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特開2024-145982数値制御装置、工作機械、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145982
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】数値制御装置、工作機械、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20241004BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20241004BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20241004BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G05B19/18 S
B23Q11/00 L
B23Q17/09 H
B23Q17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058628
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】奥村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳也
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029CC05
3C029EE03
3C269AB03
3C269AB05
3C269BB17
3C269CC02
3C269EF39
(57)【要約】
【課題】切削液の噴出機構を適切なタイミングで駆動でき、且つ消費電力を適切に低減できる数値制御装置、工作機械、制御方法、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】数値制御装置のCPUは、加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する。CPUは、ワークの加工時に使用する工具の種類を判別する。CPUは、判別した工具でのワークの加工内容を取得する。CPUは、取得した加工内容に基づき、発生した切粉の切粉量Mtを推定する(S31)。CPUは、推定した累積切粉量Mtが所定の基準値Mref以上か否か判定する(S33)。CPUは、切粉量が基準値Mref以上と判定した場合、切削液を噴出するように噴出機構を駆動する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置において、
前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別部と、
前記判別部が判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定部と、
前記判定部が前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御部と
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記主軸の回転に必要な所要動力量と、前記ワークの密度と、前記工作機械の機械効率と、前記ワークと前記主軸との比切削抵抗と、前記工具の種類に応じた工具係数とに基づき、前記切粉量を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記噴出制御部は、前記判定部が前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、所定時間の間前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記噴出制御部は、前記判定部が前記切粉量が前記基準値以上と判定した回数分前記所定時間が加算された合計時間、前記噴出機構を制御して前記切削液を吐出する
ことを特徴とする請求項3に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記判別部は、前記加工プログラムのコードに基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類を判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記判別部は、前記主軸の回転量と送り軸であるX軸及びY軸の回転量に基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類をフライス加工用の工具と判別する
ことを特徴とする請求項5に記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記判別部は、前記主軸の回転量と送り軸であるZ軸の回転量に基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類をタップ用又はドリル用の工具と判別する
ことを特徴とする請求項5に記載の数値制御装置。
【請求項8】
前記判別部は、前記工具の種類を示す工具データと工具マガジンに装着した前記工具を示すマガジンデータとに基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類を判別する
ことを特徴とする請求項5に記載の数値制御装置。
【請求項9】
前記加工プログラムに基づき前記主軸に装着した前記工具による前記ワークの加工時に発生した前記切粉に対して、前記切削液を噴出して洗い流す前記噴出機構と、
請求項1~8の何れかに記載の前記数値制御装置と
を備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項10】
