IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バッテリ温度調整装置 図1
  • 特開-バッテリ温度調整装置 図2
  • 特開-バッテリ温度調整装置 図3
  • 特開-バッテリ温度調整装置 図4
  • 特開-バッテリ温度調整装置 図5
  • 特開-バッテリ温度調整装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146044
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バッテリ温度調整装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20241004BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241004BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241004BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241004BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241004BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241004BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241004BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241004BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241004BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/6568
B60K11/04 G
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/651
H01M10/615
H01M10/625
B60L50/60
B60L58/26
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058718
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鄭 安忻
(72)【発明者】
【氏名】上田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】吉成 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 航太
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB24
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC14
3D235FF43
3D235HH02
5H031AA09
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD08
5H125FF22
(57)【要約】
【課題】冷媒を入れ替える際に、空気を抜きやすいバッテリ温度調整装置を提供すること。
【解決手段】冷媒によりバッテリ10の温度を調整するバッテリ温度調整装置1は、冷媒が循環する回路2に設けられ、注水口3と、ポンプ4と、複数の熱交換器5、6と、回路2の分岐路に配置され、冷媒の流路を切り替える電磁弁7と、流路の切り替えを制御する制御装置8と、バッテリ10と熱交換を行う熱交換回路20と、第1熱交換器5が設けられる第1回路21と、第2熱交換器6が設けられる第2回路22と、を備え、注水口3は、第1回路21及び第2回路22のいずれかに配置され、注水口3から冷媒を充填する場合に、ポンプ4の作動後に電磁弁7の開閉制御を行い、回路2を、第1回路21及び第2回路22のいずれかのうち注水口3が配置された注水口配置回路210へ切り替えることで、回路2内に残存する空気を注水口3から排出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒によりバッテリの温度を調整するバッテリ温度調整装置であって、
