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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145942
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20241004BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058560
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 格
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA13
2G001JA03
2G001JA06
2G001JA09
2G001KA05
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】被検査物の搬送速度を減速することなく、ノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得ることができるX線検査装置を提供すること。
【解決手段】順次搬送される被検査物WにX線を照射するX線発生器10と、被検査物Wを透過したX線を検出するX線検出器11とを備え、被検査物Wが通過する搬送路を挟んで対向するようにX線発生器10とX線検出器11とが配置されたX線検査装置であって、X線発生器10は、被検査物Wの撮像時、所定角度θの範囲内で回転可能に構成されており、X線検出器11は、X線発生器10の回転に連動して被検査物Wの搬送方向Bと平行な方向に往復移動可能に構成されており、X線発生器10とX線検出器11とは、被検査物Wが撮像開始位置Pw1から撮像終了位置Pw2まで移動する間、被検査物Wに追従するようにX線発生器10が回転するとともにX線検出器11が搬送方向Bに移動しつつ、被検査物Wの撮像を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次搬送される被検査物(W)にX線を照射するX線発生器(10)と、
前記被検査物を透過した前記X線を検出するX線検出器(11)と、を備え、
前記被検査物が通過する搬送路(3)を挟んで対向するように、前記X線発生器と前記X線検出器とが配置されたX線検査装置であって、
前記X線発生器は、前記被検査物の撮像時、所定角度範囲内で回転可能に構成されており、
前記X線検出器は、前記X線発生器の回転に連動して前記被検査物の搬送方向と平行な方向に往復移動可能に構成されており、
前記X線発生器と前記X線検出器とは、前記被検査物が撮像開始位置(Pw1)から撮像終了位置(Pw2)まで移動する間、前記被検査物に追従するように前記X線発生器が回転するとともに前記X線検出器が前記搬送方向に移動しつつ、前記被検査物の撮像を行うX線検査装置。
【請求項2】
前記X線発生器と前記X線検出器とは、先の被検査物が前記撮像終了位置まで移動した後、次に搬送される被検査物が前記撮像開始位置に到達する前に、前記撮像開始位置に位置する被検査物を撮像可能な位置に戻るよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線検出器がエリアセンサによって構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線発生器と前記X線検出器とは、連結ブラケット(31)を介して連結されてユニット化されており、前記X線発生器の回転に連動して前記X線検出器が前記搬送方向と平行な方向に往復移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記X線発生器と前記X線検出器とは、連結ブラケット(31)を介して連結されてユニット化されており、前記X線発生器の回転に連動して前記X線検出器が前記搬送方向と平行な方向に往復移動することを特徴とする請求項3に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送路の途中の検査空間の上方に所定高さ離隔して配置され、順次搬送される被検査物に対して当該検査空間においてX線を照射するX線発生器と、搬送部内にX線発生器と対向して配置され、被検査物を透過したX線を検出するX線ラインセンサと、を備えたX線異物検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7060446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のX線異物検査装置において、被検査物に対する露光時間が短いと、得られる透過画像がノイズの多い画像となってしまう。また、例えば比較的厚さのある被検査物を検査する場合、露光時間が短いと、得られる透過画像が不鮮明な画像となってしまう。このため、被検査物に対する露光時間が短いと、検査精度を向上させることができない。
