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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001460
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20231227BHJP
   G01J 3/50 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H05K5/02 B
G01J3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100133
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】白根 達也
(72)【発明者】
【氏名】塙 啓太
【テーマコード(参考)】
2G020
4E360
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA12
2G020DA24
2G020DA36
4E360AC05
4E360AC17
4E360AC30
4E360GA14
4E360GA60
4E360GB99
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】電子機器において、筐体の側面に緩衝部材を設ける構造では、使用時に装置と対象面との距離を一定に保つことができない。
【解決手段】電子機器は、装置本体の外殻を構成する筐体と、筐体の底面から突出する第1方向と第1方向とは反対の第2方向に変位可能な部位であって、底面から突出する第1状態と底面から非突出となる第2状態とを切り換え可能な突出部と、突出部を第1方向に押圧する押圧部材と、突出部が第2方向に変位する際に突出部に抵抗を付与するダンパーと、を備え、突出部は、筐体に対し第1方向と第2方向に変位可能に設けられる変位部材と、変位部材に形成された収容部に収容される部材であって、変位部材から第1方向に突出する第1緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の外殻を構成する筐体と、
前記筐体の底面から突出する第1方向と前記第1方向とは反対の第2方向に変位可能な部位であって、前記底面から突出する第1状態と前記底面から非突出となる第2状態とを切り換え可能な突出部と、
前記突出部を前記第1方向に押圧する押圧部材と、
前記突出部が前記第2方向に変位する際に前記突出部に抵抗を付与するダンパーと、を備え、
前記突出部は、前記筐体に対し前記第1方向と前記第2方向に変位可能に設けられる変位部材と、
前記変位部材に形成された収容部に収容される部材であって、前記変位部材から前記第1方向に突出する第1緩衝部材と、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、前記収容部には、前記第1緩衝部材に対し前記第2方向に位置するとともに前記第1緩衝部材と重ねて設けられる部材であって、前記第1緩衝部材とは損失正接のピーク温度が異なる第2緩衝部材が設けられる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向における前記第2緩衝部材の側面は、全体が前記収容部の壁面と対向し、
前記交差する方向における前記第1緩衝部材の側面は、一部が前記収容部の壁面と対向する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2に記載の電子機器において、前記突出部が前記底面の四隅に設けられる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項2に記載の電子機器において、前記変位部材は、本体部と、
前記本体部から前記第2方向に延びる腕部と、
前記腕部の前記第2方向の先端に設けられたフックと、を備え、
前記フックが前記筐体に設けられた規制部に引っ掛かることで、前記変位部材の前記底面からの突出量が規制される、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器において、前記突出部の前記第1状態において前記腕部が前記底面から突出し、前記腕部が前記変位部材の変位方向と交差する方向に弾性変形可能に構成されている、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子機器において、前記底面に設けられる開口部であって、測定対象から届く光を装置内部に取り入れる為の開口部と、
