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特開2024-145952破断断片が離散し難い脊椎内固定器具用ロッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145952
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】破断断片が離散し難い脊椎内固定器具用ロッド
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20241004BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20241004BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20241004BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B17/70
A61L31/04
A61L31/12
A61F2/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058577
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522304970
【氏名又は名称】株式会社スパインテック
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝広
(72)【発明者】
【氏名】楠本 晴信
(72)【発明者】
【氏名】森田 康平
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋輝
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081BB08
4C081CA021
4C081CA031
4C081CA091
4C081CA151
4C081CA161
4C081CA201
4C081CA231
4C081CF13
4C081CF161
4C081CG01
4C081DA01
4C081DB01
4C081DC03
4C097AA10
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC02
4C097CC05
4C097DD02
4C097DD06
4C097DD09
4C097DD12
4C097EE08
4C097EE13
4C097FF16
4C160LL24
4C160LL42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した脊椎内固定器具用ロッドを提供する。
【解決手段】脊椎内固定具用ロッド1は、繊維強化樹脂を含むコア部材6と、該コア部材を被覆する被覆樹脂層7と、を備え、該コア部材の内部に、該コア部材の長手方向に沿って補強部材8が設けられている。補強部材は、高伸度な金属糸又は繊維部材であり、補強部材の伸度はコア部材の繊維の伸度より大きいため、コア部材が破損した場合でも補強部材は相対的に破断し難く、断片の離散が抑制される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定具用ロッドであって、
繊維強化樹脂を含むコア部材と、
該コア部材を被覆する被覆樹脂層と、を備え、
該コア部材の内部に、該コア部材の長手方向に沿って補強部材が設けられていることを特徴とする固定具用ロッド。
【請求項2】
前記補強部材は、高伸度な金属糸又は繊維部材である、請求項1に記載の固定具用ロッド。
【請求項3】
前記高伸度な金属糸又は繊維部材の引張強度は、150Mpa以上である、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項4】
前記繊維部材は、前記繊維強化樹脂の強化繊維よりも高伸度である、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項5】
前記高伸度な金属糸又は繊維部材の直径は、0.1mmから1.0mmの範囲の大きさである、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項6】
前記高伸度な金属糸又は繊維部材は、前記コア部材の前記長手方向に垂直な断面でみて、前記コア部材の中央点を中心とする、前記固定具用ロッドの直径の半分の直径の仮想円内に設けられている、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項7】
前記コア部材は、前記コア部材の前記長手方向に垂直な断面でみて、複数の層が積層されて形成されている、請求項1に記載の固定具用ロッド。
【請求項8】
前記コア部材の前記複数の層のそれぞれは、樹脂を含み、前記コア部材の前記長手方向に垂直な断面でみて、前記補強部材は、該補強部材の直径の2倍から3倍の範囲の厚さの樹脂に包囲されるようにして埋設されている、請求項1に記載の固定具用ロッド。
【請求項9】
前記コア部材の前記複数の層は、断面でみて、強化繊維層と、樹脂層、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層のいずれかの層と、が交互にそれぞれ複数層形成されるものであり、前記補強部材は、前記複数の層の1つ又はそれ以上の層に埋設されている、請求項7に記載の固定具用ロッド。
【請求項10】
前記強化繊維層は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドを用い、樹脂としてエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKを用いる、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項11】
前記樹脂層の樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKである、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項12】
前記強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドを用い、樹脂としてエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKを用いる、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項13】
前記強化繊維層又は前記強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層は、繊維が一方向に引き揃えられている、織物状に形成されている又はランダムに配向されている、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項14】
前記強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層の繊維方向は、10°から90°の範囲で斜向する、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項15】
