(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000146
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】水位計
(51)【国際特許分類】
G01F 23/263 20220101AFI20231225BHJP
【FI】
G01F23/263
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098747
(22)【出願日】2022-06-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】市川 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】山根 康平
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014EA02
(57)【要約】
【課題】電極対に対する配線数を少なくできるようにする。
【解決手段】水位計は入力回路30とセンサ部40と調整部50と切替え手段60と判別手段70と水位決定手段80を備え、センサ部40は水位検出方向に配列された複数の電極対41を有し、電極対41はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は最下から2
i-1(2k-1)番目(kは1から2
n-iまでの自然数)の位置の電極対41によって構成され、電極対41の一端は入力回路30に接続され、他端は同じ群に属するものが並列接続されて切替え手段60に接続され、判別手段70は第i群の検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群の検出値の大小をi=1,2,…,n-1について判別し、第n群の検出値と調整部50で得られる検出値の大小を判別し、切替え手段60は群と判別手段70の接続を順次切り替え、水位決定手段80は判別手段70の判別に基づいて水位を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力回路とセンサ部と調整部と切替え手段と判別手段と水位決定手段とを備える水位計であって、
前記センサ部は水位検出方向に配列された複数の電極対を有し、前記複数の電極対はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対によって構成されており、
全ての電極対の一端は前記入力回路に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて前記切替え手段に接続され、
前記判別手段は第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と前記調整部によって得られる検出値の大小関係を判別し、
前記切替え手段は前記判別手段による判別を可能とすべく、前記群と前記判別手段との接続を順次切り替え、
前記水位決定手段は前記判別手段の判別に基づいて水位を決定することを特徴とする水位計。
【請求項2】
請求項1に記載の水位計において、
前記調整部は前記判別手段によって大小関係が判別される2つの検出値が常に互いに異なる値となるように機能することを特徴とする水位計。
【請求項3】
請求項2に記載の水位計において、
前記調整部を複数備え、前記判別回路に接続される群に応じて機能させる調整部を切り替えることを特徴とする水位計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記電極対は電極間の抵抗値を検出するものであることを特徴とする水位計。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記電極対は電極間の静電容量を検出するものであることを特徴とする水位計。
【請求項6】
請求項5に記載の水位計において、
各前記群と前記切替え手段の間に静電容量を電圧に変換して前記切替え手段に入力するC/V変換部が設けられ、
前記切替え手段と前記判別手段の間に前記判別手段による前記判別を可能とする加算手段が設けられていることを特徴とする水位計。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれかに記載の水位計において、
前記切替え手段と前記判別手段の間に前記検出値をデジタル値とするA/D変換部が設けられていることを特徴とする水位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水位計に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は水位計の従来例として特許文献1に記載されている水位センサの原理図を示したものであり、この水位センサは水槽1内の所定の基準位置(例えば、水槽底面)から液面Lに至るまでの水位を測定するものとなっている。基準線10は仮想線であって、n個の観測点Qの配置位置を示している。
図8ではn=7として、7つの観測点Q1~Q7が示されている。
【0003】
各観測点Q1~Q7の位置にはそれぞれ電極対P1~P7が配置され、電極対P1~P7にはそれぞれ判定手段11~17が設けられている。判定手段11~17はそれぞれ電極対P1~P7の各電極間容量値が所定の基準値を越えたか否かを判定する機能を有し、観測点Qに位置する電極対Pの電極間容量値が所定の基準値を越えていた場合には当該観測点Qの位置に液体が存在するとの認定がなされ、所定の基準値を越えていなかった場合には当該観測点Qの位置に液体が存在しないとの認定がなされる。
【0004】
このように、この例では観測点Qの位置に液体が存在するか否かという二値情報を得るものとなっており、水位出力手段20はn個の判定手段のうち、第1番目の判定手段から第i番目の判定手段までが基準値を越えた旨の判定結果を示したときに、第i番目の観測点の位置を水位として出力する。