冷媒が循環する回路に設けられ、冷媒を注入する注水口と、
冷媒を循環させるポンプと、
冷媒と熱交換する複数の熱交換器と、
前記回路の分岐路に配置され、冷媒が流通する流路を切り替える電磁弁と、
前記電磁弁による前記流路の切り替えを制御する制御装置と、
前記バッテリと熱交換を行う熱交換回路と、
前記電磁弁により前記熱交換回路から切り替え可能に配置され、第1熱交換器が設けられる第1回路と、
前記電磁弁により前記熱交換回路から切り替え可能に配置され、第2熱交換器が設けられる第2回路と、を備え、
前記注水口は、前記第1回路及び前記第2回路のいずれかに配置され、
前記注水口から冷媒を充填する場合に、
前記ポンプの作動後に前記電磁弁の開閉制御を行い、
冷媒を循環させる前記回路を、前記第1回路及び前記第2回路のいずれかのうち前記注水口が配置された注水口配置回路へ切り替えることで、
前記回路内に残存する空気を前記注水口から排出させる、バッテリ温度調整装置。
【請求項2】
冷媒は、前記注水口配置回路から、前記熱交換回路を経由して、前記注水口配置回路を流通するように循環する、請求項1に記載のバッテリ温度調整装置。
【請求項3】
前記開閉制御は、前記注水口配置回路から冷媒が前記熱交換回路へ流通した後、前記第1回路及び前記第2回路のいずれかのうち前記注水口が配置されない注水口非配置回路を開き、
前記注水口非配置回路を冷媒が通過した後に、冷媒の前記流路を前記注水口配置回路へ切り替えて、前記注水口配置回路から空気を排出させることを含む、請求項1又は2に記載のバッテリ温度調整装置。
【請求項4】
前記開閉制御は、電磁弁閉鎖時間を経過した後、前記電磁弁を開くように行い、
前記電磁弁閉鎖時間は、前記熱交換回路に満たされる冷媒の水量及び前記注水口配置回路に満たされる冷媒の水量を足した値を、前記電磁弁を閉じた状態の流量で除した値以上とする、請求項3に記載のバッテリ温度調整装置。
【請求項5】
前記開閉制御は、前記電磁弁閉鎖時間を経過した後、所定の時間電磁弁を開くように行い、
前記所定の時間の下限は、前記注水口非配置回路に満たされる冷媒の水量を、前記電磁弁を開いた状態の流量で除した値とし、
前記所定の時間の上限は、前記熱交換回路に満たされる冷媒の水量を、前記電磁弁を開いた状態の流量で除した値とする、請求項4記載のバッテリ温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリの温度調整装置において、バッテリや熱交換器が設けられた回路を冷媒が流通するように構成され、電磁弁を切り替えて冷媒の流路を制御することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
車両のメンテナンス等で、冷媒を入れ替える場合、真空注水器を用いないで注水を行うと、回路に空気が入る。空気は回路に設けられた注水口から排出される。しかし、熱交換器等が複数あって回路が分岐している場合、注水口の位置によっては、空気を抜くことができない部分が生じることがある。このため、注水口の配置は、空気を抜くことができる位置に限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-47555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷媒を入れ替える際に、空気を抜きやすいバッテリ温度調整装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 冷媒によりバッテリの温度を調整するバッテリ温度調整装置(例えば、バッテリ温度調整装置1)であって、冷媒が循環する回路(例えば、回路2)に設けられ、冷媒を注入する注水口(例えば、注水口3)と、冷媒を循環させるポンプ(例えば、ポンプ4)と、冷媒と熱交換する複数の熱交換器(例えば、第1熱交換器5、第2熱交換器6)と、前記回路の分岐路に配置され、冷媒が流通する流路を切り替える電磁弁(例えば、電磁弁7)と、前記電磁弁による前記流路の切り替えを制御する制御装置(例えば、制御装置8)と、前記バッテリと熱交換を行う熱交換回路(例えば、共通回路20)と、前記電磁弁により前記熱交換回路から切り替え可能に配置され、第1熱交換器(例えば、第1熱交換器5)が設けられる第1回路(例えば、第1回路21)と、前記電磁弁により前記熱交換回路から切り替え可能に配置され、第2熱交換器(例えば、第2熱交換器6)が設けられる第2回路(例えば、第2回路22)と、を備え、前記注水口は、前記第1回路及び前記第2回路のいずれかに配置され、前記注水口から冷媒を充填する場合に、前記ポンプの作動後に前記電磁弁の開閉制御を行い、冷媒を循環させる前記回路を、前記第1回路及び前記第2回路のいずれかのうち前記注水口が配置された注水口配置回路(例えば、注水口配置回路210)へ切り替えることで、前記回路内に残存する空気を前記注水口から排出させる、バッテリ温度調整装置である。
