(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014600
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】指輪選定システム及び指輪選定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240125BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240125BHJP
G06Q 50/22 20240101ALI20240125BHJP
A44C 9/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/04
G06Q50/22
A44C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117553
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】513267408
【氏名又は名称】鍛造指輪株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我石 太郎
(72)【発明者】
【氏名】曽我石 龍之介
【テーマコード(参考)】
3B114
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
3B114GG00
5L049AA04
5L049CC11
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】事前に装着者の着け心地に関する情報を経時的に複数回にわたって収集することで、着け心地のよい指輪を選ぶことができるようになる指輪選定システムを提供する。
【解決手段】着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定システム1である。
そして、経時的に複数回にわたって入力された着け心地に関する装着情報を取得する装着データ取得部32と、装着情報に基づいて着け心地に関する評価を行う評価指標算出部33と、その評価結果に基づいて着け心地に関する判定結果を出力する判定処理部34とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定システムであって、
経時的に複数回にわたって入力された前記着け心地に関する装着情報を取得する装着データ取得手段と、
前記装着情報に基づいて前記着け心地に関する評価を行う評価手段と、
前記評価手段の評価結果に基づいて前記着け心地に関する判定結果を出力する判定手段とを備えたことを特徴とする指輪選定システム。
【請求項2】
前記着け心地に関する好み及び前記指輪の装着環境に関する情報の少なくとも一方を装着者情報として設定する設定手段を備え、
前記評価手段では、前記装着情報及び前記装着者情報に基づいて評価を行うことを特徴とする請求項1に記載の指輪選定システム。
【請求項3】
前記評価手段では、前記指輪の装着時のフィット感に関する指標と指のむくみに関する指標とを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の指輪選定システム。
【請求項4】
前記判定結果に対する前記指輪の選定情報を提示するアドバイス手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の指輪選定システム。
【請求項5】
前記アドバイス手段では、前記指輪のサイズに関する情報を提示することを特徴とする請求項4に記載の指輪選定システム。
【請求項6】
着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定プログラムであって、
経時的に複数回にわたって前記着け心地に関する装着情報を入力させる手順と、
前記装着情報に基づいて前記着け心地に関する評価結果を算出する手順と、
前記評価結果に基づいて前記着け心地に関する判定結果を出力する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする指輪選定プログラム。
【請求項7】
前記着け心地に関する好み及び前記指輪の装着環境に関する情報の少なくとも一方を装着者情報として設定する手順を備え、前記装着情報及び前記装着者情報に基づいて評価結果を算出することを特徴とする請求項6に記載の指輪選定プログラム。
【請求項8】
前記評価結果として、前記指輪の装着時のフィット感に関する指標と指のむくみに関する指標とを算出することを特徴とする請求項6又は7に記載の指輪選定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定システム及び指輪選定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
