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特開2024-145986電力変換装置及びそれを備えた空気調和システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145986
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力変換装置及びそれを備えた空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M7/12 H
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058634
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 玲二
(72)【発明者】
【氏名】土居 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 広幹
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CA01
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
5H006FA01
(57)【要約】
【課題】電源投入時、及び停電後の復電時に、コンバータ部のスイッチング素子が過電圧により破壊されるのを抑制する。
【解決手段】電力変換装置(100)の最大入力電圧値をVmax(V)、交流リアクトル(13)のインダクタンスをLa(μH)、スイッチング素子の耐圧をVp(V)、各相間の容量成分(15)をCf(μF)とした場合に、下式(1)が成り立つ。電力変換装置(100)に、三相交流電源(2)とコンバータ部(11)との間の三相の電路のうち二相の電路に設けられた2つの主回路リレー(16a)と、2つの主回路リレー(16a)のうちの少なくとも1つと並列に接続された電流制限素子(16b)とを有する限流回路(16)を設ける。
La < [{Vp /(√2 * Vmax)-1} / {(1.15+Cf)*1.33 }]-5/3 ・・・(1)
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相毎に設けられた交流リアクトル(13)を介して三相交流電源(2)に接続され、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を有するコンバータ部(11)と、
前記コンバータ部(11)の直流側ノード(11a,11b)間に接続された平滑コンデンサ(12)と、
前記交流リアクトル(13)の前記三相交流電源(2)側に各交流リアクトル(13)と直列に接続されたフィルタリアクトル(14)と、
前記フィルタリアクトル(14)と前記交流リアクトル(13)の間に接続され、各相間に設けられた容量成分(15)とを備えた電力変換装置であって、
前記電力変換装置(100)の最大入力電圧値をVmax(V)、前記交流リアクトル(13)のインダクタンスをLa(μH)、前記スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の耐圧をVp(V)、各相間の前記容量成分(15)をCf(μF)とした場合に、
下式(1)が成り立ち、
前記三相交流電源(2)と前記コンバータ部(11)との間の三相の電路のうち二相の電路に設けられた2つの主回路リレー(16a)と、前記2つの主回路リレー(16a)のうちの少なくとも1つと並列に接続された電流制限素子(16b)とを有する限流回路(16)をさらに備える
ことを特徴とする電力変換装置。
La < [{Vp /(√2 * Vmax)-1} / {(1.15+Cf)*1.33 }]-5/3 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記限流回路(16)は、前記三相交流電源(2)と前記容量成分(15)との間に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記フィルタリアクトル(14)のインダクタンスをLf(μF)とした場合に、下式(2)が成り立つことを特徴とする電力変換装置。
La/2 ≧ Lf ≧ La/8 ・・・(2)
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、
リレー駆動電圧(Vdr)が所定のオフ閾値(THoff)未満であるときに、前記2つの主回路リレー(16a)をオフするリレー駆動回路(17c)とをさらに備え、
前記オフ閾値(THoff)は、前記スイッチング素子駆動回路(17b)による前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要な前記スイッチ駆動電圧(Vdr)の値よりも高いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記スイッチ駆動電圧(Vdr)及び前記リレー駆動電圧(Vdr)は、共通の電源回路(17d)から供給されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置において、
制御電圧(Vcon)が所定の制御閾値(THm)以上であるときに、前記2つの主回路リレー(16a)のオンオフを指定する制御信号(Scr)を生成する一方、前記制御電圧(Vcon)が前記制御閾値(THm)未満であるときに、前記制御信号(Scr)の生成を停止する制御部(17a)と、
スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、
リレー駆動電圧(Vdr)が所定のオフ閾値(THoff)以上であるときには、前記主回路リレー(16a)のオンオフを前記制御信号(Scr)に基づいて制御する一方、前記制御信号(Scr)の生成が停止しているとき、及び前記リレー駆動電圧(Vdr)が前記オフ閾値(THoff)未満であるときには、前記主回路リレー(16a)をオフするリレー駆動回路(17c)と、
前記三相交流電源(2)からの電力を用いて前記スイッチ駆動電圧(Vdr)を前記スイッチング素子駆動回路(17b)に供給するスイッチング素子駆動電源(17d)と、
前記三相交流電源(2)からの電力を用いて前記制御電圧(Vcon)を前記制御部(17a)に供給する制御部電源(17e)とをさらに備え、
前記電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下した際に、前記スイッチ駆動電圧(Vdr)が前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要な電圧(THdr)を下回るよりも先に、前記制御電圧(Vcon)が前記制御閾値(THm)を下回ることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力変換装置において、
スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、
前記スイッチ駆動電圧(Vdr)が所定の駆動閾値以下に低下したときに、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置において、
スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフを指定する制御信号(Scr)に基づいて、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、
