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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145998
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058652
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 知広
(72)【発明者】
【氏名】林 伸夫
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA05Z
5H770KA01Z
(57)【要約】
【課題】電力変換装置において、モータの電流ピーク値の低減を図る。
【解決手段】制御部(50)が、複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、コンデンサ(40)の電圧がピーク値となる電圧ピークタイミング付近において、モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)としたときの高次調波を重畳することで、モータ(2)の複数の相電流(iv,iw)の絶対値のうちの最大値である最大相電流のピーク値を低減するようにインバータ回路(30)の出力電圧を制御する。コンデンサ(40)の容量値は、コンデンサ(40)の電圧が、最大値が最小値の2倍以上となるように単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(2)に電力を供給する電力変換装置(10)であって、
単相交流電源(1)から供給される交流電圧を整流するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有し、当該複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の動作によって、上記コンバータ回路(20)により出力された直流を交流に変換して上記モータ(2)に供給するインバータ回路(30)と、
上記インバータ回路(30)の入力ノード間に接続されたコンデンサ(40)と、
上記複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、上記コンデンサ(40)の電圧がピーク値となる電圧ピークタイミング付近において、上記モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)としたときの高次調波を重畳することで、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値である最大相電流(imax)のピーク値を低減するように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御する制御部(50)とを備え、
上記コンデンサ(40)の容量値は、当該コンデンサ(40)の電圧が、最大値が最小値の2倍以上となるように上記単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において
上記高次調波は、
上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において
上記高次調波は、
上記基本波周波数(ω)に対する(6n+1)次調波(nは自然数)及び(6n-1)次調波(nは自然数)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
上記制御部(50)は、
上記電圧ピークタイミングを除く期間に、上記重畳が行われない期間が含まれるように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において
上記制御部(50)は、
上記モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)から上記高次調波を除去した相電流の波形を重畳前相電流とし、
かつ重畳前最大相電流を、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)にそれぞれ対応する複数の上記重畳前相電流の絶対値のうちの最大値としたときに、
上記最大相電流(imax)のピーク値を、上記重畳前最大相電流のピーク値よりも小さくするように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、
上記制御部(50)による上記重畳は、少なくとも、上記重畳前最大相電流がピーク値となる電流ピークタイミング付近で行われ、
上記電流ピークタイミングを除く期間に、上記重畳が行われない期間が含まれることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電力変換装置において、
上記制御部(50)による上記重畳は、上記重畳前最大相電流がピーク値の75%以上である期間の少なくとも一部に行われることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項5に記載の電力変換装置において、
上記高次調波は、
上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波のうちの少なくとも1つであり、
上記高次調波の振幅は、上記重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)の20%未満となることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において
上記制御部(50)は、
上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)から、上記基本波周波数(ω)の奇数倍の周波数と、上記基本波周波数(ω)の奇数倍±電源周波数の2m倍(mは自然数)で得られる周波数とを除く周波数の成分を合成した相電流の波形を除去後相電流とし、
かつ除去後最大相電流を、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)にそれぞれ対応する複数の上記除去後相電流の絶対値のうちの最大値としたときに、
上記最大相電流(imax)のピーク値を、上記除去後最大相電流のピーク値よりも小さくするように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電力変換装置において、
上記制御部(50)による上記重畳は、少なくとも、上記除去後最大相電流がピーク値となる電流ピークタイミング付近で行われ、
上記電流ピークタイミングを除く期間に、上記重畳が行われない期間が含まれることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電力変換装置において、
上記制御部(50)による上記重畳は、上記除去後最大相電流がピーク値の75%以上である期間の少なくとも一部に行われることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項9に記載の電力変換装置において、
上記高次調波は、
上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波であり、
上記高次調波の振幅は、上記除去後相電流の電流ベクトルの振幅の20%未満となることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項2に記載の電力変換装置において、
上記高次調波と、上記基本波周波数(ω)の成分との位相のずれは、
上記高次調波が3次調波を含有している場合には、
上記3次調波と、上記基本波周波数(ω)の成分との位相のずれは、-10°~10°であり、かつ
上記高次調波に含まれる5次調波および7次調波の、上記基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、-5°~5°であり、
上記高次調波が3次調波を含有していない場合には、
上記高次調波に含まれる5次調波および7次調波の、上記基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、176°~184°であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項1に記載の電力変換装置において、