樹脂層、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層のいずれかの層が複数層設けられる場合、各層は同じ層又は異なる層である、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項16】
前記強化繊維層の繊維は長繊維である、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項17】
前記強化繊維層の繊維含有率は、50体積%以上である、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項18】
前記強化繊維層の繊維方向は引き揃えられており、該強化繊維層の厚みは、0.02mmから0.3mmの範囲にある、請求項9に記載の固定具用ロッド。
【請求項19】
前記補強部材には、マーカーが設けられている、請求項1に記載の固定具用ロッド。
【請求項20】
前記補強部材の伸度は、前記コア部材の繊維の伸度よりも大きい、請求項1に記載の固定具用ロッド。
【請求項21】
固定具用ロッドであって、
繊維強化樹脂を含むコア部材を備え、
該コア部材の内部に、該コア部材の長手方向に沿って補強部材が設けられていることを特徴とする固定具用ロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破断断片が離散し難い、脊椎を固定するための固定器具に用いる脊椎内固定器具用ロッド(本明細書では、便宜のため、固定具用ロッドと呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、脊椎を固定するための固定具として金属を用いた固定具用ロッドが知られている。
【0003】
また、このような固定具用ロッドとして、例えば、特許文献1にポリマーコーティング内に少なくとも部分的に入れられた内部補強されたポリマーコアを備える脊柱椎弓根ロッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011-508623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属を用いた固定具用ロッドは、一般に固定力や強度に優れるものの、MRI等による撮像の際、磁場中で金属が磁化することで磁場が影響を受け、画像の乱れが発生し、撮影画像による診断が難しいという問題があった。他方で、特許文献1に開示のロッドでは、そのような問題はないものの、繊維密度が低くなってしまうために所望の剛性を付与することが難しく、強度や耐久性に難があるというだけでなく、破断時に棘状繊維が露出してしまうため、安全性に問題があることが判っている。
【0006】
本発明の目的の一つは、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した脊椎内固定器具用ロッドを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドは、繊維強化樹脂を含むコア部材と、該コア部材を被覆する被覆樹脂層と、を備え、該コア部材の内部に、該コア部材の長手方向に沿って補強部材が設けられている。
【0008】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記補強部材は、高伸度な金属糸又は繊維部材である。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記高伸度な金属糸又は繊維部材の引張強度は、150Mpa以上である。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記繊維部材は、前記繊維強化樹脂の強化繊維よりも高伸度である。
【0009】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記高伸度な金属糸又は繊維部材の直径は、0.1mmから1.0mmの範囲の大きさである。
【0010】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記高伸度な金属糸又は繊維部材は、前記コア部材の前記長手方向に垂直な断面でみて、前記コア部材の中央点を中心とする、前記固定具用ロッドの直径の半分の直径の仮想円内に設けられている。
【0011】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材は、前記コア部材の前記長手方向に垂直な断面でみて、複数の層が積層されて形成されている。
【0012】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の前記複数の層のそれぞれは、樹脂を含み、前記コア部材の前記長手方向に垂直な断面でみて、前記補強部材は、該補強部材の直径の2倍から3倍の範囲の厚さの樹脂に包囲されるようにして埋設されている。
【0013】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の前記複数の層は、断面でみて、強化繊維層と、樹脂層、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層のいずれかの層と、が交互にそれぞれ複数層形成され、前記補強部材は、前記複数の層の1つ又はそれ以上の層に埋設されている。
【0014】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドを用い、樹脂としてエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKを用いる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記樹脂層の樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKである。
【0016】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドを用い、樹脂としてエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKを用いる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層又は前記強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層は、繊維が一方向に引き揃えられている、織物状に形成されている又はランダムに配向されている。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層の繊維方向は、10°から90°の範囲で斜向する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、樹脂層、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層のいずれかの層が複数層設けられる場合、各層は同じ層又は異なる層である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層の繊維は長繊維である。本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層の繊維含有率は、60重量%以上である。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記強化繊維層の繊維方向は引き揃えられており、該層の厚みは、0.02mmから0.3mmの範囲にある。