前記2つの主回路リレー(16a)をオフからオンに切り替える所定条件が成立したときに、前記制御信号(Scr)、前記スイッチ駆動電圧(Vdr)、及び前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のゲート電位のうちの少なくとも1つを参照して、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフである状態で、前記2つの主回路リレー(16a)をオンさせる制御部(17a)とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記平滑コンデンサ(12)の電圧が所定のコンデンサ電圧閾値以下となるオフ条件が成立した場合に、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)をさらに備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記平滑コンデンサ(12)の電圧の所定単位時間の低下量が所定の低下量閾値以上となるオフ条件が成立した場合に、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)をさらに備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記三相交流電源(2)からの受電電圧が所定の電源電圧閾値未満となる電圧低下状態が所定時間継続するオフ条件が成立した場合に、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)をさらに備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記制御部(17a)は、前記オフ条件が成立した場合に、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)をオフし、その後、前記2つの主回路リレー(16a)をオフすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)は、ワイドバンドギャップ半導体を主材料としたユニポーラデバイスであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項1に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置(100)を用いて生成された電力が供給される圧縮機(300)とを備えた空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルを介して三相交流電源に接続されたコンバータ部を備えた電力変換装置及びそれを備えた空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流リアクトルを介して三相交流電源に接続され、複数のスイッチング素子を有するコンバータ部と、前記コンバータ部の直流側ノード間に接続された平滑コンデンサと、前記交流リアクトルの前記三相交流電源側に各交流リアクトルと直列に接続されたフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記交流リアクトルの間に接続された容量成分とを備えた電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/016960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような電力変換装置では、電源投入時、及び停電後の復電時に、過渡的な電圧変動に伴って、交流リアクトルを含むフィルタ回路が共振する。交流リアクトルのインダクタンスを小さくすると、共振時にコンバータ部を流れる電流のピーク値が大きくなり、コンバータ部のスイッチング素子に、最大定格電圧を超える電圧が印加され、スイッチング素子の破壊を招く虞がある。
【0005】
本開示の目的は、電源投入時、及び停電後の復電時に、コンバータ部のスイッチング素子が過電圧により破壊されるのを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、相毎に設けられた交流リアクトル(13)を介して三相交流電源(2)に接続され、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を有するコンバータ部(11)と、前記コンバータ部(11)の直流側ノード(11a,11b)間に接続された平滑コンデンサ(12)と、前記交流リアクトル(13)の前記三相交流電源(2)側に各交流リアクトル(13)と直列に接続されたフィルタリアクトル(14)と、前記フィルタリアクトル(14)と前記交流リアクトル(13)の間に接続され、各相間に設けられた容量成分(15)とを備えた電力変換装置であって、前記電力変換装置(100)の最大入力電圧値をVmax(V)、前記交流リアクトル(13)のインダクタンスをLa(μH)、前記スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の耐圧をVp(V)、各相間の前記容量成分(15)をCf(μF)とした場合に、下式(1)が成り立ち、前記三相交流電源(2)と前記コンバータ部(11)との間の三相の電路のうち二相の電路に設けられた2つの主回路リレー(16a)と、前記2つの主回路リレー(16a)のうちの少なくとも1つと並列に接続された電流制限素子(16b)とを有する限流回路(16)をさらに備えることを特徴とする。
【0007】
La < [{Vp /(√2 * Vmax)-1} / {(1.15+Cf)*1.33 }]-5/3 ・・・(1)
第1の態様では、式(1)が成り立つように交流リアクトル(13)のインダクタンスを設定しても、電源投入時、及び停電後の復電時に、主回路リレー(16a)をオフにすることにより、コンバータ部(11)を流れる突入電流を小さくし、コンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)に印可される電圧のピーク値も小さくできる。したがって、電源投入時、及び停電後の復電時に、コンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)が過電圧により破壊されるのを抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記限流回路(16)は、前記三相交流電源(2)と前記容量成分(15)との間に接続されていることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、電源投入時、及び停電後の復電時に、主回路リレー(16a)をオフにすることにより、フィルタリアクトル(14)及び交流リアクトル(13)と、容量成分(15)に流れる突入電流を小さくできる。したがって、フィルタリアクトル(14)及び交流リアクトル(13)の発熱、及び容量成分(15)の容量低下を抑制できる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記フィルタリアクトル(14)のインダクタンスをLf(μF)とした場合に、下式(2)が成り立つことを特徴とする。
【0011】
La/2 ≧ Lf ≧ La/8 ・・・(2)
第3の態様では、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを、La/2より大きくした場合に比べ、フィルタリアクトル(14)を小さくできるので、電力変換装置(100)を小型化できる。また、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを、La/8よりも小さくした場合に比べ、電源投入時、及び停電後の復電時に、フィルタリアクトル(14)と三相交流電源(2)との間を流れる周波数の高い電流をより効果的に減らせる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、リレー駆動電圧(Vdr)が所定のオフ閾値(THoff)未満であるときに、前記2つの主回路リレー(16a)をオフするリレー駆動回路(17c)とをさらに備え、前記オフ閾値(THoff)は、前記スイッチング素子駆動回路(17b)による前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要な前記スイッチ駆動電圧(Vdr)の値よりも高いことを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、スイッチ駆動電圧(Vdr)とリレー駆動電圧(Vdr)とを互いに等しくした場合、停電時、2つの主回路リレー(16a)がオフ状態になった後、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となる。