(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146056
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/40 20160101AFI20241004BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20241004BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02K11/40
H02K7/14 B
F04C15/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058748
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
(72)【発明者】
【氏名】グエン ティ タン タム
【テーマコード(参考)】
3H044
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
3H044BB03
3H044CC14
3H044DD01
3H044DD24
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607FF06
5H607JJ06
5H607JJ10
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡素な構造で基板を接地できる電動ポンプを提供する。
【解決手段】取付対象9の収容凹部9aに収容される電動ポンプ1であって、中心軸線Jを中心として回転可能なシャフト31が設けられるロータ30、およびロータと隙間を介して対向するステータ40を有するモータ部10Aと、ステータに電気的に接続される基板7と、シャフトの軸方向他方側に接続されるポンプ機構20と、モータ部、基板、およびポンプ機構を収容するハウジング6と、第1導電部材85と、第2導電部材95と、を備える。ハウジングは、ステータを内部に収容する金属製のハウジング本体部80と、ハウジング本体部の軸方向他方側の端部に接続されポンプ機構を軸方向他方側から覆う金属製のポンプカバー90と、を有する。第1導電部材は、基板とハウジング本体部とを電気的に接続する。第2導電部材は、ポンプカバーと電気的に接続され収容凹部の内側面に接触する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象の収容凹部に収容される電動ポンプであって、
中心軸線を中心として回転可能なシャフトが設けられるロータ、および前記ロータと隙間を介して対向するステータを有するモータ部と、
前記ステータに電気的に接続される基板と、
前記シャフトの軸方向他方側に接続されるポンプ機構と、
前記モータ部、前記基板、および前記ポンプ機構を収容するハウジングと、
第1導電部材と、
第2導電部材と、を備え、
前記ハウジングは、
前記ステータを内部に収容する金属製のハウジング本体部と、
前記ハウジング本体部の軸方向他方側の端部に接続され前記ポンプ機構を軸方向他方側から覆う金属製のポンプカバーと、を有し、
前記第1導電部材は、前記基板と前記ハウジング本体部とを電気的に接続し、
前記第2導電部材は、前記ポンプカバーと電気的に接続され前記収容凹部の内側面に接触する、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記第2導電部材は、弾性変形して前記内側面に押し当てられる、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第2導電部材は、
前記ポンプカバーに固定される固定部と、
前記固定部から前記内側面に向かって延びる第1部分と、
前記第1部分の先端に位置する接触部と、を有し、
前記第1部分は、前記接触部において接触する前記内側面の法線方向に対して傾斜する方向に延びる、
請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記第2導電部材は、前記接触部から前記ハウジング側に延びる第2部分を有し、
前記ハウジングには、前記第2部分の少なくとも一部を収容する凹状の位置ずれ防止部を有する、
請求項3に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプカバーの軸方向他方側を向く面には、穴部が設けられ、
前記固定部は、前記穴部に圧入される、
請求項3に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記第2導電部材は、前記内側面のうち軸方向を向く面に接触する、
請求項1~5の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記第2導電部材は、前記内側面のうち径方向内側を向く面に接触する、
請求項1~5の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記第2導電部材は、前記接触部から前記ハウジング側に延びる第2部分を有し、
前記第2部分は、前記ハウジングに接触し、前記ハウジングと摺動可能な摺動部を有する、
請求項3に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記第1導電部材は、前記ハウジング本体部の径方向内側を向く内周面に弾性変形して押し当てられる、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項10】
前記ポンプカバーは、軸方向他方側に突出するポート部を有し、
前記接触部は、前記ポート部の軸方向他方側の端部よりも、軸方向一方側に位置する、請求項3に記載の電動ポンプ。
【請求項11】
軸方向から見て、前記固定部および前記接触部は、前記ポート部の外側に配置される、
請求項10に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
