(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145994
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】凍結粒子製造装置
(51)【国際特許分類】
F26B 5/06 20060101AFI20241004BHJP
F26B 11/14 20060101ALI20241004BHJP
F26B 11/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F26B5/06
F26B11/14
F26B11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058648
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小川 智宏
(72)【発明者】
【氏名】岸 勇佑
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AC23
3L113AC58
3L113BA36
3L113CB13
3L113CB15
3L113CB29
3L113DA07
(57)【要約】
【課題】凝集隗の形成を抑制することが可能な凍結粒子製造装置を提供すること。
【解決手段】水分を含む被処理物が凍結されて凍結粒子が製造される凍結粒子製造装置であって、前記凍結粒子が収容される収容空間(10a)を備えた容器と、前記被処理物を粒子状にして前記収容空間(10a)に放出するノズル(31)とを備え、前記ノズル(31)から放出される以前、又は、前記ノズル(31)から放出された後に前記被処理物が凍結して得られる前記凍結粒子が前記容器に収容されるように構成されており、前記容器に収容されている前記凍結粒子を攪拌する攪拌装置(40)を更に備え、該攪拌装置(40)が、軸周りに回転可能な攪拌軸(41)と、該攪拌軸とともに回転する攪拌部材(44)とを備え、前記攪拌軸(41)が、前記収容空間(10a)を通るように設けられ、前記被処理物を放出する前記ノズル(31)の向きが、前記攪拌軸(41)から離れる方向である凍結粒子製造装置、を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む被処理物が凍結されて凍結粒子が製造される凍結粒子製造装置であって、
前記凍結粒子が収容される収容空間を備えた容器と、
前記被処理物を粒子状にして前記収容空間に放出するノズルとを備え、
前記ノズルから放出される以前、又は、前記ノズルから放出された後に前記被処理物が凍結して得られる前記凍結粒子が前記容器に収容されるように構成されており、
前記容器に収容されている前記凍結粒子を攪拌する攪拌装置を更に備え、
該攪拌装置が、軸周りに回転可能な攪拌軸と、該攪拌軸とともに回転する攪拌部材とを備え、
前記攪拌軸が、前記収容空間を通るように設けられ、
前記被処理物を放出する前記ノズルの向きが、前記攪拌軸から離れる方向である凍結粒子製造装置。
【請求項2】
前記攪拌軸は、前記収容空間を上下方向に通るように設けられている請求項1記載の凍結粒子製造装置。
【請求項3】
前記容器が、前記収容空間の上縁を画定する壁面を備えた天壁部を有し、
前記収容空間から排気を行うための排気口が前記天壁部に設けられ、
該排気口と前記ノズルとは、前記天壁部の中央部を介して一方と他方とに分かれて配されている請求項1又は2記載の凍結粒子製造装置。
【請求項4】
前記容器が、前記収容空間の上縁を画定する壁面を備えた天壁部を有し、
該天壁部に複数の前記ノズルが配置されている請求項1又は2記載の凍結粒子製造装置。
【請求項5】
前記天壁部の中央部には前記攪拌軸が上下方向に貫通している貫通部が設けられ、
前記複数のノズルは、周方向に並んで配置されている請求項4記載の凍結粒子製造装置。
【請求項6】
前記容器が、前記収容空間の側縁を画定する壁面を備えた側壁部を有し、
該壁面の温度を調整するための温度調節機構を有し、
前記ノズルの向きが、該壁面に向かう方向である請求項1又は2記載の凍結粒子製造装置。
【請求項7】
前記収容空間が逆円錐台形状である請求項1又は2記載の凍結粒子製造装置。
【請求項8】
前記ノズルが超音波ノズルである請求項1又は2記載の凍結粒子製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品分野などでは、水分を含んだ被処理物を凍結粒子にして保存したり、凍結粒子を乾燥(フリーズドライ)して凍結乾燥粒子を作製したりすることが行われている。また、凍結粒子や凍結乾燥粒子は、食品分野のみならず各種の分野において作製されている。このような凍結粒子は、被処理物を凍結可能な温度や真空度に調整された収容空間を備えた容器内で被処理物を粒子状にして放出することで製造されたりしている(下記特許文献1参照)。このような方法で凍結粒子を製造する場合、被処理物はノズルを通じて放出されることで粒子状にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凍結粒子を製造する過程では、該凍結粒子を製造する装置内で粒子同士が接着して凝集隗が形成されることがある。凝集塊の形成を防止する上で容器内に収容された凍結粒子を攪拌することが考えられ得る。しかしながら、凍結粒子製造装置に攪拌装置を設けて当該攪拌装置で凍結粒子を攪拌しても凝集隗が形成されてしまうことがあり、凝集塊の形成を抑制することが困難になっている。そこで、本発明は、凝集隗の形成を抑制することが可能な凍結粒子製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、軸周りに回転可能な攪拌軸と、該攪拌軸とともに回転する攪拌部材とを備えた攪拌装置を備えた凍結粒子製造装置では、攪拌装置自体に凍結粒子の付着が生じてそのことによって凝集塊が生じる場合があることが見出された。また、凍結粒子を攪拌する操作において攪拌軸は攪拌部材に比べて凍結粒子との間にせん断力が発揮され難いため、当該攪拌軸に凍結粒子が堆積し易く凝集塊の発生要因となっていることが見出された。
【0006】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明は、
水分を含む被処理物が凍結されて凍結粒子が製造される凍結粒子製造装置であって、
前記凍結粒子が収容される収容空間を備えた容器と、
前記被処理物を粒子状にして前記収容空間に放出するノズルとを備え、
前記ノズルから放出される以前、又は、前記ノズルから放出された後に前記被処理物が凍結して得られる前記凍結粒子が前記容器に収容されるように構成されており、
前記容器に収容されている前記凍結粒子を攪拌する攪拌装置を更に備え、
該攪拌装置が、軸周りに回転可能な攪拌軸と、該攪拌軸とともに回転する攪拌部材とを備え、
前記攪拌軸が、前記収容空間を通るように設けられ、