上記制御部(50)は、
上記高次調波の振幅及び位相のうちの少なくとも一方を、上記単相交流電源(1)から上記コンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、上記コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、上記インバータ回路(30)の入力電流(Idc)、及び上記インバータ回路(30)の出力電力のうちの少なくとも1つに基づいて制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
モータ(2)に電力を供給する電力変換装置であって、
単相交流電源(1)から供給される交流電圧を整流するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有し、当該複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の動作によって、上記コンバータ回路(20)により出力された直流を交流に変換して上記モータ(2)に供給するインバータ回路(30)と、
上記インバータ回路(30)の入力ノード間に接続されたコンデンサ(40)と、
上記複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、上記モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)とし、かつ最大相電流(imax)を、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値としたときに、上記基本波周波数(ω)に対する高次調波を重畳することで、上記最大相電流(imax)のピーク値を低減するように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御する制御部(50)とを備え、
上記コンデンサ(40)の容量値は、当該コンデンサ(40)の電圧が、最大値が最小値の2倍以上となるように上記単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように設定され、
上記高次調波は、
上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の一形式として、交流電源の電力を任意の交流電力に変換するものがある。この形式の電力変換装置の中には、直流リンク部に比較的小容量のコンデンサを設けて力率の改善を図るものがある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-51589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電力変換装置によってモータに電力を供給すると、モータの電流ピークが増大傾向にあり、その結果として運転エリアの減少を招いていた。これを対策するには、モータの大型化やインバータ回路を構成するスイッチング素子の大容量化を行うことが考えられるが、それでは装置のサイズアップやコストアップを招いてしまう。すなわち、別の対策が望まれる。
【0005】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、電力変換装置において、モータの電流ピーク値の低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、モータ(2)に電力を供給する電力変換装置(10)であって、単相交流電源(1)から供給される交流電圧を整流するコンバータ回路(20)と、複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有し、当該複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の動作によって、上記コンバータ回路(20)により出力された直流を交流に変換して上記モータ(2)に供給するインバータ回路(30)と、上記インバータ回路(30)の入力ノード間に接続されたコンデンサ(40)と、上記複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、上記コンデンサ(40)の電圧がピーク値となる電圧ピークタイミング付近において、上記モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)としたときの高次調波を重畳することで、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値である最大相電流(imax)のピーク値を低減するように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御する制御部(50)とを備え、上記コンデンサ(40)の容量値は、当該コンデンサ(40)の電圧が、最大値が最小値の2倍以上となるように上記単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように設定されていることを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に高次調波を重畳することにより、モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値のピーク値を小さくできる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、上記高次調波は、上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波であることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、上記基本波周波数(ω)に対する偶数次調波を含む高次調波を重畳する場合に比べ、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)の絶対値波形の最大値のピーク値を確実に小さくできる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、上記高次調波は、上記基本波周波数(ω)に対する(6n+1)次調波(nは自然数)及び(6n-1)次調波(nは自然数)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
【0011】
本開示の第4の態様は、第1~3のいずれか1つの態様において、上記制御部(50)は、上記電圧ピークタイミングを除く期間に、上記重畳が行われない期間が含まれるように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御することを特徴とする。
【0012】
第4の態様では、コンデンサ(40)の電圧が比較的低い期間を、上記重畳が行われない期間とすることで、電圧が比較的低い期間において、磁束を弱めるための電流及び電流実効値の増加を抑制できる。したがって、モータ(2)の電流増加による損失を低減できる。
【0013】
本開示の第5の態様は、第1~3のいずれか1つの態様において、上記制御部(50)は、上記モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)から上記高次調波を除去した相電流の波形を重畳前相電流とし、かつ重畳前最大相電流を、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)にそれぞれ対応する複数の上記重畳前相電流の絶対値のうちの最大値としたときに、上記最大相電流(imax)のピーク値を、上記重畳前最大相電流のピーク値よりも小さくするように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御することを特徴とする。
【0014】
第5の態様では、上記最大相電流(imax)のピーク値を、上記重畳前最大相電流のピーク値よりも低減できる。
【0015】
