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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000146
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】水位計
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/263 20220101AFI20231225BHJP
【FI】
G01F23/263
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098747
(22)【出願日】2022-06-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】市川 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】山根 康平
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014EA02
(57)【要約】
【課題】電極対に対する配線数を少なくできるようにする。
【解決手段】水位計は入力回路30とセンサ部40と調整部50と切替え手段60と判別手段70と水位決定手段80を備え、センサ部40は水位検出方向に配列された複数の電極対41を有し、電極対41はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置の電極対41によって構成され、電極対41の一端は入力回路30に接続され、他端は同じ群に属するものが並列接続されて切替え手段60に接続され、判別手段70は第i群の検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群の検出値の大小をi=1,2,…,n-1について判別し、第n群の検出値と調整部50で得られる検出値の大小を判別し、切替え手段60は群と判別手段70の接続を順次切り替え、水位決定手段80は判別手段70の判別に基づいて水位を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力回路とセンサ部と調整部と切替え手段と判別手段と水位決定手段とを備える水位計であって、
前記センサ部は水位検出方向に配列された複数の電極対を有し、前記複数の電極対はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対によって構成されており、
全ての電極対の一端は前記入力回路に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて前記切替え手段に接続され、
前記判別手段は第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と前記調整部によって得られる検出値の大小関係を判別し、
前記切替え手段は前記判別手段による判別を可能とすべく、前記群と前記判別手段との接続を順次切り替え、
前記水位決定手段は前記判別手段の判別に基づいて水位を決定することを特徴とする水位計。
【請求項2】
請求項1に記載の水位計において、
前記調整部は前記判別手段によって大小関係が判別される2つの検出値が常に互いに異なる値となるように機能することを特徴とする水位計。
【請求項3】
請求項2に記載の水位計において、
前記調整部を複数備え、前記判別回路に接続される群に応じて機能させる調整部を切り替えることを特徴とする水位計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記電極対は電極間の抵抗値を検出するものであることを特徴とする水位計。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記電極対は電極間の静電容量を検出するものであることを特徴とする水位計。
【請求項6】
請求項5に記載の水位計において、
各前記群と前記切替え手段の間に静電容量を電圧に変換して前記切替え手段に入力するC/V変換部が設けられ、
前記切替え手段と前記判別手段の間に前記判別手段による前記判別を可能とする加算手段が設けられていることを特徴とする水位計。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記切替え手段と前記判別手段の間に前記検出値をデジタル値とするA/D変換部が設けられていることを特徴とする水位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水位計に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は水位計の従来例として特許文献1に記載されている水位センサの原理図を示したものであり、この水位センサは水槽1内の所定の基準位置(例えば、水槽底面)から液面Lに至るまでの水位を測定するものとなっている。基準線10は仮想線であって、n個の観測点Qの配置位置を示している。図8ではn=7として、7つの観測点Q1~Q7が示されている。
【0003】
