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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145983
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058629
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 亘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 崇之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS12
3C707CX01
3C707CX03
3C707DS01
3C707HS27
3C707HT15
3C707HT26
3C707KS34
3C707KV01
3C707KV06
3C707KX06
3C707LS15
3C707LV23
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与すること。
【解決手段】ロボット15は、第1上アーム部25及び第2上アーム部26を含む複数のアーム構成体が一連となるようにして連結されたアーム31と、ダイレクトティーチングに際してロボット15に作用する外力を検出可能な力覚センサ39とを備えている。第1上アーム部25のハウジング51Dにはモータユニット35Dが固定されており、このモータユニット35Dと第2アーム部26のハウジング51Eとは、アーム31の長手方向に延びる動力伝達シャフト55を介して連結されている。この動力伝達シャフト55の外周面61には、引張圧縮歪みゲージ41とせん断歪みゲージ42とが取り付けられており、それら引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42によって上記力覚センサ39が構成されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアーム構成体が一連となるようにして連結されたアーム及び当該アームの関節部を駆動させる駆動機構を有してなるロボット本体と、前記ロボット本体を制御する制御装置とを備えている産業用ロボットであって、
前記複数のアーム構成体として、第1アーム構成体と、当該第1アーム構成体に対して前記ロボット本体の手先側に位置する第2アーム構成体とを含み、
前記駆動機構は、
前記第1アーム構成体に固定され、アクチュエータ及び当該アクチュエータに付属の減速機を有してなる駆動部と、
前記減速機と前記第2アーム構成体とに固定されることにより前記第1アーム構成体と前記第2アーム構成体とを連結する連結部の一部を構成し、前記駆動部からの動力を前記第2アーム構成体に伝達する動力伝達シャフトと
を有し、
前記動力伝達シャフトに取り付けられ、当該動力伝達シャフトに生じる歪みを検出可能な複数の歪みゲージを備え、
前記制御装置は、それら歪みゲージからの検出信号に基づいて、前記ロボット本体に作用する外力の大きさ及び向きを特定する特定部(ロボットコントローラ93にてステップS102の処理を実行する機能)を有し、前記特定部による特定結果に基づいて前記駆動部の駆動制御を行う産業用ロボット。
【請求項2】
前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトにおいて、前記減速機への固定部分と、前記第2アーム構成体への固定部分との間となる部分であって且つ前記減速機への固定部分側へ偏倚するようにして配置されている請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトにおいて前記減速機への固定部分の近傍から離れた部分に配置されている請求項2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記動力伝達シャフトは、中空となっており、
前記動力伝達シャフトの内外の一方に前記駆動機構を構成する駆動部用の配線が配設され、他方に前記歪みゲージが配設されている請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節型ロボット等の産業用ロボットをティーチングする際には、ティーチングペンダント等の操作端末を用いて動作プログラムを作成する手法が採用されていた。しかしながら、このような手法ではロボットに対して直観的に指示を行うことができず、不慣れなユーザでは所望の動きを実現するための時間が多大になるという問題があった。近年では、ティーチングの効率化等を実現すべく、産業用ロボットを作業者が直接触って教示する手法(所謂ダイレクトティーチング)が提案されている。
【0003】
この種のティーチングを行う場合には、エンドエフェクタとアームの先端部との間に力覚センサ(例えば図12の力覚センサ100参照)を配設し、ユーザが産業用ロボットの手先を把持して押し引きした場合に、当該力覚センサにより検出した外力に応じて産業用ロボットの動作を制御するといった方法が用いられることがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。産業用ロボットの駆動部には減速機が併設されていることが多く、上述したように産業用ロボットを動作させてユーザをアシストすることは、作業効率の向上等を実現する上で効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-231925号公報
【特許文献2】特開2020-203374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般的な力覚センサは歪みの検出を容易とすべく意図的に剛性を下げた起歪体を具備する仕組みとなっているため、高負荷への対応が難しくなる。また、剛性の低下によって、産業用ロボットを高速で動作させた際に手先に振動が生じやすくなり、高速動作や高精度動作も難しくなる。つまり、産業用ロボットの基本性能(例えば可搬能力、動作速度、動作精度)が低下しやすくなる。このように、産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能を向上させる上で、外力の検出に係る構成に未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記例示した課題等に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0008】
第1の手段.複数のアーム構成体(第1上アーム部25や第2上アーム部26)が一連となるようにして連結されたアーム(アーム31)及び当該アームの関節部(第1関節部~第6関節部)を駆動させる駆動機構(モータユニット35や動力伝達シャフト55)を有してなるロボット本体(ロボット本体21)と、前記ロボット本体を制御する制御装置(ロボットコントローラ93)とを備えている産業用ロボット(ロボット15)であって、
前記複数のアーム構成体として、第1アーム構成体(第1上アーム部25)と、当該第1アーム構成体に対して前記ロボット本体の手先側に位置する第2アーム構成体(第2上アーム部26)とを含み、
前記駆動機構は、
前記第1アーム構成体に固定され、アクチュエータ(サーボモータ36D)及び当該アクチュエータに付属の減速機(減速機37D)を有してなる駆動部(モータユニット35D)と、
前記減速機と前記第2アーム構成体とに固定されることにより前記第1アーム構成体と前記第2アーム構成体とを連結する連結部の一部を構成し、前記駆動部からの動力を前記第2アーム構成体に伝達する動力伝達シャフト(動力伝達シャフト55)と
を有し、
前記動力伝達シャフトに取り付けられ、当該動力伝達シャフトに生じる歪みを検出可能な複数の歪みゲージ(歪みゲージ41,42)を備え、
前記制御装置は、それら歪みゲージからの検出信号に基づいて、前記ロボット本体に作用する外力の大きさ及び向きを特定する特定部(ロボットコントローラ93にてステップS102の処理を実行する機能)を有し、前記特定部による特定結果に基づいて前記駆動部の駆動制御を行う。
【0009】
動力伝達シャフトについては手先側の構成を支えるべく相応の剛性が確保される部品であり、起歪体等のように意図的に剛性を下げることで歪みを大きく発生させるための部品ではない。つまり、ダイレクトティーチング時にロボット本体が押し引きされる等してその外力が動力伝達シャフトに伝わったとしても、発生する歪みは微小となる。本特徴に示すように、動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成とすれば、従来のように起歪体を具備する力覚センサをアームの先端に装着する構成と比較して、ロボット本体の剛性低下や手先重量の増加等を抑制できる。これは、産業用ロボットにおける移動速度や可搬重量等の基本性能の低下を抑える上で好ましい。なお、重量が嵩む駆動部の位置を動力伝達シャフトを用いることでアームの基端側へシフトさせることができるため、寧ろ基本性の強化に寄与し得るとも言える。
【0010】
また、手先に力覚センサを装着した場合、当該力覚センサよりもアームの基端側を押し引きした場合には、外力の特定が困難になる。つまり、力覚センサによる特定機能を上手く発揮させる上では、ユーザの把持位置に係る制約が強くなる。この点、本特徴に示すように動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成によれば、ロボット本体の手先から離れた位置で外力を特定することができるため、ユーザの把持位置に係る制約の緩和に寄与できる。
【0011】
上述したように動力伝達シャフトに発生する歪みは微小となる。このため、当該歪みを1の歪みゲージによって検出しようとした場合にはノイズ等の影響を受けやすくなり、外力特定の精度が低くなると懸念される。精度が低くなれば、不感帯が大きる等して、アシストをタイミングよく行うことが困難になる。特に、アシストの初動が遅れる等して、アシスト機能が適正に発揮されなくなることは、ユーザの満足度を低下させる要因になり得る。この点、本特徴に示す構成では、複数の歪みゲージを利用することで精度低下を抑制している。複数の歪みゲージを併用するにしても動力伝達シャフトについてはある程度の大きさを見込むことができるため、歪みゲージの数を増やして精度低下を抑える上で好ましい。
【0012】
以上の理由から、本特徴に示す構成によれば、産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態におけるロボットシステムを示す概略図。
図2】ロボットシステムの電気的構成を示すブロック図。
図3】(a)ダイレクトティーチングの様子を示す概略図、(b)駆動制御部にて実行されるアシスト用処理を示すフローチャート。
図4】アームの内部構造を示す断面図。
図5】(a)動力伝達シャフトの断面図、(b)連結態様を示す概略図。
図6】(a)解析モデルの側面図、(b)図6(a)のA-A線断面図。
図7】解析結果を例示した概略図。
図8】歪みゲージの取付位置を示す概略図。
図9】(a)第2の実施形態における動力伝達シャフトを示す断面図、(b)解析結果を例示した概略図。
図10】第3の実施形態における動力伝達シャフトを示す概略図。
図11】変形例を示す概略図。
