(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145953
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】足場用吊りチェーン
(51)【国際特許分類】
B66C 1/14 20060101AFI20241004BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20241004BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20241004BHJP
F16B 45/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B66C1/14 J
B66C1/14 A
E04G5/00 301J
F16B45/00 C
F16B45/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058579
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000208101
【氏名又は名称】大洋製器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】大下本 繁群
(72)【発明者】
【氏名】河野 将也
【テーマコード(参考)】
3F004
3J038
【Fターム(参考)】
3F004EA40
3F004LA05
3F004LC08
3J038AA01
3J038BA02
3J038BA15
3J038BC05
(57)【要約】
【課題】荒く扱われたときにも、フックを外れ止めする外れ止め具が破損しにくい足場用吊りチェーンを提供する。
【解決手段】チェーン2の一端が連結されたフック基部5と、チェーン2の中間部分のリンク1aに引っ掛けられるフック先端部6とを有し、フック基部5とフック先端部6の間にリンク収容溝7が形成されているフック3と、リンク収容溝7からリンク1aが外れないようにリンク収容溝7の上端の開口を閉じる外れ止め具4とを備える足場用吊りチェーンにおいて、外れ止め具4がゴムまたはエラストマで形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連に連結された複数の環状のリンク(1)からなるチェーン(2)と、
前記チェーン(2)の一端が連結されたフック基部(5)と、前記チェーン(2)の中間部分のリンク(1a)に引っ掛けられるフック先端部(6)とを有し、前記フック基部(5)と前記フック先端部(6)の間には、上端が開口し、下端が閉じるリンク収容溝(7)が形成され、前記フック先端部(6)が前記リンク(1a)に引っ掛けられたときにそのリンク(1a)が前記リンク収容溝(7)に収容されるフック(3)と、
前記リンク収容溝(7)から前記リンク(1a)が外れないように前記リンク収容溝(7)の上端の開口を閉じる外れ止め具(4)とを備える足場用吊りチェーンにおいて、
前記外れ止め具(4)がゴムまたはエラストマで形成されていることを特徴とする足場用吊りチェーン。
【請求項2】
前記外れ止め具(4)は、前記フック先端部(6)の前記リンク収容溝(7)の側とは反対側の縁と、前記フック基部(5)の前記リンク収容溝(7)の側とは反対側の縁との間に弾性的に伸長した状態で巻き掛けられる環状部材であり、
前記フック基部(5)の前記リンク収容溝(7)の側とは反対側の縁に、前記外れ止め具(4)を保持する保持部(11)が設けられている請求項1に記載の足場用吊りチェーン。
【請求項3】
前記外れ止め具(4)の前記フック先端部(6)に掛けられる部分に、前記フック基部(5)から遠ざかる向きに延びるつまみ部(10)が設けられている請求項2に記載の足場用吊りチェーン。
【請求項4】
前記フック(3)は、鋼板で形成され、
前記外れ止め具(4)は、弾性変形していない自然状態のときに前記フック(3)の板厚方向に対して直角な方向に細長い内周形状を有する請求項3に記載の足場用吊りチェーン。
【請求項5】
前記外れ止め具(4)は、弾性変形していない自然状態のときに、前記外れ止め具(4)の内周の前記フック先端部(6)の側の端部(4a)の内幅が、前記外れ止め具(4)の内周の前記フック基部(5)の側の端部(4b)の内幅よりも広くなるように形成されている請求項4に記載の足場用吊りチェーン。
【請求項6】
前記フック先端部(6)の前記リンク収容溝(7)の側とは反対側の縁に、前記外れ止め具(4)の上側への移動を規制する係止突起(15)が形成されている請求項2から5のいずれかに記載の足場用吊りチェーン。
【請求項7】
前記保持部(11)は、前記フック基部(5)の前記リンク収容溝(7)の側とは反対側の縁から前記フック基部(5)の内部に入り込むように形成された切り欠きである請求項2から5のいずれかに記載の足場用吊りチェーン。
【請求項8】