各観測点Q1~Q7の位置にはそれぞれ電極対P1~P7が配置され、電極対P1~P7にはそれぞれ判定手段11~17が設けられている。判定手段11~17はそれぞれ電極対P1~P7の各電極間容量値が所定の基準値を越えたか否かを判定する機能を有し、観測点Qに位置する電極対Pの電極間容量値が所定の基準値を越えていた場合には当該観測点Qの位置に液体が存在するとの認定がなされ、所定の基準値を越えていなかった場合には当該観測点Qの位置に液体が存在しないとの認定がなされる。
【0004】
このように、この例では観測点Qの位置に液体が存在するか否かという二値情報を得るものとなっており、水位出力手段20はn個の判定手段のうち、第1番目の判定手段から第i番目の判定手段までが基準値を越えた旨の判定結果を示したときに、第i番目の観測点の位置を水位として出力する。図8の例の場合、液面Lより下の(液体に浸っている)電極対P1~P4の判定手段11~14は基準値を越えた旨の判定結果を示し、液面Lより上の電極対P5~P7の判定手段15~17は基準値を越えない旨の判定結果を示すことになり、水位出力手段20は第4番目の観測点Q4の位置を水位として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-311562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水位センサのように、水位検出方向に複数の観測点を定義し、各観測点位置における液体の有無を、各観測点位置にそれぞれ配置した電極対の静電容量値に基づき、二値情報として得るようにして水位を測定する構成では、より精度の高い測定を行う場合、言い換えれば計測範囲に対して分解能をより向上させる場合、分解能に応じて電極対の個数や判定手段の数、さらには電極対に対する配線の数が増加することになる。
【0007】
この場合、例えば多数の電極対を基板上に一括してパターン形成する方法や、あるいは上記特許文献1に記載されているように管状構造体の表面に各電極対の電極層をまとめて設けるといった方法を採用すれば、電極対の個数の増加については比較的容易に対応することができ、大きな負担とはならない。
【0008】
一方、電極対の個数が増加し、電極対に対する配線の数が増加すると、その分、配線の取扱いが面倒になり、また電極対と判定手段との配線接続も面倒なものとなる。例えば、計測範囲に対して1/1000の分解能を得るべく電極対を1000個用いる場合、判定手段との接続配線は1000本となり、その接続は容易ではなく、極めて面倒なものとなる。
【0009】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、従来例に比し、水位検出方向に配列した電極対に対する配線の数を少なくすることができるようにし、また電極対が水に浸かっているか否かの状態を判別する判別手段の数も少なくすることができるようにした水位計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、水位計は入力回路とセンサ部と調整部と切替え手段と判別手段と水位決定手段とを備え、センサ部は水位検出方向に配列された複数の電極対を有し、複数の電極対はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対によって構成され、全ての電極対の一端は入力回路に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて切替え手段に接続され、判別手段は第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と調整部によって得られる検出値の大小関係を判別し、切替え手段は判別手段による判別を可能とすべく、群と判別手段との接続を順次切り替え、水位決定手段は判別手段の判別に基づいて水位を決定するものとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、水位検出方向に配列した電極対を用いて水位を検出する水位計において、従来例に比し、電極対に対する配線の数を少なくすることができ、また電極対が水に浸かっているか否かの状態を判別する判別手段の数も少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による水位計の実施例1の構成を説明するための図。
図2図1に示した水位計による水位測定の流れを示すフローチャート。
図3図1に示した水位計による水位測定におけるスイッチの動作を示す表。
図4】この発明による水位計の実施例2の構成を説明するための図。
図5】この発明による水位計の実施例3の構成を説明するための図。
図6】この発明による水位計の実施例4の構成を説明するための図。
図7】この発明による水位計の実施例5の構成を説明するための図。
図8】水位計の従来例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【実施例0014】
図1はこの発明による水位計の実施例1の構成を示したものであり、水位計は入力回路30とセンサ部40と調整部50と切替え手段60と判別手段70と水位決定手段80と制御手段90を備えるものとなっている。
【0015】