図12】(a)従来技術を示す概略図、(b)ロボットの基本性能について従来技術と比較した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、工場の製造ライン等にて作業に従事する垂直多関節型の産業用ロボット(以下、ロボット15という)を備えるロボットシステム10に具現化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すように、ロボット15の本体部(ロボット本体21)は、台座等に固定されるベース部22と、当該ベース部22により支持されているショルダ部23と、ショルダ部23により支持されている下アーム部24と、下アーム部24により支持されている第1上アーム部25と、第1上アーム部25により支持されている第2上アーム部26と、第2上アーム部26により支持されている手首部27と、手首部27により支持されているフランジ部28とを有している。
【0016】
ベース部22及びショルダ部23には、それらベース部22及びショルダ部23を連結する第1関節部が形成されており、ショルダ部23は第1関節部の連結軸(第1軸AX1)を中心として水平方向に回動可能となっている。ショルダ部23及び下アーム部24には、それらショルダ部23及び下アーム部24を連結する第2関節部が形成されており、下アーム部24は第2関節部の連結軸(第2軸AX2)を中心として上下方向に回動可能となっている。下アーム部24及び第1上アーム部25には、それら下アーム部24及び第1上アーム部25を連結する第3関節部が形成されており、第1上アーム部25は第3関節部の連結軸(第3軸AX3)を中心として上下方向に回動可能となっている。第1上アーム部25及び第2上アーム部26には、それら第1上アーム部25及び第2上アーム部26を連結する第4関節部が形成されており、第2上アーム部26は第4関節部の連結軸(第4軸AX4)を中心として捻り方向に回動可能となっている。第2上アーム部26及び手首部27には、それら第2上アーム部26及び手首部27を連結する第5関節部が形成されており、手首部27は第5関節部の連結軸(第5軸AX5)を中心として上下方向に回動可能となっている。手首部27及びフランジ部28には、それら手首部27及びフランジ部28を連結する第6関節部が形成されており、フランジ部28は第6関節部の連結軸(第6軸AX6)を中心として捻り方向に回動可能となっている。
【0017】
ショルダ部23、下アーム部24、第1上アーム部25、第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28は、一連となるように配列されることでロボット本体21におけるアーム31を構成しており、当該アーム31の先端のフランジ部28にはエンドエフェクタ29が取り付けられている。例えば、このエンドエフェクタ29を研磨装置とすることでワークWを研磨可能となり、ハンドタイプとすることでワークWを把持可能となる。
【0018】
詳細については後述するが、アーム31には、関節部を回動させる電動式アクチュエータとしてのサーボモータ及び減速機(具体的には波動歯車装置)を有してなるモータユニットが関節部毎に設けられており、一部の関節部には当該モータユニットに発生した動力を伝達する伝達機構(後述する動力伝達シャフト含む)が設けられている。また、サーボモータにはロータリエンコーダが付属しており、それらサーボモータ及びロータリエンコーダはロボット本体21に付属のロボットコントローラ93に接続されている。
【0019】
ここで、図2を参照して、ロボットシステム10の電気的構成(制御システムCS)について補足説明する。ロボットコントローラ93には、サーボモータ36等の駆動制御等を行う駆動制御部95と、サーボモータ36、ロータリエンコーダ38及び上位コントローラ92(例えばティーチングペンダントやPC)等について信号の入出力を担う入出力部96とが設けられている。上位コントローラ92の制御部には、ユーザによるロボット15の動きの設定(オフラインティーチングやダイレクトティーチングを含む)を支援するアプリケーションがインストールされている。ティーチングにより設定された動作指示については上位コントローラ92のメモリに記憶され、ロボット15の自動運転を実行する場合にロボットコントローラ93に送信される。この動作指示には、ロボット15の手先(所謂ツールセンタポイントTCP:図1参照)の制御点(動作目標位置)を示す情報が含まれる。
【0020】
ロボットコントローラ93の駆動制御部95は、上位コントローラ92からの動作指示を受けてプログラム記憶部から動作指示に対応した動作プログラムを読み込み上記制御点を特定する。動作指示から特定した制御点と現在位置とを滑らかに繋ぐ目標軌道を生成し、当該目標軌道を細分化した位置である補間位置をロボット本体21に内蔵のサーボアンプ(図示略)に順次送信する。サーボアンプには、サーボモータ36やロータリエンコーダ38が接続されており、駆動制御部95からの指示及びロータリエンコーダ38により検出された回転角度等に基づいて各関節用のサーボモータ36の駆動制御等を行う。
【0021】
本実施形態に示すロボットシステム10においては、当該ロボットシステムの制御モードとして、ロボット15のティーチングの際に設定されるティーチングモードと、ティーチング内容に応じてロボット15を自動運転させる際に設定される自動運転モードとが設けられている。ここで、本実施形態に示すロボット15については上述の如くサーボモータ36に減速機が付属しており、ロボット15の姿勢を変更させる場合の抵抗が大きく(重く)なっている。この点、制御モードがティーチングモードとなっている場合には、ユーザがアーム31に外力を加えて(例えば押したり引いたりして)ロボット15の姿勢を変更しようとした場合に、ユーザが加えた外力の大きさや向き等を特定(推定)し、その特定結果(推定結果)に応じてサーボモータ36の駆動制御を行うことにより、姿勢変更時の抵抗を軽減可能としている。これは、ティーチング時の作業性を向上させる上で好ましい。詳細については後述するが、ロボット15のアーム31には、当該ロボット15に加わる外力を検出すべく力覚センサが具備されており、本実施形態ではこの力覚センサ及びそれに関連する構成が特徴的なものとなっている。
【0022】
図3(a)に示すように、ダイレクトティーチングに際してロボット15の手先を所望とする位置に移動させる場合には、ユーザはアーム31に直接触れて当該アーム31を押し引きすることとなる。但し、第3関節部よりもアーム31の基端側となる部分を押し引きしようとすると、ユーザは逆運動学を意識することになり、アーム31の操作が難しくなる。故に、現実的にはユーザによる把持対象は、第1上アーム部25よりもアーム31の先端側に位置するアーム構成体、すなわち第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28、エンドエフェクタ29となりやすい。本実施形態に示すアーム31には、ダイレクトティーチング時にユーザにより操作される操作ボタン(抵抗切替ボタン32及び位置取込ボタン33)が複数個所に設けられているが、上記事情に配慮して少なくとも1組はロボット15の手先付近(詳しくはフランジ部28)に配されている。
【0023】
ダイレクトティーチング中は上述したアシスト機能によって小さな力でもロボット15の姿勢を容易に変更できるものの、細かな位置の調整を行う際には寧ろ抵抗が大きい方が作業が容易になることもある。本実施形態では、上記抵抗切替ボタン32を操作することにより、抵抗が相対的に小さくなる強アシストモードと、抵抗が相対的に大きくなる弱アシストモードとに切替可能となっている。弱アシストモードと強アシストモーとをユーザが任意に切替可能な構成とすることで、利便性の向上が図られている。
【0024】
また、ユーザが上記位置取込ボタン33を操作すると、その取込コマンドが上位コントローラ92に送信される。この取込コマンドを受信した上位コントローラ92は、ロボット15のロータリエンコーダ38等から各軸の回転角度を示す情報であるエンコーダ情報を取得し、それらエンコーダ情報から特定した制御点を示す情報(手先の位置情報)を教示データとして当該上位コントローラ92のメモリに記憶する。
【0025】
次に、図3(b)を参照して、制御システムにおける制御モードがティーチングモードとなっている場合に、ロボットコントローラ93の駆動制御部95にて定期処理の一環として実行されるアシスト用処理について説明する。
【0026】
アシスト用処理においては先ず、現在設定されているモードが弱アシストモード及び強アシストモードの何れとなっているかを特定する(ステップS101)。次に、上記力覚センサからの情報に基づいて、外力の大きさ及び向きを特定する(ステップS102)。その後は、現在設定されているモードと特定した外力の大きさ及び向きに応じて、各サーボモータ36の制御態様を決定する(ステップS103)。なお、弱アシストモード及び強アシストモードは、ユーザが加えた外力の大きさに合わせて出力が調整される点では同様である。そして、決定した制御態様にてサーボモータ36の駆動処理を実行する(ステップS104)。これにより、ユーザの意図に合わせてロボット15が動作し、ロボット15の姿勢を変更するのに必要な操作力(外力)を軽減できる。
【0027】
ここで、サーボモータ36においては力と電流値との相関関係が線形となり得る。線形の関係となっている状況下であれば、サーボモータ36の電流値を監視することによりユーザが加えた外力の大きさや向きを推定可能である。但し、ロボット15の動作中の電流値は非定常になる場合が多く、更にはオイルシール、ベアリング、減速機等で発生する摩擦や熱などの損失もあって正確な推定は困難となり得る。つまり、サーボモータ36の電流値から推定した外力の向きや大きさに基づいて上述したアシストを実施しようとした場合には、アシストの精度や応答性の向上を図ることは困難になり得る。
【0028】
これに対して、例えばアーム31に起歪体を有する専用の力覚センサを搭載すれば、アシスト機能の精度や応答性の向上に寄与できる。但し、この種の力覚センサにおいては、ある程度大きな荷重や外力を許容しようとすれば起歪体ひいては力覚センサのサイズが大きくなる。このような事情から、力覚センサの取付位置は、実質的にアーム31の先端部、具体的にはフランジ部28とエンドエフェクタ29との間となる(図12の力覚センサ100参照)。しかしながら、このような配置では、以下の懸念が生じる。すなわち、力覚センサに対してアーム31の基端側となる位置を操作しても、外力を検出することができず、ダイレクトティーチング時のロボットの把持位置については実質的に力覚センサよりも先となる部分(例えばエンドエフェクタ29)に制限される。このように把持位置に係る制約が強くなることで、ユーザの利便性が大きく低下し得る。また、ロボット15を高速で動作させると手先がより振動的となり、結果として高速動作が難しくなる。更には、センサの追加によってロボットの可搬性能が低下したり、ロボットの小型化(スリム化)も難しくなったりすると懸念される。
【0029】
以上詳述したように、ロボットの基本性能の低下を避けつつ、ダイレクトティーチングにおけるアシスト機能を向上させる上では、外力の検出に係る構成に未だ改善の余地がある。本実施形態では、このような事情に配慮した工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図4を参照して、当該工夫について説明する。図4は、アーム31の内部構造を示す部分断面図であり、第1上アーム部25と第2上アーム部26とを連結する第4関節部及びその周辺部分を示している。なお、以下の説明では、第1上アーム部25に係る構成については一部符号の末尾に「D」を付し、第2上アーム部26に係る構成については一部符号の末尾に「E」を付し、手首部27に係る構成については一部符号の末尾に「F」を付し、フランジ部28に係る構成については一部符号の末尾に「G」を付して適宜区別する。
【0030】
第1上アーム部25には、当該第1上アーム部25の骨格を構成する高剛性(金属製)のハウジング51Dと、第4関節部用の駆動部としてのモータユニット35Dとが設けられており、当該モータユニット35Dがハウジング51Dに固定されている。モータユニット35Dは、サーボモータ36Dと当該サーボモータ36に付属の減速機37Dとを有してなる。
