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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146057
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 99/00 20060101AFI20241004BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241004BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20241004BHJP
【FI】
C10G99/00
G05B23/02 R
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058754
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】森 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓
(72)【発明者】
【氏名】岸田 遼
【テーマコード(参考)】
3C223
4H129
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF24
3C223FF34
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH03
4H129AA02
4H129CA01
4H129CA03
4H129CA08
4H129KA01
4H129LA14
4H129LA16
4H129NA37
4H129NA42
4H129NA45
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】生成油を効率的に生産することができる。
【解決手段】原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成された固有劣化モデルを記憶する記憶部と、前記運転情報の時系列定データを取得するデータ取得部と、前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、前記固有劣化モデルは、第1運転期間に関する前記運転実績データである第1運転実績データに基づいて生成されており、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、
前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成された固有劣化モデルを記憶する記憶部と、
前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、
前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、
前記固有劣化モデルは、第1運転期間に関する前記運転実績データである第1運転実績データに基づいて生成されており、
前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、
前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である、
情報処理装置。
【請求項2】
関数生成部を更に備え、
前記データ取得部は、
前記第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、
前記関数生成部は、
取得された前記第2運転実績データに基づいて、前記固有劣化モデルを更新する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プラント装置への通油開始直後から発生する前記触媒の劣化度の変化が激しい期間を不安定期間とするとき、
前記関数生成部は、
取得された前記第2運転期間に応じて、前記第2運転期間における前記不安定期間の終了を判断し、
前記不安定期間の終了が判断された前記第2運転期間に関する前記第2運転実績データに基づいて、前記固有劣化モデルを更新する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、
前記第2運転期間よりも短い周期で前記第2運転実績データを更新し、
前記関数生成部は、
更新された前記第2運転実績データに基づいて、前記固有劣化モデルをさらに更新する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、
取得された第2運転実績データに応じて、前記周期を変更する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記固有劣化モデルは、出力変数として、前記触媒の劣化度に関する値を有し、
前記関数生成部は、
取得された前記第2運転実績データに基づいて前記プラント装置の運転時間に応じた前記劣化度に関する値の実績値を算出し、
取得された前記第2運転実績データに含まれる運転条件に関する値に基づいて、算出された前記実績値を補正することで前記劣化度に関する値の補正値を算出し、
算出された前記補正値を用いて、前記固有劣化モデルを更新する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記寿命予測データ生成部は、
前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記第2運転期間における前記プラント装置の運転時間に応じた前記触媒の劣化度の予測値を算出し、
算出された前記予測値と前記運転時間の関係を表す触媒劣化予測データを前記寿命予測データとして生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記寿命予測データ生成部は、
取得された前記運転予定データと生成された前記触媒劣化予測データとに基づいて、前記プラント装置の前記運転時間に応じた要求温度を算出し、
算出された前記要求温度と前記運転時間との関係を表す温度予測データを前記寿命予測データとして生成し、
前記要求温度は、取得された前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度である、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記寿命予測データ生成部は、
前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記第2運転期間における前記プラント装置の運転時間に応じた前記触媒の劣化度の予測値を算出し、
算出された前記劣化度の予測値と取得された前記運転予定データとに基づき、前記第2運転期間における前記プラント装置の次の運転時間における要求温度を算出し、
算出した前記要求温度と前記運転予定データと前記固有劣化モデルとに基づいて、前記次の運転時間の前記劣化度の予測値を算出し、
前記劣化度の予測値の算出と前記要求温度の算出とを交互に繰り返すことにより、前記第2運転期間における前記プラント装置の前記運転時間毎に前記予測値と前記要求温度とを算出し、
算出された前記要求温度と前記運転時間との関係を表す温度予測データを前記寿命予測データとして生成し、
前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記データ取得部は、
前記プラント装置に予め定められている運転上限温度を取得し、
前記寿命予測データ生成部は、
取得された前記運転上限温度と生成された前記温度予測データとに基づいて、前記要求温度が前記運転上限温度に達する時刻を算出し、
算出された前記時刻に基づいて、前記触媒の寿命を予測する、
請求項8又は請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
データ出力部をさらに備え、
前記データ取得部は、前記第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、
前記第2運転実績データは、前記触媒の温度の測定値を含み、
前記データ出力部は、
前記要求温度と前記測定値とを、ユーザ端末の画面における温度と時間とを軸とする共通の座標系に表示可能に出力する、
請求項8又は請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項12】
原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、
前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データと、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データと、基準劣化モデルと、を取得するデータ取得部と、
取得された前記運転実績データと取得された前記基準劣化モデルとに基づいて、固有劣化モデルを生成する関数生成部と、
生成された前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、
取得された前記運転実績データは、第1運転期間に関する第1運転実績データであり、
前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、
前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の期間である、
情報処理装置。
【請求項13】
原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、
前記プラント装置を第1プラント装置とし、前記第1プラント装置とは異なる装置を第2プラント装置とするとき、
前記第1プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データと、前記第1プラント装置の前記運転情報の時系列の予定である運転予定データと、第2プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である第2プラント装置運転実績データと、基準劣化モデルと、を取得するデータ取得部と、
取得された前記運転実績データ、前記第2プラント装置運転実績データおよび前記基準劣化モデルに基づいて、固有劣化モデルを生成する関数生成部と、
生成された前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、
前記第2プラント装置は、前記原料油を前記触媒に通油して前記生成油を取得する装置であり、
取得された前記第2プラント装置運転実績データは、取得された前記運転実績データと共通の前記運転情報を含み、
取得された前記運転実績データは、第1運転期間に関する第1運転実績データであり、
前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、
前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の期間である、
情報処理装置。
【請求項14】
前記基準劣化モデルは、入力変数と、劣化寄与パラメータと、出力変数と、を含み、
前記入力変数は、前記運転情報の値であり、
前記劣化寄与パラメータは、前記入力変数が前記触媒の劣化の寄与する度合を表すパラメータであり、
前記出力変数は、劣化度に関する値であり、
前記関数生成部は
前記第1運転実績データに基づいて、前記劣化寄与パラメータの値を決定することで前記固有劣化モデルを生成する、
請求項12又は請求項13に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は、原油から精製される。原油は、5%以下程度の硫黄分を含む。硫黄を含む化合物は、燃焼により亜硫酸ガスとなって大気環境を悪化させることがあり、また、石油製品の劣化、装置の腐食、触媒被毒等を発生させる原因となり得る。このため、石油は、この硫黄をはじめとする不純物が除去される脱硫過程を経て精製される。脱硫において用いられる触媒は、脱硫の過程により劣化することによる寿命がある。この寿命は、例えば、原油を処理する槽における原油量、触媒量、温度等の種々の条件に依存して変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/117154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保全計画等に基づいてプラント装置の運転を停止する予定の期限よりも前に触媒が寿命を迎えると、プラント装置に対して予定外の触媒交換を実施する必要が生じ、生成油を効率的に生産することができない。そのため、プラント装置に用いる触媒の寿命の予測精度の向上は、より一層望まれている。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生成油を効率的に生産することができる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様に係る情報処理装置は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成された固有劣化モデルを記憶する記憶部と、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、前記固有劣化モデルは、第1運転期間に関する前記運転実績データである第1運転実績データに基づいて生成されており、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である。
【0007】
本開示の別の態様に係る情報処理装置は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データと、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データと、基準劣化モデルと、を取得するデータ取得部と、取得された前記運転実績データと取得された前記基準劣化モデルとに基づいて、固有劣化モデルを生成する関数生成部と、生成された前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、取得された前記運転実績データは、第1運転期間に関する第1運転実績データであり、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の期間である。