前記被処理物を放出する前記ノズルの向きが、前記攪拌軸から離れる方向である凍結粒子製造装置、を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば凍結粒子の製造時に凍結粒子が攪拌軸に付着し難くなるため凝集塊の形成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の凍結粒子製造装置の構造を示した概略図である。
【
図2】
図2は、超音波ノズルの構造を示した概略図である。
【
図3a】
図3aは、複数のノズルを設ける場合の配置の一例を示した概略平面図である。
【
図3b】
図3bは、複数のノズルを設ける場合の配置の一例を示した概略平面図である。
【
図3c】
図3cは、複数のノズルを設ける場合の配置の一例を示した概略平面図である。
【
図3d】
図3dは、複数のノズルを設ける場合の配置の一例を示した概略平面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の凍結粒子製造装置の構造を示した概略図である。
【
図5a】
図5aは、第3実施形態の凍結粒子製造装置の構造を示した概略図である。
【
図5b】
図5bは、第3実施形態の凍結粒子製造装置の運転状況を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施の形態について図を参照しつつ説明する。本実施形態においては、凍結粒子製造装置として、凍結乾燥粒子を製造可能な凍結乾燥粒子製造装置(以下、単に「粒子製造装置」ともいう)を例に挙げて説明する。本実施形態では粒子製造装置として凍結状態が解除された状態において乾燥した固体状態を保つ凍結乾燥粒子を製造可能な装置を例示するが、本実施形態で製造される凍結粒子は、常温・常圧(例えば、23℃・1気圧)に戻って凍結状態が解除された状態において液状に戻るようなものであってもよい。
【0010】
本実施形態の粒子製造装置では水分を含む液状の被処理物が凍結粒子の原料として用いられる。被処理物は、液体のみを含む物であっても液体と固体粒子とを含むスラリーであってもよい。尚、本実施形態では被処理物として液状物を例示しているが凍結粒子とされる被処理物は液状物に限らず粒子化できるものであればゼリー状物やペースト状物のような固形物や半固形物などであってもよい。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る粒子製造装置100を示したもので、該第1実施形態における粒子製造装置100は、液状の被処理物(以下「原料液L」ともいう)が凍結されて凍結粒子Aが形成されるように構成されている。本実施形態の粒子製造装置100は、蒸発熱を利用して被処理物の凍結が行われるように構成されており、被処理物(原料液L)よりも水分含有率の低い凍結粒子Aが形成されるように構成されている。尚、被処理物の凍結方法はそのような方法に限定されない。粒子製造装置100は、原料液Lの凍結可能な温度に調整された空間に原料液Lを粒子状にして放出して凍結が行われるように構成されていてもよい。
【0012】
本実施形態の粒子製造装置100は、凍結粒子Aを収容する容器として凍結容器10を備えている。該凍結容器10は、凍結粒子Aが収容される収容空間10aを備えている。
【0013】
粒子製造装置100は、前記凍結容器10を減圧する減圧装置20と、前記原料液を凍結させて又は凍結させずに粒子状にして前記凍結容器10に放出する造粒装置30とを備えている。該造粒装置30には、
図2に示すように前記原料液Lを粒子状にして前記凍結容器10に放出するノズル31が備えられている。
【0014】
粒子製造装置100は、前記凍結容器10に収容されている前記凍結粒子Aを攪拌する攪拌装置40を更に備える。本実施形態の粒子製造装置100は、前記凍結粒子Aを減圧環境下で加温しながら攪拌しつつ該凍結粒子Aから更に水分を除去して凍結乾燥粒子を形成し得るように構成されている。攪拌装置40は、軸心周りに回転可能な攪拌軸41と、該攪拌軸41とともに回転する攪拌部材44とを備え、前記攪拌軸41が、前記収容空間10aを通るように設けられている。
【0015】
粒子製造装置100は、水分を含む被処理物(原料液L)が前記ノズル31から放出される以前、又は、前記ノズルから放出された後に凍結して前記凍結粒子Aが形成され、該凍結粒子Aが前記凍結容器10に収容されるように構成されている。
【0016】
前記凍結容器10では、
図2に示すように、放出された原料液Lが細かな粒状になり、個々の粒から水分Wが蒸発され、該水分Wの蒸発による蒸発熱によって原料液Lよりも水分Wの少ない凍結粒子Aが製造される。また、本実施形態では、原料液Lが凍結した凍結粒子Aが造粒装置30から前記凍結容器10に放出され当該凍結容器10で前記凍結粒子Aから更に水分Wが蒸発される。このときノズル31から放たれる瞬間やそれ以前に原料液Lが凍結する場合もあり、ノズル31から放出直後の粒子は、全てが凍結前の状態というわけではなく、凍結状態になっているものと凍結状態になっていないものとが混在する場合がある。加えて、全てが凍結状態になっている場合もあり得る。凍結状態になっていない粒子の一部又は全部は、収容空間10aを降下する過程で凍結状態となり得る。また、ノズルから放出された時点で凍結状態になっていない粒子の一部又は全部は、凍結容器10の内壁などに到達してから凍結状態になることもある。
【0017】
本実施形態の凍結容器10は、水平方向での寸法よりも鉛直方向での寸法の方が大きな縦型容器である。前記攪拌軸41は、該凍結容器10の前記収容空間10aを上下方向に通るように設けられている。前記攪拌軸41は、凍結容器10の中央部を通って上下方向に延在するように設けられている。
【0018】
本実施形態の凍結容器10は、その中心軸Xcが鉛直方向となるように粒子製造装置100に備えられている。そして、前記攪拌軸41は、その回転軸心が前記中心軸Xcに一致するように鉛直方向に延在されている。当該第1実施形態の粒子製造装置100での攪拌軸41は、凍結容器10の中心軸Xcに沿った配置となっているが、後述するように攪拌軸41は、中心軸Xcから離れて場所に配されてもよく、延在する方向が鉛直方向に限定されるものでもない。
【0019】
本実施形態以おいては、中心軸Xcに沿った方向を高さ方向や上下方向などとも称する。また、以下においては攪拌軸41に沿った方向を長さ方向X1などと称することがある。また、更に以下においては、この攪拌軸41を通り、且つ、該攪拌軸41に直交する方向を径方向X2などとも称する。また、以下においては、この攪拌軸41を中心に周回する方向を周方向X3などとも称する。
【0020】
本実施形態の凍結容器10は、収容空間10aの底部を画定する底壁部11と、収容空間10aの側縁部を画定する側壁部12と、収容空間10aの頂部を画定する天壁部13とを備えている。凍結容器10は、底壁部11と側壁部12とを構成する容器本体10bと天壁部13を構成する蓋体10cとを備えている。