本開示の第6の態様は、第5の態様において、上記制御部(50)による上記重畳は、少なくとも、上記重畳前最大相電流がピーク値となる電流ピークタイミング付近で行われ、上記電流ピークタイミングを除く期間に、上記重畳が行われない期間が含まれることを特徴とする。
【0016】
第6の態様では、電流ピークが比較的低い期間を、上記重畳が行われない期間とすることで、上記期間で上記重畳により発生する損失を抑制できる。
【0017】
本開示の第7の態様は、第5の態様において、上記制御部(50)による上記重畳は、上記重畳前最大相電流がピーク値の75%以上である期間の少なくとも一部に行われることを特徴とする。
【0018】
第7の態様では、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)の絶対値波形の最大値のピーク値を確実に小さくできる。
【0019】
本開示の第8の態様は、第5の態様において、上記高次調波は、上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波のうちの少なくとも1つであり、上記高次調波の振幅は、上記重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)の20%未満となることを特徴とする。
【0020】
第8の態様では、高次調波の振幅を、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)の20%未満とすることにより、20%以上とする場合に比べ、高次調波の重畳による損失を低減できる。
【0021】
本開示の第9の態様は、第1~3のいずれか1つの態様において、上記制御部(50)は、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)から、上記基本波周波数(ω)の奇数倍の周波数と、上記基本波周波数(ω)の奇数倍±電源周波数の2m倍(mは自然数)で得られる周波数とを除く周波数の成分を合成した相電流の波形を除去後相電流とし、かつ除去後最大相電流を、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)にそれぞれ対応する複数の上記除去後相電流の絶対値のうちの最大値としたときに、上記最大相電流(imax)のピーク値を、上記除去後最大相電流のピーク値よりも小さくするように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御することを特徴とする。
【0022】
第9の態様では、上記最大相電流(imax)のピーク値を、上記除去後最大相電流のピーク値よりも低減できる。
【0023】
本開示の第10の態様は、第9の態様において、上記制御部(50)による上記重畳は、少なくとも、上記除去後最大相電流がピーク値となる電流ピークタイミング付近で行われ、上記電流ピークタイミングを除く期間に、上記重畳が行われない期間が含まれることを特徴とする。
【0024】
第10の態様では、電流ピークが比較的低い期間を、上記重畳が行われない期間とすることで、上記期間で上記重畳により発生する損失を抑制できる。
【0025】
本開示の第11の態様は、第9の態様において、上記制御部(50)による上記重畳は、上記除去後最大相電流がピーク値の75%以上である期間の少なくとも一部に行われることを特徴とする。
【0026】
第11の態様では、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)の絶対値波形の最大値のピーク値を確実に小さくできる。
【0027】
本開示の第12の態様は、第9の態様において、上記高次調波は、上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波であり、上記高次調波の振幅は、上記除去後相電流の電流ベクトルの振幅の20%未満となることを特徴とする。
【0028】
第12の態様では、高次調波の振幅を、除去後相電流の電流ベクトルの振幅の20%未満とすることにより、20%以上とする場合に比べ、高次調波の重畳による損失を低減できる。
【0029】
本開示の第13の態様は、第1~12のいずれか1つの態様において、上記高次調波と、上記基本波周波数(ω)の成分との位相のずれは、上記高次調波が3次調波を含有している場合には、上記3次調波と、上記基本波周波数(ω)の成分との位相のずれは、-10°~10°であり、かつ上記高次調波に含まれる5次調波および7次調波の、上記基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、-5°~5°であり、上記高次調波が3次調波を含有していない場合には、上記高次調波に含まれる5次調波および7次調波の、上記基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、176°~184°であることを特徴とする。
【0030】
第13の態様では、上記高次調波が3次調波を含有している場合には、3次調波と、基本波周波数(ω)の成分との位相のずれを、-10°~10°とし、5次調波および7次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを、-5°~5°とすることにより、モータ(2)の電流ピーク値を効果的に低減できる。
【0031】
上記高次調波が3次調波を含有していない場合には、5次調波および7次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを、176°~184°とすることにより、モータ(2)の電流ピーク値を効果的に低減できる。
【0032】
本開示の第14の態様は、第1~13のいずれか1つの態様において、上記制御部(50)は、上記高次調波の振幅及び位相のうちの少なくとも一方を、上記単相交流電源(1)から上記コンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、上記コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、上記インバータ回路(30)の入力電流(Idc)、及び上記インバータ回路(30)の出力電力のうちの少なくとも1つに基づいて制御することを特徴とする。
【0033】
第14の態様では、上記単相交流電源(1)から上記コンバータ回路(20)に流れる入力電流、上記コンデンサ(40)の電圧、上記インバータ回路(30)の入力電流、及び上記インバータ回路(30)の出力電力のうちの少なくとも1つに基づいて高次調波を制御できるので、モータ(2)の電流ピーク値の低減と、高次調波を重畳することによって発生する入力電流の高次調波の抑制とを両立して行うことができる。
【0034】
本開示の第15の態様は、モータ(2)に電力を供給する電力変換装置であって、単相交流電源(1)から供給される交流電圧を整流するコンバータ回路(20)と、複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有し、当該複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の動作によって、上記コンバータ回路(20)により出力された直流を交流に変換して上記モータ(2)に供給するインバータ回路(30)と、上記インバータ回路(30)の入力ノード間に接続されたコンデンサ(40)と、上記複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、上記モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)とし、かつ最大相電流(imax)を、上記モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値としたときに、上記基本波周波数(ω)に対する高次調波を重畳することで、上記最大相電流(imax)のピーク値を低減するように上記インバータ回路(30)の出力電圧を制御する制御部(50)とを備え、上記コンデンサ(40)の容量値は、当該コンデンサ(40)の電圧が、最大値が最小値の2倍以上となるように上記単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように設定され、上記高次調波は、上記基本波周波数(ω)に対する奇数次調波であることを特徴とする。
【0035】