【0020】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材には、マーカーが埋設されている。
【0021】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記補強部材の伸度は、前記コア部材の繊維の伸度よりも大きい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドは、繊維強化樹脂を含むコア部材を備え、該コア部材の内部に、該コア部材の長手方向に沿って補強部材が設けられている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記各実施形態によれば、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した固定具用ロッドを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドを含む脊椎用固定具10を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドをその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材をその中心軸に垂直な面で切断した断面の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る固定具用ロッドの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1を含む脊椎用固定具10を示す図である。図示のように、脊椎用固定具10は、脊椎の骨に固定される複数のスクリュー部材18(図示の例では2つのスクリュー部材18)と、該スクリュー部材18に取付けられ、固定具用ロッドを受け入れる凹部21及び押圧部材22を備える複数のロッド固定部材20(図示の例では2つのロッド固定部材20)と、該複数のロッド固定部材20の凹部21に挿入されかつ押圧部材22により固定される固定具用ロッド1と、を備える。
【0027】
次に、図2を参照して、脊椎用固定具10に用いる本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1について説明する。図2は、図1に示す固定具用ロッド1を同図に示すX-X断面でみたものである。図示のように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1は、繊維強化樹脂を含むコア部材6と、該コア部材6を被覆する被覆樹脂層7と、を備え、該コア部材6の内部に、該コア部材6の長手方向に沿って補強部材8が設けられている。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1は、繊維強化樹脂を含むコア部材6を備え、該コア部材6の内部に、該コア部材6の長手方向に沿って補強部材8が設けられるように構成され、該コア部材6を被覆する被覆樹脂層7がない構成であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドによれば、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した固定具用ロッドを提供することが可能となる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該補強部材8は、高伸度な金属糸又は繊維部材である。ここで、金属糸とは、例えば、チタン合金、SUS304、タンタル又はニオブである。また、繊維部材とは、例えば、ガラス繊維、ナイロン繊維、ポリイミド繊維又はPEEK繊維であり、伸度が5%以上であり、望ましくは10%以上のものを指す。本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドによれば、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した固定具用ロッドを提供することが可能となる。より詳細には、補強部材の伸度はコア部材の繊維の伸度より大きいため、コア部材が破損した場合でも補強部材は相対的に破断し難く、断片の離散が抑制される。
【0030】
また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該高伸度な金属糸又は繊維部材の引張強度は、150Mpa以上である。このようにして、コア部材の破損時の衝撃によって、補強部材の破断が発生し難くすることが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、当該繊維部材は、コア部材6に含まれる繊維強化樹脂の強化繊維よりも高伸度である。このようにして、コア部材の破損時の衝撃によって、補強部材の破断が発生し難くすることが可能となる。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記補強部材の伸度は、前記コア部材の繊維の伸度よりも大きくなるように構成される。このようにして、コア部材の破損時にも補強部材が破断し難く、破損断片の離散が抑制することが可能となる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該高伸度な金属糸又は繊維部材の直径は、0.1mmから1.0mmの範囲の大きさである。0.1mmよりも小さい場合、コア部材を繋ぎ止めるための強度として不足することが判っており、他方で、1.0mmよりも大きい場合、MRI撮像に乱れを生ぜしめるだけでなく、重量増大や繊維の乱れが生じ易いため、上記の数値範囲にあることにより、破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減することが可能となることが判明した。
【0032】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該高伸度な金属糸又は繊維部材は、該コア部材6の長手方向に垂直な断面でみて、該コア部材6の中央点(O)を中心とする、前記固定具用ロッドの直径(D)の半分の直径(D/2)の仮想円(X)内に設けられている。このようにして、コア部材の曲げによる変形がより小さい部位である、上記仮想円内に補強部材(高伸度な金属糸又は繊維部材)を設けることで、当該補強部材に発生する応力が低くなるため、補強部材自体への負荷を低減することができる。これにより、破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減することが可能となる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、該コア部材6は、該コア部材6の長手方向に垂直な断面でみて、複数の層が積層されて形成されている(複数の層の積層の詳細については後述する)。また、図6では本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材をその中心軸に垂直な面で切断した断面の一部の画像を示しているが、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、該コア部材6の複数の層のそれぞれは、樹脂を含み、該コア部材6の長手方向に垂直な断面でみて、該補強部材8は、該補強部材8の直径の2倍から3倍の範囲の厚さの樹脂に包囲されるようにして埋設されている。このようにして、補強部材の近傍に大きな応力が発生した場合、補強部材の周囲を包囲されている樹脂又は樹脂層(例えば、図6に示す樹脂の層)に沿って破壊が進展し易く、その結果、補強部材に掛かる応力が緩和されることで、補強部材の破断を抑制することが可能となる。