結婚指輪は、一生涯身に着けていく指輪であるにもかかわらず、購入する際の宝石店などにおけるサイズ決定方法は、店舗でサイズリングゲージを一度指に入れて計るという単純なものとなっている(特許文献1など参照)。また、指輪の形状や幅、厚みに関しても、購入する際の一瞬の好みで決定されている。
【0003】
ところが実際には、指の太さは朝、昼、晩で変わり、お酒を飲んだり食事をしたりすると、むくむのが一般的である。また、仕事の内容などによっては、指輪の取り外しを頻繁に行う人もいる。
【0004】
さらに、指輪の形状、幅、インサイドの形状などにより、着け心地のよいサイズが変わることも知られている。サイズが大きすぎれば、水仕事や入浴中に、するっと抜けてしまうこともある。
【0005】
また、装着者によっては、顔を洗ったときに指輪が顔に当たるのが気になったり、仕事中などにおいてパソコンやスマホの操作時に指輪が気になる人もいる。さらに、指輪が小指や中指に当たるのが気になる装着者もいれば、日常生活の中で着け心地が悪いと感じたり、デザインが似合わないと感じたりすることもある。要するに、サイズはもちろんのこと、形状、幅、厚みを含めた本当の「着け心地のよさ」は、実際に日常生活で指輪を着けて試さないとわからないと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現状では、指輪のサイズは店舗において1回しか測定されず、さらには実際に注文する指輪とは異なる幅、形状のサイズリングゲージによる測定で、購入者は店舗側の担当者に言われるがままのサイズに決定してしまっている。
【0008】
指輪の形状に関しても、単なる購入時の好みだけで決定しており、実際に日常生活の中で装着して、支障が出ないか、気になる点はないか、本当に自分に似合っているのかなどを確認せずに決めてしまっているのが現状である。このため、指輪が完成した後に、家で改めてつけてみると、細すぎた、太すぎた、似合わないなどの不満が出ることも多い。
【0009】
一方において、サイズが合わなければ、作り直しとなったり、サイズ直しをすることができる指輪であっても、指輪を切る作業が必要になり、今後一生指輪を装着していくにあたっての耐久性や強度の低下が心配される。
【0010】
そこで本発明は、事前に装着者の着け心地に関する情報を経時的に複数回にわたって収集することで、着け心地のよい指輪を選ぶことができるようになる指輪選定システム及び指輪選定プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の指輪選定システムは、着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定システムであって、経時的に複数回にわたって入力された前記着け心地に関する装着情報を取得する装着データ取得手段と、前記装着情報に基づいて前記着け心地に関する評価を行う評価手段と、前記評価手段の評価結果に基づいて前記着け心地に関する判定結果を出力する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記着け心地に関する好み及び前記指輪の装着環境に関する情報の少なくとも一方を装着者情報として設定する設定手段を備え、前記評価手段では、前記装着情報及び前記装着者情報に基づいて評価を行う構成とすることができる。
【0013】
また、前記評価手段では、前記指輪の装着時のフィット感に関する指標と指のむくみに関する指標とを算出することができる。さらに、前記判定結果に対する前記指輪の選定情報を提示するアドバイス手段を備えた構成とすることができる。前記アドバイス手段では、前記指輪のサイズに関する情報を提示することもできる。
【0014】
また、指輪選定プログラムの発明は、着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定プログラムであって、経時的に複数回にわたって前記着け心地に関する装着情報を入力させる手順と、前記装着情報に基づいて前記着け心地に関する評価結果を算出する手順と、前記評価結果に基づいて前記着け心地に関する判定結果を出力する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の指輪選定システム及び指輪選定プログラムは、経時的に複数回にわたって入力された着け心地に関する装着情報を取得する装着データ取得手段を備え、その装着情報に基づいて評価手段で着け心地に関する評価を行う。そして、評価手段の評価結果に基づいて、判定手段が着け心地に関する判定結果を出力する。
