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特開2024-146050清涼性生地及びこれを用いた清涼性衣料
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  • 特開-清涼性生地及びこれを用いた清涼性衣料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146050
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】清涼性生地及びこれを用いた清涼性衣料
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/208 20210101AFI20241004BHJP
   D03D 15/217 20210101ALI20241004BHJP
   D03D 15/225 20210101ALI20241004BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20241004BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
D03D15/208
D03D15/217
D03D15/225
A41D31/00 503B
A41D31/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058738
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山形 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】小山田 亮
(72)【発明者】
【氏名】河合 貞彰
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AA07
4L048AA13
4L048AA54
4L048AB05
4L048AC12
4L048AC15
4L048CA07
4L048DA01
(57)【要約】
【課題】天然材料に由来の繊維がリッチであり、肌触りが滑らかで、吸放湿性が優れた、特に肌着用途に適した清涼性生地および当該清涼性生地を用いた清涼性衣料を提供する。
【解決手段】本発明は、一態様において、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)とを含む混紡紡績糸(A)を含む、清涼性生地に関する。前記清涼性生地と前記混紡紡績糸(A)に代えて綿繊維のみからなる紡績糸を含むこと以外は前記清涼性生地と同一の生地Xとの、吸湿速度比および放湿速度比がともに1.05以上である。混紡紡績糸(A)は、好ましくは、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)を更に含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)とを含む混紡紡績糸(A)を含む清涼性生地であり、
前記清涼性生地と前記混紡紡績糸(A)に代えて綿繊維のみからなる紡績糸を含むこと以外は前記清涼性生地と同一の生地Xとの、吸湿速度比および放湿速度比がともに1.05以上である、清涼性生地。
【請求項2】
混紡紡績糸(A)が、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)を更に含む、請求項1に記載の清涼性生地。
【請求項3】
前記清涼性生地を100質量%とすると、前記吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)の含有量が3質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の清涼性生地。
【請求項4】
前記混紡紡績糸(A)における前記吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)の混紡割合が、3質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の清涼性生地。
【請求項5】
前記混紡紡績糸(A)における前記吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)の混紡割合が、10質量%以上70質量%以下である、請求項2に記載の清涼性生地。
【請求項6】
前記吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は、天然セルロース系繊維にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物がグラフト結合された繊維である、請求項1に記載の清涼性生地。
【請求項7】
前記吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)におけるグラフト率が、1%以上40%以下である、請求項6に記載の清涼性生地。
【請求項8】
弾性糸をさらに含む、請求項1に記載の清涼性生地。
【請求項9】
前記清涼性生地における前記弾性糸の含有量が15質量%以下である、請求項8に記載の清涼性生地。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の清涼性生地を含む清涼性衣料。
【請求項11】
