(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146045
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/075 20060101AFI20241004BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20241004BHJP
B66F 9/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B66F9/075 C
B66F9/06 C
B66F9/10 A
B66F9/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058721
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】和中 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中井 悠人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬晃
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】内原 正登
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333FA09
3F333FD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】転倒しにくい台車を提供する。
【解決手段】台車は、車輪を有する第1ベース部と、第1ベース部上に位置する第2ベース部と、第1ベース部に対して第2ベース部を昇降させる昇降ユニットと、荷物を支持するフォークを有して荷物の受け渡しを行う受け渡し部と、第2ベース部に対して受け渡し部を、フォークの延びる前後方向に移動させる移動ユニットと、を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する第1ベース部と、
前記第1ベース部上に位置する第2ベース部と、
前記第1ベース部に対して前記第2ベース部を昇降させる昇降ユニットと、
荷物を支持するフォークを有して荷物の受け渡しを行う受け渡し部と、
前記第2ベース部に対して前記受け渡し部を、前記フォークの延びる前後方向に移動させる移動ユニットと、を備える、台車。
【請求項2】
前記車輪は、前記前後方向において前記フォークの突出する前方に位置する前輪と、前記前輪よりも前記前後方向において前方とは反対側である後方に位置する後輪と、を有する、請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記昇降ユニットの重心は、前記前輪よりも後方に位置する、請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記受け渡し部は、前記フォークを前記第2ベース部に対して昇降させる受け渡し昇降部を有する、請求項1又は2に記載の台車。
【請求項5】
前記受け渡し昇降部は、前記フォークを、前記第2ベース部の上面よりも上方の位置と、前記上面よりも下方の位置との間において昇降させ得る、請求項4に記載の台車。
【請求項6】
前記受け渡し部は、前記受け渡し昇降部を収容するマストを有する、請求項5に記載の台車。
【請求項7】
前記昇降ユニットは、前記第1ベース部の第1位置及び前記第2ベース部の第2位置に接続されて前記第1ベース部に対して前記第2ベース部を昇降させる第1昇降部と、前記第1ベース部の第3位置及び前記第2ベース部の第4位置に接続されて前記第1ベース部に対して前記第2ベース部を昇降させる第2昇降部と、を含み、
前記第1位置と前記第3位置とは、前記前後方向、及び前記前後方向に垂直且つ水平方向に平行な車幅方向における前記第1ベース部の中心位置を挟んでおり、
前記第2位置と前記第4位置とは、前記前後方向、及び前記車幅方向における前記第2ベース部の中心位置を挟んでいる、請求項1又は2に記載の台車。
【請求項8】
前記第1ベース部は、前記昇降ユニットが前記第2ベース部を昇降させる昇降方向からの観察において矩形の形状を有し、
前記第1位置は、前記第1ベース部の第1角部に配置され、
前記第3位置は、前記第1ベース部の、前記第1角部の対角線上に位置する第2角部に配置され、
前記第2ベース部は、前記昇降方向からの観察において矩形の形状を有し、
前記第2位置は、前記第2ベース部の第3角部に配置され、
前記第4位置は、前記第2ベース部の、前記第3角部の対角線上に位置する第4角部に配置される、請求項7に記載の台車。
【請求項9】
前記台車が置かれた面から前記前輪が離間するように前記第1ベース部の前方の一部を持ち上げる前輪昇降部を備える、請求項2に記載の台車。
【請求項10】
前記第1ベース部は、前記車輪が設けられる第1ベース部本体と、前記昇降ユニットが前記第2ベース部を昇降させる昇降方向における前記前輪と前記第1ベース部本体との距離を変更する第1ベース部本体昇降部と、を有する、請求項2に記載の台車。
【請求項11】
前記前輪にかかる荷重及び前記後輪にかかる荷重を測定するセンサ部を備える、請求項9又は10に記載の台車。
【請求項12】
前記車輪は、複数の前記前輪を有し、
前記移動ユニットは、前記前後方向に垂直且つ水平方向に平行な車幅方向において、複数の前記前輪同士の間に位置する、請求項2又は3に記載の台車。
【請求項13】
前記移動ユニットは、前記第2ベース部に接続された第1シリンダと、前記受け渡し部に接続された第2シリンダと、前記第1シリンダ及び前記第2シリンダに接続された接続部と、を有し、
前記第1シリンダは、前記第2ベース部に対して前記接続部を、前記前後方向に移動させ、
前記第2シリンダは、前記接続部に対して前記受け渡し部を、前記前後方向に移動させる、請求項1又は2に記載の台車。
【請求項14】
前記車輪は、第1車輪と、前記第1車輪よりも直径の小さな第2車輪と、を有する、請求項1に記載の台車。
【請求項15】
前記第1車輪に回転を入力する第1モータと、前記第2車輪に回転を入力する第2モータとを備え、
前記第1モータは前記第2モータよりも出力容量が大きい、請求項14に記載の台車。
【請求項16】
前記第1車輪に回転を入力する第1モータと、前記第1モータから入力される回転を減速して前記第1車輪に回転を伝達する第1減速機と、前記第2車輪に回転を入力する第2モータと、前記第2モータから入力される回転を減速して前記第2車輪に回転を伝達する第2減速機と、を備え、
前記第1減速機は前記第2減速機よりも減速比が大きい、請求項14に記載の台車。
【請求項17】
前記第1車輪は、前記前後方向において前記フォークの突出する前方に位置する前輪であり、
前記第2車輪は、前記前輪よりも前記前後方向において前方とは反対側である後方に位置する後輪である、請求項14乃至16のいずれか一項に記載の台車。
【請求項18】
前記車輪はメカナムホイールである、請求項1又は2に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷役作業に用いられる機械として、台車が知られている。例えば、特許文献1には、車体とフォークとを備えるフォークリフトが記載されている。このようなフォークリフトによれば、フォークに荷物を載せて走行することによって、当該荷物を運搬できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より安定的に転倒の防止された台車が求められていた。特に、フォークに荷物を載せた状態において、より安定的に転倒の防止された台車が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、転倒しにくい台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、車輪を有する第1ベース部と、
前記第1ベース部上に位置する第2ベース部と、
前記第1ベース部に対して前記第2ベース部を昇降させる昇降ユニットと、
荷物を支持するフォークを有して荷物の受け渡しを行う受け渡し部と、
前記第2ベース部に対して前記受け渡し部を、前記フォークの延びる前後方向に移動させる移動ユニットと、を備える、台車である。
【0007】
本開示の第2の態様においては、上述した第1の態様による台車において、前記車輪は、前記前後方向において前記フォークの突出する前方に位置する前輪と、前記前輪よりも前記前後方向において前方とは反対側である後方に位置する後輪と、を有してもよい。
【0008】
本開示の第3の態様においては、上述した第2の態様による台車において、前記昇降ユニットの重心は、前記前輪よりも後方に位置してもよい。
【0009】
本開示の第4の態様においては、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによる台車において、前記受け渡し部は、前記フォークを前記第2ベース部に対して昇降させる受け渡し昇降部を有してもよい。
【0010】
本開示の第5の態様においては、上述した第4の態様による台車において、前記受け渡し昇降部は、前記フォークを、前記第2ベース部の上面よりも上方の位置と、前記上面よりも下方の位置との間において昇降させ得てもよい。
【0011】
本開示の第6の態様においては、上述した第5の態様による台車において、前記受け渡し部は、前記受け渡し昇降部を収容するマストを有してもよい。
【0012】
本開示の第7の態様においては、上述した第1の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる台車において、前記昇降ユニットは、前記第1ベース部の第1位置及び前記第2ベース部の第2位置に接続されて前記第1ベース部に対して前記第2ベース部を昇降させる第1昇降部と、前記第1ベース部の第3位置及び前記第2ベース部の第4位置に接続されて前記第1ベース部に対して前記第2ベース部を昇降させる第2昇降部と、を含み、
前記第1位置と前記第3位置とは、前記前後方向、及び前記前後方向に垂直且つ水平方向に平行な車幅方向における前記第1ベース部の中心位置を挟んでおり、
前記第2位置と前記第4位置とは、前記前後方向、及び前記車幅方向における前記第2ベース部の中心位置を挟んでいてもよい。
【0013】
本開示の第8の態様においては、上述した第7の態様による台車において、前記第1ベース部は、前記昇降ユニットが前記第2ベース部を昇降させる昇降方向からの観察において矩形の形状を有し、
前記第1位置は、前記第1ベース部の第1角部に配置され、
前記第3位置は、前記第1ベース部の、前記第1角部の対角線上に位置する第2角部に配置され、
前記第2ベース部は、前記昇降方向からの観察において矩形の形状を有し、
前記第2位置は、前記第2ベース部の第3角部に配置され、
前記第4位置は、前記第2ベース部の、前記第3角部の対角線上に位置する第4角部に配置されてもよい。
【0014】
本開示の第9の態様は、上述した第2の態様又は上述した第3の態様による台車において、前記台車が置かれた面から前記前輪が離間するように前記第1ベース部の前方の一部を持ち上げる前輪昇降部を備えてもよい。
【0015】
本開示の第10の態様においては、上述した第2の態様又は上述した第3の態様による台車において、前記第1ベース部は、前記車輪が設けられる第1ベース部本体と、前記昇降ユニットが前記第2ベース部を昇降させる昇降方向における前記前輪と前記第1ベース部本体との距離を変更する第1ベース部本体昇降部と、を有してもよい。
【0016】