センサ部40は水位検出方向に配列された複数(この例では15個)の電極対41を有しており、電極対41はこの例では電極間の静電容量を検出するものとなっている。これら電極対41は基板の図示を省略しているが、基板上にパターン形成されて設けられており、パターンには防水コーティングが施されている。なお、15個の電極対41には図1に示したように最下に位置するものから順にC1~C15の符号を付している。
【0016】
15個の電極対41は4個の群に分けられている。ここで、群の個数をnとし、n個の群を第1群~第n群と称するとき、第i群(i=1,2,…,n)を構成する電極対41は、水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対41とされ、この例ではn=4より各群を構成する電極対41はC1~C15で示すと下記となっている。
【0017】
第1群…C1,C3,C5,C7,C9,C11,C13,C15
第2群…C2,C6,C10,C14
第3群…C4,C12
第4群…C8
全ての電極対41の一端は入力回路30に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて切替え手段60に接続されている。入力回路30は搬送波を生成し、出力する。
【0018】
切替え手段60はS1~S7の符号を付して示したように、この例では7つのスイッチ61を備え、これらスイッチ61のON/OFFにより経路を切り替えることによって、センサ部40の各群によって得られる検出値(各群の静電容量)を判別手段70の2つの入力a,bのどちらかに入力(接続)できる構成となっている。
【0019】
調整部50はこの例では後述するような静電容量を有するコンデンサとされ、一端は入力回路50に接続され、他端は判別手段70の入力bに接続されている。
【0020】
判別手段70は例えば2つの入力a,bそれぞれに対してC/V変換部を備え、それらC/V変換部の出力をコンパレータに入力して比較することにより、入力a,bより得られる2つの検出値(静電容量)の大小関係を判別する。
【0021】
水位決定手段80は判別手段70の判別に基づいて水位を決定し、外部に出力する。なお、切替え手段60の7つのスイッチ61のON/OFFは制御手段90からの制御信号によって制御され、この制御に同期する信号が制御手段90から水位決定手段80にも入力される。
【0022】
次に、このような構成を有する水位計による水位出力に至るまでの流れを図2に示したフローチャートを参照して説明する。なお、図2では群の個数をnとしており、Gは第i群を示し、Gi+1,Gi+2,Gはそれぞれ第i+1群、第i+2群、第n群を示す。
【0023】
まず、i=1とし(ステップM1)、切替え手段60の全スイッチ61をOFFする(ステップM2)。そして、判別手段70の入力aとGを接続するスイッチ61をONし、さらに判別手段70の入力bとGi+1,Gi+2,…,Gを接続するスイッチ61をONする(ステップM3,M4)。判別手段70は入力a,bの大小関係を判別し(ステップM5)、a>bであれば1を水位決定手段80に出力し、a<bであれば0を水位決定手段80に出力する。水位決定手段80はこれを2i-1ビットの値として記憶する(ステップM6,M7)。
【0024】
次に、i=i+1とし(ステップM8)、i=nかどうかを判定し(ステップM9)、i=nでなければステップM2に戻ってステップM2~M9をi=nになるまで繰り返す。
【0025】
i=nとなったら、切替え手段60の全スイッチ61をOFF(ステップM10)した後、判別手段70の入力aとGを接続するスイッチ61をONする(ステップM11)。判別手段70は入力a,bの大小関係を判別し(ステップM12)、a>bであれば1を水位決定手段80に出力し、a<bであれば0を水位決定手段80に出力する。水位決定手段80はこれを2n-1ビットの値として記憶し(ステップM13,M14)、水位決定手段80はこのようにして得た2ビット~2n-1ビットの値、即ち2進数をメモリを参照して水位に変換して出力する(ステップM15)。
【0026】
このように、この例では判別手段70が第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と調整部50によって得られる検出値の大小関係を判別することによって水位を測定するものとなっており、切替え手段60はこのような判別手段70による判別を可能とすべく、センサ部40の群と判別手段70との接続を順次切り替えるものとなっている。
【0027】
図3に示した表は図1に示した水位計、即ちセンサ部40の群の個数nが4であって図2に示したフローチャートでiが1から4までとなる水位計において、i=1~4における切替え手段60の7つのスイッチ61、即ちS1~S7のON/OFFを示したものである。図1に示した水位計では第1群~第4群をG~Gで表示すると判別手段70の2つの入力a,bへの群の接続はi=1~4において下記となる。
【0028】
入力a 入力b
i=1:2ビットの判定 G+G+G
i=2:2ビットの判定 G+G
i=3:2ビットの判定 G
i=4:2ビットの判定 G N/A(=not applicable)
以下、水位Wが図1中に2点鎖線で示した位置にあり、最下から9番目の電極対C9まで水に浸かっている時を例に判別手段70の入力a,bに接続される静電容量を具体的に説明する。