【0008】
本開示のさらに別の態様に係る情報処理装置は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置を第1プラント装置とし、前記第1プラント装置とは異なる装置を第2プラント装置とするとき、前記第1プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データと、前記第1プラント装置の前記運転情報の時系列の予定である運転予定データと、第2プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である第2プラント装置運転実績データと、基準劣化モデルと、を取得するデータ取得部と、取得された前記運転実績データ、前記第2プラント装置運転実績データおよび前記基準劣化モデルに基づいて、固有劣化モデルを生成する関数生成部と、生成された前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、前記第2プラント装置は、前記原料油を前記触媒に通油して前記生成油を取得する装置であり、取得された前記第2プラント装置運転実績データは、取得された前記運転実績データと共通の前記運転情報を含み、取得された前記運転実績データは、第1運転期間に関する第1運転実績データであり、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の期間である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、生成油を効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る情報処理システムとプラント装置とを含む全体システムの構成を例示的に示す図。
図2】運転期間の説明図。
図3】一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を例示的に示す図。
図4】第1運転期間に関する運転実績データから算出した運転時間毎の劣化度の実績値の一部を、横軸を時間、縦軸を劣化度とする座標系にプロットした例を示す図。
図5図4に示した劣化度の実績値を補正した例を示す図。
図6】不安定期間を説明する図。
図7】固有触媒劣化関数と、第2運転期間の運転予定データとから算出した劣化度の予測値を含む触媒劣化予測データの例を示す図。
図8】寿命予測データ生成部によって生成される温度予測データの一例を示す図。
図9】温度予測データと共通の座標系に、運転上限温度、目標運転期限、現在までの運転日数、触媒の温度が運転上限温度に達する時刻、触媒の温度の実測値とを表示した例を示す図。
図10図9の状態からユーザ端末の画面の表示が更新された例を示す図。
図11】一実施形態に係る情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態(以下、適宜、「本実施形態」と称す。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、本明細書又は請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0012】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1とプラント装置500とを含めた全体構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置100と、データ収集装置200と、ユーザ端末300と、ネットワーク400とを備える。情報処理装置100とデータ収集装置200とユーザ端末300とは、ネットワーク400を介して互いに通信可能に接続されている。データ収集装置200は、プラント装置500と有線又は無線にて互いに通信可能に接続されている。ユーザ端末300は、一台以上設けられている。情報処理システム1は、プラント装置500の運転を支援するシステムである。
【0014】
プラント装置500は、原料油を触媒に通油して生成油を取得する製油装置(第1プラント装置)である。プラント装置500は、例えば、石油精製プラント内に設けられている。図1において、プラント装置500は1台のみ示されるが、複数のプラント装置500が設けられていてもよい。プラント装置500は、所望の生成油を取得するために必要な様々な処理を実行する装置の群であってもよい。
【0015】
プラント装置500は、触媒を利用するものであれば特に限定されないが、硫黄などの不純物を含む石油留分を、触媒の存在下で水素と反応させる水素化脱硫方式を使って精製する水素化脱硫装置や、触媒粒子を固定充填して触媒反応を行う固定床式触媒反応器を用いた装置等が挙げられる。プラント装置500に用いる触媒は、プラント装置500の種類に応じて、適切なものが選択される。例えば、プラント装置500として脱硫装置を用いる場合、触媒は脱硫触媒が選択される。以下の説明では、プラント装置500として主に脱硫装置を想定するが、これに限定されるものではない。
【0016】
本開示において、「運転期間」は、触媒が充填されたプラント装置500において、触媒を用いた処理を開始してから当該触媒を用いた処理が終了するまでの期間に対応する。即ち、本開示における「運転期間」とは、プラント装置500が同じ触媒を用いて運転を継続している期間である。
【0017】
図2は、運転期間の一例を示す図である。図2に示される例では、運転期間は、第1運転期間と第2運転期間とを有する。第2運転期間は、第1運転期間とは異なる運転期間であるとともに、第1運転期間が経過した後の運転期間である。第1運転期間から第2運転期間への切り替わりは、例えば、第1運転期間におけるプラント装置500の運転が終了した後に、プラント装置500内に充填されていた触媒を新たな触媒に交換し、プラント装置500を運転し直したときにおきる。第1運転期間は、例えば、過去に終了した運転期間である。第2運転期間は、例えば、現在も続いており、まだ終了していない運転期間である。
【0018】
プラント装置500の運転条件等の運転状況は、例えば、プラント装置500に期待される製油処理を維持するために、ユーザ操作又は自動制御により運転期間の途中で適宜変更され得る。
【0019】
図1に戻り、プラント装置500には、プラント装置500の運転状況を示す状態量を測定する一又は複数の測定器が設けられている。プラント装置500が備える測定器の種類は特に限られないが、例えば、温度計、圧力計、振動計、流量計、回転計、電流計および電圧計等が挙げられる。測定器が測定した、温度、圧力、振動、流量、回転数、電流値および電圧値等の測定値や、起動、停止、運転負荷などのプラント装置500の運転状況を示す各種信号は、プラント装置500からデータ収集装置200へ時々刻々と送信される。各種の測定値及び各種の信号は、後述の運転実績データの一部を構成する。
【0020】
ネットワーク400は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、図示しない無線基地局によって構成される各種移動通信システムを含む通信網で構成される。移動通信システムとしては、例えば、3G、4G又は5Gなどの移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)および所定のアクセスポイントによってインターネットに接続可能な無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi(登録商標))が挙げられる。
【0021】
ユーザ端末300は、ユーザが使用する情報処理端末である。ユーザ端末300は、情報処理装置100又はデータ収集装置200と各種データを送受信するための装置である。ユーザ端末300は、ユーザが勤務する場所に応じて、例えば本社、研究所、製油所、リモートワークの場合は自宅等に設けられている。
【0022】
ユーザ端末300は、情報処理装置100又はデータ収集装置200とのデータ又は情報をやりとりためのアプリケーションが搭載されていてもよい。ユーザ端末300は、Webブラウザベースで情報処理装置100又はデータ収集装置200とのデータ又は情報をやりとりしてもよい。
【0023】
データ収集装置200は、ユーザ端末300又はプラント装置500から、情報処理装置100にて使用する各種データを取得して管理する。データ収集装置200は、取得したデータをデータ収集装置200内部のデータべース210に記憶する。データ収集装置200は、例えば、情報処理装置100の要求に応じて、情報処理装置100に各種データを送信する。なお、データベース210は、データ収集装置200の外部の装置に設けられてもよい。この場合、外部に設けられたデータベースとデータ収集装置200とは、有線又は無線で互い通信可能に接続されてもよい。
【0024】
データ収集装置200は、取得された運転実績データに運転期間を識別するIDを割り当ててもよい。IDを割り当てることにより、運転実績データが属する運転期間(第1運転期間、第2運転期間)を容易に区別できる。また、データ収集装置200は、情報処理装置100が生成したデータを取得して管理してもよい。
【0025】
情報処理装置100は、プラント装置500の運転を支援するための装置である。情報処理装置100は、データ収集装置200やユーザ端末300から各種データを取得する。情報処理装置100は、取得した各種データに基づき、プラント装置500で用いる触媒の寿命を予測するのに有効な情報を生成する。情報処理装置100は、例えば、生成されたプラント装置500で用いる触媒の寿命を予測するのに有効な情報を、ユーザ端末300に送信する。
【0026】
情報処理装置100は、ユーザ端末300又はプラント装置500から送信される各種データを直接取得して、管理してもよい。この場合は、情報処理装置100が、データ収集装置200としての機能を実現するため、情報処理システム1はデータ収集装置200を省略することができる。
【0027】
<ハードウェア構成>
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0028】
図3に示すように、情報処理装置100は、プロセッサ1001と、メモリ1002と、記憶装置1003と、入力装置1004と、表示装置1005と、通信装置1006と、を備える。情報処理装置100は、これらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。情報処理装置100は、図3に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されていてもよい。
【0029】
プロセッサ1001は、各種データを演算処理したり、表示装置1005等を含めた情報処理装置100を制御処理したりする。プロセッサ1001は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央演算装置(CPU: Central Processing Unit)によって構成されてもよい。プロセッサ1001は、情報処理装置100における処理の実行に必要なプログラム等を、記憶装置1003と通信装置1006の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って処理を実行する。
【0030】
メモリ1002は、コンピュータ可読記憶媒体であり、例えば、ROM(Read only memory)、EPROM(Erasable Program ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Program ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、各種データを記憶したり、情報処理装置100における処理の実行に必要なプログラム(プログラムコード)等を記憶したりする。
【0031】
記憶装置1003は、非一時的コンピュータ可読酷記憶媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。記憶装置1003は、本実施形態に係るプログラムを含む、情報処理装置100における処理の実行に必要な各種プログラムや各種のデータ、及び処理結果のデータを記憶する。なお、非一時的コンピュータ可読酷記憶媒体としては、他にも、磁気テープ、フレキシブルディスク、光ディスク、デジタルバーサタイルディスク、光磁気ディスク、メモリーカード、USBメモリなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。記憶装置1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0032】
入力装置1004は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、等)である。表示装置1005は、外部への出力を実施する表示デバイス(例えば、ディスプレイ等)である。また、入力装置1004と表示装置1005とは、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0033】
通信装置1006は、有線ネットワークおよび無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)である。通信装置1006は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークインタフェースカード、ネットワークコントローラ、ネットワークモジュール、通信モジュールなどとも呼ばれる。通信装置1006は、例えば、データ収集装置200やユーザ端末300との間で各種のデータを送受信する。
【0034】
