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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146028
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】金属缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/04 20060101AFI20241004BHJP
   B65D 1/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B65D8/04 M
B65D1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058691
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 一之
(72)【発明者】
【氏名】増田 政美
(72)【発明者】
【氏名】深沢 浩都
【テーマコード(参考)】
3E033
3E061
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA08
3E033BA09
3E033BB07
3E033CA08
3E033DC03
3E033DD01
3E033EA07
3E033FA01
3E033GA02
3E061AA26
3E061AB05
3E061AB08
3E061AD07
3E061DA07
3E061DB08
(57)【要約】
【課題】口部の加工を容易とする、テーパ状の金属缶を提供すること。
【解決手段】金属缶は、一端が他端よりも大径に形成され、周方向に複数の成形面及び隣り合う前記成形面と連続する複数の接続面を有する、前記一端に形成されたストレート部及び前記一端側から前記他端まで形成された傾斜するテーパ部を含む側壁部と、前記側壁部の小径側の端部に設けられた底蓋と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が他端よりも大径に形成され、周方向に複数の成形面及び隣り合う前記成形面と連続する複数の接続面を有する、前記一端に形成されたストレート部及び前記一端側から前記他端まで形成された傾斜するテーパ部を含む側壁部と、
前記側壁部の小径側の端部に設けられた底蓋と、
を備える金属缶。
【請求項2】
前記成形面の数は、14~18である、請求項1に記載の金属缶。
【請求項3】
前記ストレート部の端部に形成されたカール部を備える、請求項1に記載の金属缶。
【請求項4】
前記カール部は、ハゼ折りカールである、請求項3に記載の金属缶。
【請求項5】
前記側壁部は、前記ストレート部及び前記テーパ部の間に形成された段差部を有する、請求項1に記載の金属缶。
【請求項6】
前記段差部は、他の金属缶と積み重ねたときに、前記他の金属缶の前記側壁部の端部に係合する、請求項5に記載の金属缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパ状の側壁部を有する金属缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料が充填される金属缶として、側壁部がテーパ状に形成されたテーパ缶が知られている。このようなテーパ缶を成形する方法として、プレス成形や絞り成形を用いる方法が提案されているが、これらの成形では、側壁部をテーパ状とする場合に、側壁部にシワが発生したり、缶胴部が破断したりする問題が発生する虞がある。
【0003】
これに対し、一体に組み合わさることで全体としての形状が錐台状に形成され、その中心軸線を中心に分割された複数のセグメントを缶胴部材の内側から半径方向外方へ放射状に拡径させることで金属缶を成形する技術が知られている。この技術は、セグメントの外面を金属缶の内壁面に押圧し、複数のセグメントにより金属缶の側壁部に複数の成形面をテーパ缶に形成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-49542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したテーパ缶では、側壁部がテーパ状であることから、口部にフランジ成形やカール成形を行うと、成形したフランジ部やカール部の形状が不安定になり、所望の寸法や形状に成形できない虞がある。
