(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145988
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ドハティ増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20241004BHJP
H03F 3/21 20060101ALI20241004BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/21
H03F3/68 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058639
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔平
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AA51
5J500AC01
5J500AC25
5J500AC36
5J500AC81
5J500AF10
5J500AF15
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK12
5J500AK41
5J500AM20
(57)【要約】
【課題】ドハティ増幅回路における高周波出力信号の品質の低下を抑制する。
【解決手段】ドハティ増幅回路は、高周波信号を増幅するキャリアアンプと、高周波信号を増幅し、かつ、ドライバ段のピークアンプと、前記ドライバ段のピークアンプの出力を入力とするパワー段のピークアンプと、を含むピークアンプと、前記キャリアアンプのドライブレベルを検出するドライブレベル検出回路と、前記ドライブレベル検出回路によって検出されるドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて、前記ドライバ段のピークアンプのバイアスを設定するための信号を出力する制御回路と、前記ドライバ段のピークアンプの動作状態に応じた電流または電圧を生成する生成回路と、を含み、前記生成回路で生成された前記ドライバ段のピークアンプの動作状態に応じた電流または電圧に基づいて、前記パワー段のピークアンプの動作状態が制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を増幅するキャリアアンプと、
高周波信号を増幅し、かつ、ドライバ段のピークアンプと、前記ドライバ段のピークアンプの出力を入力とするパワー段のピークアンプと、を含むピークアンプと、
前記キャリアアンプのドライブレベルを検出するドライブレベル検出回路と、
前記ドライブレベル検出回路によって検出されるドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて、前記ドライバ段のピークアンプのバイアスを設定するための信号を出力する制御回路と、
前記ドライバ段のピークアンプの動作状態に応じた電流または電圧を生成する生成回路と、
を含み、
前記生成回路で生成された前記ドライバ段のピークアンプの動作状態に応じた電流または電圧に基づいて、前記パワー段のピークアンプの動作状態が制御される
ドハティ増幅回路。
【請求項2】
前記生成回路は、前記ドライバ段のピークアンプから出力される高周波信号に応じた検出電流または検出電圧を生成する検出回路であり、
前記検出回路はさらに、前記検出電流または前記検出電圧に基づいて、前記パワー段のピークアンプの動作状態を制御する制御信号を前記パワー段のピークアンプに出力する、
請求項1に記載のドハティ増幅回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
入力信号が無い時または低い時に、前記キャリアアンプのバイアス点より低いバイアス点を前記ドライバ段のピークアンプに設定し、
あるバックオフレベルより高いドライブレベルにおいて、前記ドライバ段のピークアンプのバイアス点を上昇させ、
前記ドライバ段のピークアンプの飽和状態におけるバイアス点を、前記入力信号が無い時または低い時より高いバイアス点に設定し、
前記ドライバ段のピークアンプの動作がAB級となるように前記バイアス点を設定する
請求項2に記載のドハティ増幅回路。
【請求項4】
前記制御回路は、さらに、前記パワー段のピークアンプの状態を制御する制御信号を出力する
請求項2または請求項3に記載のドハティ増幅回路。
【請求項5】
前記パワー段のピークアンプは、前記制御信号によって、動作状態または非動作状態に制御される
請求項4に記載のドハティ増幅回路。
【請求項6】
前記生成回路は、前記ドライバ段のピークアンプの供給電流に応じたモニタ電流を生成する電流モニタ回路であり、
前記モニタ電流に基づいて、前記パワー段のピークアンプのバイアスを設定するバイアス回路
をさらに含み、
前記バイアス回路が設定するバイアスにより、前記パワー段のピークアンプの動作状態が制御される、
請求項1に記載のドハティ増幅回路。
【請求項7】
前記電流モニタ回路は、前記ドライバ段のピークアンプの電流を複製した電流を出力するカレントミラー回路を含み、
前記バイアス回路は、前記カレントミラー回路によって複製された電流に基づいて、前記パワー段のピークアンプのバイアスを設定する
請求項6に記載のドハティ増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率な電力増幅回路として、ドハティ(Doherty)増幅回路が知られている。ドハティ増幅回路は、一般的に、入力信号の電力レベルにかかわらず動作するキャリアアンプと、入力信号の電力レベルが小さい場合はオフとなり、大きい場合にオンとなるピークアンプとが並列に接続された構成である。当該構成では、高周波入力信号の電力レベルが大きい場合、キャリアアンプが飽和出力電力レベルで飽和を維持しながら動作する。これにより、ドハティ増幅回路は、通常の電力増幅回路に比べて効率を向上させることができる。
【0003】
下記の特許文献1から特許文献3までには、ピークアンプのバイアスを制御する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、キャリアアンプの飽和をキャリアアンプのバイアス回路を介して検出し、検出信号に応じてピークアンプのバイアス回路を制御するものである。
【0005】
特許文献2に記載の技術は、キャリアアンプの飽和をキャリアアンプの出力信号によって検出し、検出信号に応じてピークアンプのバイアス回路を制御するものである。
【0006】
特許文献3に記載の技術は、ドハティ増幅回路に入力される高周波入力信号レベルまたはキャリアアンプに入力される高周波入力信号レベルに応じて、ピークアンプのバイアス回路を制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0241209号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0028472号明細書