【0016】
このように、事前に装着者の着け心地に関する情報を経時的に複数回にわたって収集し、それに基づいて着け心地を判定することで、満足度の高い着け心地のよい指輪を選ぶことができるようになる。
【0017】
また、設定手段によって、着け心地に関する好みや指輪の装着環境に関する情報が装着者情報として設定されていれば、その装着者情報を考慮した装着者により適した評価を行うことができるようになる。
【0018】
評価手段による評価は、指輪の装着時のフィット感に関する指標や指のむくみに関する指標を算出することで行うことができる。また、判定結果に対する指輪の選定情報を提示するアドバイス手段を備えていれば、装着者が指輪を選ぶ際のサイズなどの判断材料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態の指輪選定システムの構成を説明するブロック図である。
【
図2】本実施の形態の指輪選定システムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図3】装着者情報の設定画面の一例を示した説明図である。
【
図4】着け心地に関する装着情報の入力画面の一例を示した説明図である。
【
図5】装着情報の集計結果の一例であって、(a)は着け外し感に関する集計結果の説明図、(b)は装着感に関する集計結果の説明図である。
【
図6】判定結果の出力の一例を示した説明図である。
【
図7】アドバイス提示部によって提示される選定情報の一例を示した説明図である。
【
図8】指輪選定システムの適用例の一例であって、(a)は着け外し感に関する集計結果の説明図、(b)は装着感に関する集計結果の説明図、(c)は判定結果の出力の説明図である。
【
図9】指輪選定システムの別の適用例であって、(a)は着け外し感に関する集計結果の説明図、(b)は装着感に関する集計結果の説明図、(c)は判定結果の出力の説明図である。
【
図10】指輪選定システムの別の適用例であって、(a)は着け外し感に関する集計結果の説明図、(b)は装着感に関する集計結果の説明図、(c)は判定結果の出力の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の指輪選定システム1の構成を説明するブロック図である。また、
図2は、本実施の形態の指輪選定システム1の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0021】
本実施の形態の指輪選定システム1は、結婚指輪などの長時間又は長期間にわたって装着する指輪について、着け心地のよい指輪を選ぶために、指輪を着ける装着者によって利用される。例えば、結婚指輪を選ぶ前であれば、試着する指輪を「入籍指輪(登録商標)」と呼ぶこともできる。
【0022】
本実施の形態の指輪選定システム1では、
図1に示すように、入力装置2などから入力されたデータに基づいて演算処理部3で処理を行い、表示装置5などに判定結果などを表示させる。
【0023】
指輪選定システム1の演算処理部3は、装着者に関する情報を設定する設定手段となる装着者情報設定部31と、装着情報を取得する装着データ取得手段となる装着データ取得部32と、評価手段となる評価指標算出部33と、判定手段となる判定処理部34と、アドバイス手段となるアドバイス提示部35とによって、主に構成される。
【0024】
試着する指輪(以下、「試着用指輪」という。)を装着する装着者が各種データの入力を行うためのデータ入力手段となる入力装置2は、例えば装着者が携帯する通信端末(携帯端末)となるスマートフォン(スマホ)が該当する。装着者が各種データの入力を行うためのデータ入力手段は、スマホに限定されるものではなく、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートパソコン、タブレット端末、ウェアラブル端末などであってもよい。
【0025】
演算処理部3は、装着者のスマホなどにインストールされたアプリケーションによって実行させることができる。また、インターネットなどのネットワークを介して接続されたサーバなどに、演算処理部3の一部又は全部を実行させることもできる。ネットワークは、インターネット、WAN(Wide Area Network)、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN(Wi-Fi)、プロバイダ装置、無線基地局、専用回線などの一部又は全部によって構成される。
【0026】
本実施の形態の指輪選定システム1は、装着情報などの入力から判定結果の出力に至るまで、すべて装着者が携帯するスマホなどで行わせることができる。また、装着情報の入力は装着者のスマホなどで行い、後述する装着者情報の設定や判定結果の出力などは、店舗などに設置された端末などで行わせることもできる。