前記開口部を通って装置内部に入射した光を処理する入射光処理部と、を備え、前記測定対象を測色する機能を有する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器において、前記第1緩衝部材に対し前記第1方向に位置するとともに前記測定対象と接する部材であって、前記測定対象との間の摩擦係数が前記第2緩衝部材と前記測定対象との間の摩擦係数より低い低摩擦層を有する、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、特許文献1記載の様に衝撃を緩衝する緩衝構造が採用される場合がある。特許文献1記載の緩衝構造は、筐体の外側に緩衝部材を設けている。緩衝部材は、筐体の側面の一部を覆うように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-67730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器には、ハンディタイプの印刷装置や測色装置など、使用時に対象面との距離を一定に保つ必要が生じるものがある。測色装置を一例として説明すると、測色装置には筐体の底面に開口部を設け、この開口部を介して測定対象から届く光を装置内部に取り入れ、装置内部の測定手段で測定を行うものがある。この様な測色装置では、筐体の底面と測定対象面との間に隙間が形成されると、外光が装置内部に入り込み、測定精度が低下する虞がある。この様に電子機器には、使用時に対象面との距離を一定に保つ必要が生じるものがあるが、特許文献1記載の様に筐体の側面に緩衝部材を設ける構造では、上記の課題に対応することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の電子機器は、装置本体の外殻を構成する筐体と、前記筐体の底面から突出する第1方向と前記第1方向とは反対の第2方向に変位可能な部位であって、前記底面から突出する第1状態と前記底面から非突出となる第2状態とを切り換え可能な突出部と、前記突出部を前記第1方向に押圧する押圧部材と、前記突出部が前記第2方向に変位する際に前記突出部に抵抗を付与するダンパーと、を備え、前記突出部は、前記筐体に対し前記第1方向と前記第2方向に変位可能に設けられる変位部材と、前記変位部材に形成された収容部に収容される部材であって、前記変位部材から前記第1方向に突出する第1緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】測色装置を下方ら見た斜視図。
図2】測色装置を開口部の中心位置においてX-Z平面で切断した断面図であって、突出部の突出状態を示す図。
図3】突出部の配置部位をX-Z平面で切断した断面図であって、突出部の突出状態を示す図。
図4】測色装置を開口部の中心位置においてX-Z平面で切断した断面図であって、突出部の非突出状態を示す図。
図5】突出部の配置部位をX-Z平面で切断した断面図であって、突出部の非突出状態を示す図。
図6】第1緩衝部材と第2緩衝部材の損失正接の温度特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る電子機器は、装置本体の外殻を構成する筐体と、前記筐体の底面から突出する第1方向と前記第1方向とは反対の第2方向に変位可能な部位であって、前記底面から突出する第1状態と前記底面から非突出となる第2状態とを切り換え可能な突出部と、前記突出部を前記第1方向に押圧する押圧部材と、前記突出部が前記第2方向に変位する際に前記突出部に抵抗を付与するダンパーと、を備え、前記突出部は、前記筐体に対し前記第1方向と前記第2方向に変位可能に設けられる変位部材と、前記変位部材に形成された収容部に収容される部材であって、前記変位部材から前記第1方向に突出する第1緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記装置本体を落下させた際、前記突出部が床面等に当接するが、その際に前記第1緩衝部材が衝撃緩衝機能を発揮し、前記装置本体の故障や破損等が抑制される。ここで前記突出部は前記底面から突出する第1状態と前記筐体の底面から非突出となる第2状態とを切り換え可能であるが、前記装置本体を落下させた際には前記ダンパーの機能によって前記突出部は直ちに前記第2状態に切り替わらず、これにより前記第1緩衝部材が適切に衝撃緩衝機能を発揮することができる。
そして装置の使用時には、前記装置本体を対象面に向けて押し込むと前記突出部が前記第2状態に切り替わることができる為、前記底面と対象面との間に隙間が形成されることを抑制でき、前記底面と対象面との距離を一定に保つ必要のある電子機器の機能を適切に発揮させることができる。
尚、本明細書において「対象面」とは、前記電子機器を使用する際に前記底面が接する面を意味する。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記収容部には、前記第1緩衝部材に対し前記第2方向に位置するとともに前記第1緩衝部材と重ねて設けられる部材であって、前記第1緩衝部材とは損失正接のピーク温度が異なる第2緩衝部材が設けられることを特徴とする。