前記保持部(11)は、前記外れ止め具(4)が弾性変形していない自然状態のときに前記外れ止め具(4)の通過を規制し、前記外れ止め具(4)をその断面形状が小さくなるように弾性変形させることで前記外れ止め具(4)の通過を許容する狭小部(14,16)を有する請求項7に記載の足場用吊りチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、足場用吊りチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高速道路の補修工事の現場など、地面から足場を組み立てることが困難な現場では、吊り足場が使用される。吊り足場は、梁などの構造物からチェーンで吊り下げて設置される足場である。この吊り足場に使用するチェーンとして、例えば、特許文献1の足場用吊りチェーンが知られている。
【0003】
特許文献1の足場用吊りチェーンは、一連に連結された複数の環状のリンクからなるチェーンと、そのチェーンの両端に設けたフックとを有する。足場用吊りチェーンは、梁などの構造物にチェーンを巻き掛けることで、チェーンを構造物から垂れ下がった状態とし、そのチェーンの下端のフックをチェーンの中間部分のリンクに引っ掛けることでループを形成し、そのループで足場を支持する。
【0004】
ところで、特許文献1の足場用吊りチェーンは、チェーンの一端に設けられたフックを、チェーンの中間部分のリンクに引っ掛けた後、そのフックがリンクから不意に外れるのを防止するため、フックに外れ止め金具を設けている。
【0005】
すなわち、特許文献1の足場用吊りチェーンにおいて、チェーンの一端に設けられたフックは、チェーンの一端が連結されたフック基部と、チェーンの中間部分のリンクに引っ掛けられるフック先端部とを有し、フック基部とフック先端部の間には、上端が開口し、下端が閉じるリンク収容溝が形成され、フック先端部をチェーンのリンクに引っ掛けたときに、そのリンクがリンク収容溝に収容されるようになっている。そして、フック基部には、ヘアピン状の外れ止め金具が回動可能に取り付けられ、その外れ止め金具でリンク収容溝の上端開口を閉じることでリンク収容溝内にチェーンのリンクを保持し、フックをチェーンから外れ止めするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の足場用吊りチェーンは、フックに設けられたヘアピン状の外れ止め金具が、変形して破損しやすいという問題がある。
【0008】
すなわち、足場用吊りチェーンは、現場に設置するための準備作業時や、現場で使用した後の撤収時に荒く扱われることが多い。そのため、足場用吊りチェーンのフックに設けられたヘアピン状の外れ止め金具が、他のチェーン等にぶつかった衝撃などで変形することがある。外れ止め金具が変形すると、チェーンの中間部分のリンクにフック先端部を引っ掛ける際に、その変形した外れ止め金具が正常に動作せずに邪魔となり、フック先端部をリンクに引っ掛ける作業が困難となる。また、外れ止め金具がいったん変形すると、その変形を修復するのは容易でない。そのため、外れ止め金具が他のチェーン等にぶつかった衝撃などで変形した場合、その外れ止め金具をフックから取り外し、そのかわりにフックの周囲にガムテープを巻き付けることで、フックをチェーンから外れ止めするといったことが現場で行なわれることがあった。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、荒く扱われたときにも、フックをチェーンから外れ止めする外れ止め具が破損しにくい足場用吊りチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明では、上記課題を解決するため、以下の構成の足場用吊りチェーンを提供する。
[構成1]
一連に連結された複数の環状のリンクからなるチェーンと、
前記チェーンの一端が連結されたフック基部と、前記リンクに引っ掛けられるフック先端部とを有し、前記フック基部と前記フック先端部の間には、上端が開口し、下端が閉じるリンク収容溝が形成され、前記フック先端部が前記リンクに引っ掛けられたときにそのリンクが前記リンク収容溝に収容されるフックと、
前記リンク収容溝から前記リンクが外れないように前記リンク収容溝の上端の開口を閉じる外れ止め具とを備える足場用吊りチェーンにおいて、
前記外れ止め具がゴムまたはエラストマで形成されていることを特徴とする足場用吊りチェーン。
【0011】
この構成を採用すると、外れ止め具がゴムまたはエラストマで形成されているので、外れ止め具に外力が加わったときに、外れ止め具が弾性変形するだけであり、塑性変形しない。そのため、足場用吊りチェーンが荒く扱われ、他のチェーンにぶつかる等して外れ止め具に衝撃が加わったときにも、外れ止め具が破損するのを防止することができる。
【0012】
[構成2]
前記外れ止め具は、前記フック先端部の前記リンク収容溝の側とは反対側の縁と、前記フック基部の前記リンク収容溝の側とは反対側の縁との間に弾性的に伸長した状態で巻き掛けられる環状部材であり、