その後、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流は、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、前記スイッチ駆動電圧(Vdr)及び前記リレー駆動電圧(Vdr)は、共通の電源回路(17d)から供給されることを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、スイッチ駆動電圧(Vdr)とリレー駆動電圧(Vdr)とを確実に互いに等しくできる。したがって、停電によりスイッチ駆動電圧(Vdr)が低下するとき、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となる前に、2つの主回路リレー(16a)を確実にオフ状態とすることができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、制御電圧(Vcon)が所定の制御閾値(THm)以上であるときに、前記2つの主回路リレー(16a)のオンオフを指定する制御信号(Scr)を生成する一方、前記制御電圧(Vcon)が前記制御閾値(THm)未満であるときに、前記制御信号(Scr)の生成を停止する制御部(17a)と、スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、リレー駆動電圧(Vdr)が所定のオフ閾値(THoff)以上であるときには、前記主回路リレー(16a)のオンオフを前記制御信号(Scr)に基づいて制御する一方、前記制御信号(Scr)の生成が停止しているとき、及び前記リレー駆動電圧(Vdr)が前記オフ閾値(THoff)未満であるときには、前記主回路リレー(16a)をオフするリレー駆動回路(17c)と、前記三相交流電源(2)からの電力を用いて前記スイッチ駆動電圧(Vdr)を前記スイッチング素子駆動回路(17b)に供給するスイッチング素子駆動電源(17d)と、前記三相交流電源(2)からの電力を用いて前記制御電圧(Vcon)を前記制御部(17a)に供給する制御部電源(17e)とをさらに備え、前記電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下した際に、前記スイッチ駆動電圧(Vdr)が前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要な電圧(THdr)を下回るよりも先に、前記制御電圧(Vcon)が前記制御閾値(THm)を下回ることを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、停電によって電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下すると、スイッチ駆動電圧(Vdr)が前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要な電圧(THdr)を下回る前に、制御電圧(Vcon)が制御閾値(THm)を下回り、リレー駆動回路(17c)が主回路リレー(16a)をオフする。その後、スイッチ駆動電圧(Vdr)の低下によりスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となる。そして、この状態で、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流は、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、前記スイッチ駆動電圧(Vdr)が所定の駆動閾値以下に低下したときに、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)とを備えたことを特徴とする。
【0019】
第7の態様では、所定の駆動閾値を、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となるときのスイッチ駆動電圧(Vdr)以上に設定することにより、主回路リレー(16a)がオフされる前に、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となるのを防止できる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、スイッチ駆動電圧(Vdr)が供給され、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフを指定する制御信号(Scr)に基づいて、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動するスイッチング素子駆動回路(17b)と、前記2つの主回路リレー(16a)をオフからオンに切り替える所定条件が成立したときに、前記制御信号(Scr)、前記スイッチ駆動電圧(Vdr)、及び前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のゲート電位のうちの少なくとも1つを参照して、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフである状態で、前記2つの主回路リレー(16a)をオンさせる制御部(17a)とを備えたことを特徴とする。
【0021】
スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定のときに、主回路リレー(16a)がオンすると、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)が外来ノイズ等により誤作動し、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を招く虞がある。第8の態様では、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフである状態で、主回路リレー(16a)をオンさせるので、このようなスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記平滑コンデンサ(12)の電圧が所定のコンデンサ電圧閾値以下となるオフ条件が成立した場合に、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)をさらに備えたことを特徴とする。
【0023】
第9の態様では、停電により平滑コンデンサ(12)の電圧が所定のコンデンサ電圧閾値以下になると、2つの主回路リレー(16a)がオフされる。その後、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流が、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記平滑コンデンサ(12)の電圧の所定単位時間の低下量が所定の低下量閾値以上となるオフ条件が成立した場合に、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)をさらに備えたことを特徴とする。
【0025】
第10の態様では、停電により平滑コンデンサ(12)の電圧の所定単位時間の低下量が所定の低下量閾値以上になると、2つの主回路リレー(16a)がオフされる。その後、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流が、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記三相交流電源(2)からの受電電圧が所定の電源電圧閾値未満となる電圧低下状態が所定時間継続するオフ条件が成立した場合に、前記2つの主回路リレー(16a)をオフする制御部(17a)をさらに備えたことを特徴とする。
【0027】
