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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146032
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】平滑装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058696
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 学
(72)【発明者】
【氏名】小山 睦
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA04
5H006BB05
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
5H006DC08
(57)【要約】
【課題】電解コンデンサの温度が電解コンデンサの静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサの静電容量に基づいた判定を行える平滑装置を提供する。
【解決手段】平滑装置1は、電解コンデンサ21が設けられた平滑部20と、電解コンデンサ21と並列接続された電気抵抗12と、平滑部20と電気抵抗12とを含む閉回路の電圧を検出する電圧検出回路31と、平滑部20の温度を検出する温度検出回路33と、当該閉回路とAC電源50との間の接続を開閉する第1スイッチSW1と、当該閉回路と負荷60との間の接続を開閉する第2スイッチSW2と、電圧検出回路31及び温度検出回路33の出力と、平滑部20の放電時間と、に基づいて平滑部20の静電容量を算出する制御回路34と、算出された静電容量と閾値との関係に対応した情報を出力する出力部40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサが設けられた平滑部と、
前記電解コンデンサと並列接続された電気抵抗と、
前記平滑部と前記電気抵抗とを含む閉回路の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記平滑部の温度を検出する温度検出回路と、
前記閉回路と電源との間の接続経路を開閉可能に設けられた第1スイッチと、
前記閉回路と負荷との間の接続経路を開閉可能に設けられた第2スイッチと、
前記電圧検出回路の出力及び前記温度検出回路の出力と、前記平滑部の放電時間と、に基づいて前記平滑部の静電容量を算出する制御回路と、
静電容量の閾値と、算出された前記平滑部の静電容量と、の関係に対応した情報を出力する出力部と、を備える、
平滑装置。
【請求項2】
前記平滑部及び前記電気抵抗と並列に接続可能に設けられた予備電解コンデンサと、
前記閉回路に前記予備電解コンデンサが加わる回路の成立と非成立とを切り替え可能に設けられた第3スイッチと、を備え、
前記制御回路は、算出された前記平滑部の静電容量が前記閾値以下である場合、前記閉回路に前記予備電解コンデンサが加わる回路を成立させるように前記第3スイッチを動作させる、
請求項1に記載の平滑装置。
【請求項3】
前記出力部は、第1発光素子を有し、
前記第1発光素子は、前記平滑部の静電容量が前記閾値以下である場合に発光する、
請求項2に記載の平滑装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記閉回路に前記予備電解コンデンサが加わる回路が成立している場合、前記平滑部の静電容量と前記予備電解コンデンサの静電容量とが合成された容量を算出する、
請求項2又は3に記載の平滑装置。
【請求項5】
前記出力部は、第2発光素子を有し、
前記第2発光素子は、前記平滑部の静電容量と前記予備電解コンデンサの静電容量とが合成された容量が前記閾値以下である場合に発光する、
請求項4に記載の平滑装置。
【請求項6】
前記電圧検出回路による前記閉回路の電圧の検出は、事前処理の後に行われ、
前記事前処理は、前記第2スイッチを非接続にした状態で前記第1スイッチが接続されて前記電解コンデンサが充電された後に前記第1スイッチを非接続にする処理である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の平滑装置。
【請求項7】
前記温度検出回路による温度の検出は、前記事前処理の前に行われる、
請求項6に記載の平滑装置。
【請求項8】
前記平滑部は、並列に接続された複数の前記電解コンデンサを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の平滑装置。
【請求項9】
前記負荷は、電動機である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の平滑装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印加電圧の平滑に利用される電解コンデンサは、放電時間の経過に従って劣化する傾向を示す。このような電解コンデンサの劣化を、電解コンデンサの静電容量に基づいて検出する構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-065616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解コンデンサは、温度によって静電容量が変化することが知られている。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、電解コンデンサの温度と静電容量との関係が考慮されていないため、電解コンデンサの静電容量に基づいた判定の精度が不十分だった。
【0005】