【0007】
(2) 上記(1)に記載のバッテリ温度調整装置において、冷媒は、前記注水口配置回路から、前記熱交換回路を経由して、前記注水口配置回路を流通するように循環することが好ましい。
【0008】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のバッテリ温度調整装置において、前記開閉制御は、前記注水口配置回路から冷媒が前記熱交換回路へ流通した後、前記第1回路及び前記第2回路のいずれかのうち前記注水口が配置されない注水口非配置回路(例えば、注水口非配置回路220)を開き、前記注水口非配置回路を冷媒が通過した後に、冷媒の前記流路を前記注水口配置回路へ切り替えて、前記注水口配置回路から空気を排出させることを含むことが好ましい。
【0009】
(4) 上記(3)に記載のバッテリ温度調整装置において、前記開閉制御は、電磁弁閉鎖時間(例えば、電磁弁第一閉鎖時間t0、電磁弁第二閉鎖時間t2)を経過した後、前記電磁弁を開くように行い、前記電磁弁閉鎖時間は、前記熱交換回路に満たされる冷媒の水量及び前記注水口配置回路に満たされる冷媒の水量を足した値を、前記電磁弁を閉じた状態の流量で除した値以上とすることが好ましい。
【0010】
(5) 上記(4)に記載のバッテリ温度調整装置において、前記開閉制御は、前記電磁弁閉鎖時間を経過した後、所定の時間(例えば、所定の時間t1)電磁弁を開くように行い、前記所定の時間の下限は、前記注水口非配置回路に満たされる冷媒の水量を、前記電磁弁を開いた状態の流量で除した値とし、前記所定の時間の上限は、前記熱交換回路に満たされる冷媒の水量を、前記電磁弁を開いた状態の流量で除した値とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)によれば、電磁弁の開閉制御を行って、回路を注水口配置回路に切り替えることで、回路内に残存する空気を注水口のある回路に誘導することができる。よって、冷媒の充填時に、空気を抜きやすくなる。これにより、注水口のレイアウトの自由度が広がり、回路をコンパクトに設計することができるとともに、バッテリの温度調整装置をコンパクトにすることが可能になる。さらに、冷媒の充填時に真空注水器がなくとも注水が可能になり、使用者の負担が軽減される。
【0012】
上記(2)によれば、注水口が配置された注水口配置回路の空気が確実に排出される。
【0013】
上記(3)によれば、注水口が配置されていない注水口非配置回路に残存した空気も、回路を循環して注水口配置回路を流通し、注水口から排出される。注水口をどこに配置しても空気を排出することが可能になるため、注水口のレイアウトの自由度が広がり、回路をコンパクトに設計することができる。また、バッテリの温度調整装置をコンパクトにすることが可能になる。さらに、冷媒の充填時に真空注水器がなくとも注水が可能になり、使用者の負担が軽減される。
【0014】
上記(4)によれば、電磁弁閉鎖時間を、共通回路及び注水口配置回路を流れる水が注水口まで到達し、注水口配置回路にある空気を注水口まで運んで排出する時間の下限以上として設定できる。よって、より正確で効率的に空気の排出を行うことが可能になる。
【0015】
上記(5)によれば、注水口非配置回路に残存している空気を共通回路に排出するのに要する時間を所定の時間の下限とし、注水口非配置回路から排出された空気が再び注水口非配置回路に流入しないようにする時間を所定の時間の上限として設定できる。よって、より正確で効率的に空気の排出を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のバッテリ温度調整装置を示す図である。
図2】本実施形態のバッテリ温度調整装置における電磁弁を閉鎖させた状態を示す図である。