【0027】
演算処理部3は、ハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-processing unit)によって構成され、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えている。
【0028】
また、入力装置2には、タッチパネル、キーボード、マウス、タッチパッド、スキャナ、音声入力用のマイクなどが該当する。また、カメラを入力装置2として使用することもできる。一方、表示装置5には、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro- Luminescence)ディスプレイ、プリンタなどが使用できる。
【0029】
さらに、記憶部4は、演算処理部3における処理によって生成されたデータや演算処理に必要なデータを記録させる記憶媒体で、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリ(SDメモリーカードなど)、磁気ディスク、光ディスクなどが該当する。また、ネットワークで接続されるサーバなどの外部のオンラインストレージ(クラウドストレージ)を、記憶部4として使用することもできる。
【0030】
演算処理部3の装着者情報設定部31では、着け心地に関する好み及び指輪の装着環境に関する情報の少なくとも一方を装着者情報として設定する。
図3は、装着者情報設定部31によってスマホなどの画面に表示される装着者情報の設定画面の一例を示した説明図である。
【0031】
まず、装着者情報を特定するために、装着者の名前が入力される。次に、購入予定の指輪に基づいて選ばれた試着用指輪に関する指輪情報が入力される。指輪情報には、指輪形状、サイズ、幅、厚みなどがある。ここで、指輪形状は、平甲丸ストレート、甲丸ストレート、平打ストレート、平打ミゾ、S字、V字、コンビ、特殊形状などの名称によって特定することができる。
【0032】
また、指輪の着け心地には、リングの内径の大きさを表すサイズ(号)だけでなく、リングの幅や厚みも影響を与える。このため、装着者が選んだ試着用指輪に関する指輪情報を、装着者情報として設定する。さらに、装着者情報としては、利き手がどちらかや、薬指の節の状態についての情報なども入力させることができる。
【0033】
そして、着け心地に関する好みや指輪の装着環境に関する情報についても、装着者情報として装着者情報設定部31で設定を行う。ここで、「着け心地に関する好み」とは、指輪のフィット感に関する装着者の好みで、きつめが好き、ふつう(ちょうど)がいい、ゆるめが好き、わからないなどがある。
【0034】
一方、「指輪の装着環境」とは、着け外しの頻度や、飲酒習慣などの指のむくみに影響を与えやすい生活習慣などに関する情報となる。例えば着け外し頻度には、着け外しが多い、時々外す、外さないなどがある。また、飲酒習慣については、よく飲む、たまに飲む、飲まないなどの設定を行う。
【0035】
装着データ取得部32では、経時的に複数回にわたって入力装置2から入力された装着者の着け心地に関する装着情報を取得する。入力装置2から入力された装着情報は、その都度、記憶部4に記録され、集計後にまとめて評価指標算出部33で使用される。
【0036】
着け心地に関する装着情報としてチェックする項目としては、サイズ感に関しては、着け外し感と装着感が挙げられる。要するに、指輪のサイズや幅が異なると、着け外し感や装着感が変化する。これは、1日のうちでも、朝、昼、夜など時間帯によっても変化する。
【0037】
一方、指輪の指あたりに関しては、指輪の外側の形状や厚みや内側の形状などが影響して、着け心地を変化させる。要するに、指輪の外側の形状や厚みが異なると指あたりが変化し、内側の形状や幅が異なっても指あたりは変化する。これも、1日のうちでも、朝、昼、夜など時間帯によっても変化する。
【0038】
さらに、デザインなどの見た目や印象についても、日常の生活場面、日、時間帯などによって変化する。要するに、これらの項目は、すべて実際に日常生活で試さないとわからないうえに、特にサイズ感については、朝、昼、夜だけで大きく変わるので、経時的に複数回にわたっての装着情報の入力が必要になる。
【0039】
図4は、装着データ取得部32によってスマホなどの画面に表示される着け心地に関する装着情報の入力画面の一例を示した説明図である。装着情報の入力は、装着者がスマホなどの入力装置2を操作することによって、1日のうちの朝、午後、夜など任意のタイミングで行われれる。装着情報の入力回数は、多い方が好ましいが、毎回欠かさず行わなければならないものではなく、気づいたときなど可能な範囲で行えばよい。