【0006】
そこで本発明は、口部の加工を容易とする、テーパ状の金属缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、金属缶は、一端が他端よりも大径に形成され、周方向に複数の成形面及び隣り合う前記成形面と連続する複数の接続面を有する、前記一端に形成されたストレート部及び前記一端側から前記他端まで形成された傾斜するテーパ部を含む側壁部と、前記側壁部の小径側の端部に設けられた底蓋と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、口部の加工を容易とする、テーパ状の金属缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る金属缶の構成を示す側面図。
図2】同金属缶の要部構成を示す断面図。
図3】同金属缶の構成を、製造装置の複数のセグメントを配置した状態で示す説明図。
図4】同金属缶を重ねた状態で示す説明図。
図5】同金属缶の他の例を重ねた状態で示す説明図。
図6】同金属缶の製造装置の一例を模式的に示す説明図。
図7】同金属缶の製造方法の一例を、ラップ部及びラップ部の対面部で示す説明図。
図8】本発明の第2実施形態に係る金属缶の構成を示す側面図。
図9】同金属缶の製造装置のセグメントの一例を示す側面図。
図10】同セグメントの一例を示す側面図。
図11】同金属缶を重ねた状態で示す説明図。
図12】第1実施形態に係る金属缶と、第2実施形態に係る金属缶との評価試験の結果を示す説明図。
図13】同金属缶の製造装置の他の例を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態に係る金属缶1、金属缶1の製造方法及び製造装置100を、図1乃至図7を用いて説明する。
【0011】
まず、第1実施形態に係る金属缶1の構成を図1乃至図5を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属缶1の構成を示す側面図であり、図2は、金属缶1の側壁部11の口部の構成を示す断面図である。図3は、金属缶1の構成を、製造装置100の複数のセグメント121を配置した状態で示す説明図である。図4は、2つの金属缶1を重ねた状態で示す説明図であり、図5は、図4の金属缶1と異なる高さの2つの金属缶1を重ねた状態で示す説明図である。図4及び図5において、説明の便宜上、下方側の金属缶1を一部断面で示す。
【0012】
図1に示すように、金属缶1は、側壁部11と、底蓋12と、を備える。金属缶1は、側壁部11が底蓋12側から上端の開口側に向かって漸次拡径するテーパ状に形成された、所謂テーパ缶である。金属缶1は、飲料等のコップ状容器や、飲料等が充填される飲料缶等に用いられる。本実施形態においては、金属缶1は、側壁部11の上端の口部にカール部24が設けられたコップとして使用される例を用いて説明する。
【0013】
側壁部11は、開口する一端側が、底蓋12が設けられる他端よりも大径に形成されたテーパ状であって、且つ、開口する一端、即ち、口部側の端部がストレート状の缶胴である。側壁部11の小径側の端部は、底蓋12が固定される下端を構成する。
【0014】
具体例として、側壁部11は、テーパ部21と、テーパ部21の小径側の下端に設けられる円筒状部22と、テーパ部21の大径側の上端に設けられるストレート部23と、テーパ部21の上端に設けられるカール部24と、を備える。このような側壁部11は、スチール等の金属の平板を長方形状に切断し、円筒状に丸めて端部を溶接することにより、両端に開口を有する円筒状の缶胴部材を成形し、その缶胴部材の側壁をテーパ状及びストレート状に加工することで得られる。
【0015】
なお、缶胴部材を形成する平板は、防食処理が施されていてもよい。防食処理としては、例えば、側壁部11としたときに内周面となる面に熱可塑性樹脂皮膜を形成する処理が挙げられる。
【0016】