【0034】
次に、図3、4、5を参照して、脊椎用固定具10に用いる本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6の複数の層の層構造について説明する。図3、4、5は、図1に示す固定具用ロッド1のコア部材6を同図に示すX-X断面でみたものである。なお、説明の便宜のため、上述の被覆樹脂層7は省略している点に留意されたい。
【0035】
図示のように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1の当該コア部材6の複数の層は、断面でみて、強化繊維層2(図3ないし5の例では、8層の強化繊維層のそれぞれ)と、樹脂層3(図3に示す例では、7層の樹脂層3のそれぞれ)、該強化繊維層2の繊維とは異なる繊維を有する強化繊維層4(図4に示す例では、7層の強化繊維層4のそれぞれ)又は該強化繊維層2の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層5(図5に示す例では、7層の強化繊維層5のそれぞれ)のいずれかの層と、が交互にそれぞれ複数層形成され、当該補強部材8は、当該複数層の内のいずれか1つの層内又はいずれか2つ以上の層内に(2つ以上の層に亘るようにして)埋設されている。ここで、強化繊維層2と、樹脂層3(図3に示す例)、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層4(図4に示す例)又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層5(図5に示す例)のいずれかの層は、それぞれ0.01mmから0.25mmの厚さを有するように形成されるが、当該層の厚さは、層の場所により異なるようにしてもよい(すなわち、層の厚さが、薄い部分もあれば厚い部分があるように形成してもよい)。また、当該の層は、断続的に形成してもよい(すなわち、層の厚さが、薄い部分もあれば厚い部分があるだけでなく、層の厚さが0である部分が介在していてもよい)。
【0036】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6によれば、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した固定具用ロッドを提供することが可能となる。より詳細には、補強部材の伸度はコア部材の繊維の伸度より大きいため、コア部材が破損した場合でも補強部材は相対的に破断し難く、断片の離散が抑制される。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1の層構造により、破断時において、強化繊維層に挟まれた樹脂層、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層のいずれかの層に応力を集中させることで、ロッドが破断した際に強化繊維層が棘状になることを低減させ、その結果人体への安全性を大幅に高めることが可能となることも判った。
【0037】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、該強化繊維層2は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドを用い、樹脂としてエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKを用いる。このようにして、固定具用ロッド1の曲げ剛性の増大化や高強度化が可能となる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、該樹脂層3の樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKである。
【0039】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材6において、該強化繊維層2の繊維とは異なる繊維を有する強化繊維層4は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドを用い、樹脂としてエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKを用いる。このようにして、固定具用ロッドの曲げ剛性の増大化や高強度化が可能となる。また、当該強化繊維層2の繊維とは異なる繊維を有する強化繊維層を用いる理由は、異なる材料を用いることにより、剛性や強度以外の柔軟性や振動吸収性など、異なる特性を付与することができるためである。
【0040】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材6において、当該強化繊維層2又は当該強化繊維層2の繊維とは異なる強化繊維層4は、繊維が一方向に引き揃えられている、織物状に形成されている又はランダムに配向されるようにしてもよい。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、該強化繊維層2の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層5の繊維方向は、10°から90°の範囲で斜向するようにしてもよい。このようにして、適切な積層構成を配置することにより、目標の強度や剛性を実現することが可能となる。
【0041】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、樹脂層3、該強化繊維層2の繊維とは異なる強化繊維層4又は該強化繊維層2の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層5のいずれかの層が複数層設けられる場合、各層は同じ層又は異なる層である(以下同様)。これは、例えば、2層設けられる場合、樹脂層3を2層でもよいし(この場合、各層は同じとなる)、樹脂層3と該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層4等、異なる2つの層を設けるようにしてもよい。3層以上設ける場合も、上記層の中から所望の組み合わせを選択して設けるようにしてもよい。このようにすると、適切な積層構成を配置することにより、目標の強度や剛性を実現することができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、当該強化繊維層2の繊維は長繊維であるように構成される。このように、強化繊維層2の繊維が長繊維であることにより、さらに曲げ剛性の増大化や高強度化が可能となる。