第11の態様では、停電により、三相交流電源(2)からの受電電圧が所定の電源電圧閾値未満となる電圧低下状態が所定時間継続すると、2つの主回路リレー(16a)がオフされる。その後、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流が、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0028】
本開示の第12の態様は、第9~第11のいずれか1つの態様において、前記制御部(17a)は、前記オフ条件が成立した場合に、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)をオフし、その後、前記2つの主回路リレー(16a)をオフすることを特徴とする。
【0029】
第12の態様では、停電により、オフ条件が成立した場合に、2つの主回路リレー(16a)がオフされる。その後、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流が、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0030】
本開示の第13の態様は、第1~第12のいずれか1つの態様において、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)は、ワイドバンドギャップ半導体を主材料としたユニポーラデバイスであることを特徴とする。
【0031】
第13の態様では、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のスイッチング周波数を高くし、交流リアクトル(13)のインダクタンスを小さくできる。
【0032】
本開示の第14の態様は、第1~第13のいずれか 1つの態様の電力変換装置と、前記電力変換装置(100)を用いて生成された電力が供給される圧縮機(300)とを備えた空気調和システム(1)である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換装置を備えた空気調和システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係る電力変換装置の回路図である。
図3図3は、コンバータ部の回路図である。
図4図4は、コンバータ制御装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、主回路リレーをオンするときの制御部の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、停電時における駆動電圧、主回路リレーの状態、及びスイッチング素子の状態を例示するタイミングチャートである。
図7図7は、停電時における駆動電圧、制御電圧、主回路リレーの状態、及びスイッチング素子の状態を例示するタイミングチャートである。
図8図8は、フィルタコンデンサの静電容量を1.1μF、2.2μF、3.3μFに設定したときの交流リアクトルのインダクタンスと、PN間電圧との関係をそれぞれ示すグラフである。
図9図9は、フィルタリアクトルのインダクタンスを40μHとし、交流リアクトルのインダクタンスを80μH、フィルタコンデンサの静電容量を2.2μF、電力変換装置の入力電圧の実効値を253Vとしたときの電源投入時のフィルタリアクトル電流、交流リアクトル電流、及びPN間電圧の波形を示すタイミングチャートである。
図10図10は、フィルタリアクトルのインダクタンスを20μHとしたときの図9相当図である。
図11図11は、実施形態2の図4相当図である。
図12図12は、実施形態2において、フィルタリアクトルのインダクタンスを15μH、交流リアクトルのインダクタンスを60μH、フィルタコンデンサの静電容量を2.2μF、電力変換装置の入力電圧の実効値を253Vとしたときのフィルタリアクトル電流、交流リアクトル電流、及びPN間電圧の波形を示すタイミングチャートである。
図13図13は、実施形態1の図12相当図である。
図14】実施形態3の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1に示す空気調和システム(1)は、室内機(U1)と、室外機(U2)とを備えている。
【0036】
室内機(U1)は、室内熱交換器(200)を有している。
【0037】
室外機(U2)は、本開示の実施形態1に係る電力変換装置(100)、圧縮機(300)、及び室外熱交換器(400)を有している。
【0038】
この空気調和システム(1)では、冷房運転時には、圧縮機(300)が冷媒を圧縮し、室外熱交換器(400)が冷媒の熱を室外空気に移動させ、室内熱交換器(200)が室内空気の熱を冷媒に移動させる。一方、暖房運転時には、圧縮機(300)が冷媒を圧縮し、室内熱交換器(200)が冷媒の熱を室内空気に移動させ、室外熱交換器(400)が室外空気の熱を冷媒に移動させる。
【0039】
電力変換装置(100)は、三相交流電源(2)から送られた電力を変換して圧縮機(300)のモータに出力する。電力変換装置(100)は、図2に示すように、コンバータ装置(10)と、インバータ回路(20)と、インバータ制御装置(21)とを備えている。
【0040】
コンバータ装置(10)は、電力変換装置(100)に三相交流電源(2)から送られた交流電力を直流電力に変換する。コンバータ装置(10)は、コンバータ部(11)と、平滑コンデンサ(12)と、交流リアクトル(13)と、フィルタリアクトル(14)と、容量成分としてのフィルタコンデンサ(15)と、限流回路(16)と、コンバータ制御装置(17)と、検出部(18)とを備えている。
【0041】
コンバータ部(11)は、図3に示すように、6つのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を有している。スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)は、ユニポーラトランジスタであり、ワイドバンドギャップ半導体を主材料としたMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。6つのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)は、その第1及び第2の直流側ノード(11a,11b)間に接続された3つのスイッチングレグを構成している。スイッチングレグは、2つのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)が互いに直列に接続されたものである。
【0042】
3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(Sr1,Ss1,St1)と下アームのスイッチング素子(Sr2,Ss2,St2)との中点が、交流側ノードとなる。各スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)は、寄生ダイオード(RD)を含む。寄生ダイオード(RD)は、逆方向に電流を流す還流素子となる。
【0043】
なお、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)として、ユニポーラトランジスタに代えて、バイポーラトランジスタであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。かかる場合には、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)に還流ダイオードを逆並列に接続する。
【0044】
本実施形態1のように、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)としてユニポーラトランジスタを用いた場合でも、IGBTを用いた場合と同様に、寄生ダイオード(RD)よりも順方向電圧の低い還流ダイオードを1つずつ逆並列に接続してもよい。
【0045】
平滑コンデンサ(12)は、コンバータ部(11)の直流側ノード(11a,11b)間に接続されている。平滑コンデンサ(12)の電圧、すなわちコンバータ部(11)の直流側ノード(11a,11b)間の電圧が、PN間電圧(Vdc)となる。