【特許文献3】特開2019-41277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2に記載の技術では、キャリアアンプの飽和を検出するための回路が応答するまでの時間として、数十ns程度を要する。従って、次のような不都合が生じ得る。例えば、瞬間的(数十nsよりもかなり短い時間)な電力の増加がある高周波入力信号がドハティ増幅回路に入力された場合、キャリアアンプが飽和を開始してからピークアンプのバイアス点が変動するまでの数十nsの間に、キャリアアンプが飽和している時間が発生し得る。これにより、ドハティ増幅回路の高周波出力信号の品質を高く保てないことがあり得る。また、当該ドハティ増幅回路が通信装置に適用されている場合、通信品質を高く保てないことがあり得る。
【0009】
特許文献3に記載の技術は、高周波入力信号レベルに応じて動作するものの、高周波入力信号レベルをバイアス回路で検出しており、基本的に応答速度は低速であると考えられ、ドハティ増幅回路の高周波出力信号の品質を高く保てないことがあり得ると考えられる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ドハティ増幅回路における高周波出力信号の品質の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面のドハティ増幅回路は、高周波信号を増幅するキャリアアンプと、高周波信号を増幅するピークアンプと、前記キャリアアンプのドライブレベルを検出するドライブレベル検出回路と、前記ドライブレベル検出回路によって検出されるドライブレベルを示すドライブレベル信号に基づいて、前記ピークアンプのバイアスを設定するための信号を出力する制御回路と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高周波出力信号の品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1中のドライブレベル検出回路の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1中のドライブレベル検出回路の構成の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1中のドハティ増幅回路に含まれるピークアンプの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7中の電流モニタ回路、バイアス回路などの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一または同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換または変更を行うことができる。なお、第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を適宜省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0015】
<第1実施形態>
(全体構成)
図1は、第1実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
図1において、第1実施形態のドハティ増幅回路1は、90°ハイブリッド回路11と、初段(ドライバ段)のキャリアアンプ12と、最終段(パワー段)のキャリアアンプ13と、バイアス回路14および15と、初段のピークアンプ16と、最終段のピークアンプ17と、結合器20と、ドライブレベル検出回路34と、制御回路22と、検出回路31と、を含む。
【0016】
また、ドハティ増幅回路1は、90°ハイブリッド回路11は、高周波信号RFinを、互いに位相が略90°異なる高周波信号RF1およびRF4に分け、高周波信号RF1をキャリアアンプ12に出力し、高周波信号RF4をピークアンプ16に出力する。なお、「略90°」とは、90°の位相のみではなく、90°±45°の位相をも含むものとする。
【0017】
高周波信号RF4の位相は、高周波信号RF1より90°遅れていることが例示される。高周波信号RF1の電力と、高周波信号RF4の電力とは、同じであることが例示される。
【0018】
バイアス回路14は、キャリアアンプ12にバイアスを与える。バイアス回路15は、キャリアアンプ13にバイアスを与える。キャリアアンプ12は、高周波信号RF1を増幅した高周波信号RF2をキャリアアンプ13に出力する。キャリアアンプ13は、高周波信号RF2を増幅した高周波信号RF3を結合器20に出力する。
【0019】
キャリアアンプ12の出力側には、インダクタL12を介して電源Vccが接続される。キャリアアンプ12とキャリアアンプ13との間には、キャパシタC12が設けられる。キャパシタC12により、高周波信号RF2の直流成分がカットされる。
【0020】
キャリアアンプ13の出力側には、インダクタL13を介して電源Vccが接続される。キャリアアンプ13と結合器20との間には、キャパシタC13が設けられる。キャパシタC13により、高周波信号RF3の直流成分がカットされる。
【0021】
ピークアンプ16は、高周波信号RF4を増幅した高周波信号RF5をピークアンプ17に出力する。ピークアンプ17は、高周波信号RF5を増幅した高周波信号RF6を結合器20に出力する。
【0022】
ピークアンプ16の出力側には、インダクタL17を介して電源Vccが接続される。ピークアンプ16とピークアンプ17との間には、キャパシタC16が設けられる。キャパシタC16により、高周波信号RF5の直流成分がカットされる。
【0023】
ピークアンプ17の出力側には、インダクタL17を介して電源Vccが接続される。ピークアンプ17と結合器20との間には、キャパシタC17が設けられる。キャパシタC17により、高周波信号RF6の直流成分がカットされる。
【0024】
結合器20は、高周波信号RF3と高周波信号RF6とを結合する。第1の実施の形態では、結合器20は位相シフタとするが、本開示はこれに限定されない。結合器20は、高周波信号RF3の位相を90°遅らせる。結合器20は、位相を90°遅らせた高周波信号RF3と、高周波信号RF6との和を、高周波信号RFoutとして出力する。
【0025】
検出回路31には、ドライバ段のピークアンプ16から出力された高周波信号RF5が入力される。検出回路31は、高周波信号RF5を検出する回路であり、高周波信号RF5に応じた検出電流、または、検出電圧を生成する。高周波信号RF5に応じた検出電流、または、検出電圧は、高周波信号RF5の強度に応じて変化する電流、または、電圧であり、ドライバ段のピークアンプ16の動作状態が反映された電流、または、電圧である。言い換えれば、検出電流、または、検出電圧は、ドライバ段のピークアンプの動作状態に応じた電流、または、電圧である。検出回路31は、生成した検出電流、または、検出電圧に基づいて、ピークアンプ17の動作状態を制御する制御信号をさらに生成し、ピークアンプ17に出力する。検出回路31が、本開示の「生成回路」に相当する。
【0026】
ドライブレベル検出回路34は、高周波信号RF3を入力する。ドライブレベル検出回路34は、高周波信号RF3に基づいて、キャリアアンプ13のドライブレベル(動作レベル)を検出する。ドライブレベル検出回路34は、ドライブレベルを示す信号S1を生成する。信号S1は、制御回路22に入力される。信号S1は、キャリアアンプ13のドライブレベルに相補的に変化する信号(反転信号)であっても良い。