本開示は、電解コンデンサの温度が電解コンデンサの静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサの静電容量に基づいた判定を行える平滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の平滑装置は、電解コンデンサが設けられた平滑部と、前記電解コンデンサと並列接続された電気抵抗と、前記平滑部と前記電気抵抗とを含む閉回路の電圧を検出する電圧検出回路と、前記平滑部の温度を検出する温度検出回路と、前記閉回路と電源との間の接続経路を開閉可能に設けられた第1スイッチと、前記閉回路と負荷との間の接続経路を開閉可能に設けられた第2スイッチと、前記電圧検出回路の出力及び前記温度検出回路の出力と、前記平滑部の放電時間と、に基づいて前記平滑部の静電容量を算出する制御回路と、静電容量の閾値と、算出された前記平滑部の静電容量と、の関係に対応した情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
従って、電解コンデンサが設けられた平滑部の静電容量の算出に、当該平滑部の温度を検出する温度検出回路の出力が利用される。これによって、当該温度の影響を加味した静電容量の算出を行える。すなわち、電解コンデンサの静電容量が温度によって変化しても、係る静電容量の変化を踏まえて算出された静電容量と閾値との関係に基づいた出力を行える。よって、電解コンデンサの温度が電解コンデンサの静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサの静電容量に基づいた判定を行える。
【0008】
本開示の平滑装置では、前記平滑部及び前記電気抵抗と並列に接続可能に設けられた予備電解コンデンサと、前記閉回路に前記予備電解コンデンサが加わる回路の成立と非成立とを切り替え可能に設けられた第3スイッチと、を備え、前記制御回路は、算出された前記平滑部の静電容量が前記閾値以下である場合、前記閉回路に前記予備電解コンデンサが加わる回路を成立させるように前記第3スイッチを動作させる。
【0009】
従って、平滑部の静電容量が閾値以下になっても、予備電解コンデンサの静電容量を追加することによって平滑部の静電容量を補える。よって、平滑装置をより長寿命化できる。
【0010】
本開示の平滑装置では、前記出力部は、第1発光素子を有し、前記第1発光素子は、前記平滑部の静電容量が前記閾値以下である場合に発光する。
【0011】
従って、予備電解コンデンサが使用される状態になったことを第1発光素子の発光によって示せる。これによって、平滑装置に対するメンテナンスの必要性を示唆できる。
【0012】
本開示の平滑装置では、前記制御回路は、前記閉回路に前記予備電解コンデンサが加わる回路が成立している場合、前記平滑部の静電容量と前記予備電解コンデンサの静電容量とが合成された容量を算出する。
【0013】
従って、予備電解コンデンサが使用される状態になった後の「平滑部の静電容量と前記予備電解コンデンサの静電容量とが合成された容量」と閾値との関係に基づいた判定及び出力を行える。
【0014】
本開示の平滑装置では、前記出力部は、第2発光素子を有し、前記第2発光素子は、前記平滑部の静電容量と前記予備電解コンデンサの静電容量とが合成された容量が前記閾値以下である場合に発光する。
【0015】
従って、予備電解コンデンサを使用してもなお静電容量が閾値以下であることを第2発光素子の発光によって示せる。これによって、平滑装置に対するメンテナンスが不可欠な状態になったことを示唆できる。
【0016】
本開示の平滑装置では、前記電圧検出回路による前記閉回路の電圧の検出は、事前処理の後に行われ、前記事前処理は、前記第2スイッチを非接続にした状態で前記第1スイッチが接続されて前記電解コンデンサが充電された後に前記第1スイッチを非接続にする処理である。
【0017】
従って、放電時間の経過による電解コンデンサの静電容量の低下の有無に関わらず、電解コンデンサが十分に充電された状態で、電解コンデンサの静電容量を算出するための電圧の検出を行える。
【0018】
本開示の平滑装置では、前記温度検出回路による温度の検出は、前記事前処理の前に行われる。
【0019】
従って、電解コンデンサの充電により生じうる電解コンデンサの発熱の影響を受けることなく平滑部の温度を検出できる。
【0020】
本開示の平滑装置では、前記平滑部は、並列に接続された複数の前記電解コンデンサを含む。
【0021】
従って、複数の電解コンデンサが平滑部に設けられる場合でも、電解コンデンサの温度が電解コンデンサの静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサの静電容量に基づいた判定を行える。
【0022】
本開示の平滑装置では、前記負荷は、電動機である。
【0023】
従って、電動機に供給される供給電力を平滑する平滑装置で利用される電解コンデンサについて、温度が静電容量に影響を与えることを加味して、電解コンデンサの静電容量に基づいた判定を行える。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、電解コンデンサの温度が電解コンデンサの静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサの静電容量に基づいた判定を行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態の平滑装置及び平滑装置に接続される構成を示すブロック図である。
図2図2は、電解コンデンサの温度と、電解コンデンサによって保持される静電容量の大きさと、の関係を示す概略的なグラフである。
図3図3は、平滑装置のリリース後の経過時間と、平滑部の静電容量と、の関係の一例を示すグラフである。
図4図4は、平滑装置のリリース後の経過時間と、平滑部の静電容量と、の関係の一例を示すグラフである。
図5図5は、図3及び図4に示す関係を表の数値として示した図である。
図6図6は、制御回路と接続された出力部の形態例を示すブロック図である。