【0021】
本実施形態の前記側壁部12は、前記底壁部11の外周縁より外広がりに立ち上がっている。したがって、本実施形態での前記容器本体10bの形状は、すり鉢状である。前記蓋体10cは、該容器本体10bの上部開口を塞ぐように設けられている。本実施形態での蓋体10cは、前記容器本体10bの上端縁に接する外周部から中央部に向かうに従って上下方向での位置が高くなるように構成されており、中央部が上方に向かって膨出したドーム状となっている。本実施形態での凍結容器10は、前記収容空間10aが逆円錐台形状となっている。
【0022】
本実施形態での粒子製造装置100は、側壁部12がジャケット構造を有し、二重壁となって内部に熱媒を導入可能な空間部12bを有しており、収容空間10aに露出した前記内壁面12aの温度を調節できるようになっており、温度調節機構を備えている。本実施形態の該側壁部12は、前記凍結粒子Aの製造に際し、内壁面12aの温度が収容空間10aの温度よりも低温となるように調節可能である。本実施形態の該側壁部12は、内壁面12aの温度が前記原料液Lの凝固点(凍結可能な温度)以下にとなるように調節可能である。また、側壁部12は、収容空間10aの気温よりも高温となるように調節可能である。そのことにより本実施形態の該側壁部12は、凍結粒子から更に水分を除去するのに際し、内壁面12aを通じて凍結粒子に蒸発熱を与えて該凍結粒子から水分を除去するのを促進させ得る。
【0023】
本実施形態の粒子製造装置100における前記減圧装置20は、前記蓋体10cに設けられた排気口13aを通じて収容空間10aからの排気を行うように構成されている。本実施形態の粒子製造装置100は、前記排気口13aの上方にフィルターユニット15が接続されており、前記減圧装置20による収容空間10aからの排気が該フィルターユニット15を介して行われるように構成されている。
【0024】
本実施形態の前記減圧装置20は、前記排気を行なうための真空ポンプ21を有している。該真空ポンプ21は、往復式ポンプ、ロータリーポンプ、拡散ポンプなどの一般的なものであってもよい。
【0025】
本実施形態の造粒装置30は、前記排気口13aとは反対側より原料液Lを収容空間10aに放出し得るように構成されており、前記排気口13aと前記ノズル31とが、前記天壁部13(蓋体10c)の中央部を介して一方と他方とに分かれて配されている。造粒装置30でのノズル31は、原料液Lとともに気体を放出する2流体ノズルであってもよいが、減圧装置20への負荷を考慮すると原料液Lのみを放出する1流体ノズルであることが好ましい。本実施形態でのノズル31は、例えば、
図2に示すような、超音波ノズルが好適である。
【0026】
本実施形態での該攪拌装置40は、先述のように攪拌軸41の回転軸心が凍結容器10の中心軸Xcと一つの直線上に並ぶように備えられている。攪拌装置40は、ギアボックス42を介して回転機43に接続され、該回転機43の駆動力によって軸心周りに回転可能となっている。前記攪拌軸41は、長さ方向X1他端側が収容空間10aの下端部まで延びており、底壁部11の近傍まで延びている。
【0027】
本実施形態での前記攪拌装置40は、前記収容空間10aの下端部で回転するヘリカルリボン翼441と、前記収容空間10aの高さ方向中央部で回転する複数のパドル翼442とを前記攪拌部材44として備えている。即ち、前記攪拌装置40は、前記収容空間10aに収容されっている凍結粒子Aをヘリカルリボン翼441やパドル翼442で攪拌し得るように構成されている。該ヘリカルリボン翼441やパドル翼442は、攪拌軸41を回転させた時に凍結容器10の側壁部12の直近を通過して周回するように配されている。即ち、ヘリカルリボン翼441やパドル翼442の外縁と側壁部12の内壁面12aとの間には僅かなクリアランスしか設けられていない。
【0028】
本実施形態では、収容空間が逆円錐台形状を有するため、底壁部11からの凍結粒子Aの堆積高さを高くし易く、凍結粒子Aが攪拌部材44(ヘリカルリボン翼441)によって攪拌され易い。また、凍結粒子Aの堆積高さを高くすることが容易な本実施形態の粒子製造装置100は、凍結粒子Aが側壁部12の内壁面12aと接し易く、温度調節機構による凍結粒子Aの温度コントロールが容易となっている。
【0029】
本実施形態では、前記天壁部13を構成する前記蓋体10cの中央部に前記攪拌軸41が上下方向に貫通している貫通部が設けられている。前記蓋体10cには、前記攪拌軸41の通過している貫通部から径方向に離れた位置に前記ノズル31が配されている。即ち、本実施形態での前記ノズル31は、前記攪拌軸41の上端部から径方向に離れた位置に配されている。
【0030】
該ノズル31は、前記側壁部12の内壁面12aに向けて配されている。即ち、ノズル31の向いている方向は、当該ノズル31から離れるに従って前記攪拌軸41との距離が徐々に離れて、最終的には側壁部12の内壁面に達する方向である。
図1に示すように、本実施形態では、攪拌軸41から離れる向きに配されたノズル31が複数設けられている。
【0031】
以下においては、このノズル31の“向き”に関し、“粒子の放出方向”や、単に、“放出方向”などとも称する。粒子の放出方向が見た目上では判断し難い場合、水平な面の上方(例えば、1~2m上方)にノズルを下向き(所定の方向)に配置し、該ノズルから、できるだけ気流などの影響を受けないようにして、粒子を下方に向けて放出させ、水平面における粒子の放出範囲を確認し、該範囲の中心とノズルとを結ぶ線分の向きをノズル31の向き(粒子の放出方向)として確認することができる。
【0032】
攪拌軸41の長さ方向X1(軸方向)とノズル31の放出方向との間の角度(θ1)は、原料液Lの種類などにもよるが、例えば、1度以上とすることができる。角度θ1は、5度以上であってもよく、10度以上であってもよく、15度以上であってもよく、20度以上であってもよい。角度θ1は、例えば、75度以下とすることができる。角度θ1は、70度以下であってもよく、65度以下であってもよい。角度θ1は、60度以下であってもよく、50度以下であってもよい。
【0033】
ノズル31から放出方向に延ばした線分が凍結容器10の内壁面に達するまでの距離(L1)は、原料液Lの種類などにもよるが、例えば、20cm以上とされる。距離L1は、30cm以上であってもよく、40cm以上であってもよく、50cm以上であってもよい。距離L1は、60cm以上であってもよく、1m以上であってもよい。
【0034】
後述するように、ノズル31を複数設ける場合、上記のような好ましい放出方向となるように配置されるノズル31は、1つであってもよく、複数であってもよい。複数のノズル31は、全てが上記のような好ましい放出方向となるように配置されることが好ましい。また、凍結容器10の内壁面までの距離L1が上記のような好ましい値となるように配置されるノズル31は、1つであってもよく、複数であってもよい。複数のノズル31は、全てが上記のような好ましい距離L1を設けて配置されることが好ましい。