側壁部11は、周方向に複数の成形面11a及び隣り合う成形面11aの間に設けられ、隣り合う成形面11aと一体に連続する複数の接続面11bを有する。換言すると、側壁部11は、テーパ状及びストレート状が連続する、複数の成形面11a及び複数の接続面11bが周方向に交互に連続して配置することでテーパ部21及びストレート部23を形成する。
【0017】
成形面11aは、所定の幅を有する平面状又は曲率中心が側壁部11の中心側となる曲面状に形成される。図3に示すように、成形面11aは、金属缶1を成形するセグメント121により缶胴部材の側壁を押圧して塑性変形させることで形成される。成形面11a(セグメント121)の数は、例えば、14~18である。
【0018】
ここで、成形面11aの数を14以上とすることで、側壁部11の横断面形状が円形に近くなり、フランジ成形やカール成形等の加工が容易になる。また、成形面11aの数を14以上とすることで、一定数の金属缶1を重ねた場合でも、スタック高さのばらつきが小さくなり、一度に多数の金属缶1を重ねても、安定して保管できる。なお、成形面11aの数を18よりも多くすると、成形の際に、セグメント121が金属缶1と接触する部分の面積が小さくなるため、製造した金属缶1の寸法にばらつきが生じ、品質が低下するので、成形面11aの数は、18以下が好ましい。
【0019】
接続面11bは、周方向で隣り合う成形面11a、11a間を連続する。例えば、接続面11bは、周方向の形状が径方向内側に所定の曲率半径で窪む形状に形成される。
【0020】
即ち、側壁部11の横断面は、図3に示すように、成形面11aが径方向外側に張り出しており、接続面11bが径方向内側に凹む形で、周方向に凹凸を繰り返す形状となる。なお、複数の成形面11a及び複数の接続面11bにより形成される側壁部11の横断面の周方向の形状は、厳密には円形状ではないが、円形状に近似する。また、側壁部11の周方向の形状は、成形面11a及び接続面11bの数が多くなるほど、円形状に近似する。
【0021】
テーパ部21は、例えば、側壁部11の下端側から上端部までの範囲に設けられる。テーパ部21は、周方向に配置される複数の成形面11a及び複数の接続面11bの、軸方向における一部により形成される。本実施形態において、テーパ部21のテーパ角度θは、例えば、側壁部11(テーパ部21)の中心軸Cに対して約1.5度乃至約2.5度に設定される。但し、テーパ部21のテーパ角度θは、限定されず、適宜設定可能である。例えば、図4の金属缶1の例では、テーパ角度θは、1.5度であり、図5の金属缶1の例では、テーパ角度θは、2.1度である。テーパ部21は、一端(上端)が他端(下端)よりも大径に形成される。
【0022】
円筒状部22は、側壁部11の中心軸Cに沿って形成される。換言すると、円筒状部22は、同一径を有する円筒状に形成される。円筒状部22は、中心軸Cが垂直方向に沿った金属缶1の姿勢において、垂直方向に延びる垂直壁を構成する。円筒状部22は、底蓋12が固定される部位に、底蓋12と巻締めされるフランジが形成される。このような円筒状部22は、底蓋12を巻締める際の巻締め成形を容易とするために設けられる。
【0023】
ストレート部23は、側壁部11の中心軸Cに沿って形成される。ストレート部23は、周方向に配置される複数の成形面11a及び複数の接続面11bの、軸方向における上端側の一部により形成される。ストレート部23は、ストレート部23の接円が同一径を有する形状に形成される。換言すると、ストレート部23は、中心軸Cが垂直方向に沿った金属缶1の姿勢において、垂直方向に延びる垂直壁を構成する。
【0024】
カール部24は、側壁部11の上端の開口、即ち、ストレート部23の上端の開口に形成される。図2に示すように、カール部24は、缶胴部材の先端を内側に折り込み、外周側からカール部を押しつぶした、所謂ハゼ折形状に形成されることが好ましい。
【0025】
底蓋12は、例えば鋼材又はアルミニウム合金等の金属材料で形成された平板材により形成される。底蓋12は、円板状に形成されるとともに、その外周にフランジを有する。底蓋12は、缶胴である側壁部11の円筒状部22に形成されたフランジと巻締めされることで、側壁部11に一体に形成される。底蓋12は、側壁部11の下端を液密及び気密に閉塞する。
【0026】