前記清涼性衣料はインナー衣料であり、シャツ又はパンツである請求項10に記載の清涼性衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼性生地及びこれを用いた清涼性衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
肌に直接触れる衣料は、風合いが良くなめらかで、柔らかいことが望まれる。また、吸湿性が高くてムレ感を軽減する能力が高いことのみならず、吸収した水分を放出させる能力が高いことが望まれる。
【0003】
綿(コットン)繊維に代表される天然セルロース繊維は、環境に優しく、しかも風合いや染色性、吸水性等にも優れているため、種々の衣料に幅広く使用されている。しかし、綿繊維は、吸収した水分の蒸発が遅いため、一旦汗を吸うと、なかなか乾燥しない等の点が問題である。そのため、速乾性能の改善のため開発が行われてきた。
【0004】
肌にやさしい素材としてレーヨン等の再生セルロース系繊維と綿繊維との混紡紡績糸およびそれを主として含む生地も知られている。再生セルロース系繊維は、コットンと同等以上の吸湿性があるが、繊維表面の平滑性が高いため、肌触りが滑らかで、洗濯を繰り返しても、綿繊維よりも滑らかさが続く。また、再生セルロース系繊維の材料は天然原料であることから、ポリエステルやナイロンといった石油から作られる合成繊維とは異なり、加工処理で資源に還元でき、綿繊維と同様に自然に優しい材料である。しかし、再生セルロース繊維は、吸湿すると綿繊維以上に乾きづらいという問題がある。
【0005】
特許文献1は、再生セルロース繊維に高吸放湿性有機微粒子が練り込まれた、高吸放湿性を有する再生セルロース繊維を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-290828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、天然材料に由来の繊維がリッチな製品を求める声も多く存在し、その上、肌触りが滑らかで、吸放湿性が優れ、特に肌着用途の生地が求められている。
本発明は、天然材料に由来の繊維がリッチであり、肌触りが滑らかで、吸放湿性が優れた、特に肌着用途に適した清涼性生地および当該清涼性生地を用いた清涼性衣料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一態様において、
吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)とを含む混紡紡績糸(A)を含む清涼性生地であり、
前記清涼性生地と前記混紡紡績糸(A)に代えて綿繊維のみからなる紡績糸を含むこと以外は前記清涼性生地と同一の生地Xとの吸湿速度比および放湿速度比がともに1.05以上である、清涼性生地に関する。
【0009】
本発明は、一態様において、本発明の清涼性生地を含む清涼性衣料に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然材料に由来の繊維がリッチであり、肌触りが滑らかで、吸放湿性が優れ、特に肌着用途に適した清涼性生地および当該清涼性生地を用いた清涼性衣料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるインナー衣料の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[清涼性生地]
本発明の清涼性生地は、一態様において、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)とを含む混紡紡績糸(A)を主たる構成糸として含む。前記吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は、例えば、天然セルロース系繊維に、放射線照射等の方法を用いてカルボキシル基等の親水基を導入する処理がなされた繊維であり、一方、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は、前記処理がなされていない、通常の再生セルロース系繊維である。混紡紡績糸(A)は、単糸、双糸または3本交撚糸のいずれであってもよい。
【0013】
前記混紡紡績糸(A)は、放湿性と吸湿性の両立の観点から、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)をさらに含んでいると好ましい。即ち、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)の代わりに、その一部が、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)であると、吸湿性と放湿性のバランスが良好となり、好ましい。本発明の清涼性生地は、天然材料に由来の繊維がリッチであることが望ましく、混紡紡績糸(A)は、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)のみからなるか、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)と吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)のみからなると好ましい。吸放湿加工されていない天然繊維として、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)と吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)の両方を含む場合、放湿性と吸湿性の両方がバランスよく向上するので好ましい。換言すれば、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)に、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)を混合した紡績糸は、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)のみからなる紡績糸と比較して、放湿性と吸湿性の両方がバランスよく向上するので好ましい。