基板と回転電機とポンプ機構とこれらを収容するハウジングとを有する電動ポンプが知られている。このような電動ポンプにおける基板の接地の方法として、基板を金属製の筐体に接続するものがある。特許文献1には、ねじで基板のグランドパターンと筐体とを電気的に接続する駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造コストの低減などを目的として、ハウジングのうち基板を収容する部分を樹脂材料で構成する場合がある。この場合、ハウジングを介して基板を外部の部材に接地させようとすると構造が複雑化してしまい、製造コストの増大、又は電動ポンプの大型化が問題となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、簡素な構造で基板を接地できる電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、取付対象の収容凹部に収容される電動ポンプであって、中心軸線を中心として回転可能なシャフトが設けられるロータ、および前記ロータと隙間を介して対向するステータを有するモータ部と、前記ステータに電気的に接続される基板と、前記シャフトの軸方向他方側に接続されるポンプ機構と、前記モータ部、前記基板、および前記ポンプ機構を収容するハウジングと、第1導電部材と、第2導電部材と、を備える。前記ハウジングは、前記ステータを内部に収容する金属製のハウジング本体部と、前記ハウジング本体部の軸方向他方側の端部に接続され前記ポンプ機構を軸方向他方側から覆う金属製のポンプカバーと、を有する。前記第1導電部材は、前記基板と前記ハウジング本体部とを電気的に接続する。前記第2導電部材は、前記ポンプカバーと電気的に接続され前記収容凹部の内側面に接触する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、簡素な構造で基板を接地できる電動ポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の電動ポンプの断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の電動ポンプの部分拡大図であり、
図1の一部を拡大した図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の電動ポンプの下端部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の第2導電部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の第2導電部材を含む電動ポンプの部分断面図である。
【
図6】
図6は、変形例の電動ポンプの下端部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例の電動ポンプの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図には、適宜、以下の各実施形態の電動ポンプの中心軸線Jを示す。中心軸線Jは、仮想軸線である。以下の説明においては、中心軸線Jが延びる方向、つまり中心軸線Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。各図においては、軸方向と平行なZ軸を示す。以下の説明においては、軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼び、軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。以下の各実施形態において、上側は「軸方向一方側」に相当し、下側は「軸方向他方側」に相当する。なお、上側および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0010】
(取付対象)
図1は、一実施形態の電動ポンプ1の断面図である。
図2は、
図1の部分拡大図である。
以下の説明において、電動ポンプ1が取り付けられる機器を取付対象9と称する。取付対象9は、金属製である。取付対象9は、たとえば、車軸に繋がり車軸を回転させることで車両を進行させる駆動装置の筐体である。取付対象9は、取付面9fと収容凹部9aとを有する。電動ポンプ1は、収容凹部9aに収容される。また、電動ポンプ1は、取付面9fに固定される。
【0011】
図1に示すように、収容凹部9aは、内側面9bを有する。内側面9bは、径方向内側を向く周壁面9dと、上側を向く底壁面9eと、を有する。周壁面9dは、中心軸線Jを中心とする略円筒状の面である。底壁面9eは、軸方向から見て、略円形の平坦面である。
【0012】
底壁面9eには流入開口9gと、流出開口9hと、流入開口9gの周囲を囲む筒状部9iと、が設けられる。流入開口9gは、軸方向から見て円形の開口である。流体は、電動ポンプ1の駆動に伴い、流入開口9gから収容凹部9a内に流入する。流出開口9hは、軸方向から見て、中心軸線Jを中心とした円弧状に延びる開口である。流体は、電動ポンプ1の駆動に伴い、流出開口9hから収容凹部9aの外部に流出する。なお、流出開口9hの形状は、限定されない。筒状部9iは、流入開口9gを囲む円筒状である。筒状部9iは、流入開口9gの内縁に沿って上側に突出する。
【0013】
(ポンプ)
本実施形態の電動ポンプ1は、例えば、車両に搭載される電動ポンプである。電動ポンプ1が送る流体は、例えば、オイルである。なお、電動ポンプ1が送る流体は、特に限定されず、水などのオイル以外の流体であってもよい。電動ポンプ1は、回転電機10と、回転電機10に接続されたポンプ機構20と、を備える。
【0014】
(ポンプ機構)
ポンプ機構20は、回転電機10によって駆動されて流体を送る。ポンプ機構20は、後述するハウジング本体部80に設けられたポンプ室R内に収容されている。ポンプ機構20は、回転電機10によって中心軸線J回りに回転させられるインナーロータ21と、インナーロータ21を囲みインナーロータ21と噛み合うアウターロータ22と、を有する。
【0015】
本実施形態のポンプ機構20は、トロコイドポンプ機構である。ポンプ機構20は、インナーロータ21とアウターロータ22との間に流体を取り込み、インナーロータ21を中心軸線Jに対して偏心回転させることで流体を移送する。しかしながら、ポンプ機構20の種類は、本実施形態に限定されない。すなわち、ポンプ機構20は、回転電機10の動力によって駆動し流体を圧送するものであれば本実施形態の構成に限定されない。