前記フック基部の前記リンク収容溝の側とは反対側の縁に、前記外れ止め具を保持する保持部が設けられている構成1に記載の足場用吊りチェーン。
【0013】
この構成を採用すると、外れ止め具が、フック先端部とフック基部との間に弾性的に伸長して巻き掛けられる環状部材なので、外れ止め具の交換が容易である。そのため、予備の外れ止め具を準備しておくことで、現場で外れ止め具が破損した際にも、その外れ止め具を新品の外れ止め具に交換してそのまま継続して足場用吊りチェーンを使用することができる。また、外れ止め具をフック先端部から外したときに、外れ止め具のフック基部に掛けられた部分が保持部で保持されるので、その後、再び外れ止め具をフック先端部に掛ける作業がしやすい。
【0014】
[構成3]
前記外れ止め具の前記フック先端部に掛けられる部分に、前記フック基部から遠ざかる向きに延びるつまみ部が設けられている構成2に記載の足場用吊りチェーン。
【0015】
この構成を採用すると、作業者がつまみ部を手でつまんでフック基部から遠ざかる向きに引っ張ることで、外れ止め具を弾性的に伸長させることができ、フック先端部に外れ止め具を引っ掛けたり、フック先端部から外れ止め具を外したりする作業がしやすくなる。
【0016】
[構成4]
前記フックは、鋼板で形成され、
前記外れ止め具は、弾性変形していない自然状態のときに前記フックの板厚方向に対して直角な方向に細長い内周形状を有する構成3に記載の足場用吊りチェーン。
【0017】
この構成を採用すると、外れ止め具が弾性変形していない自然状態のときに細長い内周形状を有するので、フック先端部から外れ止め具を外したときに、その外れ止め具がフック基部の周囲を回るようにずれ動くのを防止することができ、つまみ部の位置を安定させることが可能となる。
【0018】
[構成5]
前記外れ止め具は、弾性変形していない自然状態のときに、前記外れ止め具の内周の前記フック先端部の側の端部の内幅が、前記外れ止め具の内周の前記フック基部の側の端部の内幅よりも広くなるように形成されている構成4に記載の足場用吊りチェーン。
【0019】
この構成を採用すると、外れ止め具の内周のフック先端部の側の端部の内幅が広いので、外れ止め具をフック先端部に掛ける作業がしやすくなる。
【0020】
[構成6]
前記フック先端部の前記リンク収容溝の側とは反対側の縁に、前記外れ止め具の上側への移動を規制する係止突起が形成されている構成2から5のいずれかに記載の足場用吊りチェーン。
【0021】
この構成を採用すると、フック先端部に形成された係止突起が、外れ止め具の上側への移動を規制するので、外れ止め具をフック先端部に掛けた後、その外れ止め具に何らかの外力が作用したときにも外れ止め具がフック先端部から外れるのを効果的に防止することが可能となる。
【0022】
[構成7]
前記保持部は、前記フック基部の前記リンク収容溝の側とは反対側の縁から前記フック基部の内部に入り込むように形成された切り欠きである構成2から5のいずれかに記載の足場用吊りチェーン。
【0023】
この構成を採用すると、プレス加工等で容易に保持部を形成することができるので、低コストである。
【0024】
[構成8]
前記保持部は、前記外れ止め具が弾性変形していない自然状態のときに前記外れ止め具の通過を規制し、前記外れ止め具をその断面形状が小さくなるように弾性変形させることで前記外れ止め具の通過を許容する狭小部を有する構成7に記載の足場用吊りチェーン。
【0025】
この構成を採用すると、保持部に狭小部が設けられているので、外れ止め具の断面形状が小さくなるように外れ止め具を弾性変形させなければ、外れ止め具が保持部から抜け出ることがなく、外れ止め具を保持部に確実に保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
この発明の足場用吊りチェーンは、外れ止め具がゴムまたはエラストマで形成されているので、外れ止め具に外力が加わったときに、外れ止め具が弾性変形するだけであり、塑性変形しない。そのため、足場用吊りチェーンが荒く扱われ、他のチェーンにぶつかる等して外れ止め具に衝撃が加わったときにも、外れ止め具が破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】この発明の第1実施形態の足場用吊りチェーンを示す図
【
図2】
図1の足場用吊りチェーンのフックのみを示す斜視図
【
図3】
図1の足場用吊りチェーンの外れ止め具のみを示す斜視図
【
図4】
図1のチェーンの一端のフック近傍を拡大して示す部分断面図
【
図6】
図4に示す外れ止め具をフック先端部から外した状態を示す外れ止め具の近傍の部分断面図
【
図8】
図6に示す外れ止め具のつまみ部をフック基部から遠ざかる向きに引っ張って弾性変形させ、外れ止め具をフック先端部に掛ける状態を示す図
【
図9】
図1に示す足場用吊りチェーンの使用状態の一例を示す図
【
図11】
