブの作製]
環状ダイ(外径15mm、内径13.5mm)を接続したφ50mmの単軸押出機のシリンダー温度およびダイ温度をそれぞれ160℃に設定し、上記方法により得られた樹脂組成物のペレットを投入してチューブ状に押出した。押出したチューブを、環状ダイから100mm離した位置にある50℃(固化温度2)の水に通し、引取機にて60m/minの速度で引き取った。引き続き、搬送中の樹脂チューブから10cm離れた位置にスプレーノズルを設置し、上記方法により作製した水系分散液を噴霧して塗布し、60℃(乾燥温度)に加熱した小型の箱型乾燥オーブンを通過させた後、チューブカッターによって切り出すことで外径6mm、肉厚0.2mm、長さ200mmの樹脂チューブを得ることができた。
上記方法により作製した樹脂チューブについて、下記の評価方法での基材層表面における帯電防止剤成分(B)の単位面積あたりの重量、成形直後のチューブ同士貼りつき性及び帯電防止性を評価し、その結果を表1に示した。
【0056】
(基材層表面における帯電防止剤成分(B)の単位面積あたりの重量)
基材層表面における帯電防止剤成分の単位面積あたりの重量(塗布重量)は、ガスクロマトグラフィーによって測定した。具体的には、得られた樹脂チューブを2cmの長さに切り出し、10mlのエタノールに浸漬することで、表面に塗布された帯電防止剤成分を溶解させて抽出液を作製し、抽出液の0.1μlを用い、Agilent Technology株式会社製のガスカラムクロマトグラフィー装置:Agilent7890B-GCシステムを用いて分離し、得られたスペクトル強度から帯電防止剤成分の単位面積あたりの重量を算出した。
(樹脂チューブ同士貼りつき性)
成形直後の樹脂チューブを任意に10本取り出し、互いに貼りついた状態にある樹脂チューブがあるかどうかを目視で観察した。この作業を10回繰り返し、貼りつきがあった回数によって、以下の基準に従って樹脂チューブ同士貼りつき性評価した。
【0057】
<評価基準>
◎:10回中、1回も貼りついたチューブが見つからなかった
〇:10回中、貼りついたチューブが見つかった回数が1回であった
△:10回中、貼りついたチューブが見つかった回数が2回であった
×:10回中、貼りついたチューブが見つかった回数が3回以上であった
上記評価結果が◎または○または△であれば、チューブ同士の貼りつきが大きな問題にならないと判断できる。
(帯電防止性)
樹脂チューブを作製後、1時間、23℃、湿度50%の恒温恒湿環境で養生した。
養生後直ちに、
長さが200mmにカットし、、長さ300mm、幅200mmのSUS304製の容器に隙間なく敷き詰めた。さらにその上に、上記容器と同じ材質の一回り小さな容器を重ね合わせ、樹脂チューブを長手方向に沿って30秒間こすり合わせることで表面に静電気を発生させ、樹脂チューブを帯電させた。該樹脂チューブの表面について、サンハヤト株式会社製のデジタル静電気探知機(型番:EG-1)を用いて帯電量を測定した。
【0058】
<評価基準>
◎:0.1kV未満
〇:0.1kV以上0.5kV未満
△:0.6kV以上2.0kV未満
×:2.0kV以上
上記評価結果が◎または○または△であれば、速やかかつ十分な帯電防止性を有している。
【0059】
【0060】
(実施例2~8、比較例1~4)
帯電防止剤成分(B)、帯電防止剤成分(B)の水系分散液の固形分濃度、チューブの乾燥温度、又は、基材層表面における帯電防止剤成分の単位面積あたりの重量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてストランド、及び樹脂チューブを作製し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1にまとめた。
【0061】
<結果>
表1より、実施例ではチューブ同士の貼りつきが問題にならず、また成形から30分後であっても帯電防止効果が十分に発現していることがわかる。
【0062】
一方、比較例ではチューブ同士の貼りつきが頻繁に発生したり、成形直後に十分な帯電防止効果が得られなかったりする。したがって、本発明により、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分(A)に対し、特定の飽和脂肪酸残基を持つグリセリン系脂肪酸エステルからなる帯電防止剤成分を特定量だけ積層させた成形体において、成形直後であっても帯電防止性が十分な生分解性積層体およびその製造方法を提供することができる。