情報処理装置100は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、後述の各機能ブロックの一部又はすべてが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0035】
なお、情報処理装置100は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータなどを用いて実現することができる。また、情報処理装置100は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、図3は、情報処理装置100が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、情報処理装置100は、サーバが一般的に備える他の構成を備えることができる。また、データ収集装置200及びユーザ端末300のハードウェア構成も、情報処理装置100と同様の構成を備えることができる。
【0036】
<情報処理システム1の機能的構成>
図1は、情報処理システム1の機能的構成の一例を示す図でもある。
【0037】
図1に示すように、情報処理装置100は、機能的構成として、処理部110と、記憶部120と、通信部130とを備える。情報処理装置100は、図示されない、ユーザがデータ入力する入力部、ユーザにデータを表示する表示部をさらに備えていてもよい。情報処理装置100は、ユーザ端末300以外に、入力部からユーザの指示データを受けてもよい。また、情報処理装置100は、処理部110によって処理された結果のデータ等を、当該表示部に表示してもよい。これらの機能的構成は、プロセッサ1001がプログラムをメモリ1002に読み出して実行することにより実現される。なお、これらの機能的構成の機能のうち少なくとも一部の機能を実装したプログラムが、複数台のストレージに記憶装置にインストールされていてもよい。複数台のコンピュータのプロセッサは、自機にインストールされたプログラムをメモリに読み出して実行することにより、複数の機能的構成の機能を発揮してもよい。すなわち、複数の機能的構成の機能は、複数台のコンピュータにより分散して実行されてもよい。
【0038】
データ収集装置200およびユーザ端末300における各機能は、情報処理装置100における各機能と同様に、ハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで実現できる。
【0039】
データ収集装置200は、プラント装置500に関する運転実績データ等の各種データを取得、記憶、提供及び管理するデータベース210を備えるデータサーバとして機能する。
【0040】
ユーザ端末300は、機能的構成として、表示部310と、入力部320とを備える。
【0041】
表示部310は、例えば、情報処理装置100にて使用するデータを入力するための入力画面を表示できる。入力部320によって入力されたデータは、例えば、各種指示データ、運転実績データ、運転予定データ等として、情報処理装置100又はデータ収集装置200に送信される。
【0042】
表示部310は、情報処理装置100の動作を設定するための設定画面を表示できる。ユーザは、ユーザ端末300に表示される設定画面を通じて、情報処理装置100の動作設定を確認できる。ユーザは、入力部320により新たな動作の設定を入力することで、設定画面を通じて情報処理装置100の動作設定を変更したりすることもできる。ユーザは、例えば、情報処理装置100が生成する触媒の寿命を予測するのに有効な情報の種類、当該情報を生成するタイミング、又は、情報処理装置100が各種データを取得するタイミングなどの動作の設定を変更できる。
【0043】
表示部310は、情報処理装置100によって生成された各種データを確認するための確認画面を表示できる。表示部310は、例えば、触媒の寿命を予測するのに有効な情報を確認画面に表示する。ユーザは、表示部310に表示された情報に基づいて、触媒の寿命を予測することができる。なお、表示部310に表示される入力画面、設定画面および確認画面は、共通の画面であってもよいし、別々の画面であってもよい。
【0044】
<情報処理装置100の機能的構成>
通信部130は、情報処理装置100における通信インタフェースであり、アクセス回線を介してネットワーク400に接続する。通信部130は、ネットワーク400を介して、ユーザ端末300又はデータ収集装置200と通信を行う。通信部130は、ユーザ端末300又はデータ収集装置200との通信に必要な各種プロトコル処理を行う。各種プロトコルの処理の例として、物理層、データリンク層、インターネット層、トランスポート層の処理がある。通信部130は、処理部110のOS又はアプリケーションとの間で、送受信するデータの受け渡しを行ってもよい。
【0045】
記憶部120は、各種データを記憶する。記憶部120は、処理部110によって取得、算出又は生成された各種データが記憶されていてもよい。記憶部120は、例えば、運転実績データ、運転予定データ、装置データ、基準触媒劣化関数、固有触媒劣化関数、寿命予測データなどが記憶されている。以下、記憶部120に記憶され得る代表的な各種データの詳細を説明する。
【0046】
運転実績データは、プラント装置500の運転状況を表す運転情報が含まれるデータである。運転実績データは、プラント装置500の運転情報の時系列の履歴に関する時系列データである。運転実績データは、例えば、運転時間(運転時刻)毎の運転情報を含むデータである。本開示において、第1運転期間に関する運転実績データを第1運転実績データと、第2運転期間に関する運転実績データを第2運転実績データと、称する場合がある。
【0047】
運転情報は、例えば、プラント装置500に設けられた各測定器から取得した測定値及び信号、石油精製分野において公知の測定方法により取得できる原料油に関する値及び定性情報、石油精製分野において公知の測定方法により取得できる生成油に関する値及び定性情報及びこれらの値から算出される値などが含まれる。
【0048】
運転情報は、例えば、運転条件に関する情報、原料油の性状に関する情報、生成油の性状に関する情報及び触媒に関する情報などのうち少なくとも1つを含む。本開示において、運転条件に関する情報、原料油の性状に関する情報及び生成油の性状に関する情報を、基礎情報と称する場合がある。
【0049】
運転条件に関する情報は、例えば、触媒の温度(反応槽内の温度)、原料油の通油量、反応槽内の圧力、反応ガス分圧、反応ガスの供給量、などのうち少なくとも1つを含む。反応ガスが水素である場合、運転条件に関する情報として、水素分圧、水素供給量、水素油比(原料油通油量当たりの水素供給量)、水素ガスの成分などに関する情報を更に含んでよい。なお、水素ガスの成分は、水素以外の不純物(例えば、硫化水素ガス、アンモニアガスなど)が触媒の劣化に繋がるため、触媒の寿命予測の観点では有効な情報である。
【0050】
原料油の性状に関する情報は、例えば、原料油の硫黄濃度、原料油の金属分濃度、原料油の割合(原料油を構成する基材の構成比)、原料油のアロマ分濃度、等のうち少なくとも1つを含む。生成油の性状に関する情報は、例えば、生成油の硫黄濃度、生成油の金属分濃度、などのうち少なくとも1つを含む。
【0051】
触媒に関する情報としては、例えば、劣化度の実績値、劣化度の補正値、などのうち少なくとも1つを含む。なお、劣化度の実績値および劣化度の補正値は、例えば、基礎情報に基づいて算出される値の一例である。劣化度の実績値および劣化度の補正値の算出方法の詳細は、後述する。
【0052】
運転予定データは、プラント装置500に予定されている運転情報が含まれるデータである。運転予定データは、例えば、第2運転期間における運転情報の予定に関する時系列データである。運転予定データは、例えば、運転条件に関する情報、原料油の性状に関する情報及び生成油の性状に関する情報などのうち少なくとも1つを含む。運転予定データは、例えば、固有触媒劣化関数の入力変数に対応する運転情報の値を含む。
【0053】
運転予定データに含まれる運転情報の値は、運転時間毎に設定されてもよいし、第2運転期間全体に対して共通に設定されてもよい。運転予定データに含まれる運転情報の値は、第2運転期間においてプラント装置500に実際に適用されている運転情報の値と異なっていてもよいし、第2運転期間においてプラント装置500に実際に予定されている運転情報の値と異なっていてもよい。運転予定データは、例えば、ユーザ端末300から受信することで、第2運転期間の途中で適宜変更(更新)されてもよい。
【0054】
基準触媒劣化関数は、触媒の劣化度を推定する基準となる関数である。基準触媒劣化関数は、プラント装置500に使用する触媒の種類に応じて算出される。基準触媒劣化関数は、基準劣化モデルに対応する。
【0055】
基準触媒劣化関数は、既存の知識又は実験等によりに導かれる関数である。基準触媒劣化関数は、例えば、文献に記載されている理論式等の技術情報と、プラント装置500の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、プラント装置500の実験装置の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、プラント装置500と同等の機能を有する他の製油装置の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、の少なくとも1つを利用して導出される。なお、プラント装置500の実験装置とは、例えば、プラント装置500よりも比較的小規模な試験装置であり、ラボスケール、ベンチスケール、又はパイロットスケールでプラント装置500の運転に必要なデータを収集できる装置である。なお、プラント装置500と同等の機能を有する他の製油装置とは、例えば、プラントに設置されているプラント装置500が水素化脱硫装置である場合は、プラントに設置されている他の水素化脱硫装置や他のプラントに設置されている水素化脱硫装置等が挙げられる。
【0056】
本実施形態では、基準触媒劣化関数として、入力変数によって出力変数を回帰する関数の例を示すが、ニューラルネットワークなどの他の形態のモデルでもよい。ニューラルネットワークの場合、運転時間及び入力変数は、入力ノードに与えられる値であり、パラメータは一例としてノード間の重み係数などであり、劣化度は出力ノードから出力される値に対応する。
【0057】
基準触媒劣化関数は、例えば、入力変数と、劣化寄与パラメータと、出力変数とを含む関数である。なお、基準触媒劣化関数は、劣化寄与パラメータ以外のパラメータを含んでもよい。基準触媒劣化関数は、例えば、既存の知識又は実験等によりに導かれる関数であるため、既存の知識又は実験などにより予め決定される固定パラメータが含んでもよい。
【0058】
入力変数は、例えば、運転実績データに含まれる基礎情報の値である。入力変数は、例えば、触媒の温度、原料油の通油量、原料油の硫黄濃度、生成油の硫黄濃度および水素油比の値が挙げられる。入力変数は、上述の基礎情報の値に限られず、運転実績データに含まれる基礎情報の値を適宜追加又は適宜削除することができる。
【0059】
劣化寄与パラメータは、入力変数が触媒の劣化に寄与する度合を表すパラメータである。劣化寄与パラメータは、入力変数が触媒の劣化に寄与する度合に基づいて値が変動するパラメータである。劣化寄与パラメータは、例えば、運転実績データに基づいて、決定されるパラメータである。劣化寄与パラメータは、例えば、運転実績データに基づいて、最適化されるパラメータ(最適化パラメータ)である。
【0060】
出力変数は、例えば、劣化度に関する値である。本開示における「劣化度に関する値」は、劣化度の値だけでなく、演算によって劣化度の値を算出できる値も含まれる。即ち、「劣化度に関する値」は、劣化度だけでなく、劣化度の時間微分の値、劣化度の対数の時間微分の値などを意味するように広く解釈されるべきである。即ち、出力変数が劣化度に関する値である基準触媒劣化関数は、劣化度の値だけでなく、劣化度の時間微分の値、劣化度の対数の時間微分の値などを出力変数とする関数であってもよい。
【0061】
ここで、劣化度は、触媒の劣化の進み具合を表す指標である。劣化度の一例として、下記の式(1)で示す触媒の残活性割合が挙げられる。残活性割合は、運転の開始時刻(運転時間0又は時刻0)における触媒の見かけの頻度因子A0に対する、時刻t(運転期間内の時刻t、又は運転開始してからの経過時間t)における触媒の見かけの頻度因子Atの比であり、式(1)として示される。Φは、残活性割合を表す。
【数1】
【0062】
残活性割合の値は、運転の開始時刻(運転時間0又は時刻0)では1である。残活性割合の値はプラント装置500の運転時間が進むに伴い、徐々に減少する。残活性割合の値の減少(触媒の劣化)は、プラント装置500の運転状況の影響を受ける。触媒の劣化には、代表的には、コーク劣化と、メタル劣化とがある。コーク劣化とは、触媒反応の過程で触媒にコークが堆積することにより生じる触媒の劣化のことである。また、メタル劣化とは、触媒反応の過程で原料油中に含まれる金属分が触媒に堆積することによる触媒の劣化のことである。基準触媒劣化関数は、コーク劣化とメタル劣化とが反映された関数であることが望ましい。
【0063】
次に、基準触媒劣化関数について、一例を説明する。本実施形態では、例えば、基準触媒劣化関数は、出力変数である残活性割合Φの対数の時間微分が、下記の式(2)に示す通り、複数のパラメータpα,pβ,pγ,…と時刻(運転時間)tにおける複数の入力変数H1t,H2t,…,Hmtとの関数gとして表現される。ここで、複数のパラメータpα,pβ,pγ,…は、劣化寄与パラメータに相当する。
【数2】
【0064】
基準触媒劣化関数は、上述の式(2)に示したように、左辺(出力変数)を残活性割合Φの対数の時間微分とするのではなく、下記の式(2-1)に示すように、左辺(出力変数)を残活性割合Φの時間微分としてもよい。式(2-1)では、パラメータpα、pβ、pδ、pζが劣化寄与パラメータに相当し、パラメータpγ、pεが固定パラメータに相当する。
【数3】
【0065】
基準触媒劣化関数は、上述の式(2)に示したように左辺(出力変数)を残活性割合Φの対数の時間微分とするのではなく、下記の式(2-2)に示すように左辺(出力変数)左辺を残活性割合Φとし、右辺に運転時間t、すなわち運転時間を表す変数を含めた関数としてもよい。ここで、expは指数関数、sは任意の関数である。