図8の例の場合、液面Lより下の(液体に浸っている)電極対P1~P4の判定手段11~14は基準値を越えた旨の判定結果を示し、液面Lより上の電極対P5~P7の判定手段15~17は基準値を越えない旨の判定結果を示すことになり、水位出力手段20は第4番目の観測点Q4の位置を水位として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水位センサのように、水位検出方向に複数の観測点を定義し、各観測点位置における液体の有無を、各観測点位置にそれぞれ配置した電極対の静電容量値に基づき、二値情報として得るようにして水位を測定する構成では、より精度の高い測定を行う場合、言い換えれば計測範囲に対して分解能をより向上させる場合、分解能に応じて電極対の個数や判定手段の数、さらには電極対に対する配線の数が増加することになる。
【0007】
この場合、例えば多数の電極対を基板上に一括してパターン形成する方法や、あるいは上記特許文献1に記載されているように管状構造体の表面に各電極対の電極層をまとめて設けるといった方法を採用すれば、電極対の個数の増加については比較的容易に対応することができ、大きな負担とはならない。
【0008】
一方、電極対の個数が増加し、電極対に対する配線の数が増加すると、その分、配線の取扱いが面倒になり、また電極対と判定手段との配線接続も面倒なものとなる。例えば、計測範囲に対して1/1000の分解能を得るべく電極対を1000個用いる場合、判定手段との接続配線は1000本となり、その接続は容易ではなく、極めて面倒なものとなる。
【0009】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、従来例に比し、水位検出方向に配列した電極対に対する配線の数を少なくすることができるようにし、また電極対が水に浸かっているか否かの状態を判別する判別手段の数も少なくすることができるようにした水位計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、水位計は入力回路とセンサ部と調整部と切替え手段と判別手段と水位決定手段とを備え、センサ部は水位検出方向に配列された複数の電極対を有し、複数の電極対はn個の群に分けられて第i群(i=1,2,…,n)は水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対によって構成され、全ての電極対の一端は入力回路に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて切替え手段に接続され、判別手段は第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と調整部によって得られる検出値の大小関係を判別し、切替え手段は判別手段による判別を可能とすべく、群と判別手段との接続を順次切り替え、水位決定手段は判別手段の判別に基づいて水位を決定するものとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、水位検出方向に配列した電極対を用いて水位を検出する水位計において、従来例に比し、電極対に対する配線の数を少なくすることができ、また電極対が水に浸かっているか否かの状態を判別する判別手段の数も少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明による水位計の実施例1の構成を説明するための図。
【
図2】
図1に示した水位計による水位測定の流れを示すフローチャート。
【
図3】
図1に示した水位計による水位測定におけるスイッチの動作を示す表。
【
図4】この発明による水位計の実施例2の構成を説明するための図。
【
図5】この発明による水位計の実施例3の構成を説明するための図。
【
図6】この発明による水位計の実施例4の構成を説明するための図。
【
図7】この発明による水位計の実施例5の構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【実施例0014】
図1はこの発明による水位計の実施例1の構成を示したものであり、水位計は入力回路30とセンサ部40と調整部50と切替え手段60と判別手段70と水位決定手段80と制御手段90を備えるものとなっている。
【0015】
センサ部40は水位検出方向に配列された複数(この例では15個)の電極対41を有しており、電極対41はこの例では電極間の静電容量を検出するものとなっている。これら電極対41は基板の図示を省略しているが、基板上にパターン形成されて設けられており、パターンには防水コーティングが施されている。なお、15個の電極対41には
図1に示したように最下に位置するものから順にC1~C15の符号を付している。
【0016】
15個の電極対41は4個の群に分けられている。ここで、群の個数をnとし、n個の群を第1群~第n群と称するとき、第i群(i=1,2,…,n)を構成する電極対41は、水位検出方向の最下から2i-1(2k-1)番目(kは1から2n-iまでの自然数)の位置に位置する電極対41とされ、この例ではn=4より各群を構成する電極対41はC1~C15で示すと下記となっている。
【0017】
第1群…C1,C3,C5,C7,C9,C11,C13,C15
第2群…C2,C6,C10,C14
第3群…C4,C12
第4群…C8
全ての電極対41の一端は入力回路30に接続され、他端は同じ群に属するもの同士が並列接続されて切替え手段60に接続されている。入力回路30は搬送波を生成し、出力する。
【0018】
切替え手段60はS1~S7の符号を付して示したように、この例では7つのスイッチ61を備え、これらスイッチ61のON/OFFにより経路を切り替えることによって、センサ部40の各群によって得られる検出値(各群の静電容量)を判別手段70の2つの入力a,bのどちらかに入力(接続)できる構成となっている。
【0019】
調整部50はこの例では後述するような静電容量を有するコンデンサとされ、一端は入力回路50に接続され、他端は判別手段70の入力bに接続されている。
【0020】
判別手段70は例えば2つの入力a,bそれぞれに対してC/V変換部を備え、それらC/V変換部の出力をコンパレータに入力して比較することにより、入力a,bより得られる2つの検出値(静電容量)の大小関係を判別する。
【0021】
水位決定手段80は判別手段70の判別に基づいて水位を決定し、外部に出力する。なお、切替え手段60の7つのスイッチ61のON/OFFは制御手段90からの制御信号によって制御され、この制御に同期する信号が制御手段90から水位決定手段80にも入力される。