【0046】
交流リアクトル(13)は、相毎に設けられている。各交流リアクトル(13)の一端は、コンバータ部(11)のいずれか1つの交流側ノードにそれぞれ接続されている。交流リアクトル(13)の他端は、対応するフィルタリアクトル(14)を介して三相交流電源(2)に接続されている。つまり、コンバータ部(11)は、相毎に設けられた交流リアクトル(13)を介して三相交流電源(2)に接続されている。
【0047】
フィルタリアクトル(14)は、交流リアクトル(13)の三相交流電源(2)側に各交流リアクトル(13)と直列に接続されている。
【0048】
フィルタコンデンサ(15)は、フィルタリアクトル(14)と交流リアクトル(13)の間に接続され、各相間に設けられている。フィルタコンデンサ(15)は、フィルタリアクトル(14)とで、フィルタを構成している。
【0049】
ここで、三相交流電源(2)から電力変換装置(100)への最大入力電圧値をVmax(V)、交流リアクトル(13)のインダクタンスをLa(μH)、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の耐圧をVp(V)、各相間の容量成分、すなわちフィルタコンデンサ(15)の容量をCf(μF)とした場合に、
下式(1)が成り立つ。
【0050】
La < [{Vp /(√2 * Vmax)-1} / {(1.15+Cf)*1.33 }]-5/3 ・・・(1)
詳しくは、Vp(V)は、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の最大定格電圧であり、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフ状態で、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)に印可できる最大電圧である。また、Vmax(V)は、各フィルタリアクトル(14)の三相交流電源(2)側の端部の最大電圧値である。Vmax(V)は、使用される可能性がある電源の中で最も高い電圧である。Vmax(V)は、電力変換装置(100)の仕様で定められた最高電圧、又は接続される三相交流電源(2)の仕様で定められた最高電圧(例えば、200V系の電源であれば最大定格電圧230Vに電圧変動幅+10%を反映させた253V)である。
【0051】
また、フィルタリアクトルのインダクタンスをLf(μF)とした場合に、下式(2)が成り立つ。
【0052】
La/2 ≧ Lf ≧ La/8 ・・・(2)
限流回路(16)は、2つの主回路リレー(16a)と、電流制限素子(16b)とを有している。
【0053】
2つの主回路リレー(16a)は、三相交流電源(2)とコンバータ部(11)との間の三相の電路のうち二相の電路に設けられている。2つの主回路リレー(16a)は、三相交流電源(2)とフィルタリアクトル(14)との間に接続されている。これら2つの主回路リレー(16a)は、三相交流電源(2)とフィルタコンデンサ(15)との間に接続されている。
【0054】
電流制限素子(16b)は、2つの主回路リレー(16a)のうちの1つと並列に接続されている。電流制限素子(16b)は、例えば抵抗である。なお、電流制限素子(16b)を2つ設け、2つの主回路リレー(16a)の両方にそれぞれ並列に接続するようにしてもよい。
【0055】
コンバータ制御装置(17)は、コンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフ、及び主回路リレー(16a)のオンオフを制御する。詳しくは、コンバータ制御装置(17)は、図4に示すように、制御部(17a)と、スイッチング素子駆動回路(17b)と、リレー駆動回路(17c)と、電源回路(17d)と、制御部電源(17e)とを有している。
【0056】
制御部(17a)は、マイクロコンピュータおよびメモリ等で構成される。各スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフを制御するスイッチング素子制御信号(Ssw)を生成する。また、制御部(17a)は、2つの主回路リレー(16a)のオンオフを指定(制御)するリレー制御信号(Scr)を生成する。制御部(17a)は、後述する制御部電源(17e)により出力される制御電圧(Vcon)(図7参照)が所定の制御閾値(THm)(図7参照)以上であるときには、リレー制御信号(Scr)を生成する一方、前記制御電圧(Vcon)が前記制御閾値(THm)未満であるときには、リレー制御信号(Scr)の生成を停止する。
【0057】
制御部(17a)は、検出部(18)の検出値、すなわち平滑コンデンサ(12)の電圧が、所定のコンデンサ電圧閾値以下となるオフ条件が成立した場合に、スイッチング素子制御信号(Ssw)を所定値とすることにより、すべてのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)をオフし、その後、リレー制御信号(Scr)を所定値とすることにより、2つの主回路リレー(16a)をオフする。
【0058】
また、制御部(17a)は、2つの主回路リレー(16a)をオフからオンに切り替える所定条件が成立したときに、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のゲート電位を参照して、前記複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフである状態で、リレー制御信号(Scr)を所定値とすることにより、2つの主回路リレー(16a)をオンさせる。ここで、2つの主回路リレー(16a)をオフからオンに切り替える所定条件は、例えば、平滑コンデンサ(12)の電圧が、所定のコンデンサ電圧閾値以上の値に復帰したという条件である。制御部(17a)は、2つの主回路リレー(16a)をオフからオンに切り替える所定条件が成立したとき、図5のフローチャートに示す動作を実行する。以下、図5のフローチャートの動作について説明する。
【0059】
まず、(S101)において、制御部(17a)は、kの値を1、nの値を0に設定する。
【0060】
次いで、(S102)において、制御部(17a)は、全てのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のゲート電位を読み込む。
【0061】
次いで、(S103)において、制御部(17a)は、(S102)で読み込んだゲート電位に基づいて、全てのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフ状態であるか否かを判定する。全てのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフ状態である場合には、制御部(17a)は、(S104)の処理に進む。一方、一部又は全てのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオン状態である場合には、制御部(17a)は、(S107)の処理に進む。
【0062】
(S104)において、制御部(17a)は、nの値に1を加算する。
【0063】
(S105)において、制御部(17a)は、nの値が100以上であるか否かを判定する。nの値が100以上である場合には、制御部(17a)は、(S106)の処理に進む。一方、nの値が100以上でない場合には、制御部(17a)は、(S108)の処理に進む。
【0064】
(S106)において、制御部(17a)は、リレー制御信号(Scr)を所定値にすることにより、2つの主回路リレー(16a)をオンする。
【0065】
(S107)において、制御部(17a)は、nの値を0とする。
【0066】
(S108)において、制御部(17a)は、kの値に1を加算する。
【0067】
(S109)において、制御部(17a)は、kの値が10000であるか否かを判定する。
【0068】
(S110)において、制御部(17a)は、異常が生じていると判定する。