【0040】
図4の例示では、装着情報として、まず「着け外し感」の入力を行わせる。この情報は、主に指の節の通り具合を確認するための情報で、日や時間帯によって変化する状態を装着者自身に入力させる。例えば、「入らない、抜けない」、「かなり節がきついが何とか入る、抜ける」、「ちょうど良い(多少節の所がきついが入る、抜ける)」、「苦労せず(簡単に)入る、抜ける」、「ゆるすぎる、失くしそう」などの該当する項目にチェックを入れさせる。
【0041】
続いて、「装着感」を装着情報として入力させる。この情報は、指輪をしている時の装着感で、着け外しは関係ない。例えば、「きつくてつらい、痛い、入らない」、「多少きつく感じる」、「ちょうど良い、多少動くが節で止まる」、「多少ゆるく感じる、ぐるぐる回る」、「ゆるすぎる、簡単に落ちてしまう」などの該当する項目にチェックを入れさせる。
【0042】
また、内側の指あたり、外側の指あたり、似合っているかの見た目などについても、気づいた点があれば、メモ欄に記録させる。さらに、メモ欄などには、入力装置2となるカメラで撮影した、指輪を装着した状態の指の画像などを添付することもできる。このような入力画面で入力された装着情報は、装着者と紐付けられて記憶部4に記録されて、任意のタイミングで取り出すことができる。
【0043】
評価指標算出部33では、このようにして記憶部4に蓄積された装着情報に基づいて、着け心地に関する評価となる指標の算出を行う。本実施の形態の指輪選定システム1では、装着情報だけでなく、装着者情報設定部31で設定された装着者情報も使って評価を行う。
【0044】
図5は、装着情報の集計結果の一例を示している。
図5(a)は、着け外し感に関する集計結果を一覧表で例示しており、
図5(b)は装着感に関する集計結果を一覧表で例示している。
【0045】
例えば、上述した着け外し感の各項目に、それぞれ割合(又は点数)を付ける。例えば、「入らない、抜けない」は50%、「かなり節がきついが入る、抜ける」は75%、「ちょうど良い(多少節がきついが入る)」は100%、「苦労せず(簡単に)入る、抜ける」は125%、「ゆるすぎる、失くしそう」は150%と数値化する(
図5(a)参照)。
【0046】
一方、上述した装着感の各項目にも、それぞれ割合(又は点数)を付ける。例えば、「きつくてつらい、痛い、入らない」は50%、「多少きつく感じる」は75%、「ちょうどよい、多少動くが節で止まる」は100%、「多少ゆるく感じる、ぐるぐる回る」は125%、「ゆるすぎる、簡単に落ちてしまう」は150%と数値化する(
図5(b)参照)。
【0047】
これらの集計は、装着情報の入力を行った時間帯ごとにカウントがされている。そして、各時間帯(朝、午後、夜)ごとの平均点が算出されるとともに、時間帯ごとの平均点から1日の平均点が算出される。
図5に示した例では、着け外し感は68.3%となり、装着感は75.0%となった。
【0048】
このようにして複数回の入力された装着情報から求められた着け外し感と装着感の定量化された値を使って、試着用指輪の装着時のフィット感に関する指標と指のむくみに関する指標とを評価指標として算出する。
【0049】
まず、フィット感に関する指標の算定方法について説明する。フィット感に関する指標を「フィット率」と呼ぶこととすると、フィット率は、上述した着け外し感の割合と装着感の割合から求めることができる。
【0050】
ここで、着け外し感の割合と装着感の割合を使用する際に、装着者情報設定部31で設定した装着者情報を利用することができる。例えば、上述した「着け外し頻度」の装着者情報を利用する。
【0051】
例えば、「着け外しが多い」と設定した装着者については、着け外し感:装着感=8:2という比率にし、「時々着け外し」と設定した装着者については、着け外し感:装着感=4:6という比率にし、「着け外しなし」と設定した装着者については、着け外し感:装着感=2:8という比率に基づいてフィット率を算出する。例えば
図5に示した、「着け外し感」の平均が68.3%で、「装着感」の平均が75.0%で、「着け外しなし」と設定した装着者のフィット率は、68.3×0.2+75.0×0.8=73.6%となる。
【0052】
さらに、こうして算出されたフィット率を、上述したフィット感の好みや飲酒習慣や薬指の節の状態などの装着者情報を利用して補正することができる。フィット感の好みについては、「きつめが好き」と設定した装着者については1.1倍、「多少きつめ」と設定した装着者については1.05倍、「ちょうどいい」と設定した装着者については1.0倍、「多少ゆるめ」と設定した装着者については0.95倍、「ゆるめ」と設定した装着者については0.9倍にフィット率を補正する。
【0053】