【0027】
制御回路22は、信号S1に基づいて、信号S2を出力する。信号S2は、ピークアンプ16のバイアス点を設定するための信号である。制御回路22の動作については、後述する。
【0028】
なお、制御回路22は、信号S1に基づいて、さらに制御信号S4(不図示)を出力してもよい。この場合、制御信号S4は、例えば、ピークアンプ17を補助的に制御する信号として利用される。具体的に、制御信号S4は、例えば、検出回路31から出力される制御信号S3と併用されて、ピークアンプ17の状態を制御する信号である。この構成によれば、ピークアンプ17の効率をより向上させることができる。
【0029】
(ドライブレベル検出回路の構成)
次に、
図2、
図3を参照して、ドライブレベル検出回路34の構成について具体的に説明する。
図2は、
図1中のドライブレベル検出回路34の構成の一例を示す図である。
図3は、
図1中のドライブレベル検出回路34の構成の具体例を示す図である。
【0030】
図2を参照して、ドライブレベル検出回路34の構成の概要について説明する。
図2に示すように、ドライブレベル検出回路34は、キャリアアンプ13の出力端子と電気的に接続される入力端子3401と、キャリアアンプ13における出力の信号レベルを検出するための検出端子3402とを含む。
【0031】
ドライブレベル検出回路34は、例えば、入力端子3401と、検出端子3402と、比較部3410と、直流除去部3420と、検出部3430とを含む。
【0032】
入力端子3401は、例えば、キャリアアンプ13の出力端子と電気的に接続される端子である。
【0033】
検出端子3402は、例えば、制御回路22の入力端子と電気的に接続される端子である。すなわち、検出端子3402は、キャリアアンプ13における出力の信号レベルを制御回路22に入力するための端子である。
【0034】
比較部3410は、例えば、コンパレータであって、1つの入力端子に入力される基準電圧を境として、他の1つの入力端子に入力される電圧に応じた出力信号を出力する。
【0035】
具体的には、比較部3410は、例えば、2つの入力端子3410a,3410bと、出力端子3410cとを有する。比較部3410は、一方の入力端子3410aがキャリアアンプ13の出力端子と電気的に接続され、他方の入力端子3410bが基準電圧Vrefと電気的に接続される。比較部3410の出力端子3410cは、後述する直流除去部3420と電気的に接続される。
【0036】
直流除去部3420は、比較部3410から出力される出力信号の直流成分を除去する。すなわち、直流除去部3420は、当該出力信号における高周波成分を通過させる。
【0037】
直流除去部3420は、例えば、一方の端子が比較部3410の出力端子3410cと電気的に接続され、他方の端子が後述する検出部3430と電気的に接続される。
【0038】
検出部3430は、直流除去部3420を通じて直流成分が除去された出力信号を検出する。ここで、検出部3430は、当該出力信号を直流成分に変換して信号S1として出力する。
【0039】
検出部3430の入力端子は、直流除去部3420の他方の端子と電気的に接続される。検出部3430の出力端子は、検出端子3402と電気的に接続される。
【0040】
このように、ドライブレベル検出回路34は、比較部3410から出力される出力信号の直流成分を除去することで、当該直流成分による比較部3410の応答時間の遅れを改善できる。また、ドライブレベル検出回路34は、比較部3410から出力される出力信号の直流成分を除去することで、検出部3430のバイアス点の変動を抑制できる。
【0041】
一方、特許文献2における飽和検出回路では、コンパレータから出力される出力信号の直流成分を安定させるために多くの時間を要する。言い換えると、当該飽和検出回路では、コンパレータから出力される直流成分がコンパレータ自身の動作に作用するため、応答が安定するまでに多くの時間を要する。
【0042】
すなわち、ドライブレベル検出回路34では、比較部3410の出力信号の直流成分を除去する構成を有することで、出力信号を比較部3410の動作に作用させない。これにより、ドライブレベル検出回路34は、比較部3410の応用時間の遅れを改善できるという、先行技術と比較した顕著な効果を有する。
【0043】
次に、
図3を参照して、ドライブレベル検出回路34の具体的な構成の一例について説明する。
【0044】
図3に示すように、比較部3410は、例えばトランジスタQ10を含む。トランジスタQ10のエミッタはキャリアアンプ13の出力端子(例えばコレクタ)と電気的に接続される。トランジスタQ10のベースは基準電圧Vref1と電気的に接続される。トランジスタQ10のコレクタは直流除去部3420の一方の端子と電気的に接続される。トランジスタQ10のコレクタは、抵抗R10を介して電源Vccに電気的に接続される。
【0045】
直流除去部3420は、比較部3410から出力される、比較部3410の動作(トランジスタQ10の動作)の影響によって安定するまでに時間を要する直流成分を除去する。そして、直流除去部3420は、検出信号として利用される高周波成分を検出部3430に出力する。すなわち、直流除去部3420は、安定するまでに時間を要する直流成分が検出部3430に作用しないように、比較部3410と検出部3430とを直流的に分離する。このように、ドライブレベル検出回路34は、安定するまでに時間を要する直流成分を除去して、高周波成分を検出信号として利用する。これにより、比較部3410から出力される直流成分を検出信号として利用する場合には生じる応答の遅延を解消できる。
【0046】
直流除去部3420は、例えばキャパシタC20を含む。キャパシタC20は、一方の端子がトランジスタQ10のコレクタと電気的に接続され、他方の端子が検出部3430と電気的に接続される。
【0047】
検出部3430は、例えばトランジスタQ30を含んで構成される。トランジスタQ30は、例えばエミッタフォロワである。トランジスタQ30は、基準電圧Vref2によって導通角が調整されて、直流除去部3420から出力される信号の高周波成分を不図示のキャパシタを用いて直流に平滑化する。
【0048】
トランジスタQ30のベースは直流除去部3420のキャパシタC20の他方の端子と電気的に接続される。トランジスタQ30のコレクタは電源Vccと電気的に接続される。トランジスタQ30のエミッタは検出端子3402と電気的に接続される。さらに、トランジスタQ30のベースは抵抗R30を介して基準電圧Vref2と電気的に接続される。トランジスタQ30のエミッタは定電流源I1に電気的に接続される。
【0049】
次に、ドライブレベル検出回路34の動作の概要について説明する。
【0050】
ドライブレベル検出回路34には、エミッタ接地のキャリアアンプ13のコレクタが電気的に接続される。この場合、キャリアアンプ13のコレクタの瞬時最小電圧は、キャリアアンプ13が飽和に近づくと小さくなる(0Vに近づく)。すなわち、ドライブレベル検出回路34では、入力端子3401に入力される高周波信号RF3の電圧(信号レベル)が基準電圧Vref1よりも小さい期間に導通状態となる。
