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特開2024-145981土嚢とその製造方法並びに土嚢構造体とその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145981
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】土嚢とその製造方法並びに土嚢構造体とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20241004BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E02B3/04 301
E02D17/20 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058626
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501047173
【氏名又は名称】株式会社ライテク
(71)【出願人】
【識別番号】508112852
【氏名又は名称】株式会社トーエス
(71)【出願人】
【識別番号】596068914
【氏名又は名称】コダマ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 正和
(72)【発明者】
【氏名】山口 茂樹
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
【Fターム(参考)】
2D044DC00
2D118BA01
2D118BA07
2D118CA07
2D118FA06
2D118GA41
2D118GA42
2D118GA45
(57)【要約】
【課題】隣り合う土嚢同士の隙間を小さくすることができると共に、強度的に優れた土嚢を提供する。
【解決手段】、四角筒形の胴部4を有する外袋体2と、外袋体2内に入れられ、内部に粒状物が入った内袋体3と、外袋体2の角部12と内袋体3との間に設けられ、固化性充填材41を充填する角部側空間14とを備えるから、外袋体2の角部12の角部側空間14に、固化性充填材41を充填することにより、隣り合う土嚢1同士の隙間を小さくすることができると共に、固化した固化性充填材41によって土嚢1の強度が向上する。また、角部側空間14には、外袋体2の胴部4と内袋体3の胴部21の間にスペーサ43を設けることにより、角部12をより確実に保持することができると共に、角部側空間14を確保することができる。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角筒形の胴部を有する外袋体と、
前記外袋体内に入れられ、内部に粒状物が入った内袋体と、
前記外袋体の角部と前記内袋体との間に設けられ、固化性充填材を充填する充填空間とを備えることを特徴とする土嚢。
【請求項2】
前記充填空間に充填した前記固化性充填材が固化した充填材固化部を備えることを特徴とする請求項1記載の土嚢。
【請求項3】
前記外袋体は、前記胴部の四隅角部の内側に前記角部の両側の側面部に跨る隔壁が各々取り付けられ、前記隔壁と前記角部の両側の側面部に囲まれた前記充填空間を備えることを特徴する請求項2記載の土嚢。
【請求項4】
前記充填空間には、前記外袋体の胴部と前記内袋体の胴部の間にスペーサを設けたことを特徴とする請求項3記載の土嚢。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の土嚢の製造方法において、前記内袋体に前記粒状物を入れた後、前記外袋体内に前記内袋体を入れ、前記充填空間に前記固化性充填材を充填することを特徴とする土嚢の製造方法。
【請求項6】
請求項2記載の土嚢を用い、複数の前記土嚢を並べたことを特徴とする土嚢構造体。
【請求項7】
請求項6記載の土嚢構造体の施工方法において、複数の前記土嚢を並べた後、前記充填空間に前記固化性充填材を充填することを特徴とする土嚢構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土嚢とその製造方法並びに土嚢構造体とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、複数の土嚢が並べて積み上げ施工された積み上げ土嚢構造体であって、多数の土嚢を列設した土嚢群が多列に集まってなり、下土嚢群とその上に配設された上土嚢群とにおいて、下土嚢群を構成する各土嚢と上土嚢群を構成する各土嚢とが結束ベルトにより上下交互に水平方向に結束された土嚢構造体(例えば特許文献1)がある。
【0003】
前記土嚢構造体では、複数の土嚢を連結して一体化することにより全体として強度を高めているが、土嚢の袋体の中に、小石、砂利等の中詰め材を充填した構造であるから、土嚢が露出している場合、個々の土嚢に衝撃が加わると、袋体が破けるなどの損傷を受け易かった。また、土嚢用の袋体が円筒形であるため、土嚢を積上げると、並べた土嚢の間に隙間が発生し、強度を確保するには前記隙間に充填材などを充填する必要があった。
【0004】
これに対して、四角筒形の胴部の四隅角部の内側に角部の両側の側面に跨る仕切り片が各々取り付けられたコンテナバッグに中詰材を詰め入れて形成された角型土嚢を、地盤上に一列又は複数列に敷き詰め、その上に前記角型土嚢を敷き詰めて複数段に積み重ねて構成した補強土壁(例えば特許文献2)がある。
【0005】
前記角型土嚢では、コンテナバッグに中詰材が充填されたときに、胴部周側面に中詰材の外向きの圧力がかかっても、角部両側の側面が外側に拡がることはなく、角部は略直角に保持されて胴部周側面が外方へ膨らむように変形することが抑制され、さらに、仕切り片で仕切られた角部内側の平面視略直角三角形の空間に内容物が充填されることでコンテナバッグは角型に保持される。
【0006】
このため前記角型土嚢を用いた土嚢構造体では、土嚢間における隙間の発生が抑えられ、安定性に優れたものになるが、単に積んだだけでは全体として強度に劣る面がある。