【0031】
減速機37Dは、内周面に内歯が形成された円環状の剛性内歯歯車(所謂サーキュラスプライン)を備えている。詳細については後述するが、剛性内歯歯車は、ボルトを用いて相手部材(アタッチメント56)に固定されている。
【0032】
剛性内歯歯車の内側には、ばね鋼を用いて形成された可撓性外歯歯車(所謂フレックススプライン)が配置されている。可撓性外歯歯車は、薄肉の円筒状に形成された歯車主部と、この歯車主部の一端部に形成されたフランジ部(所謂ダイヤフラム)とを有してなり、フランジ部がボルトを用いて相手部材(上記ハウジング51D)に固定されている。
【0033】
歯車主部の外周面において他端部寄りとなる部分には、剛性内歯歯車の内歯に噛み合う外歯が形成されている。歯車主部の内部、具体的には外歯が形成されている箇所には波動発生器が嵌め込まれている。波動発生器は、外周部分が可撓性外歯歯車(歯車主部)の内周面に対向する円環状のウェーブベアリングと、ウェーブベアリングの内部に収容されている楕円形の剛性カムとを有してなり、ウェーブベアリングが剛性カムの外形に合わせて変形することで全体として楕円形をなしている。
【0034】
具体的には、ウェーブベアリングは、歯車主部の内周面に当接する外輪と、剛性カムに固定された内輪と、外輪及び内輪の間に配列された複数のボールとからなる。剛性カムの中央部分には、サーボモータ36Dの軸部(入力軸)を連結するための連結部が形成されている。サーボモータ36Dの軸部に追従して剛性カムが内輪と一緒に回動することにより、外輪がボールを介して弾性変形し、外輪に当接している可撓性外歯歯車についても当該外輪に追従するようにして弾性変形する。
【0035】
可撓性外歯歯車の外歯のうち、楕円形となった波動発生器の長軸両端(長径方向両端部の2箇所)に位置しているものが、剛性内歯歯車の内歯に部分的に噛み合っている。そして、波動発生器が回転すると、外歯の内歯に対する噛み合い位置が円周方向にシフトする。外歯の枚数は、内歯の枚数よりも例えば2枚少なく設定されているため、可撓性外歯歯車と剛性内歯歯車との間に相対的な回転が生じる。このため、例えば可撓性外歯歯車を固定しておくことにより、剛性内歯歯車が出力部となって当該剛性内歯歯車から減速回転出力を取り出すことができる。なお、可撓性外歯歯車の固定対象となる相手部材と剛性内歯歯車の固定対象となる相手部材とを入れ替えてもよい。
【0036】
本実施形態においては、剛性内歯歯車、可撓性外歯歯車、波動発生器(剛性カム)が同軸となっており、何れも中心軸線CL(すなわち上記第4軸AX4)を中心に回動する。
【0037】
第1上アーム部25には、この中心軸線CLと同軸となるようにして高剛性(金属製)の動力伝達シャフト55が設けられている。動力伝達シャフト55は、一方の端部63が高剛性(金属製)の上記アタッチメント56を介してモータユニット35D(減速機37Dの剛性内歯歯車)に固定されている。具体的には、動力伝達シャフト55は、中心軸線CLと平行に延びる中空状をなしており、その端部63には、中心軸線CLと同じ方向に延びるボルト穴65が形成されている。アタッチメント56に形成された貫通孔に対してモータユニット35D側から挿通されたボルト81の軸部(ねじ部)83がボルト穴65に係合することにより、動力伝達シャフト55がアタッチメント56に固定されている。そして、このアタッチメント56がモータユニット35D(減速機37D)に固定されることで、動力伝達シャフト55がモータユニット35D(減速機37D)と一体化されている。
【0038】
また、動力伝達シャフト55の他方の端部64にも、中心軸線CLと同じ方向に延びるボルト穴65が形成されている。第2上アーム部26には、当該第2上アーム部26の骨格を構成する高剛性(金属製)のハウジング51Eが設けられており、動力伝達シャフト55における他方の端部64は、当該ハウジング51Eに固定されている。具体的には、動力伝達シャフト55の端部64には、中心軸線CLと同じ方向に延びるボルト穴66が形成されている。ハウジング51Eに形成された貫通孔に対してアーム31の先端側から挿通されたボルト85の軸部(ねじ部)87がボルト穴66に係合することにより、動力伝達シャフト55がハウジング51Eと一体化されている。つまり、動力伝達シャフト55が中心軸線CLを中心に回動すると、それに合わせてハウジング51E(第2上アーム部26)も回動し、モータユニット35Dに発生した動力によって第4関節部の角度(向き)が変化することとなる。
【0039】
動力伝達シャフト55を用いることにより、第4関節部用のモータユニット35Dを第3関節部に近づけて配置すること、言い換えれば重量物であるモータユニット35Dを第4関節部から遠ざけて配置することが可能となっている。これは、ロボット15を動作させた際の負荷を軽減する上で好ましく、ロボット15の高速動作等の実現に寄与できる。
【0040】
動力伝達シャフト55は、中心軸線CLと平行に延びる中空状をなしている。図5(a)に示すように、この動力伝達シャフト55の内部空間IEがロータリエンコーダ38から延びる信号線や、サーボモータ36から延びる動力線等の各種配線の配置領域となっている。動力伝達シャフト55の外周面61は、中心軸線CLを囲む8つの平面(平面部61a~61h)で構成されており、中心軸線CLと直交する断面が正八角形となるように形成されている。
【0041】
動力伝達シャフト55の外周面61には2種類の歪みゲージ41,42が取り付けられている。具体的には、中心軸線CLと同じ方向(引張及び圧縮方向)に生じる歪み(垂直歪み)を検出可能な4つの引張圧縮歪みゲージ41と、せん断応力によって中心軸線CLと交差する方向に生じる歪み(せん断歪み)を検出可能な4つのせん断歪みゲージ42とが取り付けられている。
【0042】
より詳細には、外周面61の平面部61a,61c,61e,61gに引張圧縮歪みゲージ41が配置され、外周面61の平面部61b,61d,61f,61hに引張圧縮歪みゲージ41が配置されており、それら引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42が中心軸線CLを囲むようにして交互に並んでいる。言い換えれば、各引張圧縮歪みゲージ41は中心軸線CLを中心に対称となるように配置されており、各せん断歪みゲージ42は引張圧縮歪みゲージ41は中心軸線CLを中心に対称となるように配置されている。また、引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42は何れも動力伝達シャフト55の端部63寄りに配置されており、当該端部63(端面)からの距離が同一となっている。
【0043】
なお、引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42については、検出精度の向上等の理由からある程度の大きさ(厚さ)を有しているが、取付用の平面部61a~61hを用意することにより、それら引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42の剥がれを抑制している。
【0044】
引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42は、付属の検出器(図示略)を介してロボットコントローラ93に接続されている。ロボットコントローラ93では、それら検出器から受信した検出信号に基づいて、x-y-z直交座標系(例えば第1上アーム部25の座標系)におけるx軸方向の軸力、y軸方向の軸力、z軸方向の軸力、x軸を中心とする回転トルク、y軸を中心とする回転トルク、z軸を中心とする回転トルクを各々特定し、その特定結果に基づいて各サーボモータ36の駆動制御を行う。つまり、本実施形態においては、動力伝達シャフト55に取り付けられた引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42とそれら歪みゲージ41,42に付属の検出器とによって力覚センサ39が構築されている。
【0045】
上述したように、ロータリエンコーダ38からの信号線やサーボモータ36からの動力線を動力伝達シャフト55の内部(内部空間IE)に収容し、動力伝達シャフト55の外周面61に引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42を配設することにより、それら信号線や動力線と引張圧縮歪みゲージ41やせん断歪みゲージ42との接触を回避している。これは、当該接触に起因したノイズや故障等の発生を抑制する上で好ましい。
【0046】
再び図4を参照して説明すると、動力伝達シャフト55は、ハウジング51Dにより支持された内外2重のカバー(外カバー52及び内カバー53)によって覆われており、外部への露出が回避されている。外カバー52及び内カバー53は何れも合成樹脂製となっており、剛性(例えばねじり剛性)については、ハウジング51D、モータユニット35、動力伝達シャフト55及びアタッチメント56よりも低くなっている。つまり、第1上アーム部25に外力が加わる等した場合には、外カバー52がある程度撓む可能性がある。但し、外カバー52と内カバー53との間には空隙が形成されており、内カバー53と動力伝達シャフト55の外周面61との間にも空隙が形成されている。そして、内カバー53については、ハウジング51Dによる片持ち構造となっており、その根元付近に歪みゲージ41,42が配置されている。このため、仮に外カバー52が撓んで内カバー53に当たった場合や、両カバー52,53が一緒に撓んだ場合であっても、内カバー53が歪みゲージ41,42に接触するといった不都合は生じにくい。
【0047】
なお、外カバー52及び内カバー53については、第2上アーム部26に対して非固定となっており、動力等を伝える機能を有していない。
【0048】
ここで、図5(b)を参照して、各アーム構成体(第1上アーム部25、第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28)の連結構造について補足説明する。
【0049】
本実施形態では、上述したように第1上アーム部25に配設されているモータユニット35Dの減速機37Dには、当該第1上アーム部25のハウジング51Dと動力伝達シャフト55の一端(端部63)とが固定されており、動力伝達シャフト55の他端(端部64)には第2上アーム部26のハウジング51Eが固定されている。これにより、減速機37Dを介して第1上アーム部25と第2上アーム部26とが連結された状態となっている。第2上アーム部26に配設されているモータユニット35Eの減速機37Eには、当該第2上アーム部26のハウジング51Eと手首部27のハウジング51Fとが固定されている。これにより、減速機37Eを介して第2上アーム部26と手首部27とが連結された状態となっている。手首部27に配設されているモータユニット35Fの減速機37Fには、当該手首部27のハウジング51Fとフランジ部28のハウジング51Gとが固定されている。これにより、減速機37Fを介して手首部27とフランジ部28とが連結された状態となっている。そして、このフランジ部28のハウジング51Gにエンドエフェクタ29が固定されている。
【0050】
つまり、第1上アーム部25よりも手先側に位置するアーム構成体(第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28)及びエンドエフェクタ29については第1上アーム部25の動力伝達シャフト55によって支持されているとも言える。動力伝達シャフト55はハウジング51と同様にアーム31における構造体の一部を構成しており、ユーザが、第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28、エンドエフェクタ29を把持してロボット15を押し引きした場合には、その力(外力)が第1上アーム部25の動力伝達シャフト55に伝わることとなる。