【0016】
(回転電機)
回転電機10は、中心軸線Jを中心として回転可能なロータ30と、ロータ30と隙間を介して対向するステータ40と、ステータ40の上側に位置する基板7と、ハウジング6と、第1導電部材85と、第2導電部材95と、を備える。ロータ30およびシャフト31は、モータ部10Aを構成する。すなわち、電動ポンプ1は、モータ部10A、基板7、およびハウジング6を有する。
【0017】
(ロータ)
ロータ30は、軸方向に延びるシャフト31と、シャフト31の外周面に固定されたロータコア32と、ロータコア32に固定された複数のマグネット33と、を有する。すなわち、ロータ30には、シャフト31が設けられる。本実施形態においてシャフト31は、中心軸線Jを中心として延び、軸方向の両側に開口する円筒状の中空シャフトである。シャフト31は、中心軸線Jを中心として回転する。シャフト31の下端部には、ポンプ機構20のインナーロータ21が接続される。すなわち、ポンプ機構20は、シャフト31の下に接続される。
【0018】
(ステータ)
ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ40は、ロータ30を囲む環状である。ステータ40は、ステータコア41と、ステータコア41に取り付けられた絶縁性のインシュレータ42と、インシュレータ42を介してステータコア41に取り付けられた複数のコイル43と、を有する。
【0019】
ステータコア41は、ロータコア32の径方向外側に隙間を空けて対向して配置される。ステータコア41は、中心軸線Jを囲む環状のコアバック41aと、コアバック41aから径方向内側に延びる複数のティース41bと、を有する。複数のティース41bは、周方向において一周に亘って等間隔に配置される。複数のティース41bには、インシュレータ42を介して、複数のコイル43が装着される。すなわち、コイル43は、ステータコア41に装着される。
【0020】
コイル43は、コイル線をティース41bに巻き付けることで構成される。コイル43からは、引出線43aが引き出される。引出線43aは、コイル線の端部である。引出線43aは、ステータコア41に対し上側に延び出る。
【0021】
引出線43aの先端には、端子部材5が接続される。また、端子部材5は、基板7に接続される。すなわち、基板7は、端子部材5を介してステータ40に電気的に接続される。基板7が、引出線43aを介しコイル43に電流を流すことで、ステータコア41を励磁してロータ30を中心軸線J周りに回転させる。
【0022】
(ハウジング)
ハウジング6は、モータ部10A、基板7、ポンプ機構20、および第1導電部材85を収容する。また、ハウジング6の外側面には第2導電部材95が固定される。
【0023】
ハウジング6は、ハウジング本体部80と、ハウジング本体部80の下側に位置するポンプカバー90と、ハウジング本体部80の上側に位置する支持部材70と、支持部材70の上側に位置する蓋体60と、蓋体60の上側に位置する遮蔽板50と、を有する。ハウジング本体部80、ポンプカバー90、および遮蔽板50は、金属製である。一方で、支持部材70、および蓋体60は、樹脂製である。
【0024】
(ハウジング本体部)
ハウジング本体部80は、ポンプ機構20、ロータ30、およびステータ40を内部に収容する。ハウジング本体部80は、金属製である。ハウジング本体部80は、上側に開口する筒状である。ハウジング本体部80は、中心軸線Jを中心とする略円筒状である。
【0025】
ハウジング本体部80は、ステータ収容部81と、ポンプ機構収容部82と、ポンプカバー嵌合部83と、を有する。ステータ収容部81は、中心軸線Jを中心とし、上側に開口する略円筒状である。ステータ収容部81は、ステータ40を内部に収容する。ステータ収容部81の内周面80fには、ステータコア41の外周面が固定される。すなわち、ハウジング本体部80の内周面80fは、ステータコア41の外周面に接触する。ステータ収容部81は、ステータ40の下側に位置する底壁部81aを有する。底壁部81aには、底壁部81aを軸方向に貫通する挿通孔81bが設けられる。挿通孔81bには、シャフト31が軸方向に通される。
【0026】
ポンプ機構収容部82は、ステータ収容部81の下側に繋がる。ポンプ機構収容部82の外径は、ステータ収容部81の外径よりも小さい。ポンプ機構収容部82は、ポンプ機構収容部82の下側の面から上側に窪む機構収容部82aを有する。機構収容部82aの下側の開口における少なくとも一部がポンプカバー90によって塞がれることで、ポンプ機構20を内部に収容するポンプ室Rが構成される。ポンプ室Rの内部には、挿通孔81bに通されたシャフト31の下端部が配置される。シャフト31の下端部は、ポンプ室R内においてインナーロータ21に接続される。
【0027】
ポンプカバー嵌合部83は、ポンプ機構収容部82の下側に位置する。ポンプカバー嵌合部83は、中心軸線Jを中心とする筒状である。ポンプカバー嵌合部83の内径は、ポンプ機構収容部82の内径よりも大きい。ポンプカバー嵌合部83の内部空間は、ポンプ機構収容部82の機構収容部82aに連通する。
【0028】
(ポンプカバー)
ポンプカバー90は、ポンプカバー嵌合部83の内周面に圧入される。これにより、ポンプカバー90は、ハウジング本体部80の下側の端部に機械的に接続されるとともに、ハウジング本体部80と接触することでハウジング本体部80と電気的に接続される。また、ポンプカバー90は、ポンプ機構20を下側から覆う。
【0029】
本実施形態では、ポンプカバー90が、ハウジング本体部80のポンプカバー嵌合部83に圧入されて固定される場合について説明したが、ポンプカバー90は、ハウジング本体部80に接触し固定されていれば、ボルトによる締結など他の手段で固定されていてもよい。
【0030】
ポンプカバー90は、中心と軸線を中心とする円盤状の円板部91と、円板部91の下側を向く面(以下、下面91a)から下側に突出するポート部92と、を有する。また、ポンプカバー90には、吸入孔93と吐出孔94とが設けられる。吸入孔93および吐出孔94は、ポンプカバー90を軸方向に貫通する。吸入孔93および吐出孔94は、それぞれポンプ室Rに繋がる。吸入孔93は、ポート部92の下端面に開口する。吐出孔94は、円板部91の下面91aに開口する。電動ポンプ1は、吸入孔93からポンプ機構収容部82の内部に流体を吸入する。また、電動ポンプ1は、吐出孔94を介して流体を部に吐出する。