【0005】
これに対し、露光時間を長くすると、ノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得ることができるが、露光時間を長くする分、被検査物の搬送速度を遅くしたり、場合によっては一時停止させたりする必要があり、効率的な検査を行うことができない。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、被検査物の搬送速度を減速することなく、ノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得ることができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線検査装置は、順次搬送される被検査物にX線を照射するX線発生器と、前記被検査物を透過した前記X線を検出するX線検出器と、を備え、前記被検査物が通過する搬送路を挟んで対向するように、前記X線発生器と前記X線検出器とが配置されたX線検査装置であって、前記X線発生器は、前記被検査物の撮像時、所定角度範囲内で回転可能に構成されており、前記X線検出器は、前記X線発生器の回転に連動して前記被検査物の搬送方向と平行な方向に往復移動可能に構成されており、前記X線発生器と前記X線検出器とは、前記被検査物が撮像開始位置から撮像終了位置まで移動する間、前記被検査物に追従するように前記X線発生器が回転するとともに前記X線検出器が前記搬送方向に移動しつつ、前記被検査物の撮像を行うよう構成されている。
【0008】
この構成により、本発明に係るX線検査装置は、X線発生器とX線検出器とが、被検査物が撮像開始位置から撮像終了位置まで移動する間、被検査物に追従するようにX線発生器が回転するとともにX線検出器が搬送方向に移動しつつ被検査物の撮像を行うので、X線発生器とX線検出器とを固定して撮像する構成と比較して、被検査物の搬送速度を減速することなく露光時間を長くすることができる。このため、本発明に係るX線検査装置は、被検査物の搬送速度を減速することなく、ノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得ることができる。
【0009】
本発明に係るX線検査装置において、前記X線発生器と前記X線検出器とは、先の被検査物が前記撮像終了位置まで移動した後、次に搬送される被検査物が前記撮像開始位置に到達する前に、前記撮像開始位置に位置する被検査物を撮像可能な位置に戻るよう構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成により、本発明に係るX線検査装置は、X線発生器と前記X線検出器とが、先の被検査物が撮像終了位置まで移動した後、次に搬送される被検査物が撮像開始位置に到達する前に、撮像開始位置に位置する被検査物を撮像可能な位置に戻るので、順次搬送される被検査物間の隙間時間を利用してX線発生器とX線検出器とを次の被検査物の撮像に備えて撮像開始位置に位置する被検査物を撮像可能な位置に戻すことができる。
【0011】
本発明に係るX線検査装置において、前記X線検出器がエリアセンサによって構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成により、本発明に係るX線検査装置は、X線検出器がエリアセンサによって構成されているので、被検査物の搬送を止めることなく静止画像を得ることができる。
【0013】
本発明に係るX線検査装置において、前記X線発生器と前記X線検出器とは、連結ブラケットを介して連結されてユニット化されており、前記X線発生器の回転に連動して前記X線検出器が前記搬送方向と平行な方向に往復移動することが好ましい。
【0014】