図7に示す外れ止め具の他の変形例を示す図
【
図12】この発明の第2実施形態を
図2に対応して示す図
【
図13】この発明の第2実施形態を
図3に対応して示す図
【
図14】この発明の第2実施形態を
図4に対応して示す図
【
図16】この発明の第3実施形態を
図2に対応して示す図
【
図17】この発明の第3実施形態を
図3に対応して示す図
【
図18】この発明の第3実施形態を
図4に対応して示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に、この発明の第1実施形態の足場用吊りチェーンを示す。この足場用吊りチェーンは、一連に連結された複数のリンク1からなるチェーン2と、チェーン2の両端に設けられたフック3、各フック3に装着した外れ止め具4とを有する。
【0029】
チェーン2を構成する各リンク1は、鋼製の線材をC字状に曲げてその両端を溶接して形成した環状部材である。リンク1を構成する線材の太さは5mm以上7mm以下の範囲に設定されている。
【0030】
チェーン2の一端に設けられたフック3および外れ止め具4と、チェーン2の他端に設けられたフック3および外れ止め具4は同一構成である。そのため、以下、チェーン2の一端に設けられたフック3および外れ止め具4を説明し、チェーン2の他端に設けられたフック3および外れ止め具4については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
図2に示すように、フック3は平らな鋼板で形成されている。フック3を構成する鋼板の板厚は4.0mm以上6.0mm以下の範囲に設定されている。
【0032】
図4に示すように、フック3は、チェーン2の一端のリンク1bが連結されたフック基部5と、チェーン2の中間部分のリンク1a(
図9参照)に引っ掛けられるフック先端部6とを有する。フック基部5とフック先端部6の間には、上端が開口し、下端が閉じるリンク収容溝7が形成されている。リンク収容溝7は、
図9に示すように、フック先端部6をチェーン2の中間部分のリンク1aに引っ掛けたときにそのリンク1aを収容するU字状の切り欠き溝である。
【0033】
図4に示すように、フック基部5とフック先端部6は、リンク収容溝7を間に挟んで対向して配置されている。フック基部5は、チェーン2の一端のリンク1bが連結される位置からリンク収容溝7の下端に対応する位置まで下方に延びる部分であり、フック先端部6は、リンク収容溝7の下端に対応する位置で折り返して上方に延びる部分である。フック基部5には、チェーン2の一端のリンク1bが挿通して取り付けられるリンク取り付け孔8が形成されている。リンク取り付け孔8は、フック基部5を板厚方向に貫通する円形の貫通孔である。
【0034】
図3に示すように、外れ止め具4は、ゴムまたはエラストマで形成された環状部材である。外れ止め具4を構成するゴムまたはエラストマとしては、高い耐候性をもつものを採用すると好ましく、そのようなものとして、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ等を採用することができる。
【0035】
図4に示すように、外れ止め具4は、フック先端部6のリンク収容溝7の側とは反対側(図では左側)の縁と、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁との間に弾性的に伸長した状態で巻き掛けられる環状部9と、環状部9に一体に形成されたつまみ部10とを有する。環状部9は、フック先端部6とフック基部5の間に巻き掛けられたときに、リンク収容溝7の上端の開口を閉じることでリンク収容溝7からリンク1aが外れるのを防止する。
図5に示すように、つまみ部10は、環状部9の外れ止め具4のフック先端部6に掛けられる部分から、フック基部5から遠ざかる向き(図では左向き)に延びて形成されている。
【0036】
図3に示すように、つまみ部10は、上下方向を厚さ方向とするシート状に形成され、環状部9も、つまみ部10と一体のシート状に形成されている。この外れ止め具4は、ゴムまたはエラストマからなるシート素材を打抜き加工して形成することができる。
【0037】
図6に示すように、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁に、外れ止め具4を保持する保持部11が設けられている。保持部11は、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁からフック基部5の内部に入り込むように形成された切り欠きである。この実施形態では、保持部11は、外れ止め具4のフック基部5に掛けられる部分を間に上下に対向する一対の対向面と、その一対の対向面をつなぐ底面とを有するU字状の切り欠きである。
【0038】