第15の態様では、インバータ回路(30)の制御により、モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値のピーク値を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、電流指令生成部のブロック図である。
図3図3は、高次調波の重畳を行わないときの電源電圧、相電流、及び最大相電流の波形を例示するタイミングチャートである。
図4図4は、高次調波の重畳を常に行ったときの図3相当図である。
図5図5は、インバータ回路の出力電圧及びその限界値のタイミングチャートである。
図6図6は、基本波、基本波に5次調波及び7次調波を重畳した合成波、5次調波、及び7次調波の比率のタイミングチャートである。
図7図7は、モータの相電流に5次調波及び7次調波を重畳したときのd軸電流及びq軸電流を示す式、及び電流ベクトルを導く式を示す。
図8図8は、モータの相電流の(6n-1)次調波、(6n+1)次調波、及び高次調波の重畳前における電流ベクトルの振幅のタイミングチャートである。
図9図9は、モータの相電流の(6n-1)次調波及び(6n+1)次調波の電流ベクトルの振幅に対する比率のタイミングチャートである。
図10図10は、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅に対する高次調波の電流ベクトルの振幅の比率と最大相電流のピーク値の低減率との関係を示すグラフである。
図11図11は、高次調波が3次調波を含有していない場合に、高次調波に含まれる5次調波の基本波周波数の成分に対する位相のずれを+180°、+175°、+185°としたときの高次調波に含まれる5次調波の基本波周波数の成分に対する位相のずれと、最大相電流のピーク値の低減率との関係を示すグラフである。
図12図12は、モータの相電流に含まれる基本波周波数の5倍の周波数の成分と、基本波周波数の5倍±電源周波数の2m倍(mは自然数)で得られる周波数の成分とを明示する式を示す。
図13図13は、高次調波に含まれる3次調波の基本波周波数の成分に対する位相のずれを0°としたときの、高次調波に含まれる5次調波及び7次調波の基本波周波数の成分に対する位相のずれと、最大相電流のピーク値の低減率との関係を示すグラフである。
図14図14は、高次調波に含まれる3次調波の基本波周波数の成分に対する位相のずれを-10°としたときの、図13相当図である。
図15図15は、高次調波に含まれる3次調波の基本波周波数の成分に対する位相のずれを+10°としたときの、図13相当図である。
図16図16は、実施形態1の変形例2の図6相当図である。
図17図17は、実施形態2の図1相当図である。
図18図18は、実施形態2の図2相当図である。
図19図19は、モータの相電流及びそれらの電流ベクトルと、高次調波の重畳前の電流ベクトルのタイミングチャートである。
図20図20は、重畳前の最大相電流がピーク値の91.5%以上である期間のみに高次調波の重畳を行ったときの電源電圧、最大相電流、及び相電流の波形を例示するタイミングチャートである。
図21図21は、実施形態3の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0038】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電力変換装置(10)の構成を示すブロック図である。電力変換装置(10)は、単相交流電源(1)から供給される交流電力を所定の出力交流電力に変換してモータ(2)に供給する。この電力変換装置(10)は、図1に示すように、コンバータ回路(20)、インバータ回路(30)、コンデンサ(40)及び制御部(50)を備えている。なお、モータ(2)は、例えば、IPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)によって構成され、空気調和機の圧縮機(図示を省略)を駆動する。
【0039】
コンバータ回路(20)は、リアクトル(L)を介して単相交流電源(1)に接続され、単相交流電源(1)から供給される交流電圧を全波整流する。この例では、コンバータ回路(20)は、ブリッジ状に結線された4個のダイオード(21,22,23,24)を備えている。すなわち、コンバータ回路(20)は、ダイオードブリッジ回路によって構成されている。
【0040】
インバータ回路(30)は、ブリッジ結線された6つのスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有している。インバータ回路(30)は、スイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の動作によって、コンバータ回路(20)により出力された直流を交流に変換してモータ(2)に供給する。この例では、詳しく説明すると、インバータ回路(30)は、2つのスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を互いに直列に接続してなる3つのスイッチングレグを備え、3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(31a,32a,33a)と下アームのスイッチング素子(34a,35a,36a)との中点が、モータ(2)の各相のコイル(u相,v相,w相のコイル)にそれぞれ接続されている。また、6つのスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)には、6つの還流ダイオード(31b,32b,33b,34b,35b,36b)がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0041】
コンデンサ(40)は、インバータ回路(30)の入力ノード間に接続されている。ここで、コンデンサ(40)の容量値は、コンバータ回路(20)の出力をほとんど平滑化することができない一方で、インバータ回路(30)のスイッチング動作(後述)に起因するリプル電圧(スイッチング周波数に応じた電圧変動)を抑制することができるように、設定されている。具体的には、コンデンサ(40)は、例えば、数十μF程度の容量値を有するフィルムコンデンサによって構成されている。具体的には、コンデンサ(40)の電圧がその最大値がその最小値の2倍以上になるように単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように、コンデンサ(40)の容量値が設定されている。
【0042】
〈制御部〉
制御部(50)は、マイクロコンピュータと、それを制御するソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成されている。制御部(50)は、モータ(2)の電気角周波数が、与えられた指令値(以下、回転数指令値(ωm*)という)となるように、6つのスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)のスイッチング動作を制御することによってインバータ回路(30)の出力(出力交流電圧)を制御する。これにより、モータ(2)の駆動が制御される。
【0043】
ここで、モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)とし、モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値を最大相電流(imax)とする。制御部(50)は、6つのスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、コンデンサ(40)の電圧がピーク値となる電圧ピークタイミング付近において、相電流(iu,iv,iw)に高次調波を重畳することで、最大相電流(imax)のピーク値を低減するようにインバータ回路(30)の出力電圧を制御する。本実施形態1において、高次調波は、(6n±1)(nは自然数)次調波である。つまり、高次調波は、基本波周波数(ω)に対する奇数次調波である。具体的には、高次調波は、5次調波及び7次調波である。高次調波は、3次調波を含有していない。また、5次調波および7次調波はdq軸に座標変換すると6次調波として現れる。
【0044】