【数4】
【0066】
上述の式(2)、式(2-1)及び式(2-2)に含まれるパラメータは、入力変数の係数又は乗数となるパラメータ、定数項のパラメータのいずれも含まれ得る。なお、上述のパラメータ及び入力変数の記号の一部は、式(2)と式(2-1)と式(2-2)との間で同じ記号を用いているが、式(2)と式(2-1)と式(2-2)とのパラメータ及び入力変数が同じである必要はない。
【0067】
固有触媒劣化関数は、第2運転期間における触媒の寿命の予測に用いる関数である。固有触媒劣化関数は、例えば、運転実績データに基づいて、基準劣化関数の劣化寄与パラメータの値を決定することで生成又は更新される関数である。固有触媒劣化関数は、劣化度の推定モデル(固有劣化モデル)に対応する。固有触媒劣化関数は、例えば、基礎情報の値を入力すると、触媒の劣化度に関する値を出力可能である。固有触媒劣化関数は、触媒の寿命を予測するために用いる有効なデータの一例である。
【0068】
固有触媒劣化関数は、運転実績データに基づいて生成されるため、基準触媒劣化関数をプラント装置500に適合させた関数である。よって、固有触媒劣化関数は、プラント装置500の設置環境、個体差、経年劣化状況などのプラント装置500に特有の状況が反映されている。固有触媒劣化関数の生成方法および更新方法の詳細は後述する。
【0069】
装置データは、プラント装置500の識別に関する情報、プラント装置500の種類に関する情報、プラント装置500の触媒の種類に関する情報、プラント装置500の触媒の充填量に関する情報、目標運転期限に関する情報、運転上限温度に関する情報、運転上限圧力に関する情報、運転上限処理量に関する情報、などのうち少なくとも1つを含む。
【0070】
目標運転期限に関する情報は、目標運転期限の値を少なくとも含む。目標運転期限は、例えば、プラント装置500と関連する生産計画や保全計画などに基づいて、予め設定される期間である。目標運転期限は、例えば、プラント装置500に期待されている運転継続日数、プラント装置500に予定されている触媒交換までの残存日数などである。なお、目標運転期限は、例えば、ユーザ端末300からの指示に基づいて変更することもできる。
【0071】
運転上限温度に関する情報は、運転上限温度の値を少なくとも含む。運転上限温度は、触媒の耐熱温度、プラント装置500の反応槽の耐熱温度、生成油の耐熱温度などのうち少なくとも1つに基づいて、予め設定される温度である。なお、運転上限温度は、プラント装置500の保全や生成油の品質管理のために、必要に応じて所定のマージンを持たせて設定してもよい。なお、運転上限温度は、例えば、ユーザ端末300からの指示に基づいて変更することもできる。
【0072】
寿命予測データは、例えば、運転予定データと固有触媒劣化関数(固有劣化モデル)とに基づいて、生成されるデータである。寿命予測データは、第2運転期間におけるプラント装置500の触媒の寿命を予測可能なデータである。よって、寿命予測データは、触媒の寿命を予測するために用いる有効なデータの一例である。
【0073】
寿命予測データは、例えば、触媒劣化予測データ、温度予測データなどが挙げられる。なお、寿命予測データは、触媒の寿命に関する情報の変化を運転時間に応じて表したデータであればよく、運転時間の代わりに、運転時間に応じて単調増加又は単調減少する項目を用いてもよく、例えば、プロセスの途中で生成される生成物(気体、固体、又は液体)の量でもよいし、運転開始後に製油された量などでもよい。
【0074】
触媒劣化予測データは、例えば、触媒の劣化度の予測値と運転時間との関係を表すデータである。ユーザは、触媒の劣化度に対する閾値を予め設定しておくことで、劣化度の予測値が閾値以下になった場合に、触媒が寿命を迎えたと判断することができる。よって、触媒劣化予測データは、触媒の寿命を予測するために用いる有効なデータの一例である。なお、触媒劣化予測データの生成方法の詳細は、後述する。
【0075】
温度予測データは、例えば、要求温度と運転時間との関係を表すデータである。本開示における「要求温度」とは、プラント装置500が運転予定データに含まれる運転状態を満たすために必要な触媒の温度の予測値のことである。温度予測データに含まれる要求温度と装置データに含まれる運転上限温度とを比較することで、即ち、要求温度が運転上限温度に達する時刻を触媒の寿命とみなすことで、触媒の寿命を予測することができる。よって、温度予測データは、触媒の寿命を予測するために用いる有効なデータの一例である。なお、温度予測データとの生成方法の詳細は、後述する。
【0076】
次に、処理部110の詳細について説明する。処理部110は、触媒の寿命の予測に有効な情報を提供するために、情報処理装置100に期待される情報処理を実行する。処理部110は、例えば、データ取得部111、関数生成部112、寿命予測データ生成部113及びデータ出力部114を有する。
【0077】
データ取得部111は、例えば、ネットワーク400を介して、データ収集装置200又はユーザ端末300から各種データを取得する。データ取得部111は、例えば、運転実績データ、基準触媒劣化関数、固有触媒劣化関数、運転予定データ及び装置データなどを取得する。データ取得部111が取得した各種データは、記憶部120に記憶されてもよい。
【0078】
データ取得部111は、例えば、運転実績データを取得する際に、取得可能な運転実績データをすべて取得しなくてもよい。より具体的には、データ取得部111は、運転実績データを取得する際に、すべて運転時間(運転時刻)に関する運転実績データを取得してもよいし、サンプリングにより取得する運転時間を間引いてもよい。また、データ取得部111は、運転実績データを取得する際に、すべての運転情報に関する運転実績データを取得してもよいし、算出する触媒の寿命を予測するために用いる有効なデータの種類に応じて必要となる運転情報に関する運転実績データのみを取得してもよい。取得部111が一度に取得する運転実績データを減少させることで、データ処理量及びデータ通信量を削減することができる。
【0079】
データ取得部111は、第2運転実績データを取得する際に、第2運転実績データをプラント装置500の運転開始から現時点までを纏めて取得してもよいし、第2運転実績データを運転時間毎に逐次取得してもよいし、第2運転実績データを所定の周期(時間間隔)で取得してもよい。
【0080】
データ取得部111が第2運転実績データを所定の周期で取得する場合、取得する周期は、第2運転期間の開始から目標運転期限までの期間より短い周期であれば、特定の値に限定されない。データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、例えば、目標運転期限までの期間が350日であれば、1日、5日、10日、100日などの日単位であってもよいし、1時間、2時間などの時間単位であってもよいし、10分、20分などの分単位であってもよい。データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、例えば、ユーザによって予め設定されている。データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、例えば、記憶部120に予め記憶されていてもよいし、ユーザ端末300から指示データとして取得してもよい。
【0081】
データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、取得された第2運転実績データに応じて変更されてもよい。即ち、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに含まれるプラント装置500の運転情報(プラント装置500の運転状況)に応じて、当該周期を変更してもよい。より具体的には、データ取得部111は、例えば、プラント装置500で測定される触媒の温度が高くなるほど、第2運転実績データを短い周期で取得してもよい。即ち、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに含まれる最新の触媒の温度が、触媒の温度に対して予め定められた閾値以上である場合は、当該閾値未満である場合に比べて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期を短くしてもよい。これにより、プラント装置500の触媒の寿命に比較的余裕があるときは第2運転実績データの取得頻度を少なくし、触媒の寿命に比較的余裕がなく固有劣化モデルにより予測精度が求めるときは取得頻度を高くできる。これにより、第2運転期間におけるプラント装置の運転状況に応じて、固有劣化モデルの精度向上とデータ通信量とのバランスを取ることができる。
【0082】
また、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに含まれる最新の触媒の温度が、触媒の温度に対して予め定められた閾値未満である場合は、当該閾値以上である場合に比べて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期を長くしてもよい。即ち、データ取得部111は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転実績データを取得する周期(時間間隔)を可逆的に変更してもよい。
【0083】
データ取得部111は、第2運転実績データを取得する周期を変更すると判定した場合、例えば、記憶部120に記憶されている周期を更新する。データ取得部111は、更新された周期に基づいて、次の第2運転実績データを取得するタイミングを制御する。
【0084】
上述の触媒の温度に対して予め定められた閾値は、例えば、プラント装置500の運転上限温度に基づいて決定される。当該閾値は、触媒の温度に対して複数設けられていてもよい。当該閾値及び第2運転実績データを取得する周期は、第2運転期間の途中において、例えば、ユーザ端末300からの指示に基づいて変更することもできる。
【0085】
また、データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、取得された第2運転実績データに応じて変更される場合において、触媒の温度に基づいて変更することに限定されない。当該周期は、例えば、第2運転実績データに含まれる触媒の劣化度の値に基づいて変更されてもよいし、プラント装置500の運転上限温度と第2運転実績データの触媒の温度との差の絶対値に基づいて、変更されてもよい。例えば、第2運転実績データに含まれる最新の触媒の温度から算出された差の絶対値が、当該絶対値に対して予め定められた閾値以下である場合は、当該閾値を超える場合と比べて、次に第2運転実績データを取得するまでの周期を短くしてもよい。
【0086】
また、データ取得部111が第2運転実績データを取得する周期は、第1運転実績データと第2運転実績データとを比較して、変更されてもよい。データ取得部111は、例えば、第1運転実績データと第2運転実績データとに含まれる触媒の温度の推移の乖離が、予め定められた閾値以上である場合は、予め定められた閾値未満である場合に比べて、短くしてもよい。即ち、第1運転実績データと第2運転実績データとの間において、注目する任意の運転時間における触媒の温度の差の絶対値が、予め定められた閾値以上になった場合、データ取得部111が次に第2運転実績データを取得する周期を短くしてもよい。第1運転実績データと第2運転実績データとを比較して変更する場合も、取得された第2運転実績データに応じて変更する場合と同様に、第2運転実績データを取得する周期(時間間隔)を可逆的に変更してもよい。
【0087】
(劣化度の実績値の算出)
関数生成部112は、運転実績データに基づき、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、データ取得部111が取得した運転実績データに劣化度の実績値が含まれていない場合、劣化度の実績値を算出する。
【0088】
関数生成部112は、第1運転実績データに基づいて、第1運転期間における運転時間毎の劣化度の実績値を算出する。運転時間tにおける触媒の劣化度の実績値の算出方法は、以下で詳細に説明する。
【0089】
関数生成部112は、運転時間tにおける第1運転実績データに基づいて、後述の式(3-1)、式(3-2)及び式(4)を用いて算出する。式(3-1)、式(3-2)及び式(4)は、原料油の硫黄濃度、生成油の硫黄濃度及び原料油の通油量から見かけの反応速度定数kを算出する式である。nは反応次数であり、予め決定される。[S]は運転時間tにおける生成油の硫黄濃度であり、[S]0は原料油の硫黄濃度である。LHSVは運転時間tにおける液空間速度(Liquid hourly space velocity)、すなわち運転時間tにおける原料油の通油量である。式(3-1)は、n≠1のときに用いられる。
【数5】
【0090】
式(3―2)は、n=1のときに用いられる。
【数6】
【0091】
式(4)は、いわゆるアレニウスの式に相当する。
【数7】
Aは触媒の見かけの頻度因子(触媒活性の程度を表す)である。Eaは見かけの活性化エネルギーである。Rは気体定数である。Tは反応温度(触媒の温度)である。式(4)から、kとAとがわかれば、反応温度T(例えば次の運転時間で必要な反応温度)が計算できる。
【0092】
関数生成部112は、第1運転実績データに含まれる運転時間tにおける原料油の通油量、原料油の硫黄濃度及び生成油の硫黄濃度の値を用いて、式(3-1)及び式(3-2)に基づき、運転時間tにおける見かけの反応速度定数kを算出する。算出された見かけの反応速度定数kと第1運転実績データに含まれる運転時間tにおける反応温度(触媒の温度)Tとを用いて、式(4)に基づき見かけの頻度因子Aを算出する。算出された見かけの頻度因子Aは、触媒の運転時間tにおける見かけの頻度因子Atに対応する。関数生成部112は、見かけの頻度因子Atと、運転開始時(運転時間t=0)における見かけの頻度因子A0との比に基づき、運転時間tにおける触媒の劣化度Φを算出する。算出された劣化度Φは、運転時間tにおける触媒の劣化度の実績値に対応する。見かけの頻度因子A0は、予め与えられている、もしくは見かけの頻度因子Atと同様にして算出される。関数生成部112は、第1運転期間における運転時間毎に、上述の算出を繰り返すことで、第1運転期間における運転時間毎の劣化度の実績値を算出する。