【0014】
本発明の清涼性生地は、一態様において、混紡紡績糸(A)を含む紡績糸のみで作製されてもよいが、別の一態様において、混紡紡績糸(A)の他に、弾性糸(B)を含んでいてもよい。本発明の清涼性生地が構成糸として弾性糸(B)を含む場合、本発明の清涼性生地の構成糸は、混紡紡績糸(A)と弾性糸(B)のみであってもよい。
【0015】
レーヨン等の再生セルロース系繊維(a2)はもともと高い吸湿性を有するが、吸湿すると木綿(コットン)等の天然セルロース系繊維以上に乾きづらい。木綿等の天然セルロース系繊維はもともと吸湿発熱性を有するが(本宮達也ら著「繊維の百科事典」830頁左欄、2002年3月25日、丸善)、吸放湿加工されることで、その吸放湿性が向上する。前記混紡紡績糸(A)では、再生セルロース系繊維(a2)の放湿が吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)との混紡により促されているものと推察される。これにより、前記混紡紡績糸(A)を主たる構成糸として含む本発明の清涼性生地における、吸放湿性は優れており、吸湿性と放湿性のバランスもよい。具体的には、本発明の清涼性生地の下記吸湿速度比と下記放湿速度比は、ともに1.05以上である。加えて、本発明の清涼性生地は、再生セルロース系繊維(a2)を含むことで、肌触りが滑らかであり、肌着用途に適している。
【0016】
尚、上記吸湿速度比および放湿速度比は、一般財団法人ボーケン品質評価機構が定めた評価項目「吸放湿性試験(ボーケン規格:BQE A 034)」によって定義されたパラメーターであり、各々、下記(式1)、(式2)から算出される。生地Xは、前記混紡紡績糸(A)に代えて通常の綿繊維100質量%の紡績糸を含むこと以外は、前記清涼性生地と同一の生地である。ここでは、通常の綿繊維とは、吸放湿加工のみならず、他の機能を付与するための処理もなされていない、未加工の綿繊維を意味する。
(式1):前記吸湿速度比(1分経過)=前記清涼性生地の吸湿速度(単位面積当り)/前記生地Xの吸湿速度(単位面積当り)
(式2):前記放湿速度比(5分経過)=前記清涼性生地の放湿速度(単位質量当り)/前記生地Xの放湿速度(単位質量当り)
【0017】
吸湿速度比(単位面積当り)は、表面における吸湿特性を評価でき、放湿速度比(単位質量当り)は、生地内部までの放湿特性の評価できる。
【0018】
本発明において、上記吸湿速度比は、清涼性生地の吸湿速度(μg/cm2・min)と、生地X(対照品)の吸湿速度(μg/cm2・min)との比によって算出され、放湿速度比は、本発明の清涼性生地の放湿速度(mg/g・min)と前記生地Xの放湿速度(mg/g・min)との比によって算出される。
【0019】
当該試験では、試験片(10cm×10cm)を、初期条件ボックス(25℃・40%RH)内で調湿後、吸湿ボックス(25℃・80%RH)に移動し、試験片の質量が平衡に達するまで吸湿ボックス(25℃・80%RH)内に置く。その後、初期条件ボックス(25℃・40%RH)に戻す。試験片を初期条件ボックス内で調湿した後、初期条件ボックスから吸湿ボックスへ移動し、初期条件ボックスへ戻して試験片の質量が平衡に達するまでの間、10秒毎に試験片の質量を計測する。本発明の清涼性生地の吸湿速度と生地X(対照品)の吸湿速度は、各々、試験片を吸湿ボックス(25℃・80%RH)に移動してから1分経過時の単位面積当たりの吸湿速度(μg/cm2・min)である。本発明の清涼性生地の放湿速度と生地X(比較品)の放湿速度は、各々、試料片を初期条件ボックスへ戻してから5分経過時の単位質量当たりの放湿速度(mg/g・min)である。
【0020】
上記吸湿速度比は、1.05以上、好ましくは1.10以上であり、放湿特性との両立の観点から、好ましくは4.00以下である。
【0021】
上記放湿速度比は、1.05以上、好ましくは1.10以上であり、吸湿性との両立の理由から、好ましくは4.00以下である。
【0022】
「生地X」は、「前記混紡紡績糸(A)に代えて綿繊維のみからなる紡績糸を含むこと以外は前記清涼性生地と同一」であるので、本発明の清涼性生地と生地Xの、織り又は編み組織、後述する弾性糸の有無およびその含有量は同一である。また、前記混紡紡績糸(A)を構成する紡績糸が撚り糸である場合、前記混紡紡績糸(A)を構成する紡績糸と、生地Xを構成する紡績糸の撚り係数Kは等しい。
【0023】
例えば、本発明の清涼性生地の一例を構成する糸が、混紡紡績糸(A)100質量%である場合、前記生地Xを構成する糸は、通常の綿繊維のみからなる紡績糸100質量%である。本発明の清涼性生地の一例を構成する糸が、弾性糸5質量%と混紡紡績糸(A)95質量%である場合、前記生地Xを構成する糸は、弾性糸5質量%と通常の綿繊維のみからなる紡績糸95質量%である。
【0024】