【0031】
ポート部92は、軸方向に延びる円筒状である。ポート部92の内周面は、吐出孔94を構成する。ポート部92の外周面には、Oリング92gが嵌め込まれる溝が設けられる。ポート部92は、取付対象9の流入開口9gに挿入される。Oリング92gは、ポート部92の外周面と流入開口9gの内周面との間を封止する。
【0032】
図3は、電動ポンプ1の下端部を示す斜視図である。
ポンプカバー嵌合部83の下端面83fには、上側に向かって凹む凹溝83aが設けられる。ポンプカバー嵌合部83の凹溝83aは、径方向に沿って溝状に延びる。凹溝83aは、ポンプカバー嵌合部83の径方向内側および外側に開口する。
【0033】
ポンプカバー90の下面91aには、穴部91hと、凹状部(位置ずれ防止部)91jと、が設けられる。穴部91hは、上側に向かって凹む。穴部91hは、軸方向から見て円形である。穴部91hの外縁には下側に向かって突出する環状の突出部91kが設けられる。穴部91hは、下側に開口し底部を有する。すなわち、穴部91hは、ポンプカバー90を貫通していない。凹状部91jは、上側に向かってすり鉢状に凹む。凹状部91jは、軸方向から見て円形である。
【0034】
穴部91hは、軸方向から見て凹溝83aの径方向内側に位置する。すなわち、穴部91hの周方向位置は、凹溝83aの周方向位置と重なる。穴部91hおよび凹溝83aは、ポンプカバー90をポンプカバー嵌合部83に圧入する際に圧入治具を挿入し、ポンプカバー90とポンプカバー嵌合部83の周方向の位置決めをするために利用される。また、後述するように、穴部91hには、第2導電部材95が挿入される。第2導電部材95の穴部91hへの挿入は、ポンプカバー90のポンプカバー嵌合部83への圧入が完了した後に行われる。
【0035】
(支持部材)
図1に示すように、支持部材70は、軸方向において、基板7とステータ40との間に位置する。支持部材70は、基板7、端子部材5、第1導電部材85および蓋体60を支持する。支持部材70は、第1筒状部71と第2筒状部72と円環部73と、固定爪部74と、を有する。
【0036】
第1筒状部71は、中心軸線Jを中心とする略円筒状である。第1筒状部71の内周面には、径方向内側に突出する段部71aが設けられる。段部71aの上面には、上側に突出して基板7を支持するボス71bが設けられる。段部71aの径方向内側を向く面には、端子部材5を支持する端子部材支持部71cが設けられる。
【0037】
図2に示すように、第1筒状部71には、第1導電部材85を支持する導電部材支持部71kが設けられる。また、第1筒状部71の外周面には、周方向に沿って延びてOリング79が収容される溝部71hが設けられる。Oリング79は、電動ポンプ1の外周面と、取付対象9の収容凹部9aの周壁面9dとの間を封止する。
【0038】
第2筒状部72は、中心軸線Jを中心とする略円筒状である。第2筒状部72は、第1筒状部71の上側に位置する。第2筒状部72の直径は、第1筒状部71の直径よりも大きい。第2筒状部72の上側への開口は、蓋体60によって覆われる。第2筒状部72の上端部には、蓋体60が固定される。
【0039】
円環部73は、中心軸線Jを中心とする円環板状である。円環部73は、第1筒状部71の上端と第2筒状部72の下端とを繋ぐ。円環部73の下面73fは、取付対象9の取付面9fと軸方向に対向する。支持部材70は、円環部73から径方向外側に突出する固定部(図示略)を有しており、当該固定部において、取付面9fにねじ固定される。
【0040】
固定爪部74は、第1筒状部71の下端部から下側に突出する。固定爪部74は、ハウジング本体部80の上端部の径方向外側に位置する。固定爪部74の下端には、径方向内側に突出するフック74aが設けられる。フック74aは、ハウジング本体部80の外周面に設けられた固定溝80gに掛けられる。これにより、固定爪部74は、ハウジング本体部80に固定される。固定爪部74は、周方向に間隔を空けて複数設けられる。複数の固定爪部74によって、支持部材70は、ハウジング本体部80に固定される。
【0041】
(蓋体)
図1に示すように、蓋体60は、基板7を上側から覆う。蓋体60は、基板7を保護する。また、蓋体60は、複数のコネクタ端子8を支持する。蓋体60は、天壁部61と、周壁部62と、フランジ部63と、コネクタ部64と、を有する。
【0042】
天壁部61は、径方向に広がる略円板状である。天壁部61は、基板7を上側から覆う。周壁部62は、天壁部61の径方向外縁部から下側に突出する。周壁部62は、中心軸線Jを中心とする略円筒状である。周壁部62の径方向内側には、基板7が配置される。フランジ部63は、周壁部62の下端部から径方向外側に突出する。フランジ部63は、中心軸線Jを囲む略円環状である。フランジ部63の外縁は下側に突出して支持部材70の第2筒状部72の内周面に嵌る。蓋体60は、フランジ部63において支持部材70に固定される。蓋体60と第2筒状部72とは、溶着などの手段によって隙間なく接合される。
【0043】
コネクタ部64は、天壁部61から上側に突出する筒状の保護筒部64aと、コネクタ端子8を支持する端子支持部64bと、を有する。コネクタ部64は、コネクタ端子8を囲んでコネクタ端子8を保護する。端子支持部64bは、軸方向から見て保護筒部64aの内側に配置される。
【0044】
端子支持部64bの下側を向く面には、ポッティング貯留部64cが設けられる。ポッティング貯留部64cは、下側に開口する凹状である。コネクタ端子8は、ポッティング貯留部64cの底面からハウジング6の内部空間に延び出る。ポッティング貯留部64cには、ポッティング材Pが貯留される。ポッティング材Pは、接着性の樹脂材料から構成される。ポッティング材Pは、未硬化の状態で、ポッティング貯留部64cに貯留されて、紫外線照射などの硬化工程を経て硬化する。ポッティング材Pは、コネクタ端子8と端子支持部64bとの間の微細な隙間を塞いで、ハウジング6の内部の防水性を確保する。
【0045】