【0069】
処理が(S106)又は(S110)に進むまでの間、(S103)の判定が、1msの周期で繰り返される。
【0070】
したがって、全てのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオフ状態が100ms以上継続すると、制御部(17a)は、2つの主回路リレー(16a)をオンすることができる。
【0071】
なお、図5の(S102)及び(S103)において、制御部(17a)は、全てのスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のゲート電位を参照して、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフであるか否かを判定した。しかし、かかる判定を、スイッチング素子制御信号(Ssw)又は駆動電圧(Vdr)を参照して行ってもよい。また、制御部(17a)が、スイッチング素子制御信号(Ssw)、スイッチ駆動電圧(Vdr)、及び複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のゲート電位のうちの2つ以上を参照して、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0072】
スイッチング素子駆動回路(17b)には、スイッチ駆動電圧及びリレー駆動電圧としての駆動電圧(Vdr)(図6及び図7参照)が電源回路(17d)により供給される。スイッチング素子駆動回路(17b)は、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を駆動する。
【0073】
リレー駆動回路(17c)は、駆動電圧(Vdr)が所定のオフ閾値(THoff)以上であるときには、主回路リレー(16a)のオンオフを前記リレー制御信号(Scr)に基づいて制御する一方、リレー制御信号(Scr)の生成が停止しているとき、及び駆動電圧(Vdr)がオフ閾値(THoff)未満であるときには、主回路リレー(16a)をオフする。ここで、オフ閾値(THoff)は、スイッチング素子駆動回路(17b)による複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要なスイッチ駆動電圧の値(THdr)(以下、「必要電圧値(THdr)」と呼ぶ)よりも高い。この必要電圧値(THdr)は、約4Vである。
【0074】
電源回路(17d)は、三相交流電源(2)からの電力を用いて、駆動電圧(Vdr)を、スイッチング素子駆動回路(17b)、リレー駆動回路(17c)及び制御部電源(17e)に供給する。つまり、スイッチング素子駆動回路(17b)及びリレー駆動回路(17c)の駆動電圧(Vdr)は、共通の電源回路(17d)から供給される。電源回路(17d)は、スイッチング素子駆動電源を構成する。電源回路(17d)は、三相交流電源(2)とフィルタリアクトル(14)との間の三相の電路のうちの二相の電路から受電する。
【0075】
制御部電源(17e)は、駆動電圧(Vdr)を用いて、制御電圧(Vcon)を生成して制御部(17a)に供給する。つまり、制御部電源(17e)は、三相交流電源(2)からの電力を用いて制御電圧(Vcon)を制御部(17a)に供給する。
【0076】
検出部(18)は、平滑コンデンサ(12)の電圧を検出する。
【0077】
インバータ回路(20)の一対の入力ノードは、平滑コンデンサ(12)の両端に接続されている。インバータ回路(20)は、複数のトランジスタを有する。インバータ回路(20)は、コンバータ装置(10)により出力された直流電力を、これら複数のトランジスタのスイッチング動作により、交流電力に変換して圧縮機(300)に供給する。このように、圧縮機(300)には、電力変換装置(100)を用いて生成された電力が供給される。
【0078】
インバータ制御装置(21)は、インバータ回路(20)の複数のトランジスタのオンオフを制御する。
【0079】
図6は、停電時における駆動電圧(Vdr)、主回路リレー(16a)の状態、及びスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の状態を例示するタイミングチャートである。図6の例では、電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下したときに、駆動電圧(Vdr)が必要電圧値(THdr)を下回るよりも前に、駆動電圧(Vdr)がオフ閾値(THoff)を下回るように、必要電圧値(THdr)及びオフ閾値(THoff)を設定している。
【0080】
図6の例では、停電が発生すると、電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下し始め、タイミングt11において、駆動電圧(Vdr)が降下し始める。そして、タイミングt12において、駆動電圧(Vdr)がオフ閾値(THoff)を下回ると、リレー駆動回路(17c)が、2つの主回路リレー(16a)をオフする。その後、タイミングt13において、駆動電圧(Vdr)が必要電圧値(THdr)を下回り、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となる。このとき、2つの主回路リレー(16a)がオフ状態となっているので、この状態でその後、電力供給が再開されても、三相交流電源(2)からの電流は、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後の電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0081】
本実施形態1では、スイッチング素子駆動回路(17b)及びリレー駆動回路(17c)に駆動電圧(Vdr)を共通の電源回路(17d)から供給するので、スイッチング素子駆動回路(17b)に供給される駆動電圧(Vdr)及びリレー駆動回路(17c)に供給される駆動電圧(Vdr)を確実に互いに等しくできる。したがって、スイッチ駆動電圧(Vdr)が低下したとき、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となる前に、2つの主回路リレー(16a)を確実にオフ状態とすることができる。
【0082】
図7は、停電時における駆動電圧(Vdr)、制御電圧(Vcon)、主回路リレー(16a)の状態、及びスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の状態を例示するタイミングチャートである。図7の例では、電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下したときに、駆動電圧(Vdr)が必要電圧値(THdr)を下回るより前に、制御電圧(Vcon)が制御閾値(THm)を下回るように、制御閾値(THm)及び必要電圧値(THdr)を設定している。
【0083】
図7の例では、停電が発生すると、電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下し始め、タイミングt21において、駆動電圧(Vdr)及び制御電圧(Vcon)が降下し始める。そして、タイミングt22において、制御電圧(Vcon)が制御閾値(THm)を下回ると、制御部(17a)が、リレー制御信号(Scr)の生成を停止し、リレー駆動回路(17c)が、2つの主回路リレー(16a)をオフする。その後、タイミングt23において、駆動電圧(Vdr)が必要電圧値(THdr)を下回り、複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となる。このとき、2つの主回路リレー(16a)がオフ状態となっているので、この状態でその後、電力供給が再開されても、三相交流電源(2)からの電流は、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後の電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。このように、電力変換装置(100)の入力電圧の振幅が低下した際、駆動電圧(Vdr)が複数のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の正常な駆動に必要な電圧を下回るよりも先に、制御電圧(Vcon)が制御閾値(THm)を下回る。