本開示の第11の態様は、上述した第9の態様又は上述した第10の態様による台車において、前記前輪にかかる荷重及び前記後輪にかかる荷重を測定するセンサ部を備えてもよい。
【0017】
本開示の第12の態様においては、上述した第2の態様又は上述した第3の態様による台車において、前記車輪は、複数の前記前輪を有し、
前記移動ユニットは、前記前後方向に垂直且つ水平方向に平行な車幅方向において、複数の前記前輪同士の間に位置してもよい。
【0018】
本開示の第13の態様においては、上述した第1の態様から上述した第12の態様のそれぞれによる台車において、前記移動ユニットは、前記第2ベース部に接続された第1シリンダと、前記受け渡し部に接続された第2シリンダと、前記第1シリンダ及び前記第2シリンダに接続された接続部と、を有し、
前記第1シリンダは、前記第2ベース部に対して前記接続部を、前記前後方向に移動させ、
前記第2シリンダは、前記接続部に対して前記受け渡し部を、前記前後方向に移動させてもよい。
【0019】
本開示の第14の態様においては、上述した第1の態様から上述した第13の態様のそれぞれによる台車において、前記車輪は、第1車輪と、前記第1車輪よりも直径の小さな第2車輪と、を有してもよい。
【0020】
本開示の第15の態様においては、上述した第14の態様による台車において、前記第1車輪に回転を入力する第1モータと、前記第2車輪に回転を入力する第2モータとを備え、
前記第1モータは前記第2モータよりも出力容量が大きくてもよい。
【0021】
本開示の第16の態様においては、上述した第14の態様による台車において、前記第1車輪に回転を入力する第1モータと、前記第1モータから入力される回転を減速して前記第1車輪に回転を伝達する第1減速機と、前記第2車輪に回転を入力する第2モータと、前記第2モータから入力される回転を減速して前記第2車輪に回転を伝達する第2減速機と、を備え、
前記第1減速機は前記第2減速機よりも減速比が大きくてもよい。
【0022】
本開示の第17の態様においては、上述した第15の態様又は上述した第16の態様による台車において、前記第1車輪は、前記前後方向において前記フォークの突出する前方に位置する前輪であり、
前記第2車輪は、前記前輪よりも前記前後方向において前方とは反対側である後方に位置する後輪であってもよい。
【0023】
本開示の第18の態様においては、上述した第1の態様から上述した第17の態様のそれぞれによる台車において、前記車輪はメカナムホイールであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、転倒しにくい台車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】一実施形態におけるホイール本体、モータ及び減速機の斜視図である。
【
図5】一実施形態における台車の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図7】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図8】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図9】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図10】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図11】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図12】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図13】一実施形態における台車の作用を示す図である。
【
図14】変形例2における台車の一例を示す側面図である。
【
図15】変形例2における台車の一例を示す側面図である。
【
図16】変形例3における車輪、モータ及び減速機の一例を示す側面図である。
【
図17】変形例3における車輪、モータ及び減速機の一例を示す側面図である。
【
図18】変形例3における台車の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本実施形態の台車1を示す斜視図である。
図1Bは、本実施形態の台車1を、
図1Aとは反対側から観察した様子を示す斜視図である。
【0027】
図1A及び
図1Bに示すように、台車1は、第1ベース部2と、第2ベース部3と、昇降ユニット4と、受け渡し部5と、移動ユニット6と、を備える。第1ベース部2は、車輪21を有している。第2ベース部3は、第1ベース部2上に位置している。昇降ユニット4は、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる。受け渡し部5は、荷物を支持するフォーク51を有して荷物の受け渡しを行う。移動ユニット6は、第2ベース部3に対して受け渡し部5を、フォーク51の延びる前後方向DBに移動させる。
【0028】
本実施形態の台車1は、フォーク51に荷物を載せて走行することによって、当該荷物を運搬できる。一例として、台車1は、走行時にオペレータによるアシストを要しないAGVやRGVなどの搬送車(すなわち無人搬送車)である。台車1は、走行時にオペレータによるアシストを要する搬送車であってもよい。
【0029】
昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させる方向を、昇降方向DAと称する。昇降方向DAに対して垂直な方向を、水平方向と称する。フォーク51の突出する方向であって、昇降方向DAに対して垂直な方向を、前後方向DBと称する。前後方向DBに垂直且つ水平方向に平行な方向を、車幅方向DCと称する。昇降方向DAにおける、第1ベース部2を基準として、第2ベース部3が位置する側を、上方SA1と称する。昇降方向DAにおける上方SA1とは反対側を、下方SA2と称する。前後方向DBにおける、フォーク51の基部を基準として、フォーク51の先端が位置する側を、前方SB1と称する。前後方向DBにおける前方SB1とは反対側を、後方SB2と称する。車幅方向DCにおける一方の側(
図1Aにおける右側)を、第1側SC1と称する。車幅方向DCにおける第1側SC1とは反対側を、第2側SC2と称する。
【0030】
第1ベース部2は、車輪21を有して床面上を走行する部分である。本実施形態において、第1ベース部2は、第1ベース部本体22と、第1ベース部本体22に設けられた車輪21とを有する。第1ベース部2は、昇降方向DAからの観察において矩形の形状を有している。本実施形態においては、第1ベース部本体22が、昇降方向DAからの観察において矩形の形状を有している。これによって、第1ベース部2が、全体として、昇降方向DAからの観察において矩形の形状を有している。これによって、第1ベース部2は、4つの角部25を有している。
【0031】
一例として、第1ベース部2は複数の車輪21を有する。本実施形態において、第1ベース部2の車輪21は、前輪23と後輪24とを有している。前輪23は、前後方向DBにおいてフォーク51の突出する前方SB1に位置している。前輪23は、複数の車輪21のうち、前後方向DBにおいて最も前方SB1に位置する車輪21である。後輪24は、前輪23よりも前後方向DBにおいて前方SB1とは反対側である後方SB2に位置している。本実施形態において、車輪21は、複数の前輪23を有している。本実施形態において、車輪21は、車幅方向DCに並ぶ2つの前輪23を有している。本実施形態において、車輪21は、複数の後輪24を有している。
図1Aに示す例において、車輪21は、車幅方向DCに並ぶ2つの後輪24を有している。2つの前輪23、及び2つの後輪24は、それぞれ、第1ベース部2の4つの角部25の近傍に位置している。車輪21が有する前輪23及び後輪24の数は、図示した例に限られない。車輪21は、2つの前輪23と一つの後輪24とを有してもよい。車輪21は、一つの前輪23と2つの後輪24とを有してもよい。
【0032】
車輪21を駆動させる手段は、台車1を走行させることができる限り、特に限られない。一例として、第1ベース部2がさらにモータ7を有し、モータ7によって車輪21が駆動される例について説明する。この場合、台車1は、車輪21に回転を入力するモータ7を備える。台車1は、モータ7から入力される回転を減速して車輪21に回転を伝達する減速機8をさらに備える。本実施形態において、台車1は、複数の車輪21のそれぞれに対して取り付けられた複数のモータ7及び複数の減速機8を備える。
【0033】
本実施形態において、車輪21はメカナムホイールである。この場合、車輪21は、ホイール本体26と、ホイール本体26の外周に回転自在に取り付けられた複数のローラ27と、を有する。モータ7及び減速機8は、車輪21のホイール本体26に対して取り付けられている。
図2は、本実施形態の車輪21のホイール本体26を、ホイール本体26に対して取り付けられたモータ7及び減速機8とともに示す斜視図である。
【0034】
図2に示す例において、モータ7は、車輪21のホイール本体26に回転を入力する。減速機8は、モータ7から入力される回転を減速してホイール本体26に回転を伝達する。
図2に示す例において、減速機8は、モータ7とホイール本体26との間に位置している。減速機8は、モータ7の出力軸に接続し、且つホイール本体26に接続する。減速機8の少なくとも一部が、ホイール本体26の内部に収容されていてもよい。
図2に示す例においては、減速機8の一部が、ホイール本体26の内部に収容されている。
図2に示す例において、各ローラ27は、ホイール本体26の回転軸線Bxに対して傾斜した回転軸線Byを中心として回転自在に、ホイール本体26に支持されている。ローラ27の回転軸線Byは、ホイール本体26の回転軸線Bxに対しておよそ45°の角度を成している。
【0035】
車輪21として、上述した構造を有するメカナムホイールを用いることにより、前後方向DB以外の方向にも移動可能な台車1を実現可能である。例えば、車輪21がメカナムホイールである台車によれば、車幅方向DCに向かって走行できる。また、前後方向DB及び車幅方向DCに非平行な水平方向に向かって走行できる。また、水平方向において台車1の内部に位置する旋回軸を中心として旋回できる。
【0036】
第2ベース部3は、第1ベース部2上に位置する部分である。第2ベース部3は、後述する昇降ユニット4によって、第1ベース部2に対して昇降させられる。本実施形態において、第2ベース部3は、昇降方向DAからの観察において矩形の形状を有している。これによって、第2ベース部3は、4つの角部31を有している。
図1Aに示す例において、第2ベース部3は、第2ベース部本体33と、上方SA1から第2ベース部本体33の一部を覆うカバー34とを有している。本実施形態において、第2ベース部本体33上には後述する移動ユニット6が配置されている。カバー34は、上方SA1から移動ユニット6の少なくとも一部を覆っている。
図1A及び
図1B以外の図においては、
図1A及び
図1Bにおいて図示されている、移動ユニット6の一部を覆うカバー34の図示は省略している。
【0037】
昇降ユニット4は、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる部分である。本実施形態において、昇降ユニット4は、パンタグラフを有する。