【0093】
関数生成部112は、上述した第1運転期間に関する劣化度の実績値の算出方法と同様にして、第2運転期間における運転時間毎の劣化度の実績値を算出してもよい。
【0094】
劣化度の実績値は、データ取得部111によって運転実績データが取得されたタイミングで、関数生成部112によって算出されてもよい。なお、劣化度の実績値は、例えば、ユーザ端末300やデータ収集装置200等の情報処理装置100以外の装置によって、予め算出されてもよい。この場合、予め算出された劣化度の実績値は、第1運転実績データ又は第2運転実績データの一部である触媒に関する情報として、データ収集装置200に記憶されていてもよい。
【0095】
図4は、第1運転実績データに含まれる運転時間毎の劣化度の実績値の一部を座標系にプロットした例を示である。横軸は時間、縦軸は劣化度である。各四角記号が、触媒の劣化度の値を示す。
【0096】
(劣化度の補正値の算出)
ここで、実際に稼働中のプラント装置500の運転状況は、運転期間中に適宜変更され得るものである。例えば、第1運転実績データに含まれる運転条件に関する情報の値は、第1運転期間において一定であるとは限らない。運転条件が変更されると、触媒の劣化度に影響を与え得る。より具体的な一例として、水素油比の値が高くなるほど触媒の脱硫反応が促進されることが知られている。よって、水素油比がある運転時刻を境に高くなると、以降の運転時刻において、触媒は、本来の触媒性能以上のパフォーマンスを発揮するようになる。すなわち、触媒の劣化度自体が本来は変化していないにもかかわらず、運転期間におけるプラント装置500の運転状況の変動に応じて、運転実績データに基づいて算出された劣化度の実績値は変動し得る。そこで、関数生成部112は、より同じ条件下で運転時間毎の劣化度を評価するために、運転実績データに基づいて劣化度の実績値を補正し、劣化度の補正値を算出してもよい。
【0097】
関数生成部112は、例えば、データ取得部111が取得した運転実績データに劣化度の補正値が含まれていない場合、劣化度の補正値を算出する。関数生成部112は、劣化度の実績値の算出に用いた基礎情報に基づいて、劣化度の補正値を算出してもよいし、劣化度の実績値の算出に用いた基礎情報とは異なる基礎情報に基づいて、劣化度の補正値を算出してもよい。劣化度の補正値の算出に用いる基礎情報は、触媒の劣化度に影響を与え得るものであればよく、上述の水素油比に限定されない。劣化度の補正値の算出に用いる基礎情報は、例えば、水素分圧、原料油のアロマ分濃度、原料油の窒素分濃度又は原料油の金属分濃度などであってもよい。
【0098】
関数生成部112は、例えば、第1運転実績データに関する劣化度の実績値を、第1運転実績データに基づいて補正し、劣化度の補正値を算出する。より具体的には、関数生成部112は、第1運転期間における任意の時刻に対して算出された劣化度の実績値を、第1運転実績データに含まれるとともに当該劣化度の実績値に対応する当該任意の時刻における基礎情報の値に基づいて、補正する。
【0099】
関数生成部112は、例えば、下記の式(5)で示す補正式によって、劣化度の補正値を算出する。
【数8】
Φactualは劣化度の実績値、Cは補正項、Φ’は劣化度の補正値である。
【0100】
補正項は、例えば、補正に用いる基礎情報の種類毎に算出される。補正項の式の形および補正項の式に含まれる係数は、上述の基準触媒劣化関数と同様に、既存の知識又は実験等によって予め導かれていてもよい。補正項の式の形および補正項の式に含まれる係数は、補正に用いる基礎情報毎に異なっていてもよい。劣化度の補正値の算出に用いる基礎情報が複数存在する場合、補正に用いる基礎情報の種類毎に補正項を生成し、これらの補正項を掛け合わせたものを、式(5)の補正項としてもよい。
【0101】
第1運転期間に関する劣化度の実績値に対する補正項は、第1運転実績データに基づいて算出される。補正項は、例えば、任意の運転時刻における第1運転実績データの基礎情報の値を実績値とし、基準に用いると定められた運転時刻における第1運転実績データの基礎情報の値を基準値(固定値)とすると、実績値に対する基準値の比で表される。即ち、第1運転期間における運転時刻tの補正項は、運転時刻tに対応する実績値に対する固定値の比を算出することで取得できる。
【0102】
関数生成部112は、第1運転期間における運転時刻毎の補正項を算出することで、算出された補正項と劣化度の実績値に基づいて、式(5)から、第1運転期間における運転時刻毎に劣化度の補正値を算出できる。
【0103】
補正項に用いる基準値は、第1運転実績データの基礎情報の値を基準化できる固定値であればよく、第2運転実績データに含まれる当該基礎情報の値であってもよいし、既存の知識又は実験等によって予め定めた値であってもよい。
【0104】
関数生成部112は、上述した第1運転期間に関する劣化度の補正値の算出方法と同様にして、第2運転期間に関する劣化度の補正値を算出してもよい。
【0105】
関数生成部112は、劣化度の補正値を、劣化度の実績値が算出した後に連続して算出してもよいし、ユーザ端末300からの指示されたタイミングで算出してもよい。また、劣化度の補正値は、例えば、ユーザ端末300やデータ収集装置200等の情報処理装置100以外の装置によって、予め算出されてよい。この場合は、予め算出された劣化度の補正値は、第1運転実績データ又は第2運転実績データの一部である触媒に関する情報として、データ収集装置200に予め記憶されていてもよい。
【0106】
図5は、図4に示した劣化度の実績値を補正した例を示す。横軸は時間、縦軸は劣化度(ここでは残活性割合)である。劣化度の補正値が丸記号によって表される。矢印は、四角記号の実績値を、丸記号の値に補正することを意味する。グラフG1は、劣化度の補正値を滑らかに繋ぐ曲線である。
【0107】
(固有触媒劣化関数の生成)
関数生成部112は、運転実績データに基づき、基準触媒劣化関数から固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、第1運転実績データに基づいて、基準触媒劣化関数の劣化寄与パラメータの値を決定することで、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、基準触媒劣化関数を第1運転実績データに基づきフィッティングすることで、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、例えば、第1運転実績データを教師データに用いて、機械学習を行うことで、固有触媒劣化関数を生成してもよい。
【0108】
関数生成部112は、固有触媒劣化関数を生成する際に、第2運転実績データを取得していた場合、第1運転実績データだけでなく、第2運転実績データも用いてもよい。
【0109】
関数生成部112は、固有触媒劣化関数を生成する際に、基準触媒劣化関数の出力変数が触媒の劣化度の値である場合に、劣化度の実績値の代わりに、劣化度の補正値を用いてもよい。なお、関数生成部112は、固有触媒劣化関数を生成する際に、必要に応じて、運転実績データに含まれる値及び運転実績データに基づいて算出された値を、基準触媒劣化関数の入力変数又は出力変数と一致させるための演算を行っても良い。
【0110】
関数生成部112は、例えば、データ取得部111が運転実績データを取得したタイミングで固有触媒劣化関数を生成してもよいし、ユーザ端末300からの指示されたタイミングで固有触媒劣化関数を生成してもよい。また、固有触媒劣化関数は、例えば、ユーザ端末300やデータ収集装置200等の情報処理装置100以外の装置によって、予め生成されてもよい。この場合は、予め生成された固有触媒劣化関数は、データ収集装置200に記憶されていてもよいし、記憶部120に予め記憶されていてもよい。
【0111】
(固有触媒劣化関数の更新)
関数生成部112は、固有触媒劣化関数が存在する場合に、データ取得部111によって取得された第2運転実績データに更に基づいて、固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよい。関数生成部112は、上述した固有触媒劣化関数の生成方法と同様にして、固有触媒劣化関数を更新できる。
【0112】
関数生成部112は、例えば、第1運転実績データだけでなく、データ取得部111が取得した第2運転実績データにも基づいて、劣化寄与パラメータを再決定することで、固有触媒劣化関数を更新する。
【0113】
関数生成部112は、データ取得部111が第2運転実績データを所定の周期(時間間隔)で取得する場合、新たに取得された第2運転実績データに更に基づいて、固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよい。この場合、関数生成部112は、固有触媒劣化関数を当該周期で固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよいし、当該周期とは異なるタイミングで固有触媒劣化関数を更新(再生成)してもよい。
【0114】
(不安定期間の終了の判断)
ここで、プラント装置500が稼働開始し、原料油の触媒への通油が開始された後の最初のある期間の間は、触媒の活性が急激に低下する初期劣化が生じることが知られている。この期間の経過後、触媒の活性の変化は緩やかになり変化が安定する。プラント装置500への通油開始直後から発生する触媒の劣化度の変化が激しい期間を不安定期間と呼ぶ。
【0115】
図6は、不安定期間の例を説明する図である。図6には運転開始からある時点までの劣化度がプロットされている。図6に示すように、劣化度は、運転開始後から運転時間t1までは急劇に変化し、その後は緩やか変化している。この場合、運転時間t1までの期間は、不安定期間に対応する。運転時間t1以降の期間は、安定期間に対応する。このように、触媒の劣化度は、不安定期間を経た後、変化が比較的安定する安定期間に移行する。
【0116】
関数生成部112は、第2運転実績データを用いて固有触媒劣化関数を生成又は更新する場合、不安定期間の第2運転実績データを用いなくてもよい。関数生成部112は、不安定期間経過後の安定期間に取得される第2運転実績データのみを、固有触媒劣化関数の生成又は更新に用いてもよい。
【0117】
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。関数生成部112は、不安定期間の終了が判断された第2運転期間に関する第2運転実績データに基づいて、固有触媒劣化関数を生成又は更新してもよい。
【0118】
関数生成部112は、第2運転実績データに含まれるプラント装置500の運転時間(運転時刻)に応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。ユーザは、例えば、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の長さ(例えば、運転時刻)を予め決定し、予め決定された不安定期間の長さに関する情報を記憶部120に記憶してもよい。この場合、関数生成部112は、記憶された不安定期間の長さに関する情報と、取得された第2運転実績データに含まれる運転時間の値と、を比較することで、第2運転期間における不安定期間の終了を判断できる。関数生成部112は、より具体的には、第2運転実績データに含まれる運転時刻が予め決定された不安定期間の長さ以上となったときに、当該運転時刻において第2運転期間における不安定期間が終了したと判断できる。
【0119】
関数生成部112は、運転時間の代わりに、劣化度の値(例えば、実績値又は補正値)に応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。ユーザは、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の終了時点に対応する劣化度の値を予め決定し、決定された劣化度の値に関する情報を記憶部120に記憶してもよい。この場合、関数生成部112は、記憶された劣化度の値に関する情報と、第2運転実績データに含まれる劣化度の値と、を比較することで、第2運転期間における不安定期間の終了を判断できる。関数生成部112は、より具体的には、第2運転実績データに含まれる運転時間毎の劣化度の値が予め決定された劣化度の値以下となったときに、当該運転時間において不安定期間が終了したと判断できる。
【0120】
関数生成部112は、運転時間の代わりに、劣化度の値の変化率に応じて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断してもよい。ユーザは、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の終了時点に対応する劣化度の変化率を予め決定し、決定された劣化度の変化率に関する情報を記憶部120に記憶してもよい。この場合、関数生成部112は、記憶された変化率に関する情報と、第2運転実績データに含まれる劣化度の値の変化率と、を比較することで、第2運転期間における不安定期間の終了を判断できる。ここで、劣化度の値の変化率は、所定の運転時間において、劣化度の値が変化した割合である。ユーザは、運転実績データに含まれる、又は、運転実績データに基づいて算出された劣化度の値の推移又は変化に基づいて、変化率を算出対象となる運転時間の長さを適宜調整できる。
【0121】
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて第2運転期間における不安定期間の終了を判断する際に、運転時間、劣化度の値及び劣化度の変化率以外の値を判断の指標として用いてもよいし、これらを適宜組み合わせて判断してもよい。
【0122】
上述の例示では、第1運転実績データに基づいて、第2運転期間における不安定期間の終了を判断するための指標と当該指標に対応する閾値を予め決定したがこれに限定されず、例えば、第1運転実績データよりも以前の運転実績データに基づいて決定してもよいし、プラント装置500の実績装置の実験データに基づいて決定されてもよい。
