(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146025
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光学センサユニット及びこれを用いた湿潤判定装置並びに湿潤状態の計測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058688
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000223285
【氏名又は名称】ユアサ商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】717001787
【氏名又は名称】桐生電子開発合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】木暮 一也
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】北田 昂大
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB05
2G059BB08
2G059CC09
2G059EE02
2G059EE05
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG08
2G059HH01
2G059JJ11
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ22
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】計測対象の表面の液体による湿潤状態を監視して、表面の水等の液体が枯渇しないように監視する光学センサユニット及び湿潤判定装置並びに湿潤状態の計測方法を提供する。
【解決手段】水分吸収率の高い円偏光の照射光21を、計測対象を覆う水面(界面)72に垂直に照射して、計測対象からの反射光22を検出光23として受光する。計測対象物の表面に所定厚さの水膜が存在している場合には、円偏光の照射光を水面に垂直に照射すると全反射により、照射光の多くはそのまま反射光22として光学センサユニット10に帰還して検出光23として検出されるが、水が少なくなり表面が露出すると、照射光21は乱反射して検出光23が急激に減少する。これにより、計測対象表面の水が少なくなった状態を、枯渇直前に確実に検出することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外領域の波長のレーザ光を出射する光源と、該光源から出射された前記レーザ光を偏光した照射光を計測対象の凹凸を有する表面に照射する光学系と、該光学系から照射された前記照射光の反射光を受光して、該反射光の受光量に応じた電気信号を出力する受光素子とを備え、前記反射光の受光量により前記表面を覆う液体の湿潤状態を計測する光学センサユニットであって、
前記光学系は、
光源から出射された前記レーザ光のビームを平行光にするコリメートレンズと、
前記光源から出射された前記レーザ光のP偏光成分又はS偏光成分のいずれか一方を通過させて他方の偏光を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタの下流に設けられ、該ビームスプリッタを通過した前記レーザ光に1/4λの位相差を与えて、照射光として出射する1/4波長板と、
前記計測対象箇所から反射された前記照射光の反射光のうち、前記1/4波長板を通過して前記ビームスプリッタに前記光源とは逆方向から入力され該ビームスプリッタにより分岐される前記反射光を検出光として集光する集光レンズと、
前記集光レンズにより集光された前記検出光を受光して、受光量に応じた計測値を出力する受光素子と、
を備えており、
前記ビームスプリッタを通過した前記レーザ光を前記1/4波長板により円偏光のレーザ光に偏光し、該円偏光のレーザ光を前記照射光として空気と前記液体との界面に対して垂直に照射して、その反射光から抽出される前記検出光を計測することを特徴とする光学センサユニット。
【請求項2】
前記照射光は、前記液体への吸収率の高い波長であることを特徴とする請求項1に記載の光学センサユニット。
【請求項3】
前記受光素子は、前記検出光を集光する前記集光レンズの焦点位置からはずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光学センサユニット。
【請求項4】
前記照射光は、発光デューティの低いパルス列のレーザ光であることを特徴とする請求項3に記載の光学センサユニット。
【請求項5】
計測対象の凹凸を有する表面に前記照射光を照射して計測値を出力する請求項1から4のいずれか1項に記載の光学センサユニットと、
前記光学センサユニットを制御して、前記計測対象の表面の前記計測値を取得する制御部と、
前記光学センサユニットから取得した前記計測値を所定の基準に基づいて前記計測対象の表面の湿潤状態を判定し、判定結果を出力する判定部と、
を備えることを特徴とする湿潤判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記計測値が所定の閾値以下になったときに警告信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の湿潤判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記計測値が所定の範囲にあるとき、前記警告信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の湿潤判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、複数の前記所定の範囲を有しており、該所定の範囲毎に異なる前記警告信号を出力することを特徴とする請求項7に記載の湿潤判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記計測値が、前記計測対象の表面全体が液体で覆われているときの前記計測値から20%以上低下したときに前記警告信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の湿潤判定装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記所定の時間間隔毎に計測した複数の前記計測値の変化及び/又は変化速度に基づいて、湿潤状態の変化値を算出する演算部と、該演算部で算出した前記変化値に基づいて前記湿潤状態を判定して、前記警告信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の湿潤判定装置。
【請求項11】
前記湿潤判定装置を移動させる移動機構を備え、
前記制御部は、前記湿潤判定装置を所定の計測対象領域内において移動させて、該計測対象領域内の複数の計測位置において、前記湿潤状態を計測してするよう前記移動機構及び前記光学センサユニットを制御し、
前記判定部は、複数の前記計測位置における前記計測値に基づいて、前記計測領域の湿潤状態を判定することを特徴とする請求項5に記載の湿潤判定装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記計測位置の一つ又は複数の前記計測位置において、前記計測値が前記所定の閾値以下になったときに、前記計測領域における前記警告信号を出力することを特徴とする請求項11に記載の湿潤判定装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記計測位置の一つ又は複数の前記計測位置において、前記計測値が所定の範囲にあるときに、前記警告信号を出力することを特徴とする請求項11に記載の湿潤判定装置。
【請求項14】
前記判定部は、前記計測位置の一つ又は複数の前記計測位置において、複数の前記計測値の所定の範囲毎に異なる前記警告信号を出力することを特徴とする請求項13に記載の湿潤判定装置。
【請求項15】
前記判定部は、前記計測位置のいずれか一つ又はいずれか複数の前記計測位置において、前記所定の時間間隔毎に計測した複数の前記計測値の変化及び/又は変化速度に基づいて、湿潤状態の変化値を算出する演算部と、該演算部で算出した前記変化値に基づいて前記計測領域全体の前記湿潤状態を判定して、前記警告信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の湿潤判定装置。
【請求項16】
表面に凹凸を有する計測対象に近赤外光領域の波長のレーザ光を照射して、その反射光により前記計測対象の表面を覆う液体の湿潤状態を計測する湿潤状態の計測方法であって、
近赤外光の波長の円偏光の平行光からなるレーザービームの照射光を、前記計測対象の表面に対して空気と前記液体との界面に対して垂直な角度となるように照射する照射工程と、
前記照射光の反射光を、前記照射光の照射開口と同心円上にある受光開口で受光する受光工程と、
前記受光開口で受光した前記反射光を検出光として分岐する分岐工程と、
前記分岐した前記検出光を集光レンズにより集光して受光素子で受光して、該受光素子により受光量に応じた電気信号を出力する計測工程と、
を備えることを特徴とする湿潤状態の計測方法。
【請求項17】
前記計測工程において、集光した前記計測反射光を前記集光レンズの焦点位置からはずれた位置に配置された前記受光素子で受光して、受光量に応じた電気信号を出力することを特徴とする請求項16に記載の湿潤状態の計測方法。
【請求項18】
前記照射工程において、前記液体への吸収度の高い波長の光を前記照射光として照射することを特徴とする請求項17に記載の湿潤状態の計測方法。
【請求項19】