加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置の制御方法において、
前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別ステップと、
前記判別ステップが判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定ステップと、
前記推定ステップが推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定ステップと、
前記判定ステップが前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置のコンピュータに、
前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別ステップと、
前記判別ステップが判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定ステップと、
前記推定ステップが推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定ステップと、
前記判定ステップが前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御ステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置のコンピュータに、
前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別ステップと、
前記判別ステップが判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定ステップと、
前記推定ステップが推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定ステップと、
前記判定ステップが前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御ステップと
を実行させるプログラム
を記憶したことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置、工作機械、制御方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の制御装置は、NCプログラムの実行中、NCプログラムを構成する複数のブロック中に、主軸、クーラント等の動作部が待機状態となるブロックが存在するか否かを判別する。制御装置は、待機状態となるブロックが存在する場合、当該ブロックの実行時に当該動作部に対応した動力源、例えば主軸モータ、クーラントポンプに供給される電力を遮断できるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-067346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記制御装置は、待機状態となる場合にのみ電力が遮断されるので、クーラント供給部によるクーラントの供給が過剰となる場合があり、クーラント供給部による消費電力を適切に抑制できない可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、切削液の噴出機構を適切なタイミングで駆動でき、且つ消費電力を適切に低減できる数値制御装置、工作機械、制御方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の数値制御装置は、加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置において、前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別部と、前記判別部が判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定部と、前記推定部が推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定部と、前記判定部が前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
上記数値制御装置は、推定した切粉量が基準値以上の場合に、噴出機構を駆動する。故に、数値制御装置は、切削液の噴出機構を最適なタイミングで駆動でき、且つ消費電力を適切に低減できる。
【0008】
請求項2の数値制御装置では、前記推定部は、前記主軸の回転に必要な所要動力量と、前記ワークの密度と、前記工作機械の機械効率と、前記ワークと前記主軸との比切削抵抗と、前記工具の種類に応じた工具係数とに基づき、前記切粉量を推定してもよい。数値制御装置は、工具の種類に応じた工具係数等を使用して、精度よく切粉量を推定できる。
【0009】
請求項3の数値制御装置では、前記噴出制御部は、前記判定部が前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、所定時間の間前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動してもよい。故に、数値制御装置は、発生した切粉を所定時間で確実に排出できる。
【0010】
請求項4の数値制御装置では、前記噴出制御部は、前記判定部が前記切粉量が前記基準値以上と判定した回数分前記所定時間が加算された合計時間、前記噴出機構を制御して前記切削液を吐出してもよい。数値制御装置では、切り屑が短期間に大量に発生する場合がある。この場合、所定時間が終了する前に、再度切粉量が基準値を超えることがある。この場合、噴出機構は、所定時間が更に追加された合計時間の分だけ駆動する。故に、数値制御装置は、状況に応じて、切粉を確実に洗い流すことができる。