【0007】
また、豪雨等で河川護岸等が壊れた現場において、土嚢を多数積層して土留めとし、背面を埋め戻して護岸等を応急復旧する際に仮設として土嚢が用いられるが、土嚢の表面を構成する袋体は衝撃に弱いため、表面の保護に布製型枠(例えば特許文献3)が用いられている場合がある。
【0008】
前記布製型枠を、前記土嚢構造体や前記補強土壁に用いる場合、施工においては、土嚢を積み上げた後、現地で測量を行い、展開図を作成し、その後、縫製工程に置いて布製型枠を展開図どうりに加工するため、布製型枠を現地に納品するまでに2週間程度掛かり、さらに、布製型枠を土嚢の前面に展張し、モルタルを注入する作業に3~4日程度と仮設又は本設が完了するまでに工期が掛かるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-75463号公報
【特許文献2】特開2015-151669号公報
【特許文献3】特許第6539003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、隣り合う土嚢同士の隙間を小さくすることができると共に、強度的に優れた土嚢とその製造方法を提供することを目的し、また、工期の短縮が可能な土嚢構造体とその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、四角筒形の胴部を有する外袋体と、前記外袋体内に入れられ、内部に粒状物が入った内袋体と、前記外袋体の角部と前記内袋体との間に設けられ、固化性充填材を充填する充填空間とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、前記充填空間に充填した前記固化性充填材が固化した充填材固化部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、前記外袋体は、前記胴部の四隅角部の内側に前記角部の両側の側面部に跨る隔壁が各々取り付けられ、前記隔壁と前記角部の両側の側面部に囲まれた前記充填空間を備えることを特徴する。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、前記充填空間には、前記外袋体の胴部と前記内袋体の胴部の間にスペーサを設けたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載の土嚢の製造方法において、前記内袋体に前記粒状物を入れた後、前記外袋体内に前記内袋体を入れ、前記充填空間に前記固化性充填材を充填することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、請求項2記載の土嚢を用い、複数の前記土嚢を並べたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、請求項6記載の土嚢構造体の施工方法において、複数の前記土嚢を並べた後、前記充填空間に前記固化性充填材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の構成によれば、外袋体の角部の充填空間に、固化性充填材を充填することにより、隣り合う土嚢同士の隙間を小さくすることができると共に、固化した充填材によって強度が向上する。
【0019】
請求項2の構成によれば、充填材固化部により土嚢の強度が向上する。
【0020】
請求項3の構成によれば、内袋体から外袋体の側面部と隔壁に外向きの圧力がかかっても、隔壁により角部両側の側面部が外側に拡がることはなく、角部が略直角に保持される。
【0021】
請求項4の構成によれば、角部が確実に保持され、充填空間を確保することができる。
【0022】
請求項5の構成によれば、外袋体に粒状物を直接入れる場合では、外袋体の内部において、充填空間が仕切られていたとしても、上部開口から粒状物を入れる際、充填空間内に粒状物が入り易いが、外袋体に粒状物を直接入れるのではなく、粒状物が入った内袋体を外袋体に入れるため、角部12の充填空間を確保することができる。
【0023】
請求項6の構成によれば、強度的に優れた土嚢を用いることにより、強度的に優れた土嚢構造体が得られる。
【0024】
請求項7の構成によれば、土嚢構造体を短い工期で構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1を示す土嚢構造体の断面図である。
図2】同上、外袋体の平面図である。
図3】同上、外袋体の背面図である。
図4】同上、外袋体の斜視図である。
図5】同上、内袋体の正面図である。
図6】同上、内袋体の平面図である。
図7】同上、内袋体の底面図である。
図8】同上、土嚢の斜視図である。
図9】同上、アンカーの取付状態を示す断面図である。
図10】同上、土嚢を斜め後方から見た斜視図である。
図11】同上、一部を断面にしたスペーサを取り付けた土嚢の平面図である。
図12】同上、土嚢の要部の縦断面図である。
図13】本発明の実施例2を示す土嚢構造体の説明斜視図である。
図14】同上、施工途中の土嚢構造体の説明斜視図である。
図15】本発明の実施例3を示す側面中央部用のスペーサを配置した外袋体の平面図である。
図16】本発明の実施例4を示し、図16(A)は角部側用のスペーサを配置した外袋体の平面図、図16(B)は角部側用のスペーサの平面図である。
図17】本発明の実施例5を示す側面中央部用のスペーサと角部側用のスペーサを配置した外袋体の平面図である。
図18】本発明の実施例4を示す土嚢構造体の側面図である。
図19】同上、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0027】
図1図12は本発明の実施例1を示す。同図に示すように、河川101の法面102に土嚢1を積んで土嚢構造体たる護岸工103を構築しており、法面102が崩れ、応急で復旧する例を示している。尚、土嚢構造体は、河川101の法面102以外でも、河川以外の法面の土留工などにも用いることができる。