図1Aに示す例において、昇降ユニット4は、第1昇降部41と、第2昇降部42とを含んでいる。第1昇降部41は、第1ベース部2の第1位置2a及び第2ベース部3の第2位置3aに接続されて第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる。第2昇降部42は、第1ベース部2の第3位置2b及び第2ベース部3の第4位置3bに接続されて第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる。そして、第1昇降部41及び第2昇降部42の各々が、パンタグラフを有している。
【0038】
図1Aに示す例において、昇降ユニット4は、パンタグラフを形成するように互いに連結された複数のリンク43を有している。
図1Aに示す例において、昇降ユニット4は、複数のリンク43同士を連結する複数の連結部44を有している。複数の連結部44のそれぞれは、2つのリンク43同士が互いに対して回転可能となるように、当該2つのリンク43を連結している。複数の連結部44が複数のリンク43を連結することによって、パンタグラフを有する昇降ユニット4が形成されている。昇降ユニット4は、複数のパンタグラフが昇降方向DAに重ねられた構造を有していてもよい。
【0039】
複数の連結部44のうち最も下方SA2に位置する連結部44によって連結された2つのリンクを、下方リンク43aと称する。2つの下方リンク43aの一方を第1下方リンク43a1と称し、他方を第2下方リンク43a2と称する。
【0040】
第1下方リンク43a1は、第1下方リンク43a1が第1ベース部2に対して回転可能となるように第1ベース部2に固定されている、固定端43bを有する。固定端43bは、回転軸43cを中心として、第1ベース部2に対して回転可能である。回転軸43cの第1ベース部2に対する位置は、不動である。
【0041】
第2下方リンク43a2は、第2下方リンク43a2が第1ベース部2に対して回転可能となるように第1ベース部2に連結されている、移動端43dを有する。移動端43dは、回転軸43eを中心として、第1ベース部2に対して回転可能である。
【0042】
移動端43d及び回転軸43eは、固定端43bと移動端43dとの水平方向における距離を変化させるように、第1ベース部2に対して移動可能である。
図1Aに示す例においては、第1ベース部2に、一方向に延びる線状溝28が形成されている。移動端43dの回転軸43eの一部は、回転軸43eを線状溝28に対してスライドさせることができるように、線状溝28に収容されている。
図1Aに示す例においては、回転軸43eを線状溝28に対してスライドさせることによって、固定端43bと移動端43dとの水平方向における距離を変化させ得る。
図1Aに示す例においては、固定端43bと移動端43dとが前後方向DBに並んでいる。線状溝28は、前後方向DBに延びている。このため、回転軸43eを線状溝28に対してスライドさせることによって、固定端43bと移動端43dとの前後方向DBにおける距離を変化させ得る。
【0043】
複数の連結部44のうち最も上方SA1に位置する連結部44によって連結された2つのリンクを、上方リンク43fと称する。2つの上方リンク43fの一方を第1上方リンク43f1と称し、他方を第2上方リンク43f2と称する。
【0044】
第1上方リンク43f1は、第1上方リンク43f1が第2ベース部3に対して回転可能となるように第2ベース部3に固定されている、固定端43gを有する。固定端43gは、回転軸43hを中心として、第2ベース部3に対して回転可能である。回転軸43hの第2ベース部3に対する位置は、不動である。
【0045】
第2上方リンク43f2は、第2上方リンク43f2が第2ベース部3に対して回転可能となるように第2ベース部3に連結されている、移動端43iを有する。移動端43iは、回転軸43jを中心として、第2ベース部3に対して回転可能である。
【0046】
移動端43i及び回転軸43jは、固定端43gと移動端43iとの水平方向における距離を変化させるように、第2ベース部3に対して移動可能である。
図1Aに示す例においては、第2ベース部3に、一方向に延びる第1線状溝32が形成されている。移動端43iの回転軸43jの一部は、回転軸43jを第1線状溝32に対してスライドさせることができるように、第1線状溝32に収容されている。
図1Aに示す例においては、回転軸43jを第1線状溝32に対してスライドさせることによって、固定端43gと移動端43iとの水平方向における距離を変化させ得る。
図1Aに示す例においては、固定端43gと移動端43iとが前後方向DBに並んでいる。第1線状溝32は、前後方向DBに延びている。このため、回転軸43jを第1線状溝32に対してスライドさせることによって、固定端43gと移動端43iとの前後方向DBにおける距離を変化させ得る。
【0047】
図3は、本実施形態の台車1の、
図1A及び
図1Bとは異なる別の状態を示す斜視図である。
図1A及び
図1Bに示す状態から、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降方向DAにおいて上方SA1に移動させ、且つ後述する移動ユニット6が受け渡し部5及びマスト53を前後方向DBにおいて前方SB1に移動させることによって、台車1は
図3に示した状態となる。昇降ユニット4は、
図3に示した状態において、
図1A及び
図1Bに示した状態よりも、昇降方向DAにおいて伸びている。
図1A及び
図1Bに示した状態から、固定端43bと移動端43dとの水平方向における距離を縮めることによって、
図3に示すように、パンタグラフを有する昇降ユニット4を昇降方向DAにおいて伸ばすことができる。これによって、第2ベース部3を昇降方向DAにおいて上方SA1に移動させることができる。また、パンタグラフを有する昇降ユニット4が昇降方向DAにおいて伸びると、2つの上方リンク43fに対して、固定端43gと移動端43iとの水平方向における距離を縮める方向に、力が加わる。ここで、本実施形態の台車1において、移動端43iは、固定端43gと移動端43iとの水平方向における距離を縮めるように移動可能である。移動端43iが、固定端43gと移動端43iとの水平方向における距離を縮めるように移動することによって、昇降ユニット4が昇降方向DAにおいて伸びたときに2つの上方リンク43fに対して加わる力を逃がすことができる。
【0048】
また、
図3に示した状態から、固定端43bと移動端43dとの水平方向における距離を広げることによって、パンタグラフを有する昇降ユニット4を昇降方向DAにおいて縮めることができる。これによって、第2ベース部3を昇降方向DAにおいて下方SA2に移動させることができる。また、移動端43iが、固定端43gと移動端43iとの水平方向における距離を縮めるように移動可能であることによって、昇降ユニット4が昇降方向DAにおいて縮んだときに2つの上方リンク43fに対して加わる力を逃がすことができる。
【0049】
図1A、
図1B及び
図3に示す例において、昇降ユニット4は、第1昇降部41と第2昇降部42とを有している。第1昇降部41及び第2昇降部42のそれぞれが、上述したパンタグラフを有している。換言すれば、第1昇降部41及び第2昇降部42のそれぞれが、2つの下方リンク43a及び2つの上方リンク43fを含む複数のリンク43と、複数の連結部44と、を有している。
【0050】
昇降ユニット4の重心は、前輪23よりも後方SB2に位置する。ここで、「昇降ユニット4の重心」とは、昇降ユニット4の全体における重心を意味する。例えば、
図1A、
図1B及び
図3に示す、パンタグラフを有する昇降ユニット4において、昇降ユニット4の重心とは、複数のリンク43と複数の連結部44とを併せた昇降ユニット4の全体における重心である。また、昇降ユニット4が第1昇降部41と第2昇降部42とを含む場合、「昇降ユニット4の重心」とは、第1昇降部41と第2昇降部42とを併せた昇降ユニット4の全体における重心である。昇降ユニット4の形態は、第2ベース部3を昇降させるときに、変化し得る。本実施形態の昇降ユニット4は、第2ベース部3を昇降させるときに、昇降方向DAにおいて伸び縮みする。このように、昇降ユニット4の形態が変化する場合において、昇降ユニット4の重心は、昇降ユニット4の形態が変化する前後において、常に前輪23よりも後方SB2に位置する。
【0051】
昇降ユニット4の重心が前輪23よりも後方SB2に位置することによって、以下の効果が得られる。フォーク51に荷物を載せた状態において、より安定的に転倒が防止さる台車1が求められている。特に、台車1の、前方SB1への転倒を防止できる台車1が求められている。ここで、台車1の前方SB1への転倒は、台車1が走行する床面と前輪23とが接触する箇所を中心として、台車1が前方SB1に倒れるように回転する現象と言い換えられる。昇降ユニット4の重心が前輪23よりも後方SB2に位置することによって、昇降ユニット4の重さを、床面と前輪23とが接触する箇所を中心とした台車1の回転を妨げるように作用させることができる。すなわち、昇降ユニット4の重さを、台車1の前方SB1への転倒を妨げるように作用させることができる。これによって、安定的に、台車1の前方SB1への転倒を防止できる。
【0052】
ここで、前後方向DB、及び前後方向DBに垂直且つ水平方向に平行な車幅方向DCにおける、第1ベース部2の中心位置P1について考える。第1ベース部2の中心位置P1は、以下の方法により定められる。昇降方向DA及び前後方向DBに平行な面であって、第1ベース部2の車幅方向DCにおける両端からの距離が等しい仮想の面である、第1面を求める。また、昇降方向DA及び車幅方向DCに平行な面であって、第1ベース部2の前後方向DBにおける両端からの距離が等しい仮想の面である、第2面を求める。次に、第1面と第2面とが交わる直線L1を求める。
図3に、直線L1の一例を一点鎖線により示す。このとき、第1ベース部2の中心位置P1は、第1ベース部2の直線L1が通る位置として定められる。
【0053】
また、前後方向DB、及び車幅方向DCにおける第2ベース部3の中心位置P2について考える。第2ベース部3の中心位置P2は、以下の方法により定められる。昇降方向DA及び前後方向DBに平行な面であって、第2ベース部3の車幅方向DCにおける両端からの距離が等しい仮想の面である、第3面を求める。また、昇降方向DA及び車幅方向DCに平行な面であって、第2ベース部3の前後方向DBにおける両端からの距離が等しい仮想の面である、第4面を求める。次に、第3面と第4面とが交わる直線L2を求める。
図3に、直線L2の一例を一点鎖線により示す。
図3に示す例において、直線L2は、直線L1と一致している。このとき、第2ベース部3の中心位置P2は、第2ベース部3の直線L2が通る位置として定められる。尚、
図3に示す例において、直線L2は、直線L1と一致していることが望ましいが、設計上必ずしも一致する必要はなく、直線L2と、直線L1の距離は近い方が望ましい。
【0054】
ここで、昇降ユニット4は、第1昇降部41と、第2昇降部42とを含んでいる。第1昇降部41は、第1ベース部2の第1位置2a及び第2ベース部3の第2位置3aに接続している。第2昇降部42は、第1ベース部2の第3位置2b及び第2ベース部3の第4位置3bに接続している。そして、
図1Aに示す例において、第1位置2aと第3位置2bとは、第1ベース部2の中心位置P1を挟んでいる。第2位置3aと第4位置3bとは、第2ベース部3の中心位置P2を挟んでいる。
図1Aに示す例において、第1位置2aと第2位置3aとは、昇降方向DAにおいて並んでいる。第3位置2bと第4位置3bとは、昇降方向DAにおいて並んでいる。
【0055】
第1昇降部41が複数の接続位置において第1ベース部2に接続している場合、当該複数の接続位置の間の領域が、第1位置2aと見なされる。