図3】本実施形態のバッテリ温度調整装置における電磁弁を開放させた状態を示す図である。
図4】本実施形態のバッテリ温度調整装置における電磁弁の開閉制御を説明するグラフである。
図5】本実施形態のバッテリ温度調整装置における注水率を示すグラフである。
図6】他の実施形態に係るバッテリ温度調整装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。バッテリ温度調整装置1は、例えば電気自動車等の車両に搭載されたバッテリ10の温度を冷媒により調整するものである。図1に示すように、バッテリ温度調整装置1は、バッテリ10の周囲に冷媒が流通する回路2を含んで構成され、バッテリ10と、回路2と、注水口3と、ポンプ4と、複数の熱交換器(第1熱交換器5、第2熱交換器6)と、電磁弁7と、制御装置8と、を有する。
【0018】
バッテリ10は、車両を駆動する不図示のモータに電力を供給する。バッテリ10は、複数のセルが結合されて構成され、車両に配置されている。
【0019】
第1熱交換器5は、冷媒と熱交換してバッテリ10を冷却する冷却用の熱交換器であり、ラジエーターやチラー等であってよい。
【0020】
第2熱交換器6は、冷媒と熱交換し、必要に応じて冷媒を加温する加温用の熱交換器であり、ヒータであってよい。
【0021】
ポンプ4は、後述する回路2に設けられ、冷媒を図1に示す矢印の方向へ送出するウォーターポンプである。ポンプ4は、回路2におけるバッテリ10の上流に配置され、冷媒を循環させる。なお、冷媒は、所謂ロングライフクーラント(LLC)と呼ばれる凍結しにくい液体である。
【0022】
電磁弁7は、回路2の分岐路に配置され、冷媒が流通する流路を切り替える。図1に示すように、本実施形態では、三方弁が用いられる。
【0023】
制御装置8は、電磁弁7に接続され、電磁弁7に通電させるか否かにより流路の切り替えを制御する中央演算装置である。制御装置8が、電磁弁7を通電させないOFFの状態では、冷媒は第1回路21を流通する。制御装置8が電磁弁7を通電させてONにすると、冷媒は第2回路22を流通する。
【0024】
回路2は、熱交換回路としての共通回路20と、第1回路21と、第2回路22と、を有する。回路2は、例えば金属等の伝熱性の高い素材で構成された管により構成され、バッテリ10の周囲で冷媒が循環するように設けられる。
【0025】
共通回路20は、バッテリ10の周囲を通るように配置され、バッテリ10と熱交換を行う。共通回路20は、以下に説明する第1回路21及び第2回路22の両方に接続され、第1熱交換器5を通過した冷媒及び第2熱交換器6を通過した冷媒のいずれもが、共通して流通するようになっている。
【0026】
第1回路21は、第1熱交換器5が設けられ、冷媒が流通する冷却用の回路2である。第1回路21は、上流側が共通回路20の下流側に配置された電磁弁7に接続され、下流側が共通回路20に接続される。第1回路21は、電磁弁7により共通回路20から切り替え可能に配置され、電磁弁7がOFFのときに、冷媒が流通する。
【0027】
第2回路22は、第2熱交換器6が設けられ、冷媒が加温されて流通する加温用の回路2である。第2回路22は、上流側が共通回路20の下流側に配置された電磁弁7に接続され、第1回路21とは別に分岐して、下流側が共通回路20に接続される。第2回路22は、電磁弁7により共通回路20から切り替え可能に配置され、電磁弁7がONのときに、冷媒が流通する。
【0028】
注水口3は、第1回路21に配置され、回路2内の冷媒を排出したり、新たな冷媒を注入したりするための開閉可能な開口部である。注水口3は、車両又はバッテリ温度調整装置1が故障等したときに、冷媒を交換するために開閉される。注水口3では、下方に冷媒が、上方に空気が溜まるように気液分離が行われ、上方の空気が排出されるように構成されている。
【0029】
次に、上記のバッテリ温度調整装置1において、冷媒の交換を行うため注水口3から冷媒を充填する場合に、回路2内に残存する空気を排出させる手順について説明する。本実施形態では、注水口3が配置された第1回路21を注水口配置回路210と呼び、注水口3が配置されていない第2回路22を、注水口非配置回路220と呼ぶ。
【0030】
