(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146062
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光アイソレータの製造方法、光アイソレータおよび偏光ガラス
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241004BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20241004BHJP
G02B 27/28 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/115
G02B27/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058765
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】横尾 芳篤
(72)【発明者】
【氏名】米田 嘉隆
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2K009
【Fターム(参考)】
2H149BA02
2H149BA17
2H149DA06
2H149EA02
2H149FA41W
2H149FA42Z
2H149FC02
2H149FD47
2H199AA02
2H199AA13
2H199AA23
2H199AA64
2H199AA73
2H199AA92
2K009AA02
(57)【要約】
【課題】従来よりも薄型でありながらも、反射防止膜の膜応力の影響が極めて少ない光アイソレータの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の光アイソレータの製造方法は、ファラデー回転子と、該ファラデー回転子に取り付けられる偏光ガラスと、を備える光アイソレータの製造方法であって、ファラデー回転子に偏光ガラスを接着する工程と、接着された偏光ガラスの表面に反射防止膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファラデー回転子と、該ファラデー回転子に取付けられる偏光ガラスと、を備える光アイソレータの製造方法であって、
前記ファラデー回転子に前記偏光ガラスを接着する工程と、
前記接着された前記偏光ガラスの表面に反射防止膜を成膜する工程と、
を含む、光アイソレータの製造方法。
【請求項2】
前記反射防止膜を成膜する工程が、相対的に屈折率が低い低屈折率膜と、相対的に屈折率が高い高屈折率膜とを交互に積層する、請求項1に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項3】
前記反射防止膜の膜厚が、400~2000nmである、請求項1又は請求項2に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項4】
前記偏光ガラスの厚さが、0.028~0.20mmである、請求項1に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項5】
前記接着された前記偏光ガラスの反り量が、3μm以下である、請求項1に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項6】
前記反射防止膜を成膜した後に、所定のサイズに成形する工程をさらに含む、請求項1に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項7】
前記偏光ガラスは、偏光軸の方向が0°の方向を向く第1の偏光ガラスと、偏光軸の方向が45°の方向を向く第2の偏光ガラスと、から構成され、
前記偏光ガラスを接着する工程は、前記ファラデー回転子の一方面に前記第1の偏光ガラスを接着し、他方面に前記第2の偏光ガラスを接着する、
請求項1に記載の光アイソレータの製造方法。
【請求項8】
ファラデー回転子と、該ファラデー回転子に貼り合わされた偏光ガラスと、を備える光アイソレータであって、
前記偏光ガラスの厚さが、0.10mm以下であり、
前記偏光ガラスの外側表面にのみ、厚さ650nm以上の反射防止膜を有する、
ことを特徴とする光アイソレータ。
【請求項9】
前記偏光ガラスの反り量が、3μm以下である、ことを特徴とする請求項8に記載の光アイソレータ。
【請求項10】
前記偏光ガラスの前記外側表面と対向する内側表面に、前記偏光ガラスの反りを抑制する機能膜を有さない、ことを特徴とする請求項8に記載の光アイソレータ。
【請求項11】
一方面がファラデー回転子に貼り合わされる光アイソレータ用の偏光ガラスであって、
厚さが0.028~0.20mmであり、