【0051】
ここで、導通状態となる期間を角度の範囲で表したものを導通角といい、高周波信号RF3が大きくなるにつれて導通角が増える。導通角が増加するにつれて、比較部3410から出力される出力信号の直流成分も増加する。ドライブレベル検出回路34では、この直流成分を直流除去部3420で除去する。
【0052】
ドライブレベル検出回路34では、エミッタフォロワの検出部3430を用いる。これにより、検出部3430は、入カインピーダンスが高いため、入力電流が小さくてよい。検出部3430の入カインピーダンスが高いため、高周波信号RF3は、エミッタフォロワを動作させるものとして作用するものの、信号S1の直流成分に直接作用しない。すなわち、ドライブレベル検出回路34では、検出部3430をエミッタフォロワとすることによって、比較部3410と検出部3430との間の交流的な相互作用を抑制できる(交流の入カインピーダンスを高くする)。
【0053】
これは、比較部3410の交流の出カインピーダンスが高くても、検出部3430との交流的な相互作用を抑制できることを示す。例えば、比較部3410の交流の出カインピーダンスが高く、検出部3430の交流の入カインピーダンスが低い場合、検出部3430が動作し始めると、通常、比較部3410の入カインピーダンスが下がる。すなわち、通常は、比較部3410の交流の出力が不安定になるところ、ドライブレベル検出回路34では、検出部3430にエミッタフォロワを用いて入カインピーダンスを高めることで、比較部3410の交流の出力を安定させる。
【0054】
なお、
図3では、比較部3410がベース接地のトランジスタで構成されるように説明したが、これに限定されない。例えば、比較部3410は、エミッタ接地のトランジスタで構成されていてもよい。すなわち、比較部3410は、トランジスタのコレクタの電圧とベースの電圧との関係を比較するコンパレータであってもよい。
【0055】
具体的には、比較部3410においては、コレクタの電位がベースの電位よりもベース・エミッタ間の電圧Vbe以上低くなると、ベース電流が増加する現象を利用してコンパレータの機能を実現する。すなわち、比較部3410は、トランジスタのベースをベース・エミッタ間の電圧Vbeにバイアスして、コレクタの電位が「0」に近づくとベース電流を流すように構成されてもよい。
【0056】
この場合、比較部3410のトランジスタのエミッタはグランドと電気的に接続される。比較部3410のコレクタはキャリアアンプ13のコレクタ(出力端子)と電気的に接続される。比較部3410のベースは基準電圧Vref1と電気的に接続されるとともに直流除去部3420の一方の端子と電気的に接続される。
【0057】
このように、比較部3410にエミッタ接地のトランジスタを用いることで、ベース接地のトランジスタを用いる場合と比較して、トランジスタの故障を減らすことができる。これは、ベース接地のトランジスタを用いる場合、ベース・エミッタ間に大きな電圧が加わるところ、エミッタ接地のトランジスタを用いる場合はベース・エミッタ間に大きな電圧が加わらないためである。
【0058】
(制御回路の動作)
図4は、
図1中の制御回路22の動作を説明する図である。
図4において、横軸はドライブレベル(Drive Level)を示し、縦軸はバイアス点(Bias Point)を示す。バイアス点は、A級(Class A)およびB級(Class B)を破線で示す。A級とB級との間はAB級(Class AB)であり、B級より低い部分がC級(Class C)である。
図4中の一点鎖線BP1で示すキャリアアンプのバイアス点をどのレベルに設定するか、については、設計事項である。また、ピークアンプのバイアス点を実線BP11、BP12、BP13のいずれに設定するか、については、設計事項である。
図4中の一点鎖線BP0は、信号が入力されていない場合のピークアンプのバイアス点である。制御回路22は、ドライバ段のピークアンプ16が、飽和点(Saturation)においてAB級になるようにバイアス点(Bias Point)を制御する。
【0059】
制御回路22は、信号S1に基づいて、ピークアンプ16のバイアス点を制御する。制御回路22は、ピークアンプ16のバイアスを設定するための信号S2を出力する。
【0060】
ピークアンプ16は、入力される高周波信号RF4が大きい時に増幅動作を行う。
図4に示すように、高周波信号RF4が入力されていないときに、ピークアンプ16がC級動作を行う場合において、あるバックオフレベル(Back Off Level)より高いドライブレベルにおいてドライブレベル検出回路34が飽和点(Saturation)を検出する。すると、制御回路22は、入力が小さくても増幅動作を行うようにピークアンプ16のバイアス点を制御する。つまり、ドライブレベル検出回路34が飽和点(Saturation)を検出した場合、制御回路22は、入力が小さくても増幅動作を行うようにピークアンプ16のバイアス点を制御する。
【0061】
つまり、制御回路22は、パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルを、ドライバ段のピークアンプ16に入力する、インタフェース回路としての機能を有する。制御回路22は、ドライブレベル信号をそのままピークアンプ16に入力したり、ドライブレベル信号を反転してピークアンプ16に入力したりすることもあり得る。
【0062】
制御回路22は、入力信号が無い時または低い時に、キャリアアンプ12のバイアス点より低いバイアス点をドライバ段のピークアンプ16に設定する。このとき、キャリアアンプ12のバイアス点と、ドライバ段のピークアンプ16に設定されるバイアス点との高低の比較は、例えば、入力信号が無い時または低い時の、キャリアアンプ12、および、ドライバ段のピークアンプ16それぞれを構成するトランジスタのコレクタ(またはドレイン)電流を、当該トランジスタのエミッタ面積(またはゲート幅)で規格化した値を用いて行われる。また、制御回路22は、あるバックオフレベルより高いドライブレベルにおいて、ドライバ段のピークアンプ16のバイアス点を上昇させる。さらに、制御回路22は、ドライバ段のピークアンプ16の飽和状態におけるバイアス点を、入力信号が無い時または低い時より高いバイアス点に設定する。なお、制御回路22は、ドライバ段のピークアンプ16の動作がAB級となるようにバイアス点を設定する。
【0063】
(ピークアンプ)
図5は、
図1中のドハティ増幅回路1に含まれるピークアンプ17の構成を示す図である。
図5において、各トランジスタは、バイポーラトランジスタとするが、本開示はこれに限定されない。バイポーラトランジスタは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor:HBT)が例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタは、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)であっても良い。トランジスタは、複数の単位トランジスタを電気的に並列接続した、マルチフィンガートランジスタであっても良い。単位トランジスタとは、トランジスタが構成される最小限の構成を言う。