前記制御を実現するため、制御部(50)は、図1に示すように、速度制御部(51)、電流指令生成部(60)、座標変換部(52)、電流制御部(53)、及びPWM演算部(54)を備えている。
【0045】
速度制御部(51)は、モータ(2)の回転数指令値(ωm*)に基づいて、第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)を算出する。
【0046】
電流指令生成部(60)は、速度制御部(51)により算出された第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、単相交流電源(1)の電源電圧の位相角(以下、電源位相(θin))、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、d軸電圧指令値(vd)、及びq軸電圧指令値(vq)に基づいて、第2のd軸電流指令値(id**)及び第2のq軸電流指令値(iq**)を算出する。
【0047】
具体的には、電流指令生成部(60)は、図2に示すように、6n次調波指令生成部(61)、第1の乗算部(62)、第2の乗算部(63)、第1の加算部(64)、平方根算出部(65)、第3の乗算部(66)、ピークホールド部(67)、第4の乗算部(68)、及びピーク判定部(69)、選択部(70)、電源電流指令生成部(71)、第2の加算部(72)、及び第3の加算部(73)を有している。
【0048】
6n次調波指令生成部(61)は、第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)の基本波周波数(ω)に対する6n次調波(nは自然数)を生成する。6n次調波(nは自然数)は、基本波周波数(ω)の6n倍の周波数の成分である。具体的には、本実施形態1では、6n次調波指令生成部(61)は、6次調波だけを生成する。
【0049】
本実施形態1では、6n次調波指令生成部(61)は、相電流(iu,iv,iw)に重畳される5次調波及び7次調波が、基本波周波数(ω)の成分に対して180°の位相ずれ(θe)分だけずれるように、6n次調波を出力する。また、相電流(iu,iv,iw)に重畳される5次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の12.3%、相電流(iu,iv,iw)に重畳される7次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の5.1%に設定される。
【0050】
第1の乗算部(62)は、d軸電圧指令値(vd)の2乗を算出する。
【0051】
第2の乗算部(63)は、q軸電圧指令値(vq)の2乗を算出する。
【0052】
第1の加算部(64)は、第1及び第2の乗算部(62,63)の算出結果を加算する。
【0053】
平方根算出部(65)は、第1の加算部(64)の算出結果の平方根を算出し、算出結果を、インバータ回路(30)の出力電圧(vINV)として出力する。
【0054】
第3の乗算部(66)は、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)を1/√2倍し、インバータ回路(30)の出力電圧(vINV)の限界値(vlim)として出力する。この限界値(vlim)は、単相交流電源(1)の電源電圧の周期の半周期で脈動する。
【0055】
ピークホールド部(67)は、第3の乗算部(66)により出力される限界値(vlim)の波形のピーク値(vMAX)を保持する。
【0056】
第4の乗算部(68)は、ピークホールド部(67)によって保持されたピーク値(vMAX)の1/2(vMAX/2)を出力する。
【0057】
ピーク判定部(69)は、インバータ回路(30)の出力電圧(vINV)が、限界値(vlim)よりも小さく、かつ限界値(vlim)が、ピーク値(vMAX)の1/2(vMAX/2)よりも大きいという重畳条件が満たされているか否かを判定する。
【0058】
ピーク判定部(69)により上記重畳条件が満たされていると判定された場合には、選択部(70)は、6n次調波指令生成部(61)の出力を選択して出力する。一方、ピーク判定部(69)により上記重畳条件が満たされていないと判定された場合には、選択部(70)は、0を選択して出力する。
【0059】
電源電流指令生成部(71)は、電源位相(θin)に基づいて、電源電圧の周波数に応じて脈動する指令値を生成し、当該指令値と、単相交流電源(1)からの入力電流(iin)の絶対値の偏差が小さくなるように、補償量(icomp*)を算出して出力する。電源電流指令生成部(71)は、例えば、当該偏差に基づいて、例えばPI演算(比例、積分)を行って、補償量(icomp*)を求める。
【0060】
第2の加算部(72)は、選択部(70)の出力と、電源電流指令生成部(71)により算出された補償量(icomp*)とを加算して出力する。
【0061】
第3の加算部(73)は、第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)に、第2の加算部(72)の出力を加算し、第2のd軸電流指令値(id**)及び第2のq軸電流指令値(iq**)を出力する。
【0062】
座標変換部(52)は、モータ(2)のu相電流(iu)、w相電流(iw)、及びモータ(2)の回転子(図示を省略)の電気角に基づいて、いわゆるdq変換を行ってモータ(2)のd軸電流(id)及びq軸電流(iq)を導出する。なお、u相電流(iu)及びw相電流(iw)は、例えば、電流センサを設けて直接その値を検出することができる。
【0063】
電流制御部(53)は、第2のd軸電流指令値(id**)、第2のq軸電流指令値(iq**)、d軸電流(id)、及びq軸電流(iq)に基づいて、d軸電圧指令値(vd)、及びq軸電圧指令値(vq)を導出する。具体的には、電流制御部(53)は、第2のd軸電流指令値(id**)とd軸電流(id)との偏差、及び第2のq軸電流指令値(iq**)とq軸電流(iq)との偏差がそれぞれ小さくなるように、d軸電圧指令値(vd)、及びq軸電圧指令値(vq)を導出する。
【0064】
PWM演算部(54)は、インバータ回路(30)におけるスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)のオン/オフを制御するための制御信号(G)を生成する。具体的には、PWM演算部(54)は、モータ位相、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、d軸電圧指令値(vd)、q軸電圧指令値(vq)に基づいて、スイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の各々に供給される制御信号(G)のデューティー比を設定する。制御信号(G)が出力されると、各スイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)は、PWM演算部(54)によって設定されたデューティー比でスイッチング動作(オンオフ動作)を行う。この制御信号(G)は周期的に更新され、インバータ回路(30)におけるスイッチング動作が制御される。
【0065】
〈電力変換装置の動作〉
電力変換装置(10)が動作を開始すると、コンバータ回路(20)が、電源電圧を全波整流する。コンデンサ(40)の電圧(Vdc)は、電源電圧の周波数の2倍の周波数で脈動する。インバータ回路(13)は、制御信号(G)に応じたスイッチング動作を行うことにより、モータ(2)に所定の交流電力を供給する。これにより、モータ(2)が駆動する。
【0066】