図1A示す例において、第1昇降部41は、固定端43bにおいて第1ベース部2に接続している。また、第1昇降部41は、移動端43dにおいて第1ベース部2に接続している。この場合、第1ベース部2の、第1昇降部41の固定端43bに接続される位置と第1昇降部41の移動端43dに接続される位置との間の領域が、第1位置2aと見なされる。同様に、第1昇降部41が複数の接続位置において第2ベース部3に接続されている場合、当該複数の接続位置の間に位置する領域が、第2位置3aと見なされる。
図1Aに示す例においては、第1ベース部2の、第2昇降部42の固定端43bに接続される位置と第2昇降部42の移動端43dに接続される位置との間の領域が、第1位置2aと見なされる。同様に、第2昇降部42が複数の接続位置において第1ベース部2に接続されている場合、当該複数の接続位置の間に位置する領域が、第3位置2bと見なされる。
図1Aに示す例においては、第1ベース部2の、第2昇降部42の固定端43gに接続される位置と第2昇降部42の移動端43iに接続される位置との間の領域が、第3位置2bと見なされる。第2昇降部42が複数の接続位置において第2ベース部3に接続されている場合、当該複数の接続位置の間に位置する領域が、第4位置3bと見なされる。
図1Aに示す例においては、第2ベース部3の、第2昇降部42の固定端43gに接続される位置と第2昇降部42の移動端43iに接続される位置との間の領域が、第4位置3bと見なされる。
【0056】
昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させるときに第1位置2a及び第3位置2bの少なくともいずれか一方の位置が変化する場合、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させる前後において、常に第1位置2aと第3位置2bとが第1ベース部2の中心位置P1を挟んでいてもよい。
図1Aに示す例において、第1昇降部41の移動端43d及び第2昇降部42の移動端43dは、第1ベース部2に対して移動する。このため、第1位置2a及び第3位置2bのいずれの位置も、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させるときに変化する。そして、
図1Aに示す台車1においては、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させる前後において、常に第1位置2aと第3位置2bとが第1ベース部2の中心位置P1を挟んでいる。同様に、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させるときに第2位置3a及び第4位置3bの少なくともいずれか一方の位置が変化する場合、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させる前後において、常に第2位置3aと第4位置3bとが第2ベース部3の中心位置P2を挟んでいてもよい。
図1Aに示す例において、第1昇降部41の移動端43i及び第2昇降部42の移動端43iは、第2ベース部3に対して移動する。このため、第2位置3a及び第4位置3bのいずれの位置も、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させるときに変化する。そして、
図1Aに示す台車1においては、昇降ユニット4が第2ベース部3を昇降させる前後において、常に第2位置3aと第4位置3bとが第2ベース部3の中心位置P2を挟んでいる。
【0057】
本実施形態において第1昇降部41及び第2昇降部42のそれぞれが、上述したパンタグラフを有している。第1昇降部41及び第2昇降部42のそれぞれが、固定端43b及び固定端43gを有している。この場合、第1昇降部41の固定端43bと第2昇降部42の固定端43bとが、水平方向において、第1ベース部2の中心位置P1を挟んでいてもよい。また、第1昇降部41の固定端43gと第2昇降部42の固定端43gとが、水平方向において、第2ベース部3の中心位置P2を挟んでいてもよい。
【0058】
上述したように、本実施形態において、第1ベース部2は、昇降方向DAからの観察において矩形の形状を有している。これによって、第1ベース部2は、4つの角部25を有している。
図1Aに示す例において、第1位置2aは、第1ベース部2の第1角部251に配置されている。第3位置2bは、第1ベース部2の、第1角部251の対角線上に位置する第2角部252に配置されている。第1角部251は、4つの角部25の一つである。第2角部252は、4つの角部25の、第1角部251とは異なる一つである。
【0059】
本実施形態において、第2ベース部3は、昇降方向DAからの観察において矩形の形状を有している。これによって、第2ベース部3は、4つの角部31を有している。本実施形態において、第2位置3aは、第3角部311に配置されている。第4位置3bは、第2ベース部3の、第3角部311の対角線上に位置する第4角部312に配置されている。第3角部311は、4つの角部31の一つである。第4角部312は、4つの角部31の、第3角部311とは異なる一つである。
【0060】
「角部に配置されている」とは、配置される対象の少なくとも一部が、角部の先端付近に配置されることを意味する。より具体的には、「角部に配置されている」とは、配置される対象の少なくとも一部と、角部の先端との水平方向における距離が、50cm以下であることを意味する。一例として、「第1ベース部2の角部25に配置されている」とは、配置される対象の少なくとも一部と、角部25の先端との水平方向における距離が、50cm以下であることを意味する。別の一例として、「第2ベース部3の角部31に配置されている」とは、配置される対象の少なくとも一部と、角部31の先端との水平方向における距離が、50cm以下であることを意味する。より具体的には、「第1位置2aが第1ベース部2の第1角部251に配置されている」とは、第1位置2aの少なくとも一部と、第1角部251先端との水平方向における距離が、50cm以下であることを意味する。例えば、ある対象が角部に配置される場合、当該対象の少なくとも一部と角部の先端との距離は、15cm以下であってもよく、10cm以下であってもよい。
【0061】
本実施形態においては、第1昇降部41及び第2昇降部42のそれぞれが、上述したパンタグラフを有している。第1昇降部41及び第2昇降部42のそれぞれが、固定端43b及び固定端43gを有している。この場合、第1昇降部41の固定端43bが第1角部251に配置され、第2昇降部42の固定端43bが第2角部252に配置されてもよい。第1昇降部41の固定端43gが第3角部311に配置され、第2昇降部42の固定端43gが第4角部312に配置されてもよい。
【0062】
第1位置2aと第3位置2bとが第1ベース部2の中心位置P1を挟んでおり、且つ第2位置3aと第4位置3bとが第2ベース部3の中心位置P2を挟んでいることによって、以下の効果が得られる。第2ベース部3を昇降させるときに第1昇降部41及び第2昇降部42から第2ベース部3に加えられる力を、水平方向において均等に近づけられる。これによって、安定的に第2ベース部3を昇降させることができる。また、第1昇降部41と第2昇降部42とを併せた昇降ユニット4の全体における重心の水平方向における位置を、中心位置P1及び中心位置P2に近づけることができる。これによって、昇降ユニット4の重心の位置が偏っていることにより台車1が転倒することを、より安定的に防止できる。
【0063】
第1位置2aが第1角部251に配置されており、第3位置2bが第2角部252に配置されており、第2位置3aが第3角部311に配置されており、第4位置3bが第4角部312に配置されていることによって、以下の効果が得られる。第2ベース部3を昇降させるときに第1昇降部41及び第2昇降部42から第2ベース部3に加えられる力を、水平方向においてより均等にできる。これによって、より安定的に第2ベース部3を昇降させることができる。また、第1昇降部41と第2昇降部42とを併せた昇降ユニット4の全体における重心の水平方向における位置を、中心位置P1及び中心位置P2に近づけられる。これによって、昇降ユニット4の重心の位置が偏っていることにより台車1が転倒することを、より安定的に防止できる。
【0064】
図示はしないが、昇降ユニット4は、第1昇降部41及び第2昇降部42以外の、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる昇降部を含んでもよい。例えば、昇降ユニット4は、第1昇降部41及び第2昇降部42を含み、且つ第3昇降部及び第4昇降部を含んでもよい。この場合、第3昇降部及び第4昇降部は、第1昇降部41及び第2昇降部42と同様の形態を有してもよい。例えば、第3昇降部及び第4昇降部のそれぞれが、パンタグラフを有してもよい。この場合、第1ベース部2の、第1昇降部41、第2昇降部42、第3昇降部及び第4昇降部のそれぞれに接続される位置が、第1ベース部2の4つの角部25のそれぞれに配置されてもよい。第2ベース部3の、第1昇降部41、第2昇降部42、第3昇降部及び第4昇降部のそれぞれに接続される位置が、第2ベース部3の4つの角部31のそれぞれに配置されてもよい。
【0065】
受け渡し部5は、フォーク51を有して荷物の受け渡しを行う部分である。本実施形態において、受け渡し部5は、フォーク51を第2ベース部3に対して昇降させる受け渡し昇降部52と、受け渡し昇降部52を収容するマスト53と、をさらに有する。
【0066】
フォーク51は、荷物を支持する部分である。フォーク51の形状は、荷物を支持できる限り、特に限られない。
図1Aに示す例において、フォーク51は、前後方向DBにおいて前方SB1に突出する、2本の平坦な板状の部材である。
【0067】
受け渡し昇降部52は、フォーク51を第2ベース部3に対して昇降させる部分である。また、マスト53は、受け渡し昇降部52を収容する部分である。
図1Aに示す例において、マスト53は、受け渡し昇降部52の一部を収容している。
図1Aに示す例においては、フォーク51の後方SB2における端部51aが、受け渡し昇降部52に接続している。マスト53は、昇降方向DAに延び且つ車幅方向DCに並ぶ、一対の線状溝54を有している。
図1Aに示す例においては、受け渡し昇降部52の車幅方向DCにおける両端の一部が、受け渡し昇降部52をマスト53に対してスライドさせることができるように、マスト53の一対の線状溝54に収容されている。受け渡し昇降部52は、マスト53に対してスライドすることによって、フォーク51を第2ベース部3に対して昇降させる。一例として、受け渡し昇降部52は、油圧や空圧、電動(例えばモータとボールねじ等の組み合わせ)によって駆動されることでマスト53に対してスライドする。
【0068】
本実施の形態において、受け渡し昇降部52は、フォーク51を、第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1の位置と、上面3cよりも下方SA2の位置との間において昇降させ得る。
図4Aは、本実施形態の台車1の、
図1A、
図1B及び
図3とは異なる別の状態を示す斜視図である。
図4Aに示す例において、フォーク51は、第2ベース部3の上面3cよりも下方SA2に位置している。
図3に示す例において、フォーク51は、第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1に位置している。受け渡し昇降部52によって、フォーク51の第2ベース部3に対する位置関係を、