【0029】
電極対41が空気中に位置する時の静電容量をCairとし、水中に位置する時の静電容量をCwaterとする。調整部50のコンデンサは以下においてはC99と表記し、静電容量は0.5Cwaterとする。水の比誘電率は20℃で80であり、Cwater=80Cairとなる。i=1~4において、入力a,bに接続される静電容量は下記となる。
【0030】
<i=1:2ビットの判定>
・入力a:G=C1+C3+C5+C7+C9+C11+C13+C15
=5Cwater+3Cair=403Cair
・入力b:G+G+G=C2+C4+C6+C8+C10+C12+C14+C99
=4.5Cwater+3Cair=363Cair
<i=2:2ビットの判定>
・入力a:G=C2+C6+C10+C14
=2Cwater+2Cair=162Cair
・入力b:G+G=C4+C8+C12+C99
=2.5Cwater+Cair=201Cair
<i=3:2ビットの判定>
・入力a:G=C4+C12
=Cwater+Cair=81Cair
・入力b:G=C8+C99
=1.5Cwater=120Cair
<i=4:2ビットの判定>
・入力a:G=C8
=Cwater=80Cair
・入力b:N/A=C99
=0.5Cwater=40air
【0031】
上記より、i=1ではa>bより2ビットは1となり、i=2ではa<bより2ビットは0となる。また、i=3ではa<bより2ビットは0となり、i=4ではa>bより2ビットは1となる。よって、これらを足し合わせると2進数で1001となり、10進数で9という結果が得られる。
【0032】
このように、図1に示した水位計では水位を2進数として扱うものとなっており、全ての電極対41が水に浸かっていない低水位では2進数は0000となり、電極対41が全て水に浸かった状態の高水位では2進数は1111(10進数で15)となる。
【0033】
調整部50はこの例では0.5Cwaterの静電容量を有するコンデンサとされ、判別手段70の入力bに常時接続されてi=4、2ビットの判定時にGとの比較として機能するものとなっているが、この調整部50は判別手段70によって大小関係が判別される2つの検出値(静電容量)が常に互いに異なる値となるように機能し、つまり誤差要因等により大小関係が逆転してしまい、誤検出が生じないように機能する。
【0034】
以下、実施例2~5について説明する。これら実施例2~5は実施例1の構成を一部変更したものであり、図1に示した実施例1の構成と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【実施例0035】
上述したように、調整部50は水位に応じて検出値が適切に変化し、誤検出が生じないように機能するものであるが、例えば電極対41の静電容量の誤差が大きかったり、一様ではない場合、ひとつの調整部50の静電容量だけでは水位に応じて検出値が適切に変化しないといった状況が生じうる。
【0036】
例えば図1に示した水位計においてC4を付した電極対41のみに+0.5Cwaterの誤差がある場合を考える。即ち、水位Wの場合、C4’=1.5Cwaterとなる。この時、i=1~4において、判別手段70の入力a,bに接続される静電容量は下記となる。
【0037】
<i=1:2ビットの判定>
・入力a:G=C1+C3+C5+C7+C9+C11+C13+C15
=5Cwater+3Cair=403Cair
・入力b:G+G+G=C2+C4’+C6+C8+C10+C12+C14+C99
=4.5Cwater+3Cair+C99=363Cair+C99
<i=2:2ビットの判定>
・入力a:G=C2+C6+C10+C14
=2Cwater+2Cair=162Cair
・入力b:G+G=C4’+C8+C12+C99
=2.5Cwater+Cair+C99=201Cair+C99
<i=3:2ビットの判定>
・入力a:G=C4’+C12
=1.5Cwater+Cair=121Cair
・入力b:G=C8+C99
=Cwater+C99=80Cair+C99
<i=4:2ビットの判定>
・入力a:G=C8
=Cwater=80Cair
・入力b:N/A=C99
【0038】
2進数の真値は1001であるから、i=1ではa>b、i=2ではa<b、i=3ではa<b、i=4ではa>bでなければならない。従って、i=1では403Cair>363Cair+C99よりC99<40Cairでなければならず、i=3では121Cair<80Cair+C99よりC99>41Cairでなければならない。しかるに両方を満足するC99は存在せず、2ビットの全ての判定を満たすひとつのC99、即ち調整部50は存在しないことになる。
【0039】
このような問題に対処すべく、実施例2では図4に示したように調整部50を複数(この例では4つ、C101~C104の符号を付している)設け、さらにそれら調整部50の判別手段70の入力bへの接続を切り替える切替え手段100を設けた構成となっている。切替え手段100はS11~S14の符号を付して示したように各調整部50即ちC101~C104の入力bへの接続をそれぞれON/OFFする4つのスイッチ101を備えている。
【0040】