前記混紡紡績糸(A)が撚り糸である場合、前記混紡紡績糸(A)の撚り係数Kは、清涼性向上の観点から、好ましくは3.6以上、より好ましくは4.0以上であり、紡績糸の品質の観点から、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下である。混紡紡績糸(A)が、撚り係数Kが3.6以上の強撚糸であると、生地は肌離れが良く、好ましい。撚り係数Kは次の式によって求めることができる。
K=t/√S
但し、t:1インチ(2.54cm)当たりの撚り数、S:英国式番手(基準重量1ポンド(0.4536kg)での単位長さ840ヤード(0.9144m)の倍数)である。
【0025】
本発明の清涼性生地が弾性糸(B)を含む場合、清涼性生地を100質量%としたとき、両糸の質量割合は、好ましくは、混紡紡績糸(A)が85~95質量%、弾性糸(B)が5~15質量%である。これにより適度な吸放湿性を具備し、かつ洗濯を繰り返しても型崩れしにくい清涼性衣料を実現できる。同様の観点から、混紡紡績糸(A)と弾性糸(B)の割合は質量%で、より好ましくは88(混紡紡績糸(A)):12(弾性糸(B))~95:5であり、さらに好ましくは90:10~94:6である。
【0026】
清涼性生地を100質量%としたとき、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)の質量割合は、清涼性生地の良好な吸放湿性の観点から、3~50質量%であり、より好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは4~35質量%、さらにより好ましくは5~30質量%である。
【0027】
吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物がグラフト結合されている天然セルロース系繊維が好ましく、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物がグラフト結合されている綿繊維がより好ましい。エチレン性不飽和二重結合を含む化合物は、例えば、1つのエチレン性不飽和二重結合と、1つまたは2つのカルボキシ基(-COOH)とを含む化合物が挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる少なくとも一つのカルボン酸、又はこれらのエステル若しくは塩であることが好ましい。これらの化合物をコットン等の天然セルロース系繊維の表面に化学結合させると、耐洗濯性のある吸放湿機能を付与できる。
【0028】
前記グラフト結合は、例えば電子線を照射することにより天然セルロース系繊維表面にラジカル(反応活性種)を発生させる反応、発生したラジカルに官能基(-OH、-NH2等)を含むエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を接触させることで天然セルロース系繊維の表面に当該化合物をグラフト結合する反応、前記活性種が前記化合物のカルボキシ基と反応して共有結合する反応等、様々な反応が関与して形成される。エチレン性不飽和二重結合を含む化合物は天然セルロース系繊維に対して1~40質量%の範囲で付与されているのが好ましく、より好ましくは3~35質量%付与され、さらに好ましくは5~30質量%付与されている。前記の範囲であれば、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)と、それ以外の吸放湿加工されていない繊維、例えば、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)、または吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)および吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)とを混紡しても吸放湿機能を発揮できる。
【0029】
前記吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)におけるグラフト率は、好ましくは1~40wt%、より好ましくは3~35wt%、さらに好ましくは5~30wt%である。繊維との接触に使用される前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の使用量は、グラフト率が上記範囲内の値となるような量であると好ましい。
なお、グラフト率(owf%)は、加工前後の質量差より算出する質量の増加率(wt%)であり、下記の計算式により算出できる。owfは、on the weight of fiberの略である。下記式中、Wgは加工後の天然セルロース系繊維の質量であり、W0は加工前の天然セルロース系繊維質量である。
グラフト率(owf%)=(Wg-W0)/W0×100
【0030】
また、混紡紡績糸(A)における吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)の質量割合を好ましくは3~50質量%とすることで、吸放湿加工による天然セルロース系繊維の傷み(強度劣化)を、混紡紡績糸(A)中の吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)以外の繊維により補うことができる。前記天然セルロース系繊維の傷み(強度劣化)は、二重結合のうちのC―H結合が切れることによるラジカル(C・)の生成に伴って生じる。