他方面上に、前記ファラデー回転子に貼り合わされた後に成膜された厚さ400~2000nmの反射防止膜を有する、
ことを特徴とする偏光ガラス。
【請求項12】
前記偏光ガラスの反り量が、3μm以下である、請求項11に記載の偏光ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータの製造方法、光アイソレータ、および光アイソレータに使用される偏光ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信や計測等に用いられる半導体レーザーモジュールには、反射戻り光が半導体レーザー素子に戻り、レーザー発振が不安定になるのを防止するため、光アイソレータが用いられている。
典型的な光アイソレータは、2枚の偏光子の間に平板状のファラデー回転子を設置し、これら3つの部品を筒状の磁石内に収納することにより構成されている。通常、ファラデー回転子は飽和磁界内において所定の波長をもつ光の偏光面を45°回転する厚みに調整され、また2つの偏光子はそれぞれの透過偏光方向が45°回転方向にずれるように回転調整されて構成されている。
【0003】
また、このような光アイソレータにおいては、偏光子表面の反射光がノイズ等の原因になることから、使用される光の波長帯(例えば、光通信で使用される場合は、1250~1650nm波長帯)に対する反射率が所定値以下(例えば、0.3%以下)となるように、偏光子表面に反射防止膜を設ける構成も実用に供されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような光アイソレータは、一般的に、
(1)偏光子(偏光ガラス)を製造する、
(2)上記(1)の偏光子の一方面上に反射防止膜を成膜する、
(3)ファラデー回転子の両面に上記(2)の偏光子を接着する、
といった工程によって製造される。
【0005】
しかしながら、このように、偏光子の一方面上に反射防止膜を成膜すると、膜応力により偏光子が反ることがある。そのため、ファラデー回転子に偏光子を接着する作業が困難になると共に、ファラデー回転子から偏光子が剥離(脱落)するリスクも懸念されている。
また、近年、光アイソレータを小型化するために、従来よりもさらに薄い(例えば、厚さ:0.1mm以下の)偏光子が求められているところ、偏光子を薄くすると、反射防止膜の膜応力の影響がさらに顕著となるため(つまり、偏光子の反り量が増大するため)、接着作業はより困難になり、また偏光子の剥離のリスクも増大することになる。
【0006】
図3は、発明者らが行った実験結果を示すものであり、偏光ガラスの厚さと偏光ガラスの反り量(つまり、反射防止膜の膜応力の影響)との関係を示すものである。
この実験では、厚さの異なる11mm角の偏光ガラスのサンプル(厚さ:0.1mm、0.12mm、0.2mm)に対し、各サンプルの一方面上にTa
2O
5とSiO
2の交互の層からなる合計8層の反射防止膜(膜厚:600nm)を形成し、各サンプルの面粗さを測定器(Zygo社製 Model:Newview 8200)で測定し、最大高さを反り量とした。
【0007】
図3に示すように、偏光ガラスの厚さが薄くなるに従い、反射防止膜の膜応力の影響が無視できなくなり、反り量が増大するのが分かる。
【0008】
そこで、かかる問題を解決するため、偏光子の他方面(反射防止膜とは反対側の面)上に、偏光子の反りを抑制するための(つまり、反射防止膜の膜応力を打ち消すための)反り抑制膜を成膜することも提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-54323
【特許文献2】特開2020-91443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2の構成においては、(i)反り抑制膜が増える分、コストが増大する、(ii)反射防止膜の厚さのばらつき(公差)と反り抑制膜の厚さのばらつき(公差)が存在するため、膜応力の影響(つまり、偏光子の反り)を完全に排除することはできない、といった問題がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも薄型でありながらも、偏光ガラスの反り量が極めて少ない光アイソレータの製造方法を提供すると共に、光アイソレータを提供することである。また、そのような光アイソレータに使用される偏光ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の光アイソレータの製造方法は、ファラデー回転子と、該ファラデー回転子に取付けられる偏光ガラスと、を備える光アイソレータの製造方法であって、ファラデー回転子に偏光ガラスを接着する工程と、接着された偏光ガラスの表面に反射防止膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