この構成により、本発明に係るX線検査装置は、X線発生器とX線検出器とが連結ブラケットを介して連結されてユニット化されており、X線発生器の回転に連動してX線検出器が搬送方向と平行な方向に往復移動するので、X線発生器の回転とX線検出器の移動とをずれなく同期させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検査物の搬送速度を減速することなく、ノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得ることができるX線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置の概略斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置のX線検出器の移動の遷移を示すグラフである。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置のX線発生器の回転の遷移を示すグラフである。
図5図5(a)から(e)は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置の撮像ユニットと被検査物との位置関係を時系列で示した図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るX線検査装置について説明する。
【0018】
(X線検査装置の構成)
図1に示すように、本実施形態のX線検査装置1は、搬送される被検査物WにX線を照射し、透過したX線を検出して得られる透過画像を用いて被検査物Wにおける異物混入や形状などを検査するX線検査装置である。
【0019】
本実施形態では、被検査物Wとして、例えばボトル製品などの円筒状の物品を例に説明するが、被検査物Wとしてはこれに限られない。
【0020】
本実施形態のX線検査装置1は、図示しない筐体と、X線を発生するX線発生器10と、被検査物Wを透過したX線を検出するX線検出器11と、制御回路20と、を含んで構成されている。X線発生器10、X線検出器11及び制御回路20は、図示しない筐体内に収容されている。
【0021】
当該筐体は、被検査物Wを搬送するコンベア2に組み込まれている。コンベア2は、被検査物Wの生産設備の一部であり、X線検査装置1と別体に構成されている。このように、X線検査装置1は、別体のコンベア2に組み込まれる組み込み型のX線検査装置であり、例えばトップチェーンコンベアやベルトコンベア等の被検査物Wを水平方向に搬送する既設のコンベアに組み込まれる。
【0022】
X線発生器10とX線検出器11とは、コンベア2上の被検査物Wが通過する搬送路3を挟んで、コンベア2の幅方向に対向するように配置されている。
【0023】
X線発生器10は、その内部に設けられた図示しないX線管の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成し、図1中、破線で示した範囲が撮像されるように生成したX線を放射状に照射する。これにより、X線発生器10は、順次搬送されるコンベア2上の被検査物WにX線を照射するようになっている。
【0024】
X線検出器11は、図示しないフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータからなる図示しない複数のX線検出素子と、を備えている。X線検出器11は、X線検出素子が搬送方向とこの搬送方向と直交する方向に並んで面状に配置されたエリアセンサによって構成されている。
【0025】
X線検出器11は、X線発生器10から搬送路3上の被検査物WにX線が照射されて当該被検査物Wを透過したX線の透過画像を撮像する。具体的には、X線検出素子のシンチレータによって光信号に変換され、その光信号がフォトダイオードによって電気信号に変換される。そして更にノイズ除去などの処理を施し、X線透過量に基づいて濃淡分布の透過画像を生成する。
【0026】
制御回路20には、表示部12、設定操作部13及び駆動部14が接続されている。
【0027】
表示部12は、平面ディスプレイ等から構成されており、ユーザに対する表示出力を行うようになっている。表示部12は、制御回路20による検査結果等の画像を表示するようになっている。
【0028】
また、表示部12は、被検査物Wの良否判定結果を「OK」や「NG」等の文字又は記号で表示するようになっている。また、表示部12は、総検査数、良品数、NG総数等の統計値を表示するようになっている。
【0029】
表示部12の表示内容及び表示態様は、既定設定、又は設定操作部13からの所定のキー操作による要求に基づいて決定される。
【0030】
設定操作部13は、制御回路20への各種パラメータ等の設定入力を行うものである。設定操作部13は、ユーザが操作する複数のキーやスイッチ等で構成され、制御回路20への各種パラメータ等の設定入力や動作モードの選択を行うものである。