本実施形態によれば、蓋体60を樹脂材料から構成することで、蓋体60にコネクタ端子8を直接的に支持させることができる。これに対し、蓋体を金属製とする場合、蓋体にコネクタ端子8の支持部を別体として設ける必要がある。この場合、蓋体と支持部との間の防水のために、蓋体の構造が複雑化するという問題がある。本実施形態によれば、蓋体60を樹脂材料から構成することで、蓋体60の構造を簡素化して、回転電機10を安価に製造できる。さらに、本実施形態によれば、蓋体60を絶縁材料である樹脂材料から構成することで、蓋体60を基板7に近づけて配置できる。このため、回転電機10を鉛直方向に小型化することができる。
【0046】
(遮蔽板)
遮蔽板50は、蓋体60の上側に配置される。遮蔽板50は、蓋体60の少なくとも一部を上側から覆う。遮蔽板50は、板本体51と、周板部52と、フランジ板部53と、を有する。
【0047】
板本体51は、中心軸線Jと直交する平面に沿って延びる。板本体51は、中心軸線Jを中心とする略円形である。板本体51は、蓋体60の天壁部61を上側から覆う。板本体51には、板本体51を軸方向に貫通する開口部51hが設けられる。開口部51hには、コネクタ部64が挿通される。
【0048】
周板部52は、板本体51の径方向外縁部から下側に突出する。周板部52は、中心軸線Jを中心とする略円筒状である。周板部52の径方向内側には、蓋体60の周壁部62が配置される。周板部52は、蓋体60を径方向外側から囲む。
【0049】
フランジ板部53は、周板部52の下端部から径方向外側に突出する。フランジ板部53は、中心軸線Jを囲む略円環状である。図示を省略するが、遮蔽板50は、フランジ板部53において支持部材70又は蓋体60の少なくとも一部に固定される。また、遮蔽板50は、取付対象9に電気的に接続される。
【0050】
本実施形態の遮蔽板50は、金属製であり、蓋体60の少なくとも一部を上側から覆う。本実施形態の回転電機10では、蓋体60が樹脂材料から構成されるため、蓋体60に電磁ノイズを遮蔽させる効果を求め難い。本実施形態の遮蔽板50は、蓋体60を介して、基板7を覆うことができる。これにより、遮蔽板50は、基板7から電磁ノイズを遮蔽し、回転電機10および電動ポンプ1の外部に放射される電磁ノイズを低減する。なお、本実施形態の遮蔽板50は、フェライト系ステンレス鋼によって構成されている。遮蔽板50を構成する材料は、本実施形態の材料に限定されず、例えば、ケイ素鋼等の様々な材料を用いることができる。
【0051】
(基板)
基板7は、中心軸線Jと直交する平面に沿って配置される。基板7は、外部装置からの指令に基づいて、ステータ40に電流を流してロータ30を回転させる。基板7には、例えばインバータ回路などの制御回路が実装される。
【0052】
基板7には、基板7を軸方向に貫通する接地孔部7aおよびコネクタ孔部7bが設けられる。接地孔部7aおよびコネクタ孔部7bの内面には銅メッキ層が設けられる。接地孔部7aおよびコネクタ孔部7bは、いわゆるスルーホールである。接地孔部7aの銅メッキ層は、基板7のグランドパターンと電気的に接続される。接地孔部7aには、第1導電部材85が挿入される。コネクタ孔部7bの銅メッキ層は、基板7に実装される制御回路と電気的に接続される。コネクタ孔部7bには、コネクタ端子8が挿入される。
【0053】
(第1導電部材)
第1導電部材85は、導電性を有する。第1導電部材85は、基板7とハウジング本体部80とを電気的に接続する。第1導電部材85は、導電性に優れた金属材料(例えば銅合金)から構成される。本実施形態の第1導電部材85は、径方向を板厚方向とする板金部材である。本実施形態の第1導電部材85は、一部材で構成されるが、第1導電部材85は、互いに電気的に接続される複数部材から構成されていてもよい。
【0054】
図2に示すように、第1導電部材85は、軸方向に沿って延びる。第1導電部材85は、支持部材70の導電部材支持部71kにおい支持部材70を軸方向に貫通するように配置されるとともに、支持部材70に支持される。第1導電部材85は、上端部に位置する接続部85aと、下端部に位置する接触部85bと、接続部85aと接触部85bとの間に位置する弾性部85cと、を有する。
【0055】
接続部85aは、軸方向に延びる。接続部85aは、基板7に設けられた接地孔部7aに軸方向に通される。接続部85aは、例えばプレスフィット端子である。接続部85aは、接地孔部7aの内面に設けられたメッキ層に接触する。これにより、第1導電部材85は、メッキ層を介して基板7のグランドパターンに電気的に接続される。
【0056】
なお、接続部85aは、プレスフィット端子に限らず、接地孔部7aに挿入する端子形状としてもよい。接地孔部7aと挿入した接続部85aとをはんだ付けによって、基板7のグランドパターンに電気的に接続することができる。また、この場合、基板7の表層にグランドパターンを配置してもよい。
【0057】
接触部85bは、軸方向に延びる。接触部85bは、接続部85aよりも径方向外側に位置する。接触部85bは、径方向外側を向く面で、ハウジング本体部80の内周面80fに接触する。これにより、第1導電部材85は、ハウジング本体部80と電気的に接続される。また、接触部85bは、軸方向に沿ってハウジング本体部80の内周面80fと接触する。
【0058】
弾性部85cは、径方向に延びる。弾性部85cは、径方向内側の端部で接続部に繋がり、径方向外側の端部で接触部85bに繋がる。すなわち、第1導電部材85は、弾性部85cにおいて、クランク状に屈曲する。
【0059】
図2に弾性部85cが弾性変形する前の接触部85bの状態を図示する。弾性部85cは、接触部85bが内周面80fに接触することで接触部85bを径方向内側に移動させる方向に弾性変形する。また、弾性部85cは、弾性変形することで接触部85bを内周面80fに押し当てる。
【0060】
本実施形態の第1導電部材85は、ハウジング本体部80の径方向内側を向く内周面80fにおいてハウジング本体部80に電気的に接続される。本実施形態によれば、基板7とハウジング本体部80とを電気的に接続する部材をハウジング本体部80の外部に配置する場合と比較して、回転電機10が大型することを抑制できる。
【0061】