【0035】
先述の通り、ノズルから放出される粒子の一部は十分に凍結した状態になっていないことがある。ノズルを真下に向けて配置した場合、攪拌軸から径方向に離れた位置にノズルを設けても、粒子がある程度広がりながら落下するので十分に凍結していない粒子が攪拌軸に降りかかって攪拌軸に付着してしまうことがある。十分に凍結していない粒子は、それ自身が付着し易い状態であるばかりでなく、十分に凍結している粒子を攪拌軸に付着させる接着剤ともなり得る。ヘリカルリボン翼やパドル翼などの攪拌部材の回転半径に比べて攪拌軸の外周面の回転半径は著しく小さいので、回転速度が遅く、攪拌軸は、付着した粒子を払い落とす機能が攪拌部材に比べて劣る。そのため攪拌軸は、外周面での凝集塊の形成を許してしまい易い。
【0036】
本実施形態では、ノズル31が攪拌軸41から離れる方向に向けられているため、凝集塊の形成が抑制される。本実施形態では、攪拌軸41が上下方向に延在するように配され、その表面が粒子の落下方向と概ね平行するように攪拌軸41が配されていることからも、当該攪拌軸への粒子の付着が生じにくい。
【0037】
本実施形態では、ノズル31が側壁部12の内壁面12aに向けて配されているため、十分に凍結していない粒子が内壁面12aに達する場合がある。先述の通り、本実施形態では、内壁面12aの表面温度を原料液Lが凍結可能な温度に調整可能であるため、内壁面12aに付着した後に短期間で粒子を凍結させて別の凍結粒子に対して接着剤として機能することを防いだりすることができる。また、本実施形態では、内壁面12aに沿ってヘリカルリボン翼441やパドル翼442が周回するため、粒子の堆積が生じたとしてこれらの攪拌部材によって速やかに除去される。
【0038】
本実施形態では収容空間10aが減圧状態(例えば、絶対圧で100~1000Pa)となっているが、収容空間10aに空気などの気体が存在する場合、内壁面12aの表面温度を低温にすることで、該内壁面12a上に冷気層を形成させることができ、未凍結の粒子が内壁面12aに付着することを防ぐことも可能となる。
【0039】
内壁面12aにおいて、その表面上を攪拌部材44が通過する領域(以下「攪拌部材通過領域」ともいう)とその表面上を攪拌部材44が通過しない領域(以下「攪拌部材非通過領域」ともいう)とが設けられる場合、内壁面への粒子の付着を抑制する上ではノズル31は、放出方向が攪拌部材通過領域となるように配されてもよい。一方で、攪拌部材通過領域を放出方向としてノズル31を配置すると、攪拌部材44に粒子が付着する確率が高くなる。その場合、攪拌部材44の通過するタイミングに合わせて粒子の放出量を低下させてもよい。その場合、放出が停止されるまで放出量を低下させてもよい。さらに本実施形態では、攪拌部材44の通過するタイミングに合わせて粒子の放出方向を変えて攪拌部材44への粒子の付着を防止してもよい。
【0040】
上記のようなことから本実施形態の粒子製造装置100は、未凍結の原料液Lの粒子や原料液Lが凍結した粒子の単位時間当たりのノズル31からの放出量を変更する放出量可変機構と、ノズル31からの粒子の放出方向を変更する放出方向可変機構との内の少なくとも一方を有していることが好ましい。放出量可変機構は、タイマー制御などにより放出量を周期的に変化させるものであってもよく、攪拌軸41の回転に連動して放出量を変化させるものであってもよく、凍結容器10の内部における攪拌部材44の位置をセンサーなどで検出して該検出の結果と連動して放出量を変化させるようなものであってもよい。
【0041】
放出方向可変機構も、放出量可変機構と同じく、タイマー制御などによりノズル31の向きを周期的に変化させるものであってもよく、攪拌軸41の回転に連動してノズル31の向きを変化させるものであってもよく、凍結容器内での攪拌部材44の位置をセンサーなどで検出してノズル31の向きを変化させるようなものであってもよい。
【0042】
上記のようなことから本実施形態の粒子製造装置100は、該収容空間10aにおいて攪拌部材44を周回させつつノズル31から収容空間10aに粒子が放出される第1運転モードと、該第1運転モードに比べて攪拌部材44への粒子の付着を抑制する第2運転モードとを含む複数のモードで運転可能とすることができ、第2運転モードでは、第1運転モードよりも粒子の放出量が低減されるか、第1運転モードとはノズル31の向きが変更されるかの何れかが実施され得る。第2運転モードで粒子の放出量を低減する場合、先述のように、放出量がゼロ(放出停止)になるまで低減されてもよく、放出停止が行われる期間は第2運転モードでの一部の期間であっても全部の期間であってもよい。
【0043】
本実施形態のノズル31は、前記攪拌軸41を介して前記排気口13aとは反対側に位置する。そのため、前記攪拌軸41から離れる方向に粒子を放出する本実施形態のノズル31は、排気口13aに対しても径方向に離れるように粒子を放出する。本実施形態の粒子製造装置100では、ノズル31から放出される粒子のサイズを小さくして比表面積を大きくするとともに収容空間10aでの浮遊時間を長くする方が凝集塊の形成を抑制する上において有利となるが、そうすると排気口13aから吸い出される気流に粒子が同伴され易くなり、フィルターユニット15の目詰まりの要因ともなりかねない。その点、本実施形態のノズル31は、排気口13aからも径方向に離れるように粒子を放出するため、収容空間10aでの浮遊時間を長くしても上記のような問題を生じさせ難い。
【0044】
排気口13aからの排気が連続的でなく断続的である場合、例えば、収容空間10aの圧力が第1の基準値を上回った場合に真空ポンプ21が運転し、収容空間10aの圧力が第1の基準値と同じか又はそれよりも低い値となる第2の基準値(第1の基準値以下の基準値)を圧力が下回った時点で真空ポンプ21が停止するような場合、ノズル31からの放出量は真空ポンプ21のオン/オフに連動して変化されてもよい。そのことにより粒子の排気口13aへの吸い込みを抑制することができる。
【0045】
前記排気口13aの端縁から前記ノズル31までの水平方向での距離は30cm以上確保されることが好ましく、50cm以上確保されることがより好ましい。ノズル31が複数設けられる場合、少なくとも1つのノズル31に上記のような距離が確保されていることが好ましく、複数のノズル31に上記のような距離が確保されていることがより好ましく、全てのノズル31に上記のような距離が確保されていることが更に好ましい。
【0046】
本実施形態では、前記ノズル31が複数設けられている。そのため、1つのノズルだけを用いる場合に比べてそれぞれのノズル31からの原料液の放出量を低減しても単位時間あたりの凍結粒子の製造量を増大させることができる。したがって、本実施形態では、ノズル31から放出される粒子の速度を低くしたり、粒子の大きさを小さくしたりしても単位時間当たりの凍結粒子の製造量を一定以上確保し易く、凝集隗の形成を抑制しつつ凍結粒子の製造量の増大を図ることができる。