混紡紡績糸(A)中の吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)以外の繊維とは、例えば、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)、又は吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)および吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)である。
【0031】
混紡紡績糸(A)において、好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は3~50質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は50~97質量%である。より好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は3~40質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は60~97質量%である。さらに好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は4~35質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は65~96質量%である。さらにより好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は5~30質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は70~95質量%である。
【0032】
また、混紡紡績糸(A)が、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)を含む場合、吸湿性および放湿性の向上の観点から、好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は3~50質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は10~70質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は5~80質量%である。より好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は3~40質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は15~65質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は10~75質量%である。さらに好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は4~35質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は20~65質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は15~75である。さらにより好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は5~30質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は20~65質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は15~70質量%である。さらにより好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は5~20質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は30~65質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は15~65質量%である。
【0033】
また、混紡紡績糸(A)が、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)を含む場合、吸湿性および放湿性の向上とコスト低減との両立の観点から、好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は5~30質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は25~45質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は25~70質量%である。
また、混紡紡績糸(A)が、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a3)を含む場合、吸湿性および放湿性の向上と吸湿性と放湿性のバランス向上の観点から、好ましくは、吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)は5~20質量%であり、吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)は35~65質量%であり、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)は20~60質量%である。
【0034】
前述の混紡紡績糸(A)が吸放湿加工されていない天然セルロース繊維(a3)を含む場合、吸放湿加工されていない天然セルロース繊維(a3)の一部をポリエステル等の合成繊維に置き換えてもよい。