【0028】
土嚢1は、外袋体2と、この外袋体2の内部に入れて設ける内袋体3とを備え、これら外袋体2と内袋体3は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成繊維を、シート状やネット状にしたものや、合成繊維シートの両面に塩ビ樹脂等を積層した可撓性を有するシート等で製作でき、色は、黒・ベージュ・白・緑・茶・グレー等が例示される。
【0029】
前記外袋体2は、上部が開口した四角筒状の胴部4と、この胴部4の下部を塞ぐ底部5とを有し、前記胴部4は、同一形状の4つの側面部6,6,6,6の隣り合う縦縁7,7を縦縫着部8により連結してなる。また、底部5の周縁が側面部6,6,6,6の下縁に横縫着部9により取り付けられ、胴部4の下部を底部5により塞ぎ、胴部4の上部は開口している。また、胴部4及び/又は底部5に通水性を備えたものを用いることにより、充填した固化性充填材41の水分の一部が外部に脱水されるため、固化性充填材41が比較的早く硬化し、固化性充填材41により土嚢1が衝撃・摩耗・突刺しに強いものとなる。
【0030】
前記外袋体2の内部には、隔壁11が設けられており、胴部4の四隅の角部12,12,12,12は、各々その内側に、角部12の上端から下端近傍に亘って縦長の前記隔壁11が、角部12を挟んで隣り合う側面部6,6の内面間に跨るように配置されて各々その両端縁部11F,11Fを側面部6,6の内面に縫着部13により取り付けられている。
【0031】
そして、前記隔壁11が取り付けられた位置の角部12の内側部分が角部12を挟む両側面部6,6と隔壁11とで平面視略直角三角形の角部側空間14に仕切られた形状に形成されている。このように隔壁11を設けることにより、内袋体3から側面中央部6Sと隔壁11に外向きの圧力がかかっても、角部12両側の側面角側部6K,6Kが外側に拡がることはなく、角部12は略直角に保持される。
【0032】
また、1枚の側面部6において隣り合う前記縫着部13,13の間が側面中央部6Sであり、この側面中央部6Sの幅がW1である。また、1枚の側面部6において縫着部13と角部12との間が側面角側部6Kであり、この側面角側部6Kの幅がWである。
【0033】
さらに、隔壁11の下縁11Sと前記底部5との間には、隙間15が形成され、この隙間15より固化性充填材41が周囲の隙間に流れ込むことが許容される。尚、隔壁11の上縁は、内袋体3の胴部21の上縁に位置するが、図4に示すように、隔壁11の上縁が、内袋体3の胴部21の上縁より下に位置するようにしてもよい。
【0034】
そして、4つの前記側面中央部6Sと4つの前記隔壁11により囲まれた部分が、内袋体3を収納する収納部16であり、図2に示すように、収納部16は略八角形形状をなす。また、収納部16の周長Lは、前記幅W1の4倍に隔壁11の幅の4倍を加えたものである。
【0035】
図5図7に示すように、前記内袋体3は、上部が開口した円筒状の胴部21と、この胴部21の下部を塞ぐ底部22とを有し、この底部22の周縁は胴部21の下縁に横縫着部23により取り付けられている。尚、胴部21は円筒状以外でも、楕円筒状などの角部12のない形状でもよい。
【0036】
また、胴部21の上部開口の内周縁に筒状の投入口24が縫着して取り付けている。さらに、投入口24の外面には、該投入口24を縛って塞ぐためのロープ材25が設けられている。尚、ロープ材25の基端25Kが縫着などにより投入口24に取り付けられ、ロープ材25の2つの先端は自由端である。
【0037】
胴部21の周囲に、紐状体たる吊りベルト26,27が縫着などにより取り付けられている。具体的には、帯状の前記吊りベルト26,27は、底部22の下面において交差して配置されたベルト底面部26T,27Tと、これらベルト底面部26T,27Tの両側から上方に胴部21の外面に沿って縦設したベルト側面部26S,26S,27S,27Sと、胴部21の上方で隣り合うベルト側面部26S,26S,27S,27Sの上端同士を連結した吊り部28,28とを有する。尚、ベルト側面部26S,26S,27S,27Sは、胴部21の上部側で円周方向に略90度離れた位置に取り付けられている。
【0038】
前記外袋体2には、前記隔壁11の幅方向中央内面の上部に、連結手段たる隔壁吊りテープ31が設けられ、この隔壁吊りテープ31は、1本のロープ材を折曲げ、折曲げ箇所を縫着部31Hにより隔壁11に取り付けると共に、前記ロープ材の両端部31T,31Tを上向きにして取り付けられている。そして、前記隔壁吊りテープ31によって吊りベルト26,27を縛ることにより、隔壁11の幅方向中央が吊りベルト26,27に連結される。
【0039】
4枚のうち1枚の側面部6の幅方向両側には、横方向の胴縛りテープ32の基端が連結されている。この例では、前記縦縫着部8により前記胴縛りテープ32の基端が連結され、両側の胴縛りテープ32の先端32Sを前記1枚の側面部6の中央側に向けることができる。尚、胴縛りテープ32はその基端側のみが胴部4に取り付けられているから、縛る前の状態では垂れ下がるが、図3などでは、説明のために横向きにして図示している。
【0040】
尚、側面部6の幅方向両側に、胴縛りテープ32が上下2本設けられ、上の胴縛りテープ32は、胴部4の高さ方向中央と上縁との間で、高さ方向中央寄りに設けられ、下の胴縛りテープ32は、胴部4の高さ方向中央と底部5との間で、高さ方向中央寄りに設けられている。
【0041】
また、各側面部6の幅方向中央で外面側上部に、頭部縛りテープ33の端部を縫着部33Hにより取り付けている。
【0042】
前記外袋体2の胴部4の角部12の上側には、本体ガードテープ34の両端を前記縦縫着部8により取り付けることによって輪部34Wを形成している。そして、胴部4の四隅の上部に設けた輪部34Wを、高さ固定したフックなどの支持部材(図示せず)に掛装することにより、胴部4の上部開口を開いた状態に保持することができ、この状態で外袋体2の内部に内袋体3を挿入することができる。尚、テープ31,32,33,34には紐状体が用いられている。