損失正接(損失係数)は貯蔵剪断弾性率と損失剪断弾性率の比であり、tanδで表される。損失正接は材料が変形する際にどのくらいエネルギーを吸収するか(熱に変わるか)を示すものであって値が高いほど粘性が高く、衝撃吸収性が高いとされている。この損失正接は温度依存性がある為、前記第1緩衝部材の損失正接のピーク温度からずれた温度では好ましい衝撃吸収性が得られない虞があるが、本態様では前記第1緩衝部材とは損失正接のピーク温度が異なる第2緩衝部材を前記第1緩衝部材に重ねて設けることから、広い温度範囲で適切な衝撃吸収性を得ることができる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向における前記第2緩衝部材の側面は、全体が前記収容部の壁面と対向し、前記交差する方向における前記第1緩衝部材の側面は、一部が前記収容部の壁面と対向することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向における前記第2緩衝部材の側面は、全体が前記収容部の壁面と対向し、前記交差する方向における前記第1緩衝部材の側面は、一部が前記収容部の壁面と対向することから、前記第1緩衝部材と前記第2緩衝部材が衝撃によって変形する際に前記壁面によってガイドされることとなり、落下方向に対して前記第1緩衝部材と前記第2緩衝部材が適切に変形でき、適切な衝撃吸収性を得ることができる。
【0011】
第4の態様は、第2の態様において、前記突出部が前記底面の四隅に設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記突出部が前記底面の四隅に設けられるので、前記底面を下にして装置を落下させた際に適切な衝撃緩衝効果を得ることができる。加えて前記底面を下にして装置を対象面に載置した際に、装置の姿勢が安定する。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第3の態様に適用しても良い。
【0012】
第5の態様は、第2の態様において、前記変位部材は、本体部と、前記本体部から装置内部方向に延びる腕部と、前記腕部の先端に設けられたフックと、を備え、前記フックが前記筐体に設けられた規制部に引っ掛かることで、前記変位部材の前記底面からの突出量が規制されることを特徴とする。
本態様によれば、前記フックが前記筐体に設けられた規制部に引っ掛かることで、前記変位部材の前記底面からの突出量が規制される構成である為、前記変位部材の前記第1状態を簡易な構造で形成することができる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第1、第3、第4のいずれかの態様に適用しても良い。
【0013】
第6の態様は、第5の態様において、前記突出部の前記第1状態において前記腕部が前記底面から突出し、前記腕部が前記変位部材の変位方向と交差する方向に弾性変形可能に構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記突出部の前記第1状態において前記腕部が前記底面から突出し、前記腕部が前記変位部材の変位方向と交差する方向に弾性変形可能に構成されているので、装置が傾いた状態で落下して前記変位部材に変位方向と交差する方向の力が掛かった瞬間の衝撃を緩和することができる。
【0014】
第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記底面に設けられる開口部であって、測定対象から届く光を装置内部に取り入れる為の開口部と、前記開口部を通って装置内部に入射した光を処理する入射光処理部と、を備え、前記測定対象を測色する機能を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記測定対象を測色する機能を有する電子機器、即ち測色装置において、上述した第1から第6の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0015】
第8の態様は、第7の態様において、前記第1緩衝部材に対し前記第1方向に位置するとともに前記測定対象と接する部材であって、前記測定対象との間の摩擦係数が前記第2緩衝部材と前記測定対象との間の摩擦係数より低い低摩擦層を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1緩衝部材に対し前記第1方向に前記低摩擦層を有することから、前記測定対象に対して前記装置本体を滑らせながら前記測定対象を測色する際に滑り性が良好となり、良好な操作感を得ることができる。
【0016】
以下、本発明を具体的に説明する。
尚、各図に示すX-Y-Z座標系は直交座標系であり、X-Y平面が水平面であり、Y-Z平面及びX-Z平面が垂直面となる。
Z軸方向は鉛直方向であって、測色装置1の上面2g及び底面2aに対して交差(直交)する方向となる。またZ軸方向は、後述する光軸CLに平行な方向となる。またZ軸方向は、後述する突出部9の変位方向であり、-Z方向が底面2aから突出する第1方向であり、+Z方向が前記第1方向とは反対の第2方向である。