冷媒を注水口3から充填する。充填した後、ポンプ4を作動させて冷媒を回路2内に循環させる。図2に示すように、制御装置8が電磁弁7をOFFにしている間、冷媒は、注水口配置回路210から共通回路20を通ってバッテリ10を冷却する。この電磁弁をOFFにしている時間を電磁弁閉鎖時間としての電磁弁第一閉鎖時間t0とする。電磁弁第一閉鎖時間t0については後述する。また、冷媒は、共通回路20を経由して電磁弁7を通り、注水口配置回路210を流通するように循環している。冷媒が注水口配置回路210を循環している間は、充填時に回路2内に残存した空気は、注水口配置回路210内に配置されている注水口3の上方から排出される。
【0031】
図3に示すように、制御装置8は、電磁弁第一閉鎖時間t0の後、所定の時間t1電磁弁7を開くように開閉制御を行う。制御装置8が電磁弁7をONにすると、注水口配置回路210が閉じられ、注水口非配置回路220が開かれる。注水口配置回路210内の冷媒が共通回路20を流通した後、注水口非配置回路220を開くことで、流路を注水口配置回路210から注水口非配置回路220へ切り替える。冷媒は注水口非配置回路220から共通回路20を循環するので、注水口非配置回路220に含まれていた空気は、冷媒とともに共通回路20の方へ移動する。
【0032】
注水口非配置回路220を冷媒が通過し、注水口非配置回路220内の空気が共通回路20へ移動した後で、制御装置8が再び電磁弁をOFFにすると、流路が注水口配置回路210へ切り替えられる。この所定の時間t1の経過後に電磁弁をOFFにしている時間を、電磁弁閉鎖時間としての電磁弁第二閉鎖時間t2とする。電磁弁第二閉鎖時間t2については後述する。図2に示すように、共通回路20を通過する空気は、注水口配置回路210を通って注水口3から排出される。このように、電磁弁7を所定の時間t1開いた後に閉じる動作を複数回行って、冷媒を循環させる回路2を注水口非配置回路220から、共通回路20を介して注水口配置回路210へ切り替えることで、回路2内に残存する空気が注水口3から排出される。
【0033】
図4及び図5に示すように、電磁弁7のON、OFFの開閉制御を複数回繰り返すと、注水口非配置回路220に残存した空気が確実に排出される。回路2が長かったり湾曲する部分があったりする場合には、複数回繰り返すことが好ましい。開閉制御を複数行うにつれ、冷媒に含まれていた空気が集まって気泡となり、排出されるので、注水率が向上する。
【0034】
次に、電磁弁第一閉鎖時間t0、所定の時間t1、電磁弁第二閉鎖時間t2について説明する。ここで、「水量」とは、回路2のそれぞれ(共通回路20、第1回路21及び第2回路22)を満たす冷媒の流体の総量のことを指し、水(HO)のことを意味しないが、流量と区別するため水量と言う。回路2内の冷媒の流量(L/min)は、水温が低い場合と高い場合で、変化する。例えば気温が非常に低い環境で、水温が低い場合、冷媒の粘性が高まる場合がある。低温の範囲及び高温の範囲は、低温及び高温合わせて0度から40度の範囲で、車両が駆動される環境等に応じて適宜設定されてよい。
【0035】
共通回路20の水量をV_A、注水口配置回路210の水量をV_B、注水口非配置回路220の水量をV_Cとする。
また、回路2のそれぞれにおける低温下で電磁弁7が開放された状態の流量をQ_on_low、高温下で電磁弁7が開放された状態の流量をQ_on_high、低温下で電磁弁7が閉鎖された状態の流量をQ_off_low、高温下で電磁弁7が閉鎖された状態の流量をQ_off_high、とする。
【0036】
電磁弁第一閉鎖時間t0は、下限値を有する。電磁弁第一閉鎖時間t0の下限値を閉鎖下限時間t0_minとする。閉鎖下限時間t0_minは、共通回路20を移動した空気を、電磁弁7を閉鎖することで、注水口配置回路210の方へ移動させ、注水口3まで届けるために必要な下限の時間である。閉鎖下限時間t0_minは、共通回路20に満たされる冷媒の水量(V_A)及び注水口配置回路210に満たされる冷媒の水量(V_B)を足した値を、低温下で電磁弁7を閉鎖した状態の共通回路20及び注水口配置回路210内の流量(Q_off_low)で除して得られる(t0_min=(V_A+V_B)/Q_off_low)。電磁弁第一閉鎖時間t0は、この下限値以上であればよい。
【0037】
電磁弁7を開く所定の時間t1とは、図4に示すように、電磁弁7をONにする時間であり、流路を注水口非配置回路220へ開放する時間である。
【0038】