図7図7は、制御回路による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0027】
図1は、実施形態の平滑装置1及び平滑装置1に接続される構成を示すブロック図である。平滑装置1は、整流回路11と、電気抵抗12と、平滑部20と、予備電解コンデンサ22と、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、電圧検出回路31と、絶縁回路32と、温度検出回路33と、制御回路34と、AC/DCコンバータ35と、出力部40と、を備える。平滑装置1は、AC電源50から供給される交流電力を整流、平滑して負荷60に与える電源装置である。
【0028】
整流回路11は、AC電源50から供給される交流電力を整流する。整流回路11は、例えば単相全波整流を実現するための回路であり、トランス、ダイオード等を含む。整流回路11は、平滑部20との組み合わせで十分に供給電力を平滑できる構成であれば特にその具体的な形態を限定されるものでなく、例えば単相半波整流を実現するための回路であってもよい。
【0029】
電気抵抗12は、第1スイッチSW1を介して整流回路11と接続される電気抵抗である。電気抵抗12は、AC電源50の停止時に、電気抵抗12と並列に接続されている電解コンデンサ(電解コンデンサ21等)からの放電を生じさせて速やかに回路の電圧を下げることを目的とした、いわゆる放電用抵抗として設けられている。電気抵抗12の電気抵抗値(R)は、後述する式(1)に対応するよう予め定められている。
【0030】
平滑部20は、複数の電解コンデンサ21を含む。複数の電解コンデンサ21は、電気抵抗12及び負荷60に対して並列に接続されている。図1に示す例では、平滑部20に含まれる電解コンデンサ21は3つであるが、1つ又は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0031】
電解コンデンサ21及び予備電解コンデンサ22は、例えばアルミ電解コンデンサであるが、供給電力の平滑に利用可能な他のコンデンサであってもよい。
【0032】
平滑部20は、AC電源50と負荷60との間の送電経路上において、第1スイッチSW1と電気抵抗12との間に設けられている。第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3は、回路の接続(ON)と非接続(OFF)とを切り替え可能に設けられたスイッチである。図1では詳細な制御命令の伝達系を図示しないが、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3は、制御回路34の制御下で動作する。
【0033】
図1に示すように、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3が非接続(OFF)である場合、平滑部20と電気抵抗12とは、閉回路を形成する。以下、第1閉回路と記載した場合、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3が非接続(OFF)である場合の、平滑部20と電気抵抗12とで形成される閉回路をさす。なお、第1閉回路に対して平滑部20と電気抵抗12との間に接続されている電圧検出回路31による電圧の検出は可能ではあるが、電圧検出回路31と制御回路34との間に絶縁回路32が設けられているので、第1閉回路を閉回路とみなすうえでは無視される。
【0034】
第1閉回路が成立している状態、すなわち、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3が非接続(OFF)である状態から、第2スイッチSW2を接続(ON)することで、第1閉回路に、さらに負荷60を加えた閉回路(第2閉回路)が形成される。
【0035】
予備電解コンデンサ22は、第3スイッチSW3の接続(ON)と非接続(OFF)との切り替えに応じて、第1閉回路への並列接続の成立と非成立とを切り替え可能に設けられている。第1閉回路が成立している状態から、第3スイッチSW3を接続(ON)することで、第1閉回路に、さらに予備電解コンデンサ22を加えた閉回路(第3閉回路)が形成される。また、第2閉回路が成立している状態から、第3スイッチSW3を接続(ON)することで、第2閉回路に、さらに予備電解コンデンサ22を加えた閉回路(第4閉回路)が形成される。
【0036】
なお、図1では第1スイッチSW1の接続経路が単線化されているが、実際には整流回路11との間でプラス及びマイナスの両方の接続経路が存在している。すなわち、第2スイッチSW2が非接続(OFF)であり、かつ、第1スイッチSW1が接続(ON)である状態では、整流回路11を介してAC電源50から供給された電力が平滑部20に含まれる複数の電解コンデンサ21に蓄積される。また、この状態で、さらに第3スイッチSW3が接続(ON)されることで、整流回路11を介してAC電源50から供給された電力が予備電解コンデンサ22に蓄積される。
【0037】
また、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が接続(ON)である状態では、AC電源50を電源とした電圧が、整流回路11によって整流され、平滑部20に含まれる複数の電解コンデンサ21によって平滑されて負荷60に印加される。また、この状態で、さらに第3スイッチSW3が接続(ON)されることで、予備電解コンデンサ22も平滑に寄与する。
【0038】
負荷60は電動機であるが、これに限られるものでなく、平滑された電圧で動作する電気機器であってよい。負荷60の動作時には、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が接続(ON)される。
【0039】