【0011】
請求項5の数値制御装置では、前記判別部は、前記加工プログラムのコードに基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類を判別してもよい。数値制御装置は、加工プログラムのコードから工具の種類を判別できる。
【0012】
請求項6の数値制御装置では、前記判別部は、前記主軸の回転量と送り軸であるX軸及びY軸の回転量に基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類をフライス加工用の工具と判別してもよい。数値制御装置は、主軸の回転量とX軸及びY軸の回転量から工具の種類を判別できる。
【0013】
請求項7の数値制御装置では、前記判別部は、前記主軸の回転量と送り軸であるZ軸の回転量に基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類をタップ用又はドリル用の工具と判別してもよい。数値制御装置は、主軸の回転量から工具の種類を判別できる。
【0014】
請求項8の数値制御装置では、前記判別部は、前記工具の種類を示す工具データと工具マガジンに装着した前記工具を示すマガジンデータに基づき、前記主軸に装着した前記工具の種類を判別してもよい。数値制御装置は、コードから工具交換を認識して、工具データとマガジンデータとに基づき、工具の種類を判別できる。
【0015】
請求項9の工作機械は、前記加工プログラムに基づき前記主軸に装着した前記工具による前記ワークの加工時に発生した前記切粉に対して、前記切削液を噴出して洗い流す前記噴出機構と、請求項1~8の何れかに記載の前記数値制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0016】
上記工作機械は、請求項1~8の何れかの数値制御装置と同様の効果を得る。
【0017】
請求項10の制御方法は、加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置の制御方法において、前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別ステップと、前記判別ステップが判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得ステップと、前記取得ステップが取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定ステップと、前記推定ステップが推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定ステップと、前記判定ステップが前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御ステップとを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記制御方法は、請求項1の数値制御装置と同様の効果を得る。
【0019】
請求項11のプログラムは、加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置のコンピュータに、前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別ステップと、前記判別ステップが判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得ステップと、前記取得ステップが取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定ステップと、前記推定ステップが推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定ステップと、前記判定ステップが前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御ステップとを実行させることを特徴とする。
【0020】
上記プログラムは、請求項1の数値制御装置と同様の効果を得る。
【0021】
請求項12の記憶媒体は、加工プログラムに基づき主軸に装着した工具によるワークの加工時に発生した切粉に対して、切削液を噴出して洗い流す噴出機構を備えた工作機械を制御する数値制御装置のコンピュータに、前記ワークの加工時に使用する前記工具の種類を判別する判別ステップと、前記判別ステップが判別した前記工具での前記ワークの加工内容を取得する取得ステップと、前記取得ステップが取得した前記加工内容に基づき、発生した前記切粉の切粉量を推定する推定ステップと、前記推定ステップが推定した前記切粉量が所定の基準値以上か否か判定する判定ステップと、前記判定ステップが前記切粉量が前記基準値以上と判定した場合、前記切削液を噴出するように前記噴出機構を駆動する噴出制御ステップとを実行させるプログラムを記憶したことを特徴とする。
【0022】
上記記憶媒体は、請求項1の数値制御装置と同様の効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】工作機械1の後方から見た斜視図。
図2】工作機械1の正面図。
図3】工作機械1の平面図。
図4図3に示すI-I線矢視方向断面図。
図5】主軸7に装着する工具TがワークWを加工する状態を示す図。
図6】数値制御装置30と工作機械1の電気的構成を示すブロック図。
図7】加工内容と切粉量との関係を示す図。
図8】累積切粉量Mtと、ポンプ22の間欠駆動との関係を示す図。
図9】メイン処理のフローチャート。
図10】メイン処理のフローチャートであって、図9の続き。
図11】工具データを示す図表。