インバータ回路(30)の出力電圧(vINV)が、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)の1/√2倍である限界値(vlim)よりも小さく、かつ限界値(vlim)が、限界値(vlim)のピーク値の1/2倍よりも大きいとき、制御部(50)は、第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)に、その6n次調波(nは自然数)を加算する。その結果、制御部(50)は、複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)の制御により、上記コンデンサ(40)の電圧がピーク値となる電圧ピークタイミング付近において、モータ(2)の電気角周波数を基本波周波数(ω)としたときの高次調波をモータ(2)の相電流(iu, iw,iv)に重畳するように、インバータ回路(30)の出力電圧を制御する。本実施形態1において、高次調波は、5次調波及び7次調波である。高次調波は、3次調波を含有していない。また、これら5次調波及び7次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれが、180°となるように、6n次調波指令生成部(61)は6n次調波を生成する。ここで、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)から上記高次調波を除去した相電流の波形を重畳前相電流とする。これら5次調波及び7次調波の振幅が、重畳前相電流の電流ベクトルの20%未満となるように、6n次調波指令生成部(61)は6n次調波を生成する。
【0067】
図3は、高次調波の重畳を行わない場合の電源電圧、相電流、及び最大相電流の波形を例示する。
【0068】
図4は、高次調波、すなわち5次調波及び7次調波の重畳を常に行ったときの電源電圧、相電流、及び最大相電流の波形を例示する。
【0069】
図3及び図4に示すように、高次調波の重畳により、モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値である最大相電流(imax)のピーク値を低減することができる。重畳前最大相電流を、モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)にそれぞれ対応する複数の上記重畳前相電流の絶対値のうちの最大値とすると、制御部(50)は、最大相電流(imax)のピーク値を、上記重畳前最大相電流のピーク値よりも小さくするようにインバータ回路(30)の出力電圧を制御しているといえる。
【0070】
このように、本実施形態1では、モータ(2)の複数の相電流(iu,iv,iw)の絶対値のうちの最大値のピーク値を小さくできる。
【0071】
図5は、インバータ回路(30)の出力電圧(vINV)及びその限界値(vlim)を示す。図5中、重畳条件が満たされる期間、つまりインバータ回路(30)の出力電圧(vINV)が、限界値(vlim)よりも小さく、かつ限界値(vlim)が、ピーク値(vMAX)の1/2(vMAX/2)よりも大きい期間を、符号Tpで示す。この期間(Tp)が、電圧ピークタイミング付近に相当する。本実施形態1では、この期間(Tp)には、高次調波がモータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に重畳されるが、この期間(Tp)以外には、高次調波がモータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に重畳されない。つまり、制御部(50)は、電圧ピークタイミングを除く期間に、高次調波の重畳が行われない期間が含まれるようにインバータ回路(30)の出力電圧を制御する。
【0072】
このように、コンデンサ(40)の電圧が比較的低い期間を、高次調波の重畳が行われない期間とすることで、電圧が比較的低い期間において、磁束を弱めるための電流及び電流実効値の増加を抑制できる。
【0073】
また、本実施形態1では、力率の改善を図るように、コンデンサ(40)の容量値が、当該コンデンサ(40)の電圧が、最大値が最小値の2倍以上となるように上記単相交流電源(1)の半周期で脈動するのを許容するように比較的小さく設定され、力率の改善を図るようにインバータ回路(30)の出力電圧を制御するので、最大相電流(imax)がピーク値となるタイミング付近では、コンデンサ(40)の直流電圧が大きい。したがって、高回転領域においても、インバータ回路(30)の出力電圧(vINV)が、限界値(vlim)を上回らず、上述のような高次調波の重畳を行うことが可能になる。
【0074】
図6は、相電流(iu, iw,iv)の基本波周波数(ω)の成分(基本波)、基本波に5次調波及び7次調波を重畳した合成波、5次調波、及び7次調波の比率を示す。5次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の12.3%、7次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の5.1%に設定される。合成波のピーク値は、基本波周波数(ω)の成分のピーク値よりも7.2%低くなる。
【0075】
ここで、モータ(2)のd軸電流(id)をid、q軸電流(iq)をiq、基本波周波数(ω)をωとしたとき、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に5次調波及び7次調波を重畳したときのd軸電流(id)及びq軸電流(iq)は、図7の式1に示すように表される。また、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)の電流ベクトルをIaとしたとき、電流ベクトルは、図7の式2に示すように表される。
【0076】
図8中、w(6n-1)は、モータ(2)のいずれかの相電流(iu,iv,iw)の(6n-1)次調波を示し、w(6n+1)は、当該相電流(iu,iv,iw)の(6n+1)次調波を示す。また、図8中、|Ia|は、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(絶対値)を示す。また、図9中、w(6n-1)は、モータ(2)のいずれかの相電流(iu,iv,iw)の(6n-1)次調波の電流ベクトルの振幅(|Ia|)に対する比率を示し、w(6n+1)は、当該相電流(iu,iv,iw)の(6n+1)次調波の電流ベクトルの振幅(|Ia|)に対する比率を示す。
【0077】
図9に示すように、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に重畳される(6n-1)次調波及び(6n+1)次調波の振幅は、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)の20%未満に設定されている。
【0078】
図10は、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)に対するモータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に重畳される高次調波の電流ベクトルの振幅の比率と、最大相電流(imax)のピーク値の低減率との関係を示す。
【0079】
同図に示すように、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)に対する高次調波の振幅の比率を、15%以上20%未満とすることにより、20%以上とした場合に比べ、最大相電流(imax)のピーク値の低減率を高くできる。
【0080】
また、重畳前相電流の電流ベクトルの振幅(|Ia|)に対する高次調波の振幅の比率を、20%未満とすることにより、20%以上とする場合に比べ、高次調波の重畳による損失を低減できる。
【0081】
図11は、高次調波が3次調波を含有していない場合に、高次調波に含まれる5次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを+180°、+175°、+185°としたときの高次調波に含まれる5次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれと、最大相電流(imax)のピーク値の低減率との関係を示す。同図に示すように、5次調波及び7次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを、180°とすることにより、最大相電流(imax)のピーク値の低減率を最大にできる。
【0082】
また、5次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを、176°~184°とすることにより、176°よりも小さいか又は184°を超える値にした場合に比べ、最大相電流(imax)のピーク値の低減率を大きくできる。
【0083】
また、7次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを、176°~184°とすることにより、176°よりも小さいか又は184°を超える値にした場合に比べ、最大相電流(imax)のピーク値の低減率を大きくできる。