前記液体は水であることを特徴とする請求項16に記載の湿潤状態の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象の表面を液体が覆っている状態から液体がなくなる状態の変化、又はその逆の変化を検出する装置及び方法に関するものである。特に、凹凸を有する表面を液体が完全に覆っている状態及び表面の液体が減少して表面の凹凸の全部又は一部が露出している状態を表す湿潤状態を計測する光学センサユニット及び湿潤判定装置、並びに湿潤状態の計測方法に関する。ここで、液体とは水に限らず、油その他の液体も含む概念である。
【背景技術】
【0002】
ビルや道路の建設に使用されるコンクリートは、生コンクリートを打設した直後から硬化が開始する。硬化はセメントの石灰成分と水の化学反応(水和反応)によるものであり、硬化過程において水分が不足すると充分な強度が得られないことや、硬化後にクラック等が生じることがある。そのためコンクリートの硬化過程においては、適宜十分な水分を与えて、硬化時の温度及びコンクリート表面の水分の状態を適切に管理することが求められる。硬化後のコンクリートの品質は、打設から硬化に至るまでの湿潤状態の管理(養生管理とも呼ばれる)によって大きく変動する。
【0003】
このような理由から、所望の高品質のコンクリートを得るべく、打設した後の一定期間、コンクリートの表面に散水を行い、散水後にビニールシートなどの養生マットにより表面を覆うなどの養生管理が行われている。このような養生管理では、コンクリートが硬化するまでの数日間、水和反応に必要な水分が不足することの無いように十分な水分を補給が求められる。適切な湿潤状態を保つことで、所望の品質のコンクリートを得ることができる。
【0004】
従来、生コンクリートを打設した後の養生管理は、人的管理が主流であった。しかし、人的管理には一定の経験やスキルを有する人材の確保や管理コストなどの負担を伴う。そのため、養生管理の負担を軽減するため、表面の水分量を計測する機器を使用した管理が提案されている。例えば、特許文献1では、養生マットを用いて湿潤状態を維持するため、養生マットとコンクリートの間に湿潤状態を検出するセンサを配置して管理する技術が開示されている。
【0005】
しかし、養生管理は、特許文献1のように養生シートで被うよりも、コンクリート表面全体を常に水で覆うように適宜散水して水を補給し続ける方が好ましい。一方、養生シートを外して水分補給をする場合、水分の蒸発による外部への逸散が大きくなることから、コンクリート表面の水分状態を、数日間常時監視し続けて適宜散水する必要がある。そのため、養生シートを用いない場合には、特にコンクリート表面の水分状態(湿潤状態)の人的監視負担がより大きくなる。
【0006】
このような人的監視による監視負担を軽減するために、打設後のコンクリート表面の水分状態(湿潤状態)を自動的に監視できる装置が強く望まれている。このようなコンクリート表面の水分を装置により計測する技術として、特許文献2に、赤外線水分センサを使用してトンネル内壁面に含まれる水分の状態を計測して、打設後のコンクリート養生のため打設表面に散水を行い適切な湿潤状態に保つコンクリートの湿潤養生装置が提案されている。また、特許文献3に、コンクリート塗装表面の水分状態を近赤外分光法により定量的に計測し、ほうき目仕上げなどの粗面仕上げの適切な開始時期を判定する方法が開示されている(特許文献3の明細書の段落「0014」参照)。
【0007】
さらに、特許文献4に、コンクリートの耐久性を検査するために、乾燥したコンクリートに水を散布した後、水分吸収率の高い波長の光と水分吸収率の低い波長の光の2つの波長の近赤外光を照射して、水分吸収度合い(水分吸収速度)を計測する装置が開示されている。具体的には、散水後のコンクリート表面に2つの波長の光を照射して両照射光の反射光を計測し、その受光量(計測値)の差がほぼ“0”になったときにコンクリート表面に水が無くなった状態であると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018―3240号公報
【特許文献2】特開2011-153497号公報
【特許文献3】特許第6869769号公報
【特許文献4】特開2013-217676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献2乃至4には、コンクリート表面の水分状態を計測するために、近赤外光を照射してその反射光を検出することが開示されている。しかし、これらの技術は計測対象表面の湿潤状態を計測するものではない。特許文献2には、赤外線を照射してその反射波の強さを計測することで内壁面に含まれる水分の状態を計測することが記載されている(明細書の段落「0054」参照)。しかし、単に赤外光を照射するだけではコンクリート表面が覆われている状態から完全に露出する湿潤状態の過渡的な変化状態を正しく計測することは困難である。
【0010】
特許文献3では、「近赤外線分光法」を用いて水分状態を定量的に計測すること(明細書段落「0014」及び「0016」参照)及び、近赤外水分計として株式会社ケット製のKJT-130が使用可能であることが記載されている(同「0016」参照)。しかし、この装置は水分量を正確に計測することを目的とするものであり、比較的大きな形態で複雑な構造の装置である。そのため、計測領域の表面の湿潤状態を長い時間にわたり常時観測する用途に使用するには、長期間の連続計測に不向き、湿度の高い環境下での耐久性の確保、消費電力が大きい、データ処理が複雑、複数個所に設置し難い、製造及び運用コストが多い等の観点から種々の問題がある。
【0011】
特許文献4に記載されている発明は、2種類の光を照射して計測し、その計測値を比較するものであり、装置の構造やデータ処理が複雑で計測データ処理にも時間を要し、消費電力も大きいものである。そのため、特許文献3と同様に、長期間の連続計測、耐久性、消費電力、データ処理機能、製造及び運用コスト等の観点から種々の問題があり、採用できない。
【0012】
本発明は、打設直後のコンクリートのような、湿潤状態の過渡的変化状態(又は、過渡的進捗状態)を計測する手段が存在しない等の従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、監視対象又は監視対象領域の表面の湿潤状態を、簡単な構造で監視する装置や方法を提供するものである。打設直後のコンクリート表面に例示されるような、不規則な凹凸を有する計測対象物の表面から水分等の液体がなくなる直前状態を検知可能な光学センサユニットを提供すること、またこの光学センサユニットを用いて、表面を覆う液体が減少して枯渇する過渡的な変化状態を監視する湿潤状態判定装置を提供すること、及びそのような湿潤状態を計測する方法を提供することを目的とする。
【0013】
なお上記発明の課題の説明においては、湿潤状態の計測技術に関する本発明の課題及び有用性を理解する上で、打設直後のコンクリートの湿潤状態を管理する技術が最も適切な先行技術であるとの観点から、打設後のコンクリートの湿潤管理に関する問題点を例示して本発明の課題を説明した。しかし、本発明は打設直後のコンクリートの湿潤管理に限定されるものではなく、液体の枯渇防止の管理、液漏れ管理、降雨量管理その他の用途についても適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した発明の目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る光学センサユニットは、近赤外領域の波長のレーザ光を出射する光源と、該光源から出射された前記レーザ光を偏光した照射光を計測対象の凹凸を有する表面に照射する光学系と、該光学系から照射された前記照射光の反射光を受光して、該反射光の受光量に応じた電気信号を出力する受光素子とを備え、前記反射光の受光量により前記表面を覆う液体の湿潤状態を計測する光学センサユニットであって、
前記光学系は、
光源から出射された前記レーザ光のビームを平行光にするコリメートレンズと、
前記光源から出射された前記レーザ光のP偏光成分又はS偏光成分のいずれか一方を通過させて他方の偏光を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタの下流に設けられ、該ビームスプリッタを通過した前記レーザ光に1/4λの位相差を与えて、照射光として出射する1/4波長板と、
前記計測対象箇所から反射された前記照射光の反射光のうち、前記1/4波長板を通過して前記ビームスプリッタに前記光源とは逆方向から入力され該ビームスプリッタにより分岐される前記反射光を検出光として集光する集光レンズと、
前記集光レンズにより集光された前記検出光を受光して、受光量に応じた計測値を出力する受光素子と、を備えており、
前記ビームスプリッタを通過した前記レーザ光を前記1/4波長板により円偏光のレーザ光に偏光し、該円偏光のレーザ光を前記照射光として空気と前記液体との界面に対して垂直に照射して、その反射光から抽出される前記検出光を計測することを特徴とする。
【0015】
ここで、計測対象の表面の凹凸の形状及び最大高さ等は特に限定されないが、数μmから500μm程度の高さを有することが好ましい。計測対象の表面に人工的に凹凸を設ける場合には、計測対象種類や構造及び計測目的に応じて、凹凸の高さ、形状、範囲、密度を決めることができる。本発明では、円偏光の平行光からなる照射光を、凹凸を有する表面に対して、空気と液体との仮想界面に対して垂直な角度で照射し、その反射光中の検出光を受光素子により受光して電気信号に変換して出力する構成とした。この構成により、受光素子の出力は、液体が計測対象の表面全体を覆っているときには、ほとんどすべての照射光が界面で全反射され、反射光は入射角度と同じ角度で帰還する。そのため反射光の大部分は、照射光が通過した1/4波長板に帰還して、1/4波長板に反対方向から入射する。したがって、計測対象の表面が液体で覆われているときには、照射光の反射光の大部分が検出光として受光素子により検出されることになる。
【0016】
一方、計測対象の表面の一部が露出し始めると、計測対象の表面の凹凸が液面から突出して空気中に出現するため、照射光の凹凸面での反射光は散乱して、1/4波長板の方向には帰還しなくなる。したがって、計測対象の表面の凹凸の一部が露出し始めると、検出光の受光量が急激に減少することになり、正確な検知が可能となる。なお、光学センサユニットが、受光素子の出力を増幅する増幅回路やデジタル信号への変換回路を備えていても良い。