本実施形態の第1導電部材85は、弾性変形してハウジング本体部80の内周面80fに押し当てられる。本実施形態によれば、電動ポンプ1の組み立て工程において、第1導電部材85が接続された基板7をハウジング本体部80に対して組み付けることで、容易に第1導電部材85をハウジング本体部80に電気的に接続できる。すなわち、電動ポンプ1の組み立て工程において、第1導電部材85とハウジング本体部80とを接続するための特別な工程(例えばネジ止め工程)を必要としない。本実施形態の電動ポンプ1によれば、組立工程を簡素化することができ、電動ポンプ1を安価に製造できる。
【0062】
(第2導電部材)
図1に示すように、第2導電部材95は、電動ポンプ1の下端部に配置される。第2導電部材95は、ポンプカバー90に固定されてポンプカバー90と電気的に接続される。第2導電部材95は、ポンプカバー90の下面91aから下側に突出する。
図3に示すように、第2導電部材95は、中心軸線Jを挟んでポート部92の反対側に配置される。
【0063】
図4は、第2導電部材95の斜視図である。第2導電部材95は、導電性に優れた金属製である。第2導電部材95は、例えば銅合金から構成される。本実施形態の第2導電部材95は、板金部材である。本実施形態の第2導電部材95は、一部材で構成されるが、第2導電部材95は、互いに電気的に接続される複数部材から構成されていてもよい。第2導電部材95は、固定部96と、第1部分97と、第2部分98と、接触部99と、を有する。
【0064】
固定部96は、軸方向に沿って延びる。固定部96は、延伸部96aと、圧入部96bと、圧入部96bから下側に延びる延伸部96aと、を有する。圧入部96bは、軸方向両側に開口する略円筒状である。圧入部96bには、軸方向に延びるスリット96cが設けられる。スリット96cは、略円筒状の圧入部96bにおける中心軸を中心とする周方向において、圧入部96bを分断する。スリット96cが設けられることで、圧入部96bは、軸方向に見て径方向外側に開口する略C字形状をなす。
【0065】
図3に示すように、固定部96は、ポンプカバー90の穴部91hに圧入されてポンプカバー90に固定される。本実施形態によれば、固定部96を穴部91hに圧入により差し込むだけで、第2導電部材95をポンプカバー90に固定でき、第2導電部材95を容易にポンプカバー90と電気的に接続できる。本実施形態においては、固定部96のうち圧入部96bが穴部91h内に圧入される。圧入部96bはスリット96cによって一部が分断された略円筒状であるため、圧入部96bを穴部91hに圧入する際に、スリット96cが狭くなる向きに圧入部96bを弾性変形させやすい。これにより、固定部96を穴部91h内に圧入しやすくできる。
【0066】
図5は、第2導電部材95を含む電動ポンプ1の部分断面図である。
図5に示すように、接触部99は、第2導電部材95の下端部を構成する。接触部99は、第1部分97と第2部分98との境界部に位置する。第1部分97および第2部分98は、接触部99に対し上側であって互いに異なる方向に延びる。したがって、第1部分97と第2部分98とは、V字状に配置される。
【0067】
第1部分97は、固定部96に繋がる。第1部分97は、延伸部96aの下端部から下側に延びる。ポンプカバー90の下面91aは、収容凹部9aの底壁面9eと対向する。したがって、第1部分97は、固定部96から底壁面9eに向かって延びる。第1部分97は、底壁面9eの法線方向(底壁面9eの法線Nの延びる方向。本実施形態では、Z軸方向)に対して傾斜する方向に延びる。第1部分97の先端には、接触部99が位置する。
【0068】
第2部分98は、第1部分97の下端に繋がる。第2部分98は、第1部分97に対して屈曲するように第1部分97との接続部から上側に延びる。第2部分98は、接触部99からポンプカバー90側に延びる。すなわち、第2部分98は、接触部99からハウジング6側に延びる。
【0069】
第2部分98の上端部には、屈曲部98aが設けられる。第2部分98は、屈曲部98aにおいて下側に向かって屈曲する。屈曲部98aは、ポンプカバー90の下面91aに設けられる凹状部91j内に収容される。第2導電部材95が、穴部91hの中心周りに回転しようとすると、第2部分98が凹状部91jの内側面に引っ掛かり第2導電部材95の位置ずれを抑制する。本実施形態によれば、電動ポンプ1を取付対象9に取り付ける取付工程において、第2導電部材95が位置ずれしてしまうことを抑制できる。さらに、収容凹部9a内に満たされる流体の流れによって、第2導電部材95が位置ずれしてしまうことを抑制できる。このように、凹状部91jは、第2部分98の少なくとも一部を収容する凹状の位置ずれ防止部として機能する。また、第2部分98は、上端に位置し凹状部91jの底面と接触する摺動部98bを有する。後述するように第2導電部材95が弾性変形すると、摺動部98bは、凹状部91jの底面を摺動する。すなわち、第2導電部材95は、ハウジング6に接触し、ハウジング6と摺動可能な摺動部98bを有する。本実施形態によれば、摺動部98bが凹状部91jの底面を摺動することができるため、第2導電部材95が弾性変形しても、ポンプカバー90を傷を付けたりするなどの悪影響を抑制することができる。第2部分98は、摺動部98bを有するため、局所的な応力集中を防ぎ、第2導電部材95が適切に弾性変形することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、摺動部98bが、凹状部91jの底面を摺動することで、第2部分98とポンプカバー90との接触が適切な状態に保たれる。これにより、第2導電部材95は、固定部96のみならず摺動部98bにおいてもポンプカバー90と電気的に接続された状態となり、第2導電部材95とポンプカバー90との電気的な接続を安定させることができる。
【0071】
接触部99は、電動ポンプ1が取付面9fに固定された状態で、収容凹部9aの内側面9bに接触する。これにより、第2導電部材95は、取付対象9と電気的に接続される。また、第2導電部材95は、固定部96においてポンプカバー90と電気的に接続される。すなわち、第2導電部材95は、ポンプカバー90と取付対象9とを電気的に接続する。