電圧検出回路31は、平滑部20単体又は平滑部20と予備電解コンデンサ22とによる平滑系の電圧を検出して当該電圧を示す信号を出力する回路である。絶縁回路32は、電圧検出回路31と制御回路34との間に介在し、電圧検出回路31から制御回路34への信号伝達及び電圧検出回路31と制御回路34との絶縁を行う。絶縁回路32は、例えばフォトカプラを利用した絶縁及び信号伝達回路であるが、これに限られるものでなく、他の回路構成で同様の機能を実現してもよい。
【0040】
温度検出回路33は、平滑部20の温度を検出して当該温度を示す信号を出力する。温度検出回路33は、例えば熱電対を利用した温度センサであるが、これに限られるものでなく、平滑部20の温度を検出可能な他の方式による温度センサであってもよい。
【0041】
温度検出回路33は、平滑部20に含まれる電解コンデンサ21の温度をより高精度に検出できるよう、平滑部20に含まれる電解コンデンサ21のうち1つ以上に直接取り付けられるか、又は平滑部20の温度とみなしてよい程度に電解コンデンサ21により近い位置に設けられることが望ましい。具体例を挙げると、電解コンデンサ21のような電解コンデンサは、一般的に絶縁性を有する円筒状の外装スリーブで被覆されているが、電解コンデンサの円筒の上端面に対応する部分は当該外装スリーブで覆われていない。温度検出回路33が熱電対である場合、当該外装スリーブで覆われていない当該上端面に取り付けられることで、平滑部20に含まれる電解コンデンサ21の温度をより高精度に検出できる。
【0042】
制御回路34は、電圧検出回路31及び温度検出回路33の出力に基づいて出力部40を制御する。制御回路34は、例えば絶縁回路32を介した電圧検出回路31からの出力及び温度検出回路33からの出力がアナログの出力である場合、アナログ/デジタルコンバータ(ADC:Analog to Digital Converter)を含むSoC(System on a Chip)であるが、これに限られるものでない。絶縁回路32を介した電圧検出回路31からの出力及び温度検出回路33からの出力がデジタルの出力である場合、制御回路34は、DSP(Digital Signal Processor)であってよい。AC/DCコンバータ35は、AC電源50から供給される交流電力から制御回路34を動作させる直流電流を生成する。
【0043】
出力部40は、平滑装置1に設けられた電解コンデンサ(電解コンデンサ21、予備電解コンデンサ22)の状態に関する情報を、視覚的に識別可能な状態で出力する。出力部40のより具体的な構成例については、後述する図6を参照した説明で行う。
【0044】
なお、図1では電圧検出回路31と絶縁回路32とを接続する伝達経路の一部が平滑装置1の破線矩形外にあるが、これは図面において伝達経路を分かりやすく示すことを目的としたものであって、実際の配線の形態を反映したものでない。電圧検出回路31と絶縁回路32とを接続する伝達経路として機能する配線は、例えば平滑装置1の基板上に形成される。
【0045】
次に、電解コンデンサの静電容量に応じた電圧と、温度と、の関係について、図2を参照して説明する。
【0046】
図2は、電解コンデンサの温度と、電解コンデンサによって保持される静電容量の大きさと、の関係を示す概略的なグラフである。図2では、電解コンデンサの温度が所定温度RETである場合に、当該電解コンデンサの静電容量が所定容量STCになることを示している。所定容量STCは、当該電解コンデンサの製造時点で想定された性能要求に対応した静電容量である。以下、平滑部20の静電容量が100(%)であると記載した場合、平滑部20に含まれる全ての電解コンデンサ21が、所定温度RETの場合に所定容量STCを示す状態をさすものとする。所定温度RETは、例えば20度(℃)であるが、経年劣化を経ていない電解コンデンサの静電容量が所定容量STCになることを想定して設定された温度であればよく、必ずしも20℃に限定されるものでない。なお、図2を参照した説明では、電解コンデンサは経年劣化を経ていないものとする。
【0047】
図2のグラフGRAで示すように、電解コンデンサは、温度が低下すると保持できる静電容量が小さくなる。逆に、電解コンデンサは、温度が上昇すると保持できる静電容量が大きくなる。
【0048】
なお、図2に示すグラフはあくまで電解コンデンサの温度特性の傾向を示すことを目的とした概略的なものであり、実際の電解コンデンサの温度特性を忠実に再現したものでない。実際には、電解コンデンサの温度と静電容量との関係は一次直線で表される対応関係に対してばらつきを生じることが一般的である。ただし、電解コンデンサの特性として、温度の高低と静電容量の大小とが対応することは、図2を参照して説明した通りである。実施形態の電解コンデンサ21及び予備電解コンデンサ22は、係る特性を示す。
【0049】
次に、電解コンデンサによって構成された平滑部20の経年劣化について、図3から図5を参照して説明する。
【0050】
図3及び図4は、平滑装置1のリリース後の経過時間と、平滑部20の静電容量と、の関係の一例を示すグラフである。図5は、図3及び図4に示す関係を表の数値として示した図である。
【0051】
図3及び図4の横軸は、測定タイミングT0側から測定タイミングT11側に向かう時間経過を示す。図3に示す測定タイミングT0,T1,・・・,T11は、平滑部20の静電容量の算出ならび当該算出のための温度情報及び電圧情報の取得が行われたタイミングを示す。ここで、測定タイミングTnと、測定タイミングT(n+1)と、の間に、所定期間(例えば、2年)が経過しているものとする。nは、0から10の範囲内のいずれかの整数である。また、測定タイミングT0は、平滑装置1のリリース直後、すなわち、平滑部20の静電容量が100(%)であるタイミングであるものとする。図3及び図4の縦軸として示す「容量/%」は、測定タイミングT0における平滑部20の静電容量を100(%)とした場合における、より以後の測定タイミングT1,・・・,T11の各々における平滑部20の静電容量をパーセント(%)表記で示す。
【0052】