【0064】
各トランジスタがFETである場合、ソースがバイポーラトランジスタのエミッタに対応し、ゲートがバイポーラトランジスタのベースに対応し、ドレインがバイポーラトランジスタのコレクタに対応する。
【0065】
ピークアンプ17は、イネーブル端子17-1aを有する。イネーブル端子17-1aには、制御信号S3が検出回路31(
図1参照)から入力される。ピークアンプ17の端子17-1bには、バイアス回路19から出力されるバイアス信号が入力される。ピークアンプ17の端子17-1cには、高周波信号RF5がから入力される。ピークアンプ17の端子17-1dからは、高周波信号RF6が結合器20(
図1参照)へ出力される。
【0066】
ピークアンプ17は、セルCL1、CL2、・・・、CLNと、を含む。つまり、ピークアンプ17は、複数のセルを含むマルチフィンガー(マルチセル)トランジスタで構成されている。ただし、本開示はこれに限定されない。ピークアンプ17は、1個のセルを含むシングルフィンガー(シングルセル)トランジスタで構成されることとしても良い。
【0067】
ピークアンプ17は、セルCL1、CL2、・・・、CLNを動作状態(高周波信号増幅状態)または非動作状態(高周波信号非増幅状態)に制御する状態制御回路CCを更に含む。状態制御回路CCは、トランジスタQCを含む。
【0068】
セルCL1は、トランジスタQRF1と、キャパシタCBB1と、抵抗RBB1およびRBS1と、を含む。トランジスタQRF1は、単位トランジスタが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0069】
抵抗RBB1の一端は、端子17-1bに電気的に接続されている。端子17―1bはピークアンプ17にバイアスを供給するバイアス回路19に接続される端子である。抵抗RBB1は、ピークアンプ17のバイアス回路19の出力段のトランジスタに接続される。例えば、抵抗RBB1は、バイアス回路19の中のトランジスタとエミッタフォロワ接続される。抵抗RBB1の他端は、ノードN1に電気的に接続されている。キャパシタCBB1の一端は、端子17-1cに電気的に接続されている。キャパシタCBB1の他端は、ノードN1に電気的に接続されている。トランジスタQRF1のベースは、ノードN1に電気的に接続されている。トランジスタQRF1のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタQRF1のコレクタは、端子17-1dに電気的に接続されている。
【0070】
トランジスタQRF1のベースには、抵抗RBB1を介してバイアス電流またはバイアス電圧が入力される。また、トランジスタQRF1のベースには、キャパシタCBB1を介して高周波信号RF5が入力される。トランジスタQRF1は、高周波信号RF5を増幅して、高周波信号RF6をコレクタから端子17-1dに出力する。
【0071】
抵抗RBS1の一端は、ノードN1に電気的に接続されている。抵抗RBS1の他端は、トランジスタQCのコレクタに電気的に接続されている。
【0072】
セルCL2は、トランジスタQRF2と、キャパシタCBB2と、抵抗RBB2およびRBS2と、を含む。トランジスタQRF2は、単位トランジスタが例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタQRF2、キャパシタCBB2、ノードN2、並びに、抵抗RBB2およびRBS2の接続関係は、トランジスタQRF1、キャパシタCBB1、ノードN1、並びに、抵抗RBB1およびRBS1の接続関係と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
セルCLNは、トランジスタQRFNと、キャパシタCBBNと、抵抗RBBNおよびRBSNと、を含む。トランジスタQRFNは、単位トランジスタが例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタQRFN、キャパシタCBBN、ノードNN、並びに、抵抗RBBNおよびRBSNの接続関係は、トランジスタQRF1、キャパシタCBB1、ノードN1、並びに、抵抗RBB1およびRBS1の接続関係と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
トランジスタQCのコレクタは、抵抗RBS1の他端、抵抗RBS2の他端、・・・、抵抗RBSNの他端に電気的に接続されている。トランジスタQCのベースは、イネーブル端子17-1aに電気的に接続されている。トランジスタQCのベースには、制御信号S3が入力される。トランジスタQCのエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。
【0075】
状態制御回路CCの動作について説明する。
【0076】
制御信号S3がハイレベルの場合、トランジスタQCはオン状態となり、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNから抵抗RBS1、抵抗RBS2、・・・、抵抗RBSNを夫々介して、トランジスタQCのコレクタへ電流Iが流れる。つまり、トランジスタQCは、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNから電流Iを引き抜く。
【0077】
ノードN1から電流が引き抜かれることにより、引き抜き電流が流れる抵抗RBB1で電圧降下が発生し、ノードN1の電圧が低下する。従って、トランジスタQRF1は、ベース電圧が低下するので、高周波信号RF5の増幅を行えなくなる。
【0078】
同様に、ノードN2から電流が引き抜かれることにより、引き抜き電流が流れる抵抗RBB2で電圧降下が発生し、ノードN2の電圧が低下する。従って、トランジスタQRF2は、ベース電圧が低下するので、高周波信号RF5の増幅を行えなくなる。
【0079】
同様に、ノードNNから電流が引き抜かれることにより、引き抜き電流が流れる抵抗RBBNで電圧降下が発生し、ノードNNの電圧が低下する。従って、トランジスタQRFNは、ベース電圧が低下するので、高周波信号RF5の増幅を行えなくなる。
【0080】
つまり、制御信号S3がハイレベルになると、ピークアンプ17は、非動作状態(高周波信号非増幅状態)となる。
【0081】
制御信号S3がローレベルの場合、トランジスタQCはオフ状態となり、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNからトランジスタQCのコレクタへ電流Iが流れない。つまり、トランジスタQCは、ノードN1、ノードN2、・・・、ノードNNから電流Iを引き抜かない。
【0082】
従って、トランジスタQRF1は、ベース電圧が低下しないので、高周波信号RF5の増幅を行える。同様に、トランジスタQRF2は、ベース電圧が低下しないので、高周波信号RF5の増幅を行える。同様に、トランジスタQRFNは、ベース電圧が低下しないので、高周波信号RF5の増幅を行える。