図3に示す位置関係と
図4Aに示す位置関係との間で変化させることができる。昇降方向DAにおける第2ベース部3の上面3cの位置は、上面3cが昇降方向DAに垂直な平面ではない場合には、上面3cの中心位置P1に位置する部分の昇降方向DAにおける位置と定められる。
【0069】
受け渡し部5が受け渡し昇降部52を有することによって、昇降ユニット4による第2ベース部3の昇降によっては移動させられない位置に、フォーク51を移動させ得る。本実施形態において、受け渡し昇降部52は、フォーク51を、第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1の位置と、上面3cよりも下方SA2の位置との間において昇降させ得る。これによって、フォーク51を第2ベース部3の上面3cよりも下方SA2の位置に移動させて、上面3cよりも下方SA2に位置する荷物をフォーク51で支持できる。
【0070】
図4Aに示す例において、昇降ユニット4は、第2ベース部3を移動可能な最も下方SA2の位置に移動させている。この状態において、受け渡し昇降部52は、フォーク51を、昇降方向DAにおける第1ベース部2の上側SA1の端部2cよりも下方SA2の位置に移動させることができてもよい。台車1が平坦な床面上に配置され、且つ昇降ユニット4が第2ベース部3を移動可能な最も下方SA2の位置に移動させた状態において、受け渡し昇降部52は、フォーク51を床面に接するように移動させることができてもよい。これによって、より下方SA2に位置する荷物、特に床面付近に位置する荷物を、フォーク51で支持できる。
【0071】
受け渡し昇降部52の効果についてさらに説明する。本実施形態の台車1は、第1ベース部2と第2ベース部3とを備えている。ここで仮に、フォーク51が第2ベース部3の上面3cよりも下方SA2の位置に移動できない場合について考える。この場合、少なくとも昇降方向DAにおける第1ベース部2の寸法と第2ベース部3の寸法とを合計した長さ分だけ、昇降方向DAにおける下方SA2に、フォーク51を移動できない領域が生じる。本実施形態においては、受け渡し昇降部52によって、第1ベース部2と第2ベース部3とを備える台車1を用いつつ、下方SA2においてフォーク51を移動できない領域が広くなることを防止できる。
【0072】
移動ユニット6は、第2ベース部3に対して受け渡し部5を、フォーク51の延びる前後方向DBに移動させる部分である。
図4Bは、本実施形態の台車1の、
図1A、
図1B、
図3及び
図4Aとは異なる別の状態を示す斜視図である。本実施形態において、移動ユニット6は、受け渡し部5の第2ベース部3に対する位置関係を、
図4Bに示す位置関係と、
図1Aに示す位置関係と、
図3に示す位置関係との間で変化させ得る。移動ユニット6は、フォーク51の全体が第2ベース部3よりも前方SB1に位置する位置と、フォーク51の少なくとも一部が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置との間において、受け渡し部5を移動させ得る。
図4Bに示した状態において、移動ユニット6は、フォーク51の全体が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置に、受け渡し部5を移動させている。
図1Aに示した状態において、移動ユニット6は、フォーク51の一部が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置に、受け渡し部5を移動させている。
図3に示した状態において、移動ユニット6は、フォーク51の全体が第1ベース部2よりも前方SB1に位置する位置に、受け渡し部5を移動させている。
【0073】
移動ユニット6の形態は、第2ベース部3に対して受け渡し部5を、フォーク51の延びる前後方向DBに移動させることができる限り、特に限られない。
図1Aに示す例において、移動ユニット6は、シリンダを有している。この場合、移動ユニット6は、当該シリンダの油圧又は空圧によって駆動されることで、第2ベース部3に対して受け渡し部5を移動させる。移動ユニット6には、ボールねじが用いられていてもよい。この場合、ボールねじは、前後方向DBに延びるねじ軸と、当該ねじ軸にかみ合うナットとを有する。ねじ軸及びナットの一方を他方に対して回転させると、ねじ軸の延びる前後方向DBにおけるねじ軸とナットとの位置関係が変化する。このため、ねじ軸及びナットの一方に第2ベース部3、他方に受け渡し部5を固定することで、ボールねじを用いて、第2ベース部3に対して受け渡し部5を移動させることができる。この場合、ボールねじは、モータによって駆動されてもよい。
【0074】
本実施形態において、移動ユニット6は、フォーク51と受け渡し昇降部52とを有する受け渡し部5の全体を、第2ベース部3に対して前後方向DBに移動させる。本実施形態において、移動ユニット6は、受け渡し部5とマスト53とを、一体的に、第2ベース部3に対して前後方向DBに移動させる。移動ユニット6は、受け渡し昇降部52がフォーク51を第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1の位置において支持している状態において、第2ベース部3に対して受け渡し部5を前後方向DBに移動させ得る。
【0075】
図5は、
図1A及び
図1Bに示した状態の台車1の移動ユニット6付近を、後方SB2から観察した様子を示す斜視図である。
図6は、
図1A及び
図1Bに示した状態の台車1を、昇降方向DAにおいて上方SA1から観察した様子を示す平面図である。
図6においては、受け渡し部5及びマスト53について、図示を省略している。
図6においては、前輪23の位置を一点鎖線により示している。本実施形態において、車輪21は、複数の前輪23を有している。
【0076】
移動ユニット6は、前後方向DBに垂直且つ水平方向に平行な車幅方向DCにおいて、複数の前輪23同士の間に位置する。
図6に示す例において、車輪21は、車幅方向DCに並ぶ2つの前輪23を有している。
図6に示す例において、移動ユニット6は、車幅方向DCにおいて、2つの前輪23同士の間に位置する。図示はしないが、台車1が3つ以上の前輪23を有している場合、移動ユニット6は、3つ以上の前輪23のうちいずれか2つの間に位置してもよい。
【0077】
図5及び
図6に示す例において、移動ユニット6は、シリンダとして、第2ベース部3に接続された第1シリンダ61と、受け渡し部5に接続された第2シリンダ62と、第1シリンダ61及び第2シリンダ62に接続された接続部63と、を有する。第1シリンダ61は、第2ベース部3に対して接続部63を、前後方向DBに移動させる。第2シリンダ62は、接続部63に対して受け渡し部5を、前後方向DBに移動させる。このような第1シリンダ61及び第2シリンダ62の動作によって、第2ベース部3に対して受け渡し部5を、前後方向DBに移動させることができる。
【0078】
図5及び
図6に示す例において、移動ユニット6は、2つの第1シリンダ61を有している。また、移動ユニット6は、一つの第2シリンダ62を有している。第2シリンダ62は、車幅方向DCにおいて、2つの第1シリンダ61同士の間に位置している。第1シリンダ61及び第2シリンダ62は、ともに前後方向DBに延びている。
【0079】
第1シリンダ61は、前後方向DBに延びる筒状の第1シリンダ本体61aと、前後方向DBに延びる棒状の第1ロッド61bとを有している。第1ロッド61bの端部の一方は、第1シリンダ本体61aの内部に収容されている。この場合、一例として、第1ロッド61bが油圧又は空圧により駆動されて第1シリンダ本体61aの内壁に沿って移動することにより、第1シリンダ61の全体の前後方向DBにおける長さが変化する。第2シリンダ62は、前後方向DBに延びる筒状の第2シリンダ本体62aと、前後方向DBに延びる棒状の第2ロッド62bとを有している。第2ロッド62bの端部の少なくとも一方は、第2シリンダ本体62aの内部に収容されている。この場合、一例として、第2ロッド62bが油圧又は空圧により駆動されて第2シリンダ本体62aの内壁に沿って移動することにより、第2シリンダ62の全体の前後方向DBにおける長さが変化する。
【0080】
本実施形態において、第1シリンダ本体61aは、第2ベース部3に対して直接接続されている。接続部63は、第1ロッド61bの、第1シリンダ本体61aに収容されていない一方の端部に接続されている。これにより、第1ロッド61bを第1シリンダ本体61aの内壁に沿って移動させることによって、第2ベース部3に対して接続部63を移動させ得る。また、接続部63は、第2シリンダ本体62aに対して直接接続されている。第2ロッド62bは、マスト53に接続されている。上述したように、受け渡し昇降部52の車幅方向DCにおける両端は、マスト53の一対の線状溝54に収容されている。これによって、マスト53は、受け渡し部5の受け渡し昇降部52に接続されている。以上により、第2ロッド62bは、マスト53を介して受け渡し部5に接続されている。これにより、第2ロッド62bを第2シリンダ本体62aの内壁に沿って移動させることによって、接続部63に対して受け渡し部5及びマスト53を移動させ得る。
【0081】
移動ユニット6が第1シリンダ61と第2シリンダ62とを備えることによって、以下の効果が得られる。前後方向DBにおける第1シリンダ61の長さの変化量と、前後方向DBにおける第2シリンダ62の長さの変化量と、を合計した長さの分だけ、第2ベース部3に対して受け渡し部5を移動させることができる。これによって、例えば受け渡し部5を、フォーク51の全体が第1ベース部2よりも前方SB1に位置する位置と、フォーク51の全体が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置との間で移動させ得る。
【0082】
なお、本実施の形態において、第2ベース部3は、前後方向DBに延び且つ車幅方向DCに並ぶ、一対の第2線状溝35を有している。マスト53の車幅方向DCにおける両端の一部は、マスト53を第2ベース部3に対してスライドさせることができるように、第2ベース部3の一対の第2線状溝35に収容されている。マスト53の、一対の第2線状溝35に収容されている部分を、ガイド部531と称する。移動ユニット6が受け渡し部5とマスト53とを前後方向DBに移動させるときに、ガイド部531は、一対の第2線状溝35に沿ってスライドする。一対の第2線状溝35とガイド部531とによって、以下の効果が得られる。移動ユニット6が受け渡し部5とマスト53とを前後方向DBに移動させるときに、受け渡し部5とマスト53との移動を、一対の第2線状溝35とガイド部531とによって誘導できる。
【0083】
次に、本実施形態の台車1の作用について説明する。
図7は、本実施形態の台車1の、
図1A、
図1B、
図3、
図4A及び
図4Bとは異なる別の状態を示す斜視図である。
図7に示す例において、受け渡し昇降部52は、フォーク51を、第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1の位置に保持している。移動ユニット6は、受け渡し部5を、フォーク51の全体が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置に保持している。昇降ユニット4は、第2ベース部3を、昇降ユニット4によって移動させ得る最も下方SA2に保持している。まず、
図7に示す状態にある台車1が、床面付近に位置する荷物Bを持ち上げる作用について説明する。