次に、金属缶1の製造装置100の構成を図3及び図6を用いて説明する。図6は、金属缶1の製造装置100の一例を模式的に示す説明図である。
【0027】
本実施形態で説明する製造装置100は、側壁部11を成形するためのエキスパンド成形装置である。図6に示すように、製造装置100は、可動型111と、くさび軸112と、くさび軸112を移動させて可動型111を駆動する駆動装置113と、駆動装置113を制御する制御装置114と、を備えている。製造装置100は、可動型111を円筒状の缶胴部材11A内に配置し、可動型111を駆動させることで、缶胴部材11Aをエキスパンド成形する。ここで、缶胴部材11Aは、スチール等の金属の平板を長方形状に切断し、円筒状に丸めて端部を溶接することにより成形された、円筒状に形成される。
【0028】
可動型111及びくさび軸112は、側壁部11をエキスパンド成形するための、金属缶用の金型101である。また、図6中、中心軸Cを中心として右側が、側壁部11の成形前の可動型111及びくさび軸112を示し、中心軸Cを中心として左側が、側壁部11の成形中の可動型111及びくさび軸112を示す。また、図6中、側壁部11を成形するための成形前の缶胴部材11Aを二点鎖線で示す。
【0029】
可動型111は、その軸心から径方向に移動可能な複数のセグメント121を備える。可動型111は、缶胴部材11Aをエキスパンド成形するためのエキスパンド型である。可動型111は、複数のセグメント121によって、その周方向の外面形状が側壁部11を成形するテーパ状に形成されている。
【0030】
可動型111は、その軸心を中心に放射状に分割された複数のセグメント121により、全体としての形状が錐台形状、例えば、中空の略円錐台状又は多角錐台状に形成される。本実施形態の例においては、可動型111は、複数のセグメント121より、中空の多角錐台状に形成される。
【0031】
具体例として、可動型111は、多角錐台状の型を、中心軸Cを中心に分割したセグメント121により構成される。例えば、セグメント121は、例えば、14~18個用いられ、この複数のセグメント121を組み合わせて可動型111が形成される。
【0032】
可動型111は、複数のセグメント121の缶胴部材11Aの内周面と対向する外側面によって形成される成形部123と、複数のセグメント121の内側面によって形成される摺動部124と、セグメント121の一端側に設けられる保持部125と、を備えている。可動型111は、摺動部124及びくさび軸112が摺動することで複数のセグメント121が径方向外方に移動し、成形部123の外接円が拡径する。なお、セグメント121は、例えば、図6に示すように、別体に形成された成形部123及び摺動部124を一体に組み合わせることで構成される。なお、セグメント121は、1つの部材から構成され、そして、外側面が成形部123を形成し、内側面が摺動部124を形成してもよい。
【0033】
可動型111は、缶胴部材11Aを成形するときに、複数のセグメント121が可動型111の軸心から径方向に離間する方向に移動することで、外径が拡径して成形部123が缶胴部材11Aに、側壁部11の成形面11aを成形する形状となるようにセグメント121が配置される。また、可動型111は、セグメント121が可動型111の軸心から径方向に離間する方向に移動することで、周方向に隣り合うセグメント121間の間隙が漸次大きくなる。
【0034】
成形部123は、図6に示すように、少なくとも外側面の缶胴部材11Aと対向する領域に、可動型111の中心軸Cに対して傾斜する傾斜面123aと、中心軸Cに沿った方向で傾斜面の一端に連続する、可動型111の中心軸Cと同方向に延びるストレート面123bと、を有する。例えば、成形部123の傾斜面123aの傾斜角度θは、側壁部11のテーパ部21のテーパ角度θと同じ角度に傾斜する。成形部123の傾斜面123aは、テーパ部21を形成する。成形部123のストレート面123bは、ストレート部23を形成する。
【0035】
摺動部124は、例えば、可動型111の中心軸C側が、中心軸Cに対して傾斜する傾斜面を有する。摺動部124は、くさび軸112の一部が可動型111の軸心方向に沿って挿入され、くさび軸112の外周面と各セグメント121の摺動部124の傾斜面が摺動することで、くさび軸112の直進方向の移動を、セグメント121の径方向外方への移動に変更する。