【0083】
つまり、制御信号S3がローレベルとなると、ピークアンプ17は、動作状態(高周波信号増幅状態)となる。
【0084】
なお、状態制御回路CCの配置場所は、セルCL
1、CL
2、・・・、CL
Nの配置場所から離れていても良い。電流Iは、温度差の影響を受けにくいためである。通常、制御信号S3の生成部である検出回路31は、最終段増幅器であるピークアンプ17から距離を取って配置される。したがって、高い出力電力が要求されるために高温になりがちであるピークアンプ17と、検出回路31とは、温度差が発生することが多い。その結果、ピークアンプ17付近に配置されるトランジスタの閾値電圧は、検出回路31付近に配置されるトランジスタの閾値電圧と比較して低くなりやすい。ここで、状態制御回路CCを、ピークアンプ17付近に配置した場合、ピークアンプ17付近の温度上昇により、状態制御回路CCに含まれるトランジスタQ
Cの閾値電圧が低下してしまう。つまり、状態制御回路CCを、セルCL
1、CL
2、・・・、CL
Nの配置場所の近くに配置した場合、検波回路33により生成された制御信号S3がローレベルであった場合でも、状態制御回路CCが「制御信号S3はハイレベルである」と誤認識してしまう可能性がある。これに対して、状態制御回路CCをセルCL
1、CL
2、・・・、CL
Nの配置場所から離した配置にすると、状態制御回路CCに含まれるトランジスタQ
Cの閾値電圧の低下を抑制できる。このため、状態制御回路CCの制御信号S3に関する誤認識を防止しやすくなる。例えば、状態制御回路CCは、制御回路22(
図1参照)の中に配置されていても良い。その場合、電流Iが制御信号S3に相当すると考えることができる。
【0085】
一方、抵抗RBB1の配置場所とトランジスタQRF1の配置場所とは、近いことが好ましい。電圧は、寄生容量の影響を受けやすいからである。もし、抵抗RBB1の配置場所とトランジスタQRF1の配置場所とが離れていると、寄生容量の影響により、抵抗RBB1で発生する電圧降下がトランジスタQRF1のベースに伝わるのが遅くなってしまう。つまり、トランジスタQRF1の動作状態と非動作状態との切り替えが遅くなってしまう。従って、トランジスタQRF1の状態の切り替えを速くするために、抵抗RBB1の配置場所とトランジスタQRF1の配置場所とは、近いことが好ましい。他のセルも同様である。
【0086】
【0087】
検出回路31の端子33aには、バイアス電流BIASが入力される。制御回路33の端子33bには、第1相の高周波信号RF32-1が入力される。制御回路33の端子33cには、第2相の高周波信号RF32-2が入力される。制御回路33の端子33dからは、電圧Vが出力される。なお、ここでは、ピークアンプ16が差動電力増幅器であった場合、すなわち、ピークアンプ16が第1相の高周波信号RF32-1、および、第1相の高周波信号RF32-1と略180度位相が異なる第2相の高周波信号RF32-2を出力する場合における検出回路31を説明する。なお、ピークアンプ16がシングルエンドの電力増幅器であった場合には、後述のトランジスタQDE1からトランジスタQDE4、および、抵抗RDE1、RDE2を含んで構成される差動増幅器から、トランジスタQDE2、トランジスタQDE4,抵抗RDE2、および、端子33cを除いたシングルエンド増幅器(不図示)に変更される。
【0088】
検出回路31は、トランジスタQDE0からトランジスタQDE7までと、抵抗RDE1、RDE2及びRDE5と、コンデンサCDE1と、を含む。
【0089】
トランジスタQDE1とトランジスタQDE2とは、差動対を構成する。トランジスタQDE0及びQDE3からQDE6まで、並びに、抵抗RDE1及びRDE2は、差動対にバイアスを与える。
【0090】
トランジスタQDE0のコレクタ及びベースは、ノードN21を介して端子33aに電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE0は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE0のエミッタは、トランジスタQDE5のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE5は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE5のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。
【0091】
トランジスタQDE0のコレクタには、ノードN21から電流が入力される。トランジスタQDE0及びトランジスタQDE5は、一定の電圧を生じる。この電圧が、ノードN21の電圧である。ノードN21の電圧は、トランジスタQDE6のベース及びトランジスタQDE7のベースに入力される。
【0092】
トランジスタQDE6のコレクタは、電源電圧Vccに電気的に接続されている。トランジスタQDE6のベースは、ノードN21に電気的に接続されている。トランジスタQDE6のエミッタは、抵抗RDE1の一端及び抵抗RDE2の一端に電気的に接続されている。トランジスタQDE6は、ノードN21の電圧に応じた電流を、抵抗RDE1の一端及び抵抗RDE2の一端に出力する。
【0093】
抵抗RDE1の他端は、トランジスタQDE1のベースに電気的に接続されている。抵抗RDE2の他端は、トランジスタQDE2のベースに電気的に接続されている。
【0094】
トランジスタQDE1のベースは、端子33bに電気的に接続されており、第1相の高周波信号RF32-1が入力される。トランジスタQDE1のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタQDE1のコレクタは、ノードN22に電気的に接続されている。
【0095】
トランジスタQDE2のベースは、端子33cに電気的に接続されており、第2相の高周波信号RF32-2が入力される。トランジスタQDE2のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタQDE2のコレクタは、ノードN22に電気的に接続されている。
【0096】
トランジスタQDE3のコレクタは、抵抗RDE1の他端及びトランジスタQDE1のベースに電気的に接続されている。トランジスタQDE3のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタQDE3のベースは、トランジスタQDE5のベース及びコレクタに電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE3とトランジスタQDE5とは、カレントミラー接続されている。
【0097】
トランジスタQDE6、抵抗RDE1及びトランジスタQDE3は、第1相の高周波信号RF32-1が無信号の場合にトランジスタQDE1がオフになり、第1相の高周波信号RF32-1が無信号ではなくなった場合にトランジスタQDE1が動作するように、素子値が設定される。
【0098】