図5の表において数値のみが記載されているセルの値は、測定タイミングT0,T1,・・・,T11の各々における平滑部20の静電容量をパーセント(%)表記で示す。すなわち、当該セルの値は、図3及び図4の「容量/%」に対応する値である。例えば、図5に示す「T0」行の「20℃測定」列は、「100」である。当該「100」は、図3及び図4に関する説明と同様、測定タイミングT0における平滑部20の静電容量が100(%)であることを示している。なお、図3から図5を参照した説明では、測定タイミングT0における平滑部20は、温度が20℃であり、静電容量が100(%)であることを前提としているものとする。すなわち、測定タイミングT0における平滑部20の温度が20℃でない場合を想定していないものとする。
【0053】
まず、経年劣化自体の説明を行うことを目的として、電解コンデンサ21の温度が20℃に保たれていることを想定した場合の時間経過と平滑部20の静電容量との関係について説明する。図3及び図5の「20℃測定」は、当該場合を示す。図3の黒点及び図5の「20℃測定」欄で示すように、平滑部20の静電容量は、測定タイミングT0における100(%)の静電容量から、より後の測定タイミングT1,・・・,T11になるに従って徐々に小さくする。図3及び図5では、「20℃測定」の結果として、測定タイミングT1において平滑部20の静電容量が98(%)になり、測定タイミングT2において平滑部20の静電容量が96(%)になり、・・・、最後の測定タイミングT11では平滑部20の静電容量が45(%)になっていることが示されている。このように、平滑装置1のリリース後の時間経過に応じて平滑部20の静電容量が徐々に小さくなる経年劣化が生じる。係る経年劣化の傾向として、平滑部20の温度が一定(例えば、20℃)である場合、特に例外を生じることなく、時間経過に応じて平滑部20の静電容量が徐々に小さくなる。
【0054】
一方、図2を参照して説明したように、電解コンデンサは、温度に応じて静電容量が変化する特性を示す。特に、電解コンデンサは、温度が高くなると、静電容量が大きくなる。例えば、測定タイミングT0よりも後の測定タイミングT1,・・・,T11の時点で平滑部20の温度が60℃である場合、図3の白点及び図5の「60℃測定」欄で示すように、平滑部20の温度が20℃である場合よりも静電容量が大きくなっている。例えば、平滑部20は、温度が60℃である場合、測定タイミングT1の時点で静電容量が102.9(%)になっている。これは、温度が20℃である場合の測定タイミングT1の時点における平滑部20の静電容量(98%)だけでなく、測定タイミングT0における平滑部20の静電容量さえ上回っている。他の測定タイミングT2,・・・,T11の各々でも、平滑部20は、温度が60℃である場合、温度が20℃である場合よりも静電容量が大きくなっている。
【0055】
このような平滑部20の温度と平滑部20の静電容量との関係は、平滑装置1による供給電力の平滑が十分であるかの判定に影響を与えることがある。例えば、平滑装置1による供給電力の平滑には、図3に示す閾値FT以上の静電容量が必要であるとする。平滑部20の温度が20℃で保たれているとすると、測定タイミングT6の時点で平滑部20の静電容量は閾値FTを下回っている。一方、平滑部20の温度が60℃になっていると、測定タイミングT6の時点で平滑部20の静電容量は閾値FTを上回っている。平滑部20の温度が60℃になっていると、平滑部20の静電容量が閾値FTを下回るのは、測定タイミングT7の時点である。このように、平滑部20の温度によって、見かけ上の経年劣化の度合いが変わってしまうことがある。図3では、このような見かけ上の経年劣化の度合いの錯誤が生じうる範囲を破線の円A1で囲っている。
【0056】
実際の平滑装置1は、平滑装置1が使用される地域の気候及び天候ならびに平滑装置1の使用環境等、各種の要因によって温度が変わり得る。図4の白点及び図5の「20℃毎変化(0~60℃)」は、このように温度が変わる場合の一例を示している。具体的には、「20℃毎変化(0~60℃)」は、測定タイミングT1,T5,T9における平滑部20の温度が0℃であり、測定タイミングT2,T6,T10における平滑部20の温度が20℃であり、測定タイミングT3,T7,T11における平滑部20の温度が40℃であり、測定タイミングT4,T8における平滑部20の温度が60℃である場合を示している。「20℃毎変化(0~60℃)」では、測定タイミングT1から測定タイミングT4までの間、各測定タイミング間で20℃の温度上昇が生じていることによって、平滑部20の静電容量が94.3%から96%の範囲内でほとんど変化していない。一方、測定タイミングT4で60℃であった平滑部20の温度が測定タイミングT5で0℃になったことによって、測定タイミングT5の平滑部20の静電容量は、一気に82.875%にまで小さくなっている。図4では、このような極端な静電容量の変化が生じている範囲を破線の楕円A2で囲っている。なお、図4では、「20℃毎変化(0~60℃)」との対比の目的で、図3と同様の「20℃測定」を黒点で示している。
【0057】
なお、図3に示す閾値FTは、80%を超える静電容量であるが、あくまで一例であって、平滑装置1による供給電力の平滑において実際の平滑部20に求められる静電容量を厳密に示すものでない。供給電力の平滑に必要な静電容量の閾値は、平滑部20の性能等に応じて適宜設定されてよい。
【0058】
円A1及び楕円A2で示すような事象を考慮すると、平滑部20の経年劣化の判定精度を上げるためには、平滑部20の温度を考慮する必要がある。そこで、実施形態では、平滑部20の静電容量の算出に係り、電圧検出回路31からの情報(電圧情報)だけでなく、温度検出回路33からの情報(温度情報)も利用している。
【0059】