【0084】
なお、相電流(iu,iv,iw)の基本波周波数(ω)の成分iu1を以下の式3のように表した場合、相電流(iu,iv,iw)に重畳される5次調波iu5、及び7次調波iu7は、以下の式4及び式5に示すように表される。
【0085】
u1 = Imsin(ωt+ψ) ・・・(3)
u5 = ImAsin5(ωt+ψ+180) ・・・(4)
u7 = ImAsin7(ωt+ψ+180) ・・・(5)
ψ及びψは、ψ±4°とされる。
【0086】
また、図12は、電源周波数の2倍の周波数(電源の周期の半周期)で脈動する相電流に(n-1)次調波、具体的には5次調波を重畳させた状態の相電流(iu,iv,iw)の波形を式で示す。図12の式において、iu1を基本波周波数(ω)の成分、iu5を5次調波、ωを基本波周波数、ωを電源周波数とする。図12の式において、5次調波の重畳により相電流(iu,iv,iw)に現れる可能性のある項を四角で囲んで示す。四角で囲んで示される項は、基本波周波数(ω)の奇数倍の周波数の成分(奇数次調波)と、基本波周波数(ω)の奇数倍±電源周波数の2m倍(mは自然数)で得られる周波数の成分である。
【0087】
本実施形態1では、制御部(50)は、高次調波の重畳により、モータ(2)の複数の相電流(iu, iw,iv)の絶対値のうちの最大値である最大相電流(imax)のピーク値を低減する。したがって、モータ(2)の複数の相電流(iu,iw, iv)から、上記基本波周波数(ω)の奇数倍の周波数と、上記基本波周波数(ω)の奇数倍±電源周波数の2m倍(mは自然数)で得られる周波数とを除く周波数の成分を合成した相電流の波形を除去後相電流とし、かつ除去後最大相電流を、モータ(2)の複数の相電流(iu, iw,iv)にそれぞれ対応する複数の上記除去後相電流の絶対値のうちの最大値としたとき、最大相電流(imax)のピーク値は、上記除去後最大相電流のピーク値よりも小さくなる。また、除去後相電流の電流ベクトルの振幅に対する相電流(iu,iv,iw)に重畳する高次調波の振幅の比率を、15%以上20%未満とするようにしてもよい。
【0088】
(実施形態1の変形例1)
実施形態1の変形例1では、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に3次高調波を重畳できるモータ構造、例えばΔ結線が採用され、高次調波が、3次調波を含有する。当該3次調波と、上記基本波周波数(ω)の成分との位相のずれは、-10°~10°に設定され、上記高次調波に含まれる5次調波および7次調波の、上記基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、-5°~5°に設定される。
【0089】
図13は、高次調波に含まれる3次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを0°としたときの、高次調波に含まれる5次調波及び7次調波と、最大相電流(imax)のピーク値の低減率との関係を示す。図14は、高次調波に含まれる3次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを-10°としたときの、図13相当図である。図15は、高次調波に含まれる3次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを+10°としたときの、図13相当図である。
【0090】
図13~15を参照すると、3次調波と、基本波周波数(ω)の成分との位相のずれを、-10°~10°、上記高次調波に含まれる5次調波および7次調波の、基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれを、-5°~5°とすることにより、最大相電流(imax)のピーク値の低減率を0%よりも大きくできることがわかる。
【0091】
(実施形態1の変形例2)
図16は、実施形態1の変形例2の図6相当図である。本変形例2では、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)に重畳される高次調波が、(6n±1)(nは偶数)次調波をさらに含む。具体的には、高次調波は、5次調波、7次調波、11次調波、及び13次調波である。5次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の16.4%、7次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の9.7%、11次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の3.4%、13次調波の振幅は、基本波周波数(ω)の成分の1.6%に設定される。また、nが奇数の(6n±1)次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、176°~184°、nが偶数の(6n±1)次調波の基本波周波数(ω)の成分に対する位相のずれは、-6°~+4°に設定される。
【0092】
相電流(iu,iv,iw)の基本波周波数(ω)の成分iu1を上記式3のように表した場合、相電流(iu,iv,iw)に重畳される11次調波iu11、及び13次調波iu13は、以下の式6及び式7に示すように表される。
【0093】
u11 = ImA11sin11(ωt+ψ11) ・・・(6)
u13 = ImA13sin13(ωt+ψ13) ・・・(7)
ψ11及びψ13は、ψ±4°とされる。
【0094】
(実施形態2)
図17は、実施形態2の図1相当図である。本実施形態2では、電流指令生成部(60)が、速度制御部(51)により算出された第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、単相交流電源(1)の電源電圧の位相角(以下、電源位相(θin))、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、モータ(2)のd軸電流(id)及びq軸電流(iq)に基づいて、第2のd軸電流指令値(id**)及び第2のq軸電流指令値(iq**)を算出する。
【0095】
具体的には、電流指令生成部(60)は、実施形態1の第1の乗算部(62)、第2の乗算部(63)、第1の加算部(64)、平方根算出部(65)、第3の乗算部(66)、ピークホールド部(67)、第4の乗算部(68)、及びピーク判定部(69)に代えて、図18に示すように、第1の二乗算出部(74)、第2の二乗算出部(75)、二乗加算部(76)、電流ベクトル算出部(77)、6n次調波除去部(78)、ピークホールド部(79)、及びピーク判定部(80)を有している。
【0096】
第1の二乗算出部(74)は、モータ(2)のd軸電流(id)の2乗を算出する。
【0097】
第2の二乗算出部(75)は、モータ(2)のq軸電流(iq)の2乗を算出する。
【0098】
二乗加算部(76)は、第1及び第2の二乗算出部(74,75)の算出結果を加算する。
【0099】
電流ベクトル算出部(77)は、二乗加算部(76)の算出結果の平方根を算出し、算出結果を、電流ベクトル(Ia)として出力する。
【0100】
6n次調波除去部(78)は、電流ベクトル(Ia)から、その6n次調波、すなわち基本波周波数(ω)の6n倍の周波数の成分を除去するフィルタである。6n次調波除去部(78)は、6n次調波の除去後の電流ベクトルを、高次調波の重畳前の電流ベクトル(Iaf)として出力する。
【0101】
ピークホールド部(79)は、6n次調波除去部(78)により出力される高次調波の重畳前の電流ベクトル(Iaf)のピーク値(Ipeak)を保持する。
【0102】
ピーク判定部(80)は、6n次調波除去部(78)により出力された重畳前の電流ベクトル(Iaf)が、ピークホールド部(79)により保持されたピーク値(Ipeak)の0.915倍よりも大きいという重畳条件が満たされているか否かを判定する。
【0103】
図19は、モータ(2)の相電流(iu,iv,iw)及びそれらの電流ベクトル(Ia)と、高次調波の重畳前の電流ベクトル(Iaf)とを示す。
【0104】