【0035】
吸放湿加工された天然セルロース系繊維(a1)の調製の際に、吸放湿加工の対象となる天然セルロース系繊維としては、コットン(木綿)、麻等が挙げられるが、好ましくはコットンである。吸放湿加工されていない再生セルロース系繊維(a2)としては、レーヨンが挙げられるが、その材料は木材パルプまたはコットンリンター等いずれであってもよい。レーヨンの中でもブナのパルプを原料としたモダール(登録商標)が好ましい。吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a2)としては、コットン(木綿)、麻等が挙げられるが、好ましくはコットンである。
【0036】
本発明の清涼性生地において、天然材料に由来の繊維の含有量は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。また、本発明の清涼性生地は、肌着等のインナー衣料に好適に使用される生地であることから、清涼性生地中の天然セルロース系繊維(吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維を含む場合は、吸放湿加工された天然セルロース系繊維と吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維の両方を含む)の含有量と再生セルロール系繊維の含有量の合計は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、コットンの含有量(吸放湿加工されたコットンと吸放湿加工されていないコットンの両方を含む)とレーヨンの含有量の合計は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0037】
本発明の清涼性生地は、一態様において、混紡紡績糸(A)と通常の糸を混在させて作製し、即ち、これらの糸を交織または交編することにより作製してもよい。例えば、混紡紡績糸(A)1本に対し、通常の糸を1または2本使用することもできる。通常の糸としては、好ましくは、吸放湿加工されていない天然セルロース系繊維(a3)100質量%からなる紡績糸であり、より好ましは、通常の綿繊維100質量%からなる紡績糸である。
【0038】
本発明の清涼性生地は編み物又は織物が好ましい。編み物及び織物はインナー衣料にするのに好適である。とくに編み物は伸縮性があり、柔軟でインナー衣料に好適である。編み物は、丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編等を含む。本発明の清涼性生地は、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織、及びこれらを組み合わせた織物等いずれの織組織でもよい。編地を作製するには種々の交編方法が用いられる。交編編地は、経編みでも緯編みでもよく、例えば、トリコット、ラッセル、丸編み等が挙げられる。また編組織は、ハーフ編み、逆ハーフ編み、ダブルアトラス編み、ダブルデンビー編み、及びこれらを組み合わせた編み物等いずれの編組織でもよい。織物組織としては、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織、またはこれらを組み合わせた組織がある。この中でも丸編みを含む緯編み生地、又は経編み生地が好ましい。
【0039】
本発明の清涼性生地の単位面積当たりの質量は80~300g/m2が好ましく、より好ましくは90~280g/m2であり、さらに好ましくは100~250g/m2である。前記の範囲であればインナー衣料として好適である。
【0040】
前記弾性糸は、ポリウレタン糸及び異なる収縮率を持つ少なくとも2種類のポリマーを複合紡糸したコンジュゲート糸から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。ポリウレタン弾性糸は、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。前記コンジュゲート糸とは、異なる収縮率を持つ少なくとも2種類のポリマーを複合紡糸したコンジュゲート糸であり、原糸の段階からクリンプ(捲縮)を発現しているが、熱が加わることにより、さらに大きいクリンプ(捲縮)を発現する。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリトリメチレンテレフタレート(PTT)とのコンジュゲート糸(バイコンポーネント糸)が好ましい。このような潜在捲縮型ストレッチ糸として、例えば東レ・オペロンテックス社製、商品名"ライクラT400"、KBセーレン社製、商品名"エスパンディ"、ユニチカ社製、商品名"Z10"などがある。通常使用される弾性糸はポリウレタン糸である。
【0041】
緯編み生地、丸編み生地の場合、スパンデックス裸糸(弾性糸)をループ糸の添え糸として入れることが好ましく、経編み生地の場合、スパンデックス裸糸(弾性糸)を挿入組織、又は緯糸挿入によって入れる。いわゆるインナー衣料の場合は、通常丸編みが採用され、弾性糸、特に、ポリウレタン弾性糸は、ループ糸の添え糸として用いられる。ポリウレタン弾性糸は、通常20~40decitexの糸が2.5倍程度に引き延ばされた状態で添え糸として挿入される。
【0042】