まず、電圧情報に基づいた平滑部20の静電容量の算出について説明する。電圧と放電時間との関係は、以下の式(1)のように表せる。式(1)のV1は、放電開始時の平滑部20の電圧、すなわち、100%の静電容量を発揮する状態の平滑部20の電圧を示す。式(1)のtは、平滑部20の放電時間を示す。式(1)のV(t)は、放電時間tが経過した後の平滑部20の電圧を示す。式(1)のRは、電気抵抗12の電気抵抗値を示す。式(1)のCは、平滑部20の静電容量、すなわち、平滑部20に含まれる複数の電解コンデンサ21の合成容量を示す。なお、式(1)のexp()は、eを底とする()内の数値のべき乗を示す。eは、ネイピア数である。
V(t)=V1×exp(-t/RC)・・・(1)
【0060】
電圧検出回路31が出力する情報は、式(1)のV(t)を示す電圧情報として機能する。式(1)のV1は、平滑装置1のリリース時点で既に測定済みとすることができ、当該V1を示す情報が制御回路34に保持されている。式(1)のtは、
第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が非接続(OFF)になったタイミングを開始時点(0)とした経過時間であり、制御回路34の機能に含まれるタイマーによって取得できる。式(1)のRは、平滑装置1の設計時点で予め定められた電気抵抗12の電気抵抗値であり、当該Rを示す情報が制御回路34に保持されている。このように、式(1)の要素のうち、平滑部20の静電容量(C)以外の要素(V(t),V1,t,R)が特定されることから、制御回路34は、式(1)に基づいて平滑部20の静電容量(C)を算出できる。このように、平滑部20の静電容量(C)が算出される場合、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が非接続(OFF)にされたタイミングを開始時点(0)とした経過時間、すなわち、放電時間tと、電圧(V(t))と、の関係から静電容量(C)が算出される。
【0061】
なお、式(1)から算出可能な平滑部20の静電容量(C)自体は、温度情報を考慮したものでない。制御回路34は、温度検出回路33からの情報を温度情報として取得し、図2を参照して説明した「平滑部20の温度と静電容量との関係」に基づいて、平滑部20の静電容量(C)を補正することで、「平滑部20の温度が所定温度RETである場合の平滑部20の静電容量(D)」を以下の式(2)のように算出する。
D=C/X・・・(2)
【0062】
式(2)のXは、温度情報が示す平滑部20の温度に対応した補正係数を示す。例えば、平滑部20の温度が所定温度RETである場合、X=1である。平滑部20の温度が所定温度RETでない場合、Xは、当該温度の場合の平滑部20の静電容量と所定容量STCとの比に対応した値になる。
【0063】
一例として、図2に示すように、平滑部20は、温度E1である場合に静電容量C1であるとする。この場合、Xは、所定容量STCを基準(1)とした、所定容量STCと静電容量C1との比(STC:S1=1:X)で表せる。温度E1は、所定温度RETを上回る。このため、静電容量C1は、所定容量STCを上回る。従って、Xは、1を上回る。係るXを式(2)代入して求められる「平滑部20の温度が所定温度RETである場合の平滑部20の静電容量(D)」は、式(1)に基づいて算出された静電容量(C)よりも小さくなる。また、平滑部20は、温度E2である場合に静電容量C2であるとする。上記したように、Xは、所定容量STCを基準(1)とした、所定容量STCと静電容量C2との比(STC:S2=1:X)で表せる。温度E2は、所定温度RETを下回る。このため、静電容量C2は、所定容量STCを下回る。従って、Xは、1を下回る。係るXを式(2)代入して求められる「平滑部20の温度が所定温度RETである場合の平滑部20の静電容量(D)」は、式(1)に基づいて算出された静電容量(C)よりも大きくなる。このように、実施形態では、平滑部20の温度が所定温度RETでない場合にも、「平滑部20の温度が所定温度RETである場合の平滑部20の静電容量(D)」を算出できる。
【0064】
所定温度RETが20℃である場合、このようにして算出された「平滑部20の温度が所定温度RETである場合の平滑部20の静電容量(D)」を、図3及び図5の「20℃測定」が示す平滑部20の経年劣化と、の関係にあてはめることで、平滑部20の経年劣化の度合いを高精度で求められる。具体的には、閾値FTを基準とした平滑部20の経年劣化の判定を、式(1)に基づいた平滑部20の静電容量(C)でなく、式(2)に基づいた「平滑部20の温度が所定温度RETである場合の平滑部20の静電容量(D)」にすればよい。これによって、測定タイミングT0時点の平滑部20の静電容量(100%)を基準にした平滑部20の経年劣化の判定をより高精度に行える。なお、制御回路34は、係る経年劣化の判定を行うため、閾値FT(図3参照)のような閾値を示す情報及び電解コンデンサの温度と静電容量との関係(図2参照)を示す情報を保持している。
【0065】
以上、所定温度RETが20℃である場合を想定した説明を行ったが、所定温度RETが20℃でない場合を含め、平滑装置1に求められる供給電力の平滑に関する性能に応じて閾値FTを適宜定めることで、同様の考え方で平滑部20の経年劣化の判定をより高精度に行える。
【0066】
なお、これまでの説明では、静電容量の算出対象が平滑部20である場合を例としてきたが、平滑部20に予備電解コンデンサ22が並列接続された構成の合成容量についても、制御回路34は、第3スイッチSW3が接続(ON)された状態で電圧情報及び温度情報を取得することで、同様に算出できる。また、係る合成容量についても、閾値FTに基づいた経年劣化の判定を行える。
【0067】
このように、制御回路34は、平滑装置1に設けられた電解コンデンサ(予備電解コンデンサ22及び平滑部20に含まれる複数の電解コンデンサ21)の経年劣化に関する情報を、電圧情報及び温度情報に基づいて算出できる。実施形態では、係る情報を示す表示出力が、出力部40によって行われる。以下、出力部40による情報の表示出力の態様例について、図6を参照して説明する。
【0068】