【0036】
保持部125は、例えば、各セグメント121を可動型111の中心軸Cに対して径方向に移動可能、且つ、セグメント121をスプリング等の付勢部材によって可動型111の軸心に向かって付勢可能に保持する保持体により保持される。また、図6に示す製造装置100の例では、金属缶1のストレート部23及びカール部24が形成される開口側が上側となるように、保持部125は、傾斜面123aが下方、ストレート面123bが上方となる姿勢で、複数のセグメント121を保持する。
【0037】
くさび軸112は、可動型111(複数のセグメント121)の中心に挿入される。くさび軸112は、複数のセグメント121に挿入される先端がテーパ状に形成される。具体例として、くさび軸112は、軸部112aと、軸部112aの一方の端部に設けられた被摺動部112bと、を有する。軸部112aは、駆動装置113に接続される。軸部112aは、例えば、円柱状に形成される。被摺動部112bは、例えば、円錐状又は円錐台状に形成され、軸部112aと一体に形成される。被摺動部112bは、可動型111(複数のセグメント121)の中央の開口に挿入され、摺動部124の傾斜面と摺動することで、各セグメント121を径方向に移動させる。
【0038】
駆動装置113は、くさび軸112を中心軸Cに沿った方向(軸方向)へ往復移動させる。駆動装置113は、例えば、油圧ポンプ、各種制御バルブ及び油圧シリンダ等で構成されていてもよく、また、モータ、モータの回転を直進方向の移動に変換する変換機構等で構成されていてもよい。
【0039】
制御装置114は、駆動装置113を制御することで、くさび軸112を、可動型111に対して往復移動させる。制御装置114は、駆動装置113を制御することができれば適宜設定できる。制御装置114は、例えば、制御盤、PC等の処理端末である。例えば、制御装置114は、プロセッサ、メモリ等を備え、メモリに記憶されたパラメータや各種プログラムをプロセッサが実行することで、駆動装置113を制御する。
【0040】
次に、金属缶1の製造方法の一例を説明する。なお、各工程において、各種成形装置を用いて成形が成される。
【0041】
先ず第1工程として、金属の平板を円筒状に丸めて周方向の端部同士を溶接することで、缶胴部材11Aが形成される。次に、第2工程として、成形した缶胴部材11Aを製造装置100によりエキスパンド成形することにより、缶胴部材11Aをテーパ状に加工する。第2工程においては、上述した製造装置100を用いて缶胴部材11Aの成形が行われる。例えば、図6の中心軸Cの右側に示すように、缶胴部材11Aを複数のセグメント121の外方に配置する。エキスパンド成形前においては、複数のセグメント121が、缶胴部材11Aの内周面よりも径方向内方に位置し、セグメント121の成形部123の外面であり傾斜面123a及びストレート面123bが缶胴部材11Aの内面と対向する。
【0042】
このとき、くさび軸112の被摺動部112bは、セグメント121の摺動部124の下方に位置している。そして、制御装置114が駆動装置113を制御すると、駆動装置113は、くさび軸112を上方(複数のセグメント121内)に向かって直線的に移動させる。すると、図6の中心軸Cの左側に示すように、くさび軸112の被摺動部112bは、複数のセグメント121の摺動部124の中心軸C側に形成された傾斜面と摺動する。
【0043】
くさび軸112の被摺動部112bの外周面及び各セグメント121の傾斜面は、くさび軸112の移動方向に対して傾斜することから、くさび軸112の移動方向に対して、各セグメント121が径方向外方に放射状に押し出される。
【0044】
このため、複数のセグメント121の傾斜面が缶胴部材11Aを押圧し、缶胴部材11Aをテーパ状及びストレート状に塑性変形させる。これにより、缶胴部材11Aの成形部123の傾斜面と当接する領域に成形面11aが成形される。また、セグメント121の成形部123の傾斜面123a及びストレート面123bと接触しない領域、即ち、隣り合うセグメント121間と対向する缶胴部材11Aの領域に、隣り合う成形面11a、11a間を連続する接続面11bが形成される。ここで、接続面11bは、成形面11aの塑性変形に追従して塑性変形し、傾斜する。これらのように、第2工程として、可動型111の複数のセグメント121が径方向外方に移動することで、缶胴部材11Aは一端がストレート状に一端及び他端の間がテーパ状に形成される。