【0051】
動力伝達シャフト55については、ハウジング51,アタッチメント56と同様に、モータユニット35(減速機37)よりも剛性(ねじり剛性)が高くなっている。つまり、ユーザが手首部27やフランジ部28等を押し引きすることでその力が動力伝達シャフト55に伝わり、当該動力伝達シャフト55に歪みが発生するものの、その歪みについては微小となる。
【0052】
既に説明したように、本実施形態においては動力伝達シャフト55に歪みゲージ41,42を取り付けているが、これら歪みゲージ41,42の位置を工夫することで、微小な歪みを上手く検出できる構成を実現している。具体的には、動力伝達シャフト55において端部63側に偏倚させて歪みゲージ41,42を配置している。より詳細には、動力伝達シャフト55の端面からの距離と発生する歪みとの関係が線形となる範囲であって且つ当該範囲にて歪みが最大又はほぼ最大となる位置、すなわち端部63の端面からボルト81の軸部83においてボルト穴65と係合している部分の長さの2.5倍の距離を離した位置に歪みゲージ41,42を配置している。このような詳細な配置については、動力伝達シャフト55に生じる歪みの数値解析の結果に基づいて決定している。以下、図6を参照して数値解析のモデル及び条件について説明し、その後、図7を参照して数値解析の結果について説明する。
【0053】
図6に示すように、数値解析にて使用したモデルについては、動力伝達シャフト55の基本構造をそのまま踏襲した動力伝達シャフトモデル(以下、単に動力伝達シャフト55という)と、動力伝達シャフト55の固定対象を簡素化したモデルであるフランジモデル(以下、単にフランジ部67という)と、ボルト81を模したモデルであるボルトモデル(以下、単にボルト81という)とで構成されている。なお、図6においては便宜上、モデルの各部分に、モデルのベースとした実際の構成の符号と同じ符号を付している。
【0054】
先ず、本数値解析を行う上で前提としている各種条件について説明する。実際の動力伝達シャフト55についてはその両端が固定端となっているが、解析用のモデルでは便宜上、動力伝達シャフト55の一端(端部63)を固定端且つ他端(端部64)を自由端としている。ボルト81についてはアタッチメント56(フランジ部57)に形成された貫通孔に挿通され、その軸部83が動力伝達シャフト55のボルト穴65に係合させている。各ボルト81の係合部分(締結部分)には、ボルトプリテンション(具体的には4500N)を負荷している。ここで、フランジ部57を拘束(空間上に固定)し、端部64には中心軸線CLと直交する方向に押圧力(具体的には1000N)を負荷し、自由端側の端面を原点(0mm)とする座標Xで見た各部分にて歪み(垂直歪み)がどのような値となるかを解析している。
【0055】
解析結果については、動力伝達シャフト55の全長LS、動力伝達シャフト55の外径DS1、動力伝達シャフト55の内径DS2、ボルト穴65(めねじ)の深さHB、フランジ部57の厚さTF、フランジ部57の外径DF、ボルト81のボルト径DB、ボルト81(軸部83)の長さLB、動力伝達シャフト55の材料物性、フランジ部57の材料物性、ボルト81の材料物性等の様々な条件によって異なる。
【0056】
ここで、動力伝達シャフト55の外径DS1や全長LS等を変更した場合には、解析結果を示すグラフについては形状が類似となり、後述する線形区間については大きな影響を受けない。これに対して、ボルト81のボルト径DBや長さLB等の係合に係る構成に差が生じるような要素が変更された場合には、上記線形区間についても影響を受けやすくなる。そこで以下、これらの影響の大きい条件を変えた場合の解析結果について図7(a)に示す例を参照して説明する。
【0057】
図7(a)に示す例では、動力伝達シャフト55の全長LS=「100mm」、動力伝達シャフト55の外径DS1=「44mm」、動力伝達シャフト55の内径DS2=「28mm」、ボルト穴65(めねじ)の深さHB=「9mm≧2×DB」、フランジ部57の厚さTF=「7mm」、フランジ部57の外径DF=「65mm」、ボルト81のボルト径DB=「M4」、ボルト81(軸部83)の長さLB=「16mm」、動力伝達シャフト55の材料物性=「アルミニウム合金」、フランジ部57の材料物性=「アルミニウム合金」、ボルト81の材料物性=「構造用鉄鋼」とした「ベースモデル」の解析結果を実線で示し、ベースモデルからボルト穴65(めねじ)の深さHB=「12mm=3×DB」に変更した「めねじ3dモデル」の解析結果を二点鎖線で示し、ベースモデルからボルト穴65(めねじ)の深さHB=「14mm≧3×DB」且つボルト81(軸部83)の長さLB=「20mm」に変更した「めねじ3d+ボルト3dモデル」の解析結果を破線で示している。なお、モデル名(「めねじ3d」、「ボルト3d」)における「d」についてはボルト径DBを簡易的に示したものである。「ボルト3d」は、ボルト81の軸部83(ねじ部)においてボルト穴65に係合している部分(挿入されている部分)の長さがボルト径DMの3倍に相当するモデルであることを示しており、「めねじ3d」は、ボルト穴65の深さがボルト径DMの3倍に相当するモデルであることを示している。
【0058】
これらのモデルの解析結果から、ボルト81の近辺ではボルト軸力や角部の応力集中等の影響で応力が非線形且つ発散し、そのような特異場(以下、特異区間ともいう)を除いた部分では基準となる端面からの距離(座標X)と歪みとの関係が線形となっている。言い換えれば、ボルト81の先端から少し先くらいまでは当該ボルト81の影響が及ぶものの、それを超えるとボルト81の影響下から外れ、端面からの距離(座標X)と歪みとの関係が線形となるようにして推移する線形区間となる。
【0059】
「ベースモデル」と「めねじ3dモデル」とはボルト81が動力伝達シャフト55と係合している部分の長さBXは何れも「9mm」であり、解析結果に若干の違いはあるものの何れも座標X=「78mm」付近で特異区間→線形区間になっている。これに対して、「めねじ3d+ボルト3dモデル」は、ボルト81が動力伝達シャフト55と係合している部分の長さBXは「13mm」であり、座標X=「68mm」付近で特異区間→線形区間になっている。
【0060】
本実施形態に示す動力伝達シャフト55等は「ベースモデル」に相当するため、この解析結果に基づいて座標X=「70mm」~「75mm」となる位置、言い換えれば端部63側の端面から「25mm」~「30mm」となる位置に歪みゲージ41,42を配置している。
【0061】
なお、これに代えて、座標X=「73mm」~「78mm」となる位置、言い換えれば端部63側の端面から「22mm」~「27mm」となる位置に歪みゲージ41,42を配置したり、座標X=「60mm」~「65mm」となる位置、言い換えれば端部63側の端面から「35mm」~「40mm」となる位置に歪みゲージ41,42を配置したりすることも可能である。
【0062】
図7(b)に示す例では、上記ベースモデルに対して、ボルト穴65(めねじ)の深さHB=「11mm≧2×DB」、ボルト81のボルト径DB=「M5」、ボルト81(軸部83)の長さLB=「18mm」に変更した「ボルトM5モデル」の解析結果を一点鎖線で示している。なお、ボルト81のボルトプリテンションについては5900Nに変更している。
【0063】
当該モデルの解析結果においても、ボルト81の近辺ではボルト軸力や角部の応力集中等の影響で応力が非線形且つ発散し、そのような特異区間を除いては端面からの距離(座標X)と歪みとの関係が線形となっている。そして、「ベースモデル」及び「めねじ3dモデル」と、解析結果に若干の違いはあるものの何れも座標X=「78mm」付近で線形になっている。「ボルトM5モデル」は、ボルト81が動力伝達シャフト55と係合している部分の長さBXは「11mm」であり、座標X=「72.5mm」付近で線形になっている。
【0064】
何れのモデルについても、ボルト81が動力伝達シャフト55と係合している部分の長さBXの「2.5」倍ほど端面から離れた位置が、上述した線形性を維持した中で歪みが最大又はほぼ最大になる位置となっている。
【0065】
実際の動力伝達シャフト55についてはその両端がボルト81,85により固定されるため動力伝達シャフト55の両端で上記特異区間が発生する。これらを考慮した座標Xと歪みとの関係については、図8に示すように、ボルト81が係合している側の特異区間ES1とボルト85が係合している側の特異区間ES2と、それら特異区間ES1,ES2により挟まれた区間である線形区間SSとで異なる。
【0066】
特異区間ES1,ES2においては、歪みゲージ41,42の位置が僅かにずれただけでも、値に大きな差が生じる。特に、複数の歪みゲージ41,42を併用して外力の大きさや向きを特定する場合には、そのような差によって検出結果の確からしさが大きく低下し得る。この点、本実施形態に示したように、線形区間SSに歪みゲージ41,42を配置すれば、それら歪みゲージ41,42に微細なずれが生じたとしても、検出結果の確からしさが大きく損なわれることはない。故に、動力伝達シャフト55に対して歪みゲージ41,42を取り付ける取付作業に要求される精度が過度に高くなることを抑制し、作業効率の低下を好適に回避できる。
【0067】
また、線形区間SSにて端部63側に偏倚した位置に歪みゲージ41,42を配置することにより、端部64側に偏倚した位置に歪みゲージ41,42を配置する場合と比較して、検出される歪みについても僅かながら大きくなる。これは、ノイズ等の影響を抑えて、検出精度の向上を図る上(ノイズ耐性を強化する上)で好ましい。更には、上記実施形態では、線形区間SSにて最も端部63に近い位置、すなわち検出される歪みが線形区間SS内で最大となる位置に配置した。これにより、検出精度の更なる向上(ノイズ耐性の更なる強化)に貢献できる。
【0068】
動力伝達シャフト55については手先側の構成を支えるべく相応の剛性が確保される部品であり、起歪体等のように意図的に剛性を下げることで歪みを大きく発生させるための部品ではない。つまり、ダイレクトティーチング時にロボット本体21が押し引きされる等してその外力が動力伝達シャフトに伝わったとしても、発生する歪みは微小となる。本実施形態に示したように、動力伝達シャフト55に歪みゲージ41,42を取り付ける構成とすれば、従来のように起歪体を具備する力覚センサをアームの先端に装着する構成(図12(a)の力覚センサ100参照)と比較して、ロボット本体21の剛性低下に起因した耐久性の低下及び許容動作速度の低下を抑制できる点、手先重量の増加に起因した可搬重量の低下を抑制できる点で好ましい(図12(b)参照)。
【0069】
また、図12(a)に示すように、手先に力覚センサ100を装着した場合、当該力覚センサ100よりもアーム31の基端側となる部分を押し引きした場合には、外力の特定が困難になる。つまり、力覚センサ100による特定機能を上手く発揮させる上では、エンドエフェクタ29や力覚センサ100に付属の持ち手(図示略)以外は把持対象として不適切となり、ユーザの把持位置に係る制約が強くなる。この点、本実施形態に示したように動力伝達シャフト55に歪みゲージ41,42を取り付ける構成によれば、ロボット本体21の手先から離れた位置から外力を特定することができるため、ユーザの把持位置に係る制約の緩和に寄与できる。
【0070】