図6は、制御回路34と接続された出力部40の形態例を示すブロック図である。図6に示すように、出力部40は、発光制御回路41と、第1発光素子42と、第2発光素子43と、を有する。発光制御回路41は、第1発光素子42及び第2発光素子43の発光を制御するドライバ回路である。第1発光素子42及び第2発光素子43は、発光制御回路41の制御下で発光する発光素子である。例えば、第1発光素子42及び第2発光素子43がLED(Light Emitting Diode)である場合、発光制御回路41はLEDドライバ回路であるが、これに限られるものでない。発光制御回路41は、第1発光素子42及び第2発光素子43として採用される発光素子の種類に応じて適宜選定されればよい。
【0069】
実施形態では、予備電解コンデンサ22を含まない平滑部20のみの静電容量(D)が閾値FT以下になったと判定された場合、第1発光素子42が点灯する。また、この場合、平滑装置1による供給電力の平滑の性能を確保する目的で、制御回路34は、第3スイッチSW3を接続(ON)して平滑部20に予備電解コンデンサ22が並列接続された状態を成立させる。すなわち、この場合、制御回路34は、平滑部20に予備電解コンデンサ22が並列接続された構成の合成容量によって、平滑装置1による供給電力の平滑の性能を確保する。第1発光素子42の点灯は、予備電解コンデンサ22が接続されることで平滑装置1による供給電力の平滑の性能が確保されているものの、平滑部20のみの静電容量(D)では既に平滑装置1による供給電力の平滑の性能の確保が困難になっていることを示す。その後、平滑部20に予備電解コンデンサ22が並列接続された構成の合成容量としての静電容量(D)が閾値FT以下になったと判定された時点から、第2発光素子43が点灯する。第2発光素子43の点灯は、もはや平滑装置1全体又は電解コンデンサ21、予備電解コンデンサ22のうち1つ以上の置換を行わずに平滑装置1による供給電力の平滑の性能を確保することが困難になっていることを示す。
【0070】
以上のように説明した事項に対応した制御回路34による処理の流れについて、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の説明では、第3スイッチSW3は未接続(OFF)の状態で処理が開始されているものとする。
【0071】
図7は、制御回路34による処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、温度情報の取得が行われる(ステップS1)。また、電圧情報の取得が行われる(ステップS2)。ステップS1の処理とステップS2の処理は、順不同である。ただし、ステップS1の処理とステップS2の処理の関係は、ステップS1の処理によって得られた温度情報が示す温度である平滑部20の電圧が、ステップS2の処理によって得られた電圧情報が示す電圧であることを意図したものである。
【0072】
具体的には、制御回路34は、ステップS1の処理で、温度検出回路33からの出力を取得する。また、制御回路34は、ステップS2の処理で、絶縁回路32を介して電圧検出回路31からの出力を取得する。なお、ステップS2の処理が行われる場合、予め、第2スイッチSW2が未接続(OFF)にされたうえで第1スイッチSW1が接続(ON)され、平滑部20に十分に電荷が蓄えられる事前処理が行われる。後述するステップS6の処理後には、当該事前処理によって予備電解コンデンサ22にも十分に電荷が蓄えられる。また、実施形態ではステップS2の処理前にステップS1の処理が行われることで、電解コンデンサ21に対する充電による電解コンデンサ21の温度上昇の影響を抑制できる。
【0073】
制御回路34は、ステップS1の処理で得られた温度情報が示す温度と、ステップS2の処理で得られた電圧情報が示す電圧と、に対応した静電容量(D)の算出を行う(ステップS3)。具体的には、制御回路34は、当該電圧に基づいて式(1)から静電容量(C)を求め、当該静電容量(C)と当該温度とに基づいて式(2)から静電容量(D)を求める。
【0074】
制御回路34は、ステップS3の処理で算出された静電容量(D)が閾値(例えば、閾値FT)以下であるか判定する(ステップS4)。ここで、当該静電容量(D)が閾値を上回ると判定された場合(ステップS4;No)、ステップS1の処理に戻る。ここでいう「ステップS1の処理に戻る」とは、時間経過によって次の測定タイミングが訪れるまで、制御回路34が待機状態になることを示す。
【0075】
ステップS4の処理で静電容量(D)が閾値(例えば、閾値FT)以下であると判定された場合(ステップS4;Yes)、制御回路34は、予備電解コンデンサ22が接続済であるか判定する(ステップS5)。ここで、予備電解コンデンサ22が接続済でないと判定された場合(ステップS5;No)、制御回路34は、予備電解コンデンサ22を接続するためのスイッチ(第3スイッチSW3)をONする(ステップS6)。また、制御回路34は、第1発光素子42を点灯させるよう、出力部40を制御する(ステップS7)。その後、ステップS1の処理に戻る。
【0076】
具体的には、ステップS5の処理において、制御回路34は、第3スイッチSW3が既に接続(ON)されているか判定する。ここで、第3スイッチSW3が未接続(OFF)であると判定された場合、ステップS6の処理及びステップS7の処理が行われる。
【0077】
ステップS5の処理で予備電解コンデンサ22が接続済である、すなわち、第3スイッチSW3が既に接続(ON)されていると判定された場合(ステップS5;Yes)、制御回路34は、第2発光素子43を点灯させるよう、出力部40を制御する(ステップS8)。ステップS8の処理を以て、制御回路34の処理は終了する。
【0078】