【0047】
図3aに示すように第1ノズル31a、第2ノズル31b、及び、第3ノズル31cの3つのノズル31を設ける場合、これらは、例えば、径方向X2に並ぶように配置することができる。複数のノズル31を設ける場合、それぞれのノズル31の放出方向は共通していても異なっていてもよい。また、凍結容器10の中心軸Xcに沿った軸方向視(攪拌軸41の軸方向視)でのノズル31の向きは、径方向X2であってもよく、
図3bに示すように径方向X2対して傾きを持っていてもよい。軸方向視での第1ノズル31aの向き(第1放出方向Da)は、他のノズルの向き(第2ノズル31bの向き(第2放出方向Db)や第3ノズル31cの向き(第3放出方向Dc))と同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
中心軸Xcに沿った軸方向視でのノズル31の放出方向を径方向X2に対して傾斜させる場合、ノズル31から当該ノズル31の放出方向に延ばした仮想線が容器本体10bに到達するまでの距離を長く確保できる。
【0049】
複数のノズル31を設ける場合、前記複数のノズル31は、
図3cに示すように、周方向X3に並んで配置されていてもよい。複数のノズル31は、
図3dに示すように、径方向X2と周方向X3とのそれぞれに位置をずらして配置されてもよい。前記天壁部13の中央部には前記攪拌軸41が上下方向に貫通している貫通部が設けられているため、複数のノズル31を径方向X2に並べて配置しようとすると、ノズル31間での距離を十分に保ち難い。一方で複数のノズル31を周方向X3に並べるようにすると、ノズル31どうしの間隔を広く開けることが可能となる。ノズル31どうしの間隔を広く開けることが可能になると、各ノズル31から十分に凍結が進んでいない粒子が複数放出されたとしても当該粒子同士が空中で衝突して凝集粒子を形成してしまうことを抑制することができる。
【0050】
複数のノズル31を設ける場合、放出量可変機構や放出方向可変機構は、例えば、複数のノズル31の内の一つ以上(例えば、第2ノズル31b、及び、第3ノズル31c)を運転しつつ残りのノズル31(例えば、第1ノズル31a)を停止させるようにしてもよい。複数のノズル31を
図3cに示すように周方向に配置する場合で、例えば、攪拌軸41が上面視において時計回りに回転するのであれば、パドル翼442の通過にあわせてノズル31からの粒子の放出量の低減(停止)と復帰(増量)とを、第1ノズル31a、第2ノズル31b、及び、第3ノズル31cで順次実施してパドル翼442に向けて粒子が放出されることを防止することができる。即ち、周方向に複数のノズル31を配置し、攪拌軸41の回転に合わせて該ノズル31からの粒子の放出量を変化させる場合、複数のノズル31の内の一ノズル31と、該一ノズル31よりも前記攪拌軸41の回転方向下流側に位置する他ノズル31とで放出量を変化させるタイミングを異ならせ、前記一ノズル31での放出量の変化を他ノズル31に先行させるようにしてもよい。
【0051】
複数のノズル31を周方向X3に配置する場合は、上記のような点において凝集塊の形成防止に特に有効となり得る。一方で複数のノズル31を径方向X2に並べて配置する場合は、放出量の低減(停止)と増量(復帰)とを全てのノズル31で同じタイミングで実施させることができ、制御が簡単になるという利点を有する。
【0052】
狭い流路を通じて液体を高速で放出することで液体を粒状にしている従来のノズルでは、この流路に凍結が生じてしまい易い。一方で超音波ノズル310は、超音波振動を加えることにより原料液Lを微細な粒状にして放出できるため、必ずしもそのような狭い流路を設ける必要がない。また、従来のノズルでは流量を上記のように原料液Lの流通量を低減して一定期間流れを緩やかにしたり止めたりすると内部で凍結が生じてしまい易いが、超音波ノズル310では流路内で凍った凍結物が超音波振動によって壊され易いためノズルの目詰まりを防ぐことができる。また、そのため超音波ノズルが好適に利用される本実施形態においては、被処理物が液状でなく固形物のようなものであっても収容空間に粒子状になった被処理物を放出することができる。
【0053】
本実施形態での超音波ノズル310は、凍結前の被処理物や凍結後の被処理物に対して超音波振動を加えることにより被処理物を微細な粒子状にして放出できるように構成されているものであればよく、特に
図2に例示のもの以外でも本実施形態において採用可能である。
【0054】
図2に例示の超音波ノズル310は、先端部が前記放出口310aとなって開口している筒状のノズル本体311と、該ノズル本体311を覆うハウジング312と、前記ノズル本体311を振動させるための超音波振動子313とを備える。本実施形態の超音波振動子313は、例えば、電歪素子や磁歪素子などであってもよい。本実施形態での超音波ノズル310では、前記超音波振動子313の振動する周波数を調節できるようになっている。超音波振動子313の周波数は、例えば、20kHzから130kHzまでの間で可変とすることができる。
【0055】
前記ノズル本体311は、内部に前記原料液Lの流路311bを備え、該流路311bの終端が前記放出口310aとなって開口している。該流路311bを通って前記放出口310aに到達した原料液Lは、ノズル本体311の先端部の振動により細かな粒状となって放出口310aから放出される。
【0056】
前記ノズル本体311は、放出口310aから径方向外向に延びる鍔部3111を備える。前記ノズル本体311は、鍔部3111の中心となる位置に前記放出口310aを有し、原料液Lを放出口310aから直接的に収容空間10aに放出するのでなく一時的に鍔部3111に留めた後で放出できるように構成されている。本実施形態のノズル本体311は、前記ハウジング312から棒状になって延び、基端側が前記ハウジング312に固定された固定端となっている一方で前記放出口310aの開口している先端部は自由端となっているため先端部の振動方向が前記鍔部3111の平面方向となっている。そのため、放出口310aから出た原料液Lは前記鍔部3111の表面を伝って一旦横移動する。そして、原料液Lは、一旦、鍔部3111の表面に留まった後に粒子状となって収容空間10aに放出される。
【0057】
原料液Lは、鍔部3111に滞留される時間が表面張力などによっても左右されるものの一時的に鍔部3111の表面に留まることで放出される前に温度低下が進むことになる。また、超音波ノズルは、原料液Lを大きさが比較的小さな粒にして放出することができる。そのため、放出された原料液Lの粒は、ゆっくりと落下することになる。鍔部3111での滞留によって温度低下した原料液Lの粒をゆっくりと落下させることができる本実施形態において、放出された粒が所望の温度の凍結粒子となるまでに要する落下距離が短くなり、装置サイズのコンパクト化を図ることもできる。