【0123】
(触媒劣化予測データの生成)
寿命予測データ生成部113は、固有触媒劣化関数と運転予定データとに基づき、触媒劣化予測データを生成する。寿命予測データ生成部113は、取得された運転予定データと固有触媒劣化関数とに基づいて、触媒劣化予測データを生成可能であるかを判断してもよい。寿命予測データ生成部113は、例えば、取得された運転予定データに含まれる運転情報の値の種類が、触媒劣化予測データを算出する際に用いる固有触媒劣化関数の入力変数及び上述の数式に含まれる値の種類を網羅しているかを判断してもよい。触媒劣化予測データは、寿命予測データ生成部113に生成可能であると判断されたタイミングで生成されてもよいし、ユーザ端末300からの指示に基づいて生成されてもよい。また、寿命予測データ生成部113は、例えば、温度予測データも生成する場合は、触媒劣化予測データの生成を開始する前に、温度予測データが生成可能であるかを併せて判断してもよい。なお、関数生成部112が触媒劣化予測データを生成する時点で、第2運転期間がまだ開始されていなくてもよいし、開始されていてもよい。以下、寿命予測データ生成部113における触媒劣化予測データの生成方法を説明する。
【0124】
第2運転期間の開始時(運転時間0又は時刻0)の劣化度を所定値(例えば1)とする。運転時間tにおける運転予定データの値を固有触媒劣化関数の入力変数に与えて、固有触媒劣化関数の出力値(dΦ/dt)を取得する。取得した出力値を運転時間t-1の劣化度から減算することで運転時間tの劣化度を取得する。取得した運転時間tの劣化度は、運転時間tにおける劣化度の予測値に対応する。以降、同様の処理を繰り返すことにより、第2運転期間における各運転時間の劣化度の予測値を得ることができる。
【0125】
なお、触媒劣化予測データの生成方法は、固有触媒劣化関数と運転予定データに基づく限り他の方法でもよく、上述の例に限定されるものではない。例えば固有触媒劣化関数の出力が、式(2)又は(2-1)のようなdΦ/dtではなく、式(2-2)のような劣化度Φとする関数であれば、運転予定データと運転時間tとを直接、固有触媒劣化関数の入力変数に与えることにより、運転時間tにおける劣化度の予測値を算出してもよい。
【0126】
なお、寿命予測データ生成部113は、固有触媒劣化関数又は運転予定データが更新された場合、更新された固有触媒劣化関数又は運転予定データに基づいて、触媒劣化予測データを更新(再生成)してもよい。
【0127】
図7は、固有触媒劣化関数と運転予定データとから算出した劣化度の予測値を含む触媒劣化予測データG2の例を示す。比較用に図5のグラフG1も示されている。星印が、第2運転期間における劣化度の予測値を表す。グラフG1は一点鎖線のグラフ、触媒劣化予測データG2は実線のグラフより表されている。触媒劣化予測データG2は、星印で示す劣化度の予測値を滑らかに繋いでいる。
【0128】
(温度予測データの生成)
寿命予測データ生成部113は、生成された触媒劣化予測データと運転予定データとに基づき、温度予測データを生成する。以下、寿命予測データ生成部113による、温度予測データの生成方法を説明する。
【0129】
寿命予測データ生成部113は、第2運転期間における運転時間毎に、運転予定データと触媒劣化予測データが示す劣化度とに基づき、要求温度を算出する。具体的には、運転時間tにおける運転予定データに基づき、上述の式(3-1)及び式(3-2)から、運転時間tにおける見かけの反応速度定数kを算出する。触媒劣化予測データが示す運転時間tにおける劣化度の予測値に基づき、上述の式(2)から、運転時間tにおける見かけの頻度因子A(At)を算出する。算出された見かけの反応速度定数kと見かけの頻度因子Atとに基づき、上述の式(4)から、運転時間tにおける要求温度Tを算出する。
【0130】
なお、寿命予測データ生成部113は、固有触媒劣化関数又は運転予定データが更新された場合、更新された固有触媒劣化関数又は運転予定データに基づいて、温度予測データを更新(再生成)してもよい。即ち、寿命予測データ生成部113は、更新された触媒寿命予測データと運転予定データとに基づいて、温度予測データを更新(再生成)してもよい。
【0131】
図8は、寿命予測データ生成部113によって生成される温度予測データの一例を示す図である。運転時間ごとに算出された温度が、触媒の温度(要求温度)を縦軸、時間を横軸とする座標系に、斜線付の丸印によってプロットされている。プロットされた点を滑らかに繋いだ曲線が温度予測データG3に対応する。温度予測データG3は曲線グラフの形態に限定されず、運転時間と温度とを含むデータ又はテーブルであってもよい。
【0132】
(寿命予測データの出力)
データ出力部114は、寿命予測データ生成部113により生成された寿命予測データを、通信部130を介して、対象となるユーザ端末300に送信してもよい。対象となるユーザ端末300は、例えば、情報処理装置100にプラント装置500の寿命予測データを要求したユーザ端末300、運転予定データを情報処理装置100へ送信したユーザ端末300等が挙げられる。
【0133】
データ出力部114は、第2運転実績データに含まれる触媒の温度の測定値(測定器によって測定された触媒の温度の測定値と時間との関係を表す実温度データ)を送信し、ユーザ端末300の表示部310に、触媒の温度の測定値の遷移を温度予測データと共通の座標系に表示させてもよい。
【0134】
データ出力部114は、ユーザ端末300にプラント装置500の運転上限温度の情報を送信し、ユーザ端末300の表示部310に、運転上限温度を温度予測データと共通の座標系(温度予測データと同じ画面)に表示させてもよい。これにより、ユーザは、運転上限温度と温度予測データの要求温度と容易に比較でき、触媒の寿命の予測結果を容易に確認できる。
【0135】
データ出力部114は、ユーザ端末300にプラント装置500の運転上限温度及び目標運転期限の情報を送信し、ユーザ端末300の表示部310に、運転上限温度及び目標運転期限を温度予測データと共通の座標系に表示させてもよい。これにより、ユーザは、運転上限温度と温度予測データの要求温度と容易に比較でき、触媒の寿命の予測結果を容易に確認できる。更に、ユーザは、触媒の寿命の予測結果と目標運転期限と容易に比較でき、予測された寿命に基づいて、プラント装置500の運転条件等の見直し是非をより迅速に判断できる。
【0136】
データ出力部114は、ユーザ端末300に要求温度が運転上限温度に達する時刻の情報を送信し、ユーザ端末300の表示部310に、時刻の情報を温度予測データと共通の座標系に表示させてもよい。これにより、ユーザは、要求温度が運転上限温度に達する時刻(触媒の寿命)を容易に特定できる。
【0137】
データ出力部114は、プラント装置500の目標運転期限及び現在までの運転時間(例えば、現在までの運転日数)の情報を、ユーザ端末300に送信し、ユーザ端末300の表示部310に、目標運転期限及び現在までの運転時間の情報を温度予測データと共通の座標系に表示させてもよい。これにより、ユーザは、目標運転期限と現在までの運転時間日を同時に把握できる。
【0138】
図9は、温度予測データG3と共通の座標系に、運転上限温度、目標運転期限、現在までの運転日数、触媒の温度が運転上限温度に達する時刻t2、触媒の温度の測定値とを表示した例を示す。縦軸が触媒の温度(要求温度)を表し、横軸が時間を表す。この例では、運転上限温度は395℃、目標運転期限は365日、現在までの運転日数は200日である。触媒の温度が運転上限温度に達する運転時間(日)は時刻t2である。温度予測データG3は実線のグラフで表され、時間に応じた触媒の予測温度の遷移を示す。斜線の四角記号が触媒の温度の測定値を示す。時刻t2から現在までの運転日数を減算することで、寿命を迎えるまでの残りの日数を把握できる。処理部110は、残りの日数を計算し、残りの日数を温度予測データと同じ画面に表示してもよい。なお本例では触媒の温度(要求温度)を日単位で求めているため時刻t2の単位も日であるが、要求温度を求める単位が時間、分又は秒であれば、それに応じて時刻t2の単位も時間、分又は秒となる。
【0139】
データ出力部114は、第2運転実績データが更新された場合又は温度予測データが更新された場合、ユーザ端末300に更新された各データを送信し、ユーザ端末300の表示部310に各データを表示させてもよい。
【0140】
図10は、上述の図9の状態から画面の表示が更新された例を示す。図9では現在までの運転日数が200日であったが、図10では250日となっている。触媒の温度の測定を示す四角記号の個数も図9より増えている。破線のグラフは図9の温度予測データG3に対応する。実線のグラフは、今回更新により新たに表示された温度予測データG3aに対応する。運転上限温度に達する時刻(触媒の寿命)が時刻t3であり、時刻t2より早くなっている。但し、時刻t3は、時刻t2と同様、目標運転期限より後の時刻である。
【0141】
図9及び図10における例示では、寿命予測データとして温度予測データを用いたが、温度予測データの代わりに触媒劣化予測データを用いてもよい。
【0142】
なお、データ出力部114は、例えば、情報処理装置100の表示部に寿命予測データ等を出力してもよい。この場合であっても、ユーザは、情報処理装置100の表示部に表示された寿命予測データ等を確認することで、ユーザ端末300の表示部310に表示させる場合と同様に寿命予測データ等を確認できる。
【0143】
<処理の流れ>
図11は、情報処理装置100の処理の一例を示すフローチャートである。図11に示す例では、プラント装置500の第2運転期間における運転が開始しているものとする。
なお、以下で説明するステップの内容及び順番は、あくまでも例示であって、本開示の内容と矛盾がない限り、適宜変更することができる。
【0144】
(ステップS100)
データ取得部111は、データ収集装置200等からプラント装置500の装置データを取得する。データ取得部111は、取得した装置データに含まれる触媒の種類に対応する基準触媒劣化関数を取得する。データ取得部111は、データ収取装置200等に固有触媒劣化関数が既に有る場合には、当該固有触媒劣化関数を取得する。最後に、データ取得部111は、取得した装置データ、基準触媒劣化関数及び固有触媒劣化関数を記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS101の処理に進む。
【0145】
(ステップS101)
関数生成部112は、記憶部120に固有触媒劣化関数が有るか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップS111の処理に進む。当該判定が否定判定された場合には、処理はステップS102の処理に進む。
【0146】
(ステップS102)
ステップS101で否定判定された場合は、データ取得部111は、データ収集装置200から第1運転実績データを取得する。データ取得部111は、取得した第1運転実績データを記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS103の処理に進む。
【0147】
(ステップS103)
関数生成部112は、データ取得部111が取得した第1運転実績データに基づき、第1運転期間における劣化度の実績値を算出する。関数生成部112は、算出された劣化度の実績値を運転実績データの一部として記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS104の処理に進む。
【0148】
(ステップS104)
関数生成部112は、第1運転実績データに基づいて、算出された劣化度の実績値を補正し、第1運転期間に関する劣化度の補正値を算出する。関数生成部112は、算出された劣化度の補正値を運転実績データの一部として記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS105の処理に進む。
【0149】
(ステップS105)
関数生成部112は、第1運転実績データに基づき、基準触媒劣化関数の劣化寄与パラメータの値を決定することにより、固有触媒劣化関数を生成する。関数生成部112は、生成された固有触媒劣化関数を記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップ121の処理に進む。
【0150】
(ステップS111)
ステップS101で肯定判定された場合は、データ取得部111は、第2運転実績データを取得するための周期に基づき、第2運転実績データを取得するタイミングか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップS112の処理に進む。当該判定が否定判定された場合には、処理はステップS121の処理に進む。
【0151】
(ステップS112)
ステップS111が肯定判定された場合は、データ取得部111は、データ収集装置200から第2運転期間における該当する周期分の第2運転実績データを取得する。データ取得部111は、取得した第2運転実績データを記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS113の処理に進む。
【0152】
(ステップS113)
データ取得部111は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転実績データを取得する周期を変更するか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップS114の処理に進む。当該判定が否定判定された場合には、処理はステップS115の処理に進む。
【0153】
(ステップS114)
ステップS113が肯定判定された場合は、データ取得部111は、第2運転実績データを取得する周期を変更する。データ取得部111は、変更した当該周期を記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS115の処理に進む。
【0154】
(ステップS115)