図12】マガジンデータを示す図表。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下説明は、図2の紙面手前方向、紙面奥行き方向、左方、右方、上方、下方を、夫々工作機械1の前方、後方、左方、右方、上方、下方とする。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は、夫々、工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
【0025】
図1図4を参照し、工作機械1の構造の概略を説明する。工作機械1は、基台2、機械本体3、カバー4、テーブル8(図3参照)、工具交換装置13(図4参照)、制御箱15等を備える。基台2は略直方体状の鉄製土台である。機械本体3は基台2上部に設け、テーブル8上面に保持したワークW(図5参照)を切削加工する。切削加工の種類は、例えばドリル、タップ、フライス加工等である。カバー4は基台2上部に設け、機械本体3周囲と基台2上部を覆う略直方体の箱状である。カバー4は切粉と切削液の飛沫等が外部に飛散するのを防止する。図4に示す如く、テーブル8は基台2上部中央に設け、X軸モータ53(図6参照)、Y軸モータ54(図6参照)、X軸ガイド機構及びY軸ガイド機構(図示略)等により、X軸方向とY軸方向に移動可能である。各ガイド機構はリニアガイド、ボール螺子、ナット(図示略)等を備える。テーブル8は上面にワークW(図5参照)を治具等で固定可能である。
【0026】
図4に示す如く、工具交換装置13は工具マガジン14を備える。円盤状の工具マガジン14は外周に複数のグリップアーム14Aを備える。グリップアーム14Aは先端部に工具T(図5参照)を把持し、機械本体3の後述する主軸7(図5参照)との間を揺動可能である。工具交換装置13は工具交換位置にあるグリップアーム14Aを揺動させ、主軸7に装着する工具Tの着脱を行う。工具交換位置は工具マガジン14の最下部の位置で且つ主軸7に最も近接する位置である。図1に示す如く、制御箱15はカバー4背面側に設け、数値制御装置30(図6参照)を内側に格納する。数値制御装置30は工作機械1の動作を制御する。
【0027】
図1図4を参照し、機械本体3の構成を説明する。機械本体3は、コラム5、主軸ヘッド6、主軸7(図5参照)等を備える。コラム5は基台2上部後方に立設する。主軸ヘッド6はZ軸移動機構(図示略)でコラム5前面に沿ってZ軸方向に昇降可能である。Z軸移動機構は、リニアガイド、ボール螺子、ナット(図示略)等を備える。図5に示す如く、主軸ヘッド6は内部に主軸7を回転可能に支持する。主軸7は下端部に工具Tを装着し、主軸モータ52(図3図6参照)の駆動により回転する。工作機械1はテーブル8上面に保持したワークW(図5参照)と主軸7に装着した工具Tとの相対移動によって、ワークWに切削加工を施すことができる。
【0028】
図1図4を参照し、カバー4の構造を説明する。カバー4は前壁41、左壁42、右壁43、左背壁44(図3図4参照)、右背壁45(図3図4参照)を備え、略直方体の箱状に形成する。各壁41~45の下端部は基台2上部に固定する。図3図4に示す如く、左背壁44と右背壁45はカバー4の背壁を構成する。左背壁44はコラム5左側面前端部に固定し左側方に延出する。右背壁45はコラム5右側面前端部に固定し右側方に延出する。カバー4は工作機械1の加工領域を覆う。加工領域とは、工作機械1がワーク加工の為に必要とする領域であり、少なくとも主軸ヘッド6及び主軸7のZ軸方向における可動範囲、及びテーブル8のXY方向における可動範囲を包含する領域である。カバー4は切削液噴出機構(以下、「噴出機構」という。)を備える。噴出機構はカバー4内にて切削液を噴出する。故に工作機械1はワーク加工で発生しカバー4内に付着して堆積する切粉を洗い流すことができる。尚、噴出機構の構造は後述する。
【0029】
図2に示す如く、前壁41は、開口部46、開閉扉47、操作盤10を備える。開口部46は前壁41略中央に設け正面視矩形状である。開閉扉47は開口部46において左右方向に移動可能に設ける。作業者は開閉扉47を開き、テーブル8上面においてワークWの着脱が可能である。操作盤10は開口部46の右側に設ける。操作盤10はハーネス(図示略)で数値制御装置30(図6参照)に接続する。操作盤10は入力部11と表示部12を備える。入力部11は、工作機械1の各種動作指示、加工プログラム、工具種類、工具径、各種パラメータ等を入力可能とする機器である。加工プログラムは各種制御指令を含む複数のブロックで構成し、数値制御装置30は加工プログラムに基づいて工作機械1の軸移動、工具交換等を含む各種動作をブロック単位で制御する。表示部12は数値制御装置30の指示を受け、各種入力画面又は操作画面等を表示可能である。
【0030】
図1図3図4を参照し、噴出機構の構造を説明する。噴出機構は噴出部と供給部で構成する。噴出部はカバー4内側に設け、カバー4内にて切削液を噴出する。供給部はカバー4外側に設け、噴出部に対して切削液を供給する。
【0031】
図4を参照し、噴出部の構成を説明する。噴出部は、一対のフレキシブルパイプ71,72、一対の切削液ノズル74,75、一対の切削液配管81,82、複数のチップシャワー83,84等で構成する。フレキシブルパイプ71は左背壁44に設けた貫通穴94からテーブル8上面に向けて延出する。貫通穴94は左背壁44の右端側の上下方向略中段位置に設ける。切削液ノズル74はフレキシブルパイプ71先端に設ける。フレキシブルパイプ72は右背壁45に設けた貫通穴92からテーブル8上面に向けて延出する。貫通穴92は右背壁45の左端側の上下方向略中段位置に設ける。切削液ノズル75はフレキシブルパイプ72先端に設ける。切削液ノズル74,75はフレキシブルパイプ71,72を屈曲させてテーブル8上面に向ける。
【0032】