【0031】
本実施形態では、表示部12と設定操作部13とがタッチパネル式表示器として一体化され、図示しない筐体の前面上部に配置されている。
【0032】
駆動部14は、後述する撮像ユニット30を所定角度範囲で回転させる駆動源として構成されており、例えばモータ等のアクチュエータからなる。
【0033】
制御回路20は、X線画像記憶部21、画像処理部22、判定部23及び制御部25を備えている。
【0034】
X線画像記憶部21は、X線検出器11から受け取ったX線画像を記憶するようになっている。
【0035】
画像処理部22は、X線画像記憶部21から読み出したX線画像に対して各種の画像処理アルゴリズム等を適用して画像処理を施すようになっている。ここで、画像処理アルゴリズムは、複数の画像処理フィルタを組み合わせたものからなる。
【0036】
判定部23は、画像処理部22により画像処理されたX線画像に対して、被検査物Wと異物との判別を行って異物の混入の有無を判定し、また、被検査物Wの形状の良否を判定するようになっている。
【0037】
制御部25は、CPUおよび制御プログラムの記憶領域又は作業領域としてのメモリなどを有しており、X線検査装置1の全体を制御するようになっている。制御部25の制御内容には、表示部12の表示内容及び表示形態の制御が含まれる。
【0038】
また、制御部25は、駆動部14の駆動を制御するようになっている。制御部25は、駆動部14の駆動を制御することによって、撮像ユニット30の回転動作を制御する。
【0039】
(撮像ユニット)
図2に示すように、本実施形態のX線検査装置1において、X線発生器10とX線検出器11とは、連結ブラケット31を介して互いに連結されてユニット化されている。これにより、X線発生器10の回転に連動してX線検出器11が被検査物Wの搬送方向Bと平行な方向に往復移動可能となっている。
【0040】
本実施形態では、X線発生器10とX線検出器11と連結ブラケット31とで、撮像ユニット30を構成している。
【0041】
連結ブラケット31は、X線発生器10側の下部が回転テーブル33に連結されている。回転テーブル33は、駆動部14が内蔵された回転支持部32に回転自在に支持されており、駆動部14によって回転駆動するようになっている。このため、連結ブラケット31は、X線発生器10側を支点に回転可能に構成されている。
【0042】
連結ブラケット31のX線検出器11側の端部上部には、支持台34が連結されている。当該支持台34には、X線検出器11が支持されている。
【0043】
連結ブラケット31のX線検出器11側の端部には、図示しない弧状の長孔が上下方向に連結ブラケット31を貫通するように形成されている。当該長孔は、連結ブラケット31の短手方向、すなわちX線の中心軸Aに直交する水平方向に長く、かつX線発生器10側に向けて弓なりに膨らむように形成されている。
【0044】
支持台34の下部には、図示しないガイドピンが下方に向けて突出するように形成されている。当該ガイドピンは、上述した連結ブラケット31の長孔を貫通するとともに、被検査物Wの搬送方向Bと平行な方向に延在するリニアスライダ35上を往復移動するように構成されている。
【0045】
これにより、支持台34は、連結ブラケット31が回転することによって連結ブラケット31のX線検出器11側の端部とリニアスライダ35との位置関係が変わっても、リニアスライダ35上を直線的に往復移動できる。したがって、X線検出器11は、連結ブラケット31が回転しても、搬送路3との間の距離を維持しつつ搬送方向と平行な方向に往復移動できる。
【0046】
X線発生器10は、被検査物Wの撮像時、所定角度θ(図5(e)参照)の範囲内で回転可能に構成されている。ここで、X線の中心軸Aが搬送路3に対して直交するときのX線発生器10の角度(図5(d)に示すときの角度)を0°として、搬送方向B側(搬送方向下流側)に回転する場合を「進角」、搬送方向Bと反対方向側(搬送方向上流側)に回転する場合を「遅角」ということとする。
【0047】
本実施形態において、X線発生器10が所定角度θの範囲内において最も遅角した角度を最遅角DM1(図5(e)に示すときの角度)、最も進角した角度を最進角DM2(図5(c)に示すときの角度)という。所定角度θは、最遅角DM1におけるX線の中心軸Aと、最進角DM2におけるX線の中心軸Aと、がなす角度である。
【0048】