同図に示すように、制御部(50)による高次調波の重畳は、重畳前の電流ベクトル(Iaf)が、重畳前の電流ベクトル(Iaf)のピーク値(Ipeak)の91.5%よりも大きい期間だけに行われる。
【0105】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0106】
(実施形態2の変形例)
上記実施形態2では、重畳条件を、重畳前の電流ベクトル(Iaf)が、そのピーク値(Ipeak)の0.915倍よりも大きいという条件とした。実施形態2の変形例では、重畳条件を、上記重畳前最大相電流がそのピーク値の91.5%以上であるという条件とする。したがって、本変形例では、相電流(iu,iv,iw)への高次調波の重畳が、重畳前最大相電流がピーク値となる電流ピークタイミング付近に行われる。また、相電流(iu,iv,iw)への高次調波の重畳は、重畳前最大相電流がピーク値の75%以上である期間の一部に行われる。つまり、制御部(50)は、電流ピークタイミングを除く期間に、高次調波の重畳が行われない期間が含まれるようにインバータ回路(30)の出力電圧を制御できる。
【0107】
本変形例では、図20に示すように、重畳前最大相電流が、そのピーク値の91.5%以上である期間にのみ、制御部(50)は、相電流(iu,iv,iw)に高次調波を重畳する。これにより、重畳後の最大相電流のピーク値は、重畳前最大相電流のピーク値に比べて低減している。
【0108】
なお、本変形例では、重畳条件を、上記重畳前最大相電流がそのピーク値の91.5%以上であるという条件としたが、上記重畳前最大相電流がそのピーク値の75%以上であるという条件としてもよい。
【0109】
また、重畳条件を、上記除去後最大相電流がピーク値の91.5%以上であるという条件、又は上記除去後最大相電流がピーク値の75%以上であるという条件としてもよい。これにより、相電流(iu,iv,iw)への高次調波の重畳を、上記除去後最大相電流がピーク値となる電流ピークタイミング付近に行える。また、相電流(iu,iv,iw)への高次調波の重畳を、除去後最大相電流がピーク値の75%以上である期間の一部に行える。
【0110】
(実施形態3)
図21は、実施形態3の図2相当図である。本実施形態3では、電流指令生成部(60)が、速度制御部(51)により算出された第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、単相交流電源(1)の電源電圧の位相角(以下、電源位相(θin))に基づいて、第2のd軸電流指令値(id**)及び第2のq軸電流指令値(iq**)を算出する。
【0111】
具体的には、本実施形態3では、電流指令生成部(60)が、実施形態1の6n次調波指令生成部(61)、第1の乗算部(62)、第2の乗算部(63)、第1の加算部(64)、平方根算出部(65)、第3の乗算部(66)、ピークホールド部(67)、第4の乗算部(68)、ピーク判定部(69)、及び選択部(70)を有していない。本実施形態3では、電流指令生成部(60)が、これらに代えて、ハイパスフィルタ(81)、フーリエ変換部(82)、超過量算出部(83)、ゲイン乗算部(84)、リミッタ(85)、低減割合算出部(86)、5次調波乗算部(87)、7次調波乗算部(88)及び6n次調波指令生成部(89)を有している。
【0112】
ハイパスフィルタ(81)は、単相交流電源(1)からの入力電流(iin)の直流成分を除去し、高周波数成分を出力する。
【0113】
フーリエ変換部(82)は、ハイパスフィルタ(81)の出力に対し、フーリエ変換を行うことで、6n次成分(iin6)を抽出する。
【0114】
超過量算出部(83)は、フーリエ変換部(82)により抽出された6n次成分(iin6)から、所定の6n次入力電流閾値(iin6_th)を減算する。
【0115】
ゲイン乗算部(84)は、超過量算出部(83)の減算結果に、ゲイン(Kp)を乗算する。
【0116】
リミッタ(85)は、ゲイン乗算部(84)の出力が1を超える場合には、1を出力する一方、ゲイン乗算部(84)の出力が1を超えない場合には、ゲイン乗算部(84)の出力をそのまま出力する。
【0117】
低減割合算出部(86)は、1からリミッタ(85)の出力を減算することにより、低減割合を算出する。
【0118】
5次調波乗算部(87)は、5次調波の振幅(A5)に、低減割合算出部(86)により算出された低減割合を乗算することにより、振幅(A5’)を算出する。元の5次調波の振幅(A5)は、第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)に基づいて算出できる。
【0119】
7次調波乗算部(88)は、7次調波の振幅(A7)に、低減割合算出部(86)により算出された低減割合を乗算することにより、振幅(A7’)を算出する。元の7次調波の振幅(A7)は、第1のd軸電流指令値(id*)及び第1のq軸電流指令値(iq*)に基づいて算出できる。
【0120】
6n次調波指令生成部(89)は、5次調波の振幅が、5次調波乗算部(87)により算出した振幅(A5’)となり、7次調波の振幅が、7次調波乗算部(88)により算出した振幅(A7’)となるように、6n次調波(nは自然数)を生成する。
【0121】
このように、本実施形態3では、制御部(50)が、相電流(iu,iv,iw)に重畳する高次調波の振幅を、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流に基づいて制御する。
【0122】
(実施形態3の変形例)
なお、上記実施形態3では、制御部(50)が、相電流(iu,iv,iw)に重畳する高次調波の振幅を、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)に基づいて制御した。しかし、制御部(50)が、相電流(iu,iv,iw)に重畳する高次調波の振幅を、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、インバータ回路(30)の入力電流(Idc)、又はインバータ回路(30)の出力電力に基づいて制御するようにしてもよい。また、制御部(50)が、相電流(iu,iv,iw)に重畳する高次調波の振幅を、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、インバータ回路(30)の入力電流(Idc)、及びインバータ回路(30)の出力電力のうちの2つ以上に基づいて制御するようにしてもよい。
【0123】
また、制御部(50)が、相電流(iu,iv,iw)に重畳する高次調波の位相を、単相交流電源(1)からコンバータ回路(20)に流れる入力電流(iin)、コンデンサ(40)の電圧(Vdc)、インバータ回路(30)の入力電流(Idc)、及びインバータ回路(30)の出力電力のうちの2つ以上に基づいて制御するようにしてもよい。
【0124】
なお、上記実施形態1~3及びそれらの変形例では、インバータ回路(30)として、6つのスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有するものを使用したが、6つ以外の複数のスイッチング素子(31a,32a,33a,34a,35a,36a)を有するものを使用してもよい。
【0125】
また、上記実施形態1~3及びそれらの変形例では、高次調波を、基本波周波数に対する(6n+1)次調波(nは自然数)及び(6n-1)次調波(nは自然数)としたが、(6n+1)次調波(nは自然数)及び(6n-1)次調波(nは自然数)のうちの一方のみとしてもよい。
【0126】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示は、モータに電力を供給する電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0128】
1 単相交流電源
2 モータ
10 電力変換装置
20 コンバータ回路
30 インバータ回路
31a,32a,33a,34a,35a,36a スイッチング素子
40 コンデンサ
50 制御部
ω 基本波周波数
imax 最大相電流
iin 入力電流
Vdc 電圧
Idc 入力電流
iu,iv,iw 相電流
|Ia| 電流ベクトルの振幅
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