【0045】
次に、第3工程として、図7の1stに示すように、缶胴部材11Aの上端にフランジが成形される。具体的には、缶胴部材11Aの上端(ストレート部23の上端)にカール部24を成形するためのフランジが成形される。
【0046】
次に、第4工程~第6工程として、図7の2nd~4thに示すように、缶胴部材11Aの上端(ストレート部23の上端)にカール加工を施し、カール加工した部位を押し潰す。これら第3工程から第6工程により、ストレート部23の上端にハゼ折り形状のカール部24が成形される。
【0047】
次に、例えば、第7工程として、缶胴部材11Aの下端にフランジが成形される。具体例として、缶胴部材11Aの下端に縮径加工を行ってネック部を形成し、下端に底蓋12を巻き締めするためのフランジが成形される。これらの工程によって、テーパ部21、円筒状部22、ストレート部23及びカール部24を有する側壁部11が成形される。
【0048】
次に、第8工程として、円筒状部22のフランジに底蓋12が巻き締められる。これら第1工程乃至第8工程によって、金属缶1が製造される。側壁部11がテーパ状となっており、重ね合わせた場合に、入れ子式に重ねることができるため、例えば、製造された金属缶1は、順次積層され、保管や輸送が行われる。
【0049】
このように構成された金属缶1は、テーパ缶としても、口部となるテーパ部21の一端側にストレート部23を有する。このストレート部23により、側壁部11は、口部の加工が容易になり、従来公知の円筒缶と同様の加工方法により、カール部24やフランジ部を形成することが可能となる。このように、金属缶1は、ストレート部23を、口部に設け、そして、このストレート部23にカール部24を形成する構成とすることで、製造が容易となる。
【0050】
また、成形面11aの数を14~18とすることで、側壁部11の横断面形状が円形に近くなり、成形面11aを有する部位、本実施形態においては、ストレート部23の開口端にフランジ成形、カール成形、底蓋の巻き締め等の加工が容易になる。
【0051】
また、金属缶1は、成形面11aの数を14~18とすることで、側壁部11の横断面形状が円形に近くなり、図4及び図5に示すように、複数を積み重ねた場合に、スタック高さのバラツキを防止できる。具体的に説明すると、一般的に、金属缶1を積み重ねた場合、側壁部11が断面多角形状であるために、例えば、重なった金属缶1の周方向の相対的な位置によって、重なった金属缶1の高さであるスタック高さが大きく異なることがある。
【0052】
即ち、重なり合う金属缶1の形が合った場合(上下の金属缶1の成形面11a同士が接触した場合)よりも、重なり合う金属缶1の形がずれた場合(積み重ねた一方の金属缶の成形面11aの内面に、上の金属缶の成形面11a及び接続面11bの間に生じる角部(稜部)が接触した場合)の方が、スタック高さが高くなり、積み重なる金属缶1の高さの差が生じることになる。このため、所定の高さの箱に金属缶1を保管しようとすると、スタック時の周方向の位置ずれによって、スタック高さがばらつくので、所定の高さに積み重ねられる金属缶1の数が異なり、金属缶1を保管する場合の管理が煩雑になる場合がある。
【0053】
しかしながら、第1実施形態の金属缶1によれば、側壁部11の横断面形状が円形に近くなることから、重なり合う金属缶1の形がずれた場合でもスタック高さが高くなることを抑制できる。即ち、金属缶1は、一定数を重ねた場合でも、スタック高さのばらつきが小さくなり、安定して保管できる。なお、成形面11aの数を18よりも多くすると、成形の際に、セグメントが金属缶1と接触する部分の面積が小さくなるため、製品の寸法にばらつきが生じ、品質が低下するので好ましくない。
【0054】
また、カール部24をハゼ折形状とすることにより、カール部24の錆びを防止できる。また、カール部24を二重のハゼ折形状とすることにより、カール部24の錆びの防止効果を高めることができる。また、側壁部11の上端側に、ストレート部23を設けることにより、カール部24をハゼ折形状とする成形を行うことが容易となる。