またY軸方向は測色装置1をZ軸方向から見て装置の長手方向となり、X軸方向は測色装置1をZ軸方向から見て装置の短手方向となる。
本明細書において測色装置1の構成は、水平面に平行な面を成す測定対象G或いは床面等に装置が置かれ、且つ、測色装置1の長手方向がY軸方向に沿うものとして説明する。
【0017】
図1及び図2において測色装置1は、電子機器の一例であり、測定対象Gから届く光Mbをもとに測色する為の構成を備える。測定対象Gから届く光Mbとしては、測定対象Gで反射する光や、測定対象Gが自ら発する光が挙げられる。尚、実際の測定状態は後述する突出部9が底面2aから非突出となる図4及び図5の状態であるが、ここでは図1及び図2を参照して測色装置1の構成を説明する。
【0018】
測色装置1は、装置本体1aの外殻を構成する筐体2の内部に、装置内部ユニット3を備えている。換言すれば、装置内部ユニット3は、筐体2によって覆われている。筐体2は、本実施形態において樹脂材料で形成される。装置内部ユニット3は、装置内部に入射した光Mbを処理する入射光処理部4を備えている。入射光処理部4についての詳細な説明は省略するが、本実施形態において入射光処理部4は不図示の光学フィルターを備える。
【0019】
この光学フィルターは、装置内部に入射した光Mbから、任意の波長成分を選択的に透過させる。この光学フィルターを透過した光は、不図示の受光素子、具体的にはフォトダイオードに入射する。そして入射した光の強度が電圧値に変換されて、不図示の制御部に出力される。測色装置1は、上記光学フィルターによる波長選択と受光強度の取得とを繰り返し行うことで、測定対象Gのスペクトルを測定する。光学フィルターは、本実施形態では波長可変型のファブリペローエタロンであり、二つの対向する反射面の多重干渉を利用した波長フィルターである。勿論、入射光処理部4はこの様な光学フィルターを備える構成に限られない。
【0020】
波長可変型のファブリペローエタロンは、Z軸方向に間隔を空けて対向配置された一対のミラー(不図示)のZ軸方向間隔を制御することで波長選択する構成である。従って測色装置1はZ軸方向に対する衝撃に弱い。換言すれば、測色装置1はZ軸方向成分を含まない衝撃に対しては比較的強い構成であると言える。
【0021】
装置底部には開口部2bが形成されており、測定対象Gから入射光処理部4に向かう光Mbは、開口部2bを介して装置内部に取り入れられる。開口部2bは、光軸CLを中心とする真円形状を成す開口部である。光軸CLは、測定対象Gから入射光処理部4に向かう光Mbの光軸である。
【0022】
装置内部ユニット3は、開口部2bの内部に、発光部5を備えている。発光部5から発せられる光Maは、開口部2bを介して装置外部に向かい、底面2aと対向する測定対象Gを照射する。
また装置内部ユニット3は、装置の電力供給源であるバッテリー6を備えており、このバッテリー6から電圧調整回路を経て入射光処理部4や発光部5などへの電力供給が行われる。
【0023】
次に筐体2の底部には、底面2aから-Z方向に突出する突出部9が設けられている。突出部9は、図1に示す様に本実施形態では底面2aの四隅に設けられ、四つの突出部9の内側に開口部2bが配置された構成となっている。
【0024】
突出部9は、Z軸方向に変位可能に設けられており、Z軸方向に変位することで底面2aから突出する第1状態(図2図3参照)と、底面2aから非突出となる第2状態(図4図5参照)とを切り換え可能に設けられている。尚、本明細書では第1状態を突出状態と称し、第2状態を非突出状態と称する場合がある。
【0025】
図3に示す様に筐体2の底部にはガイド孔2fが開口する様に形成されており、その内側に収容空間2dが形成されている。突出部9は、ガイド孔2fから収容空間2dに差し込まれる様にして設けられる。
【0026】
突出部9は、筐体2に対しZ軸方向に変位可能な変位部材10を備えている。変位部材10は、本体部10aと、本体部10aから+Z方向即ち装置内部方向に延びる腕部10bとを備える様に、樹脂材料により形成されている。腕部10bは、本体部10aの+X方向端部と-X方向端部から+Z方向に延びる様に形成されている。腕部10bの+Z方向の先端には、フック10cが形成されている。
収容空間2dには規制部2eが形成されており、この規制部2eにフック10cが引っ掛かることで、底面2aからの変位部材10の突出量が規制される。
そして収容空間2dには、変位部材10を-Z方向即ち底面2aから突出する方向に押圧する押圧部材としての圧縮コイルばね15と、ダンパー16とが収容される。ダンパー16には、オイルダンパーや粘性ダンパーを用いることができる。
【0027】
測色装置1が測定対象Gに置かれ、且つユーザーが測色装置1に対し外力を付与しない状態では、突出部9は圧縮コイルばね15のばね力によって図2図3に示す第1状態、即ち突出状態を維持する。圧縮コイルばね15のばね力は、この様に測色装置1の自重が作用しても突出状態を維持できる様に設定される。
尚、押圧部材は圧縮コイルばねに限らず、引っ張りコイルばね、板ばね等のその他のばねや、ゴム、スポンジ等の弾性材を用いても良い。