図1に示すように、ポンプカバー90は、ハウジング本体部80と接触することで、ハウジング本体部80と電気的に接続される。さらにハウジング本体部80は、第1導電部材85を介して基板7のグランドパターンに接続される。本実施形態によれば、基板7のグランドパターンを、第1導電部材85、ハウジング本体部80、ポンプカバー90、および第2導電部材95を介して、取付対象9に電気的に接続できる。これにより、簡素な構造で基板7を接地することができ、基板7の基準電位を安定させて基板7の信頼性を高めることができる。
【0072】
本実施形態の第2導電部材95は、電動ポンプ1が取付面9fに固定された状態で接触部99において底壁面9eに接触し底壁面9eから上側に向かう反力を受ける。本実施形態において、第1部分97は、ポンプカバー90に固定される固定部96から内側面9bに向かって延びる。また、第1部分97は、接触部99において接触する内側面9b(本実施形態では底壁面9e)の法線方向に対して傾斜する方向に延びる。このため、第2導電部材95は、電動ポンプ1が取付面9fに固定された状態で接触部99が底壁面9eに接触し、第1部分97の下端を上側に移動させる方向に、第1部分97と固定部96との境界部で弾性変形する。また、第2導電部材95は、弾性変形することで、接触部99を底壁面9eに押し当てる。
【0073】
本実施形態の第2導電部材95は、弾性変形して収容凹部9aの内側面9bに押し当てられる。本実施形態によれば、電動ポンプ1を取付対象9に取り付ける取付工程において、電動ポンプ1を下側に移動して収容凹部9aに収容することで、容易に第2導電部材95を取付対象9に接触させ、ハウジング6と取付対象9とを電気的に接続させることができる。すなわち、電動ポンプ1の取付工程において、第1導電部材85と取付対象9とを接続するための特別な工程(例えばネジ止め)を必要としない。本実施形態の電動ポンプ1によれば、取付工程を簡素化することができ、取付工程を行う作業者の負担を軽減できる。また、本実施形態では、第2導電部材95は、収容凹部9aの内側面9bのうち軸方向を向く底壁面9eに接触する。このため、取付工程において、第2導電部材95が、収容凹部9aの周壁面9dにこすれることがなく、第2導電部材95の損傷を抑制できる。
【0074】
図1に示すように、ポンプカバー90のポート部92は、下側に突出して、取付対象9の底壁面9eに開口する流入開口9gに挿入される。したがって、ポート部92の下側の端部は、電動ポンプ1の下端部を構成する。本実施形態において、第2導電部材95の接触部99は、ポート部92の下側の端部よりも、上側に位置する。本実施形態によれば、第2導電部材95を、ポンプカバー90と取付対象9の底壁面9eとの間の空間に配置することができる。このため、電動ポンプ1および取付対象9が、互いに組み付けられた状態で、軸方向に大型化することを抑制しつつ、基板7の基準電位を安定させることができる。
【0075】
図3に示すように、軸方向から見て、第2導電部材95の固定部96および接触部99は、ポート部92の外側に配置される。すなわち、固定部96および接触部99は、ポート部92の外周面に対向して配置される。本実施形態によれば、ポート部92の流入開口9gへの挿入工程で、第2導電部材95が邪魔になりにくい。また、ポンプカバー90の下面91aにおいて、第2導電部材95とポート部92とを離間して配置し易くなり、ポンプカバー90の下面91aを有効利用できる。
【0076】
(変形例)
上述の実施形態の電動ポンプ1に採用可能な変形例の第2導電部材195について説明する。
図6は、本変形例の第2導電部材195を含む電動ポンプ1の下端部を示す斜視図である。
図7は、本変形例の第2導電部材195を含む電動ポンプ1の部分断面図である。
なお、上述の実施形態と同様の構成態様については、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、第2導電部材195は、固定部196と、第1部分197と、第2部分198と、接触部199と、を有する。固定部196は、上述の実施形態と同様の構成を有する。すなわち、固定部196は、延伸部96aと圧入部96bとを有する。固定部196は、ポンプカバー90の穴部91hに圧入されてポンプカバー90に固定される。
【0078】
第1部分197は、固定部196に繋がる。第1部分197は、固定部196の延伸部96aの下端部から径方向外側に延びる。
図7に示すように、ポンプカバー90の径方向外側には、収容凹部9aの周壁面9dが配置される。したがって、第1部分197は、固定部196から周壁面9dに向かって径方向外側に延びる。また、第1部分197は、径方向外側に向かうに従い上側に位置する方向に傾斜する。すなわち、第1部分197は、周壁面9dの法線方向(周壁面9dの法線Nの延びる方向。本変形例では、径方向)に対し傾斜する方向に延びる。
【0079】
第2部分198は、第1部分197の径方向外側の端部に繋がる。第2部分198は、第1部分197との接続部から径方向内側に延びる。また、第2部分198は、第1部分197との接続部から上側に延びる。すなわち、第2部分198は、径方向内側に向かうに従い上側に位置する方向に傾斜する。第2部分198の上端部には、屈曲部198aが設けられる。第2部分198は、屈曲部198aにおいて下側に向かって屈曲する。
【0080】
図6に示すように、本変形例において、ポンプカバー嵌合部83の凹溝83aの下側を向く底面には、位置決め溝(位置ずれ防止部)183bが設けられる。位置決め溝183bは、径方向に沿って溝状に延びる。位置決め溝183bは、ポンプカバー嵌合部83の径方向内側および外側に開口する。位置決め溝183bの幅は、凹溝83aの幅よりも小さい。位置決め溝183bは、凹溝83aの幅方向の略中央に配置される。
【0081】
第2部分198の上端部は、位置決め溝183b内に収容される。これにより、第2部分198が位置決め溝183bの内側面にかかり、第2導電部材195が、穴部91hの中心周りに回転することを抑制できる。これにより、第2導電部材195が位置ずれしてしまうことを抑制できる。位置決め溝183bは、第2部分198の少なくとも一部を収容する凹状の位置ずれ防止部として機能する。
【0082】
接触部199は、第2導電部材195の径方向外側の端部を構成する。接触部199は、第1部分197および第2部分198の径方向外側の端部に位置する。接触部199は、第1部分197と第2部分198との境界部に位置する。接触部199は、第1部分197の先端に位置する。第2部分198は、接触部199からポンプカバー90側に延びる。すなわち、第2部分198は、接触部199からハウジング6側に延びる。第1部分197および第2部分198は、接触部199に対し径方向内側であって上下方向の互いに異なる方向に延びる。したがって、第1部分197と第2部分198とは、V字状に配置される。