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転期間における不安定期間が終了したか否かを判定する。当該判定が肯定判定されたときには、処理はステップS116の処理に進む。当該判定が否定判定されたときには、処理はステップS121の処理に進む。
【0155】
(ステップS116)
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに基づき、第2運転期間における劣化度の実績値を算出する。関数生成部112は、算出された劣化度の実績値を第2運転実績データの一部として記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS117の処理に進む。
【0156】
(ステップS117)
関数生成部112は、算出された劣化度の実績値と取得された第2運転実績データとに基づいて、第2運転期間における劣化度の補正値を算出する。関数生成部112は、算出された劣化度の補正値を第2運転実績データの一部として記憶部120に記憶する。そして、処理はステップS118の処理に進む。
【0157】
(ステップS118)
関数生成部112は、取得された第2運転実績データに基づき、固有触媒劣化関数を更新(再生成)する。関数生成部112は、更新された固有触媒劣化関数を記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップ121の処理に進む。
【0158】
(ステップS121)
データ取得部111は、ユーザ端末300からプラント装置500の運転予定データを取得する。データ取得部111は、取得した運転予定データを記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS122の処理に進む。
【0159】
(ステップS122)
寿命予測データ生成部113は、寿命予測データを生成するか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップS123に進む。当該判定が否定判定された場合には、処理は、ステップS126の処理に進む。
【0160】
(ステップS123)
ステップS122が肯定判定された場合は、寿命予測データ生成部113は、生成された固有触媒劣化関数と、取得された運転予定データとに基づき、第2運転期間における運転時間毎に触媒の劣化度を算出することで、触媒劣化予測データを生成する。また、更新された固有触媒劣化関数が存在する場合、寿命予測データ生成部113は、生成された固有触媒劣化関数の代わりに更新された固有触媒劣化関数に基づいて、触媒劣化予測データを生成する。最後に、寿命予測データは、生成された触媒劣化予測データを記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS124の処理に進む。
【0161】
(ステップS124)
寿命予測データ生成部113は、生成された触媒劣化予測データと取得された運転予定データとに基づき、運転時間毎に要求温度を算出し、温度予測データを生成する。寿命予測データ生成部113は、生成された温度予測データを記憶部120に記憶する。そして、処理は、ステップS125の処理に進む。
【0162】
(ステップS125)
データ出力部114は、生成された寿命予測データを、対象となるユーザ端末300に送信する。データ出力部114は、運転上限温度、目標運転期限、現在まで運転日数又は第2運転実績データに含まれる触媒の温度の測定値に関するデータ(実温度データ)を、対象となるユーザ端末300に更に送信する。各種データを受信したユーザ端末300では、温度予測データと、運転上限温度と、目標運転期限と、現在までの運転日数と、現在までの触媒の温度の実測値とを、時間と触媒の温度とを軸とする共通の2次元座標系に表示する。そして、処理は、ステップS126に進む。
【0163】
(ステップS126)
処理部110は、終了条件に基づき、本処理を終了するか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合、本処理は終了する。当該判定が否定判定された場合は、処理はステップS101の処理に進む。ここで、終了条件は、例えば、ユーザ端末300から終了の指示データを受信した場合、プラント装置500の運転が終了した場合などがある。終了条件は、上述に限られず、その他の条件であってもよい。
【0164】
(他の動作例)
図11に示されるステップの一部が削除されてもよい。例えば、ステップS103、ステップS104、ステップS106、ステップS111、ステップS113、ステップS114、ステップS115、ステップS116、ステップS117、ステップS126等が削除されてもよい。ステップS126が削除された場合は、例えば、ステップS125が完了したとき、又は、ステップS122にて否定判定がなされたとき、本処理は終了する。
【0165】
図11に示されるステップ以外の処理を行うステップが追加されてもよい。例えば、ステップS102とS103との間に、第2運転実績データを取得するステップS102Aを追加してもよい。この場合、ステップS103及びステップS104では、取得された第2運転実績データに基づいて、劣化度の実績値及び補正値が算出されてもよい。
【0166】
基準触媒劣化関数及び固有触媒劣化関数における入力変数に触媒の温度が含まれている場合、寿命予測データ生成部113は、ステップS123とステップS124とを同時並行的に行って、触媒劣化予測データと寿命予測データとを同時並行的に生成する処理を行ってもよい。より具体的には、寿命予測データ生成部113は、運転時間(運転時間t-1とする)について算出された劣化度と次の運転時間t(例えば翌日)の運転予定データとに基づき、運転時間tの要求温度を算出する(詳細は、上述の式(3-1)及び式(3-2)及び式(4)の説明を参照)。更に、寿命予測データ生成部113は、運転時間tについて算出した要求温度と運転時間tの運転予定データとに基づいて、固有触媒劣化関数から触媒の劣化度を算出する。以降、tを単位時間ずつ増加させて、同様の処理を行うことで、温度の算出と劣化度の算出とを交互に繰り返し行う。このようにして運転時間毎に算出された一連の劣化度が触媒劣化予測データとして得られ、運転時間毎に算出された一連の要求温度が温度予測データとして得られる。
【0167】
(変形例1)
固有触媒劣化関数は、プラント装置500(第1プラント装置)とは異なる第2プラント装置の運転実績データ(第2プラント装置運転実績データ)に基づいて、生成されてもよい。第2プラント装置は、原料油を触媒に通油して生成油を取得する装置である。第2プラント装置は、例えば、第1プラント装置と同等の機能を有するプラント装置、第1プラント装置の実験装置、などが挙げられる。第2プラント装置の第2プラント装置運転実績データの定義は、第1プラント装置(プラント装置500)の運転実績データと同様である。第2プラント装置運転実績データは、固有触媒劣化関数を生成するために用いられる第1運転実績データと共通の運転情報の含むデータである。
【0168】
この場合、第2プラント装置運転実績データは、データ取得部111によってユーザ端末300又はデータ収集装置200から取得される。関数生成部112は、取得された第2プラント装置運転実績データを第1運転実績データとともに、固有触媒劣化関数の生成に用いることができる。第2プラント装置運転実績データは、情報処理装置100の入力部から取得されてもよい。取得された第2プラント装置運転実績データは、記憶部120に記憶されてもよい。
【0169】
この場合、例えば、図11に示されるステップS102とステップS103との間に、第2プラント装置運転実績データを取得するステップ102Bを追加すればよい。取得された第2プラント装置運転実績データは、以降の第1運転実績データを用いる各ステップ(例えば、ステップS103、ステップS104及びステップS105など)において、第1運転実績データとともに用いることができる。
【0170】
上述の変形例で生成した固有触媒劣化関数は、当該固有触媒劣化関数が生成された第1プト装置(プラント装置500)のみならず、第1プラント装置と同等の機能を有するプラント装置(第2プラント装置)に適用してもよい。
【0171】
(変形例2)
第1運転期間と第2運転期間とでプラント装置500に用いる触媒が異なっていてもよい。この場合であっても、関数生成部112は、上述の実施形態での固有触媒劣化関数の生成方法に準ずる方法にて、第1運転期間に関する運転実績データに基づいて第2運転期間における触媒の寿命の予測に用いる固有触媒劣化関数を生成できる。なお、「触媒が異なる」とは、触媒の種類(例えば、主成分)又は用途(例えば、脱硫触媒)が同じであるが、製品(製品番号)又は触媒の製造会社が異なる場合などが挙げられる。
【0172】
この場合、例えば、図11に示されるステップS104において、第1運転期間に関する触媒の劣化度の実績値に対して補正を行えばよい。より具体的には、過去の知見や実験装置などにより、両触媒の劣化度の値の時間毎の推移などに関するデータなどを取得する。取得された両触媒のデータを比較し、触媒の種類に関する補正項を生成すればよい。この場合、触媒の種類に関する補正項は、例えば、第1運転期間に用いる触媒の劣化度の値と第2運転期間に用いる触媒の劣化度の値との比であってもよいし、取得されたデータに基づいて算出された固定値であってもよい。なお、生成された触媒の種類に関する補正項は、他の補正項と併せて、劣化度の実績値の補正に用いてもよい。
【0173】
(その他の変形例)
上述の実施形態において、劣化度の一例として、上述の式(1)で示す触媒の残活性割合を挙げたが、触媒の残活性割合の代わりに触媒の見かけの反応速度定数の比であってもよい。すなわち、劣化度は、運転の開始時刻(運転時間0又は時刻0)における触媒の見かけの反応速度定数k0に対する、時刻t(運転期間内の時刻t、又は運転開始してからの経過時間t)における触媒の見かけの反応速度定数ktの比であってもよい。
【0174】
本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。これらのパラメータを使用する数式等は、本開示で明示的に開示したものと異なる場合もある。
【0175】
本開示における「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0176】
本開示において、「含む」、「含んでいる」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0177】
本開示における「判断」および「決定」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」および「決定」の各々は、例えば、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」および「決定」の各々は、例えば、解決、選択、選定、確立、比較などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」および「決定」各々は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0178】
本発明は、情報処理装置100において行われる処理のステップを備える情報処理方法として提供されてもよい。また、本発明は、情報処理装置100において実行されるプログラムとして提供されてもよい。当該プログラムは、光ディスクなどの記憶媒体に記憶した形態で提供されたり、インターネット等のネットワークを介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されたりすることが可能である。
【0179】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態及び変形例に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0180】
以下、本開示のいくつかの態様について説明する。
【0181】
第1態様は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データに基づいて生成された固有劣化モデルを記憶する記憶部と、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データを取得するデータ取得部と、前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、前記固有劣化モデルは、第1運転期間に関する前記運転実績データである第1運転実績データに基づいて生成されており、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の運転期間である、情報処理装置である。
【0182】
第1の態様によれば、第1運転実績データに基づいて生成された固有劣化モデルを用いて、寿命予測データが生成されている。ここで、固有劣化モデルが第1運転実績データに基づいて生成されているため、固有劣化モデルは、第1運転期間におけるプラント装置に特有の状況が反映されている。したがって、第2運転期間における触媒の寿命を予測する精度を向上できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0183】
第2態様は、関数生成部を更に備え、前記データ取得部は、前記第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、前記関数生成部は、取得された前記第2運転実績データに基づいて、前記固有劣化モデルを更新する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0184】
第2の態様によれば、第2運転実績データをさらに用いて、固有劣化モデルを更新する。よって、固有劣化モデルに対して、第1運転期間だけでなく、第2運転期間におけるプラント装置に特有の状況も反映させることができる。したがって、第2運転期間における触媒の寿命を予測する精度を更に向上できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0185】