【0084】
図8中、グラフG1は、限流回路(16)を設けず、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を1.1μFに設定したときの交流リアクトル(13)のインダクタンスと、PN間電圧(Vdc)との関係を示す。グラフG2は、限流回路(16)を設けず、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を2.2μFに設定したときの交流リアクトル(13)のインダクタンスと、PN間電圧(Vdc)との関係を示す。グラフG3は、限流回路(16)を設けず、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を3.3μFに設定したときの交流リアクトル(13)のインダクタンスと、PN間電圧(Vdc)との関係を示す。グラフG1~G3に示されるPN間電圧(Vdc)は、電源投入時のPN間電圧のピーク値である。
【0085】
ここで、三相交流電源(2)から電力変換装置(100)への最大入力電圧値をVmax(V)、交流リアクトル(13)のインダクタンスをLa(μH)、PN間電圧(Vdc)をVpn(V)、各相間の容量成分、すなわちフィルタコンデンサ(15)の容量をCf(μF)、フィルタコンデンサ(15)のインダクタンスをLf(μH)とする。
【0086】
グラフG1,G2,G3は、下式(3)及び下式(4)が成立する条件で導きだされる。
【0087】
グラフG1,G2,G3に基づいて、PN間電圧(Vdc)は、下式(5)で表される。
【0088】
Vmax=230*1.1(V) ・・・(3)
Lf=La/4 ・・・(4)
Vpn={(1.33*La-3/5)*(1.15+Cf)+1}*√2
*Vmax ・・・(5)
式(5)で表されるPN間電圧(Vdc)を、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の耐圧(定格値)よりも高くする条件は、以下の式(6)により表される。ここで、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の耐圧をVp(V)とする。
【0089】
{(1.33*La-3/5)*(1.15+Cf)+1}*√2*Vmax>Vp
・・・(6)
この式(6)を変形すると、上記式(1)が導かれる。
【0090】
したがって、限流回路(16)を設けず、上記式(1)が成り立つように、交流リアクトル(13)のインダクタンスを設定すると、PN間電圧(Vdc)がスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の耐圧よりも高くなる。
【0091】
本実施形態1では、式(1)が成り立つように交流リアクトル(13)のインダクタンスを設定しても、電源投入時、及び停電後の復電時に、主回路リレー(16a)をオフにすることにより、コンバータ部(11)を流れる突入電流を小さくし、コンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)に印可される電圧のピーク値も小さくできる。したがって、電源投入時、及び停電後の復電時に、コンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)が過電圧により破壊されるのを抑制できる。
【0092】
図9は、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを40μH、交流リアクトル(13)のインダクタンスを80μH、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を2.2μF、電力変換装置(100)の入力電圧の実効値を253Vとしたときの電源投入時のフィルタリアクトル電流(If)、交流リアクトル電流(Ia)、及びPN間電圧(Vdc)の波形を示すタイミングチャートである。
【0093】
図10は、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを20μH、交流リアクトル(13)のインダクタンスを80μH、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を2.2μF、電力変換装置(100)の入力電圧の実効値を253Vとしたときの電源投入時のフィルタリアクトル電流(If)、交流リアクトル電流(Ia)、及びPN間電圧(Vdc)の波形を示すタイミングチャートである。
【0094】
図9及び図10を参照すると、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを大きくした方が、電源投入時に、フィルタリアクトル(14)を流れるフィルタリアクトル電流(If)、及び交流リアクトル(13)を流れる交流リアクトル電流(Ia)を小さくし、PN間電圧(Vdc)の高周波数成分も減らせることがわかる。
【0095】
したがって、本実施形態1では、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを交流リアクトル(13)のインダクタンスの1/8以上に設定するので、1/8未満に設定した場合に比べ、電源投入時にフィルタリアクトル(14)と三相交流電源(2)との間を流れる周波数の高い電流をより効果的に減らせる。
【0096】
また、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを交流リアクトル(13)のインダクタンスの1/2以下に設定するので、1/2より大きく設定した場合に比べ、フィルタリアクトル(14)を小さくし、電力変換装置(100)を小型化できる。
【0097】
スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定のときに、主回路リレー(16a)がオンすると、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)が外来ノイズ等により誤作動し、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を招く虞がある。本実施形態1では、図5を参照して説明したように、制御部(17a)が、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフである状態で、主回路リレー(16a)をオンさせるので、このようなスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を防止できる。
【0098】
また、本実施形態1では、停電により平滑コンデンサ(12)の電圧が所定のコンデンサ電圧閾値以下になると、2つの主回路リレー(16a)が制御部(17a)によりオフされる。その後、電力供給が再開されると、三相交流電源(2)からの電流が、電流制限素子(16b)を介して平滑コンデンサ(12)に流れる。したがって、停電後における電力供給の再開時にコンバータ部(11)に流れる突入電流を減らし、過電圧によるコンバータ部(11)のスイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)の破壊を抑制できる。
【0099】
また、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)を、ワイドバンドギャップ半導体を主材料としたユニポーラデバイスで構成したので、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のスイッチング周波数を高くし、交流リアクトル(13)のインダクタンスを小さくできる。
【0100】