【0058】
本実施形態では、前記超音波振動子313の振動する周波数を調節できるため、放出口310aより放出される原料液Lの粒の大きさを変更することができる。即ち、本実施形態では、前記超音波振動子313の振動周波数を大きく(波長を短く)することで粒の大きさを細かくすることができ、比表面積の大きな水分の蒸発しやすい粒を形成することができる。比表面積の大きな状態になった原料液Lの粒は、減圧状態の凍結容器10の収容空間10aに放出され表面から水分Wが蒸発し、当該水分Wの蒸発熱によって温度低下し、凍結粒子Aとなる。
【0059】
一般的な噴霧装置では小さなノズル孔から勢いよく液体を放出させることで液体を細かな霧状にするためノズルでの液体の通過抵抗が大きく、液体に0.1MPa以上の圧力が加えられている。一方で、本実施形態においては、放出口310aを有するノズル本体311が振動して放出口310aから放出される原料液Lを微細な粒へと変化させることができる。ノズル本体311の振動による運動エネルギーで原料液Lが微細化される本実施形態においては、超音波ノズル310に供給される直前での原料液Lの圧力を50kPa以下にすることができ、ポンプ32の負荷を大きく削減することができる。
【0060】
本実施形態では、前記放出口310aが減圧された収容空間10aにおいて開口しており、収容空間10a側から原料液Lが吸引されるような状況になっているため、超音波ノズル310への原料液Lの供給圧力はさらに低減可能となり得る。前記圧力は40kPa以下であってもよく、30kPa以下であってもよい。前記圧力は、例えば、1kPa以上とされる。
【0061】
超音波ノズル310は、減圧状態になっている前記凍結容器10に対して前記放出口310aが開口しているため、前記流路311bを構成しているノズル本体311の内部の空間と前記収容空間10aとが当該放出口310aを介して連通されている。言い換えると当該超音波ノズル310の内部の空間は、前記凍結容器10とともに減圧装置20で減圧されるようになっている。そのため、前記放出口310aの開口面積(流路311bの断面積)を大きくすると前記流路311bに対しては放出口310aよりも上流側の方にまで負圧が加わり易くなる。この状況で原料液Lの供給に規制を加えて放出口310aから原料液Lが放出され難い状況を発生させると前記放出口310aよりも奥まった箇所で原料液Lから水分が蒸発し易くなる。流路311bの断面積が大きいと水分の蒸発によって生じた水蒸気は、放出口310aを通じて凍結容器10へと放出され易くなる。そうすると、前記放出口310aよりも奥まった箇所で原料液Lの凍結によって生じた凍結物で流路311bが閉塞されることになる。
【0062】
本実施形態では、原料液Lが流路311bの途中で流路311bを塞ぐように凍結してもノズル本体311の振動によって凍結物を破砕することができ、当該凍結物の破砕によって得られた凍結粒子Aを放出口310aより放出させることができる。また、流路311bを塞ぐ凍結物が破砕されるまでには至らなくても流路311bの壁面と凍結物との界面に振動によって摩擦熱を発生させることができ、凍結物の表層部を液状化させることができるので、収容空間10a側からの吸引力を利用して凍結物を放出口310aに向けて移動させることができ、当該凍結物を放出口310aから放出する際に粒子化して凍結粒子Aを形成させることも可能である。
【0063】
前記収容空間10aの圧力は、通常、放出された原料液Lからの水分蒸発量と前記真空ポンプ21による排気量とのバランスによって決定される。原料液Lに圧力を加える必要性の低い本実施形態の超音波ノズル310では、必要に応じて放出口310aの直前における流路311bの断面積を一般的なノズルに比べて大きくすることができ、原料液Lの吐出量に時間変動が生じることを抑制することができる。
【0064】
原料液Lが、例えば、果汁などの食物繊維を含む物であったり、微粒子を含むスラリー状のものであったりする場合、流路が狭いと食物繊維や微粒子が流路に挟まって液の流れを阻害する障害物となりかねない。このような障害物が発生すると放出される液の量が低減し、何等かの拍子に障害物が外れると放出される液量が回復することが起こり、放出される液量の変動幅が大きなものになりかねない。減圧された空間に対して放出される液量が変動すると、当該空間の圧力バランスが崩れて大きな圧力変動を起こしかねない。一方で本実施形態においてはそのような問題が発生することを抑制することができる。
【0065】
放出される液量が変動すると液の粒の大きさが変化することにもなり、大量に液が放出される場合には真空度が低下(絶対圧が上昇)して液の凍結が不十分になるおそれもあり、既に形成されている凍結粒子が凍結の不十分な液で凝集してしまうおそれもある。収容空間10aに放出される原料液Lの量が変動し難い本実施形態では、そのような問題が生じ難く、大きさの揃った凍結粒子を作製し得る。
【0066】
本実施形態の超音波ノズル310では、放出口310aの直前における流路311bの断面積を大きく確保し易い点からも凍結による目詰まりを抑制することができる。しかしながら、予期せぬ要因で凍結による目詰まりが生じてしまう可能性もあるため、目詰まりが生じた時に備えて素早く目詰まりを解消して原料液Lの放出を復活させることが可能な機構を設けることが望ましい。
【0067】
本実施形態での前記ハウジング312は、ノズル本体311の外径よりも大きな内径を有する筒状で、前記ノズル本体311との間に空間を設けるようにノズル本体311を覆っている。本実施形態での超音波ノズル310は、当該空間に熱媒FL(不凍液等)を流通可能になっており、前記ノズル本体311を必要に応じて温度調節し得るようになっている。
【0068】
本実施形態では、上記のような熱媒FLでノズル本体311を加温できるため、凍結時における目詰まりの解消を図ることができる。安定した量での原料液Lの放出が可能な本実施形態の粒子製造装置100では、収容空間10aの圧力をモニタリングすることでノズル本体311が目詰まりしたことを把握することができる。そこで、本実施形態の粒子製造装置100は、前記収容空間10aの圧力を測定するための圧力測定器(図示せず)を有していてもよい。また、前記超音波ノズル310は、該圧力測定器での測定結果に基づいてノズル本体311の温度調節をし得るように構成されていてもよい。本実施形態の粒子製造装置100は、圧力測定器で測定される前記収容空間10aの圧力について定めた基準値に達した時に前記超音波ノズル310の加温が行われるように構成されていてもよい。
【0069】