このような方法によれば、反射防止膜が形成される前の偏光ガラスをファラデー回転子に接着し、その後、偏光ガラスの表面に反射防止膜を形成しているため(つまり、偏光ガラスに反りが発生する前にファラデー回転子に接着されるため)、偏光ガラスは、ほぼ(実質的に)反りの無い状態でファラデー回転子に接着固定される。このため、偏光ガラスは強固にファラデー回転子に取付けられる(つまり、剥離のリスクが低減される)。
また、偏光ガラスが、ほぼ反りの無い状態で取付けられるため、反射防止膜が最大限に(設計通りに)機能する。
また、偏光ガラスが、ほぼ反りの無い状態で取付けられるため、偏光ガラスを極めて薄く構成することが可能となる。
また、偏光ガラスがファラデー回転子に取付けられた状態で反射防止膜が形成されるため、偏光ガラスでの反りの発生を考慮する必要がなくなり、従来よりも膜厚の厚い反射防止膜を形成することができ、また反射防止膜の膜構成、膜厚を光アイソレータの仕様に応じて自由に変更することができる。
【0014】
また、反射防止膜を成膜する工程が、相対的に屈折率が低い低屈折率膜と、相対的に屈折率が高い高屈折率膜とを交互に積層することが望ましい。
【0015】
また、反射防止膜の膜厚が、400~2000nmであることが望ましい。
【0016】
また、偏光ガラスの厚さが、0.028~0.20mmであることが望ましい。
【0017】
また、接着された偏光ガラスの反り量が、3μm以下であることが望ましい。
【0018】
また、反射防止膜を成膜した後に、所定のサイズに成形する工程をさらに含むことが望ましい。
【0019】
また、偏光ガラスは、偏光軸の方向が0°の方向を向く第1の偏光ガラスと、偏光軸の方向が45°の方向を向く第2の偏光ガラスと、から構成され、偏光ガラスを接着する工程は、ファラデー回転子の一方面に第1の偏光ガラスを接着し、他方面に第2の偏光ガラスを接着することが望ましい。
【0020】
また、別の観点からは、本発明の光アイソレータは、ファラデー回転子と、該ファラデー回転子に貼り合わされた偏光ガラスと、を備える光アイソレータであって、偏光ガラスの厚さが、0.10mm以下であり、偏光ガラスの外側表面にのみ、厚さ650nm以上の反射防止膜を有する、ことを特徴とする。また、この場合、偏光ガラスの反り量が、3μm以下であることが望ましい。また、偏光ガラスの外側表面と対向する内側表面に、偏光ガラスの反りを抑制する機能膜を有さないことが望ましい。
【0021】
また、別の観点からは、本発明の偏光ガラスは、一方面がファラデー回転子に貼り合わされる光アイソレータ用の偏光ガラスであって、厚さが0.028~0.20mmであり、他方面上に、ファラデー回転子に貼り合わされた後に成膜された厚さ400~2000nmの反射防止膜を有する、ことを特徴とする。また、この場合、偏光ガラスの反り量が、3μm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、従来よりも薄型でありながらも、偏光ガラスの反り量が極めて少ない光アイソレータの製造方法が提供され、そのような光アイソレータが実現される。また、そのような光アイソレータに使用される偏光ガラスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る光アイソレータの構成を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る光アイソレータの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、従来例の偏光ガラスの厚さと偏光ガラスの反り量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
(光アイソレータの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る光アイソレータ1の構成を説明する模式図であり、
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は側断面図である。
図1に示すように、本実施形態の光アイソレータ1は、ファラデー回転子10の両面に、一対の偏光素子20、30を光軸が共通するように接合したものである。本実施形態の光アイソレータ1を用いる波長帯は特に限定されず、例えば、1250~1650nmの波長帯、または、1650nm以上の波長帯の光に用いることができる。なお、本実施形態においては、偏光素子20の偏光軸と偏光素子30の偏光軸とが互いに45°傾いている。また、本実施形態の光アイソレータ1のサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、偏光素子20の側から見て0.4~0.7mm角である。