【0043】
また、胴部4の角部12の前記角部側空間14には、モルタル、コンクリート、軽量モルタル、発泡モルタル、セメント改良材等の固化性充填材41を充填することができる。尚、固化性充填材41は充填後に経時的に固化する充填材である。
【0044】
前記内袋体3内には、土砂などの粒状物42が充填され、土砂には現地土を用いることができる。また、固化性充填材41は、固化後、内袋体用充填物たる粒状物42に比べて比重の大きなものが好ましく、充填材固化部51の比重が粒状物42より大きければ、土嚢1全体に粒状物42を入れた場合より、土嚢1の重量を大きくすることができる。
【0045】
一例として、外袋体2において、側面中央部6Sの幅W1が350mm、隔壁11の幅が565mm、側面角側部6Kの幅が400mmの場合、前記周長Lは、3660mmであり、その外袋体2に収納する内袋体3の胴部21の直径は1100mm、胴部21の周長は略3456mmであり、前記周長Lに比べて胴部21の周長は短い。また、対向する隔壁11,11の間隔は、胴部21の直径より小さく、胴部21の直径は対向する側面部6,6の間隔より小さい。そして、この例では胴部21の周長の略1.06(3660/3456)倍が、前記周長Lである。
【0046】
他の例として、外袋体2において、側面中央部6Sの幅W1が550mm、隔壁11の幅が565mm、側面角側部6Kの幅が400mmの場合、前記収納部16の周長Lは、4460mmであり、その外袋体2に入れる内袋体3の胴部21の直径は1300mm、胴部21の周長は略4084mmであり、前記周長Lに比べて胴部21の周長は短い。そして、この例では胴部21の周長の略1.09(4460/4084)倍が、前記周長Lである。
【0047】
これらのように外袋体2の収納部16の周長Lより内袋体3の胴部21の周長を短くすることにより、粒状物42を充填した内袋体3を、外袋体2の収納部16に入れた状態で、内袋体3と側面中央部6Sとの間に中央側充填空間17(図2)を設けることができる。そして、前記角部側空間14に固化性充填材41を充填すると、下部の前記隙間15を通って固化性充填材41が中央側充填空間17に充填される。尚、図8及び図10などにおいては、周長Lと胴部21の周長が略等しい場合を図示している。
【0048】
次に、前記外袋体2と内袋体3とを備えた土嚢1による護岸工103の施工方法の一例を説明する。
【0049】
土嚢1を積上げる前に、内袋体3に粒状物42を充填し、投入口24をロープ材(図示せず)などにより絞って塞ぐ。この後、2本の吊り部28,28を用いて内袋体3を吊上げ、空の外袋体2の内部に内袋体3を入れる。そして、内袋体固定工程として、隔壁11に設けた隔壁吊りテープ31を吊り部28に縛り付け、内袋体3に外袋体2を固定し、さらに、対向する頭部縛りテープ33,33の先端側を内袋体3の上部において結んで連結する。
【0050】
内袋体3に粒状物42を充填すると、粒状物42の自重により内袋体3の胴部21は、上から下に向かって拡大するように変形し(図12)、底部22の近くで最大直径となる膨出部分21Bが形成され、この際、隔壁11の下縁11Sと底部5の間に隙間15が形成されているため、隔壁11による規制を受けずに、膨出部分21Bが広がり易くなる。尚、図12では理解を容易にするため、隔壁11と胴部21との間に隙間を設けているが、実際は隔壁11と胴部21とは接している。また、隔壁11に胴部21が接することにより、対角線上に位置する隔壁11,11も、上から下に向かって間隔が広がる。
【0051】
また、護岸工103などで土嚢1の背面側を埋め戻す場合は、図10に示すように、両側の胴縛りテープ32,32の先端側を結んだ結び目32Mにより連結し、これにより背面側となる左右両側の角部12,12の側面角側部6K,6K,6K,6Kを、内袋体3の胴部21の背面側に沿わせるように折り畳むことができる。
【0052】
さらに、充填材41の充填作業時などに角部12が変形しないように、スペーサ43を用いることができ、例えば、図11に示すように、角部12と内袋体3の外面との間に角部用のスペーサ43を配置する。このスペーサ43は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成繊維や紙等の天然素材のもので、ネット状・板状・シート状のもので、保形性を有するものが用いられる。
【0053】
この例のスペーサ43は、縦方向に長い長方形形状の中空構造板等からなる平板状のものであって、スペーサ43の一方の縦縁43Tを角部12の内面に当て、スペーサ43の他方の縦縁43Tを隔壁11の外面の幅方向中央側に当てており、スペーサ43が胴部21の対角線上に配置されている。また、スペーサ43の下縁は前記底部5に載置され、スペーサ43の上縁43Uは、胴部4の上縁位置以下とすることができ、この例では、上縁43Uは胴部4の高さ方向中央側に位置する。
【0054】
このようにスペーサ43の一方の縦縁43Tが角部12の内面に当接する当接部であり、スペーサ43の他方の縦縁43Tが隔壁11の外面の幅方向中央側に当接する当接部であり、これら当接部により、角部12と隔壁11の外面の幅方向中央側との間隔を保持する。このようにスペーサ43は間隔を保持する間隔保持材である。
【0055】
したがって、角部側空間14に充填材41を充填し、充填材41の上面がスペーサ43の上縁43U以上になると、角部側空間14におけるスペーサ43の両側の充填材41の高さが同一になる。尚、スペーサ43は充填材41の中に埋設される。
【0056】
設置の際は、護岸工103の正面側左右に角部12,12が位置するように土嚢1を左右に並べ、土嚢1の背面側と法面102との隙間に裏込め材104を投入して埋戻しながら、土嚢1を重ね合わせる。また、法面102の勾配に合わせて、下の土嚢1に対して上の土嚢1が後側になるように重ね、図1では土嚢1の前後幅の略2分の1だけ上の土嚢1をずらして重ねている。このように護岸工103を構築すれば、固化性充填材41の充填前でも法面102を安定化して保護することができ、緊急に復旧が必要な仮設構造物としての機能を発揮することができる。