第3態様は、前記プラント装置への通油開始直後から発生する前記触媒の劣化度の変化が激しい期間を不安定期間とするとき、前記関数生成部は、取得された前記第2運転期間に応じて、前記第2運転期間における前記不安定期間の終了を判断し、前記不安定期間の終了が判断された前記第2運転期間に関する前記第2運転実績データに基づいて、前記固有劣化モデルを更新する、第2の態様に記載の情報処理装置である。
【0186】
第3の態様によれば、第2運転期間におけるプラント装置に特有の状況を固有劣化モデルに反映させる際に、不安定期が経過した後の第2運転実績データを用いる。第2運転期間を開始直後の不安定期間における第2運転実績データを固有劣化モデルの更新に用いると、適切に第2運転期間におけるプラント装置に特有の状況を適切に固有劣化モデルに反映しきれない可能性がある。よって、第2運転期間における触媒の寿命の予測する精度を安定化できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0187】
第4態様は、前記データ取得部は、前記第2運転期間よりも短い周期で前記第2運転実績データを更新し、前記関数生成部は、更新された前記第2運転実績データに基づいて、前記固有劣化モデルを更に更新する、第2の態様に記載の情報処理装置である。
【0188】
第4の態様によれば、第2運転期間よりも短い周期で更新された第2運転実績データに基づいて、固有劣化モデルを更に更新する。よって、第2運転期間におけるプラント装置の状況を固有劣化モデルに繰り返し反映でき、固有劣化モデルの予測精度を向上できる。したがって、第2運転期間における触媒の寿命を予測する精度を向上できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0189】
第5態様は、前記データ取得部は、取得された前記第2運転実績データに応じて、前記周期を変更する、第4の態様に記載の情報処理装置である。
【0190】
第5の態様によれば、データ取得部は、取得された第2運転実績データに応じて、第2運転実績データの更新の周期を変更する。よって、データ取得部は、取得された第2運転実績データに基づいて、次に第2運転実績データを取得するまでの時間間隔を調整する。したがって、第2運転期間におけるプラント装置の運転状況に合わせて、データ通信量を削減しつつ、固有劣化モデルの精度を向上できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0191】
第6態様は、前記固有劣化モデルは、出力変数として、前記触媒の劣化度に関する値を有し、前記関数生成部は、取得された前記第2運転実績データに基づいて前記プラント装置の運転時間に応じた前記劣化度に関する値の実績値を算出し、取得された前記第2運転実績データに含まれる運転条件に関する値に基づいて、算出された前記実績値を補正することで前記劣化度に関する値の補正値を算出し、算出された前記補正値を用いて、前記固有劣化モデルを更新する、第2の態様に記載の情報処理装置である。
【0192】
第6の態様によれば、固有劣化モデルを第2運転実績データに基づいて更新する際に、劣化度に関する値の補正値を用いる。よって、第2運転期間におけるプラント装置500の運転条件の変動が固有劣化モデルに与える影響を低減でき、固有劣化モデルの予測精度を向上できる。したがって、第2運転期間における触媒の寿命を予測する精度を向上できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0193】
第7態様は、前記寿命予測データ生成部は、前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記第2運転期間における前記プラント装置の運転時間に応じた前記触媒の劣化度の予測値を算出し、算出された前記予測値と前記運転時間の関係を表す触媒劣化予測データを前記寿命予測データとして生成する、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0194】
第7の態様によれば、第2運転期間における触媒の劣化度の予測値と運転時間の関係を表す触媒劣化予測データを寿命予測データとして生成する。よって、ユーザは、第1運転期間等で触媒が寿命を迎えたときの劣化度の値と劣化度の予測値とを比較することで、第2運転期間における触媒の寿命を精度よく予測できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0195】
第8態様は、前記寿命予測データ生成部は、取得された前記運転予定データと生成された前記触媒劣化予測データとに基づいて、前記プラント装置の前記運転時間に応じた要求温度を算出し、算出された前記要求温度と前記運転時間との関係を表す温度予測データを前記寿命予測データとして生成し、前記要求温度は、取得された前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度である、第7の態様に記載の情報処理装置である。
【0196】
第8の態様によれば、第2運転期間における要求温度と運転時間の関係を表す温度予測データを寿命予測データとして生成する。よって、ユーザは、プラント装置に設けられている運転上限温度と要求温度とを比較することで、第2運転期間における触媒の寿命を精度よく予測できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0197】
第9態様は、前記寿命予測データ生成部は、 前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記第2運転期間における前記プラント装置の運転時間に応じた前記触媒の劣化度の予測値を算出し、算出された前記劣化度の予測値と取得された前記運転予定データとに基づき、前記第2運転期間における前記プラント装置の次の運転時間における要求温度を算出し、算出した前記要求温度と前記運転予定データと前記固有劣化モデルとに基づいて、前記次の運転時間の前記劣化度の予測値を算出し、前記劣化度の予測値の算出と前記要求温度の算出とを交互に繰り返すことにより、前記第2運転期間における前記プラント装置の前記運転時間毎に前記予測値と前記要求温度とを算出し、算出された前記要求温度と前記運転時間との関係を表す温度予測データを前記寿命予測データとして生成し、前記要求温度は、前記運転予定データを満たすために必要な前記触媒の温度である、第1の態様に記載の情報処理装置である。
【0198】
第9の態様によれば、劣化度と要求温度との算出を交互に繰り返しながら、第2運転期間におけるプラント装置の運転時間毎の劣化度と要求温度とを算出する。よって、互いに直前の算出結果に基づいて計算されるため、最新の触媒の予測結果を互いに反映し合いながら、第2運転期間におけるプラント装置の運転時間毎の劣化度と要求温度とを算出できる。したがって、寿命予測データとして、寿命予測データと温度予測データとをより精度良く生成できる。よって、ユーザは、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0199】
第10態様は、前記データ取得部は、前記プラント装置に予め定められている運転上限温度を取得し、前記寿命予測データ生成部は、取得された前記運転上限温度と生成された前記温度予測データとに基づいて、前記要求温度が前記運転上限温度に達する時刻を算出し、算出された前記時刻に基づいて、前記触媒の寿命を予測する、第8の態様又は第9の態様に記載の情報処理装置である。
【0200】
第10の態様によれば、寿命予測データ生成部は、運転上限温度と温度予測データとを比較することで、触媒の寿命を予測する。よって、ユーザ自身で運転上限温度と温度予測データとを比較する必要がなくなるため、より迅速に触媒の寿命を予測できる。ひいては、ユーザは、第2運転期間における触媒の寿命をより迅速に認識し、プラント装置の運転条件等をより迅速に修正或いは修正要否の判断ができるため、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0201】
第11態様は、データ出力部をさらに備え、前記データ取得部は、前記第2運転期間に関する前記運転実績データである第2運転実績データを取得し、前記第2運転実績データは、前記触媒の温度の測定値を含み、前記データ出力部は、 前記要求温度と前記測定値とを、ユーザ端末の画面における温度と時間とを軸とする共通の座標系に表示可能に出力する、第8の態様又は第9の態様に記載の情報処理装置である。
【0202】
第11の態様によれば、第2運転期間におけるプラント装置の運転状況を示す運転情報の時系列の履歴である第2運転実績データを取得する。さらに、第2運転実績データには触媒の温度の測定値が含まれており、データ出力部は、要求温度と触媒の温度の測定値とを、ユーザ端末の画面における共通の座標系に表示可能に出力する。よって、ユーザは、第2運転期間における測定値(実績値)と要求温度(予測値)とを比較することで、固有触媒劣化モデルの予測精度を容易に把握できる。したがって、ユーザは、固有劣化モデルの信頼性を容易に把握でき、必要に応じて、固有劣化モデルの見直しなどの処置を迅速に行うことができる。ゆえに、第2運転期間における触媒の寿命を予測する精度をより安定的に維持できる。ひいては、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0203】
第12の態様は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データと、前記運転情報の時系列の予定である運転予定データと、基準劣化モデルと、を取得するデータ取得部と、取得された前記運転実績データと取得された前記基準劣化モデルとに基づいて、固有劣化モデルを生成する関数生成部と、生成された前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、取得された前記運転実績データは、第1運転期間に関する第1運転実績データであり、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の期間である、情報処理装置である。
【0204】
第12の態様によれば、固有触媒劣化モデルの生成にプラント装置の第1運転実績データを用いているため、第1運転期間におけるプラント装置に特有の状況を反映させた固有劣化モデルを生成できる。よって、第2運転期間における触媒の寿命を予測する精度を向上できる。したがって、第2運転期間における触媒の寿命を精度良く予測できるため、ユーザは、プラント装置で生成油を効率的に生産できる。
【0205】
第13の態様は、原料油を触媒に通油して生成油を得るプラント装置の運転を支援するための情報処理装置であって、前記プラント装置を第1プラント装置とし、前記第1プラント装置とは異なる装置を第2プラント装置とするとき、前記第1プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である運転実績データと、前記第1プラント装置の前記運転情報の時系列の予定である運転予定データと、第2プラント装置の運転状況を表す運転情報の時系列の履歴である第2プラント装置運転実績データと、基準劣化モデルと、を取得するデータ取得部と、取得された前記運転実績データ、前記第2プラント装置運転実績データおよび前記基準劣化モデルに基づいて、固有劣化モデルを生成する関数生成部と、生成された前記固有劣化モデルと取得された前記運転予定データとに基づいて、前記触媒の寿命を予測するための寿命予測データを生成する寿命予測データ生成部と、を備え、前記第2プラント装置は、前記原料油を前記触媒に通油して前記生成油を取得する装置であり、取得された前記第2プラント装置運転実績データは、取得された前記運転実績データと共通の前記運転情報を含み、取得された前記運転実績データは、第1運転期間に関する第1運転実績データであり、前記運転予定データは、第2運転期間に関するデータであり、前記第2運転期間は、前記第1運転期間が経過した後の期間である、情報処理装置である。
【0206】
第13の態様によれば、第1プラント装置の第1運転実績データだけでなく、第2プラント装置の第2プラント装置運転実績データをさらに用いて、固有劣化モデルを生成する。よって、固有劣化モデルの生成に用いるデータ数を増やすことが容易にできる。したがって、第1運転実績データだけでは固有劣化モデルの予測精度に十分ではない場合であっても、固有劣化モデルの予測精度をより向上できる。したがって、第2運転期間における触媒の寿命の予測の精度を向上できる。
【0207】
第14の態様は、前記基準劣化モデルは、入力変数と、劣化寄与パラメータと、出力変数と、を含み、前記入力変数は、前記運転情報の値であり、前記劣化寄与パラメータは、前記入力変数が前記触媒の劣化の寄与する度合を表すパラメータであり、前記出力変数は、劣化度に関する値であり、前記関数生成部は、前記第1運転実績データに基づいて、前記劣化寄与パラメータの値を決定することで前記固有劣化モデルを生成する、第12の態様又は第13の態様に記載の情報処理装置である。
【0208】
第14の態様によれば、基準触媒劣化モデルの劣化寄与パラメータの値を決定することにより固有触媒劣化モデルを生成できるため、固有触媒劣化モデルを少ない演算量で生成できる。
【0209】
本開示の態様は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も前述の内容に限定されるものではない。各実施形態における構成要素は、適切に組み合わされて適用されてもよい。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0210】
1 情報処理システム
100 情報処理装置
300 ユーザ端末
400 ネットワーク
110 処理部
111 データ取得部
112 関数生成部
113 寿命予測データ生成部
114 データ出力部
120 記憶部
130 通信部
200 データ収集装置
210 データベース
300 ユーザ端末
310 表示部
400 ネットワーク
500 プラント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11