この例ではこのように複数の調整部50を設け、切替え手段100で切り替えることで判別手段70に接続される群(群の組合せ)に応じて調整に必要な静電容量を選択することができるものとなっている。なお、4つの調整部50即ちC101~C104の静電容量値は事前の試験によって決定され、図2に示したフローチャートにおけるi=1~4の各処理に応じて選択される。切替え手段100の4つのスイッチ101のON/OFFは制御手段90からの、切替え手段60を制御する制御信号に同期した制御信号によって制御される。
【実施例0041】
切替え手段60のスイッチ61はゲート容量を持つため、ゲート容量による誤差が検出値に影響を及ぼす可能性がある。実施例3ではこの問題に対処すべく、図5に示したようにセンサ部40の各群(第1群~第4群:G~G)と切替え手段60との間にC/V変換部111~114を設け、切替え手段60に入力される前に予め静電容量値を電圧値に変換し、ゲート容量の影響を排除できるようにしたものである。
【0042】
調整部50’はこの例ではDC/DCコンバータなどを用い、事前の試験によって決定した所定の電圧を出力するものとする。
【0043】
切替え手段60と判別手段70との間には2つの加算手段121,122が設けられ、加算手段121の入力にはスイッチS1,S2,S4,S6が接続され、加算手段122の入力にはスイッチS3,S5,S7及び調整部50’が接続されている。加算手段121,122は例えばオペアンプで構成された加算回路とする。
【0044】
加算手段121の出力は判別手段70の入力aに入力され、加算手段122の出力は判別手段70の入力bに入力されるものとなっており、このような構成により、この例においても実施例1と同様、図3の表に示したスイッチ動作及び図2に示したフローチャートに従い、判別処理が行われる。
【実施例0045】
実施例4はセンサ部40の各群と切替え手段60との間にC/V変換部111~114を設けた実施例3の構成に対する変形例である。
【0046】
この例では図6に示したように切替え手段60’は4つのC/V変換部111~114に対応してS1~S4で示した4つのスイッチ61を有するものとされ、この切替え手段60’と判別手段70の間に検出値をデジタル値とするA/D変換部130を設け、さらに予め求めておいた調整値(静電容量調整電圧値)をデジタル値として記憶しておく調整値記憶部140を設けた構成となっている。
【0047】
アナログ回路による電圧の出力はICと複数の抵抗を用いる必要があり、例えば実施例2に示した4つの調整部50を有する構成のように調整値が多くなればなるほど回路の規模が大きくなるという欠点がある。この点、この例では調整値をデジタル値として記憶する構成となっているので回路が大規模になることはない。
【0048】
この例では切替え手段60’の4つのスイッチ61を順次ONして各群(第1群~第4群:G~G)の電圧出力をデジタル値として得る。判別手段70はこの例ではA/D変換部130から入力されるデジタル値をG(i=1~4)に対応付けて記憶し、G(i=1~4)全てについてデジタル値を得たら(記憶したら)、それらデジタル値と調整値記憶部140に記憶されている調整値(この例ではi=1~4に対応する4つの調整値)とを用いて演算することによりi=1~4における各判定、即ち2ビット~2ビットの判定を行うものとなっている。
【実施例0049】
上述した実施例1~4では電極対41は電極間の静電容量を検出するものとなっているが、電極対41は電極間の抵抗値を検出するものであってもよい。図7はこのような水位計を図1に示した実施例1の水位計の変形例として示したものであり、調整部50”はこの例では抵抗器となっている。15個の電極対41にはこの例では最下に位置するものから順にR1~R15の符号を付している。
【0050】
以下、水位Wが図1と同じ位置にある場合を例に判別手段70の入力a,bに接続される抵抗値を具体的に説明する。なお、入力回路30はこの例では入力電圧を生成し、出力する。判別手段70ではブリッジ回路などを使用して入力a,bのどちらの抵抗値が大きいかを判別する。この例では静電容量を検出する場合と逆に、判別手段70はa>bであれば0を出力し、a<bであれば1を出力する。
【0051】
電極対41が空気中に位置する時の抵抗値をRairとし、水中に位置する時の抵抗値をRwaterとする。調整部50”の抵抗器は以下においてはR99と表記し、抵抗値は2Rwaterとする。RairはRair≒∞とおける。i=1~4において、入力a,bに接続される抵抗値Ra、Rbは下記となる。
【0052】
<i=1:2ビットの判定>
・入力a:G=R1+R3+R5+R7+R9+R11+R13+R15
1/Ra=(5/Rwater)+(3/Rair) ∴Ra=Rwater/5
・入力b:G+G+G=R2+R4+R6+R8+R10+R12+R14+R99
1/Rb=(4.5/Rwater)+(3/Rair) ∴Rb=Rwater/4.5
<i=2:2ビットの判定>
・入力a:G=R2+R6+R10+R14
1/Ra=(2/Rwater)+(2/Rair) ∴Ra=Rwater/2
・入力b:G+G=R4+R8+R12+R99
1/Rb=(2.5/Rwater)+(1/Rair) ∴Rb=Rwater/2.5
<i=3:2ビットの判定>
・入力a:G=R4+R12
1/Ra =(1/Rwater)+(1/Rair) ∴Ra=Rwater