【0026】
ファラデー回転子10は、非磁性ガーネットの基板上に、液相エピタキシャル法(LPE法)、スパッタ法、エアロゾルデポジション法等により磁気光学薄膜(例えば、Bi置換型磁性ガーネット膜)を成膜することで作製された素子であり、互いに対向する第1主面11と、第2主面12と、を有している。なお、本実施形態のファラデー回転子10の1550nmにおける屈折率は2.34であり、ファラデー回転子10の厚みは0.35~0.5mmとした。
【0027】
一対の偏光素子20、30は、ファラデー回転子10の第1主面11および第2主面12にそれぞれ取り付けられる光学素子であり、それぞれ、偏光ガラス21、31と、反射防止膜22、32と、を備えている。本実施形態においては、偏光ガラス21は、偏光軸が特定の第1の方向(0°の方向)の偏光ガラスであり、偏光ガラス31は、その偏光軸が偏光ガラス21の偏光軸に対して45°をなす第2の方向(45°の方向)の偏光軸を有する偏光ガラスである。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の偏光ガラス21、31は、矩形板状(例えば、0.7mm(横方向)×0.7mm(縦方向)、厚さ:0.028~0.20mm)の外観を呈しており、表面及び裏面に両表面略針状の多数の金属微粒子が平行に配向分散された金属層(不図示)が形成され、金属層間に金属ハロゲン化物微粒子を含む金属ハロゲン化物層(不図示)が形成されている。
金属層は、後述の還元工程によって、銀又は銅からなる針状金属微粒子が析出されて形成される、所定の厚さ(例えば、0.010~0.045mm)の層である。
また、金属ハロゲン化物層は、後述の還元工程によって金属層が形成されることによって内部に形成される、所定の厚さ(例えば、0.001~0.060mm)の層である。
【0029】
反射防止膜22、32は、例えば、相対的に屈折率が低い低屈折率膜(例えば、SiO2:屈折率1.46)と、相対的に屈折率が高い高屈折率膜(例えば、Ta2O5:屈折率2.1、TiO2:屈折率2.35)とが交互に多層に積層されたものであり、各層の厚さを選定することによって、目的とする反射率の分布曲線を得るように構成したものである。なお、本実施形態においては、反射防止膜22および反射防止膜32は同様の構成であり、例えば、膜厚:400~800nmの8層構造であり、これによって波長1250~1650nmの広い帯域で反射率:0.3%以下に抑えている。
なお、本実施形態の反射防止膜22、32は、偏光ガラス21をファラデー回転子10に接着した後に、偏光ガラス21、31の表面に成膜されるものであるため(詳細は後述)、反射防止膜22、32によって膜応力が発生することはない。従って、反射防止膜22、32の膜構成、膜厚は、光アイソレータ1の仕様(例えば、レーザ光の中心波長、帯域幅等)に応じて適宜変更することができ、例えば、膜厚は、400~2000nmの範囲で自由に設定することができる。
【0030】
(光アイソレータの製造方法)
次に、本実施形態の光アイソレータ1の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る光アイソレータ1の製造方法を示すフローチャート(ステップ101~107)である。
本実施形態の光アイソレータ1は、以下の手順によって製造される。
1.偏光ガラス21、31を準備(製造)する(偏光ガラス21、31の製造工程)。
2.ファラデー回転子10を準備し、ファラデー回転子10に偏光ガラス21、31を接着する(接着工程)。
3.反射防止膜22、32を偏光ガラス21、31の表面にそれぞれ成膜する(成膜工程)。
4.所定のサイズに成形する(成形工程)。
以下、各手順(工程)について詳述する。
【0031】
[1.偏光ガラス21、31の製造工程]
本実施形態の偏光ガラス21、31は、以下の手順によって製造される。
(1)銅又は銀を含む所定のガラス材料を所望の組成になるように調合し、それらを約1450℃で溶融した後室温まで除冷する(ガラス基体の製造工程)。
(2)熱処理を施すことにより、塩化第一銅又は塩化銀の微粒子をガラス中に析出させる(金属ハロゲン化物微粒子の析出工程)。
(3)機械加工により適当な形状(例えば、120×250×4mm)を有するプリフォームを作製する(プリフォーム作製工程)。
(4)プリフォームを所定の条件で加熱延伸し、ガラスシート(例えば、幅:約18mm、厚さ:約0.5mm)を得る(ガラスの延伸工程)。
(5)ガラスシートを切断、両面研磨して両面研磨品(例えば、11mm角、厚さ:0.028~0.20mm)を作製する(研磨品作製工程)。
(6)研磨品を水素雰囲気中で還元する(還元工程)。