【0084】
まず、移動ユニット6によって、受け渡し部5を、フォーク51の全体が第1ベース部2よりも前方SB1に位置する位置に移動させる。続いて、受け渡し昇降部52によって、フォーク51を下方SA2に移動させる。このとき、受け渡し昇降部52は、フォーク51を、床面付近に位置する荷物Bを支持するのに適した位置まで移動させる。これによって、台車1は、
図4Aに示した状態となる。
【0085】
続いて、車輪21を駆動して台車1を走行させる。そして、台車1を荷物Bに接近させて、フォーク51に荷物Bを支持させる。これによって、台車1は、
図8に示した状態となる。
【0086】
続いて、昇降ユニット4によって、第2ベース部3を上方SA1に移動させる。このとき、受け渡し昇降部52によって、フォーク51を上方SA1に移動させてもよい。これによって、
図9に示すように、荷物Bを床面付近から上方SA1に持ち上げることができる。
【0087】
ここで、本実施形態の台車1は、第1ベース部2上に位置する第2ベース部3と、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる昇降ユニット4と、を備えている。このため、
図9に示すように、昇降ユニット4によって第2ベース部3を上方SA1に移動させることで、荷物Bを持ち上げることができる。本実施形態の台車1によれば、台車1の前方SB1への転倒を安定的に防止しつつ、荷物Bを持ち上げることができる。
【0088】
本実施形態の台車1によって台車1の前方SB1への転倒が安定的に防止され、特に荷物Bを持ち上げるときに台車1の前方SB1への転倒が安定的に防止される理由について、比較例との比較により説明する。比較例として、第2ベース部3及び昇降ユニット4を有さず、前輪103よりも前方SB1に設けられたマスト102のみを用いてフォーク104を昇降させる台車101について考える。
図19は、フォーク104が荷物Bを支持した状態の、比較例の台車101を示す側面図である。比較例の台車101は、昇降方向DAに延びるマスト102に沿ってフォーク104をスライドさせることによって、フォーク104を昇降させる。比較例の台車101においては、前輪103が設けられている台車101の本体105よりも前方SB1に、マスト102が配置される。
【0089】
ここで、上述したように、台車の前方SB1への転倒は、台車が走行する床面と前輪とが接触する箇所を中心として、台車が前方SB1に倒れるように回転する現象と言い換えられる。比較例の台車101においては、マスト102が、前輪103を有する台車101の本体105よりも前方SB1に配置される。このため、比較例の台車101においては、マスト102の重さが、台車101の前方SB1への転倒を促すように作用する。
【0090】
これに対して、本実施形態の台車1は、第1ベース部2上に位置する第2ベース部3と、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる昇降ユニット4と、を備えている。このため、昇降ユニット4を、前輪23を有する第1ベース部2の上方SA1に配置できる。これにより、昇降ユニット4の重さが台車101の前方SB1への転倒を促しにくい位置に、昇降ユニット4を配置できる。特に、上述したように、昇降ユニット4の重心が前輪23よりも後方SB2に位置するように、昇降ユニット4を配置できる。これによって、昇降ユニット4の重さを、台車1の前方SB1への転倒を妨げるように作用させることができる。以上によって、台車1の前方SB1への転倒を安定的に防止できる。特に、
図9及び
図19に示すように荷物Bが高く持ち上げられた状態においては、荷物Bの重心が上方SA1に位置するために、台車は不安定になりやすい。このような状態においても、本実施形態の台車1によれば、台車1の前方SB1への転倒を安定的に防止できる。
【0091】
また、本実施形態の台車1においては、第2ベース部3が、第1ベース部2の上方SA1に位置する。このため、第2ベース部3の重さを、台車101の前方SB1への転倒を妨げるように作用させることもできる。これによって、台車1の前方SB1への転倒を、より安定的に防止できる。
【0092】
なお、本実施形態の台車1は、比較例の台車101と比べて、以下の効果も得られる。比較例の台車101においては、マスト102のみを用いてフォーク104を昇降させる。この場合、昇降方向DAにおける特定の高さ位置までフォーク104を移動させるためには、当該高さ位置まで延びているマスト102を用いる必要がある。このため、比較例の台車101においては、マスト102を備える分だけ台車101の高さが大きくなる。これに対して、本実施形態の台車1においては、昇降ユニット4により第2ベース部3を移動させることで、フォーク51を移動させる。特に、本実施形態において、昇降ユニット4は、パンタグラフを有する。このため、本実施形態においては、昇降方向DAにおける特定の高さ位置までフォーク51を移動させるために、当該高さ位置まで延びているマストを用いる必要はない。これによって、本実施形態においては、台車1の高さを小さくできる。
【0093】
本実施形態の台車1の別の作用について説明する。
図8に示すようにフォーク51によって荷物Bを支持した台車1が、荷物Bを水平方向において搬送した上で、床面よりも上方SA1に位置する支持台T上に荷物Bを配置するときの、台車1の作用について説明する。
【0094】
まず、受け渡し昇降部52によって、フォーク51を、第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1の位置に移動させる。続いて、移動ユニット6によって、受け渡し部5を、フォーク51の全体が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置に移動させる。これによって、台車1は、
図10に示した状態となる。
【0095】
図11は、
図10に示した状態の台車1を、昇降方向DAにおいて上方SA1から観察した様子を示す平面図である。
図11に示す例において、移動ユニット6は、受け渡し部5を、移動可能な最も後方SB2の位置に移動させている。移動ユニット6が受け渡し部5を移動させることによって、フォーク51によって支持されている荷物Bの少なくとも一部が、昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置において保持される。台車1は、荷物Bの全体が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置において、荷物Bを保持してもよい。
【0096】
図10及び
図11に示した状態において、車輪21を駆動して台車1を走行させる。そして、台車1を、
図12に示すように、荷物Bを配置すべき支持台Tの前に移動させる。
【0097】
図10及び
図11に示すように、荷物Bの少なくとも一部が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置において保持された状態で、台車1を走行させることによって、以下の効果が得られる。荷物Bが第2ベース部3よりも前方SB1において保持された状態で台車1を走行させるよりも、荷物Bの重さなどにより台車1が転倒することを安定的に防止できる。また、前後方向DBにおける台車1の幅が小さくなる。このため、より幅の狭いスペースを走行できる。
【0098】
特に、本実施形態の台車1の車輪21はメカナムホイールである。台車1が、荷物Bの少なくとも一部を昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置において保持できて、且つ車輪21がメカナムホイールであることによって、以下の効果が得られる。台車1が、水平方向であって前後方向DB以外の方向にも走行可能となり、且つ前後方向DBにおける台車1の幅が小さくなる。これによって、台車1の走行するスペースが狭い場合であっても、所望の向きで所望の位置まで台車1を走行させることができる。
【0099】
特に、車輪21がメカナムホイールであることによって、台車1は、水平方向において台車1の内部に位置する旋回軸を中心として旋回できる。これによって、さらに以下の効果が得られる。
図11において二点鎖線により示された円Clは、台車1及び荷物Bを昇降方向DAにおいて上方SA1から観察した場合における、台車1と荷物Bとが一体となって形成する輪郭1aに外接する円のうち、半径が最小の円である。
図11に示された点P3は、円Clの中心である。台車1がメカナムホイールであることによって、台車1は、円Clに相当する大きさ及び形状のスペースがあれば、点P3の位置を旋回軸として旋回することができる。これによって、台車1は、小さなスペースを利用して水平方向における向きを自在に変えることができる。
【0100】
台車1を
図12に示す位置に移動させた後、昇降ユニット4によって第2ベース部3を上方SA1に移動させる。続いて、移動ユニット6によって、受け渡し部5を前方SB1に移動させる。これによって、
図13に示すように、支持台T上に荷物Bを配置できる。
【0101】
以上に説明した本実施形態の台車1は、第1ベース部2と、第1ベース部2上に位置する第2ベース部3と、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる昇降ユニット4と、受け渡し部5と、移動ユニット6と、を備えている。これによって、昇降ユニット4の重さが台車101の前方SB1への転倒を促しにくい位置に、昇降ユニット4を配置できる。また、第2ベース部3の重さを、台車101の前方SB1への転倒を妨げるように作用させることもできる。以上により、転倒しにくい台車1を提供することができる。
【0102】
本実施形態において、車輪21は、前輪23と後輪24とを有している。このような台車1は、台車1が走行する床面と前輪23とが接触する箇所を中心として、台車1が前方SB1に倒れるように回転することで、転倒することが想定される。本実施形態の台車1によれば、このような前方SB1への転倒を安定的に防止できる。
【0103】
本実施形態において、昇降ユニット4の重心は、前輪23よりも後方SB2に位置する。これによって、昇降ユニット4の重さを、台車1の前方SB1への転倒を妨げるように作用させることができる。
【0104】
本実施形態において、受け渡し部5は、フォーク51を第2ベース部3に対して昇降させる受け渡し昇降部52を有する。これによって、昇降ユニット4による第2ベース部3の昇降によっては移動させられない位置に、フォーク51を移動させ得る。
【0105】
本実施形態において、受け渡し昇降部52は、フォーク51を、第2ベース部3の上面3cよりも上方SA1の位置と、上面3cよりも下方SA2の位置との間において昇降させ得る。これによって、上面3cよりも下方SA2に位置する荷物をフォーク51で支持できる。また、移動ユニット6の作用との組み合わせによって、フォーク51の少なくとも一部が昇降方向DAにおいて第2ベース部3と重なる位置に、受け渡し部5を移動させることができる。
【0106】
本実施形態において、受け渡し部5は、受け渡し昇降部52を収容するマスト53を有する。これによって、受け渡し昇降部52をマスト53に対してスライドさせることによって、フォーク51を第2ベース部3に対して昇降させることができる。
【0107】
本実施形態において、第1位置2aと第3位置2bとは、第1ベース部2の中心位置P1を挟んでいる。第2位置3aと第4位置3bとは、第2ベース部3の中心位置P2を挟んでいる。これによって、第2ベース部3を昇降させるときに第1昇降部41及び第2昇降部42から第2ベース部3に加えられる力を、水平方向において均等に近づけられる。また、第1昇降部41と第2昇降部42とを併せた昇降ユニット4の全体における重心の水平方向における位置を、中心位置P1及び中心位置P2に近づけることができる。