図7に示すように、外れ止め具4は、弾性変形していない自然状態のときにフック3の板厚方向に対して直角な方向(図では左右方向)に細長い内周形状を有する。ここで、外れ止め具4の細長い内周形状は、外れ止め具4の内周のフック先端部6の側(図では左側)の端部4aの内幅が、外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bの内幅よりも広くなるように、フック基部5の側からフック先端部6の側に向かって幅が次第に広くなるテーパ状になっている。
【0039】
図4に示すように、フック先端部6のリンク収容溝7の側とは反対側(図では左側)の縁には、外れ止め具4の上側への移動を規制する係止突起15が形成されている。
【0040】
この足場用吊りチェーンの使用の一例を説明する。
図9に示すように、梁などの構造物Bにチェーン2を巻き掛け、チェーン2の上端のフック3をチェーン2の中間部分のリンク1aに引っ掛けることで、チェーン2を構造物Bから垂れ下がった状態とし、その後、チェーン2の下端のフック3を、チェーン2の中間部分のリンク1aに引っ掛けることでループLを形成し、そのループLで足場Sを支持する。ここで、フック3をチェーン2の中間部分のリンク1aに引っ掛けた後、
図8に示すように、外れ止め具4のつまみ部10をフック基部5から遠ざかる向きに引っ張り、外れ止め具4の環状部9をフック先端部6に掛ける。これにより、
図4に示すように、リンク収容溝7の上端の開口を外れ止め具4で閉じ、フック3をチェーン2から外れ止めすることが可能となる。ここではいわゆる1本吊りで足場用吊りチェーンを使用する例を説明したが、いわゆるループ吊りで使用する場合も同様である。
【0041】
この足場用吊りチェーンは、
図3に示すように、外れ止め具4がゴムまたはエラストマで形成されているので、外れ止め具4に外力が加わったときに、外れ止め具4が弾性変形するだけであり、塑性変形しない。そのため、足場用吊りチェーンが現場で荒く扱われ、他のチェーンにぶつかる等して外れ止め具4に衝撃が加わったときにも、外れ止め具4が破損するのを防止することができる。
【0042】
また、この足場用吊りチェーンは、
図4、
図5に示すように、外れ止め具4が、フック先端部6とフック基部5との間に弾性的に伸長して巻き掛けられる環状部材なので、外れ止め具4の交換が容易である。そのため、予備の外れ止め具4を準備しておくことで、現場で外れ止め具4が破損した際にも、その外れ止め具4を新品の外れ止め具4に交換してそのまま継続して足場用吊りチェーンを使用することができる。
【0043】
また、
図6に示すように、外れ止め具4をフック先端部6から外したときに、外れ止め具4のフック基部5に掛けられた部分が保持部11で保持されるので、その後、再び外れ止め具4をフック先端部6に掛ける作業がしやすい。
【0044】
また、この足場用吊りチェーンは、
図5に示すように、外れ止め具4のフック先端部6に掛けられる部分に、フック基部5から遠ざかる向きに延びるつまみ部10が設けられているので、
図8に示すように、作業者がつまみ部10を手でつまんでフック基部5から遠ざかる向きに引っ張ることで、外れ止め具4を弾性的に伸長させることができ、フック先端部6に外れ止め具4を引っ掛けたり、フック先端部6から外れ止め具4を外したりする作業がしやすい。
【0045】
また、この足場用吊りチェーンは、
図7に示すように、外れ止め具4をフック先端部6から外して自然状態に弾性復元したときに、外れ止め具4がフック3の板厚方向に対して直角な方向に細長い内周形状を有するので、外れ止め具4がフック基部5の周囲を回るようにずれ動くのを防止することができ、つまみ部10の位置が安定している。そのため、
図8に示すように、外れ止め具4を再びフック先端部6に掛けるときに、つまみ部10をつまむ操作がしやすい。
【0046】
また、この足場用吊りチェーンは、
図7に示すように、外れ止め具4をフック先端部6から外して自然状態に弾性復元したときに、外れ止め具4の内周のフック先端部6の側(図では左側)の端部4aの内幅が、外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bの内幅よりも広いので、
図8に示すように、外れ止め具4をフック先端部6に掛ける作業がしやすい。
【0047】
また、この足場用吊りチェーンは、
図4に示すように、フック先端部6のリンク収容溝7の側とは反対側(図では左側)の縁に、外れ止め具4の上側への移動を規制する係止突起15が形成されているので、外れ止め具4をフック先端部6に掛けた後、その外れ止め具4に何らかの外力が作用したときにも外れ止め具4がフック先端部6から外れるのを効果的に防止することができる。
【0048】
また、この足場用吊りチェーンは、
図2に示すように、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁からフック基部5の内部に入り込むように形成された切り欠きを保持部11としているので、プレス加工等で容易に保持部11を形成することができ、低コストである。
【0049】
また、この足場用吊りチェーンは、