本発明の吸放湿性生地は、これを用いて作製された衣料において弾性糸を身体の周囲方向に沿って配置させることができる、いわゆるワンウェイストレッチ生地が好ましい。身体の周囲方向とは、胴体の周囲方向、及び腕の周囲方向のことである。弾性糸をこのように配置すれば、着心地が良く、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいインナー衣料となる。この衣料は、具体的には、シャツ又はパンツが好ましい。本発明の清涼性衣料は、好ましくは、コットンの含有量とレーヨンの含有量の合計が、好ましくは85質量%以上、より好ましくは88質量%以上、更に好ましくは90質量%以上の、肌触りが滑らかで、肌にやさしいインナー衣料である。
【0043】
[清涼性生地の製造方法]
次に本発明の清涼性生地の製造方法について、天然セルロース系繊維としてコットンを、再生セルロース系繊維としてレーヨンを使用した場合を例示して説明する。
【0044】
天然セルロース系繊維への吸放湿加工は例えば以下のようにして行う。
紡績用コットンスライバーに対して、連続法の場合は窒素雰囲気下で電子線を照射し、コットン繊維表面にラジカルを発生させ、直後に連続的にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させる。電子線照射直後にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させるのは、電子線照射により発生したラジカルを減衰させないためである。ラジカルは時間とともに減衰する傾向が高いので、電子線照射直後にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させるのが好ましい。また、電子線照射後、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させることを連続的に行うのは、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に発生したラジカルに効果的に接触できるためである。連続的に行うことは、長尺物の紡績用スライバーを処理するのに好都合である。窒素雰囲気下で電子線を照射すると、発生したラジカルが失活しにくいので好ましい。
【0045】
エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させる方法は、浸漬法又はスプレー法等、いかなる方法でも良い。例えば、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物の水溶液を調製し、当該水溶液に、スライバーを浸漬させるかまたは、スライバーにスプレーする方法が好ましい。
【0046】
本発明においては、例えば、吸放湿加工された紡績用コットンスライバーと吸放湿加工されていないレーヨン、或いは、吸放湿加工された紡績用コットンスライバーと吸放湿加工されていないレーヨンと吸放湿加工されていないコットンとを、混綿機で混合し、常法にしたがって所望の混率で混紡する。具体的には、これらを混綿機で混合し、開繊し、むらの少ない均整のとれたカードスライバーとし(梳綿工程)、次いで、カードスライバーを一定本数合わせなから伸ばし、繊維を平行にさせ、更にむらを減らして、練条スライバーとする。次いで、練条スライバーを伸ばしながら細くし、ロービングをつくる粗紡工程を経た後、ロービングを伸ばしながら撚りをかけ、糸の状態とする(精紡工程)。混紡は、粗紡工程、精紡工程でも可能であり、ウエブ、スライバー、フリース、または粗紡糸を複数本引き揃え、所定倍率で引き伸ばすことにより混紡できる。粗紡工程や精紡工程では、撚り掛けする際に構成繊維のマイグレーションにより混紡できる。
【0047】
このようにして、前記吸放湿加工されたコットンと吸放湿加工されていないレーヨン、或いは、前記吸放湿加工されたコットンと吸放湿加工されていないレーヨンと吸放湿加工されていないコットンを混紡した後は、常法に従い必要に応じて撚りをかけ、混紡紡績糸(A)とする。前記混紡紡績糸(A)のみ、前記混紡紡績糸(A)と弾性糸(B)、または前記混紡紡績糸(A)と通常の糸を各々所定量使用して、清涼性生地を作製する。この生地に対して、常法にしたがい、晒、染色、柔軟仕上げなどの後加工することは任意である。
【0048】
[清涼性衣料]
図1は本発明の一実施形態におけるインナー衣料1の正面図である。このインナー衣料1は長袖シャツの例である。身体の周囲方向、すなわち胴体の周囲方向(矢印2)、及び腕の周囲方向(矢印3)には弾性糸が配置されている。
【実施例0049】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<吸放湿性試験>
吸放湿性試験として、一般財団法人ボーケン品質評価機構において、評価項目「吸放湿性試験(ボーケン規格:BQE A 034)」を実施した。具体的には、下記の通りである。
試験片(10cm×10cm)を、初期条件ボックス(25℃・40%RH)内で調湿後、吸湿ボックス(25℃・80%RH)に移動し、試験片の質量が平衡に達するまで、吸湿ボックス(25℃・80%RH)内に置く。その後、初期条件ボックス(25℃・40%RH)に戻し、試験片の質量が平衡に達した時点で、試験片の質量の測定を終了する。この間、10秒毎に試験片の質量を計測する。計測結果から、下記吸湿量比、下記吸湿率比、下記吸湿率差、1分経過後の単位面積当たりの吸湿速度比、5分経過後の単位質量当たりの放湿速度比を算出し、それらを表1に示した。
尚、吸湿量比、吸湿率比、吸湿率差、吸湿速度(μg/cm2・min)比、放湿速度(mg/g・min)比を算出する際の対照品はそれぞれの試験片と同様に作成した通常綿100%編物生地とした。
【0051】
(吸湿量比)