切削液配管81は、左背壁44の左端側上部に設けた貫通穴93(図3参照)から前方且つ水平に延出する。切削液配管82は右背壁45の右端側上部に設けた貫通穴91(図3参照)から前方且つ水平に延出する。切削液配管81は下部において所定間隔毎に複数の穴(図示略)を備える。チップシャワー83は切削液配管81下部に設けた複数の穴に夫々取り付ける。切削液配管82も下部において所定間隔毎に複数の穴(図示略)を備える。チップシャワー84は切削液配管82下部に設けた複数の穴に夫々取り付ける。チップシャワー83,84は切削液の噴出方向を下方に向ける。
【0033】
図1図3を参照し、供給部の構成を説明する。図1に示す如く、供給部は、タンク20、ポンプ22,23、主ホース25,26、分岐ホース27,28、T字継手61,62、継手63,64(図3参照)等で構成する。タンク20は基台2後方に設置し切削液を貯留する。ポンプ22,23はタンク20右側に隣接して設ける。主ホース25はポンプ22に接続する。主ホース26はポンプ23に接続する。ポンプ22はタンク20内の切削液を汲み上げ主ホース25に供給する。ポンプ23はタンク20内の切削液を汲み上げ主ホース26に供給する。
【0034】
T字継手61は、右背壁45右端側上部に設けた貫通穴91に対しカバー4外側から接続する。T字継手62は、右背壁45の左端側上下方向中段位置に設けた貫通穴92に対しカバー4外側から接続する。図3に示す如く、継手63は、左背壁44左端側上部に設けた貫通穴93に対しカバー4外側から接続する。継手64は、左背壁44右端側上下方向中段位置に設けた貫通穴94(図4参照)に対しカバー4外側から接続する。
【0035】
T字継手61には主ホース25と分岐ホース27が夫々接続する。分岐ホース27はコラム5の背面側を介してコラム5左側に延出し、左背壁44に設けた継手63に接続する(図3参照)。T字継手62には主ホース26と分岐ホース28が夫々接続する。分岐ホース28はコラム5に設けた穴5B(図1参照)を挿通してコラム5左側に延出し、左背壁44に設けた継手64に接続する(図3参照)。穴5Bはコラム5上下方向中段位置に設け左右方向に貫通する。
【0036】
図1図3図4を参照し、噴出機構の動作を説明する。ポンプ23が駆動すると、切削液は主ホース26を流れる。切削液はT字継手62で分岐し、一方は貫通穴92を介してフレキシブルパイプ72に流れ、他方は分岐ホース28に流れる。フレキシブルパイプ72に流れた切削液は切削液ノズル75から勢いよく噴出する。分岐ホース28に流れた切削液は、コラム5を挟んで反対側の継手64から貫通穴94を介してフレキシブルパイプ71を流れ、切削液ノズル74から勢いよく噴出する。切削液ノズル74,75は、テーブル8上面に治具等で固定したワークWの被加工部分(図示略)に対し、切削液を左右両側から直接当てることができる。切削液は被加工部分に付着する切粉を洗い落とすことができる。
【0037】
ポンプ22が駆動すると、切削液は主ホース25を流れる。切削液はT字継手61で分岐し、一方は貫通穴91を介して切削液配管82を流れ、他方は分岐ホース27に流れる。切削液配管82に流れた切削液は複数のチップシャワー84から下方に勢いよく噴出する。分岐ホース27に流れた切削液は、コラム5を挟んで反対側の継手63から貫通穴93を介して切削液配管81を流れ、複数のチップシャワー83から下方に勢いよく噴出する。故に切削液はカバー4の内側に付着して堆積する切粉を洗い落とすことができる。
【0038】
図6を参照し、数値制御装置30と工作機械1の電気的構成を説明する。数値制御装置30は、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性記憶装置34、入出力部35、モータ制御部51A~55A、駆動制御部56A,57A等を備える。CPU31は数値制御装置30を統括制御する。ROM32は制御プログラム等を記憶する。制御プログラムは後述するメイン処理(図9図10参照)を実行する。RAM33は各種記憶領域を備える。不揮発性記憶装置34は作業者が操作盤10の入力部11で入力した複数の加工プログラム等を記憶する。なお、ROM32に記憶される制御プログラムは、読み取り可能な外付けの記憶媒体(USBメモリ、CD-ROM等)に記憶されてもよい。CPU31は、記憶媒体からプログラムを読み出して不揮発性記憶装置34に記憶し、不揮発性記憶装置34に記憶した制御プログラムを実行してもよい。又、工作機械1は、他の機器(サーバ等)と通信回線を介して通信可能であってもよい。他の機器の記憶装置に制御プログラムが記憶されてもよい。CPU31は、他の機器と通信を行うことによって取得した制御プログラムを、不揮発性記憶装置34に記憶してもよい。制御プログラムは本発明のプログラムに相当する。USBメモリ、CD-ROM、サーバ、他の機器等が記憶媒体に相当する。
【0039】
モータ制御部51AはZ軸モータ51とエンコーダ51Bに接続する。モータ制御部52Aは主軸モータ52とエンコーダ52Bに接続する。モータ制御部53AはX軸モータ53とエンコーダ53Bに接続する。モータ制御部54AはY軸モータ54とエンコーダ54Bに接続する。モータ制御部55Aはマガジンモータ55とエンコーダ55Bに接続する。駆動制御部56Aはポンプ22に接続する。駆動制御部57Aはポンプ23に接続する。モータ制御部51A~55AはCPU31から指令を受け、対応する各モータ51~55に駆動電流を夫々出力する。
【0040】
モータ制御部51A~55Aはエンコーダ51B~55Bからフィードバック信号を受け、位置と速度のフィードバック制御を行う。入出力部35は入力部11と表示部12に夫々接続する。駆動制御部56A,57AはCPU31から指令を受け、対応するポンプ22,23に駆動電流を夫々出力する。ポンプ22と23は駆動電流で夫々駆動する。Z軸モータ51、主軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、及びマガジンモータ55は、何れもサーボモータである。尚、以下説明にて、Z軸モータ51、主軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、及びマガジンモータ55を総称する場合は、各モータ51~55と呼ぶ。