【0028】
そして測定を行う場合、ユーザーは測色装置1を測定対象Gに向けて押さえ付ける様に、測色装置1に対して-Z方向の力を付与する。これにより突出部9は、圧縮コイルばね15とダンパー16とから受ける抵抗力に抗して図3から図5への変化で示す様に収容空間2dに入り込み、第2状態即ち非突出状態に切り換わる。
これにより図4図5に示す様に底面2aと測定対象Gとの間隔が解消され、開口部2bから装置内部への外光の入り込みが抑制される。
【0029】
次に突出部9には、-Z方向に開口する様に収容部10dが形成され、この収容部10dに第1緩衝部材11、第2緩衝部材12、低摩擦層13、のこれらが-Z方向に向かってこの順に重ねて設けられている。図示は省略するが、-Z方向から見て収容部10dは正方形の形状を成し、また第1緩衝部材11と第2緩衝部材12も正方形の形状を成している。但し-Z方向から見て収容部10d、第1緩衝部材11、第2緩衝部材12のこれらは長方形の形状を成していても良いし、或いは真円形状や楕円形状であっても良い。
【0030】
第1緩衝部材11と第2緩衝部材12は、ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性と粘性を有する部材であり、一例として天然ゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、フッ素ゴムなどの衝撃吸収性に優れたゴム材を採用できる。ゴム材はオイルや樹脂材料を配合して損失正接を調整できる。損失正接が大きいほどエネルギーを吸収し、衝撃緩衝試験では反発弾性率が小さくなる。
【0031】
図3において寸法h0は収容部10dの深さ(Z軸方向高さ)であり、寸法h1は第1緩衝部材11の厚み(Z軸方向高さ)であり、寸法h2は第2緩衝部材12の厚み(Z軸方向高さ)である。寸法h2は寸法h0より小さく、第1緩衝部材11は収容部10dから-Z方向に突出しない。寸法h1+h2は寸法h0より大きく、第2緩衝部材12は一部が収容部10dから-Z方向に突出する。
【0032】
ここで測色装置1が測定対象G或いは床面等に対して所定の高さから落とされると、突出状態にある突出部9が測定対象G或いは床面等に当接する。このとき、変位部材10に対してダンパー16の抵抗が作用する為、第1緩衝部材11と第2緩衝部材12が衝撃緩衝の機能を果たす。換言すれば、測色装置1を落下させた際に第1緩衝部材11と第2緩衝部材12が衝撃緩衝の機能を果たす様にダンパー16の減衰性能を選択する。
この様な衝撃緩衝構造によって測色装置1を落下させた際に測色装置1に加わる衝撃が緩和される。特に、Z軸方向の衝撃が緩和されることから、入射光処理部4が備える光学フィルターに対する悪影響を抑制でき、測色精度の低下を抑制することができる。
【0033】
第1緩衝部材11と第2緩衝部材12は、測色装置1を測定対象G或いは床面等に対して所定の高さから落下させた際に衝撃緩衝可能な様に材料、厚み、及び面積が選択されており、前記所定の高さは、例えば80cm~100cmの範囲に設定できる。尚、測色装置1を落下させた際に衝撃緩衝可能とは、測色装置1に故障や破損を生じさせないことを意味する。
尚、第1緩衝部材11と第2緩衝部材12とによる衝撃緩衝は、四つの突出部9のうち全ての突出部9が担うことを前提としても良いし、四つの突出部9のうち一つ、或いは二つ、或いは三つの突出部9が担うことを前提としても良い。四つの突出部9のうち一部の突出部9で衝撃緩衝を担うことを前提とする場合、装置本体1aを測定対象G或いは床面等に対して傾いた姿勢で落とした場合や、落下面に凹凸がある場合に有効である。
【0034】
第1緩衝部材11と第2緩衝部材12は損失正接のピーク温度が異なる部材である。図6において曲線C1は第1緩衝部材11の損失正接の温度特性を示しており、温度T1は第1緩衝部材11の損失正接のピーク温度である。また曲線C2は第2緩衝部材12の損失正接の温度特性を示しており、温度T2は第2緩衝部材12の損失正接のピーク温度である。図示する様に第1緩衝部材11の損失正接のピーク温度T1は第2緩衝部材12の損失正接のピーク温度より高い。
尚、本実施形態では第1緩衝部材11の損失正接のピーク温度T1は第2緩衝部材12の損失正接のピーク温度T2より高いが、その逆に、第2緩衝部材12の損失正接のピーク温度T2が第1緩衝部材11の損失正接のピーク温度T1より高くても良い。
【0035】
第1緩衝部材11の損失正接のピーク温度T1と第2緩衝部材12の損失正接のピーク温度T2はいずれも測色装置1の使用時の性能保証温度範囲At内にある。
また第1緩衝部材11及び第2緩衝部材12の損失正接の値は、性能保証温度範囲Atにおいて1.0以上を維持することが好適である。
第1緩衝部材11及び第2緩衝部材12として、例えばそれぞれ内外ゴム(株)製のハネナイト(登録商標および商品名)のグレードであるMP40及びCP40Sを用いることができる。
【0036】