所定の時間t1は、下限値と、上限値を有する。所定の時間t1の下限値を開放下限時間t1_minとし、所定の時間t1の上限値を開放上限時間t1_maxとする。
開放下限時間t1_minは、注水口非配置回路220に残存している空気を共通回路20へ排出するのに要する最も短い下限の時間である。開放下限時間t1_minは、注水口非配置回路220に満たされる冷媒の水量(V_C)を、低温下で電磁弁7を開いたときの注水口非配置回路220内の流量(Q_on_low)で除して得られる(t1_min=V_C/Q_on_low)。
開放上限時間t1_maxは、注水口非配置回路220から共通回路20へ移動した空気が、再び注水口非配置回路220へ戻っていかないように、電磁弁7を開いたままにしておく最も長い上限の時間である。開放上限時間t1_maxは、共通回路20に満たされる冷媒の水量(V_A)を、高温下で電磁弁7を開いたときの共通回路20内の流量(Q_on_high)で除して得られる(t1_max=V_A/Q_on_high)。
所定の時間t1は、開放下限時間t1_min<所定の時間t1<開放上限時間t1_max、となるように設定される。
【0039】
電磁弁第二閉鎖時間t2は、所定の時間t1電磁弁7を開いた後で、注水口非配置回路220を通過した冷媒が、共通回路20を経て注水口配置回路210を通り、注水口3から抜けていくまでの時間である。電磁弁7を開いて閉じる開閉制御を複数回行う手順を説明するため、電磁弁第一閉鎖時間t0と区別して記載したが、電磁弁第二閉鎖時間t2は、電磁弁第一閉鎖時間t0と同様に下限値を求めることができる。すなわち、閉鎖下限時間t2_minは、共通回路20に満たされる冷媒の水量(V_A)及び注水口配置回路210に満たされる冷媒の水量(V_B)を足した値を、低温下で電磁弁7を閉鎖した状態の共通回路20及び注水口配置回路210内の流量(Q_off_low)で除して得られる(t2_min=(V_A+V_B)/Q_off_low)。電磁弁第二閉鎖時間t2は、この下限値以上であればよい。
【0040】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
(1)冷媒によりバッテリの温度を調整するバッテリ温度調整装置1を、冷媒が循環する回路2に設けられ、冷媒を注入する注水口3と、冷媒を循環させるポンプ4と、冷媒と熱交換する複数の熱交換器(第1熱交換器5、第2熱交換器6)と、回路2の分岐路に配置され、冷媒が流通する流路を切り替える電磁弁7と、電磁弁7による流路の切り替えを制御する制御装置8と、バッテリ10と熱交換を行う共通回路20と、電磁弁7により共通回路20から切り替え可能に配置され、第1熱交換器5が設けられる第1回路21と、電磁弁7により共通回路20から切り替え可能に配置され、第2熱交換器6が設けられる第2回路22と、を含んで構成した。注水口3を、第1回路21及び第2回路22のいずれかに配置し、注水口3から冷媒を充填する場合に、ポンプ4の作動後に電磁弁7の開閉制御を行い、冷媒を循環させる回路2を、第1回路21及び第2回路22のいずれかのうち注水口3が配置された注水口配置回路210へ切り替えることで、回路2内に残存する空気を注水口3から排出させた。
電磁弁7の開閉制御を行って、回路2を注水口配置回路210に切り替えることで、回路2内に残存する空気を注水口3のある回路2に誘導することができる。よって、冷媒の充填時に、空気を抜きやすくなる。これにより、注水口3のレイアウトの自由度が広がり、回路2をコンパクトに設計することができるとともに、バッテリ温度調整装置1をコンパクトにすることが可能になる。さらに、冷媒の充填時に真空注水器がなくとも注水が可能になり、使用者の負担が軽減される。
【0041】
(2)本実施形態によれば、冷媒を、注水口配置回路210から、共通回路20を経由して、注水口配置回路210を流通するように循環させた。これにより、注水口3が配置された注水口配置回路の空気が確実に排出される。
【0042】