【0041】
図7を参照し、加工内容と切粉量の関係について簡単に説明する。図7に示す切粉量のイメージは、例えば「〇」一個分が0.1[kg]に相当する。図7に示す如く、同一の加工時間で発生する切粉量は加工内容で異なる。加工内容は、フェイシングφ80、エンドミルφ20、ドリルφ5、及びタップM6等である。フェイシングφ80の場合、ドリルφ5、タップM6に比して約4倍の切粉が発生する。エンドミルφ20の場合は、ドリルφ5、タップM6に比して約2倍の切粉が発生する場合がある。尚、切粉量の比は一例を示したものであり、異なる場合もある。
【0042】
発生した切粉を除去する為、ポンプ22を常時駆動して、切粉を排出する方法がある。該時、常にポンプ22が駆動するので、工作機械1の消費電力が大きくなる。これに対し、本実施形態では、ポンプ22を間欠駆動することで工作機械1の消費電力を低減する。詳細は後述するが、ポンプ22の間欠駆動では、例えば0.3[kg]の切粉が発生した場合にポンプ22を所定時間Ta駆動する。なお、全ての加工の終了前にも、所定時間Taポンプ22を駆動する。故に噴出機構は、加工終了時までに切粉を全て排出できる。
【0043】
数値制御装置30は、ポンプ22の間欠駆動を適切な時期に行う為、加工で発生した切粉量を高精度に推定することが望ましい。
【0044】
切粉量の推定手法について説明する。以下、推定結果は「切粉量Q」ともいう。切粉量Qは、式(1)に式(2)を代入して求める。ここで、ρは、ワークWの密度[kg/cm]を示す。ηは、工作機械1の機械効率を示す。kcは、ワークWの比切削抵抗[MPa]を示す。Wcは、切削に必要な動力量を示す所要動力量[kWh]である。Wcは、式(2)を用いて演算する。Aeは、切込み深さ[mm]を示す。Apは、切削幅[mm]を示す。vfは、1分辺りの主軸7の送り速度[mm/min]であり、加工プログラムにあるFコードから得る。Tsは、後述するサンプリング時間[sec]である。ktは工具Tに固有な値である工具係数を示す。工具Tの工具係数ktは、工具Tにより異なる。ドリル加工用の工具Tの工具係数ktをドリル補正係数kdillという。タップ加工用の工具Tの工具係数ktをタップ補正係数ktapという。フェイシングφ80及びエンドミルφ20等のフライス加工用の工具Tの工具係数ktをフライス補正係数kmillという。これらの係数を使用することで、数値制御装置30は加工内容に応じた切粉量Qを推定できる。
【数1】
【0045】
図8を参照し、加工時の切粉の累積切粉量Mtとポンプ22の駆動との関係について詳細に説明する。累積切粉量Mtは、式(1)(2)で推定した切粉量Qの累積結果である。図8に示す如く、時刻t0でワークWの加工は開始する。累積切粉量Mtは、時間の経過に伴い増加する。傾きが大きいほど、単位時間当たりに発生した切粉が多いことを示す。
【0046】
時刻t1で累積切粉量Mtが基準値Mrefに到達する。基準値Mrefは例えば0.3[kg]である。この場合、ポンプ22は、時刻t1~t2の所定時間Ta駆動する。所定時間Taは、基準値Mrefの切粉を十分排出できる時間である。所定時間Taの駆動により、噴出機構は、時刻t0~t1で発生した切粉を排出する。つまり、累積切粉量Mtが基準値Mref以上の場合、噴出機構は、所定時間Ta切削液を噴出するように駆動する。
【0047】
時刻t2に到達時、ポンプ22の駆動開始から所定時間Ta経過する。この場合、ポンプ22は駆動を停止する。時刻t3に到達時、時刻t1~t3までに発生した切粉の累積切粉量Mtが基準値Mrefに到達する。ポンプ22は、時刻t1~t3で発生した切粉を排出する為、時刻t3からt5の所定時間Ta駆動する。
【0048】
時刻t4に到達時、切粉の累積切粉量Mtが基準値Mrefに到達する。時刻t4では、ポンプ22は駆動中である。この場合、時刻t3~t5の所定時間Taに、時刻t5~t6の所定時間Taを加算する。加算結果を合計時間Tsumともいう。従って、時刻t5の経過後も継続して、ポンプ22は、時刻t5~時刻t6の所定時間Ta駆動する。これにより、噴出機構は、時刻t3から時刻t4までに発生した切粉を排出する。つまり、噴出機構は、基準値Mref以上と判定した回数分所定時間Taを加算した合計時間Tsum切削液を吐出する。
【0049】
時刻t6では、切粉の累積切粉量Mtが基準値Mrefに未到達なので、ポンプ22の駆動は停止する。
【0050】
図9図10を参照し、CPU31が実行するメイン処理を説明する。作業者は、入力部11で一の加工プログラムを選択し開始指示を入力する。CPU31は入力部11で選択した加工プログラムを不揮発性記憶装置34から読み出し、ROM32からメインプログラムを読み込んで本処理を所定のサンプリング時間毎に実行する。
【0051】
メイン処理を開始すると、CPU31は、ポンプ22の残りの駆動時間を示すポンプ駆動残時間Tpを0秒に設定する(S1)。CPU31は、ポンプ駆動残時間Tpが0秒か否か判断する(S3)。ポンプ駆動残時間Tpが0秒であると判断した場合(S3:YES)、CPU31は、ポンプ22の駆動を停止する(S9)。既にポンプ22が停止している場合、CPU31はポンプ22の停止状態を維持する。CPU31は、処理をS11に進める。S5、S7の説明は後述する。
【0052】