【0083】
接触部199は、収容凹部9aの内側面9bに接触する。これにより、第2導電部材195は、取付対象9と電気的に接続される。本変形例の第2導電部材195は、接触部199において周壁面9dに接触する。これにより、第2導電部材195は、周壁面9dから径方向内側に向かう反力を受ける。第2導電部材195は、接触部199が周壁面9dに接触することで、第1部分197の径方向内側に移動させる方向に、第1部分197と固定部196との境界部で弾性変形する。また、第2導電部材195は、弾性変形することで、接触部199を周壁面9dに押し当てる。
【0084】
本変形例によれば、第2導電部材195が収容凹部9aの径方向内側を向く面(周壁面9d)に接触する。このため、作業者は、電動ポンプ1を収容凹部9a内に収容する取付工程で、接触部199が収容凹部9aの内側面9bに接触することを目視で確認し易い。本変形例によれば、第2導電部材195と取付対象9との電気的な接続の確実性を高めることができる。
【0085】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態およびその変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0086】
例えば、実施形態の第2導電部材95は、ばね部材であってもよい。軸方向に弾性可能なばね部材を穴部91hに固定し、底壁面9eと接触させてもよい。バネ部材をコイルばねとする場合は、コイルばねの外径を、穴部91hと組立可能に圧入できる大きさに適宜設定することができる。また、ばね素材の線径や材質など適宜設定することで、電動ポンプ1が受ける底壁面9eから上側に向かう反力を調整することができ、電動ポンプ1を取付対象9の取付面9fに適切に取り付けることができる。
【0087】
また、実施形態および変形例の第2導電部材95、195は、取付対象9の内側面9bに対して面接触していてもよい。
【0088】
上述の実施形態では、第1導電部材がハウジングの内部に配置される場合について説明したが、第1導電部材は、ハウジングの外部に配置されていてもよい。上述の実施形態では、第2導電部材は、弾性変形して取付凹部の内側面に押し当てられる場合について説明した。しかしながら、第2導電部材は、例えば取付凹部の内側面に挿入されるピン状の部材であってもよい。
【0089】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。電動ポンプの用途は、特に限定されず、車両以外の機器に搭載されてもよい。
【0090】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 取付対象の収容凹部に収容される電動ポンプであって、中心軸線を中心として回転可能なシャフトが設けられるロータ、および前記ロータと隙間を介して対向するステータを有するモータ部と、前記ステータに電気的に接続される基板と、前記シャフトの軸方向他方側に接続されるポンプ機構と、前記モータ部、前記基板、および前記ポンプ機構を収容するハウジングと、第1導電部材と、第2導電部材と、を備え、前記ハウジングは、前記ステータを内部に収容する金属製のハウジング本体部と、前記ハウジング本体部の軸方向他方側の端部に接続され前記ポンプ機構を軸方向他方側から覆う金属製のポンプカバーと、を有し、前記第1導電部材は、前記基板と前記ハウジング本体部とを電気的に接続し、前記第2導電部材は、前記ポンプカバーと電気的に接続され前記収容凹部の内側面に接触する、ポンプ。
(2) 前記第2導電部材は、弾性変形して前記内側面に押し当てられる、(1)に記載のポンプ。
(3) 前記第2導電部材は、前記ポンプカバーに固定される固定部と、前記固定部から前記内側面に向かって延びる第1部分と、前記第1部分の先端に位置する接触部と、を有し、前記第1部分は、前記接触部において接触する前記内側面の法線方向に対して傾斜する方向に延びる、(2)に記載のポンプ。
(4) 前記第2導電部材は、前記接触部から前記ハウジング側に延びる第2部分を有し、前記ハウジングには、前記第2部分の少なくとも一部を収容する凹状の位置ずれ防止部を有する、(3)に記載のポンプ。
(5) 前記ポンプカバーの軸方向他方側を向く面には、穴部が設けられ、前記固定部は、前記穴部に圧入される、(3)又は(4)に記載のポンプ。
(6) 前記第2導電部材は、前記内側面のうち軸方向を向く面に接触する、(1)~(5)の何れか一項に記載のポンプ。
(7) 前記第2導電部材は、前記内側面のうち径方向内側を向く面に接触する、(1)~(5)の何れか一項に記載のポンプ。
(8) 前記第2導電部材は、前記接触部から前記ハウジング側に延びる第2部分を有し、前記第2部分は、前記ハウジングに接触し、前記ハウジングと摺動可能な摺動部を有する、(3)~(5)の何れか一項に記載のポンプ。
(9) 前記第1導電部材は、前記ハウジング本体部の径方向内側を向く内周面に弾性変形して押し当てられる、(1)~(8)の何れか一項に記載のポンプ。
(10) 前記ポンプカバーは、軸方向他方側に突出するポート部を有し、前記接触部は、前記ポート部の軸方向他方側の端部よりも、軸方向一方側に位置する、(3)に記載の電動ポンプ。
(11) 軸方向から見て、前記固定部および前記接触部は、前記ポート部の外側に配置される、(10)に記載の電動ポンプ。
【符号の説明】
【0091】
1…電動ポンプ、6…ハウジング、7…基板、9…取付対象、9a…収容凹部、9b…内側面、10A…モータ部、20…ポンプ機構、30…ロータ、40…ステータ、41…ステータコア、43…コイル、80…ハウジング本体部、80f…内周面、85…第1導電部材、85b,99,199…接触部、85c…弾性部、90…ポンプカバー、91h,191h…穴部、91j…凹状部(位置ずれ防止部)、95,195…第2導電部材、96,196…固定部、97,197…第1部分、98,198…第2部分、183b…位置決め溝(位置ずれ防止部)、J…中心軸線、N…法線