【0057】
この後、正面側左右の角部12,12内への固化性充填材41の充填には、足場を確保し、下段側から充填して上段迄充填し、この充填には、ポンプ車・ホッパー・シュートなどが用いられる。
【0058】
土嚢1を積み上げ、裏込めし、固化性充填材41がモルタルなどのセメント系充填材であれば、養生期間は1~2日程度で済み、仮設用の護岸工103を短期に構築することができる。
【0059】
また、護岸工103の施工の変形例として、前記内袋体固定工程の後、設置場所たる法面102の前に土嚢1を積み上げる前に、護岸工103の前面側の左右となる角部12,12内へ固化性充填材41を充填し、固化性充填材41を養生した後、土嚢1を積み上げることができる。
【0060】
この場合は、積み上げる前の地面105において、固化性充填材41の充填と養生を行うため、土嚢1の積み上げが完了するまでに時間を要するが、充填材41の充填作業を地面105において行うことができるため、その作業が容易になると共に、左右に隣り合う土嚢1,1を隙間なく積むことができる。即ち、地面105において予め土嚢1,1を左右に並べ、隣り合う土嚢1,1の角部12,12が隙間のない状態で、隣り合う角部側空間14,14に固化性充填材41を充填することにより、隣り合う角部12,12間の隙間を殆どなくすことができ、地面105において並べたと同様に、左右に土嚢1,1を並べることにより、隣り合う土嚢1,1を隙間なく積むことができる。
【0061】
このように地面105において、左右の土嚢1,1の隣り合う角部12,12の充填材固化部51,51に隙間がないように仮置きすれば、それら左右の土嚢1,1を設置場所である法面102に地面105と同様に左右に並べれば、左右に隣り合う土嚢1,1を隙間なく並べることができる。
【0062】
さらに、四隅の全ての角部12,12,12,12の角部側空間14に固化性充填材41を充填してもよい。この場合、法面102の前面に積み上げた後、後面側の左右の角部12,12に充填材41を充填してもよいが、地上で四隅の角部12,12,12,12の角部側空間14に固化性充填材41を充填することが好ましい。こうすれば4つの側面部6,6,6,6のいずれかを護岸工103の前面側に配置してもよく、施工が容易となる。
【0063】
尚、図12に示したように、内袋体3の胴部21は、上から下に向かって拡大する形状に変形すると共に、対角線上の隔壁11,11は、上から下に向かって間隔が広がる形状に変形し、この状態で角部側空間14に固化性充填材41を充填し、充填材固化部51を形成することにより、外袋体2に対して内袋体3が抜け止め状態となり、膨出部分21Bにより外袋体2の荷重の一部を支持するため、吊上げた際、隔壁吊りテープ31に内袋体3の全重量が加わることがない。
【0064】
隔壁11を設けた外袋体2に、粒状物42を詰めた内袋体3を入れても、隔壁11により角部12の両側の側面部6,6が外側に拡がることはなく、角部12は略直角に保持される。
【0065】
また、内袋体3の胴部21の周長さL1が前記外袋体2の収納部16の周長L以下の場合、内袋体3の胴部21が隔壁11の内面に当たった状態で、胴部21により粒状物42から隔壁11に加わる力を抑えることができるため、内袋体3を使用せずに隔壁11を設けた外袋体2のみの場合よりも角部12は略直角に保持することできる。
【0066】
また、土嚢1は内袋体3の周囲に固化性充填材41を充填して充填材固化部51を設けているので、固化性充填材41が硬化すると外袋体2と粒状物42を充填した内袋体3との一体性が強くなる。
【0067】
また、このようにして構築された護岸工103においては、隔壁11付きの外袋体2は、充填材固化部51により、前面の左右の形状が角型で隙間が少なく、充填材固化部51を設けることにより転石・流木等の衝突による外的破損要因に強く、流水による吸出しも受け難い。さらに、通常の耐候性大型土嚢よりも重量と堅牢性があるので、構造物として耐久性に優れたものとなる。
【0068】
護岸工103が仮設の場合、撤去に関しては、クレーンやバックホウ等により、土嚢1の吊り部28を使用して吊り上げるが、長期間経過している場合、吊り部28が劣化して強度が低下している虞があるので、長期間設置する場合は、専用の内袋体3を使用するか、角部側空間14に充填した充填材41が固化した充填材固化部51の上面に、鉄筋等でアンカー52を設置しておき、アンカー52を使用して吊り上げることも可能である。
【0069】
図9に示すように、アンカー52は、鉄筋等を逆U字状に形成した本体53と、この本体53の両端を外側に屈曲した埋込部54,54とを備え、これら埋込部54,54を充填材固化部51に埋設固定する。
【0070】
そして、撤去後の処分に関しては、充填材固化部51と、外袋体2及び内袋体3とが容易に分離できるので、充填材固化部51と粒状物42は再利用可能で、外袋体2及び内袋体3は産廃処分となる。
【0071】
このように外袋体2内に直接粒状物42を入れるのではなく、内袋体3を入れて使用し、角部側空間14にモルタル等の固化性充填材41を直接充填し、充填後も土嚢1全体を吊りベルト26,27を使用して吊ることができるという新規な構成を備える。
【0072】
このように本実施例では、請求項1に対応して、四角筒形の胴部4を有する外袋体2と、外袋体2内に入れられ、内部に粒状物42が入った内袋体3と、外袋体2の角部12と内袋体3との間に設けられ、固化性充填材41を充填する充填空間たる角部側空間14とを備えるから、外袋体2の角部12の角部側空間14に、固化性充填材41を充填することにより、隣り合う土嚢1,1同士の隙間を小さくすることができると共に、固化した充填材41によって強度が向上する。
【0073】
このように本実施例では、請求項2に対応して、充填空間たる角部側空間14に充填した固化性充填材41が固化した充填材固化部51を備えるから、充填材固化部51により土嚢1の強度が向上する。