一方、飲酒習慣については、「ほぼ毎日飲む」と設定した装着者については0.9倍、「たまに飲む」と設定した装着者については0.95倍、「飲まない」と設定した装着者については1.0倍にフィット率を補正する。
【0054】
また、薬指の節の状態については、「あり」と設定した装着者については1.00倍、「少しあり」と設定した装着者についても1.00倍、「なし」と設定した装着者については0.90倍にフィット率を補正する。例えば、フィット感の好みは「多少きつめ」で、飲酒習慣は「たまに飲む」、薬指の節は「あり」という装着者情報を入力した場合の上記73.6%というフィット率は、73.6×1.05×0.95×1.00=73.4%に補正される。
【0055】
ここで、フィット率の評価の目安としては、例えば以下のように捉えることができる。
50-75% :きつめ
75-90% :多少きつめ
90-110% :適正
110-125% :多少ゆるめ
125-150% :ゆるめ
【0056】
続いて、むくみに関する指標を「むくみ率」として説明する。むくみ率を着け心地に関する評価に加える理由としては、例えばフィット率が100%となる人の中には、1日中むくみがなくてフィット率が100%となる人もいれば、朝はむくんで着け心地が必ずしも良くないのに、平均するとフィット率が100%となってしまっている人もいるためである。
【0057】
そこで、フィット率の評価指標だけでなく、むくみ率についても評価指標に加えて評価を行うこととする。例えば、むくみ率を、ここまでで算出されたフィット率と、着け外し感及び装着感で得られた装着情報の中の最大値あるいは最小値とを使って求める。ここで、むくみ率を計算するときには、極端なデータを排除するために、着け外し感と装着感のそれぞれの装着情報の最小値と最大値を、1回ずつ排除して計算を行う。
【0058】
例えば、
図5に示した集計結果では、着け外し感のデータ(
図5(a))は、50%が7回、75%が5回、100%が3回となっている。一方、装着感のデータ(
図5(b))は、50%が4回、75%が7回、100%が4回となっている。そこで、着け外し感のデータから50%と100%を1回ずつカットし、装着感のデータから50%と100%を1回ずつカットして、残ったデータから最小値と最大値を求めると、最小値が50%、最大値が100%となる。
【0059】
そして、上記した補正されたフィット率73.4%を使用してむくみ率を算出すると、以下のようになる。
73.4-50=23.4%、100-73.4=26.6%
上記2つの数値の大きい方をむくみ率とすると、むくみ率は、26.6%となる。
なお、むくみ率は、補正前のフィット率を使用して算出することもできる。
【0060】
ここで、むくみ率の評価の目安としては、例えば以下のように捉えることができる。
0-20% :むくみ少ない
20-35% :多少のむくみ
35-50% :大きなむくみ
50-70% :かなり大きなむくみ
70%以上 :極端なむくみ
【0061】
このようにして評価指標算出部33で算出されたフィット率とむくみ率の評価指標に基づいて、装着者の試着用指輪の着け心地に関する判定結果が、判定処理部34によって出力される。
【0062】
図6は、判定結果の出力の一例を示した説明図である。こうした判定結果は、装着者が携帯するスマホなどの表示装置5に表示される。例えば判定結果は、フィット率とむくみ率とのマトリックスとして表示される。上述したフィット率73.4%でむくみ率26.6%の判定結果は、1行2列目の「星印」の位置で示される。
【0063】
こうした判定結果を見た装着者は、上述した評価の目安から、フィット率については「きつめ(50-75%)」で、むくみ率については「多少のむくみ(20-35%)」という試着用指輪による試着結果を知ることができる。この判定結果から、例えば装着者は購入する指輪のサイズアップを決めることができる。
【0064】
さらに、本実施の形態の指輪選定システム1では、こうした判定結果に対して、アドバイス提示部35によって指輪の選定情報を提示することができる。
図7は、アドバイス提示部35によって提示される選定情報の一例を示した説明図である。
【0065】
この円グラフは、フィット率が「きつめ(50-75%)」で、むくみ率が「多少のむくみ(20-35%)」という判定結果(
図6参照)を得たシステム利用者が、その後、どのような指輪を選択したかという統計情報を示している。要するに判定結果を得たシステム利用者のその後の選択肢としては、サイズアップする、サイズ変更はしない、サイズダウンするなどがあるので、それぞれの割合が示されていれば、装着者が自身の判定結果に基づいて、着け心地のよい指輪を選ぶ際の判断材料として利用することができる。
【0066】