【0017】
このように、円偏光の照射光を空気と液体の界面(水平面)に対して垂直に照射することにより、円偏光の照射光は湿潤状態が100%のときには界面でほぼ全反射して検出光として受光素子入力されるため、受光素子の出力が大きくなる。これに対して計測対象の表面の凹凸の一部が露出すると、露出した凹凸に照射された照射光の大部分は散乱して検出光とはならず、受光素子には届かない。また散乱した反射光の一部は液体に吸収されるために受光素子で検出される検出光は減少する。例えば生コンクリートのように凹凸の最大高さが500μmよりもかなり小さい場合には、表面の一部が露出し始めた段階で水分残量は極めて少なくなっている。したがって、表面の一部が露出すると、蒸発による水分の減少速度も早まるため、計測値は急速に低下する。なお、凹凸は自然に形成されたものであっても、人工的に形成したものであっても良い。
【0018】
また、照射光は表面を覆う液体への吸収率の高い波長の光(例えば水の場合、波長が1450μm又は1940μm等)であることが好ましい。表面の凹凸の一部が露出すると、照射光や露出した表面からの反射光(散乱光)の一部が液体に入射されるため、吸収率の高い波長の光の一部は液体に吸収される。これにより、液体に全部覆われている場合と一部露出したときの受光素子からの出力の差が、より一層明確に表れる。
【0019】
さらに、受光素子を検出光の集光レンズの焦点の位置に配置するのではなく、焦点からはずれた位置に配置しても良い。この構成により、振動等により界面に対する照射光の照射角度が多少変動しても、光学素子による計測値が大きく変動することを抑制することが可能となり、湿潤状態の変化をより正確に計測することが可能となる。
【0020】
また、照射光は、発光デューティの低いパルス列のレーザ光であることが好ましい。このように構成することにより照射光の光源の消費電力及び発熱を抑制できる。また、複数個のパルス照射光を照射して判定することになるので、ノイズの影響を抑制可能であり、湿潤状態のより安定した正確な計測が可能となる。
【0021】
本発明の第1の態様に係る湿潤判定装置は、監視対象の凹凸を有する表面に前記照射光を照射して計測値を出力する上述の本発明に係るいずれかの光学センサユニットと、
前記光学センサユニットを制御して、監視対象表面の前記計測値を取得する制御部と、
前記光学センサユニットから取得した前記計測値を所定の基準に基づいて前記監視対象表面の湿潤状態を判定し、判定結果を出力する判定部と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
監視対象の表面の一部露出したことを感度良く感知できる本発明に係る光学センサユニットを用いることにより、表面の凹凸が露出したことを正確に検出することができ、表面の湿潤状態を迅速かつ確実に判定することが可能となる。例えばコンクリートのような小さな凹凸を有する表面の一部が露出すると、計測値又は計測値の変化速度が急激に変化するので、凹凸が一部露出した過渡的変化状態に入ったと判定することが可能となる。
【0023】
例えば、光学センサユニットの計測値が湿潤率100%から20%以上低下すると、凹凸が極めて小さいことから液体の残量は極めて少なくなっていると考えられる。したがって、過渡的変化状態に入ったら比較的短い時間で、水又は液体が完全に無くなるおそれ(枯渇リスク)がある。そのため、監視対象や監視目的に応じて所定の基準を設定し、計測値の大きさや変化が所定の基準となったときには、警告信号を出力して、必要な対応を促すことが好ましい。この警告信号に基づいて、液体の補充その他各種の対応処理をとることが可能となる。
【0024】
例えば、判定部は、光学センサユニットからの計測値が所定の閾値以下になったときに警告信号を出力する構成、又は計測値が所定の範囲にあるときに警告信号を出力する構成、複数の範囲を設定しておき各範囲毎に異なる警告信号を出力する構成とすることが可能である。例えば、計測値が、前記監視対象の表面全体が液体で覆われているときの値から20%以上低下したときに前記警告信号を出力することにより、計測精度を確保しつつ、完全に液体が無くなる時間までの時間として、比較的長い対応時間を確保することができる。
【0025】
また、前記判定部は、前記所定の時間間隔毎に計測した複数の前記計測値の変化及び/又は変化速度に基づいて、湿潤状態の変化値を算出する演算部と、該演算部で算出した前記変化値に基づいて前記湿潤状態を判定して、前記警告信号を出力するよう構成することもできる。判定に各種ファクターを組み入れることにより、より正確に判定することが可能となる。
【0026】
また、前記湿潤判定装置を移動させる移動機構を設けて、湿潤判定装置を移動可能とすることもできる。この場合には、制御部により、前記湿潤判定装置を所定の計測領域内において移動させて、該計測領域内の複数の計測位置において、前記湿潤状態を計測してするよう前記移動機構及び前記光学センサユニットを制御するように構成して、判定部により、複数の前記計測位置における前記計測値に基づいて、前記計測領域の湿潤状態を判定するよう構成することができる。
【0027】
移動可能な湿潤判定装置において複数の位置で計測した場合において、前記判定部は、前記計測位置の一つ又は複数の前記計測位置において、前記計測値が前記所定の閾値以下になったときに、前記計測領域における前記警告信号を出力するよう構成することができる。計測領域のいずれか一部において液体残量が少なくなったときには、計測領域全体として残量が少ないと判断するものである。
【0028】
移動可能な湿潤判定装置において複数の位置で計測した場合においても、前記判定部は、前記計測位置の一つ又は複数の前記計測位置において、前記計測値が所定の範囲内の値となったときに、前記計測領域全体として又は当該計測領域部について前記警告信号を出力することができる。また、それぞれ異なる計測範囲毎に異なる前記警告信号を出力するよう構成することもできる。
【0029】
さらに、前記判定部は、前記所定の時間間隔毎に計測した複数の前記計測値の変化及び/又は変化速度に基づいて、湿潤状態の変化値を算出する演算部と、該演算部で算出した前記変化値に基づいて前記湿潤状態を判定して、前記警告信号を出力することもできる。これにより、各計測位置毎の変化や変化速度も判断要素として考慮して警告信号を発することが可能となる。
【0030】
本発明の第1の態様に係る湿潤状態の計測方法は、表面に凹凸を有する計測対象に近赤外光領域の波長のレーザ光を照射して、その反射光により前記計測対象の表面を覆う液体の湿潤状態を計測する湿潤状態の計測方法であって、
近赤外光の波長の円偏光の平行光からなるレーザービームの照射光を、前記計測対象の表面に対して空気と前記液体との界面に対して垂直な角度となるように照射する照射工程と、
前記照射光の反射光を、前記照射光の照射開口と同心円上にある受光開口で受光する受光工程と、
前記受光開口で受光した前記反射光を検出光として分岐する分岐工程と、
前記分岐した前記検出光を集光レンズにより集光して受光素子で受光して、該受光素子により受光量に応じた電気信号を出力する計測工程と、
を備えることを特徴とする。
【0031】
前記計測工程において、集光した前記計測反射光を前記集光レンズの焦点位置からはずれた位置に配置された前記受光素子で受光して、受光量に応じた電気信号を出力する構成とすることができ、また、前記照射工程において、前記液体への吸収度の高い波長の光を前記照射光として照射する構成とすることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の光学センサユニット及び湿潤判定装置並びに湿潤状態の計測方法によれば、円偏光したレーザ光による照射光を、界面に対して垂直に照射することにより、湿潤率が100%のときは界面からの全反射により強い反射光を検出光として計測することができる。一方、表面が露出し始めると全反射領域が減少するので、急速に検出光が減少する。本発明はこのような計測値の急激な変化を簡単な構成で迅速かつ正確に計測できるので、計測対象の表面の湿潤状態が変化して枯渇する枯渇リスクを迅速に判定することが可能となる。
【0033】
本願発明の湿潤判定装置によれば、例えばコンクリート等の計測対象の表面全体が完全に露出する前に表面の湿潤度が低下したことを正確かつ迅速に感知することができる。また、収納容器の液体の残量を監視する場合、液体を収納する容器の底面やその他計測対象となる物体の表面の一部又は全体に数μm以上(好ましくは十数μm~数百μm程度)の微小な凹凸を多数設けておくことにより、液体の内容量がなくなったことを正確に計測することが可能となる。これとは逆に、必要に応じて、乾燥状態から湿潤状態に変化したことを正確に感知するような利用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る光学センサユニットの構成を模式的に示す図。
【
図2】コンクリート表面の一部が露出している状態の薄い水膜及び凹凸に照射光が照射されている状態と反射光の例を、拡大して模式的に示す図。
【
図3】異なる水深の異なるコンクリート表面に対して、1450nmの円偏光及び直線偏光の照射光を一定の高さ(50mmの高さ)から照射したときの、計測値を示すグラフ。
【
図4】水深が0mm~0.5mmの間の変化を計測した計測値を示す図。
【
図6】表面が完全に覆われた水深0.5mmコンクリート表面に対して、1450nmの円偏光及び直線偏光の照射光を、照射位置の高さ(照射距離・光路長)を変えて照射したときの検出光の受光量を示すグラフ。
【
図7】コンクリート表面の界面に対する照射角度を垂直からずらして、直線偏光の照射光を照射した計測値を示すグラフ。
【
図8】受光素子17を焦点位置に配置したとき、及び焦点位置から少し後方にずらして配置したときの受光状態及び受光波形のプロファイルを模式的に示す図。
【