上述したように動力伝達シャフト55に発生する歪みは微小となる。このため、当該歪みを1の歪みゲージによって検出しようとした場合にはノイズ等の影響を受けやすくなり、外力特定の精度が低くなると懸念される。精度が低くなれば、不感帯が大きる等して、アシストをタイミングよく行うことが困難になる。特に、アシストの初動が遅れる等して、アシスト機能が適正に発揮されなくなることは、ユーザの満足度を低下させる要因になり得る。この点、本実施形態に示した構成では、複数の歪みゲージ41,42を利用することで精度低下を抑制している。複数の歪みゲージ41,42を併用するにしても動力伝達シャフト55についてはある程度の大きさを見込むことができるため、歪みゲージ41,42の数を増やして精度低下を抑える上で好ましい。
【0071】
以上の理由から、本実施形態に示した構成によれば、ロボット15の基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与できる。
【0072】
動力伝達シャフト55の固定部分やその近傍では、応力集中等の影響を受けやすい。つまり、歪みゲージ41,42の配置が少し違うだけでも歪みが大きく変動し且つ非線形な変動となる。よって、歪みの検出結果から外力の大きさや向きを精度よく特定することは難しくなる。特に、複数の歪みゲージ41,42を併用する上では、そのような懸念は顕著になる。これに対して、固定部分からある程度離れることで、固定部分からの距離と歪みの大きさとの関係が線形となり且つ変動の度合いも小さくなる。故に、本実施形態に示したように、固定部分の近傍から離れた位置に歪みゲージ41,42を配置することには技術的意義がある。
【0073】
動力伝達シャフト55における歪みはロボット本体21の手先側よりも基端側で大きくなる。応力集中等による特異場を避けつつも減速機37への固定部分側へ偏倚するようにして歪みゲージ41,42を配置したことで、極力大きな歪みを検出可能な構成を実現できる。
【0074】
本実施形態に示したように歪みゲージ41,42を動力伝達シャフト55の回動方向に並べる構成によれば、上述した応力集中等による特異場を避けつつも全ての歪みゲージ41,42を動力伝達シャフト55の一端側に寄せて配置しやすくなる。上述したように極力大きな歪みを検出可能とする上では、このような並びとすることには技術的意義がある。
【0075】
微小な歪みを検出する構成についてはノイズ等の影響を受けやすい。駆動部用の配線(特に動力線)が歪みゲージ41,42の近傍に配置されることは、ノイズ発生の要因になり得る。この点、本実施形態に示したように、動力伝達シャフト55を中空として、歪みゲージ41,42と駆動部用の配線とを内外に分けて配置する構成とすれば、上記懸念を好適に払しょくできる。なお、配線についてはロボット15の動きを阻害しないようにある程度の余裕代がある。ロボット15の動作時に配線が歪みゲージ41,42に接触することは、歪みゲージ41,42の故障等の要因になり得る。このような不都合の発生を回避する上でも、動力伝達シャフトの肉部を仕切りとして利用することは好ましい。
【0076】
動力伝達シャフト55の内周面62と外周面61とを比較した場合には、面積は外周面61の方が大きくなる。取り付ける歪みゲージ41,42の数を稼ぐ上で、外周面61を歪みゲージ41,42の取付対象とすることは有利となる。
【0077】
動力伝達シャフトからの歪みゲージの剥がれを抑制する上では、取付部分を極力フラットにすることが好ましい。ここで、動力伝達シャフトの断面が円形となっている場合には、その径が大きければ取付部分がある程度フラットになる。しかしながら、歪みゲージを取り付ける上で動力伝達シャフトの径について制約が生じることはロボットの小型化や軽量化の妨げになると懸念される。この点、本実施形態に示したように動力伝達シャフト55の外周面61の少なくとも一部を、動力伝達シャフト55の回動方向に複数の平面部61a~61hが並ぶ多角形状として、それら平面部61a~61hに歪みゲージ41,42を配設する構成とすれば、動力伝達シャフト55を歪みゲージ41,42の取付対象とする場合であっても、当該動力伝達シャフト55の大型化を抑制できる。
【0078】
なお、歪みの検出精度を向上させる上では、歪みゲージの歪み感受部の剛性を高くすることが好ましい。但し、歪み感受部の剛性が高くなれば、取付面への追従性が低くなり、歪みが繰り返し発生することで剥がれが生じる可能性も高くなる。このような事情に配慮しても、本実施形態に示したように断面を多角形となるように形成することは好ましい。
【0079】
ダイレクトティーチングの際にはユーザがロボット本体21に直接触れる。故に、歪みゲージ41,42をカバー52,53で覆って直接触れないようにすることで誤検出を抑制することが好ましい。また、歪みゲージ41,42が表面に露出している場合には、それら歪みゲージ41,42が把持の邪魔になり得る。この点、本実施形態に示したように、カバー52,53によって歪みゲージ41,42を覆う構成とすればユーザの把持位置に係る制約を緩和できる。
【0080】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、動力伝達シャフト55にボルト81,85の軸部83,87と係合するボルト穴65,66を設けた。ボルト81、85(特に軸部83,87)の近辺では軸力等の影響によって歪みゲージ41,42の配置に係る制約が強くなる。本実施形態では、歪みゲージ41,42の配置自由度を更に向上させる工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図9を参照して、本実施形態における特徴的な構成を第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1の実施形態と共通の構成については説明を省略する。
【0081】
図9(a)に示すように、本実施形態に示す動力伝達シャフト55Vの端部63Vには、筒状の本体部61Vから放射方向に突出するようにしてフランジ部68Vが形成されている。フランジ部68Vは中心軸線CLを中心とする円板状をなしており、板厚一定となるように形成されている。フランジ部68Vには厚さ方向(中心軸線CL方向)に貫通する貫通孔69Vが複数形成されている。これら貫通孔69Vには、アーム31の手先側からボルト81の軸部83が挿通されている。貫通孔69Vに挿通された軸部83は、アタッチメント56Vに形成されたボルト穴57Vに係合している。つまり、上記第1の実施形態とはボルト81の取付方向が逆となっており、ボルト81用のボルト穴の形成対象についても動力伝達シャフト55Vからアタッチメント56Vに変更されている。
【0082】
このような構成について第1の実施形態と同様の条件にて数値解析を行った。具体的には、各ボルト81の係合部分(締結部分)には、ボルトプリテンション(具体的には2750N)を負荷している。ここで、アタッチメント56Vを拘束(空間上に固定)し、端部64には中心軸線CLと直交する方向に押圧力(具体的には1000N)を負荷し、自由端側の端面を原点とする座標Xで見た各部分において歪み(垂直歪み)がどのような値となるかを解析している。なお、ボルトの固定箇所が上記実施形態の「8」から「12」に変更されていることを考慮して1の係合部分に負荷されるボルトプリテンションの値を引き下げている。
【0083】
また、本実施形態におけるモデル(以下、「つばつきモデル」という)は、動力伝達シャフト55の全長LS=「100mm」、動力伝達シャフト55の外径DS1=「44mm」、動力伝達シャフト55の内径DS2=「28mm」、ボルト穴65(めねじ)の深さHB=「9mm≧2×DB」、フランジ部57の厚さTF=「7mm」、フランジ部57の外径DF=「65mm」、ボルト81のボルト径DB=「M4」、ボルト81(軸部83)の長さLB=「16mm」、動力伝達シャフト55の材料物性=「アルミニウム合金」、フランジ部57の材料物性=「アルミニウム合金」、ボルト81の材料物性=「構造用鉄鋼」としている点については第1の実施形態に示した「ベースモデル」と同様であり、ボルト81用の貫通孔69Vの直径は「3.5mm」としている。なお、図9(b)には、本実施形態における「つばつきモデル」の解析結果を点線、「ベースモデル」の解析結果を実線で示している。
【0084】
これらの解析結果を比較すると、「つばつきモデル」の方が「ベースモデル」よりも特異区間、すなわちボルト81の軸力等が影響する範囲が小さくなっている。具体的には、座標X=「93mm」付近にて特異区間から線形区間に移る。言い換えれば、動力伝達シャフト55の本体部61Vすなわちフランジ部68Vから外れた位置であれば、当該フランジ部68Vに近い位置に歪みゲージ41,42を配置することで、歪みを好適に検出することが可能となる。
【0085】
<第3の実施形態>
上記第1の実施形態では、第1上アーム部25に配設されたモータユニット35Dの動力を動力伝達シャフト55を用いて第2上アーム部26側に伝達する構成とした。本実施形態ではモータユニット35Dの配置及びそれに付随する構成(動力伝達シャフト等)が第1の実施形態と相違している。以下、図10を参照し、第1の実施形態との相違点を中心に本実施形態における特徴的な構成について説明する。
【0086】
本実施形態に示すモータユニット35Dは、第1上アーム部25Xにおいて第3関節部寄りとなる位置に偏倚して配置されており、上記第1の実施形態と比べて当該モータユニット35Dと第4関節部(第2上アーム部26)との距離が大きくなっている。重量が嵩むモータユニット35Dを第3関節部側に近づけることにより、アーム31の負荷を軽減できる。これは、ロボット15の可搬重量の増加や動作時の応答性の向上等を実現する上で好ましい。
【0087】
ここで、上述したようなモータユニット35Dの配置を実現すべく、本実施形態に示す動力伝達シャフト55Xは第1の実施形態に示した動力伝達シャフト55よりも全長が長くなっている。動力伝達シャフト55Xは、アタッチメントを介してモータユニット35D(減速機37D)に固定されている第1シャフト55aXと、第2上アーム部26のハウジング51Eに固定されている第2シャフト55bXとが一連となるように連結されてなる。これら第1シャフト55aX及び第2シャフト55bXは、サーボモータ36Dの動作時には一体となって回動する。
【0088】
第1シャフト55aXについては、中心軸線CLを中心とする円筒状をなしており、第2シャフト55bXとの連結部分の近傍には、当該第1シャフト55aX用の軸受けであるクロスローラ72Xが配設されている。クロスローラ72Xは、アタッチメントを介してモータユニット35Dに固定された高剛性の枠体71Xによって支持されており、中心軸線CLと交差する方向への第1シャフト55aXの変形を規制している。
【0089】
第2シャフト55bXは、第1シャフト55aXよりも全長が短くなっており、本第2シャフト55bXについては軸受けが不具備となっている。第2シャフト55bXの外周面は、第1の実施形態に示した動力伝達シャフト55と同様に、中心軸線CLと直交する断面が正多角をなすように形成されている。そして、この第2シャフト55bX(詳しくは外周面)が歪みゲージ41,42の取付対象となっている。
【0090】
第1シャフト55aX及び第2シャフト55bXの連結部分の近傍に配設されたクロスローラ72Xによって、動力伝達シャフト55Xの変形が規制されているため、ダイレクトティーチングに際してユーザがアーム31のフランジ部28や手首部27等を押し引きした場合には、クロスローラ72Xの近傍で歪みが大きくなる。つまり、クロスローラ72Xの近傍では中心軸線CL方向における距離と垂直歪みとの関係が大きく変化し且つ両者の相関関係は非線形となる(特異場又は特異区間)。そこで、歪みゲージ41,42については、第2上アーム部26との固定部分とクロスローラ72Xによる規制部分とのうち後者側に偏倚させて配置してはいるものの、上記特異区間から外れるようにクロスローラ72Xによる規制部分からは一定程度離して配置している。言い換えれば、上記第1の実施形態と同様に、距離と垂直歪みとの相関関係が線形となる範囲においてクロスローラ72Xに極力近い位置に配置している。