また、この他の選定情報としては、最大むくみ時にかなりのきつさや痛みを感じたことがある、又は入浴時など水回り時に抜けてしまったことがある場合は、販売担当者に相談するよう注意を促すこともできる。また、おおよその目安として、サイズが1号変わったときにフィット率がどの程度変わるかなどの情報も、アドバイス提示部35によって表示装置5に表示させることができる。
【0067】
以下、本実施の形態の指輪選定システム1の処理の流れについて、
図2に示したフローチャートを参照しながら説明する。
以下では、試着用指輪の装着者が携帯するスマホに、着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定プログラムがインストールされている場合を例に説明する。
【0068】
このスマホにインストールされたプログラム(アプリケーション)によって、装着者情報を設定する手順と、経時的に複数回にわたって着け心地に関する装着情報を入力させる手順と、装着情報に基づいて着け心地に関する評価結果を算出する手順と、その評価結果に基づいて着け心地に関する判定結果を出力する手順とをコンピュータに実行させることができる。
【0069】
まずステップS1では、スマホの表示装置5に表示された入力画面(
図3参照)に従って、試着用指輪の形状やサイズなどに関する情報を入力する。試着用指輪には、例えば購入を検討している結婚指輪と同じ幅、同じ厚み、同じ形状、同じサイズのシルバー製の指輪を使用する。
【0070】
続いてステップS2では、フィット感の好みや着け外し頻度などの装着者に関する情報を設定する。これらの装着者情報に関する設定は、装着者情報設定部31で行われる。また、ここまでの設定は、店舗などの端末で行って、装着者のスマホに表示させることもできる。
【0071】
そして、ステップS3からは、日常生活において、装着者が自身のスマホを操作することによって装着情報の入力を行っていく(
図4参照)。試着用指輪は、例えば1週間以上の実際の日常生活や仕事の中で試着し、着け心地の具合について、朝、昼、夜などの様々な時間帯における状態や感触を、装着情報としてスマホの入力装置2を操作して入力していく。
【0072】
装着情報の入力は、装着者の希望する任意の期間で行うことができる(ステップS4)。
図8(a),(b)-
図10(a),(b)は、装着情報として入力された着け外し感と装着感に関するデータの集計結果を例示している。これらのデータは、装着者のスマホの記憶部4に蓄積させておくこともできるし、ネットワークによって接続されたサーバなどに蓄積させておくこともできる。
【0073】
そして、ステップS5では、この集計結果に基づいて、フィット率とむくみ率の算出を行う。この演算処理についても、装着者のスマホのアプリケーション自体に行わせる構成であってもよいし、ネットワークによって接続されたサーバで実行された演算結果をスマホで受け取る構成であってもよい。
【0074】
例えば、
図8(a),(b)に例示された集計結果からは、着け外し感が79.4%と装着感が85.8%の平均値が算出され、そこから「着け外しが多い」という装着者情報を考慮して、80.6%というフィット率が算出される。このフィット率は、フィット感は「ゆるめ」が好きで「ほぼ毎日飲む」という装着者情報によって補正されて、最終的に65.2%のフィット率として算定される。
【0075】
そして、このフィット率65.2%と、着け外し感と装着感の最小値50%と最大値100%という数値を使って、むくみ率34.8%という評価指標が算出される。こうして算出されたフィット率とむくみ率の評価指標に基づいて、ステップS6では、スマホの表示装置5に判定結果(フィット率が「きつめ(50-75%)」で、むくみ率が「多少のむくみ(20-35%)」)を出力する(
図8(c)参照)。
【0076】
一方、
図9(a),(b)に例示された集計結果からは、着け外し感が123.2%と装着感が112.4%の平均値が算出され、そこから「着け外しなし」という装着者情報を考慮して、114.5%というフィット率が算出される。このフィット率は、フィット感は「ふつう」が好きで「たまに飲む」という装着者情報によって補正されて、最終的に108.7%のフィット率として算定される。
【0077】
そして、このフィット率108.7%と、着け外し感と装着感の最小値100%と最大値150%という数値を使って、むくみ率41.3%という評価指標が算出される。こうして算出されたフィット率とむくみ率の評価指標に基づいて、ステップS6では、スマホの表示装置5に判定結果(フィット率が「適正(90-110%)」で、むくみ率が「大きなむくみ(35-50%)」)を出力する(
図9(c)参照)。
【0078】
また、