図3に示すように、外れ止め具4が、金属ではなく、ゴムまたはエラストマで形成されているので、
図4に示すように、フック3に取り付けたときに、金属製の外れ止め具4を採用する場合よりも外れ止め具4の視認性に優れ、外れ止め具4がフック先端部6に掛けられているか否かを目視で確認しやすい。
【0050】
図10に、外れ止め具4の変形例を示す。
図10に示す外れ止め具4は、弾性変形していない自然状態のときにフック3(
図7参照)の板厚方向に対して直角な方向(図では左右方向)に細長い内周形状を有する。
図10に示す外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bは、内幅が一定の平行形状とされている。また、
図10に示す外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bの内幅は、
図7に示すフック3を構成する鋼板の板厚よりも小さく設定され、外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bでフック3を弾性的に挟持可能となっている。一方、
図10に示す外れ止め具4の内周のフック先端部6の側(図では左側)の端部4aの内幅は、外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bの内幅よりも広く、
図7に示すフック3を構成する鋼板の板厚よりも大きく設定されている。外れ止め具4の内周のフック先端部6の側(図では左側)の端部4aと、外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bとの間には、フック基部5の側(図では右側)からフック先端部6の側(図では左側)に向かって内幅が次第に広くなる中間部4cが形成されている。この変形例の外れ止め具4を使用した場合も、
図7に示す外れ止め具4を使用した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
図11に、外れ止め具4の他の変形例を示す。
図11に示す外れ止め具4も、弾性変形していない自然状態のときにフック3(
図7参照)の板厚方向に対して直角な方向(図では左右方向)に細長い内周形状を有する。また、
図11に示す外れ止め具4の内周のフック先端部6の側(図では左側)の端部4aの内幅は、外れ止め具4の内周のフック基部5の側(図では右側)の端部4bの内幅よりも広い。また、外れ止め具4の内周には、弾性変形していない自然状態でリンク収容溝7と対応する位置に内向きの突起4dが形成されている。外れ止め具4の突起4dの部分における内幅(つまり突起4dの先端同士の間隔)は、
図7に示すフック3を構成する鋼板の板厚よりも小さく設定されている。この変形例の外れ止め具4を使用した場合も、
図7に示す外れ止め具4を使用した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
図12~
図15に、この発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、第1実施形態と比べて保持部11の構成のみが異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図12に示すように、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁に、外れ止め具4(
図13参照)を保持する保持部11が設けられている。保持部11は、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁からフック基部5の内部に入り込むように形成された切り欠きである。
図14に示すように、保持部11は、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁に開口する第1の部分12と、第1の部分12から上方に延びる第2の部分13とからなるL字状に形成されている。
【0054】
保持部11には、狭小部14が設けられている。狭小部14は、外れ止め具4が弾性変形していない自然状態のときに、外れ止め具4の断面形状よりも幅狭な通路を構成することで外れ止め具4の通過を規制し、外れ止め具4が保持部11から抜け出るのを防止する。狭小部14は、外れ止め具4をその断面形状が小さくなるように弾性変形させることで、外れ止め具4の通過を許容する幅寸法を有する。
【0055】
この第2実施形態の足場用吊りチェーンも、第1実施形態と同様、
図13に示すように、外れ止め具4がゴムまたはエラストマで形成されているので、外れ止め具4に外力が加わったときに、外れ止め具4が弾性変形するだけであり、塑性変形しない。そのため、足場用吊りチェーンが現場で荒く扱われ、他のチェーンにぶつかる等して外れ止め具4に衝撃が加わったときにも、外れ止め具4が破損するのを防止することができる。
【0056】
また、この足場用吊りチェーンは、