【0108】
本実施形態において、第1位置2aは第1角部251に配置されており、第3位置2bは第2角部252に配置されており、第2位置3aは第3角部311に配置されており、第4位置3bは第4角部312に配置されている。これによって、第2ベース部3を昇降させるときに第1昇降部41及び第2昇降部42から第2ベース部3に加えられる力を、水平方向においてより均等にできる。また、第1昇降部41と第2昇降部42とを併せた昇降ユニット4の全体における重心の水平方向における位置を、中心位置P1及び中心位置P2に近づけられる。
【0109】
本実施形態において、移動ユニット6は、車幅方向DCにおいて、複数の前輪23同士の間に位置する。これによって、車幅方向DCにおける台車1の中心に近い位置において、移動ユニット6の駆動力を、受け渡し部5に伝達できる。このため、より安定的に、第2ベース部3に対して受け渡し部5を移動させることができる。
【0110】
本実施形態において、移動ユニット6は、第1シリンダ61と、第2シリンダ62と、第1シリンダ61及び第2シリンダ62に接続された接続部63と、を有する。これによって、前後方向DBにおける第1シリンダ61の長さの変化量と、前後方向DBにおける第2シリンダ62の長さの変化量と、を合計した長さの分だけ、第2ベース部3に対して受け渡し部5を移動させることができる。
【0111】
本実施形態において、車輪21はメカナムホイールである。これによって、前後方向DB以外の方向にも移動可能な台車1を実現できる。
【0112】
本実施形態を具体例により説明してきたが、これらの具体例は本実施形態を限定しない。上述した本実施形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行える。
【0113】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0114】
(変形例1)
上述の実施形態においては、昇降ユニット4がパンタグラフを有する例について説明した。しかしながら、昇降ユニット4の形態は、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降方向DAに移動させることができる限り、特に限られない。昇降ユニット4には、ボールねじが用いられていてもよい。この場合、ボールねじは、昇降方向DAに延びるねじ軸と、当該ねじ軸にかみ合うナットとを有する。ねじ軸及びナットの一方を他方に対して回転させると、ねじ軸の延びる昇降方向DAにおけるねじ軸とナットとの位置関係が変化する。このため、ねじ軸及びナットの一方に第1ベース部2、他方に第2ベース部3を固定することで、ボールねじを用いて、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降方向DAに移動させることができる。この場合、ボールねじは、モータによって駆動されてもよい。また、昇降ユニット4は、油圧又は空圧を用いて、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降方向DAに移動させてもよい。この場合、昇降ユニット4は、第1ベース部2に固定されて昇降方向DAに延びるマストを有してもよい。この場合、油圧又は空圧によりマストに沿って第2ベース部3を移動させることによって、第2ベース部3を昇降させることができる。
【0115】
(変形例2)
台車1は、台車1が置かれた面から前輪23が離間するように第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げる、前輪昇降部91を備えてもよい。
図14は、変形例2の台車1の一例を示す側面図である。
図14に示す例において、台車1は前輪昇降部91を備えている。前輪昇降部91は、台車1が置かれた床面から前輪23が離間するように、第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げている。これによって、台車1は、前輪昇降部91の下方SA2の端部と後輪24とにおいて、床面に接している。
【0116】
前輪昇降部91の形態は、第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げることができる限り、特に限られない。
図14に示す例において、前輪昇降部91は、第1ベース部本体22の下方SA2に位置している。一例として、前輪昇降部91は、車幅方向DCにおける複数の前輪23の間に位置している。前輪昇降部91は、車幅方向DCにおいて第1ベース部2の第1側SC1及び第2側SC2に張り出したアウトリガーであってもよい。前輪昇降部91は、油圧又は空圧によって駆動されて昇降方向DAにおいて伸び縮みするシリンダであってもよい。前輪昇降部91は、昇降方向DAに延びるねじ軸と、当該ねじ軸にかみ合うナットとを有するボールねじであってもよい。この場合、ねじ軸及びナットのいずれか一方に第1ベース部2が固定されていてもよい。前輪昇降部91は、リンク機構で構成されていてもよい。
【0117】
変形例2の台車1の、別の一例について説明する。
図15は、変形例2の台車1の別の一例を示す側面図である。
図15に示す例において、第1ベース部2は、車輪21が設けられる第1ベース部本体22を有している。そして、第1ベース部2は、昇降方向DAにおける前輪23と第1ベース部本体22との距離を変更する第1ベース部本体昇降部29を有している。
【0118】
第1ベース部本体昇降部29は、昇降方向DAにおける前輪23と第1ベース部本体22との距離を大きくすることによって、
図15に示すように、第1ベース部本体22の前方SB1の一部を持ち上げることができる。第1ベース部本体昇降部29は、前輪23及び後輪24が平坦な床面に接している状態において、床面に垂直な方向と昇降方向DAとが一致するように、昇降方向DAにおける前輪23と第1ベース部本体22との距離を変更することもできる。
図15に示す例においては、第1ベース部本体昇降部29によって、第1ベース部本体22の前方SB1の一部が持ち上げられている。すなわち、第1ベース部本体22の前方SB1の一部が、第1ベース部本体22の後方SB2の一部よりも、床面から離れている。
【0119】
第1ベース部本体昇降部29の形態は、昇降方向DAにおける前輪23と第1ベース部本体22との距離を変更できる限り、特に限られない。第1ベース部本体昇降部29は、前輪23に取り付けられた、車高の調整などに用いられるサスペンションであってもよい。
【0120】
変形例2の台車1によれば、
図14に示すように第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げるか、又は
図15に示すように第1ベース部本体22の前方SB1の一部を持ち上げることによって、台車1の重心を後方SB2に移動させることができる。これによって、台車1の前方SB1への転倒を安定的に防止できる。特に、
図14及び
図15に示すように、フォーク51が荷物Bを支持しており、且つ荷物Bが高く持ち上げられた状態においては、荷物Bの重心が上方SA1に位置するために、台車1は不安定になりやすい。このような状態においても、台車1の前方SB1への転倒を安定的に防止できる。
【0121】
図14に示す例において、前輪昇降部91は、第1ベース部本体22の前方SB1に突出する部分を有しない。
図15に示す例において、第1ベース部本体昇降部29は、第1ベース部本体22の前方SB1に突出する部分を有しない。このような前輪昇降部91又は第1ベース部本体昇降部29によれば、以下の効果が得られる。台車1の前方SB1への転倒を防止する方法としては、第1ベース部本体22の前方SB1に突出し、第1ベース部本体22の前方SB1において床面に接触する支持部材を用いて、台車1を支持することも考えられる。しかしながら、このような支持部材は、台車1の前方SB1に障害物が存在する場合には、用いることができない場合がある。これに対して、
図14に示す前輪昇降部91又は
図15に示す第1ベース部本体昇降部29によれば、台車1の前方SB1に障害物が存在する場合であっても使用できる。
【0122】
変形例2において、台車1は、前輪23にかかる荷重及び後輪24にかかる荷重を測定するセンサ部92を備えてもよい。この場合、センサ部92は、荷重センサであってもよい。センサ部92は、前輪23の回転軸及び後輪24の回転軸に設けられて、回転軸の形状の荷重による歪みの度合いを測定することで、荷重を測定してもよい。センサ部92により前輪23にかかる荷重及び後輪24にかかる荷重を測定することによって、台車1の重心の位置を計算し得る。フォーク51が荷物Bを支持している場合には、台車1と荷物Bとを含めた全体の重心の位置を計算し得る。これによって、計算された重心の位置を考慮して、台車1の転倒が防止されるように、前輪昇降部91が第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げる量、又は第1ベース部本体昇降部29が第1ベース部本体22の前方SB1の一部を持ち上げる量を決定できる。例えば、台車1の重心の位置、又は台車1と荷物Bとを含めた全体の重心の位置が前輪23よりも後方SB2に位置するように、前輪昇降部91が第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げる量、又は第1ベース部本体昇降部29が第1ベース部本体22の前方SB1の一部を持ち上げる量を決定できる。
【0123】
また、マスト53の昇降方向DAにおける位置、マスト53の延びる方向が床面に垂直な方向に対してなす角度、フォーク51が前方SB1に突出する突出量、フォーク51が支持している荷物Bの重量などを測定してもよい。これらの数値は、台車1に含まれる部分の状態を測定し、この測定結果から計算することで、測定し得る。この場合、台車1に含まれる部分の状態の測定として、台車1に含まれて油圧又は空圧によって台車1の一部を駆動するシリンダの圧力を測定してもよい。例えば、受け渡し昇降部52がシリンダを有し、当該シリンダの油圧又は空圧によって駆動されることでマスト53に対してスライドする場合、当該シリンダの圧力を測定してもよい。また、移動ユニット6に含まれるシリンダ、例えば上述した第1シリンダ61又は第2シリンダ62の圧力を測定してもよい。台車1に含まれる部分の状態の測定として、台車1に含まれて台車1を動作させるときに回転する部品にジャイロセンサを設けて、当該部品が回転する角速度を測定してもよい。これによっても、台車1の重心の位置、又は台車1と荷物Bとを含めた全体の重心の位置を計算し得る。このため、計算された重心の位置を考慮して、前輪昇降部91又は第1ベース部本体昇降部29の動作量を決定できる。
【0124】
センサ部92による前輪23にかかる荷重及び後輪24にかかる荷重の測定は、異なる時刻ごとに行われてもよい。台車1に含まれる部分の状態の測定、及びこれに基づくマスト53の昇降方向DAにおける位置、マスト53の延びる方向が床面に垂直な方向に対してなす角度、フォーク51が前方SB1に突出する突出量、フォーク51が支持している荷物Bの重量などの測定も、異なる時刻ごとに行われてもよい。前輪昇降部91又は第1ベース部本体昇降部29の動作量は、異なる時刻ごとに行われた上記の測定結果を考慮して、異なる時刻ごとに調整されてもよい。
【0125】
図14及び