超音波ノズル310の目詰まりを解消するための機構としては、上記のようなもの以外にも考えられる。超音波ノズル310の目詰まりを解消するための機構としては、例えば、超音波ノズル310の放出口310aに向けて気体を吹き付けて目詰まりの原因となっている凍結物を排除するための浄化用ノズルを設けることなどが考えられる。該浄化用ノズルから超音波ノズル310に吹き付ける浄化用のガスは、例えば、空気や窒素などとすることができる。浄化用ノズルには、このような浄化用ガスを常温で供給してもよく、加熱して供給してもよく、冷却して供給してもよい。目詰まりを解消するための浄化用ガスの吹き付けは連続的なものであってもよく断続的なものであってもよい。連続的に浄化用ガスを吹き付ける場合、吹き付け圧力を一定にしてもよく、吹き付け圧力の上下を繰り返すようにしてもよい。
【0070】
浄化用ガスは、外部から放出口310aに向けて吹き付けるようにしてもよく、ノズル内部の流路311bを通じて放出口310aに供給するようにしてもよい。即ち、超音波ノズル310での原料液Lの圧力が上昇するなどして放出口310a又は流路311bにおいて凍結物等による閉塞が生じ始めたことを検知できた時点で原料液Lの供給を停止して代わりに浄化用ガスを供給し、該浄化用ガスで凍結物等を取り除くようにしてもよい。該浄化用ガスの供給・停止の切り替えなどについても前記収容空間10aの圧力について定めた基準値に基づいて実施してもよい。
【0071】
本実施形態の粒子製造装置100では、先述のように凍結乾燥粒子が製造される。凝集塊が形成されると凝集塊の中心部に位置する凍結粒子からは水分が除去され難くなり、効率良く凍結乾燥粒子を作製することが難しくなるが、凝集塊が形成され難い本実施形態の粒子製造装置100では、凍結粒子Aの表面から水分が除去され易いため効率良く凍結乾燥粒子を作製することができる。
【0072】
凍結粒子Aの乾燥に際しては、ジャケット構造を有する側壁部12に熱媒を流通させて凍結が解除されない程度に凍結粒子Aを加熱し、水分の蒸発を促進させることが望ましい。その際、攪拌装置40で凍結粒子Aを攪拌することで、より効率良く凍結乾燥粒子が製造され得る。
【0073】
前記凍結乾燥粒子は、常温(例えば、23℃)において十分乾燥した固体となる程度にまで乾燥されていることが好ましいが、前記凍結粒子Aは、常温において固体状となるものでなくてもよく、例えば、常温においてペースト状(半固体状)となるようなものであっても、液体に戻ってしまう程度の乾燥状態のものであってもよい。特に前記凍結粒子Aは、引き続き乾燥されることが予定されている場合、常温において原料液Lが濃縮された濃縮液となる程度に水分が除去されたものであってもよい。
【0074】
前記凍結乾燥粒子は、例えば、水分含有量が5質量%以下となるように作製される。凍結乾燥粒子の水分含有量は4質量%以下であってもよく、3質量%以下であってもよい。凍結乾燥粒子の水分含有量は、例えば、105℃のギアオーブンで凍結乾燥粒子を2時間乾燥させた時の質量変化を元の凍結乾燥粒子の質量で除して求めることができる。
【0075】
前記凍結乾燥粒子を得るために前記凍結粒子Aを製造するに際し、本実施形態では前記真空ポンプ21で凍結容器10を真空引きして前記収容空間10aを減圧し、蒸発熱を利用して原料液の凍結を行っているが、前記原料液Lは、凍結容器10で凍結し易くなるように予め冷却しておいてもよく、例えば、0℃~15℃となるように冷却していてもよい。
【0076】
前記凍結粒子Aが製造される前記凍結容器10は、例えば、前記原料液Lの放出に際して前記収容空間10aが100Pa~1000Paの圧力(絶対圧)となるように調整される。凍結容器10は、所定の原料液Lの放出が完了し、所定量の凍結粒子Aが凍結容器10に蓄えられるまで収容空間10aが上記範囲内に維持されることが好ましい。収容空間10aの圧力は、低い方が凍結には有利となる。前記圧力は800Pa以下であることが好ましく、600Pa以下さらには400Pa以下であることがより好ましい。一方で圧力が過度に低いと超音波ノズル310が目詰まりするおそれがある。そのため前記圧力は、150Pa以上であることが好ましく、200Pa以上であることがより好ましい。
【0077】
前記収容空間10aの圧力は凍結粒子Aの製造開始から製造完了まで一定している必要はない。例えば、凍結粒子Aの大きさに過度なバラツキが生じない程度の範囲で圧力を変動させるようにしてもよい。凍結粒子の製造開始から製造完了までの間は、例えば、最低圧力から最高圧力までの差が10Pa以上100Pa以下となるように圧力の高低差を設けて前記圧力の上下を繰り返すようにしてもよい。そのことによりノズル本体311が連続的に強く冷却されることを抑制でき、凍結粒子を超音波ノズル310の目詰まりを抑制しつつ製造することができる。
【0078】
所定量の凍結粒子が凍結容器10に蓄えられた場合、原料液Lの放出を止め、前記収容空間10aは、例えば、1Pa~100Paの圧力(絶対圧)となるように調整される。前記収容空間10aの内壁面(側壁部12の内壁面12a)は、例えば-40℃~40℃の範囲で所定の温度に調整される。
【0079】
本実施形態ではこのようにして効率良く凍結乾燥粒子を作製することができる。
【0080】
(第2実施形態)
凍結粒子Aを製造する凍結容器10は、
図1に示したような縦型容器でなくてもよい。この点に関して、
図4を参照しつつ第2実施形態での粒子製造装置100について説明する。この
図4に示す第2実施形態の粒子製造装置100は、凍結容器10が横型容器となっている。前記凍結粒子Aが収容される収容空間10aを備えた凍結容器10と、被処理物を粒子状にして前記収容空間10aに放出するノズル31とを備える点においては第1実施形態における粒子製造装置100と第2実施形態での粒子製造装置100とは共通している。
【0081】
第2実施形態の粒子製造装置100も、前記ノズル31から放出される以前、又は、前記ノズル31から放出された後に前記被処理物が凍結して得られる前記凍結粒子Aが前記凍結容器10に収容されるように構成されている。また、第2実施形態の粒子製造装置100は、前記凍結容器10に収容されている前記凍結粒子Aを攪拌する攪拌装置40を更に備え、該攪拌装置40が、軸周りに回転可能な攪拌軸41と、該攪拌軸41とともに回転する攪拌部材44とを備えている。そして、第2実施形態の粒子製造装置100でも前記攪拌軸41が、前記収容空間10aを通るように設けられ、前記被処理物を放出する前記ノズル31の向きが、前記攪拌軸41から離れる方向である。
【0082】
第2実施形態の粒子製造装置100は、攪拌軸41が水平方向に延びており、ノズル31が攪拌軸41よりも上方に位置し、放出方向が斜め上向きとなるように配されている。この第2実施形態の粒子製造装置100も、攪拌軸41への粒子の付着が抑制され凝集塊の形成が抑制される。
【0083】
(第3実施形態)
第1実施形態や第2実施形態では、攪拌軸41が固定配置されているが、攪拌軸41から離れる方向を放出方向としたノズル31を設けることで凝集塊の形成を防止し得る点については攪拌軸41が移動するような場合にも共通する。この点に関して
図5a、