図14、
図15に示すように、外れ止め具4が、フック先端部6とフック基部5との間に弾性的に伸長して巻き掛けられる環状部材なので、外れ止め具4の交換が容易である。そのため、予備の外れ止め具4を準備しておくことで、現場で外れ止め具4が破損した際にも、その外れ止め具4を新品の外れ止め具4に交換してそのまま継続して足場用吊りチェーンを使用することができる。
【0057】
また、外れ止め具4をフック先端部6から外したときに、外れ止め具4のフック基部5に掛けられた部分が保持部11で保持されるので、その後、再び外れ止め具4をフック先端部6に掛ける作業がしやすい。
【0058】
また、この足場用吊りチェーンは、
図14に示すように、保持部11に狭小部14を設けているので、外れ止め具4の断面形状が小さくなるように外れ止め具4を弾性変形させなければ、外れ止め具4が保持部11から抜け出ることがない。そのため、外れ止め具4をフック先端部6から外して自然状態に弾性復元したときに、外れ止め具4を保持部11に確実に保持することが可能である。それ以外の作用効果も第1実施形態と同様である。
【0059】
図16~
図19に、この発明の第3実施形態を示す。第3実施形態は、第1実施形態と比べて、外れ止め具4および保持部11の構成のみが異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。そのため、第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図17、
図19に示すように、外れ止め具4の環状部9は、フック基部5の外周に沿う筒状に形成され、つまみ部10は、フック3の板厚方向と平行な方向を厚さ方向とするシート状に形成されている。この外れ止め具4は、ゴムまたはエラストマからなる帯状のシート素材を筒状に曲げ、その両端部を合掌貼りすることで形成することができる。また、ゴムまたはエラストマの圧入成形または型抜きで形成してもよい。
【0061】
図16、
図18に示すように、保持部11は、この実施形態では、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁からフック基部5の内部に入り込むように形成された切り欠きである。切り欠きは、フック基部5のリンク収容溝7の側とは反対側(図では右側)の縁に開口する第1の部分16と、第1の部分16から上下に延びる第2の部分17とからなるT字状に形成されている。第1の部分16の上下方向の幅は、外れ止め具4の上下方向の幅よりも小さく、第2の部分17の上下方向の幅は、外れ止め具4の上下方向の幅よりも大きい。
【0062】
ここで、第1の部分16は、外れ止め具4が弾性変形していない自然状態のときに外れ止め具4の通過を規制し、外れ止め具4をその断面形状が小さくなるように弾性変形させることで外れ止め具4の通過を許容する狭小部を構成している。
【0063】
この第3実施形態の足場用吊りチェーンも、第1実施形態と同様、
図17に示すように、外れ止め具4がゴムまたはエラストマで形成されているので、外れ止め具4に外力が加わったときに、外れ止め具4が弾性変形するだけであり、塑性変形しない。そのため、足場用吊りチェーンが現場で荒く扱われ、他のチェーンにぶつかる等して外れ止め具4に衝撃が加わったときにも、外れ止め具4が破損するのを防止することができる。
【0064】
また、この足場用吊りチェーンは、
図18、
図19に示すように、外れ止め具4が、フック先端部6とフック基部5との間に弾性的に伸長して巻き掛けられる環状部材なので、外れ止め具4の交換が容易である。そのため、予備の外れ止め具4を準備しておくことで、現場で外れ止め具4が破損した際にも、その外れ止め具4を新品の外れ止め具4に交換してそのまま継続して足場用吊りチェーンを使用することができる。
【0065】
また、外れ止め具4をフック先端部6から外したときに、外れ止め具4のフック基部5に掛けられた部分が保持部11で保持されるので、その後、再び外れ止め具4をフック先端部6に掛ける作業がしやすい。
【0066】
また、この足場用吊りチェーンは、
図18に示すように、保持部11に第1の部分16(狭小部)が設けられているので、外れ止め具4の断面形状が小さくなるように外れ止め具4を弾性変形させなければ、外れ止め具4が保持部11から抜け出ることがない。そのため、外れ止め具4をフック先端部6から外して自然状態に弾性復元したときに、外れ止め具4を保持部11に確実に保持することが可能である。それ以外の作用効果も第1実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0067】
1、1a リンク
2 チェーン
3 フック
4 外れ止め具
4a 外れ止め具の内周のフック先端部の側の端部
4b 外れ止め具の内周のフック基部の側の端部
5 フック基部
6 フック先端部
7 リンク収容溝
10 つまみ部
11 保持部
14 狭小部
15 係止突起
16 第1の部分(狭小部)