以上説明した様に本実施形態に係る測色装置1によれば、装置本体1aを落下させた際、突出部9が測定対象G或いは床面等に当接するが、その際に第1緩衝部材11と第2緩衝部材12が衝撃緩衝機能を発揮し、装置本体1aの故障や破損等が抑制される。ここで突出部9は底面2aから突出する第1状態と筐体2の底面2aから非突出となる第2状態とを切り換え可能であるが、装置本体1aを落下させた際にはダンパー16の機能によって突出部9は直ちに第2状態に切り替わらず、これにより第1緩衝部材11が適切に衝撃緩衝機能を発揮することができる。
そして装置の使用時には、装置本体1aを対象面である測定対象Gに向けて押し込むと突出部9が第2状態に切り替わることができる為、底面2aと測定対象Gとの間に隙間が形成されることを抑制でき、測色装置1の機能を適切に発揮させることができる。
尚、この作用効果を得るに際し、第1緩衝部材11と第2緩衝部材12の双方を備える必要はなく、いずれか一方のみを備えていても良い。
【0037】
但し本実施形態の様に第1緩衝部材11に加え、第1緩衝部材11とは損失正接のピーク温度が異なる第2緩衝部材12を備えることで、広い温度範囲で適切な衝撃吸収性を得ることができる。
【0038】
また本実施形態において、図3に示す様にZ軸方向と交差する方向であるX軸方向とY軸方向における第2緩衝部材12の側面12aは、全体が収容部10dの壁面10eと対向し、第1緩衝部材11の側面11aは、一部が収容部10dの壁面10eと対向する。即ち各緩衝部材の厚み方向であるZ軸方向において第2緩衝部材12は収容部10dから-Z方向に突出せず、第1緩衝部材11は一部のみが-Z方向に突出している。これにより第1緩衝部材11と第2緩衝部材12が衝撃によって変形する際に壁面10eによってガイドされることとなり、落下方向であるZ軸方向に対して第1緩衝部材11と第2緩衝部材12が適切に変形でき、適切な衝撃吸収性を得ることができる。
【0039】
また本実施形態において、突出部9が底面2aの四隅に設けられる。このことにより、底面2aを下にして装置を落下させた際に適切な衝撃緩衝効果を得ることができる。加えて底面2aを下にして装置本体1aを測定対象G或いは床面等に置いた際に、装置本体1aの姿勢が安定する。
【0040】
また本実施形態において、変位部材10は、本体部10aと、本体部10aから装置内部方向に延びる腕部10bと、腕部10bの先端に設けられたフックcと、を備え、フック10cが筐体2に設けられた規制部2eに引っ掛かることで、変位部材10の底面2aからの突出量が規制される。このことにより、変位部材10の第1状態を簡易な構造で形成することができる。
【0041】
また本実施形態において、図3に示す様に突出部9の第1状態において腕部10bが底面2aから突出し、腕部10bが変位部材10の変位方向と交差する方向であるX軸方向に弾性変形可能に構成されている。寸法h3は、腕部10bが底面2aから-Z方向に突出する突出量を示している。このことにより装置本体1aが傾いた状態で落下して変位部材10に変位方向と交差する方向の力Fが掛かった際に、変位部材10が矢印dで示す方向に変形することができる。これにより、変位部材10に力Fが掛かった際の衝撃を緩和することができる。
【0042】
また本実施形態において第1緩衝部材11に対し-Z方向に位置するとともに測定対象Gと接する部材であって、測定対象Gとの間の摩擦係数が第1緩衝部材11と測定対象Gとの間の摩擦係数より低い低摩擦層13を有する。低摩擦層13は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート等により構成できる。このことにより、測定対象Gに対して装置本体1aを滑らせながら測定対象Gを測色する際に滑り性が良好となり、良好な操作感を得ることができる。
尚、測定対象Gに対して装置本体1aを滑らせながら測定対象Gを測色する際に、第1緩衝部材11が装置本体1aの移動方向に対し反対方向に過剰に変形しない様に、第1緩衝部材11の角部をC面或いはR面に形成しても良い。
【0043】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
特に突出部9による衝撃緩衝構造は、本実施形態において電子機器の一例である測色装置1に適用したが、他の電子機器にも適応可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…測色装置、1a…装置本体、2…筐体、2a…底面、2b…開口部、2c…角部、2d…収容空間、2e…規制部、2f…ガイド孔、2g…上面、3…装置内部ユニット、4…入射光処理部、5…発光部、6…バッテリー、9…突出部、10…変位部材、10a…本体部、10b…腕部、10c…フック、10d…収容部、10e…壁面、11…第1緩衝部材、11a…側面、12…第2緩衝部材、12a…側面、13…低摩擦層、15…圧縮コイルばね、16…ダンパー、G…測定対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6