なお、ステップS8の処理後に何の対処もなく平滑装置1が使用され続けることを抑制する仕組みがさらに設けられてもよい。例えば、第2発光素子43の点灯と共に音声等による警告が発せられるようにしてもよいし、何らかの対処がない限り平滑装置1が動作しないよう、第1スイッチSW1が未接続(OFF)になるようにしてもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、平滑装置1は、電解コンデンサ21が設けられた平滑部20と、電解コンデンサ21と並列接続された電気抵抗12と、平滑部20と電気抵抗12とを含む閉回路の電圧を検出する電圧検出回路31と、平滑部20の温度を検出する温度検出回路33と、当該閉回路とAC電源50との間の接続経路を開閉可能に設けられた第1スイッチSW1と、当該閉回路と負荷60との間の接続経路を開閉可能に設けられた第2スイッチSW2と、電圧検出回路31の出力及び温度検出回路33の出力と、平滑部20の放電時間と、に基づいて平滑部20の静電容量を算出する制御回路34と、静電容量の閾値(例えば、閾値FT)と、算出された平滑部20の静電容量と、の関係に対応した情報を出力する出力部(例えば、出力部40)と、を備える。
【0080】
従って、電解コンデンサ21が設けられた平滑部20の静電容量の算出に、当該平滑部20の温度を検出する温度検出回路33の出力が利用される。これによって、当該温度の影響を加味した静電容量の算出を行える。すなわち、電解コンデンサ21の静電容量が温度によって変化しても、係る静電容量の変化を踏まえて算出された静電容量と閾値との関係に基づいた出力を行える。よって、電解コンデンサ21の温度が電解コンデンサ21の静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサ21の静電容量に基づいた判定を行える。
【0081】
また、平滑装置1は、平滑部20及び電気抵抗12と並列に接続可能に設けられた予備電解コンデンサ22と、平滑部20と電気抵抗12とを含む閉回路に予備電解コンデンサ22が加わる回路の成立と非成立とを切り替え可能に設けられた第3スイッチSW3と、を備え、制御回路34は、算出された平滑部20の静電容量が閾値(例えば、閾値FT)以下である場合、当該閉回路に予備電解コンデンサ22が加わる回路を成立させるように第3スイッチSW3を動作させる。
【0082】
従って、平滑部20の静電容量が閾値以下になっても、予備電解コンデンサ22の静電容量を追加することによって平滑部20の静電容量を補える。よって、平滑装置1をより長寿命化できる。
【0083】
また、出力部(例えば、出力部40)は、第1発光素子42を有し、第1発光素子42は、平滑部20の静電容量が閾値(例えば、閾値FT)以下である場合に発光する。
【0084】
従って、予備電解コンデンサ22が使用される状態になったことを第1発光素子42の発光によって示せる。これによって、平滑装置1に対するメンテナンスの必要性を示唆できる。
【0085】
また、制御回路34は、閉回路に予備電解コンデンサ22が加わる回路が成立している場合、平滑部20の静電容量と予備電解コンデンサ22の静電容量とが合成された容量を算出する。
【0086】
従って、予備電解コンデンサ22が使用される状態になった後の「平滑部20の静電容量と予備電解コンデンサ22の静電容量とが合成された容量」と閾値との関係に基づいた判定及び出力を行える。
【0087】
また、出力部(例えば、出力部40)は、第2発光素子43を有し、第2発光素子43は、平滑部20の静電容量と予備電解コンデンサ22の静電容量とが合成された容量が閾値(例えば、閾値FT)以下である場合に発光する。
【0088】
従って、予備電解コンデンサ22を使用してもなお静電容量が閾値以下であることを第2発光素子43の発光によって示せる。これによって、平滑装置1に対するメンテナンスが不可欠な状態になったことを示唆できる。
【0089】
また、電圧検出回路31による電圧の検出は、事前処理の後に行われ、当該事前処理は、第2スイッチSW2を非接続にした状態で第1スイッチSW1が接続されて電解コンデンサ21が充電された後に第1スイッチSW1を非接続にする処理である。
【0090】
従って、電解コンデンサ21が十分に充電された状態で、電解コンデンサ21の静電容量を算出するための電圧の検出を行える。
【0091】
また、平滑装置1は、温度検出回路33による温度の検出は、第2スイッチSW2を非接続にした状態で第1スイッチSW1が接続されて電解コンデンサ21が充電された後に第1スイッチSW1を非接続にする事前処理の前に行われる。
【0092】
従って、電解コンデンサ21の充電により生じうる電解コンデンサ21の発熱の影響を受けることなく平滑部20の温度を検出できる。
【0093】
また、平滑装置1は、平滑部20は、並列に接続された複数の電解コンデンサ21を含む。
【0094】
従って、複数の電解コンデンサ21が平滑部20に設けられる場合でも、電解コンデンサ21の温度が電解コンデンサ21の静電容量に影響を与えることを加味して電解コンデンサ21の静電容量に基づいた判定を行える。
【0095】
また、平滑装置1は、負荷60は、電動機である。
【0096】
従って、電動機に供給される供給電力を平滑する平滑装置1で利用される電解コンデンサ21について、温度が静電容量に影響を与えることを加味して、電解コンデンサ21の静電容量に基づいた判定を行える。
【0097】
なお、実施形態では、出力部が発光制御回路41、第1発光素子42及び第2発光素子43を有する出力部40であるが、出力部の具体的な形態はこれに限られるものでない。例えば、出力部40は、負荷60としての電動機をより細かく動作制御する上位のコントローラに対して、静電容量(D)と閾値(例えば、閾値FT)との関係を示す情報を含むデータを送信するデータ処理を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 平滑装置
12 電気抵抗
20 平滑部
21 電解コンデンサ
22 予備電解コンデンサ
31 電圧検出回路
33 温度検出回路
34 制御回路
40 出力部
42 第1発光素子
43 第2発光素子
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7