X線発生器10は、所定角度θの範囲内で正方向及び逆方向に回転するようになっている。つまり、X線発生器10は、最遅角DM1と最進角DM2との間で進角方向及び遅角方向に回転するようになっている。正方向とは、搬送される被検査物Wに追従する方向(図5中、時計回り方向)のことであり、逆方向とは、正方向と逆方向(図5中、反時計回り方向)のことである。
【0049】
また、本実施形態において、上述の所定角度θの範囲内には、被検査物Wの撮像を開始する撮像開始角度D1(図5(a)に示すときの角度)、被検査物Wの撮像を終了する撮像終了角度D2(図5(b)に示すときの角度)が設定されている。撮像開始角度D1は、最遅角DM1から僅かに進角した角度であって、搬送されてくる被検査物Wの撮像を開始するときのX線発生器10の角度である。撮像終了角度D2は、最進角DM2から僅かに遅角した角度であり、当該被検査物Wの撮像を終了するときのX線発生器10の角度である。
【0050】
ここで、撮像が開始されるときの被検査物Wの位置を撮像開始位置Pw1(図5参照)、撮像が終了されるときの被検査物Wの位置を撮像終了位置Pw2(図5参照)とそれぞれ定義する。被検査物Wが撮像開始位置Pw1に位置するときには、X線の中心軸Aが被検査物Wの搬送方向中心を通る位置関係となっていることが好ましい。
【0051】
また、撮像が開始されるときのX線検出器11の位置を撮像開始位置Ps1(図5参照)、撮像が終了されるときのX線検出器11の位置を撮像終了位置Ps2(図5参照)とそれぞれ定義する。本実施形態では、X線検出器11の撮像面に垂直な撮像軸の位置をX線検出器11の位置として取り扱う。
【0052】
本実施形態では、被検査物Wの撮像開始位置Pw1から撮像終了位置Pw2までの移動距離よりも、X線検出器11の撮像開始位置Ps1から撮像終了位置Ps2までの移動距離が長くなっている。これは、被検査物WとX線検出器11との間に距離があるとともにX線発生器10のX線の照射範囲が回転するからである。X線検出器11の移動距離は、撮像系の拡大率に依存し、拡大率が大きくなるほど長くなる。
【0053】
X線発生器10とX線検出器11とは、被検査物Wが撮像開始位置Pw1から撮像終了位置Pw2まで移動する間、被検査物Wに追従するようにX線発生器10が撮像開始角度D1から撮像終了角度D2に向けて回転するとともにX線検出器11が搬送方向Bに移動しつつ、被検査物Wの撮像を行うようになっている。
【0054】
X線発生器10とX線検出器11とは、先の被検査物Wが撮像終了位置Pw2まで移動した後、次に搬送される被検査物Wが撮像開始位置Pw1に到達する前に、撮像開始位置Pw1に位置する被検査物Wを撮像可能な位置(以下、「ユニットホーム位置」という)に戻るようになっている。
【0055】
ユニットホーム位置とは、図5(a)に示すX線発生器10及びX線検出器11の位置であり、具体的には、X線発生器10においては撮像開始角度D1であり、X線検出器11においては撮像開始位置Ps1である。
【0056】
このとき、X線発生器10とX線検出器11とがユニットホーム位置に戻る速度、つまり撮像ユニット30の角速度を速くすることで、順次搬送されてくる被検査物W間の間隔を小さくすることができ、単位時間当たりの被検査物Wの検査数を増やすことができる。
【0057】
(撮像ユニットの移動の遷移)
次に、図3から図5を参照して、撮像ユニット30の移動の遷移について説明する。
【0058】
図3において、破線は被検査物Wの移動の遷移を示しており、実線はX線検出器11の移動の遷移を示している。図3においては、順次搬送される被検査物Wのうち、先に搬送される被検査物W1と、次に搬送される被検査物W2とを例にX線検出器11の移動の遷移について説明する。なお、被検査物Wの移動の遷移を示す破線において、一部に太実線部分があるが、これは被検査物Wが撮像中であることを示している。
【0059】
図5(a)から図5(e)は、図3及び図4中に示した時間t0から時間t4までの各時間における撮像ユニット30と被検査物Wとの位置関係を示した図であって、図5(a)が時間t0、図5(b)が時間t1、図5(c)が時間t2、図5(d)が時間t3、図5(e)が時間t4にそれぞれ対応している。
【0060】
図3に示すように、時間t0において被検査物W1が撮像開始位置Pw1に達すると、被検査物W1に追従するようにX線発生器10が撮像開始角度D1から進角するとともに(図4参照)、これに連動してX線検出器11が被検査物W1の搬送速度よりも速い速度で撮像終了位置Ps2に向けて移動しながら被検査物W1の撮像を開始する。
【0061】