【0022】
次に、このような構成を有する水位計による水位出力に至るまでの流れを
図2に示したフローチャートを参照して説明する。なお、
図2では群の個数をnとしており、G
iは第i群を示し、G
i+1,G
i+2,G
nはそれぞれ第i+1群、第i+2群、第n群を示す。
【0023】
まず、i=1とし(ステップM1)、切替え手段60の全スイッチ61をOFFする(ステップM2)。そして、判別手段70の入力aとGiを接続するスイッチ61をONし、さらに判別手段70の入力bとGi+1,Gi+2,…,Gnを接続するスイッチ61をONする(ステップM3,M4)。判別手段70は入力a,bの大小関係を判別し(ステップM5)、a>bであれば1を水位決定手段80に出力し、a<bであれば0を水位決定手段80に出力する。水位決定手段80はこれを2i-1ビットの値として記憶する(ステップM6,M7)。
【0024】
次に、i=i+1とし(ステップM8)、i=nかどうかを判定し(ステップM9)、i=nでなければステップM2に戻ってステップM2~M9をi=nになるまで繰り返す。
【0025】
i=nとなったら、切替え手段60の全スイッチ61をOFF(ステップM10)した後、判別手段70の入力aとGnを接続するスイッチ61をONする(ステップM11)。判別手段70は入力a,bの大小関係を判別し(ステップM12)、a>bであれば1を水位決定手段80に出力し、a<bであれば0を水位決定手段80に出力する。水位決定手段80はこれを2n-1ビットの値として記憶し(ステップM13,M14)、水位決定手段80はこのようにして得た20ビット~2n-1ビットの値、即ち2進数をメモリを参照して水位に変換して出力する(ステップM15)。
【0026】
このように、この例では判別手段70が第i群によって得られる検出値と第i+1群から第n群までを合わせた群によって得られる検出値の大小関係をi=1,2,…,n-1についてそれぞれ判別し、さらに第n群によって得られる検出値と調整部50によって得られる検出値の大小関係を判別することによって水位を測定するものとなっており、切替え手段60はこのような判別手段70による判別を可能とすべく、センサ部40の群と判別手段70との接続を順次切り替えるものとなっている。
【0027】
図3に示した表は
図1に示した水位計、即ちセンサ部40の群の個数nが4であって
図2に示したフローチャートでiが1から4までとなる水位計において、i=1~4における切替え手段60の7つのスイッチ61、即ちS1~S7のON/OFFを示したものである。
図1に示した水位計では第1群~第4群をG
1~G
4で表示すると判別手段70の2つの入力a,bへの群の接続はi=1~4において下記となる。
【0028】
入力a 入力b
i=1:2
0ビットの判定 G
1 G
2+G
3+G
4
i=2:2
1ビットの判定 G
2 G
3+G
4
i=3:2
2ビットの判定 G
3 G
4
i=4:2
3ビットの判定 G
4 N/A(=not applicable)
以下、水位Wが
図1中に2点鎖線で示した位置にあり、最下から9番目の電極対C9まで水に浸かっている時を例に判別手段70の入力a,bに接続される静電容量を具体的に説明する。
【0029】
電極対41が空気中に位置する時の静電容量をCairとし、水中に位置する時の静電容量をCwaterとする。調整部50のコンデンサは以下においてはC99と表記し、静電容量は0.5Cwaterとする。水の比誘電率は20℃で80であり、Cwater=80Cairとなる。i=1~4において、入力a,bに接続される静電容量は下記となる。
【0030】
<i=1:20ビットの判定>
・入力a:G1=C1+C3+C5+C7+C9+C11+C13+C15
=5Cwater+3Cair=403Cair
・入力b:G2+G3+G4=C2+C4+C6+C8+C10+C12+C14+C99
=4.5Cwater+3Cair=363Cair
<i=2:21ビットの判定>
・入力a:G2=C2+C6+C10+C14
=2Cwater+2Cair=162Cair
・入力b:G3+G4 =C4+C8+C12+C99
=2.5Cwater+Cair=201Cair
<i=3:22ビットの判定>
・入力a:G3=C4+C12
=Cwater+Cair=81Cair
・入力b:G4=C8+C99
=1.5Cwater=120Cair
<i=4:23ビットの判定>
・入力a:G4=C8
=Cwater=80Cair
・入力b:N/A=C99
=0.5Cwater=40air
【0031】
上記より、i=1ではa>bより20ビットは1となり、i=2ではa<bより21ビットは0となる。また、i=3ではa<bより22ビットは0となり、i=4ではa>bより23ビットは1となる。よって、これらを足し合わせると2進数で1001となり、10進数で9という結果が得られる。
【0032】
このように、
図1に示した水位計では水位を2進数として扱うものとなっており、全ての電極対41が水に浸かっていない低水位では2進数は0000となり、電極対41が全て水に浸かった状態の高水位では2進数は1111(10進数で15)となる。
【0033】
調整部50はこの例では0.5Cwaterの静電容量を有するコンデンサとされ、判別手段70の入力bに常時接続されてi=4、23ビットの判定時にG4との比較として機能するものとなっているが、この調整部50は判別手段70によって大小関係が判別される2つの検出値(静電容量)が常に互いに異なる値となるように機能し、つまり誤差要因等により大小関係が逆転してしまい、誤検出が生じないように機能する。
【0034】
以下、実施例2~5について説明する。これら実施例2~5は実施例1の構成を一部変更したものであり、
図1に示した実施例1の構成と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上述したように、調整部50は水位に応じて検出値が適切に変化し、誤検出が生じないように機能するものであるが、例えば電極対41の静電容量の誤差が大きかったり、一様ではない場合、ひとつの調整部50の静電容量だけでは水位に応じて検出値が適切に変化しないといった状況が生じうる。