【0055】
上述したように本発明の第1実施形態に係る金属缶1によれば、側壁部11にテーパ部21及びストレート部23を設け、ストレート部23を金属缶1の口部に配置することで、口部の加工を容易とすることができる。
【0056】
なお、本発明は上述の第1実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、金属缶1の側壁部11は、テーパ部21、円筒状部22、ストレート部23及びカール部24を有する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、図8に、第2実施形態に係る金属缶1Aの構成を示す。図8に示すように、金属缶1Aは、テーパ部21、円筒状部22、ストレート部23及びカール部24を有するとともに、テーパ部21及びストレート部23の間に、段差部25を有する。即ち、金属缶1Aは、テーパ部21のストレート部23側の端部の外径が、ストレート部23のテーパ部21側の端部の外径よりも小さい形状とすることで、テーパ部21及びストレート部23の外径の差により、段差部25を有する。
【0057】
例えば、このような金属缶1Aの成形は、図9及び図10に示すように、セグメント121の傾斜面123a及びストレート面123bの間に、段差部25を成形する面123cを設け、このセグメント121を用いて缶胴部材11Aを成形すればよい。
【0058】
金属缶1Aに形成された段差部25は、図11に示すように、複数の金属缶1Aが積み重ねられた際に、下側の金属缶1Aの側壁部11の口部側の端部、本実施形態ではカール部24の先端に係合する。側壁部11の径方向における段差部25の段差、即ち、テーパ部21の直径とストレート部23の直径との差ΔDは、例えば、0.5~0.8mmである。また、段差部25は、例えば、曲率半径が2.0mm~3.0mm、例えば、2.2mmであり、曲率中心が、テーパ部21側で側壁部11の径方向外方にあり、そして、ストレート部23側で側壁部11の径方向内方にある2つの環状の曲面が連続することにより形成される。
【0059】
このように構成された、金属缶1Aは、段差部25が下側の金属缶1Aのカール部24と当接することから、積み重ねたときに隣り合う金属缶1Aと所定の位置関係となるため、積み重ね際により安定して、スタック形状を保つことができる。
【0060】
また、金属缶1Aは、積み重ねた際に、段差部25が下側の金属缶1Aのカール部24と当接することで、下側の金属缶1Aに過度に侵入することが防止できるため、積み重ねた金属缶1Aが嵌合し、金属缶1Aが下側の金属缶1Aから抜けなくなることを防止できる。
【0061】
評価試験として、図12に示すように、第1実施形態に係る金属缶1を2つ重ねた場合と、第2実施形態に係る金属缶1Aを2つ重ねた場合に、2つの金属缶に軸方向に荷重を印加したときに、金属缶が抜ける荷重を測定する評価試験を行った。なお、第2実施形態に係る金属缶1Aの段差部25の径方向の段差、即ち、テーパ部21上端の外径とストレート部23の外径との差ΔDは、0.6mmとした。
【0062】
このとき、第1実施形態の金属缶1は、5kgfの荷重をかけた場合には、上側の金属缶1を下側の金属缶1から抜くことができたが、10kgfの荷重をかけた場合には、上側の金属缶1を下側の金属缶1から抜くことができなかった。一方、第2実施形態の金属缶1Aは、30kgfの荷重をかけた場合には、上側の金属缶1Aを下側の金属缶1Aから抜くことができたが、40kgfの荷重をかけた場合には、上側の金属缶1Aを下側の金属缶1Aから抜くことができなかった。このような評価試験の結果からも明らかなように、段差部25を設けた金属缶1Aは、段差部25を有さない金属缶1よりも、金属缶同士を容易に抜くことができることが分かる。
【0063】
上述したように第2実施形態に係る金属缶1Aによれば、第1実施形態に係る金属缶1と同等の効果を奏するとともに、積み重ね際に、安定して、スタック形状を保つこと及びスタックを解除することができる。
【0064】