図15に示す例において、受け渡し部5は、フォーク51が荷物Bを支持する支持面51bの傾斜角を調整する、調整部55を有している。調整部55の形態は、支持面51bの傾斜角を調整できる限り、特に限られない。
図14及び
図15に示す例において、調整部55は、フォーク51及び受け渡し昇降部52の一部をマスト53に対して回転させることで、支持面51bの傾斜角を調整している。
【0126】
受け渡し部5が調整部55を有する場合、調整部55は、センサ部92による前輪23にかかる荷重及び後輪24にかかる荷重の測定、台車1に含まれる部分の状態の測定、及びこれに基づくマスト53の昇降方向DAにおける位置、マスト53の延びる方向が床面に垂直な方向に対してなす角度、フォーク51が前方SB1に突出する突出量、フォーク51が支持している荷物Bの重量などの測定の結果を考慮して、支持面51bの傾斜角を調整してもよい。一例として、調整部55は、上記の測定結果を考慮して、支持面51bが台車1に置かれた床面に対して平行となるように、支持面51bの傾斜角を調整する。これにより、前輪昇降部91によって第1ベース部2の前方SB1の一部を持ち上げたり、第1ベース部本体昇降部29によって第1ベース部本体22の前方SB1の一部を持ち上げたりしつつ、フォーク51の支持面51bによって安定的に荷物Bを支持できる。
【0127】
(変形例3)
台車1は、複数の車輪21として、直径の異なる車輪21を有していてもよい。
図16は、変形例3の台車1の一例における複数の車輪21を、複数の車輪21のそれぞれに対して取り付けられた複数のモータ7及び複数の減速機8とともに示す図である。
図17は、変形例3の台車1の別の一例における複数の車輪21を、複数の車輪21のそれぞれに対して取り付けられた複数のモータ7及び複数の減速機8とともに示す図である。
図16及び
図17は、複数の車輪21、複数のモータ7、複数の減速機8及び第1ベース部本体22を、昇降方向DAにおいて上方SA1から観察した様子を示す平面図である。
図16及び
図17においては、台車1の、複数の車輪21、複数のモータ7、複数の減速機8及び第1ベース部本体22以外の部分は、図示を省略している。
図16及び
図17においては、複数の車輪21、複数のモータ7及び複数の減速機8の形状の詳細については図示を省略して、複数の車輪21、複数のモータ7及び複数の減速機8の輪郭の概形のみを図示している。
図16及び
図17においては、第1ベース部本体22の形状の詳細については図示を省略して、第1ベース部本体22の輪郭の概形のみを破線で図示している。
【0128】
図16及び
図17に示す例において、車輪21は、第1車輪21aと、第1車輪21aよりも直径の小さな第2車輪21bと、を有する。
図16及び
図17に示す例において、第1車輪21aの直径D1は、第2車輪21bの直径D2よりも大きくなっている。
図16及び
図17に示す例において、第1車輪21aは、前後方向DBにおいて前方SB1に位置する、前輪23である。第2車輪21bは、前輪23よりも前後方向DBにおいて前方SB1とは反対側である後方SB2に位置する、後輪24である。
【0129】
車輪21が、第1車輪21aと第2車輪21bとを有することによって、以下の効果が得られる。複数の車輪21を有する台車1において、特定の車輪21に大きな荷重がかかり、その他の車輪21には大きな荷重がかかることは想定されない場合がある。前方SB1に突出するフォーク51を有する台車1においては、フォーク51の重量及びフォーク51が支持する荷物の重量により、前輪23に大きな荷重がかかることが想定される。後輪24には、前輪23ほど大きな荷重がかかることは想定されない。これに対して、大きな荷重がかかると想定される特定の車輪21を、直径の大きな第1車輪21aとすることによって、特定の車輪21に大きな荷重がかかることによる走行性能への悪影響を低減できる。特に、車輪21がメカナムホイールである場合に、特定の車輪21に大きな荷重がかかることによるローラ27への悪影響を低減できる。例えば、他の車輪21のローラ27の摩耗はあまり進行していないにも関わらず、大きな荷重がかかる特定の車輪21においてローラ27の摩耗が大きく進行することを、抑制できる。前方SB1に突出するフォーク51を有する台車1においては、
図16及び
図17に示すように、第1車輪21aを前輪23とし、第2車輪21bを後輪24とすることによって、前輪23に大きな荷重がかかることによる走行性能への悪影響を低減できる。
【0130】
図16に示す例において、台車1は、モータ7として、第1車輪21aに回転を入力する第1モータ71と、第2車輪21bに回転を入力する第2モータ72と、を備えている。一例として、第1モータ71は第2モータ72よりも出力容量が大きい。
図16に示す例においては、第1モータ71として、第2モータ72よりも出力容量の大きな大型のモータ7が用いられている。第1モータ71の出力容量が第2モータ72の出力容量よりも大きいことによって、以下の効果が得られる。第2車輪21bよりも直径の大きな第1車輪21aは、回転させるために第2車輪21bよりも大きなトルクを要する。ここで、第1モータ71の出力容量が第2モータ72の出力容量よりも大きいことによって、第1モータ71により第1車輪21aに大きなトルクをかけることができる。これによって直径の異なる第1車輪21aと第2車輪21bとを用いつつ、台車1を安定的に走行させることができる。
【0131】
図17に示す例において、台車1は、モータ7として、第1車輪21aに回転を入力する第1モータ71と、第2車輪21bに回転を入力する第2モータ72と、を備えている。台車1は、減速機8として、第1モータ71から入力される回転を減速して第1車輪21aに回転を伝達する第1減速機81と、第2モータ72から入力される回転を減速して第2車輪21bに回転を伝達する第2減速機82と、を備えている。第1減速機81は第2減速機82よりも減速比が大きい。この場合、一例として、第1モータ71の出力容量と第2モータ72の出力容量とは等しい。
図17に示す例においては、第1モータ71及び第2モータ72として、出力容量の等しい、同じ大きさのモータ7が用いられている。第1減速機81の減速比が第2減速機82の減速比よりも大きいことによって、以下の効果が得られる。
図16に示す例のように第1モータ71として第2モータ72よりも出力容量の大きなモータ7を用いることなく、第1車輪21aに大きなトルクをかけることができる。一例として、第1モータ71及び第2モータ72として出力容量の等しいモータ7を用い得る。
図17に示す例によっても、直径の異なる第1車輪21aと第2車輪21bとを用いつつ、台車1を安定的に走行させることができる。
【0132】
一例として、第1車輪21aの直径D1と第2車輪21bの直径D2との比は、第1減速機81の減速比と第2減速機82の減速比との比と等しい。例えば、第1車輪21aの直径D1と第2車輪21bの直径D2との比が2:1であり、したがって第1車輪21aの周長と第2車輪21bの周長との比が2:1である場合に、第1減速機81の減速比と第2減速機82の減速比との比を2:1としてもよい。これによって、第1モータ71及び第2モータ72として出力容量の等しいモータ7を用いつつ、台車1を安定的に走行させることができる。
【0133】
車輪21が第1車輪21aと第2車輪21bとを有する、との特徴は、受け渡し部5を備えない台車1に対して適用されてもよい。この場合、台車1は、第2ベース部3、昇降ユニット4及び移動ユニット6の少なくともいずれか一つを備えなくてもよい。
【0134】
図18は、変形例3における台車1の一例を示す斜視図である。
図18に示す台車1は、車輪21を有する第1ベース部2を備える。
図18に示す例において、車輪21は、第1車輪21aと、第1車輪21aよりも直径の小さな第2車輪21bと、を有する。
図18に示す例において、第1車輪21aの直径D1は、第2車輪21bの直径D2よりも大きくなっている。
図18に示す例において、台車1は、受け渡し部5、第2ベース部3、昇降ユニット4及び移動ユニット6を備えていない。
【0135】
図18に示す台車1は、走行時にオペレータによるアシストを要しないAGVやRGVなどの搬送車(すなわち無人搬送車)である。
【0136】
受け渡し部5を備えず、且つ車輪21が第1車輪21aと第2車輪21bとを有する台車1において、台車1が第1モータ71と第2モータ72と、を備えてもよい。この場合に、第1モータ71として、第2モータ72よりも出力容量の大きな大型のモータ7が用いられていてもよい。台車1は、第1モータ71から入力される回転を減速して第1車輪21aに回転を伝達する第1減速機81と、第2モータ72から入力される回転を減速して第2車輪21bに回転を伝達する第2減速機82と、を備えている。
【0137】
受け渡し部5を備えず、車輪21が第1車輪21aと第2車輪21bとを有し、且つ第1モータ71と第2モータ72とを備える台車1において、台車1が第1減速機81と第2減速機82とを備えてもよい。この場合に、第1減速機81が、第2減速機82よりも減速比が大きくてもよい。
【0138】
上述の実施形態及び各変形例において、受け渡し部5を備える台車1に対してした説明は、矛盾しない限り、変形例3における受け渡し部5を備えない台車1にも適用できる。
【0139】
変形例3の台車1は、車輪21を有する第1ベース部2を備える。車輪21は、第1車輪21aと、第1車輪21aよりも直径の小さな第2車輪21bと、を有する。
【0140】
変形例3の台車1は、第1車輪21aに回転を入力する第1モータ71と、第2車輪21bに回転を入力する第2モータ72とを備えてもよい。この場合に、第1モータ71は第2モータ72よりも出力容量が大きくてもよい。
【0141】
変形例3の台車1は、第1車輪21aに回転を入力する第1モータ71と、第1モータ71から入力される回転を減速して第1車輪21aに回転を伝達する第1減速機81と、第2車輪21bに回転を入力する第2モータ72と、第2モータ72から入力される回転を減速して第2車輪21bに回転を伝達する第2減速機82と、を備えてもよい。この場合に、第1減速機81は第2減速機82よりも減速比が大きくてもよい。
【0142】
変形例3の台車1は、第1ベース部2上に位置する第2ベース部3と、第1ベース部2に対して第2ベース部3を昇降させる昇降ユニット4と、荷物を支持するフォーク51を有して荷物の受け渡しを行う受け渡し部5と、第2ベース部3に対して受け渡し部5を、フォーク51の延びる前後方向DBに移動させる移動ユニット6と、をさらに備えてもよい。
【0143】
変形例3の台車1が受け渡し部5を備える場合において、第1車輪21aは、前後方向DBにおいてフォーク51の突出する前方SB1に位置する前輪23であってもよい。第2車輪21bは、前輪23よりも前後方向DBにおいて前方SB1とは反対側である後方SB2に位置する後輪24であってもよい。
【0144】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0145】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0146】
1 台車
2 第1ベース部
21 車輪
21a 第1車輪
21b 第2車輪
22 第1ベース部本体
23 前輪
24 後輪
29 第1ベース部本体昇降部
3 第2ベース部
4 昇降ユニット
41 第1昇降部
42 第2昇降部
5 受け渡し部
51 フォーク
52 受け渡し昇降部
53 マスト
6 移動ユニット
61 第1シリンダ
62 第2シリンダ
63 接続部
7 モータ
8 減速機
91 前輪昇降部
92 センサ部