また、空気調和システム(1)を運転させていない待機状態で2つの主回路リレー(16a)をオフ状態とすることにより、フィルタコンデンサ(15)に無効電流が流れるのを抑制できる。したがって、力率の低下、及び系統電圧の上昇を抑制できる。
【0101】
(実施形態2)
図11は、実施形態2の図4相当図である。本実施形態2では、2つの主回路リレー(16a)が、交流リアクトル(13)とコンバータ部(11)との間に接続されている。また、電源回路(17d)が、平滑コンデンサ(12)の両端から受電する。
【0102】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0103】
図12は、実施形態2において、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを15μH、交流リアクトル(13)のインダクタンスを60μH、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を2.2μF、電力変換装置(100)の入力電圧の実効値を253Vとした場合に、2つの主回路リレー(16a)をオフにした状態で三相交流電源(2)による電力供給を開始したときのフィルタリアクトル電流(If)、交流リアクトル電流(Ia)、及びPN間電圧(Vdc)の波形を示す。
【0104】
図13は、実施形態1において、フィルタリアクトル(14)のインダクタンスを15μH、交流リアクトル(13)のインダクタンスを60μH、フィルタコンデンサ(15)の静電容量を2.2μF、電力変換装置(100)の入力電圧の実効値を253Vとした場合に、主回路リレー(16a)をオフにした状態で三相交流電源(2)による電力供給を開始したときのフィルタリアクトル電流(If)、交流リアクトル電流(Ia)、及びPN間電圧(Vdc)の波形を示す。
【0105】
図12及び図13を参照すると、2つの主回路リレー(16a)を、フィルタコンデンサ(15)よりもコンバータ部(11)側となる交流リアクトル(13)とコンバータ部(11)との間に接続するよりも、フィルタコンデンサ(15)よりも三相交流電源(2)側となる三相交流電源(2)とフィルタリアクトル(14)との間に接続した方が、主回路リレー(16a)をオフにした状態で三相交流電源(2)による電力供給を開始したときのフィルタリアクトル電流(If)、及び交流リアクトル電流(Ia)が小さくなることがわかる。
【0106】
したがって、実施形態1では、電源投入時、及び停電後の復電時に、2つの主回路リレー(16a)をオフにすることにより、フィルタリアクトル(14)及び交流リアクトル(13)とフィルタコンデンサ(15)に流れる突入電流を実施形態2に比べて小さくできる。したがって、実施形態1では、実施形態2に比べ、フィルタリアクトル(14)及び交流リアクトル(13)の発熱、及びフィルタコンデンサ(15)の容量の低下を抑制できる。
【0107】
(実施形態3)
図14は、実施形態3の図2相当図である。本実施形態3では、電力変換装置(100)が、電力変換部(30)、及びコンバータ装置(10)を有している。
【0108】
電力変換部(30)は、整流回路(31)と、インバータ回路(20)と、インバータ制御装置(21)と、電力変換部リアクトル(32)と、リンクコンデンサ(33)とを有している。
【0109】
整流回路(31)は、三相交流電源(2)から3相の電路を介して入力される三相交流を直流に整流して第1及び第2の出力端(31a,31b)に出力する。
【0110】
インバータ回路(20)の一対の入力ノードは、整流回路(31)の第1及び第2の出力端(31a,31b)に接続されている。
【0111】
電力変換部リアクトル(32)は、整流回路(31)の第1の出力端(31a)と、インバータ回路(20)の一方の入力ノードとの間に介在している。
【0112】
リンクコンデンサ(33)は、インバータ回路(20)の入力ノード間に接続されている。
【0113】
コンバータ装置(10)は、三相交流電源(2)に補償電流を流す電流補償部を構成している。
【0114】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0115】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態1~3において、制御部(17a)が、電源回路(17d)により供給される駆動電圧(Vdr)が所定の駆動閾値以下に低下したときに、2つの主回路リレー(16a)をオフするように、リレー制御信号(Scr)を生成するようにしてもよい。この駆動閾値は、必要電圧値(THdr)よりも高い約10~12Vに設定される。このように、駆動閾値を、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となるときの駆動電圧(Vdr)以上に設定することにより、主回路リレー(16a)がオフされる前に、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)のオンオフが不定となるのを防止できる。
【0116】
また、上記実施形態1~3において、オフ条件を、検出部(18)の検出値、すなわち平滑コンデンサ(12)の電圧が、所定のコンデンサ電圧閾値以下となることとした。しかし、オフ条件を、検出部(18)の検出値、すなわち平滑コンデンサ(12)の電圧の所定単位時間の低下量が所定の低下量閾値以上となることとしてもよい。また、検出部(18)が、平滑コンデンサ(12)の電圧に代えて、三相交流電源(2)からの電力変換装置(100)の受電電圧を検出するようにし、オフ条件を、検出部(18)の検出値、すなわち三相交流電源(2)からの受電電圧が所定の電源電圧閾値未満となる電圧低下状態が所定時間継続することとしてもよい。
【0117】
また、上記実施形態1~3では、駆動電圧(Vdr)を供給する電源回路(17d)とは別に、制御電圧(Vcon)を供給する制御部電源(17e)を設けたが、制御部電源(17e)を設けず、駆動電圧(Vdr)を制御電圧(Vcon)として用いてもよい。
【0118】
また、上記実施形態1~3では、フィルタコンデンサ(15)が、デルタ結線を構成したが、スター結線を構成してもよい。かかる場合、各相間の容量成分をCf(μF)とした場合に、上記式(1)が成り立つように、交流リアクトル(13)のインダクタンスを設定する。
【0119】
また、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)と、スイッチング素子駆動回路(17b)と、制御(保護)部とを同一のモジュールで構成したIPM(Intelligent Power Module)で、電力変換装置(100)を構成する場合、耐圧Vp(V)はIPMの耐圧、駆動電圧(Vdr)の必要電圧値(THdr)を、IPMの制御電源電圧の必要電圧値とすればよい。ここで、IPMの耐圧は、スイッチング素子(Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2)がオフ状態で、IPMのPN間に印可できる最大電圧である。
【0120】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示は、リアクトルを介して三相交流電源に接続されたコンバータ部を備えた電力変換装置及びそれを備えた空気調和システムとして有用である。
【符号の説明】
【0122】
1 空気調和システム
2 三相交流電源
100 電力変換装置
300 圧縮機
11 コンバータ部
11a,11b 直流側ノード
12 平滑コンデンサ
13 交流リアクトル
14 フィルタリアクトル
15 フィルタコンデンサ(容量成分)
16 限流回路
16a 主回路リレー
16b 電流制限素子
17a 制御部
17b スイッチング素子駆動回路
17c リレー駆動回路
17d 電源回路
17e 制御部電源
Sr1,Sr2,Ss1,Ss2,St1,St2 スイッチング素子
Scr リレー制御信号
Vdr 駆動電圧(スイッチ駆動電圧、リレー駆動電圧)
Vcon 制御電圧
THdr 必要電圧値
THoff オフ閾値
THm 制御閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14