【0074】
このように本実施例では、請求項3に対応して、外袋体2は、胴部4の四隅角部12の内側に角部12の両側の側面部6,6に跨る隔壁11が各々取り付けられ、隔壁11と角部12の両側の側面部6,6に囲まれた充填空間たる角部側空間14を備えるから、内袋体3から外袋体2の側面部6と隔壁11に外向きの圧力がかかっても、隔壁11により角部12両側の側面部6,6が外側に拡がることはなく、角部12が略直角に保持される。
【0075】
このように本実施例では、請求項4に対応して、充填空間たる角部側空間14には、外袋体2の胴部4と内袋体3の胴部21の間にスペーサ43を設けたから、角部12が確実に保持され、角部側空間14を確保することができる。
【0076】
このように本実施例では、請求項5に対応して、請求項1~4のいずれか1項に記載の土嚢1の製造方法において、内袋体3に粒状物42を入れた後、外袋体2内に内袋体3を入れ、充填空間たる角部側空間14に固化性充填材41を充填するから、外袋体2に粒状物42を直接入れる場合では、外袋体2の内部において、角部側空間14が仕切られていたとしても、上部開口から粒状物42を入れる際、角部側空間14内に粒状物42が入り易いが、外袋体2に粒状物42を直接入れるのではなく、粒状物42が入った内袋体3を外袋体2に入れるため、角部側空間14を確保することができる。
【0077】
このように本実施例では、請求項6に対応して、請求項2記載の土嚢1を用い、複数の土嚢1を並べたから、強度的に優れた土嚢1を用いることにより、強度的に優れた土嚢構造体たる護岸工103が得られる。
【0078】
このように本実施例では、請求項7に対応して、請求項6記載の土嚢構造物の施工方法において、複数の土嚢1を並べた後、充填空間たる角部側空間14に固化性充填材41を充填するから、土嚢構造体たる護岸工103を短い工期で構築することができる。
【0079】
以下、実施例上の効果として、胴部4及び/又は底部5に通水性を備えたものを用いることにより、充填した固化性充填材41の水分の一部が外部に脱水されるため、固化性充填材41が比較的早く固化し、充填材固化部51により衝撃・摩耗・突刺しに強いものとなる。
【0080】
また、外袋体2を内袋体3に連結する連結手段たる隔壁吊りテープ31を有するから、隔壁吊りテープ31によって吊りベルト26,27を縛ることにより、隔壁11の幅方向中央が吊りベルト26,27に連結されるから、外袋体2に吊りベルトを設ける必要が無くなる。
【0081】
外袋体2の収納部16の周長Lより内袋体3の胴部21の周長L1を短くすることにより、粒状物42を充填した内袋体3を、外袋体2の収納部16に入れた状態で、内袋体3と側面中央部6Sとの間に中央側充填空間17(図2)を設けることができる。尚、上述したように実験を行った胴部21の周長の略1.06倍又は略1.09が前記周長Lから、収納部16の周長Lを胴部21の周長の1.05倍以上~1.1倍以下とすることにより、中央側充填空間17(図2)を設けることができる。
【0082】
そして、角部側空間14に固化性充填材41を充填すると、下部の前記隙間15を通って固化性充填材41が中央側充填空間17に充填され、中央側充填空間17に充填材固化部が形成され、この充填材固化部は左右の充填材固化部51,51と一体的に連続する。このように隣り合う角部側空間14,14に固化性充填材41を充填すると、側面部6の内面に隣り合う角部12,12間で連続する中央充填材固化部が形成され、側面部6の強度が向上する。
【0083】
また、角部側空間14に固化性充填材41を充填するから、外袋体2と内袋体3との間に隙間ができない。さらに、4箇所の角部側空間14を備えるが、土壌構造体における使用条件により固化性充填材41を充填する角部側空間14の数を選択することができる。
【0084】
また、充填空間たる角部側空間14に固化性充填材41を充填した後に、複数の土嚢1,1・・・を左右方向に並べると共に積み上げるから、予め地面105において、左右の土嚢1,1の隣り合う角部12,12の充填材固化部51,51に隙間がないように仮組すれば、それら左右の土嚢1,1を設置場所である法面102に左右に並べれば、土嚢構造体たる護岸工103において左右に隣り合う土嚢1,1を隙間なく並べることができる。
【0085】
また、内袋体3を外袋体2内の隔壁11の内側に入れると、粒状物42の自重により内袋体3の下部が広がり、前記隙間15から角部側空間14に膨出する膨出部分21Bが形成され、上から下に向かって拡大する内袋体3の胴部21が充填材固化部51,51に抜け止め状態となり、外袋体2の荷重の一部を支持するから、隔壁吊りテープ31に加わる荷重を削減することができる。
【0086】
土嚢1の背面側を埋め戻す場合は、図10に示すように、両側の胴縛りテープ32,32の先端側を結んだ結び目32Mにより連結し、これにより背面側となる両側の角部12,12側を、内袋体3の胴部21の背面側に沿わせるように折り畳むことができ、背面側の側面部6が埋戻しの邪魔になることがない。
【0087】
また、スペーサ43は、一方の縦縁43Tを角部12の内面に当て、スペーサ43の他方の縦縁43Tを隔壁11の外面の幅方向中央側に当て、スペーサ43が胴部21の対角線上に配置したから、角部12を確実に保形することができる。さらに、角部側空間14に充填した充填材41が固化した充填材固化部51の上面に、鉄筋等でアンカー52を設置しておき、吊上げ手段たるアンカー52を使用して吊り上げることも可能となる。尚、アンカー52は、吊上げ用ロープ材などの吊り具のフック(図示せず)などが係脱可能な吊り具連結手段であり、そのフックをアンカー52に連結し、前記吊上げ用ロープ材を重機に連結し、重機により土嚢1を吊上げることができる。
【実施例0088】
図13及び図14は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図は、護岸工103等の土嚢1の積み重ねにおいて、少なくとも前面左右の角部12,12に充填材固化部51を設ける例において、土嚢1の位置による固化性充填材41の充填箇所を設定する例を示す。