つまり、図5(a)に示すように、被検査物W1の搬送方向の中心が、X線発生器10のX線の中心軸Aと一致したタイミングで、X線発生器10とX線検出器11とが被検査物W1の撮像を開始しつつ、被検査物W1への追従を開始する。
【0062】
その後、被検査物W1の撮像が終了するまで、すなわち被検査物W1が撮像終了位置Pw2に達するまで、被検査物W1の搬送方向の中心とX線の中心軸Aとの位置関係を維持したまま、被検査物W1の撮像が行われる。被検査物W1の撮像中、X線発生器10の角速度及びX線検出器11の移動速度は一定である。つまり、被検査物W1の撮像中、X線発生器10は等速円運動し、X線検出器11は等速直線運動する。
【0063】
次いで、時間t1において被検査物W1が撮像終了位置Pw2(図5(b)に示す位置)に達すると、被検査物W1の撮像が終了し、X線発生器10とX線検出器11とがユニットホーム位置に戻るための動作が開始される。具体的には、制御部25によって駆動部14の逆転駆動が開始される。
【0064】
このとき、X線発生器10とX線検出器11とは、X線発生器10が撮像終了角度D2を超えて最進角DM2まで進角するとともにX線検出器11が撮像終了位置Ps2を搬送方向B側に僅かに通り越した後、当該位置(図5(c)に示す位置)にて回転方向及び移動方向が逆転し、ユニットホーム位置に戻り始める。
【0065】
時間t2において、X線発生器10とX線検出器11とがユニットホーム位置に戻り始めると、X線発生器10の回転に正の角加速度が付与され、これに伴いX線検出器11に正の加速度が付与される。つまり、図5(c)に示す位置からX線発生器10とX線検出器11とがユニットホーム位置に向けて加速して回転及び移動する。
【0066】
次いで、時間t3において、X線発生器10の回転に付与される角加速度が正から負に切り換えられる(図4参照)。すなわち、正の角加速度で回転していたX線発生器10は、時間t3を境に負の角加速度が付与されるように制御部25によって駆動部14が制御され、減速を開始する。これに伴いX線検出器11も減速を開始する。
【0067】
時間t3は、例えば被検査物Wの移動距離の半分、つまり撮像開始位置Pw1と撮像終了位置Pw2との中間位置(図5(d)に示す位置)にX線発生器10のX線の中心軸Aが達したタイミングであり、t3=(t2+t4)/2で定義することもできる。なお、X線発生器10の回転に付与される角加速度の正負の切替タイミングは、前述したタイミングに限らず、撮像ユニット30や駆動部14の仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0068】
次いで、減速中のX線発生器10とX線検出器11とは、X線発生器10が撮像開始角度D1を超えて最遅角DM1まで遅角するとともにX線検出器11が撮像開始位置Ps1を搬送方向Bと反対方向(搬送方向上流)に僅かに通り越した後、時間t4において減速が終了し、当該タイミングで回転方向及び移動方向が逆転する。このとき、図5(e)に示すように、被検査物W2は、まだ撮像開始位置Pw1に到達していない。
【0069】
その後、時間t5において被検査物W2が撮像開始位置Pw1に達すると、被検査物W2に追従するようにX線発生器10が進角するとともにこれに連動してX線検出器11が被検査物W2の搬送速度よりも速い速度で撮像終了位置Ps2に向けて移動しながら被検査物W2の撮像を開始する。以後は、被検査物W1と同一の流れとなる。
【0070】
このように、X線発生器10とX線検出器11とは、回転運動及び往復移動を周期的に繰り返すように制御部25によって駆動部14が制御される。
【0071】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係るX線検査装置は、X線発生器10とX線検出器11とが、被検査物Wが撮像開始位置Pw1から撮像終了位置Pw2まで移動する間、被検査物Wに追従するようにX線発生器10が回転するとともにX線検出器11が搬送方向Bに移動しつつ被検査物Wの撮像を行うので、X線発生器10とX線検出器11とを固定して撮像する構成と比較して、被検査物Wの搬送速度を減速することなく露光時間を長くすることができる。このため、本実施形態に係るX線検査装置は、被検査物Wの搬送速度を減速することなく、ノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得ることができる。
【0072】
ここで、露光時間を長くするために露光の度に被検査物Wの搬送を停止すると、例えば被検査物Wが液体の充填された容器等である場合には、停止の度に液面が揺れてしまい、当該液面揺れが収まるまで搬送を開始できない。このため、単位時間当たりの被検査物Wの検査数を多くすることができない。