図9】コンクリート表面の水が徐々に減少し、水膜が完全になくなる状態まで照射光と全反射の関係をイメージとして説明する図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る湿潤判定装置の機能ブロック図。
【
図12】MPUを用いた湿潤判定装置の実施例の概略構成を示す図。
【
図13】移動可能な湿潤判定装置の外観の概略構成の一例を示す図である。
【
図14】移動しながら計測する湿潤判定装置に搭載する光学センサユニットを実装した光学センサブロックを例示する図であり、(a)は光学センサブロックの正面図を示し、(b)は(a)に示すA-A′線方向の断面図を示す。
【
図15】計測対象領域を移動しながら計測する場合の検出値と移動平均出力を模式的に示す図。
【
図16】水深の異なる環境において、計測装置を移動させながら連続的に計測した計測値を示し、(a)~(d)はそれぞれ計測対象の表面の水深(W)が異なる計測対象を計測した計測値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、計測対象物の表面を覆う液面の状態を監視する本発明に係る光学センサユニット、及びこれを使用した湿潤判定装置、並びに湿潤検査方法について説明する。本発明に係る光学センサユニットは、表面に凹凸を有する各種の監視対象について、表面を液体が覆っているか否かを示す計測データを提供する。打設直後のコンクリートの表面は、数μmから最大でも500μm程度以下の高さを有する不規則な凹凸を有しており、本発明の光学センサユニットによる計測の対象となる。この光学センサユニットを用いることにより、本発明の湿潤判定装置は、湿潤状態の変化を正確かつ迅速にとらえることができる。
【0036】
なお、本明細書では計測領域又は計測ポイントの表面が液体で完全に覆われている状態を100%の湿潤率(湿潤率のことを適宜「湿潤状態」とも称する)とし、表面に液体が完全に存在しない状態を0%の湿潤率(0%の湿潤状態)として説明する。100%の湿潤率から0%の湿潤率である枯渇(又は乾燥)状態に至るまでの液体の減少の過渡的変化状態、又はこれとは逆に湿潤率0%の乾燥状態から湿潤率100%の表面が完全に覆われるまでの液体が増加する過渡的変化状態を、0%~100%の湿潤率で表す。
【0037】
湿潤率は、必ずしも客観的な数値でなくともよく、計測対象の表面の面積に対する液体量の割合や、液体で覆われている表面の面積の割合を示すものでなくても良い。本明細書では湿潤率を、計測対象の表面が完全に覆われた状態(100%の湿潤率)及び表面に液体が全く無い状態(0%の湿潤率)のそれぞれを本発明の装置によって計測してそれを基準値とし、当該基準値に対する、計測値の大きさの割合を湿潤率として使用する。例えば、表面が完全に覆われた状態である湿潤率100%の計測値を「a」とし、表面から液体が無くなった湿潤率0%の計測値を「b」としたときに、計測時における計測値が「c」であるとすると、(1-(a-c)/(a―b))x100=湿潤率(%)とする。
【0038】
本発明では、計測対象箇所の表面に多数の凹凸が存在することにより、湿潤状態を計測が可能となる。凹凸の存在箇所は計測対象となる表面の全部でなくとも、一部であってもよい。一定の範囲に凹凸が複数存在していれば、本発明により計測することが可能となる。複数凹凸のそれぞれの大きさや高さの程度及び形状は、特に限定されないが、計測対象となる表面の一定の領域において比較的微小な凹凸が多数存在することが好ましい。凹凸は人工的に作成したものでも、コンクリートの表面のように自然にできたものでも良い。
【0039】
計測対象箇所の表面に凹凸が無く完全に滑らかな場合には、本発明の計測装置では計測できない。表面が滑らかな計測対象の場合には、計測対象の表面(計測領域の一部でも良い)に凹凸を人工的に設けることにより計測が可能となる。凹凸の目的により凹凸の形状や高さを決定することができる。凹凸の段差面は、垂直な段差面あっても傾斜を有する段差面であっても良い。傾斜面を有する凹凸を設けると、過渡的変化状態において、計測値が傾斜の割合に応じて徐々に変化する計測が可能となる。
【0040】
また、凹凸突出部の高さを階段状に段階的に変化させること、又は凹凸の数や傾斜面積や角度を定量的に変化させること等を組み合わせることにより、計測の精度を制御することや、湿潤率から液体残量を計算することも可能となる。一つの計測対象領域中に高さの異なる凹凸領域を複数設けて、それぞれの箇所を計測することも可能である。
【0041】
以上の説明からも明らかなように、本願発明の光学センサユニット及び湿潤判定装置並びに湿潤状態の計測方法の適用範囲は、コンクリートの養生管理に限定されない。例えば、収容している液体が枯渇していないか否かを監視することも可能であり、各種液体、各種用途での利用が可能である。以下の説明においては、打設直後のコンクリート表面の湿潤管理(養生管理)を例示して説明するが、本発明はこれらの用途に限定されるものではない。
【0042】
以下図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るコンクリート表面を監視する光学センサユニット、湿潤判定装置及び湿潤状態の計測方法を説明する。
打設直後の生コンクリートは流動状態であるが、水和反応が少し進むとコンクリート表面の水がなくなり、粘性を有する粘土状の軟粘状態となり次第に硬化していく。軟粘状態から所定の強度となる強度発現状態に至るまでの数日間は、水和反応に多くの水が必要であり水分が不足しがちであるため、所望の品質を得るために水分を十分に供給することが極めて重要である。
【0043】
打設後のコンクリートは、硬化開始から一定期間、水和反応を促進するために十分な水分を必要とするため、上述した通り、適宜散水してコンクリート表面全体が薄く水で覆われる程度の深さ(数ミリほどの水深)に維持することが望ましい。このようにしてコンクリート表面に一定量保持された水分がコンクリートの内部に浸透することにより、打設後のコンクリートの水和反応に必要な水分が確保される。
【0044】
一方、コンクリートの打設面は広い表面積を有するため散水した水分は蒸発により失われやすい。そのため打設後の生コンクリートの散水管理では、コンクリート表面上に留まっている水分状態の変化を常時監視し、枯渇状態となる前に適宜散水して表面上に水分が保持されている状態を維持する。
【0045】
本発明の光学センサユニットを用いてコンクリート表面を監視する場合には、コンクリートの表面を水が覆っているか否かが監視の対象となる。以下、コンクリート表面等の計測対象の表面の水の状態を説明する用語として、本明細書では、コンクリート等の表面を覆う水を、適宜「水膜」又は「水膜状態」という用語も使用する。
【0046】
まず、本発明に係る湿潤判定装置に使用する光学センサユニットについて説明する。本発明に係る光学センサユニットは、近赤外領域のレーザ光を調整して生成した円偏光の照射光を監視対象箇所に垂直に照射して、所定領域でその反射光を所定領域で受光し、受光した検出光を電気信号として出力する装置である。本発明の光学センサユニットの出力は、湿潤状態100%からそれ以下に減少する過渡的な変化時(又はその逆の0%~100%への変化時)に急激に変化する。そのため、その出力を計測することにより湿潤状態が急激に変化する過渡的変化状態を正確に捉えることが可能となり、湿潤監視装置等のセンサとして使用することに適している。
【0047】
図1は、本発明に係る光学センサユニットの基本概念を説明するため模式図である。例示として、表面が水膜71に覆われたコンクリート表面70に照射光を照射して、それらの反射光を計測する光学センサユニット10の一例を示している。
【0048】
コンクリート表面は拡大してみると不規則な微細な凹凸を有している。しかし説明の便宜上、凹凸のある表面を平均化した平滑な仮想面の意味で使用する場合もある。そのため本明細書においては、平均化した平滑な仮想面を「コンクリート表面70」のように数字“70”を付して示す。一方、コンクリート表面の微細な凹凸や傾斜面が問題となる場合には、「コンクリート面70a」のように数字「70」の後にアルファベットの符号を付して説明する。
【0049】
本明細書では計測対象物(又は監視対象物)に照射する光を「照射光」と称し、液面又は計測対象物から反射した光を「反射光」と称する。また、「反射光」のうち、光学センサユニットに照射光とは逆方向から入射して分岐されて、光学素子で受光する反射光を「検出光」と称する。また、「液体」には水以外の油その他の本発明の本質的機能に反しない液体も含まれる。
【0050】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る光学センサユニットの基本構成を説明する。
図1に示す光学センサユニット10では、光源11から直線偏向された近赤外光の波長のレーザ光を出射する。光源11から出射された出射光20は、所定の照射光学系を経た後に円偏光の平行光のビーム状の照射光21として照射対象領域に垂直に照射される。光源11からの出射光20は、近赤外光が好ましく、後述するように、計測対象の液体への吸収率が高い波長の光(水の場合、1450nm又は1940nm等)がさらに好ましい。照射光21は、空気と水の界面72(水面)に対して垂直に照射される。
【0051】
光源11から出射されたビーム状のレーザ光である出射光20は、コリメートレンズ12により平行光となるように調整(コリメート)されて、ビームスプリッタ(以下、「PBS」と称する)13に入射される。なお、出射光20の出力及び照射光21のビーム径の大きさは、計測対象の表面や液体の反射特性と、受光感度、装置の小型化と計測感度に基づいて適宜決めることができる。消費電力を抑えつつ正確かつ安定して計測するために、照射光のビーム径の大きさは特に限定されないが、概ね1mm~5mm程度の径、より好ましくは3mm程度とすることが望ましい。
【0052】
また、デューティ比の小さいパルス列で光源11を駆動することにより、消費電力を抑制することが可能となる。計測時における光源から計測対象物までの計測距離は、用途によって適宜設定することができるが、生コンクリートの湿潤度の計測の場合には、30mm~100mm程度が好ましく、より好ましくは50mm以下30mm以上とすることが望ましい。ビーム径は例えば