【0043】
また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、当該強化繊維層2の繊維含有率は、60重量%以上であるように構成される。このように、長繊維が高密度に重点された繊維層により、剛性が高く、耐久性に優れた固定具用ロッド1を形成することが可能となる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材6において、当該強化繊維層2の繊維方向は引き揃えられており、該強化繊維層2の厚みは、例えば、0.02mmから0.3mmの範囲にある。このようにして、樹脂の密度が均一化され、部位による強度のばらつきを低減することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1の製造方法について説明する。まず、ステップ1として、強化繊維層2、樹脂層3、該強化繊維層の繊維とは異なる強化繊維層4又は該強化繊維層の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層5のいずれかの層を所定の寸法に切断する(層の切断工程)。そして、ステップ2として、補強部材8として用いる高伸度な金属糸又は繊維部材を用意する(補強部材の選択工程)。次に、ステップ3として、各層を所定の配置に積層すると共に、所定の位置を考慮しながら隣接する2つの層の間に補強部材を載置する(層の積層及び補強部材の載置工程)。そして、ステップ4として、所定の金型にセットし、所定条件(例えば、温度380℃、圧力5~15Mpa)にて成形する(成形工程)。次に、ステップ5として、最終の形状、寸法に加工を行い、コア部材6を形成する(加工工程)。最後に、ステップ6として、樹脂チューブを溶着することにより、形成されたコア部材6の外面に被覆樹脂層7を形成する。このようにして、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1を形成する。
【0046】
このようにして形成された本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1によれば、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性も高く、かつ破断時においても断片の離散リスクを大幅に低減した固定具用ロッドを提供することが可能となる。より詳細には、補強部材の伸度はコア部材の繊維の伸度より大きいため、コア部材が破損した場合でも補強部材は相対的に破断し難く、断片の離散が抑制される。
【0047】
次に、再度図2を参照して、脊椎用固定具10に用いる本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1について説明する。図2は、図1に示す固定具用ロッド1を同図に示すX-X断面でみたものである。本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1は、詳細は後述する繊維強化樹脂を含むコア部材6と、該コア部材6を被覆する被覆樹脂層7と、コア部材6に埋設された補強部材8とを備え、該被覆樹脂層7の引張強度は50Mpa以上で伸度が30%以上であり、0.3mmから0.4mmの範囲の厚さを有するように構成される。このような被覆樹脂層7を備えることで、内部のコア部材6が破損した場合にあっても、被覆樹脂層7が破損することなく当該コア部材6が覆われた状態を確保することができるため、これにより、当該コア部材6の繊維の外部への露出を防止でき、破断時においても人体への損傷リスクを大幅に低減することが可能となる。より詳細には、被覆樹脂の伸度が炭素繊維の標準的伸度約2%に対し十分大きいため、破壊は炭素繊維から起こる。また、被覆樹脂が一定以上の厚さと強度を持っていると、炭素繊維の破壊に伴う衝撃力に対して被覆樹脂の破断が抑制できる。しかしながら、被覆樹脂の厚みが0.4mmを超える範囲になると、被覆の破断は起こりにくくなるが、ロッドの外径そのものが大きくなり体内留置への影響が大きくなる。また、後述するコア部材により、スクリュー固定時の破損を低減し、高剛性で変形荷重による耐久性を向上させることができるが、被覆樹脂層によりさらに上記技術的効果を奏するものである。ここで、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材6には、マーカーが埋設されている。なお、マーカーとは、放射線不透過性物質からなり、インプラント製品の体内における位置を示す役割を果たすものである。
【0048】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材6の表層付近の繊維体積含有率(VF)は、好ましくは、50%から70%の範囲にあり、より好ましくは、55%から65%の範囲にある。ここで、当該コア部材6の表層付近とは、コア部材表面から中心方向に0.2mm内側の領域を指すものとする。当該コア部材6の表層付近の繊維体積含有率(VF)が50%以上の場合、曲げ剛性を効率的に大きくすることが可能となり、破損のし難いロッドを構成することが可能である。また、コア部材の表面付近の体積率が50%以上の場合、被覆樹脂との接合が完全に一体化しない。すなわち、コア部材の表面の樹脂と被覆樹脂は強固に一体化し易くなる一方で、コア部材表面の炭素繊維と被覆樹脂は相対的に弱い接合になる。これに対して、当該コア部材6の表層付近の繊維体積含有率(VF)が70%を超えると表面の樹脂が少なすぎるため、被覆樹脂とコア部材の樹脂との間で十分な接合が得られない。コア部材と被覆樹脂が完全に一体化せずに一定以上の弱い接合になっているため、内部のコア部材の破損時にはコア部材表面と被覆樹脂の層間で亀裂が進展し応力を開放するため、被覆樹脂の破断が発生し難くなる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材6の樹脂と、当該被覆樹脂層7の樹脂は、同一の熱可塑性樹脂である。このような熱可塑性樹脂として、例えば、PEEK、ナイロン、PPSU、又はPETが考えられる。このようにして、安定的にコア部材と被覆樹脂との一体化が可能となる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記被覆樹脂層の樹脂は、樹脂チューブを溶着して形成されている。このようにして、被覆層を予めチューブ状に成型することにより、厚みや品質の安定した被覆層を形成することができる。
【0051】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 固定具用ロッド
2 強化繊維層
3 樹脂層
4 強化繊維層2の繊維とは異なる繊維を有する強化繊維層
5 強化繊維層2の繊維方向に対して斜向する繊維を有する強化繊維層
6 コア部材
7 被覆樹脂層
8 補強部材
10 脊椎用固定具
18 スクリュー部材
20 ロッド固定部材
21 凹部
22 押圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6