【0091】
なお、第1シャフト55aXと第2シャフト55bXとをボルトによって一体化する場合には、第1シャフト55aX側からボルトを取り付ける場合(第2シャフト55bXにボルト穴が形成される場合)と第2シャフト55bX側からボルトを取り付ける場合(第1シャフト55aXにボルト穴が形成される場合)とで歪みゲージ41,42の理想的な配置については相違し得る。よって、ボルトを用いて一体化させる場合には、ボルトの取付構造に合わせて歪みゲージ41,42の配置を決定することが好ましい。
【0092】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。
【0093】
・上記各実施形態では、動力伝達シャフト55にて歪みが線形となる線形区間SS(特異区間ES1,ES2を除いた区間)においてアーム31の基端側となる位置に歪みゲージ41,42を配置したが、歪みゲージ41,42の配置については当該線形区間SS内であれば任意に変更してもよい。例えば、線形区間SSの中央部分に歪みゲージ41,42を配置したり、線形区間SSにおいてアーム31の手先側となる位置にゲージ41,42を配置したりすることも可能である。但し、上述したように動力伝達シャフト55については、手先側のアーム構成体(第2上アーム部26、手首部27、フランジ部28)及びエンドエフェクタ29を支える部品であり剛性が高い。つまり、動力伝達シャフト55に発生する歪みはそもそも微小である。このような事情に鑑みれば、歪みゲージ41,42による検出精度の向上を図る上で、線形区間SSにて歪みが大きくなる側、すなわち線形区間SSにおいてアーム31の基端側となる位置、より望ましくは線形区間SSにて歪みが最大となる位置にそれら歪みゲージ41,42を配置することが好ましい。
【0094】
・上記実施形態では、第1上アーム部25に設けられた動力伝達シャフト55に歪みゲージ41,42を取り付けた場合について例示した。例えば第2上アーム部26や手首部27等の他のアーム構成体に動力伝達シャフトが設けられている場合には、当該動力伝達シャフトに歪みゲージ41,42を配設することも可能である。但し、上記各実施形態に示したように第2上アーム部26の全長及び手首部27の全長が何れも第1上アーム部25の全長と比べて短い構成においては、動力伝達シャフトを用いることによる恩恵、すなわち重量物であるモータユニットをアーム31の基端側に寄せることによる性能強化の恩恵が小さくなる。そして、動力伝達シャフトが短い場合には、当該動力伝達シャフトに生じる歪みも小さくなるため、歪みの検出が難しくなる。一方、下アーム部24については全長が長いため動力伝達シャフトを適用することによる恩恵は大きくなるものの、第3軸AX3と下アーム部24の長手方向とが交差するため、動力伝達シャフトの長さを稼ぎにくい。そして、第1関節部~第3関節部を操作対象とした場合にはユーザは逆運動学を意識することになり操作性は低下することとなる。このように、第1上アーム部25に設けられた動力伝達シャフトを歪みゲージ41,42の取付対象とすることには技術的意義がある。
【0095】
・上記各実施形態では、歪みゲージ41,42の取付対象となる動力伝達シャフト55(詳しくは外周面61)の断面(中心軸線CLと直交する断面)を八角形となるように形成したが、これに限定されるものではない。例えば、四角形や五角形等の他の多角形(好ましくは正多角形)となるように形成してもよい。また、図11(a)に示す動力伝達シャフト55Yのように、中心軸線CLと直交する断面、詳しくは外周面61Yの断面が円形となるように形成してもよい。なお、動力伝達シャフト55については中空とすることが好ましいものの、中実とすることを否定するものではない。
【0096】
・上記実施形態では、ロータリエンコーダ38用の信号線やサーボモータ36用の動力線等の配線を動力伝達シャフト55の内側(内部空間IE)に配置する一方、歪みゲージ41,42を動力伝達シャフト55の外側(外周面61)に配置し、配置スペースを分ける構成としたが、これに限定されるものではない。それら配線の配置スペースと歪みゲージ41,42の配置スペースとを分けない構成、すなわちそれらの配線及び歪みゲージ41,42を動力伝達シャフト55の外側又は内側にまとめて配置する構成とすることも可能である。
【0097】
・上記実施形態では、中心軸線CLの軸線方向(アーム31の長手方向)における同一箇所に引張圧縮歪みゲージ41とせん断歪みゲージ42とを配置したが、引張圧縮歪みゲージ41の配置箇所とせん断歪みゲージ42の配置箇所とを中心軸線CLの軸線方向にずらすことも可能である。ロボットのサイズが小さくなれば、動力伝達シャフトの径も小さくなる。このような小型のロボットについては複数の歪みゲージを環状に並べて配置することが困難になり得る。本変形例に示すように引張圧縮歪みゲージ41の配置箇所とせん断歪みゲージ42の配置箇所とを中心軸線CLの軸線方向にずらす構成によれば、力覚センサ39の存在がロボットの小型化の妨げになることを好適に回避できる。
【0098】
・上記実施形態では、4つの引張圧縮歪みゲージ41と4つのせん断歪みゲージ42とで力覚センサ39を構成したが、各歪みゲージ41,42の数については、検出機能を損なわない範囲であれば任意に変更してもよい。例えば、引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42の数を何れも3つとしたり、引張圧縮歪みゲージ41の数を3つ且つせん断歪みゲージ42の数を2つとしたりすることも可能である。但し、動力伝達シャフト55が高剛性となっており、発生し得る歪みが微小である点に考慮すれば、上記実施形態に示したように、各歪みゲージ41,42の数をある程度多くしてノイズ等の影響に配慮することには技術的意義がある。
【0099】
・上記各実施形態では、ティーチングモード中に力覚センサ39を用いてアシスト機能を発揮させる構成としたが、これに代えて又は加えて、ロボット15の自動運転モード中も力覚センサ39を用いてロボット15に生じる負荷(抵抗)を監視し、当該ロボット15に想定範囲を超える負荷が生じた場合には当該ロボット15を停止(防護停止)させたり警告を行ったりする構成としてもよい。つまり、力覚センサ39による検出結果をダイレクトティーチング時のアシスト以外の目的で利用する構成としてもよい。
【0100】
・上記各実施形態では、操作ボタンである抵抗切替ボタン32及び位置取込ボタン33をアーム31のフランジ部28に配設したが、それら抵抗切替ボタン32及び位置取込ボタン33の配設箇所については任意に変更してもよい。例えば、手首部27や第2上アーム部26に配設することも可能である。因みに、ダイレクトティーチング時の位置取込や抵抗切替の操作を円滑に行う上では、抵抗切替ボタン32及び位置取込ボタン33の近傍を把持することが有利となる。そこで、第1上アーム部25よりもアーム31の先端側に位置するアーム構成体に抵抗切替ボタン32及び位置取込ボタン33を配置して、ユーザに抵抗切替ボタン32及び位置取込ボタン33の近傍を把持するように促すことは、アシスト機能を上手く発揮させる上で好ましい。
【0101】
・上記実施形態では、ロボット15(アーム31)の外郭を構成する外カバー52内に収容された動力伝達シャフト55を歪みゲージ41,42の取付対象とした場合について例示した。本ロボット15とは異なるタイプのロボット、具体的には図11(b)に示す要に、ロボット(アーム31Z)の外郭を構成しているハウジング51DZ=動力伝達シャフト55Zとなるタイプのロボットにおいても、当該動力伝達シャフト55Zを歪みゲージ41,42の取付対象としてもよい。この場合、ロボットの製造効率の向上や取付作業時のミスの軽減を図る上では上記実施形態と同様に動力伝達シャフト55Zの外周面61Zに歪みゲージ41,42を取り付ける構成とすることが好ましいものの、このような配置ではダイレクトティーチング時にユーザが触れてよい箇所が制限されるだけでなく、ユーザが誤って歪みゲージ41,42やそれら歪みゲージ41,42から延びる配線に触れることで誤検出が生じやすくなる。そこで、動力伝達シャフト55Zがアーム31Zの外殻の構成する場合には、当該動力伝達シャフト55Zの内周面62Zに歪みゲージ41,42を取り付ける構成を併用すればそれらの懸念を払しょくできる。
【0102】
・上記実施形態では、歪みゲージ41,42を動力伝達シャフト55の外周面61に取り付ける構成としたが、これに代えて、歪みゲージ41,42を動力伝達シャフト55の内周面62(図4参照)に取り付ける構成としてもよいし、引張圧縮歪みゲージ41及びせん断歪みゲージ42の一方を動力伝達シャフト55の外周面61に取り付け、他方を動力伝達シャフト55の内周面62に取り付ける構成としてもよい。
【0103】
・上記実施形態ではサーボモータ36に付属の減速機37として波動歯車装置を用いた場合について例示したが、減速機の具体的構成については任意である。例えば、内接式遊星歯車機構と等速度内歯車機構を組み合わせた遊星歯車装置等の他の歯車装置を適用することも可能である。なお、波動歯車装置を構成している外歯歯車及び内歯歯車のうち何れを動力伝達シャフト55の固定対象とするかについては任意であり、内歯歯車に第1上アーム部25のハウジング51Dを固定する一方、外歯歯車に動力伝達シャフト55を固定する構成としてもよい。
【0104】
・上記各実施形態では、歪みゲージ41,42からの検出信号に基づいてアーム31に作用する外力の大きさ及び方向を特定する構成としたが、これに限定されるものではない。外力の大きさ及び方向の少なくとも一方を特定する構成を否定するものではない。
【0105】
・上記各実施形態では、ティーチングモード中は、力覚センサ39からの情報がロボットコントローラ93に入力され、当該ロボットコントローラ93にて外力の大きさ及び向きを特定してサーボモータ36の制御態様を決定する構成としたが、これらの機能を上位コントローラ92が担う構成とすることも可能である。
【0106】
・上記実施形態では6軸の多関節型ロボットについて例示したが、動力伝達シャフトへ歪みゲージを取り付ける構成を3軸~5軸、7軸等の他の多関節型ロボットに適用することも可能である。また、垂直多関節型ロボットに代えて、当該構成を水平多関節型ロボットに適用することも可能である。
【0107】
・上記実施形態では、工場で使用される産産業用ロボットについて例示したが、動力伝達シャフトを具備する他の多関節型ロボット、具体的には食品、サービス、医療等の他の分野にて使用される多関節型ロボットに適用することも可能である。
【0108】
<上記各実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記各実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0109】
特徴1.複数のアーム構成体(第1上アーム部25や第2上アーム部26)が一連となるようにして連結されたアーム(アーム31)及び当該アームの関節部(第1関節部~第6関節部)を駆動させる駆動機構(モータユニット35や動力伝達シャフト55)を有してなるロボット本体(ロボット本体21)と、前記ロボット本体に作用する外力を監視する監視部(力覚センサ39及びロボットコントローラ93)とを備えている産業用ロボット(ロボット15)であって、
前記複数のアーム構成体として、第1アーム構成体(第1上アーム部25)と、当該第1アーム構成体に対して前記ロボット本体の手先側に位置する第2アーム構成体(第2上アーム部26)とを含み、
前記駆動機構は、
前記第1アーム構成体に設けられた駆動部(モータユニット35D)と、