図1に示すような開口部(照射開口)15により規定することができる。
【0053】
PBS13は入射した光をS偏光の光とP偏光の光に分離し、S偏光の光又はP偏光の光の一方を反射し、他方を通過させる機能を有する光学素子である。以下の例示では、PBS13によりP偏光がカット(反射)され、S偏光が通過する機能を備えるものとして説明する。光源11から出射されたビーム状の直線偏光のレーザ光である出射光20はコリメートレンズ12により平行光とされ、出射光20のP偏光の光がPBS13でカット(反射)されて、平行なS偏光のレーザ光のビームが1/4波長板14に入射される。1/4波長板14は、入射光に1/4λの位相差を与える光学素子である。
【0054】
本発明においては、PBS13を通過したS偏光の光を、1/4波長板14により円偏光の光に変換して照射光21としている。これにより、PBS13を通過した後のS偏光の出射光20は、1/4波長板14により1/4λの位相差を与えられて円偏光の平行光からなるビーム状の照射光21として、コンクリート表面に照射される。その際、照射光は空気と液面との界面に対して垂直な角度(水平面に対して垂直な角度)となるようにコンクリート表面70に対して照射される。なお、ここで水平面とは、人工的に創出した重力(例えば遠心力等)に対する水平面も含む概念として用いている。
【0055】
照射光21は、空気と液面との界面に対して垂直に照射される小径ビームの平行光からなる光の束である。円偏光された照射光21が界面に垂直に照射されると、界面72が存在する場合には反射光22は全反射して照射光21と同じ角度で逆方向に帰還し、照射光21と同じ開口部15(この場合には、「受光開口」となる)から1/4波長板14に逆方向から入射する。
【0056】
今、コンクリート表面70全体を厚さ数ミリメートル程度の水膜71が覆っているとすると、照射光21は空気と水の界面72に対して垂直に照射される。照射光21は円偏向の平行光であり、界面72に垂直に入射されるため、照射光21は界面72で全反射されその反射光22は円偏光のまま1/4波長板14に反対方向から入射する。
【0057】
照射光21と反対方向から1/4波長板14に入射した円偏光の反射光22は、1/4波長板14により1/4λの位相差が与えられてP偏光のレーザ光に変換される。すなわち、出射後にPBS13を通過したS偏光の出射光20は、1/4波長板14を往復2回通過することにより位相が90度ずれてP偏光の反射光22となる。
【0058】
P偏光の反射光22はPBS13を通過せずに反射されて分岐されるので、検出光23として集光レンズ16に入射される。集光レンズ16は、入力された検出光23を例えばフォトディテクタのような受光素子(以下「PD」と称する)17に向けて集光する。PD17は入射された検出光23の受光量の大きさに応じた電気信号を計測値として出力する。
【0059】
光学センサユニット10においては、コリメートレンズ12、PBS13、1/4波長板14、及び集光レンズ16により、光学系25が構成される。この光学系25中の、コリメートレンズ12、PBS13及び1/4波長板14が照射光学系25aを構成しており、1/4波長板14、PBS13及び集光レンズ16が受光光学系25bを構成する。
【0060】
図1に示すように、コンクリート表面70全体が水膜71に覆われているときには、円偏光の照射光21が界面72に対して垂直な角度で照射されることになる。照射光21は円偏光の平行光のビームであるため、コンクリート表面70全体が水膜71に覆われているときには、照射光21が界面72に垂直に照射されると、大部分の照射光21は全反射(鏡面反射)して反射光22として1/4波長板14に帰還する。そのため、コンクリート面70a全体が水膜に覆われているときには、大量の検出光23がPD17により受光されて比較的大きな検出光となり、大きな電気信号(計測値)が出力される。これに対して、表面の凹凸が一部露出すると、照射光21の一部は露出したコンクリートの凹凸面の乱反射により散乱して、1/4波長板14に帰還する反射光22が少なくなり、検出光23は減少して、計測値が小さくなる。
【0061】
図2は、コンクリート表面を覆う水膜71の厚さが減少してコンクリート面70aの一部が露出している状態のコンクリート面に、照射光21が照射されたときの反射光22の状態を例示するものであり、照射光21が照射される領域の一部を拡大して模式的に示した部分拡大図である。
【0062】
コンクリート面70aは、照射光21として使用する近赤外光の波長の大きさである1000~2000nmレベルに拡大して観察すると種々の角度の複雑な凹凸面を多数有している。コンクリートに照射される照射ビーム径1mm~5mm程度の照射領域(照射ビーム)は、照射光21の波長に比べると約1000倍以上大きい。
図2は、反射光22の状態を示すために、コンクリート表面が一部露出した状態を拡大して、照射光21及びその反射光22を模式的に表したものである。
【0063】
表面の一部が露出したとしても、水が残っている部分では、照射光21は空気と水の界面72に垂直に照射される。したがって、界面72に照射された照射光21は、全反射して照射光21がほぼそのまま反射光22として光学センサユニットに帰還する。しかし、コンクリート面70aに照射された照射光21は、コンクリート面70aの複雑な凹凸面の傾斜角度に応じて複雑に反射し各方向に散乱するため、コンクリート面70aからの反射光22は光学センサユニットの開口部15にはほとんど帰還しない。
【0064】
そのため、表面が乾燥して界面72が下がりコンクリート面70aが多く露出すると、凹凸の露出面積に応じて検出光23の量は急激に減少していく。コンクリートの凹凸の高さが極めて小さい場合には、コンクリート面70aの小さな凹凸の一部が露出したということは、水深が凹凸の最大高さ以下になっており極めて浅い水深となっていると考えられる。したがって、コンクリート面70aが一部でも露出すると、残りの水分も水分蒸発により急激に少なくなり、比較的短い時間で完全に水が無くなるものと解される。
【0065】
図3は、1450nmの円偏光のレーザ光と直線偏光のレーザ光を、50mmの高さから水深の異なる計測対象箇所に、垂直に照射したときの計測値を示すグラフである。なお、温度26℃~27℃、及び湿度は55%~56%で計測を行った。グラフからわかるように、円偏光のレーザ光を照射した計測値では、水深が0mmのときの出力は200mVであるが、水深0.5mmになるとは計測値は約1400mVに変化しており、その後水深0.5mmから増えても計測値は一定の状態(約1400mV)に維持されて、ほとんど変化がない。
【0066】
これは水深0.5mm以上になるとコンクリート表面の凹凸が完全に水で完全に覆われていることを示しており、凹凸の最大高さが水深0mm~0.5mmの範囲内にあることを示している。また水深が、0mm<水深<0.5mmのいずれかの時点で、凹凸面が露出し始めたとときから出力が急激に変化する過渡的な変化状態となることを示している。
図3の計測値から、表面の凹凸が水で覆われた状態であれば、水深が増減しても計測値は安定しており、ほとんど変化しないことがわかる。これは、円偏光の照射光21を照射したために、コンクリート面70aが水で覆われた状態では、水深に関係なく全反射により照射光21のほとんどが帰還するため、一定の計測値が出力されたものと解される。
【0067】
このように。円偏光の照射光21を照射することにより、表面が水(液体)で覆われている場合には安定した計測値(基準値)を得ることができるので、計測値が基準値から急激に減少したときには、計測対象の表面の凹凸の一部が露出したことを正確に判定することが可能となる。
【0068】
これに対して、直線偏光のレーザ光を照射した場合には、水深が0mm~0.5mmの範囲であっても、0.5mm~3.5mmの範囲であっても計測値が緩やかに変化(減少)しているだけであり、凹凸の一部が露出したことに伴う急激な変化はない。したがって、直線偏光のレーザ光による反射光の計測値では、凹凸の表面の一部が露出する過渡的な変化状態を、明確な計測値に変化として捉えることは難しい。
【0069】
図3では、水深0mm~0.5mmの間の計測をしていないため、この間の変化をもう少し細かく区切って計測した計測値を
図4に示す。ただし、0.5mm以下の水深を正確に設定することは難しいため、0.5mmよりも小さい水深状態(水深<0.5mm)、さらに小さい水深状態(<<0.5mm)、及び水深0mmを作成してそれぞれ計測した結果を示している。なお、
図4では、照射位置(高さ)が35mmであり、
図3の計測よりも少し低い高さで計測している。
【0070】
図4からわかるように、0.5mmよりも小さい水深(<0.5mm)では、凹凸が水で覆われている水深0.5mm以上の状態と同じ計測値(約1900mV)である。この計測値から、水深<0.5mmであってもコンクリート表面は水で覆われていることがわかる。水深が、水深<<0.5mmとなると、計測値が約1300mVとなり、計測値が下がっていることから、コンクリート表面の凹凸の一部が露出し始めたことがわかる。この状態から水深0mmになると、計測値700mVと、計測はさらに減少する。なお、
図4の計測値が
図3の計測値よりも大きいのは、増幅回路の増幅率の設定の違いによるものである。
【0071】
なお、光学センサユニット10では、近赤外光に属する波長を使用することが望ましいが、特に表面を覆う液体(打設直後のコンクリートの場合は水)に吸収されやすい波長の光を使用することがより好ましい。表面の凹凸の一部が露出して散乱した反射光を受光した場合に、吸収率の高い波長の光は液体に入射したときに吸収される。そのため、散乱して液体を通過後に受光した検出光は小さくなり、凹凸部が完全に覆われている状態と、一部露出した状態の受光素子の出力の差がより明確になるからである。
【0072】
図5は近赤外光の水による吸収特性を示す図である。