(3)本実施形態によれば、開閉制御を、注水口配置回路210から冷媒が共通回路20へ流通した後、第1回路21及び第2回路22のいずれかのうち注水口3が配置されない注水口非配置回路220を開き、注水口非配置回路220を冷媒が通過した後に、冷媒の流路を注水口配置回路210へ切り替えて、注水口配置回路210から空気を排出させた。これにより、注水口3が配置されていない注水口非配置回路220に残存した空気も、回路2を循環して注水口配置回路210を流通し、注水口3から排出される。注水口3をどこに配置しても空気を排出することが可能になるため、注水口3のレイアウトの自由度が広がり、回路2をコンパクトに設計することができる。また、バッテリ温度調整装置1をコンパクトにすることが可能になる。さらに、冷媒の充填時に真空注水器がなくとも注水が可能になり、使用者の負担が軽減される。
【0043】
(4)本実施形態によれば、開閉制御を、電磁弁閉鎖時間(電磁弁第一閉鎖時間t0、電磁弁第二閉鎖時間t2)経過の後、電磁弁7を開くように行い、電磁弁閉鎖時間を、共通回路20に満たされる冷媒の水量(V_A)及び注水口配置回路210に満たされる冷媒の水量(V_B)を足した値を、電磁弁7を閉じた状態の流量で除した値以上とした。これにより、電磁弁閉鎖時間を、共通回路20及び注水口配置回路210を流れる水が注水口3まで到達し、注水口配置回路210にある空気を注水口3まで運んで排出する時間の下限以上として設定できる。よって、より正確で効率的に空気の排出を行うことが可能になる。
【0044】
(5)本実施形態によれば、開閉制御を、電磁弁閉鎖時間(電磁弁第一閉鎖時間t0、電磁弁第二閉鎖時間t2)経過の後、所定の時間t1電磁弁7を開くように行い、所定の時間t1の下限(t1_min)を、注水口非配置回路220に満たされる冷媒の水量(V_C)を、電磁弁7を開いた状態の流量で除した値とし、所定の時間t1の上限(t1_max)を、共通回路20に満たされる冷媒の水量(V_C)を、電磁弁を開いた状態の流量で除した値とした。これにより、注水口非配置回路220に残存している空気を共通回路20に排出するのに要する時間を所定の時間t1の下限とし、注水口非配置回路220から排出された空気が再び注水口非配置回路220に流入しないようにする時間を所定の時間t1の上限として設定できる。よって、より正確で効率的に空気の排出を行うことが可能になる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。図6は、他の実施形態に係るバッテリ温度調整装置1Aを示す。図6に示すように、注水口3Aは、第2熱交換器6が配置された第2回路22に配置されていてもよい。この場合、第2回路22が注水口配置回路220Aとなり、第1回路21が注水口非配置回路210Aとなる。
【0046】
他の実施形態では、第2熱交換器6が配置された第2回路22(注水口配置回路220A)から空気を排出した後、所定の時間t1、電磁弁7の開閉制御を行う。この際、制御装置8は、第1熱交換器5が配置された第1回路21(注水口非配置回路210A)を流通する空気が、共通回路20へ移動した後に、第2熱交換器6が配置された第2回路22(注水口配置回路220A)から排出されるよう、電磁弁7を操作する。この構成によっても、第2熱交換器6が配置された注水口配置回路220Aから空気を排出することができる。
【0047】
また、電磁弁7をONとしたときに、又はOFFとしたときに、第1回路21及び第2回路22のいずれを冷媒が流通するかについて、適宜設定及び変更してよい。また、開閉制御が、電磁弁7を開いた状態から開始されてもよい。
【0048】
また、上記の説明では、流量として、高温及び低温の場合の温度を分けているが、これに限定されない。流量を温度の差異を考慮せずに無段階で設定する場合があってもよい。電磁弁第一閉鎖時間、所定の時間、電磁弁第二閉鎖時間は、各回路における水量を流量で除することで求められる。
【0049】
また、電磁弁7がOFFの状態で冷媒を注水口配置回路210及び共通回路20を循環させる電磁弁第一閉鎖時間(図4参照)は、予め設定されていてもよく、注水口配置回路210内にセンサを設けて注水口配置回路210内の空気が抜けたかどうかをセンサにより検知してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 バッテリ温度調整装置
2 回路
3 注水口
4 ポンプ
5 第1熱交換器
6 第2熱交換器
7 電磁弁
8 制御装置
20 共通回路(熱交換回路)
21 第1回路
22 第2回路
210、220A 注水口配置回路
220、210A 注水口非配置回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6