前記第1アーム構成体と前記第2アーム構成体とを連結する連結部の一部を構成し、前記駆動部からの動力を前記第2アーム構成体に伝達する動力伝達シャフト(動力伝達シャフト55)と
を有し、
前記監視部は、
前記動力伝達シャフトに取り付けられ、当該動力伝達シャフトに生じる歪みを検出可能な複数の歪みゲージ(歪みゲージ41,42)と、
それら歪みゲージからの検出信号に基づいて、前記外力の大きさ及び向きを特定する特定部(ロボットコントローラ93にてステップS102の処理を実行する機能)と
を有している産業用ロボット。
【0110】
動力伝達シャフトについては手先側の構成を支えるべく相応の剛性が確保される部品であり、起歪体等のように意図的に剛性を下げることで歪みを大きく発生させるための部品ではない。つまり、ダイレクトティーチング時にロボット本体が押し引きされる等してその外力が動力伝達シャフトに伝わったとしても、発生する歪みは微小となる。本特徴に示すように、動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成とすれば、従来のように起歪体を具備する力覚センサをアームの先端に装着する構成と比較して、ロボット本体の剛性低下や手先重量の増加等を抑制できる。これは、産業用ロボットにおける移動速度や可搬重量等の基本性能の低下を抑える上で好ましい。なお、重量が嵩む駆動部の位置を動力伝達シャフトを用いることでアームの基端側へシフトさせることができるため、寧ろ基本性の強化に寄与し得るとも言える。
【0111】
また、手先に力覚センサを装着した場合、当該力覚センサよりもアームの基端側を押し引きした場合には、外力の特定が困難になる。つまり、力覚センサによる特定機能を上手く発揮させる上では、ユーザの把持位置に係る制約が強くなる。この点、本特徴に示すように動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成によれば、ロボット本体の手先から離れた位置で外力を特定することができるため、ユーザの把持位置に係る制約の緩和に寄与できる。
【0112】
上述したように動力伝達シャフトに発生する歪みは微小となる。このため、当該歪みを1の歪みゲージによって検出しようとした場合にはノイズ等の影響を受けやすくなり、外力特定の精度が低くなると懸念される。精度が低くなれば、不感帯が大きる等して、アシストをタイミングよく行うことが困難になる。特に、アシストの初動が遅れる等して、アシスト機能が適正に発揮されなくなることは、ユーザの満足度を低下させる要因になり得る。この点、本特徴に示す構成では、複数の歪みゲージを利用することで精度低下を抑制している。複数の歪みゲージを併用するにしても動力伝達シャフトについてはある程度の大きさを見込むことができるため、歪みゲージの数を増やして精度低下を抑える上で好ましい。
【0113】
以上の理由から、本特徴に示す構成によれば、産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与できる。
【0114】
特徴2(メイン).複数のアーム構成体(第1上アーム部25や第2上アーム部26)が一連となるようにして連結されたアーム(アーム31)及び当該アームの関節部(第1関節部~第6関節部)を駆動させる駆動機構(モータユニット35や動力伝達シャフト55)を有してなるロボット本体(ロボット本体21)と、前記ロボット本体を制御する制御装置(ロボットコントローラ93)とを備えている産業用ロボット(ロボット15)であって、
前記複数のアーム構成体として、第1アーム構成体(第1上アーム部25)と、当該第1アーム構成体に対して前記ロボット本体の手先側に位置する第2アーム構成体(第2上アーム部26)とを含み、
前記駆動機構は、
前記第1アーム構成体に設けられた駆動部(モータユニット35D)と、
前記第1アーム構成体と前記第2アーム構成体とを連結する連結部の一部を構成し、前記駆動部からの動力を前記第2アーム構成体に伝達する動力伝達シャフト(動力伝達シャフト55)と
を有し、
前記動力伝達シャフトに取り付けられ、当該動力伝達シャフトに生じる歪みを検出可能な複数の歪みゲージ(歪みゲージ41,42)を備え、
前記制御装置は、それら歪みゲージからの検出信号に基づいて、前記ロボット本体に作用する外力の大きさ及び向きを特定する特定部(ロボットコントローラ93にてステップS102の処理を実行する機能)を有し、前記特定部による特定結果に基づいて前記駆動部の駆動制御を行う産業用ロボット。
【0115】
動力伝達シャフトについては手先側の構成を支えるべく相応の剛性が確保される部品であり、起歪体等のように意図的に剛性を下げることで歪みを大きく発生させるための部品ではない。つまり、ダイレクトティーチング時にロボット本体が押し引きされる等してその外力が動力伝達シャフトに伝わったとしても、発生する歪みは微小となる。本特徴に示すように、動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成とすれば、従来のように起歪体を具備する力覚センサをアームの先端に装着する構成と比較して、ロボット本体の剛性低下や手先重量の増加等を抑制できる。これは、産業用ロボットにおける移動速度や可搬重量等の基本性能の低下を抑える上で好ましい。なお、重量が嵩む駆動部の位置を動力伝達シャフトを用いることでアームの基端側へシフトさせることができるため、寧ろ基本性の強化に寄与し得るとも言える。
【0116】
また、手先に力覚センサを装着した場合、当該力覚センサよりもアームの基端側を押し引きした場合には、外力の特定が困難になる。つまり、力覚センサによる特定機能を上手く発揮させる上では、ユーザの把持位置に係る制約が強くなる。この点、本特徴に示すように動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成によれば、ロボット本体の手先から離れた位置で外力を特定することができるため、ユーザの把持位置に係る制約の緩和に寄与できる。
【0117】
上述したように動力伝達シャフトに発生する歪みは微小となる。このため、当該歪みを1の歪みゲージによって検出しようとした場合にはノイズ等の影響を受けやすくなり、外力特定の精度が低くなると懸念される。精度が低くなれば、不感帯が大きる等して、アシストをタイミングよく行うことが困難になる。特に、アシストの初動が遅れる等して、アシスト機能が適正に発揮されなくなることは、ユーザの満足度を低下させる要因になり得る。この点、本特徴に示す構成では、複数の歪みゲージを利用することで精度低下を抑制している。複数の歪みゲージを併用するにしても動力伝達シャフトについてはある程度の大きさを見込むことができるため、歪みゲージの数を増やして精度低下を抑える上で好ましい。
【0118】
以上の理由から、本特徴に示す構成によれば、産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与できる。
【0119】
特徴3(スタートクレーム).複数のアーム構成体(第1上アーム部25や第2上アーム部26)が一連となるようにして連結されたアーム(アーム31)及び当該アームの関節部(第1関節部~第6関節部)を駆動させる駆動機構(モータユニット35や動力伝達シャフト55)を有してなるロボット本体(ロボット本体21)と、前記ロボット本体を制御する制御装置(ロボットコントローラ93)とを備えている産業用ロボット(ロボット15)であって、
前記複数のアーム構成体として、第1アーム構成体(第1上アーム部25)と、当該第1アーム構成体に対して前記ロボット本体の手先側に位置する第2アーム構成体(第2上アーム部26)とを含み、
前記駆動機構は、
前記第1アーム構成体に固定され、アクチュエータ(サーボモータ36D)及び当該アクチュエータに付属の減速機(減速機37D)を有してなる駆動部(モータユニット35D)と、
前記減速機と前記第2アーム構成体とに固定されることにより前記第1アーム構成体と前記第2アーム構成体とを連結する連結部の一部を構成し、前記駆動部からの動力を前記第2アーム構成体に伝達する動力伝達シャフト(動力伝達シャフト55)と
を有し、
前記動力伝達シャフトに取り付けられ、当該動力伝達シャフトに生じる歪みを検出可能な複数の歪みゲージ(歪みゲージ41,42)を備え、
前記制御装置は、それら歪みゲージからの検出信号に基づいて、前記ロボット本体に作用する外力の大きさ及び向きを特定する特定部(ロボットコントローラ93にてステップS102の処理を実行する機能)を有し、前記特定部による特定結果に基づいて前記駆動部の駆動制御を行う産業用ロボット。
【0120】
動力伝達シャフトについては手先側の構成を支えるべく相応の剛性が確保される部品であり、起歪体等のように意図的に剛性を下げることで歪みを大きく発生させるための部品ではない。つまり、ダイレクトティーチング時にロボット本体が押し引きされる等してその外力が動力伝達シャフトに伝わったとしても、発生する歪みは微小となる。本特徴に示すように、動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成とすれば、従来のように起歪体を具備する力覚センサをアームの先端に装着する構成と比較して、ロボット本体の剛性低下や手先重量の増加等を抑制できる。これは、産業用ロボットにおける移動速度や可搬重量等の基本性能の低下を抑える上で好ましい。なお、重量が嵩む駆動部の位置を動力伝達シャフトを用いることでアームの基端側へシフトさせることができるため、寧ろ基本性の強化に寄与し得るとも言える。
【0121】
また、手先に力覚センサを装着した場合、当該力覚センサよりもアームの基端側を押し引きした場合には、外力の特定が困難になる。つまり、力覚センサによる特定機能を上手く発揮させる上では、ユーザの把持位置に係る制約が強くなる。この点、本特徴に示すように動力伝達シャフトに歪みゲージを取り付ける構成によれば、ロボット本体の手先から離れた位置で外力を特定することができるため、ユーザの把持位置に係る制約の緩和に寄与できる。
【0122】
上述したように動力伝達シャフトに発生する歪みは微小となる。このため、当該歪みを1の歪みゲージによって検出しようとした場合にはノイズ等の影響を受けやすくなり、外力特定の精度が低くなると懸念される。精度が低くなれば、不感帯が大きる等して、アシストをタイミングよく行うことが困難になる。特に、アシストの初動が遅れる等して、アシスト機能が適正に発揮されなくなることは、ユーザの満足度を低下させる要因になり得る。この点、本特徴に示す構成では、複数の歪みゲージを利用することで精度低下を抑制している。複数の歪みゲージを併用するにしても動力伝達シャフトについてはある程度の大きさを見込むことができるため、歪みゲージの数を増やして精度低下を抑える上で好ましい。
【0123】
以上の理由から、本特徴に示す構成によれば、産業用ロボットの基本性能の低下を抑えつつ、ダイレクトティーチング時のアシスト機能の向上に寄与できる。
【0124】
特徴4(剛性比較).前記動力伝達シャフトは、前記減速機よりも剛性が高い特徴3に記載の産業用ロボット。
【0125】
動力伝達シャフトの剛性を減速機よりも高くすることは、当該動力伝達シャフトの歪みによるロボットの基本性能の低下を抑える上で効果的である。このような構成では、動力伝達シャフトの歪みが一層小さくなると想定されるものの、特徴1等に示したように複数の歪みゲージを併用することで、そのような懸念を好適に払しょくできる。
【0126】
なお、本特徴に示す構成を「前記動力伝達シャフトは、前記減速機よりもねじり剛性高い特徴3に記載の産業用ロボット。」としてもよい。
【0127】
特徴5(固定箇所近傍を避ける).前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトにおいて前記減速機に固定されている部分の近傍から離して配置されている特徴3又は特徴4に記載の産業用ロボット。