図5に示すように、波長1450nm及び1940nm前後の近赤外光は水に対する吸収係数がピーク値となり、ピーク値の前後の波長の光では水に対する吸収係数が低下するという性質を有している。そのため、水の場合には、1450nm又は1940nm等の波長の光を用いることが好ましい。以下の説明においては、一定の例外を除き、光源として水に吸収されやすい波長である1450nm波長を使用することを前提として説明する。
【0073】
図6は、1450nmの円偏光のコリメート光(平行光)と直線偏光のコリメート光を、照射位置(高さ=照射距離・光路長)を40mm~60mmの範囲で変化させて、水深0.5mmの水面に対して垂直に照射したときの計測値の変化を示すグラフである。円偏光のコリメート光の場合、高さを変化させても、計測値はほぼ均一の約2300mVの出力となっている。円偏光のコリメート光は水面(界面)において全反射されるためである。これに対して、直線偏光のコリメート光では、照射位置が高くなると計測値が小さくなり、高さ依存性があることがわかる。これは、直線偏光のコリメート光の場合には、水面(界面)において反射されず、水の中に入射して水の下にあるコンクリート面で反射するが、コンクリート面で反射する時は拡散反射になるためである。
【0074】
次に垂直方向に照射するレーザ光の照射角度が90度から少しずれた場合について、計測値への影響について考察する。
図7のグラフは、直線偏光のレーザ光で計測したものではあるが、コンクリート表面の界面72に対する照射角度が垂直から若干ずれた角度(仰角)で照射された場合の計測値を示している。水深はコンクリート表面の凹凸の一部が若干露出する水深0mm~0.5mmで、照射位置は50mmで計測した値である。垂直では計測値が200mVであり、垂直からのずれ角度が(仰角)4.5度まで徐々に変化し、それ以上の角度になると、一定値となっている。
図7の計測値から、垂直から4度以上ずれると、計測が難しくなることがわかる。照射角度のずれの影響は、どの程度の仰角まで計測可能かは差があるとしても、円偏光のレーザ光においても同じような影響があるものと推察される。
【0075】
以上の説明からもわかる通り、本発明に係る光学センサユニットでは、円偏光の平行ビームの照射光21を界面72に対して垂直に照射することが好ましい。また、この垂直な照射状態を常に維持でき、外部ノイズの影響が小さい場合には、受光感度の高い集光レンズ16の焦点の位置に受光素子17を配置することが好ましい。しかし、計測装置や計測対象の振動などの影響により照射光21の照射角度を垂直に維持することができないこともある。
【0076】
特に、光学センサユニット10を移動させながら複数の計測位置において計測する場合などの場合には、照射光の角度が移動に伴う振動や移動床面の凹凸などにより照射光の照射角度が微妙に変化する。そのため、照射光21を常に界面72に対して垂直に照射することができない場合もある。照射角度が界面72に対して垂直に照射されないと、検出光が急激に小さくなり、受光素子の計測値が小さくなり、誤検知する恐れがでてくる。
【0077】
例えば光学センサユニットを移動させながら計測する場合のように、照射光21の照射角度を常に垂直に維持することが難しい場合には、本発明の光学センサユニットの受光素子17を、集光レンズ16の焦点の位置から少しずらした位置に配置する構成とすることもできる。これにより、誤検知リスクを抑制することが可能となる。
【0078】
図8は、受光素子17を、集光レンズ16の焦点の位置に配置した場合と、焦点の位置から少しずらして配置した場合において、受光素子17上での検出光23の広がり範囲と、受光量の強度の関係を示す図である。
図8(a)は焦点位置に受光素子17を配置した場合の、検出光23の広がり範囲61と受光量の強さを示す波形61aを示し、
図8(b)は焦点の位置がから後方に1mmほどずらしたときの、検出光23の広がり範囲62と受光量の強さを示す波形62aを示している。
【0079】
受光素子17を集光レンズ16の焦点の位置に配置すると、効率的に検出光23の受光量に応じた計測値を得ることができる。しかしその反面、焦点位置に配置して受光すると検出光23の変動に敏感に反応するため、光源の位置が僅かに上下動するなどにより照射光21の界面72への照射角度が少しずれただけで、受光素子17の計測値が大きく減衰する。そのため、表面の凹凸が水で覆われた状態であっても、僅かな上下動振動により照射角度がずれて、計測値が大幅に変動する恐れがある。
【0080】
これに対して、受光素子17を焦点の位置から少しずらした位置に配置すると、受光量の強さ(ピーク値)は低くなるものの、ビームプロファイルが広がり、計測値が比較的なだらかに変化するビームプロファイルとなる。ビームプロファイルが広がると、ピーク値周辺の広い範囲で検出値が急激に変化しないので、少し角度が変わっても検出量の変動は少ない。一方、焦点の位置からずらして配置することにより検出量は低下するが、湿潤率100%の界面からほぼ全反射して反射光を受光するときには検出光の量が多い。そのため、受光素子17の位置を焦点から1mm程度ずらして配置しても、水面(界面)を十分検出可能な計測値を得ることができる。
【0081】
一方、水膜が少ない状態の拡散反射光では、プロファイルはさらに広がり、検出される光量は低出力となる。したがって、受光素子の配置を焦点から1mm程度ずらしても、界面を検出する計測値を得ることは十分可能であり、界面の“有り”/“無し”のデジタル出力だけでなく、計測値をアナログ出力することも可能である。このように、受光素子17を焦点位置から少しずらして配置することにより、振動等により照射光21の界面72への照射角度が垂直方向から多少ずれる恐れがある場合でも、安定して計測を維持することが可能となる。
【0082】
このように、受光素子17を集光レンズ16の焦点位置からずらして配置することにより、光学センサユニットを移動しながら計測する場合などには、凹凸の露出を誤検知することを抑制することが可能となる。
【0083】
図9は、コンクリート表面に水が十分ある状態から徐々に減少し、水膜が完全になくなる状態までにおける照射光21(照射ビーム)と水膜(界面)における全反射の関係をイメージとして説明する図である。
図9の(a)は表面に十分な水がある状態であり、(b)、(c)と徐々に水が少なくなり、(d)は表面に完全に水がなくなった状態を示している。濃い水平線で示しているのが照射光21のビーム内の界面72であり水膜71と空気との境目を示している。
【0084】
この界面72の領域は界面72に対して垂直に円偏光の照射光21のビームが照射されるので、鏡面反射(全反射)して強い検出光が得られる(全反射により、照射光と反対方向に反射光22が帰還する)。この界面(水膜)は凹凸の露出が多くなるにつれて、
図9の(a)、(b)、(c)と徐々に少なくなり、(d)ではほぼ完全になくなっている。
【0085】
水膜71が減少して水平な界面72が少なくなると、仮にコンクリートの凹凸の表面に薄い水膜71が貼りついていたとしても、照射光21は凹凸表面の水膜71には垂直に照射されない。そのため照射光21は表面の薄い水膜71を透過して、コンクリート表面で反射して散乱光となる。照射光21は1450nmの波長の光なので、表面の水膜71に入射するとその一部は水に吸収された後、散乱光となる。散乱光は極一部を除き受光光学系25bには帰還しないため、計測値は大きく減少する。このように凹凸の一部が露出して、水平な界面72が少なくなると、このような散乱と水への吸収により検出光23は急激に減少し、計測値は急激に小さくなる。
【0086】
コンクリート表面の凹凸は非常に小さいため、
図9(b)の状態になると、(b)から(d)までの遷移は非常に短い時間で起こるものと考えられる。コンクリートの表面の凸凹に対して照射光のビーム径が十分に大きい場合、 受光素子17で検出される光量は、水膜が減少してどの位凸凹の表面が露出した状態であるか、その露出比率に応じて変化するため、計測値に基づいて過渡的変化状態のコンクリート面の露出率又は湿潤率等を計算することが可能となる。
【0087】
以上の説明から明らかなように、本発明の光学センサユニットは、近赤外光領域の波長のレーザ光を円偏光に調整して、表面に凹凸を有する計測対象に計測対象の界面に垂直に照射して、その反射光を計測することにより前記計測対象の表面を覆う液体の湿潤状態を計測する湿潤状態の計測方法を用いるものである。
【0088】
さらに詳しく説明すると、この計測方法は、近赤外光の波長の円偏光のレーザービームの照射光を、計測対象の表面に対して空気と前記液体との界面に対して垂直な角度となるように照射する照射工程と、照射光の反射光を、照射光の照射開口と同心円上にある受光開口で受光する受光工程と、受光開口で受光した前記反射光を検出光として分岐する分岐工程と、分岐した前記検出光を集光レンズにより集光して受光素子で受光して、該受光素子により受光量に応じた電気信号を出力する計測工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0089】
また、計測工程においては、集光した前記計測反射光を前記集光レンズの焦点位置からはずれた位置に配置された前記受光素子で受光して、受光量に応じた電気信号を出力することも可能であり、また、照射工程において、前記液体への吸収度の高い波長の光を前記照射光として照射することも可能である。この方法は、表面を多く液体が水以外であっても適用可能である。
【0090】
次に、本発明に係る光学センサユニットを用いた湿潤判定装置の構成について説明する。
図10に本願発明の一実施形態係る湿潤判定装置の機能ブロック図を示す。
図10に示す本発明の一実施形態に係る湿潤判定装置40は、光学センサユニット10と判定ユニット41により構成されている。光学センサユニット10により計測した計測値に基づいて、判定ユニット41により湿潤量が判定されてその結果に応じて、判定信号または警告信号等が出力される。
【0091】
図10中、実線の矢印は電気信号又は電力の接続を示し、破線の矢印は光を表している。なお、光学センサユニット10と判定ユニット41の間のインターフェース、及び外部とのデータ入出力のインターフェースについては記載を省略している。判定ユニット41はCPU、各種メモリ、レジスタなどを含むハードウエアとメモリに記憶したソフトウェアとにより構成することができる。また、このようなソフトウェア等による判定ユニット41の一部又は全部の機能を、集積回路を含む電子回路・電気回路として構成することも可能である。