CPU31は、ワークWの加工時に使用する工具Tの種類を判別する(S11)。該時、CPU31は、工具データ(図11参照)、マガジンデータ(図12)を参照する。工具データとマガジンデータは、例えば不揮発性記憶装置34に記憶する。工具データは、工具Tの種類を示す。複数の工具Tの種類には、工具番号を夫々割り当てる。一方、マガジンデータは、工具マガジン14に割り当てたマガジン番号に対して何れの工具Tを装着しているかを示す。工具マガジン14のマガジン番号毎に、図11に示す工具番号と工具種類とが登録してある。CPU31は加工プログラムのコードから工具交換を認識して、マガジン番号の主軸欄に対応する工具番号と工具種類を認識する。尚、図12は、マガジン番号「2」で登録した工具番号「2」のフライス(図11参照)に工具交換した例である。
【0053】
CPU31は、直前のサンプリング時間Tsの間にドリル加工したか否か判断する(S17)。CPU31は、判別した工具Tがドリル、加工プログラムのコードがドリル固定サイクル(G73、G81、G82、G83)、又は送り軸の対象がZ軸で且つ切削送りを特定した場合、加工内容がドリル加工であると判断する。これらの情報は、加工プログラムのコードから特定可能である。直前のサンプリング時間Tsの間にドリル加工したと判断した場合(S17:YES)、CPU31は、工具係数ktに、ドリル補正係数kdillを代入する(S19)。CPU31は、処理をS29に進める。
【0054】
直前のサンプリング時間Tsの間にドリル加工していないと判断した場合(S17:NO)、CPU31は、直前のサンプリング時間Tsの間にタップ加工したか否か判断する(S21)。CPU31は、判別した工具Tがタップ又は、例えばタップ固定サイクル(G74、G77、G77、G84)を特定した場合、加工内容がタップ加工と判断する。これらの情報は、加工プログラムのコードから特定可能である。直前のサンプリング時間Tsの間にタップ加工したと判断した場合(S21:YES)、CPU31は、工具係数ktにタップ補正係数ktapを代入する(S21)。CPU31は、処理をS29に進める。
【0055】
直前のサンプリング時間Tsの間にタップ加工していないと判断した場合(S21:NO)、CPU31は、直前のサンプリング時間Tsの間にフライス加工したか否か判断する(S25)。CPU31は、次の三条件が成立する場合、加工内容がフライス加工と判断する。一つ目は、判別した工具Tがドリル、タップではない。二つ目は主軸7が回転している。三つ目はX軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸、C軸の何れかが切削送りである。これらの情報は、加工プログラムのコードから特定可能である。例えば、コードに、S2000等の指令があった場合、主軸7は回転したと判断でき、Gコード等の指令からX軸~C軸の切削送りを判断できる。なお、工具データ、及びマガジンデータに基づき主軸7に装着した工具がフライスであると特定した場合も、CPU31は加工内容がフライス加工と判断できる。
【0056】
直前のサンプリング時間Tsの間にフライス加工したと判断した場合(S25:YES)、CPU31は、工具係数ktにフライス補正係数kmillを代入する(S27)。CPU31は、処理をS29に進める。直前のサンプリング時間Tsの間にフライス加工していないと判断した場合(S25:NO)、CPU31は、加工を実行していないとして、S3に処理を戻す。
【0057】
CPU31は、式(1)(2)を用いて、主軸7に装着した工具Tに応じた切粉量Mnを推定する(S29)。S19、S23、S27の処理で、加工内容に応じた工具係数ktを代入するので、CPU31は、発生した切粉量Qを高精度に推定できる。CPU31は、発生した切粉の累積切粉量Mtを推定する(S31)。累積切粉量Mtは、S29の処理を繰り返した際の累積結果である。CPU31は、S33の処理で推定した切粉量Qを、直前の累積切粉量Mtに加算する。
【0058】
CPU31は、推定した累積切粉量Mtが所定の基準値Mref以上か否か判定する(S33)。累積切粉量Mtが基準値Mrefよりも低いと判断した場合(S33:NO)、CPU31は、S3に処理を戻す。この場合、CPU31は、ポンプ22の停止状態を維持する(S1、S3:YES、S9)。
【0059】
累積切粉量Mtが基準値Mref以上と判断した場合(S33:YES)、CPU31は、ポンプ駆動残時間Tpに所定時間Taを加算する(S35)。なお、S35の処理を繰り返した場合、CPU31は、所定時間Taが0となる前に所定時間Taを加算する場合がある。該時、CPU31は、合計時間Tsum(図8参照)継続してポンプ22を駆動する。CPU31は、累積切粉量Mtをリセットする(S37)。リセットとは例えば、累積切粉量Mtを0にすることである。
【0060】
CPU31は、加工プログラムが終了したか否か判断する(S39)。加工プログラムが終了していないと判断した場合(S39:NO)、CPU31は、S3に処理を戻す。
【0061】
この場合、S35の処理で、ポンプ駆動残時間Tpに所定時間taを加算しているので、ポンプ駆動残時間Tpが0秒でないと判断し(S3:NO)、CPU31は、ポンプ22を駆動する(S5)。CPU31は、ポンプ駆動残時間Tpから駆動経過時間Tlaps分減算する(S7)。駆動経過時間Tlapsは、S5のポンプ22の駆動開始時刻からの経過時間である。CPU31は、S11に処理を進める。CPU31は、ポンプ駆動残時間Tpが0になるまで、ポンプ22を駆動する(S5)。これにより、CPU31は、加工で発生した切粉を排出できる。
【0062】
一方、加工プログラムが終了したと判断した場合(S39:NO)、CPU31は、メイン処理を終了する。
【0063】
以上説明の如く、CPU31は、ワークWの加工時に使用する工具Tの種類を判別する。CPU31は、判別した工具TでのワークWの加工内容を取得する。CPU31は、取得した加工内容に基づき、発生した切粉の累積切粉量Mtを推定する。CPU31は、推定した累積切粉量Mtが基準値Mref以上か否か判定する。CPU31は、累積切粉量Mtが基準値Mref以上と判定した場合、切削液を噴出するように噴出機構を駆動する。