【0128】
動力伝達シャフトの固定部分やその近傍では、応力集中等の影響を受けやすい。つまり、歪みゲージの配置が少し違うだけでも歪みが大きく変動し且つ非線形な変動となる。よって、歪みの検出結果から外力の大きさや向きを精度よく特定することは難しくなる。特に、特徴1に示したように、複数の歪みゲージを併用する上では、そのような懸念は顕著になる。これに対して、固定部分からある程度離れることで、固定部分からの距離と歪みの大きさとの関係が線形となり且つ変動の度合いも小さくなる。故に、本特徴に示すように、固定部分の近傍から離して配置することには技術的意義がある。
【0129】
なお、本特徴に示す「近傍から離して」とは、応力集中等による影響が及ぶ範囲を避けることを示す。当該範囲(特異場)については、例えば実験により確認したり、解析により確認したりするよい。
【0130】
特徴6.前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトにおいて、前記減速機への固定部分と、前記第2アーム構成体への固定部分との間となる部分であって且つ前記減速機への固定部分側へ偏倚するようにして配置されている特徴3乃至特徴5のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0131】
動力伝達シャフトにおける歪みはロボット本体の手先側よりも基端側で大きくなる。特徴5に示した応力集中等による特異場を避けつつも減速機への固定部分側へ偏倚するようにして歪みゲージを配置することで、極力大きな歪みを検出可能な構成を実現できる。
【0132】
特徴7.前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトの回動方向に並ぶようにして配置されている特徴1乃至特徴6のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0133】
本特徴に示すように歪みゲージを回動方向に並べる構成によれば、上述した応力集中等による特異場を避けつつも全ての歪みゲージを動力伝達シャフトの一端側に寄せて配置しやすくなる。上述したように極力大きな歪みを検出可能とする上では、このような並びとすることには技術的意義がある。
【0134】
特徴8(仕切り).前記動力伝達シャフトは、中空となっており、
前記動力伝達シャフトの内外の一方に前記駆動機構を構成する駆動部用の配線が配設され、他方に前記歪みゲージが配設されている特徴1乃至特徴7のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0135】
微小な歪みを検出する構成においてはノイズ等の影響を受けやすい。駆動部用の配線(特に動力線)が歪みゲージの近傍に配置されることは、ノイズ発生の要因になり得る。この点、本特徴に示すように、動力伝達シャフトを中空として、歪みゲージと駆動部用の配線とを内外に分けて配置する構成とすれば、上記懸念を好適に払しょくできる。なお、配線についてはロボットの動きを阻害しないようにある程度の余裕代がある。ロボット動作時に配線が歪みゲージに接触することは、歪みゲージの故障等の要因になり得る。このような不都合の発生を回避する上でも、動力伝達シャフトを仕切りとして利用することは好ましい。
【0136】
特徴9.前記動力伝達シャフトは中空となっており、当該動力伝達の内部に前記駆動機構を構成する駆動部用の配線が配置されており、
前記動力伝達シャフトの外周面に前記歪みゲージが配置されている特徴1乃至特徴8のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0137】
本特徴に示す構成によれば、特徴8に示した効果に加えて以下の効果が期待できる。すなわち、動力伝達シャフトの内周面と外周面とを比較した場合には、面積は外周面の方が大きくなる。取り付ける歪みゲージの数を稼ぐ上で、外周面を歪みゲージの取付対象とすることは有利となる。
【0138】
特徴10(断面形状).前記動力伝達シャフトには、当該動力伝達シャフトの回動方向に複数の平面部(平面部61a~61h)が並び当該動力伝達シャフトの回動中心軸線(中心軸線CL)と直交する断面が多角形(例えば八角形)をなす多角形部が設けられており、
前記歪みゲージは、それら平面部に配設されている特徴1乃至特徴9のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0139】
動力伝達シャフトからの歪みゲージの剥がれを抑制する上では、取付部分を極力フラットにすることが好ましい。ここで、動力伝達シャフトの断面が円形となっている場合には、その径が大きければ取付部分がある程度フラットになる。しかしながら、歪みゲージを取り付ける上で動力伝達シャフトの径について制約が生じることはロボットの小型化や軽量化の妨げになると懸念される。この点、本特徴に示すように動力伝達シャフトの外面の少なくとも一部を、動力伝達シャフトの回動方向に複数の平面部が並ぶ多角形状として、それら平面部に歪みゲージを配設する構成とすれば、動力伝達シャフトを歪みゲージの取付対象とする場合であっても、当該動力伝達シャフトの大型化を抑制できる。
【0140】
なお、歪みの検出精度を向上させる上では、歪みゲージの歪み感受部の剛性を高くすることが好ましい。但し、歪み感受部の剛性が高くなれば、取付面への追従性が低くなり、歪みが繰り返し発生することで剥がれが生じる可能性も高くなる。このような事情に配慮しても、本特徴に示すように断面を多角形となるように形成することは好ましい。
【0141】
特徴11(内蔵).前記第1アーム構成体には、前記動力伝達シャフトの外周面に隙間を隔てて対向し当該動力伝達シャフトを覆うカバー(カバー52,53)が設けられており、
前記歪みゲージは、前記隙間に配置されている特徴1乃至特徴10のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0142】
ダイレクトティーチングの際にはユーザがロボット本体に直接触れる。故に、歪みゲージをカバーで覆って直接触れないようにすることで誤検出を抑制することが好ましい。また、歪みゲージが表面に露出している場合には、それら歪みゲージが把持の邪魔になり得る。この点、本特徴に示すように、カバーによって歪みゲージを覆う構成とすればユーザの把持位置に係る制約を緩和できる。
【0143】
特徴12(ボタンとの位置関係).前記複数のアーム構成体のうち、前記第1アーム構成体よりも前記ロボット本体の手先側となる所定のアーム構成体には、ユーザが前記ロボット本体を直接動かして動作位置を教示するダイレクトティーチング中に当該ユーザによって操作される操作ボタン(抵抗切替ボタン32や位置取込ボタン33)が設けられている特徴1乃至特徴11のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0144】
本特徴に示すように第1アーム構成体よりも手先側に位置する所定のアーム構成体に操作ボタンを設けることでユーザの把持位置を外力の特定に好ましい位置へと誘導できる。
【0145】
なお、本特徴に示す「所定のアーム構成体」を「第2アーム構成体」とすることも可能である。
【0146】
特徴13(向きを限定しない 規制部近傍を避ける).前記第1アーム構成に設けられ、前記動力伝達シャフトの中間部分に当接することにより当該動力伝達シャフトの回動中心軸線(中心軸線CL)と直交する方向への変形を規制する規制部(クロスローラ72X)を備え、
前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトにおいて前記第2アーム構成体への固定部分と前記規制部により変形が規制されている部分との間となる部分に配置されている特徴1乃至特徴12のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0147】
動力伝達シャフトを長くすることは歪みセンサによる歪みの検出を行いやすくする上では好ましく、且つ、駆動部を基端側へ寄せてロボット動作時の負荷軽減等を実現する上では好ましい。しかしながら、動力伝達シャフトが過度に長くなった場合には、ロボット本来の動きに悪影響が及ぶ懸念が生じる。そこで、本特徴に示すように規制部を用いる構成とすれば、動力伝達シャフトが過度に変形することを抑制できる。このような構成においては、動力伝達シャフトにおいて第2アーム構成体に固定されている部分と規制部によって変位が規制されている部分との間に歪みゲージを配置することで規制部による規制機能と、歪みゲージによる検出機能とを好適に共存させることができる。
【0148】
特徴14.前記歪みゲージは、前記動力伝達シャフトにおいて前記第2アーム構成体への固定部分と前記規制部により変形が規制されている規制部分との間となる部分であって、前記規制部分側に偏倚した部分に配置されている特徴13に記載の産業用ロボット。
【0149】
本特徴に示すように規制部によって動力伝達シャフトの変形を規制する構成とすることは動力伝達シャフトを長くする上で好ましく駆動部の配置自由度を向上させる上で有利である。但し、第2アーム構成体への固定部分の近傍だけでなく、規制部により変形を規制している規制部分の近傍においても応力集中等の影響を受けやすくなる。そして、固定部分や規制部分からある程度離れることで、上述した距離と歪みの大きさとの関係が線形となり且つ変動の度合いも小さくなる。より詳しくは、歪み自体は、固定部分側よりも規制部側の方が大きくなる。そこで、本特徴に示すように、第2アーム構成体への固定部分と規制部による規制部分との間となる部分であって規制部分側に偏倚した部分に歪みゲージを配置すれば、実用上好ましい構成を実現できる。
【0150】
特徴15(ダイレクトティーチングのための).前記制御装置における制御モードとして、ユーザが産業用ロボットを直接動かして動作位置を教示するダイレクトティーチング用のダイレクトティーチングモードと、前記ダイレクトティーチングモードにおける教示に従って前記ロボット本体を動作させる自動運転モードとを含み、
前記制御装置は、前記自動運転モード中は、前記特定部による前記特定及び前記制御部による前記制御の少なくとも何れについては実施しない構成となっている特徴1乃至特徴14のいずれか1つに記載の産業用ロボット。
【0151】
ダイレクトティーチング時のアシストにおいては、外力の向きと大きさとに合わせてロボットを積極的に動作させることで、ユーザの負担を軽減できるという効果が期待できる。しかしながら、このような機能が自動運転モード中に発揮された場合には、適正な動作の妨げになるだけでなく、想定外の動きによって周辺設備等との衝突のリスクが高くなり得る。故に、自動運転モード中は、外力の特定やそれに基づく駆動制御を行わない構成とすることにより、実用上好ましい構成を実現できる。
【符号の説明】
【0152】
10…ロボットシステム、15…産業用ロボットとしてのロボット、21…ロボット本体、25…第1上アーム部、26…第2上アーム部、31…アーム、35…モータユニット、36…サーボモータ、39…力覚センサ、41…引張圧縮歪みゲージ、42…せん断歪みゲージ、51…ハウジング、55…動力伝達シャフト、56…アタッチメント、61…外周面、61a~61h…平面部、63,64…端部、65,66…ボルト穴、81,85…ボルト、83,87…軸部、92…上位コントローラ、93…ロボットコントローラ、95…駆動制御部、AX4…第4軸、CL…中心軸線、IE…内部空間、SS…線形区間。
図1
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図3
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図12