【0092】
判定ユニット41は、光学センサユニット10を制御して計測領域の計測値を取得し、データ記憶部43に記憶し、取得した計測値に基づいて演算部44で演算して判定部45で計測箇所の湿潤状態を判定し、判定結果に関する情報及び必要に応じて計測値等のデータを出力することができる。制御部42は、所定の処理手順に従って光源11を駆動して照射光21を計測対象に照射し、その反射光22に基づいて生成される検出光23を受光素子17で計測させ、取得した計測データに基づいて判定ユニット41の内部動作等の一連の動作を制御する。照射光21の照射時間及び照射回数、照射間隔は、制御部42により自由に設定できる。
【0093】
演算部44は、予め記憶しているソフトウェア等により、取得した計測値及び予めデータ記憶部43に記憶している基準データ等に基づいて各種の演算を行い、湿潤率、変化速度等を算出することが可能である。また例えば、判定部45による湿潤率の判定は、データ記憶部43に判定に使用する基準データを記憶しておき、その基準データと実際の計測データ(計測したデータ又は算出したデータ)を比較することにより実施することができる。
【0094】
基準データは、例えば、計測(監視)を開始する前に、予めその計測対象領域を湿潤率100%にした状態及び湿潤率0%にした状態にして、それぞれ当該計測装置で計測して、その計測値又はその計測値から算出したデータを、湿潤率100%及び0%の基準データとしてデータ記憶部43に記憶しておくことができる。または、表面を覆う液体の高さ(水深)、温度、湿度、液体の種類毎に、予め各種環境毎の基準データを作成して、データ記憶部43に記憶しておくこともできる。湿潤率のレベルを段階に分けて複数種類の基準データを記憶しておくことも可能である。
【0095】
判定部45による判定結果は、湿潤率のレベルを段階に分けて複数種類の判定結果を出力することができる。また、計測値をそのまま出力することも可能である。判定結果や計測結果は制御部42に送られて、制御部42を介して、目的に応じて各種の外部の装置(以下、「外部装置」と称する)に出力される。例えば、コンクリートの湿潤管理に利用する場合には、判定結果は、散水制御装置に送信されて、散水するかどうかの制御データとして使用される。
【0096】
光学センサユニットによる計測は、単純に一定時間照射光を照射して計測しても、単一パルスを照射して計測する構成としても良いが、複数のレーザパルス列を照射光として照射して計測することにより、正確な判定が可能となる。
図11に、複数のパルス列を照射して、複数のパルス列に基づいて一定期間ごとに判定を繰り返す構成とした場合の光源11の発光パルスのタイミングチャートを例示する。
図11(a)は、発光パルスの幅と各発光パルス間の時間間隔を示す図であり、(b)はパルス列を例示しており、(c)は、パルス列ごとの各判定のタイミングをわかり易く示すために、時間軸を長くして複数のパルス列を示したものである。
【0097】
例えば
図11(a)に示すように、低い発光デューティ比(発光時間が短く各パルスの発光間隔が長い)複数のパルスからなるパルス列により光源11を駆動する。これにより、短いパルスの円偏光の照射光21が一定の時間間隔で複数個照射される。発光パルス波形を短くして各パルス間の発生間隔を長くするとこにより、光学センサユニット10及び装置全体の消費電力を抑えることができる。また複数のパルスを計測して判定することにより、外部ノイズ等の影響を抑制することができる。
【0098】
各パルス毎に照射光21が照射されて、その反射光22がそれぞれ検出光23としてPD(受光素子)17により順次計測される。判定ユニット41は光学センサユニット10から受信した計測値をデータ記憶部43に記憶し、演算部44により適宜各種の演算を行い、演算結果に基づいて判定部45により湿潤状態を判定する。演算部44は一つのパルス列の複数のパルスの平均値又は合計値を演算して、その結果に基づいてパルス列ごとに湿潤率を判定することができる。これにより、ノイズの影響や振動による計測値の変動による誤差を抑制することが可能となる。また、パルス列ごとに、パルス計測値を合計して判定すること、又はパルス列間の演算結果(合計値や平均値等)の変化に基づいて、湿潤率を判定しても良い。
【0099】
判定ユニット41は、CPU(又はMPU)、記憶部、各種インターフェース、バスラインからなるハードウエア及び記憶部に記憶される各種ソフトウェア(OS及び処理手順プログラム等)で構成することができる。またハードウエア回路で構成することも、これらとファームウエアを組み合わせて構成することもできる。
【0100】
図12にMPUを用いた湿潤判定装置の実施例の概略構成を示す。記憶部及び処理手順プログラムその他のソフトウェアなどはMPUに含んでいる又は省略して記載しているものとする。湿潤判定装置46では、第2の実施形態に係る光学センサユニット47と、該光学センサユニット47を制御して計測及び判定を行うMPU、電源PS、及び光源11を駆動する光源駆動部(LDD)が主な構成要素であり、光学センサユニット47からの出力を増幅する増幅器(AMP)、モニタ用受光素子48のフィードバック回路(APC)、温度センサ49とを備えている。
【0101】
モニタ用受光素子48は、光源11のレーザの出力特性が温度等の要因によって変化し易いため、光源11の駆動部LDDをAPC(Automatic Power Control)により駆動制御して、光源の出力が一定となるようなサーボループを形成して、光源11の安定的な駆動を確保するものである。光源11の出力値は、ボリューム又はMPUのD/Aの出力により設定することができる。
【0102】
光学センサユニット47において、PBS13は一つの偏光ビームを通過させて、他の偏光ビームは反射させる。
図12示す湿潤判定装置46の光学センサユニット47では、照射光21として使用しない偏光ビームをモニタ用受光素子48により受光してAPC出力することにより、APCサーボループにより光源11が安定して一定の出力を維持するように駆動制御する。
【0103】
MPUはLDD(光源駆動部)に対して、光源11からレーザパルスを出射する。
図12の例では、MPUにより光源11を駆動するパルスを生成して駆動部LDDに出力しているが、専用のハードウエアでパルス列を生成するように構成することも、MPUとハードウエアを組み合わせてパルス列を生成するように構成することも可能である。しかし、MPUのソフトウェアによりパルス生成を制御する場合には、発光周期を自由に設定することや、ソフトウェアの変更により容易に発光駆動制御のパターンを変更することが可能となる利点がある。
【0104】
照射光21の反射光22が検出光23として受光素子17により検出されて、受光素子17により光から電気信号に変換された出力は、AMP(増幅器)によって増幅されてMPUのADC(アナログデジタル変換回路)に入力される。水膜が無い場合には、受光素子17から出力される電気信号は小さな出力があり、この出力はコンクリートの表面の状態に応じて変化する。この水膜の無い状態のときの出力がほぼ“0”としてADCに入力されるように、AMP回路で調整する回路を設けることが好ましい。具体的には、コンクリートの凹凸を模したミラー等を作成してこの調整を行うことになる。
【0105】
水膜が凹凸面を覆っている場合には、鏡面反射(ほぼ全反射)となる。この状態は、水膜を模した平滑なガラスなどを使用してAMPの増幅率の調整を行い、水膜がある場合と判断する出力電圧値(閾値以上の値)を得られるように調整することができる。このようにAMPにより増幅、調整された計測値はMPUなどによってA/D変換されて、その結果(判定結果)や計測値を外部装置に出力する。例えばコンクリートの散水管理などを行う外部装置では、判定結果や計測値を散水制御管理などの制御データとして利用することができる。
【0106】
なお、
図12の例では、湿潤判定装置46は、計測データや判定データに基づいて散水制御などを行う外部装置以外に、環境ユニットにも接続されている。環境ユニットとは、光学センサユニット47で計測する計測現場(環境)の温度、湿度、計測対象(例えばコンクリート)の表層温度などの各種条件を計測する装置であり、環境ユニットからのデータに基づいて、計測データや判定条件を補正又は修正するように構成することができる。
【0107】
例えば、湿潤判定装置が自動走行で広いコンクリート打設面を計測する場合には、多くの時間がかかることが想定される。場所によっては、既に水膜が無くなっていることも考えられる。そのため、光学センサユニットの計測値と、環境ユニットの計測データの双方に基づいて、計測対象領域全体の水膜の変位をより正確に予測することが可能となる。
【0108】
図13は、移動しながら各種計測地点を計測する移動可能な湿潤判定装置の概略構成の一例を示す図である。移動可能な湿潤判定装置50は、光学センサユニット47、制御ユニット51、バッテリー52、移動機構53を備えている。制御ユニット51は
図10に示す判定ユニット41の機能と、走行や移動ルート等を制御する機能を備えており、移動機構53は移動用の台車及び駆動源及駆動機構(図示省略)と車輪等をそなえており、制御ユニット51に基づいて移動ルート、移動速度などが制御される。制御ユニット51は内部に自動走行プログラムを内蔵していても、無線により外部装置により制御する方式としても良い。
【0109】
図13では、車輪による移動機構53の例を示したが、これに限らず、種々の移動機構を採用することができる。例えば、移動案内ガイドと駆動機構を用いて移動する構成としても良い。また移動のための駆動装置としては、油圧や高圧空気によるピストン駆動、螺旋シャフトの回転による駆動、ワイヤによる駆動等の各種従来技術を用いることも可能である。
【0110】
図14に、移動しながら計測する湿潤判定装置に搭載する光学センサユニットを実装した光学センサブロック55を例示する。