トランジスタQDE4のコレクタは、抵抗RDE2の他端及びトランジスタQDE2のベースに電気的に接続されている。トランジスタQDE4のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタQDE4のベースは、トランジスタQDE5のベース及びコレクタに電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE4とトランジスタQDE5とは、カレントミラー接続されている。
【0099】
トランジスタQDE6、抵抗RDE2及びトランジスタQDE4は、第2相の高周波信号RF32-2が無信号の場合にトランジスタQDE2がオフになり、第2相の高周波信号RF32-2が無信号ではなくなった場合にトランジスタQDE2が動作するように、素子値が設定される。
【0100】
トランジスタQDE7のコレクタは、電源電圧Vccに電気的に接続されている。トランジスタQDE7のベースは、ノードN21に電気的に接続されている。トランジスタQDE7のエミッタは、ノードN22に電気的に接続されている。
【0101】
コンデンサCDE1の一端は、ノードN22に電気的に接続されている。コンデンサCDE1の他端は、基準電位に電気的に接続されている。コンデンサCDE1は、ノードN22の電圧を安定化させるローパスフィルタである。ノードN22の電圧が、電圧Vである。
【0102】
制御回路33の動作について説明する。
【0103】
第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2が無信号の場合、トランジスタQDE1及びQDE2がオフであるので、トランジスタQDE1及びQDE2のコレクタ電流が流れない。従って、抵抗RDE5での電圧降下は発生せず,電圧VはトランジスタQDE7のエミッタに近い電圧となる。トランジスタQDE7はエミッタフォロワとして動作をするため、おおよそこの電圧は,トランジスタQDE8をONさせる程度の電圧となる。
【0104】
第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2が無信号ではない場合、トランジスタQDE1及びQDE2のコレクタ電流が流れ、抵抗RDE5の他端、つまりノードN22で電圧降下が発生する。従って、電圧Vは、低下する。
【0105】
第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2が大きくなるほど、トランジスタQDE1及びQDE2のコレクタ電流が多くなり、抵抗RDE5の他端、つまりノードN22で発生する電圧降下が大きくなり、電圧Vが大きく低下する。
【0106】
つまり、制御回路33は、第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2が無信号の場合に、電圧Vを最も高くし、第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2に応じて、電圧Vを低下させる。
【0107】
電圧Vは、状態制御回路CCに入力される。
【0108】
状態制御回路CCは、トランジスタQDE8と、抵抗RDE6と、を含む。トランジスタQDE8のベースは、端子33dに電気的に接続されており、電圧Vが入力される。トランジスタQDE8のコレクタは、ローパスフィルタLF1に電気的に接続されている。トランジスタQDE8のエミッタは、抵抗RDE6の一端に電気的に接続されている。抵抗RDE6の他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0109】
ローパスフィルタLF1は、抵抗R
DE9と、コンデンサC
DE2と、を含む。抵抗R
DE9の一端は、トランジスタQ
DE8のコレクタに電気的に接続されている。抵抗R
DE9の他端は、端子T1に電気的に接続されている。端子T1は、次段のピークアンプ17(
図1参照)の中のセルに電気的に接続されている。
【0110】
状態制御回路CCは、電圧Vが高い場合、つまり、第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2が無信号の場合、電流I1を次段のピークアンプ17の中のセルから引き抜く。これにより、次段のピークアンプ17は、非動作状態となる。
【0111】
状態制御回路CCは、電圧Vが低い場合、つまり、第1相の高周波信号RF32-1及び第2相の高周波信号RF32-2が無信号ではない場合、電流I1を次段のピークアンプ17の中のセルから引き抜かない。これにより、次段のピークアンプ17は、動作状態となる。
【0112】
(効果)
例えば特許文献1に記載の技術のように、バイアス回路28が、バイアス電流またはバイアス電圧を変化させることにより、ピークアンプ17の動作状態(高周波信号増幅状態)と非動作状態(高周波信号非増幅状態)とを制御することとすると、切り替えが遅くなる。なぜならば、直流電流(バイアス電流)または直流電圧(バイアス電圧)を変化させることは、時間がかかるからである。
【0113】
一方、ピークアンプ17は、イネーブル端子17-1aにハイレベルまたはローレベルの制御信号S3を入力することにより、動作状態と非動作状態とを制御することができる。ピークアンプ17は、制御信号S3によって、動作状態または非動作状態に制御される。制御信号S3によって、ピークアンプ17を、動作状態または非動作状態に制御することができる。従って、バイアス回路28は、バイアス電流またはバイアス電圧を変化させる必要がない。
【0114】
これにより、ピークアンプ17は、動作状態と非動作状態との切り替えを速くすることができる。
【0115】
また、ピークアンプ17は、状態制御回路CCがノードN1、N2、・・・、NNから電流Iを引き抜くことにより、ピークアンプ17の動作状態と非動作状態とを制御することができる。
【0116】
このように、ピークアンプ17は、電流Iの引き抜きにより動作状態と非動作状態とを制御することができるので、電圧によって動作状態と非動作状態とを制御することに比べて、切り替えを速くすることができる。
【0117】
上記の構成により、ドハティ増幅回路における高周波出力信号の品質の低下を抑制できる。また、上記の制御回路22は、パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルに基づく信号S1によって制御される。パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルは、キャリアアンプ13のバイアスによって変化する信号である。制御回路22は、パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルに基づく信号S1に基づくバイアスをドライバ段のピークアンプ16に入力する。また、ドライバ段のピークアンプ16の出力信号が検出回路31に出力され、当該検出回路31の出力信号がパワー段のピークアンプ17の端子17-1に出力されることにより、パワー段のピークアンプ17のバイアス点が制御される。言い換えれば、パワー段のピークアンプ17のバイアス点を制御する制御信号をドライバ段のピークアンプ16の出力信号に基づいて生成している。このため、パワー段のピークアンプ17のバイアス点を制御する制御信号を生成するための制御信号生成回路を別に設ける必要がない。その結果、ドハティ増幅回路1の回路規模を小さくすることができる。