【0089】
尚、固化性充填材41は、土嚢1を積み上げた後に行ったり、積み上げる前の地面105に置いて行ったりすることができる。また、実施例1と同様に、全ての段の土嚢1を積上げた後、固化性充填材41を充填したり、各段毎に充填したり、複数段毎に充填したり、左右に並べると共に積上げながら、複数の土嚢1に固化性充填材41を充填したりしてもよい。
【0090】
下段において土嚢1を左右に複数(4個)並べ、この下段の上の段である2段目に1個少ない3個の土嚢1を左右に並べ、再上段となる上段に下段より1個少ない2個の土嚢1,1を左右に並べている。また、上段と下段で、土嚢1を左右にずらして並べ、具体的には、下段の土嚢1に対して上段の土嚢1を土嚢1の左右寸法の半分だけ左右にずらして並べている。
【0091】
すべての段において、土嚢1の前側左右の角部12,12の角部側空間14に固化性充填材41を充填して充填材固化部51,51を設ける。下段の左端の土嚢1の後左側の角部12に充填材固化部51を設ける。また、下段の右端の土嚢1の後右側の角部12に充填材固化部51を設ける。尚、理解を容易にするため、充填材固化部51,51にハッチングを付している。
【0092】
また、中間の段である2段目の土嚢1も、1段目と同様に、下段の左端の土嚢1の後左側の角部12に充填材固化部51を設ける。また、下段の右端の土嚢1の後右側の角部12に充填材固化部51を設ける。
【0093】
上の土嚢1を重ねない最上段の土嚢1は、全ての角部12の角部側空間14に固化性充填材41を充填して四隅に充填材固化部51を設けても良い。
【0094】
尚、充填材固化部51を設けない角部12は、法面102との間の裏込め材104により潰れる。或いは、同縛りテープ32により角部12を内袋体3の胴部21に沿わせるようにしてもよい。
【0095】
隣り合う角部側空間14,14に固化性充填材41を充填すると、側面部6の内面に隣り合う角部12,12間で連続する中央充填材固化部が形成される。
【0096】
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0097】
また、この例のように、法面102の前面で、下段の土嚢1の上に上段の土嚢1を後側にずらして積む場合は、上段の土嚢1の下に隠れる角部側空間14には、充填材41を充填せずに施工することができる。また、充填材41を充填しない角部側空間14を構成する側面角側部6K,6Kは、胴縛りテープ32を用いずに、裏込め材104により潰すようにしてもよい。
【実施例0098】
図15は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例はスペーサの変形例を示す。
【0099】
同図に示すように、側面中央部6S用のスペーサ44は、側面中央部6Sに対応して該側面中央部6Sの内面に配置する中空構造板等の平板状のものであって、縦縁44T,44Tは、隣り合う縫着部13,13の位置に配置される。また、スペーサ44の下縁は前記底部5に載置され、スペーサ43の上縁44Uは、胴部4の上縁位置以下とすることができ、この例では、上縁53Uは胴部4の上縁に位置する。
【0100】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0101】
また、本実施例では、側面中央部6Sの内面に中空構造板等のスペーサ44を当てることにより、側面中央部6Sが内側に撓むことが防止され、収納部16の周長Lが内袋体3の胴部21の周長より長いことにより生じるスペーサ44と内袋体3の胴部21との間の中央側充填空間17を確保することができる。
【実施例0102】
図16は本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例はスペーサの変形例を示す。
【0103】
同図に示すように、角部12側のスペーサ45は、角部12とこの角部12の両側の側面中央部6S,6Sとに対応して、角部46と平板状の側板部47,47を有し、スペーサ45の下縁は前記底部5に載置され、スペーサ45の上縁45Uは、胴部4の上縁位置以下とすることができ、この例では、上縁45Uは胴部4の上縁に位置する。即ち、スペーサ45の高さは胴部4の高さと等しい。
【0104】
このようにスペーサ45の一方の縦縁43Tが角部12の内面に当接する当接部であり、スペーサ43の他方の縦縁43Tが隔壁11の外面の幅方向中央側に当接する当接部であり、これら当接部により、角部12と隔壁11の外面の幅方向中央側との間隔を保持する。このようにスペーサ43は間隔を保持する間隔保持材である。
【0105】
一例として、前記スペーサ45を中空構造板等から形成することができ、平板状の中空構造板等を折曲げ、この折曲げ部により前記角部46を形成すると共に、角部46の両側に前記側板部47,47を形成することができ、スペーサ45を角部側空間14の上部開口から該角部側空間14内に挿入し、角部46を角部12に合わせると共に、側板部47,47を側面角側部6Kの内面に沿わせて、側板部47,47の幅方向先端の縦縁45T,45Tを隔壁11と側面部6との連結箇所である縦縫着部8に位置させ、角部側空間14内にスペーサ45を配置することができる。
【0106】
このようにスペーサ45が角部12の内面に当接する当接部であり、スペーサ45の縦縁45Tが隔壁11と側面部6との連結箇所に当接する当接部である。
【0107】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0108】
また、このように本実施例では、スペーサ45が、角部12とこの角部12の両側の側面中央部6S,6Sとに対応して、角部46と平板状の側板部47,47を有するから、角部12の両側の側面角側部6K,6Kを保形することができ、隣り合う土嚢1,1の左右の側面部6,6の隙間の発生を同士できる。
【0109】
また、図示しないが、左右のスペーサ45,45の間に前記スペーサ44を配置すれば、中央側充填空間17の厚さを確保することができる。