還元工程により、針状の金属(銅又は銀)微粒子が析出され、偏光ガラス21、31内に金属層(不図示)及び金属ハロゲン化物層(不図示)が形成され、偏光ガラス21、31が得られる(
図2:ステップ101)。なお、上述したように、偏光ガラス21は第1の方向(0°の方向)の偏光軸を有し、偏光ガラス31は第2の方向(45°の方向)の偏光軸を有するものとなっている。また、本実施形態においては、偏光ガラス21、31の厚さを0.028~0.20mmの範囲としているが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
【0032】
[2.接着工程]
接着工程は、ファラデー回転子10を準備し、ファラデー回転子10の第1主面11および第2主面12に偏光ガラス21、31をそれぞれ接着する工程である。具体的には、ファラデー回転子10の第1主面11および第2主面12に、エポキシテクノロジー社製:EPO-TEK 353ND(屈折率1.5694@589nm)有機接着剤を塗布し、偏光ガラス21、31を位置精度よく重ね合わせ、150℃で1時間キュア(熱硬化)して固定する(
図2:ステップ103)。
【0033】
[3.成膜工程]
成膜工程は、接着された偏光ガラス21、31の表面に反射防止膜22、32をそれぞれ形成する工程である。具体的には、Ta
2O
5とSiO
2の交互の層からなる合計8層の反射防止膜22、32(膜厚:400~800nm)をイオンビームアシスト蒸着(以下、IAD)により成膜する(
図2:ステップ105)。なお、この反射防止膜は、光通信で使用される1250~1650nm波長帯の光に対する反射率が0.3%以下となるワイドバンドに対応した設計である。
【0034】
[4.成形工程]
成形工程は、所定のサイズに成形する工程であり、本実施形態においては、例えば、0.4~0.7mm角に切断して、本実施形態の光アイソレータ1を得る(
図2:ステップ107)。
【0035】
このように、本実施形態の光アイソレータ1は、反射防止膜22、32が形成される前の偏光ガラス21、31をファラデー回転子10に接着し、その後、偏光ガラス21、31の表面に反射防止膜22、32を形成している。
従って、本実施形態の製造方法によれば、偏光ガラス21、31は、ほぼ(実質的に)反りの無い状態(例えば、3μm以下)でファラデー回転子10に接着固定されるため、偏光ガラス21、31は強固にファラデー回転子10に取付けられる(つまり、剥離のリスクが低減される)。
【0036】
また、偏光ガラス21、31が、ほぼ反りの無い状態(例えば、反り量:3μm以下)で取付けられるため、反射防止膜22、32が最大限に(設計通りに)機能することになる。
【0037】
また、偏光ガラス21、31が、ほぼ反りの無い状態(例えば、3μm以下)で取付けられるため、偏光ガラス21、31を極めて薄く(例えば、好ましくは0.028~0.10mm、さらに好ましくは0.028~0.050mm)構成することが可能となる。
【0038】
また、偏光ガラス21、31がファラデー回転子10に取付けられた状態で反射防止膜22、32が形成されるため、偏光ガラス21、31での反りの発生を考慮する必要がなくなり、従来よりも膜厚の厚い(例えば、400~2000nm、好ましくは650~2000nm、より好ましくは800~2000nmの範囲)反射防止膜を形成することができる。また、反射防止膜22、32の膜構成、膜厚を光アイソレータ1の仕様に応じて自由に変更することができる。
【0039】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0040】
例えば、本実施形態の光アイソレータ1は、一対の偏光素子20、30を有するものとして説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、いずれか一方を有するものであってもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、偏光ガラス21、31の表面に反射防止膜22、32を形成したが、反射防止膜に代えて、または反射防止膜に加えて、他の機能膜(例えば、バンドパスフィルタ等)を形成してもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、成膜工程の後に成形工程を行っているが、予め所定サイズのファラデー回転子10、偏光ガラス21、31を準備すれば、成形工程は必ずしも必要ではない。
【0043】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 :光アイソレータ
10 :ファラデー回転子
11 :第1主面
12 :第2主面
20 :偏光素子
21 :偏光ガラス
22 :反射防止膜
30 :偏光素子
31 :偏光ガラス
32 :反射防止膜