【0118】
<第2実施形態>
(全体構成)
図7は、第2実施形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
図7において、第2実施形態のドハティ増幅回路1aは、
図1を参照して説明したドハティ増幅回路1の構成において、検出回路31の代わりに、電流モニタ回路32と、バイアス回路19と、を含む。
【0119】
電流モニタ回路32は、ドライバ段のピークアンプ16の電流を検出する。具体的に、電流モニタ回路32は、ドライバ段のピークアンプ16に電源から供給される供給電流を検出する。電流モニタ回路32は、供給電流に応じたモニタ電流を生成する。供給電流に応じたモニタ電流は、ドライバ段のピークアンプ16に入力される高周波信号RF4の強度に応じて変化する電流、または、電圧であり、ドライバ段のピークアンプ16の動作状態が反映された電流である。言い換えれば、モニタ電流は、ドライバ段のピークアンプ16の動作状態に応じた電流である。電流モニタ回路32は、検出したピークアンプ16の電流をバイアス回路19に出力する。電流モニタ回路32が、本開示の「生成回路」に相当する。バイアス回路19は、パワー段のピークアンプ17のバイアスを設定する。
【0120】
また、第2実施形態のドハティ増幅回路1aは、
図1を参照して説明したドハティ増幅回路1の構成において、制御回路22の代わりに、制御回路22aを含む。制御回路22aは、信号S1に基づいて、信号S2を出力する。信号S2は、ピークアンプ16のバイアスを設定するための信号である。
【0121】
(電流モニタ回路、バイアス回路など)
図8は、
図7中の電流モニタ回路32、バイアス回路19などの構成例を示す図である。本例では、ドライバ段のピークアンプ16を1つのトランジスタQ16として示す。また、パワー段のピークアンプ17を1つのトランジスタQ17として示す。
【0122】
トランジスタQ16のゲートには、高周波信号RF5が入力される。トランジスタQ16のドレインとトランジスタQ17のゲートとの間にはキャパシタC16が直列に接続される。トランジスタQ17のドレインから高周波信号RF6が出力される。トランジスタQ16のソースおよびトランジスタQ17のソースは、基準電位に電気的に接続される。
【0123】
電流モニタ回路32は端子32-1を有する。バイアス回路19は端子19-1および19-2を有する。電流モニタ回路32の端子32-1は、バイアス回路19の端子19-1に電気的に接続される。バイアス回路19の端子19-2は、トランジスタQ17のゲートに電気的に接続される。
【0124】
電流モニタ回路32は、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ11およびQ12を含む。トランジスタQ11およびQ12はいずれもPチャンネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。トランジスタQ11およびQ12のソースは、電源Vccに電気的に接続される。トランジスタQ11のソースとトランジスタQ12のソースとが電気的に接続される。トランジスタQ11のゲートとトランジスタQ12のゲートとが電気的に接続される。トランジスタQ11のゲートとトランジスタQ11のドレインとが電気的に接続される。トランジスタQ12のドレインは、電流モニタ回路32の端子32-1に電気的に接続される。
【0125】
電流モニタ回路32のトランジスタQ11のドレインとトランジスタQ16のドレインとの間には抵抗R16が電気的に接続される。抵抗R16は、電流を検出するための負荷抵抗である。
【0126】
バイアス回路19は、トランジスタQ21、Q22およびQ23と、抵抗R19とを含む。トランジスタQ21、Q22およびQ23は、Nチャンネル型のMOSFETである。トランジスタQ21およびQ22は、端子19-1と基準電位との間にダイオード接続される。トランジスタQ23のゲートは端子19-1に電気的に接続される。トランジスタQ23のドレインは、電源Vccに電気的に接続される。トランジスタQ23のソースは、抵抗R19を介して端子19-2に電気的に接続される。なお、
図7に示す電流モニタ回路32およびバイアス回路19は、FETによって構成されているが、バイポーラトランジスタによって構成されていてもよい。
【0127】
次に、動作について説明する。トランジスタQ11およびQ1によるカレントミラー回路は、ピークアンプ16に相当するトランジスタQ16を流れる電流を複製した電流を出力する。バイアス回路19は、上記のカレントミラー回路によって複製された電流に基づいて、ピークアンプ17のバイアスを設定する。
【0128】
高周波信号RF5がトランジスタQ16のゲートに入力されると、トランジスタQ16がオンになる。トランジスタQ16がオンになって、抵抗R16を流れる電流が大きくなると、電流モニタ回路32によって検出される電流が大きくなる。これにより、電流モニタ回路32の端子32-1からバイアス回路19の端子19-1に流れ込む電流が大きくなる。端子19-1に流れ込む電流が大きくなると、トランジスタQ21およびQ22を流れる電流が大きくなり、ノードNaの電圧が高くなる。これにより、トランジスタQ23のソースから抵抗R19を介して端子19-2から電流が出力され、バイアスとしてトランジスタQ17のゲートに印加される。当該バイアスにより、トランジスタQ17を含むパワー段のピークアンプ17の動作状態、例えば、増幅動作状態と非増幅動作状態との切替えや、増幅動作状態におけるゲインが制御される。
【0129】
上記の構成により、ドハティ増幅回路における高周波出力信号の品質の低下を抑制できる。また、上記の制御回路22は、パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルに基づく信号S1によって制御される。パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルは、キャリアアンプ13のバイアスによって変化する信号である。制御回路22は、パワー段のキャリアアンプ13のドライブレベルに基づく信号S1に基づくバイアスをドライバ段のピークアンプ16に入力する。また、ドライバ段のピークアンプ16の出力信号が電流モニタ回路32に出力され、当該電流モニタ回路32の出力信号がバイアス回路19に出力されることにより、パワー段のピークアンプ17のバイアス点が制御される。言い換えれば、パワー段のピークアンプ17のバイアス点を制御する制御信号をドライバ段のピークアンプ16の出力信号に基づいて生成している。このため、パワー段のピークアンプ17のバイアス点を制御する制御信号を生成するための制御信号生成回路を別に設ける必要がない。その結果、ドハティ増幅回路1の回路規模を小さくすることができる。
【0130】
1、1a ドハティ増幅回路
11 90°ハイブリッド回路
12、13 キャリアアンプ
14、15、19、28 バイアス回路
16、17 ピークアンプ
20 結合器
22、22a 制御回路
31 検出回路
32 電流モニタ回路
34 ドライブレベル検出回路