【0064】
上記数値制御装置30は、推定した累積切粉量Mtが基準値以上の場合に、噴出機構を駆動する。故に、数値制御装置30は、切削液の噴出機構を最適なタイミングで駆動でき、且つ消費電力を適切に低減できる。
【0065】
CPU31は、主軸7の回転に必要な所要動力量Wcと、ワークWの密度ρと、工作機械1の機械効率μと、ワークWと主軸7との比切削抵抗kcと、工具Tの種類に応じた工具係数ktとに基づき、累積切粉量Mtを推定する。数値制御装置30は、工具Tの種類に応じた工具係数kt等を使用して、精度よく累積切粉量Mtを推定できる。
【0066】
CPU31は、累積切粉量Mtが基準値Mref以上と判定した場合、所定時間Taの間切削液を噴出するように噴出機構を駆動する。故に、数値制御装置30は、発生した切粉を所定時間Taで確実に排出できる。
【0067】
CPU31は、基準値Mref以上と判定した回数分所定時間Taが加算された合計時間Tsum、噴出機構を制御して切削液を吐出する。数値制御装置30では、切屑が短期間に大量に発生する場合がある。この場合、所定時間Taが終了する前に、再度累積切粉量Mtが基準値Mrefを超えることがある。この場合、噴出機構は、所定時間Taが更に追加された合計時間Tsumの分だけ駆動する。故に、数値制御装置30は、状況に応じて、切粉を確実に洗い流すことができる。
【0068】
CPU31は、加工プログラムのコードに基づき、主軸7に装着した工具Tの種類を判別する。数値制御装置30は、加工プログラムのコードから工具Tの種類を判別できる。
【0069】
CPU31は、工具Tの種類を示す工具データと工具マガジン14に装着した工具Tを示すマガジンデータに基づき、主軸7に装着した工具Tの種類を判別する。数値制御装置30は、コードから工具交換を認識して、工具データとマガジンデータとに基づき、工具Tの種類を判別できる。
【0070】
以上説明にて、累積切粉量Mtが本発明の切粉量の一例である。X軸、Y軸、Z軸が本発明の送り軸の一例である。S11の処理を実行するCPU31が本発明の判別部の一例である。S17、S21、S25の処理を実行するCPU31が取得部の一例である。S29の処理を実行するCPU31が本発明の推定部の一例である。S33の処理を実行するCPU31が本発明の判定部の一例である。S5、S7の処理を実行するCPU31が本発明の噴出制御部の一例である。
【0071】
尚、本発明は上記実施形態に限らず種々の変更が可能である。 上記実施形態では、加工内容を、S17、S21、S25で取得したがこれに限らない。例えば、ユーザが加工プログラムの実行前に入力した工具情報を参照して加工内容を特定してもよい。
【0072】
上記実施形態では、基準値Mrefは0.3[kg]であったがこれに限らない。基準値Mrefは、加工プログラムに応じて適宜変更してよい。
【0073】
上記実施形態では、切粉量Mnの推定ではタップ、ドリル、フライスで使用される工具Tに固有の工具係数ktを代入したがこれに限らない。例えば、工具係数ktは、工具T毎に補正係数が割り当てられていてもよい。該時、数値制御装置30は、切粉量Qをより正確に推定できる。
【0074】
上記実施形態では、エンドミルとフライスの場合、S27で補正係数kmillを設定したがこれに限らない。例えば、S25:YESの場合、エンドミルとフライスとで異なる補正係数を設定してもよい。該時、数値制御装置30は、切粉量Qをエンドミルとフライス毎に正確に推定できる。
【0075】
上記実施形態では、主軸7に装着した工具Tの種類を、工具データ、マガジンデータから取得したがこれに限らない。例えば、CPU31は、主軸7の回転量と送り軸の回転量に基づき、主軸7に装着した工具Tの種類を判別してもよい。例えば主軸7の回転量、且つ送り軸であるX軸及びY軸を送る場合の回転量に基づき、CPU31は、フライス加工の為の工具Tであると判別してもよい。また、主軸の回転量、且つ送り量であるZ軸を送る場合の回転量に基づき、CPU31は、ドリル加工の為の工具Tであると判別してもよい。CPU31は、何れの場合でも、加工プログラムのコードから各情報を取得すればよい。
【0076】
上記実施形態では、式(1)、式(2)を使用して切粉量Qを推定したがこれに限らない。例えば、切粉量Qは、式(1)のみを使用して推定してもよい。該時、動力量Wcは、T×n×2π×Ts/(60×1000×3600)にて演算する。ここで、Tは主軸モータ52のトルクを示す。nは主軸モータ52の回転数を示す。トルクは主軸モータ52を流れる電流値のフィードバック、主軸モータ52の回転数はエンコーダ52Bからのフィードバックで取得する。
【0077】
上記実施形態の所定時間Taは、加工プログラムに応じて適宜変更してよい。また、図7に示す例では、加工プログラムの終了前に、所定時間Taポンプ22を駆動したがこれに限らない。加工プログラム終了前のポンプ22の駆動時間は適宜変更してよい。
【0078】
上記実施形態では、累積切粉量Mtが基準値Mref以上の場合に所定時間Taポンプ22が駆動したがこれに限らない。例えば、CPU31は、切削液の流量を検出するセンサで切削液の流量を検出し、検出結果が所定の流量を検出した場合にポンプ22を停止してもよい。また、タンク20内部に備えた液面センサが所定位置を検出した場合、即ち所定量の切削液が外部へ流出した場合にポンプ22を停止してもよい。なお、所定の流量、及び所定量とは、所定時間Taの間に噴出機構が噴出する切削液の量に相当する。
【符号の説明】
【0079】
1 工作機械
4 カバー
7 主軸
22 ポンプ
30 数値制御装置
31 CPU
T 工具
W ワーク
Wc 所要動力量
ρ 密度
μ 機械効率
kc 比切削抵抗
kt 工具係数
Mt 累積切粉量
Mref 基準値
Tsum 合計時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12