図10(a),(b)に例示された集計結果からは、着け外し感が101.7%と装着感が103.5%の平均値が算出され、そこから「時々着け外し」という装着者情報を考慮して、102.7%というフィット率が算出される。このフィット率は、フィット感は「ふつう」が好きで「飲まない」という装着者情報によって補正されて、最終的に102.7%のフィット率として算定される。
【0079】
そして、このフィット率102.7%と、着け外し感と装着感の最小値50%と最大値150%という数値を使って、むくみ率52.7%という評価指標が算出される。こうして算出されたフィット率とむくみ率の評価指標に基づいて、ステップS6では、スマホの表示装置5に判定結果(フィット率が「適正(90-110%)」で、むくみ率が「かなり大きなむくみ(50-70%)」)を出力する(
図10(c)参照)。
【0080】
このようにして出力された判定結果に応じて、ステップS7では、アドバイス提示部35によって、装着者のスマホの表示装置5に、着け心地のよい指輪を選ぶための選定情報がアドバイス情報として出力される(
図7参照)。このアドバイス情報は、最新のデータに基づいて逐次、更新が行われ、その更新された最新情報を、ネットワークを介してスマホの表示装置5に表示させるのが好ましい。
【0081】
このようにして出力された試着用指輪の判定結果やアドバイス提示部35からのアドバイス情報や販売員などから得られる情報に基づいて、結婚指輪など製作する指輪の最終形状とサイズを決定することができる。販売員は、判定結果だけでなく、メモ欄に添付された指の状態を示す画像があれば、それを見てアドバイスをすることもできる。
【0082】
次に、本実施の形態の指輪選定システム1及び指輪選定プログラムの作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の指輪選定システム1は、経時的に複数回にわたって入力された着け心地に関する装着情報を取得する装着データ取得部32を備え、その装着情報に基づいて評価指標算出部33で着け心地に関する評価を行う。そして、評価指標算出部33で算出された評価指標に基づいて、判定処理部34が着け心地に関する判定結果を出力する。
【0083】
このように、事前に装着者の着け心地に関する情報を経時的に複数回にわたって収集し、それに基づいて着け心地を判定することで、満足度の高い着け心地のよい指輪を最終的に選ぶことができるようになる。
【0084】
また、装着者情報設定部31によって、着け心地に関する好みや指輪の装着環境に関する情報が装着者情報として設定されていれば、その装着者情報を考慮した装着者により適した評価を行うことができるようになる。
【0085】
さらに、評価指標算出部33による評価指標の算出は、指輪の装着時のフィット感に関するフィット率や指のむくみに関するむくみ率の算出とすることで、定量化された結果として使用することができる。
【0086】
また、判定結果に対する指輪の選定情報を提示するアドバイス提示部35を備えていれば、装着者の感じた着け心地に関する判定結果に加えて、経験や実績に基づいた指輪を選ぶ判断材料が得られるようになるので、より満足度の高い指輪選びをすることができるようになる。
【0087】
また、装着者のスマホなどに着け心地のよい指輪を選ぶための指輪選定プログラムがインストールされていれば、装着者は、任意のタイミングで着け心地に関する装着情報を簡単に入力することができるようになり、より自分に適した指輪を総合的に判断することができるようになる。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
例えば、前記実施の形態では、着け心地のよい結婚指輪を選ぶ場合を例に主に説明したが、これに限定されるものではなく、長く装着する予定の指輪や薬指以外に装着する指輪など様々な指輪を選ぶ際に、本発明を適用することができる。
【0090】
また、前記実施の形態では、装着者が自身で感じた感触を装着情報として入力する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、試着用指輪をはめた指をスマホのカメラで撮影して装着情報として取り込み、画像解析させることで、むくみ率などの評価指標を算定させることもできる。例えば、画像解析によって、試着用指輪周辺の指の膨らみ角度や膨らみ幅を数値化し、朝、昼、晩、飲酒後など、様々な日常生活の状況の中で撮影された画像から最小値と最大値を求め、その差などからむくみ率を求めることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 :指輪選定システム
2 :入力装置
3 :演算処理部
31 :装着者情報設定部(設定手段)
32 :装着データ取得部(装着データ取得手段)
33 :評価指標算出部(評価手段)
34 :判定処理部(判定手段)
35 :アドバイス提示部(アドバイス手段)
5 :表示装置