図5bを参照しつつ第3実施形態の粒子製造装置100について説明する。
【0084】
図5aに示す第3実施形態の粒子製造装置100は、凍結容器10が逆円錐台形状の収容空間10aを備えた縦型容器となっている点において第1実施形態の粒子製造装置100に共通している。第1実施形態、及び、第2実施形態における粒子製造装置100と当該第3実施形態での粒子製造装置100とは、前記凍結粒子Aが収容される収容空間10aを備えた凍結容器10と、被処理物を粒子状にして前記収容空間10aに放出するノズル31とを備える点において共通している。
【0085】
第3実施形態の粒子製造装置100も、前記ノズル31から放出される以前、又は、前記ノズル31から放出された後に前記被処理物が凍結して得られる前記凍結粒子Aが前記凍結容器10に収容されるように構成されている。また、第3実施形態の粒子製造装置100は、前記凍結容器10に収容されている前記凍結粒子Aを攪拌する攪拌装置40を更に備え、該攪拌装置40が、軸周りに回転可能な攪拌軸41と、該攪拌軸41とともに回転する攪拌部材44とを備えている。そして、攪拌部材44して攪拌軸41の周りに螺旋状に配されたスクリュー翼443を有している点において、第3実施形態の粒子製造装置100と第1実施形態の粒子製造装置100とは共通している。第3実施形態の粒子製造装置100でも前記攪拌軸41が、前記収容空間10aを上下方向に通るように設けられ、前記被処理物を放出する前記ノズル31の向きが、前記攪拌軸41から離れる方向である。
【0086】
第1実施形態の粒子製造装置100は、先述の通り、鉛直方向に延びる凍結容器10の中心軸Xcと、攪拌軸41の回転軸心とが一つの直線として重なるように攪拌装置40が構成されている。一方で第3実施形態の粒子製造装置100は、攪拌軸41が凍結容器10の中心軸Xcとは離れた位置に配され、該攪拌軸41が回転軸心を傾けた状態で配置されている。より詳しくは、第3実施形態の攪拌軸41は、逆円錐台形状の収容空間を画定する側壁部12の内壁面12aに沿って上下方向に延びており、上方に向かうに従って凍結容器10の中心軸Xcから離れるように外側に傾いて配されている。そして、第3実施形態の攪拌装置40は、この攪拌軸41を側壁部12の内壁面12aに沿って周回させ得るように構成されている。
【0087】
第3実施形態の攪拌装置40は、攪拌軸41が自転しつつ公転するように構成されており、攪拌軸41の回転軸心である自転軸XAと、攪拌軸41の公転軸XBとが径方向に離れており、該公転軸XBが、凍結容器10の中心軸Xcと一つの直線となるように構成されている。そのため、ノズル31の放出方向を固定していると攪拌軸41が公転している間の一部の区間ではノズル31の放出方向が攪拌軸41に接近する方向となり、
図5bに示す瞬間では、ノズル31の放出方向の先に攪拌軸41が存在することになる。
【0088】
第3実施形態の粒子製造装置100では、前記放出量可変機構か前記放出方向変機構かが設けられ、前記第1運転モードと、前記第2運転モードとを含む複数のモードで運転されることで攪拌軸41での粒子の堆積による凝集塊の形成が抑制され得る。第3実施形態の粒子製造装置100では、前記放出量可変機構が設けられ、
図5bに示す瞬間の前後でノズル31からの粒子の放出が低減されることが好ましく、粒子の放出量がゼロになるまで粒子の放出が低減(放出が休止)されることがより好ましい。
【0089】
第3実施形態の粒子製造装置100での第1運転モードと、第2運転モードとの切替はタイマー制御などであってもよく、単に周期的にノズル31からの粒子の放出が低減されるシンプルなものであってもよく、攪拌軸41の位置を検出して行われるようなものであってもよい。
【0090】
上記のように本実施形態で粒子製造装置は、従来の装置に比べて凝集隗の形成を抑制することが可能となっている。尚、本発明は、上記の3つの実施形態以外でも実施が可能である。上記においては、凍結容器が縦型容器である場合として逆円錐台形状の収容空間を有するものを例示しているが、縦型容器は円筒状などの他の形状のものであってもよい。本実施形態の凍結粒子製造装置や凍結粒子の製造方法は、上記例示に何等限定されることなく、上記に例示されていない事項なども適宜採用することができ、上記例示に各種の変更を加え得る。
【0091】
以上のように本明細書には以下のような開示が含まれている。
(1)
水分を含む被処理物が凍結されて凍結粒子が製造される凍結粒子製造装置であって、
前記凍結粒子が収容される収容空間を備えた容器と、
前記被処理物を粒子状にして前記収容空間に放出するノズルとを備え、
前記ノズルから放出される以前、又は、前記ノズルから放出された後に前記被処理物が凍結して得られる前記凍結粒子が前記容器に収容されるように構成されており、
前記容器に収容されている前記凍結粒子を攪拌する攪拌装置を更に備え、
該攪拌装置が、軸周りに回転可能な攪拌軸と、該攪拌軸とともに回転する攪拌部材とを備え、
前記攪拌軸が、前記収容空間を通るように設けられ、
前記被処理物を放出する前記ノズルの向きが、前記攪拌軸から離れる方向である凍結粒子製造装置。
【0092】
(2)
前記攪拌軸は、前記収容空間を上下方向に通るように設けられている(1)記載の凍結粒子製造装置。
【0093】
(3)
前記容器が、前記収容空間の上縁を画定する壁面を備えた天壁部を有し、
前記収容空間から排気を行うための排気口が前記天壁部に設けられ、
該排気口と前記ノズルとは、前記天壁部の中央部を介して一方と他方とに分かれて配されている(1)又は(2)の凍結粒子製造装置。
【0094】
(4)
前記容器が、前記収容空間の上縁を画定する壁面を備えた天壁部を有し、
該天壁部に複数の前記ノズルが配置されている(1)~(3)の何れかに記載の凍結粒子製造装置。
【0095】
(5)
前記天壁部の中央部には前記攪拌軸が上下方向に貫通している貫通部が設けられ、
前記複数のノズルは、周方向に並んで配置されている(1)~(4)の何れかに記載の凍結粒子製造装置。
【0096】
(6)
前記容器が、前記収容空間の側縁を画定する壁面を備えた側壁部を有し、
該壁面の温度を調整するための温度調節機構を有し、
前記ノズルの向きが、該壁面に向かう方向である(1)~(5)の何れかに記載の凍結粒子製造装置。
【0097】
(7)
前記収容空間が逆円錐台形状である(1)~(6)の何れかに記載の凍結粒子製造装置。
【0098】
(8)
前記ノズルが超音波ノズルである(1)~(7)の何れかに記載の凍結粒子製造装置。請求項1又は2記載の凍結粒子製造装置。
【符号の説明】
【0099】
10:凍結容器、10a:収容空間、10c:蓋体、11:底壁部、12:側壁部、12a:(側壁部の)内壁面、13:天壁部、13a:排気口、15:フィルターユニット、
20:減圧装置、
30:造粒装置、31:ノズル、310:超音波ノズル、
40:攪拌装置、41:攪拌軸、44:攪拌部材
100:粒子製造装置(凍結粒子製造装置)