・入力b:G=R8+R99
1/Rb=1.5/Rwater ∴Rb=Rwater/1.5
<i=4:2ビットの判定>
・入力a:G=R8
1/Ra=1/Rwater ∴Ra=Rwater
・入力b:N/A=R99
1/Rb=0.5/Rwater ∴Rb=2Rwater
【0053】
上記より、i=1ではa<bより2ビットは1となり、i=2ではa>bより2ビットは0となる。また、i=3ではa>bより2ビットは0となり、i=4ではa<bより2ビットは1となる。よって、これらを足し合わせると実施例1と同様、この実施例5でも2進数で1001という結果が得られる。
【0054】
以上、この発明による水位計の各種実施例について説明したが、この発明による水位計は水位検出方向に配列した複数の電極対をn個に群に分け、第i群(i=1,2,…,n)は水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対によって構成して、群の組み合わせを変えながら検出値の大小比較を繰り返し行うことで電極対の個数分の分解能を得ることができるものとなっている。
【0055】
従って、センサ部の各電極対から判別手段に接続する配線(検出側の配線)の数は群の数だけでよく、判別手段も1つで済む。
【0056】
また、例えば水位を1000段階(計測範囲に対して1/1000の分解能)で検出することを考えた場合、図8に示した従来例のような構成の場合、判別手段及び電極対の数はそれぞれ1000となり、電極対から判別手段に至る検出側の配線数は1000本となる。
【0057】
これに対し、この発明による水位計では上記のような群の構成によりn個の群によって2-1個の電極対の計測が可能であり、つまりn個の群によって1/(2-1)の分解能を得ることができるため、1/1000の分解能を得る場合は群の数は10個でよく、よって検出側の配線は10本で済む。
【0058】
上述した水位計は例えば河川などの水位測定に使用することができ、また例えばタンク内の液体の液面を検出する液面計等にも応用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 水槽 10 基準線
11~17 判定手段 20 水位出力手段
30 入力回路 40 センサ部
41 電極対 50,50’,50” 調整部
60,60’ 切替え手段 61 スイッチ
70 判別手段 80 水位決定手段
90 制御手段 100 切替え手段
101 スイッチ 111~114 C/V変換部
121,122 加算手段 130 A/D変換部
140 調整値記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
調整部50はこの例では後述するような静電容量を有するコンデンサとされ、一端は入力回路0に接続され、他端は判別手段70の入力bに接続されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力回路とセンサ部と調整部と切替え手段と判別手段と水位決定手段とを備える水位計であって、
前記センサ部は水位検出方向に配列された複数の電極対を有し、前記複数の電極対はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対によって構成されており、
全ての電極対の一端は前記入力回路に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて前記切替え手段に接続され、
前記判別手段は第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と前記調整部によって得られる検出値の大小関係を判別し、
前記切替え手段は前記判別手段による判別を可能とすべく、前記群と前記判別手段との接続を順次切り替え、
前記水位決定手段は前記判別手段の判別に基づいて水位を決定することを特徴とする水位計。
【請求項2】
請求項1に記載の水位計において、
前記調整部は前記判別手段によって大小関係が判別される2つの検出値が常に互いに異なる値となるように機能することを特徴とする水位計。
【請求項3】
請求項2に記載の水位計において、
前記調整部を複数備え、前記判別手段に接続される群に応じて機能させる調整部を切り替えることを特徴とする水位計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記電極対は電極間の抵抗値を検出するものであることを特徴とする水位計。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記電極対は電極間の静電容量を検出するものであることを特徴とする水位計。
【請求項6】
請求項5に記載の水位計において、
各前記群と前記切替え手段の間に静電容量を電圧に変換して前記切替え手段に入力するC/V変換部が設けられ、
前記切替え手段と前記判別手段の間に前記判別手段による前記判別を可能とする加算手段が設けられていることを特徴とする水位計。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記切替え手段と前記判別手段の間に前記検出値をデジタル値とするA/D変換部が設けられていることを特徴とする水位計。