吸湿量比=下記実施例、比較例の編物生地の吸湿量/綿100%編物生地の吸湿量
吸湿量は、試験片を吸湿ボックス(25℃・80%RH)内に置き、試験片の質量が平衡に達した時の試験片の質量から算出する。
(吸湿率比)
吸湿率比=下記実施例、比較例の編物生地の吸湿率/通常綿100%編物生地の吸湿率
吸湿率(%)は下記式より算出される値である。
吸湿率(%)=試験片を吸湿ボックス(25℃・80%RH)内に置き、試験片の質量が平衡に達した時の吸湿量(g)/試料片の重量(初期条件)×100
(吸湿率差)
吸湿率差=(下記実施例、比較例の編物生地の吸湿率)-(通常綿100%編物生地の吸湿率)
【0052】
<スライバーの処理>
コットンスライバー(単位長さあたりの質量、単位ゲレン:25.0g/6yd(4.6g/m))に対し、電子線照射装置EC250/30/90L(岩崎電気社製)を使用して、窒素雰囲気下で電子線を照射線量40kGy、加速電圧200kVで照射した。電子線が照射されたスライバーをその直後に0.5重量%の浸透剤を含有するアクリル酸(ナカライテスク株式会社製)の16質量%水溶液に浸漬し、マングルでスライバー重量に対して約100質量%のピックアップ率となるように絞った。その後、連続して未反応のアクリル酸を除去するため前記スライバーを水洗した後、80℃で乾燥し、容器にコイリングして収納した。このようにして得られたアクリル酸グラフト化コットンスライバーを、以下、“グラフト綿”と呼ぶ。このグラフト綿にはアクリル酸が16質量%結合していた。また、上記コットンスライバー(単位長さあたりの質量、単位ゲレン:25.0g/6yd(4.6g/m))を“通常綿”と呼ぶ。
【0053】
<糸の作製&評価用の生地作成>
(実施例1)
以下のようにして、実施例1の清涼性編み物を作製した。
混綿機で前記グラフト綿と、前記通常綿と、レーヨン(ステープル、繊度0.9dtex、繊維長38mm)とを混合し、クイックスピンを使用して紡績糸を作成した。混紡紡績糸中のグラフト綿の質量割合が10質量%、前記レーヨンの質量割合が40質量%、前記通常綿の質量割合が50質量%となるようにした。
上記紡績糸で丸編地を作製し、ソーダ灰と過酸化水素で晒処理後、酸処理&アルカリ置換した。具体的には、酸処理では、4.0g/Lのクエン酸水溶液を用い、この水溶液中に浴比1:15で編地を浸漬し、40℃で20分間処理した後、常温で5分間の水洗を2回繰り返した。アルカリ置換では、重曹9.0g/Lとキレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))0.5g/Lを含む水溶液に浴比1:15で編地を浸漬し、40℃で20分間処理した後、常温で5分間の水洗を2回繰り返した。得られた編物生地の当該生地の単位面積当たりの質量は、195g/m2であった。
【0054】
(実施例2)
質量割合が、グラフト綿が15質量%、前記通常綿が45質量%、前記レーヨンが40質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして紡績糸を作製した。当該紡績糸で丸編地(20ゲージ)を作製し、実施例1と同様に、晒処理後、酸処理&アルカリ置換をして、単位面積当たりの質量が191g/m2編物生地を得た。
【0055】
(実施例3)
質量割合が、グラフト綿が10質量%、前記通常綿が60質量%、前記レーヨンが30質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして紡績糸を作製した。当該紡績糸で丸編地(20ゲージ)を作製し、実施例1と同様に、晒処理後、酸処理&アルカリ置換をして、単位面積当たりの質量が222g/m2編物生地を得た。
【0056】
(比較例1)
質量割合が、前記通常綿が70質量%、前記レーヨンが30質量%となるようにしたこと以外は、実施例3と同様にして紡績糸を作製した。当該紡績糸で丸編地(20ゲージ)を作製し、実施例3と同様に、晒処理後、酸処理&アルカリ置換をして、単位面積当たりの質量が216g/m2編物生地を得た。
【0057】
(比較例2)
質量割合が、前記グラフト綿10質量%、前記通常綿が90質量%となるようにしたこと以外は、実施例3と同様にして紡績糸を作製した。当該紡績糸で丸編地(20ゲージ)を作製し、実施例3と同様に、晒処理後、酸処理&アルカリ置換をして、単位面積当たりの質量が163g/m2編物生地を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなとおり、通常綿(コットン)とレーヨンのみの混紡では、通常綿100質量%生地と比較して、吸湿速度は幾らか向上しても、放湿速度は向上しない(比較例1)。通常綿とグラフト綿とを混紡すると(比較例2)、通常綿100質量%生地と比較して、放湿度速度は向上するが、吸湿速度については、顕著な向上は見られない。グラフト綿と通常綿とレーヨンとの3種混紡を行うと、レーヨンを含むことにより、肌触りが滑らかであり、吸湿速度および放湿速度について向上が見られ、しかも、吸湿性および放質性の向上のバランスが良好であった。特に、グラフト綿が5~20質量%、レーヨンが30~65質量%、通常綿が20~60質量%であると、吸湿速度および放湿速度について顕著な向上が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の清涼性生地及びこれを用いた清涼性衣料は、シャツ、パンツなどのインナー衣料に好適である。また、肌にやさしいことからTシャツなどにも好適である。
【符号の説明】
【0061】
1 清涼性衣料
2 胴体の周囲方向
3 腕の周囲方向
図1