図14(a)は光学センサブロック55の正面図を示し、図(b)は(図)(a)に示すA-A′線方向の断面図を示す。
図14に示す光学センサブロック55は、熱伝導率の良いアルミ又はステンレス材料の筐体で囲まれた光学センサユニット56と、該光学センサユニット56の筐体と熱抵抗が少ない状態で接触した状態でその外面を覆う熱伝導率の高い材料から成る放熱ブロック57と、さらにその外側を覆う外装箱58とを備えている。放熱ブロック57と外装箱58の間には、空気を循環させる放熱空間68が設けられている。外装箱58には吸気口63と排気口64及びファン65が設けられており、吸引口63から吸引した空気を、放熱空間68を介して循環させながら排出口64から排出して放熱空間68の空気を循環移動させている。吸気口63と排気口64は逆に配置しても良い。電源ケーブル、通信ケーブルは、入出力コネクタ部66を介して接続される。
【0111】
コンクリート表面の状態を監視する計測環境は、湿度が高い上に外気温に応じた高温又は低温の環境、さらに直射日光に晒されるなどの厳しい環境が想定される。そのため、光学センサユニット56は、高湿度を前提にした高温又は低温環境下においても、結露を防止しつつ、温度や直射日光による影響を防止して、安定した計測動作を長時間持続できることが必要となる。
【0112】
そのため、
図14に示す光学センサブロック55では、光学センサユニット56を熱伝導性の高い材料(例えばステンレス又はアルミニウム)からなる放熱ブロック57で覆って、レーザ光源等の光学センサユニット56の内部で発生する熱を、放熱ブロック57を介して放熱空間68に速やかに放出するようにしている。放熱空間68はファンにより外気を取り入れ排出するように循環されて、結露を防止している。また、直射日光は外装箱58及び放熱ブロックにより遮蔽されるので、直射日光の影響も防ぐことができる。
【0113】
なお、
図14において光学センサユニット56の1/4波長板14を斜めに配置しているのは、レーザ光源からの出射光が反射して、反射光がレーザ光源に帰還することを防止するためである。また、
図14の1/4波長板14の右側には光の緩衝空間18を設けている。これは、1/4波長板14により僅かに反射した出射光を緩衝空間18の内部で順次反射させて吸収消滅させるための光のダンパーとして機能させるために設けられたものである。
【0114】
また、湿潤判定装置50を移動させながら計測する場合、計測対象表面(床面)の凹凸その他により振動その他の影響をうけて、計測値が大きく変動する可能性がある。このような物理的な振動や衝撃に対応するために、光学センサブロック55では、光学センサユニット56を含む外装箱58が載置される台座板59と、移動機構53のフレームに光学センサブロック55を取り付けるフレーム板60の間に弾性部材(スプリング等)62を設けている。このように、光学センサブロック55を弾性部材又はダンパー等の緩衝部材で支える(又は、バネ等で支える又は吊るす)ことにより、上下動や横揺れによる直接な振動を抑制することも有効である。
【0115】
また、
図14の例では、照射光21を下方に垂直に照射するための角度調整を目的とする調整機構として、台座板59を上下に移動させる4つの調整ネジ61を設けている。角度の調整は、3点支持による調整機構でも良いが、移動機構(台車等)が旋回する際の横方向の遠心加速度によりバネ応力が斜めに作用する影響を緩和するため、このように4点で支持する調整機構とすることが望ましい。なお、角度調整は
図14のように手動で調整する調整機構を設けて良いが、計測対象面の近くにレーザ光を照射して、その反射光により垂直度を自動的に計測して、傾きが生じたときには自動調節するように構成しても良い。
【0116】
図15は、計測対象領域を移動しながら計測する場合の検出値と移動平均出力を模式的に示す図である。
図15の例では、表面の水がかなり蒸発して計測対象領域の表面の凹凸が多く露出して、水膜71は複数の島状に囲まれている箇所にのみ残っており、島状の水膜71の中にも一部凹凸が露出している箇所73がある状態を示している。複数の島状の水膜71を横切る横方向の矢印が湿潤判定装置の移動方向を示しており、下の2つのパルス波形が、計測値(検出値)と、移動平均出力を例示している。
【0117】
検出値は、水膜71が無い場合にはほぼ“0”の出力であり、水膜71が存在しているところが “1” 湿潤率100%としてあらわれている。また、移動しながら間欠的に計測すると、すべての場所で計測できない可能性があるため、移動平均をした値を扱う事で、計測対象領域全体の水膜の状態を反映した見取り図の作成や、散水の制御が容易となる。
【0118】
例えば、散水制御を行う場合に、水膜が存在するところを100%として、移動平均出力が10%以下のところを水膜が消滅したと定義し、50%を水膜が消えかかっていると定義して、50%となった場合に散水を開始する制御を行うなどの制御を行うこともできる。また、凹凸面の一部が露出し始めると急激に乾燥が進むことから、乾燥リスクをできるだけ低減するために、20%程度少なくなった湿潤率80%~70%の計測値の段階で、散水を開始するように制御しても良い。
【0119】
図16(a)~(d)は、それぞれコンクリート表面の水深が異なる計測対象について、計測装置を移動させながら計測した計測値を示している。照射光として波長1450nmの円偏光のレーザ光と直線偏光のレーザ光とをそれぞれ照射して、 照射光の高さ35mm、計測装置の移動速度は約 5cm/秒、計測間隔 5秒で計測した値である。
図16(a)は、水深=2.0mm、(b)は、0.5mm>水深>>0.5mm、(c)は0mm>水深>>0.5mm、(d)は水深=0mmである。
【0120】
直線偏光のレーザ光では、コンクリートの表面が水で覆われている状態を含め、コンクリート表面に水が存在している(a)~(c)のすべてにおいて、計測値が変動したばらついた値となっている。これは、計測装置の移動による水面の揺れによる影響、さらに直線偏光のレーザ光では表面が水に覆われていても水膜内に入射してコンクリート面によって反射するため、水の下のコンクリートの状態が場所によって変わるためであると解される。
直線偏光のレーザ光ではこのように計測値が上下に変動するため、計測値に基づいて凹凸面が一部露出したか否かを判断するのは困難である。
【0121】
これに対して、円偏光のレーザ光で計測した場合、表面が水で覆われている(a)、(b)では、約2000mV安定した計測値である。(c)は、0.5mmよりもかなり浅くなった状態である「0mm<水深<<0.5mm」の計測値を示しており、水膜が少なくなり凹凸の表面が露出する水深(W)である。(c)では、水膜のある個所と、水膜の無い箇所で計測値が大きく変化しており、表面の一部が露出すると水膜の有無により計測値が大きく変化する。
【0122】
水深が浅くなり
図16(c)で示す0mm<水深<<0.5mmになると、計測値が2000mVと1500~1000mVの間で変動する。これは凹凸に応じて計測値が変化したもので、界面72が存在する箇所の計測値が2000mVとなり、コンクリート表面の凹凸が露出している箇所の計測値が1500mV~1000mVとなっているものと解される。
【0123】
図16(c)のからわかるように、計測値として1500mV以下の値が現れると、湿潤状態が変化する過渡的状態であると判断することが可能となる。また、(c)では、水膜のある個所と、水膜の無い箇所で計測値が大きく変化しており、表面の一部が露出すると水膜の有無により計測値が大きく変化する。したがって、実用用途では、移動しながら計測する場合には、部分平均か、移動平均のデータを収集して、判定することも可能である。
【0124】
なお水深1.5mm、及び1mmについても計測したが、計測結果が(a)、(b)とほぼ同様の計測値であったので割愛した。また、照射位置の高さ(照射距離・光路長)を50mmとし、他の点については
図16と同様の条件で計測した実験も行ったが、湿潤値100%の計測値としては、
図16の結果とほぼ同様の計測値が得られた。湿潤値0%の計測値は、計測距離が長くなると、計測値がより低くなる。
【0125】
以上の光学センサユニットの説明においては、主として湿潤状態の過渡的変化状態を検知する計測を例示して説明した。しかし、前述の通り、本発明の光学センサユニットは、これ以外の用途にも利用可能である。例えば、計測対象の表面粗さの程度を計測することや、表面粗さが変化する場合における表面粗さの変化の有無を計測することも可能である。
【0126】
なお、表面粗さの計測は、水その他の液体を使用せずに計測することも可能である。この場合、例えば、各種のレベルの標準粗さを有する各レベルの基準粗さ平面に対して、円偏光の平行光を垂直に照射して計測した計測値を基準値とし記憶しておき、計測対象の計測値と記憶している基準値とを比較することにより、表面粗さを計測することが可能である。しかし、計測対象表面を水その他の液体で覆うことが許容されるのであれば、計測対象箇所の表面に、表面の凹凸全体を覆うように水その他の液体を供給した後、液体を徐々に蒸発乾燥して凹凸面が露出する過程を計測することにより、より正確な粗さの計測が可能となる。
【0127】
表面粗さが変化する場合として、例えば摩擦や経年変化等により表面粗さが変化する場合などがある。このような表面粗さの変化の有無を計測する場合も、表面粗さの計測と同様に、予め各種レベルの基準値を記憶して計測することも可能である。しかし、予め各種レベルの基準値を計測して記憶しておかなくとも、初期段階の計測値からの変化量が所定の閾値を超えたときに、表面粗さが変化したとの判定をすることも可能である。
【符号の説明】
【0128】
10、47 56 光学センサユニット
11 光源
12 コリメートレンズ
13 PBS
14 1/4波長板
15 開口部(照射開口又は受光開口)
16 集光レンズ
17 受光素子(PD)
21 照射光
22 反射光
23 検出光
25 光学系
25a 照射光学系
25b 受光光学系
40、50,湿潤判定装置
41 判定ユニット
51 制御ユニット
52 バッテリー
53 移動機構
55 光学センサブロック