【実施例0110】
図17は本発明の実施例5を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。この例はスペーサの変形例を示す。
【0111】
同図に示すように、前記スペーサ43,44,43を組み合わせた例である。尚、図示しないが、スペーサ45,44,45を組み合わせて使用してもよい。
【0112】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0113】
また、このように本実施例では、側面中央部6Sがスペーサ44により保形されているから、側面中央部6Sと内袋体3の胴部21との間に、所定厚さの中央充填材固化部51Aを形成することができる。
【0114】
また、実施例上の効果として、左右の角部側空間14,14内に充填材固化部51,51と、中央充填材固化部51Aとが連続して土嚢1の前面に設けられているから、前方からの荷重に対して強い強度を備えたものとなる。
【実施例0115】
図18図19は本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図に示すように土嚢構造体たる土嚢防護構造体61(以下、防護構造体61という)は、複数の土嚢1,1Aを左右方向及び前後方向に並べると共に積み上げた積上げ体62と、この積上げ体62の複数の土嚢1,1Aを各段毎に結束する結束材たるロープ材63と、前記積上げ体62の外面を覆うネット体64とを備える。
【0116】
前記土嚢1Aは前記土嚢1に比べて左右及び前後の寸法が大きく形成されている。具体的には、土嚢1Aは前記縫着部13,13の幅W1が550mmであり、土嚢1より胴部4の前後幅と左右幅が大きく形成されている。
【0117】
そして、図1図2及び図5などに示すように、この例では、土嚢を3段に積み上げ、1段目(最下段)は左右に6個の土嚢1Aを並べると共に、前後に2個の土嚢1Aを並べて第1の土嚢層71を形成している。尚、前側が山側である。前記第1の土嚢層71の上である2段目(中段)は、左右に6個の土嚢1を並べると共に、前後に2個の土嚢1を並べて第2の土嚢層72を形成している。この第2の土嚢層72の上である3段目(最上段)は、左右に5個の土嚢1を並べると共に、前後に2個の土嚢1を並べて第3の土嚢層73を形成している。
【0118】
防護構造体61の長さ方向(左右方向)において、第3の土嚢層73は、第2の土嚢層72に比べて、土嚢1の数が1個少ない。また、土嚢1,1Aの大きさが異なることにより、第2の土嚢層72は、第1の土嚢層71に比べて左右方向に短く形成され、土嚢層71,72の左右に段差が形成され、また、第2の土嚢層72は、第1の土嚢層71に比べて前後方向に短く形成され、土嚢層71,72の前後に段差が形成されている。
【0119】
また、土嚢1,1Aには、全ての角部側空間14に固化性充填材41を充填することが好ましく、こうすれば土嚢1,1Aの四方が充填材固化部51と中央充填材固化部51Aに囲まれ強度が向上し、さらに、前後に隣り合う土嚢1,1も隙間なく並べることができる。
【0120】
また、前記各段の土嚢1,1Aは、各段毎に結束材たる前記ロープ材63により結束され、このロープ材63は合成樹脂製であって、可撓性を有する。
【0121】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0122】
また、四方が充填材固化部51と中央充填材固化部51Aに囲まれた土嚢1,1Aを用い、前後に隣り合う土嚢1,1,1,1Aも隙間なく並べたから、強度的に優れた土嚢防護構造体61が得られる。
【0123】
さらに、前記土嚢1Aは前記土嚢1に比べて左右及び前後の寸法が大きく形成され、下段の土嚢1Aの上に、これより小さい上段の土嚢1を積み重ねたから、土嚢1,1Aを安定して積み重ねることができる。
【0124】
また、落石などの衝撃力を受ける防護構造体61の前面の土嚢1,1Aの前面側の角部側空間14に、固化性充填材41を充填して充填材固化部51を設け、好ましくは充填材固化部51Aを設けると共に、この充填材固化部51Aにより左右の充填材固化部51を連結することにより、衝撃力に強い防護構造体61を構築することができる。
【0125】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、固化性充填材の充填を積み上げる前の地面上で行う例と、積み上げた後に行う例を示したが、1つの土嚢において、少なくとも1つの角部側空間に固化性充填材を充填し、積み上げた後、残りの少なくとも1つの角部側空間に固化性充填材を充填するようにしてもよい。また、連結手段は、紐状体を結以外でも、連結金具により連結するなど各種の手段を用いることができる。さらに、実施例1~4に示したスペーサを適宜組み合わせて土嚢に用いることができる。また、軽量化を図るために、スペーサに孔を設けてもよい。さらに、外袋体は平面長方形の四角角型などでもよいし、内袋体は平面楕円形などでもよい。また、実施例では、土嚢を3段に重ねる土嚢防護構造体を示したが、土嚢を1段や2段または、4段以上に重ねたりしてもよい。さらに、吊り具連結手段は、実施例のアンカー52に限れず、アイボルトなどの各種のものを用いることができる。また、スペーサの高さは適宜選定可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 土嚢
2 外袋体
3 内袋体
4 胴部
6 側面部
11 隔壁
12 角部
14 角部側空間(充填空間)
21 胴部
41 固化性充填材
42 粒状物
43 スペーサ
51 充填材固化部
61 土嚢防護構造体(土嚢構造体)
103 護岸工(土嚢構造体)
図1
図2
図3
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図5
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