【0073】
本実施形態に係るX線検査装置は、被検査物Wの搬送を停止する必要がないので、前述したような液面揺れが生じることがなく、単位時間当たりの被検査物Wの検査数を多くすることができる。
【0074】
また、本実施形態に係るX線検査装置は、上述したようにX線発生器10とX線検出器11とを往復移動させて長い露光時間を確保することでノイズが少なく、かつ鮮明な透過画像を得るため、X線発生器10のX線源の電流や電圧を上げて高出力なX線を照射する必要がなく、X線源の低出力化を図ることができる。さらに、X線源の低出力化を図ることで、X線発生器10の小型化を図ることもできる。
【0075】
また、本実施形態に係るX線検査装置は、X線発生器10とX線検出器11とが、先の被検査物Wが撮像終了位置Pw2まで移動した後、次に搬送される被検査物Wが撮像開始位置Pw1に到達する前にユニットホーム位置に戻るので、順次搬送される被検査物W間の隙間時間を利用してX線発生器10とX線検出器11とを次の被検査物Wの撮像に備えてユニットホーム位置に戻すことができる。
【0076】
また、本実施形態に係るX線検査装置は、X線検出器11がエリアセンサによって構成されているので、被検査物Wの搬送を止めることなく静止画像を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態に係るX線検査装置は、X線発生器10とX線検出器11とが連結ブラケット31を介して連結されてユニット化されており、X線発生器10の回転に連動してX線検出器11が搬送方向Bと平行な方向に往復移動するので、X線発生器10の回転とX線検出器11の移動とをずれなく同期させることができる。
【0078】
(変形例)
なお、本実施形態においては、本発明に係るX線検査装置を、搬送路3を挟んでX線発生器10とX線検出器11とが被検査物Wの搬送方向と直交する水平方向に対向するように配置された横照射型のX線検査装置に適用した例について説明したが、搬送路3を挟んでX線発生器10とX線検出器11とが上下方向に対向するように配置されたタイプのX線検査装置に適用してもよい。
【0079】
また、本実施形態に係るX線検査装置においては、X線発生器10とX線検出器11とを1組備える構成としたが、X線発生器10とX線検出器11とを2組以上備えた構成であってもよい。この場合、これら2組以上のX線発生器10とX線検出器11とをユニット化して一体で回転及び移動可能に構成することが好ましい。
【0080】
また、本実施形態に係るX線検査装置においては、X線発生器10とX線検出器11とをユニット化して一体で回転及び往復移動可能に構成したが、これに限らず、X線発生器10とX線検出器11とをそれぞれ独立して回転及び往復移動可能に構成してもよい。この場合、制御部25によって、X線発生器10の回転とX線検出器11の移動とを同期させる。
【0081】
また、本実施形態においては、本発明に係るX線検査装置を、搬送路3が直線状の構成のコンベア2に組み込んだX線検査装置に適用した例について説明したが、これに限らず、例えば図6に示すように、搬送路3が円弧状にカーブした構成のコンベア2に組み込んだX線検査装置に適用してもよい。
【0082】
この場合、X線検出器11は、X線発生器10のX線の中心軸AとX線検出器11の撮像軸とが一致したまま往復移動できるように、X線発生器10に対して位置決めされている。図6に示す例にあっても、X線発生器10とX線検出器11とが一体で回転及び移動するようにユニット化されていてもよいし、X線発生器10とX線検出器11とがそれぞれ独立して回転及び移動する構成であってもよい。
【0083】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0084】
1 X線検査装置
2 コンベア
3 搬送路
10 X線発生器
11 X線検出器
12 表示部
13 設定操作部
14 駆動部
20 制御回路
21 X線画像記憶部
22 画像処理部
23 判定部
25 制御部
30 撮像ユニット
31 連結ブラケット
32 回転支持部
33 回転テーブル
34 支持台
35 リニアスライダ
W、W1、W2 被検査物
θ 所定角度
D1 撮像開始角度
D2 撮像終了角度
DM1 最遅角
DM2 最進角
Pw1、Ps1 撮像開始位置
Pw2、Ps2 撮像終了位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6