なお、上述した例では、駆動装置113によってくさび軸112を一方向に移動させることで複数のセグメント121の拡径を行う例を示したが、これに限定されず、複数のセグメント121の駆動方法やくさび軸112の駆動方法は適宜設定できる。即ち、複数のセグメント121の拡径動作が可能であれば、くさび軸112の駆動装置113は種々の構成を用いることができる。また、複数のセグメント121の拡径動作は、くさび軸112以外の構成によって行ってもよい。
【0065】
また、上述した例では、各セグメント121の成形部123の傾斜面123aが略平面状に形成され、そして、成形面11aが平面状に形成される構成を説明したがこれに限定されない。例えば、成形部123は、曲面状に形成されてもよく、また、凹凸部を有する形状としてもよい。即ち、セグメント121の成形部123の傾斜面の形状、及び、該セグメント121により成形される成形部123の傾斜面の形状は、意匠性や識別性を持たせるために、適宜設定可能である。また、複数のセグメント121の分割方向は、径方向に限定されず、側壁部11をテーパ状及びストレート状に形成可能であれば適宜設定可能である。即ち、側壁部11にテーパ部21及びストレート部23を形成可能であれば、成形部123の傾斜面の面方向及び成形部123の面方向は、中心軸Cの軸方向及び径方向に対して傾斜する形状や、螺旋形状に湾曲する形状であってもよい。
【0066】
また、上述した例では、金属缶1、1Aは、側壁部11の口部にカール成形により成形されたカール部24を有する構成を説明したがこれに限定されない。また、上述した例では、金属缶1、1Aは、コップとして用いる構成を説明したがこれに限定されない。例えば、金属缶1、1Aは、側壁部11の上端にフランジを設け、飲み口等の開口を形成できるステイオンタブ式の別体の蓋を巻き締める等、適宜の加工や構成を適用することもできる。例えば、開口を形成できる別体の蓋を巻き締めることで、金属缶1、1Aは、飲料や食品が充填された缶詰に使用できる。
【0067】
また、金属缶1、1Aは、ジュース、お茶、酒類等の種々の飲料用容器として用いることが可能であるし、また、飲料以外に食品用の容器としてもよい。例えば、金属缶1、1Aは、金属材料で形成されていることから、湯煎を行うことも可能であるし、また、缶詰に使用すれば、レトルト処理も可能である。
【0068】
また、金属缶1、1Aは、プラスチック製の蓋を被せたり、取っ手つきのホルダーで保持したり、ホット飲料に適用する場合や結露防止の目的で缶胴部に断熱部材を設けたりする等、種々の適用ができ、従来の紙コップやプラスチックカップと同様の使用が可能である。このように、金属缶1、1Aは、種々の用途に適用することができる。
【0069】
また、上述した図6に示す製造装置100の例では、金属缶1のストレート部23及びカール部24が形成される開口側が上側となるように、傾斜面123aが下方、ストレート面123bが上方となる姿勢で、複数のセグメント121が配置される構成を説明したがこれに限定されない。例えば、製造装置100は、図13に示すように、金属缶1の開口側が下側となるように成形することも可能である。このような構成とする場合、セグメント121の傾斜面123aを上方とし、ストレート面123bを下方とした姿勢で複数のセグメント121が保持部125に保持される。セグメント121の保持部125側となる根元側の方がセグメント121の先端側よりも成形的に安定するので、金属缶1の開口側が下側となるように缶胴部材11Aを成形することにより、側壁部11の開口側の成形を精度よく行うことができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0071】
1、1A…金属缶、11…側壁部、11A…缶胴部材、11a…成形面、11b…接続面、12…底蓋、21…テーパ部、22…円筒状部、23…ストレート部、24…カール部、25…段差部、100…製造装置、101…金型、111…可動型、112…軸、112a…軸部、112b…被摺動部、113…駆動装置、114…制御装置、121…セグメント、123…成形部、123a…傾斜面、123b…ストレート面、123c…面、124…摺動部、125…保持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13