(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146066
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 201N
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058771
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】福井 章二
(72)【発明者】
【氏名】河崎 淳一
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部電極層と誘電体層との間に剥がれが生じにくい電子部品を提供する。
【解決手段】厚さ方向に対向する主面、上記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面並びに厚さ方向及び幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層10と誘電体層20とが厚さ方向に交互に積層された直方体の積層体と、積層体の幅方向における両側面をそれぞれ覆うサイドマージンと、からなる素体と、素体の長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を備える電子部品であって、積層体は、厚さ方向において内部電極層に挟まれる部分のうち積層体の幅方向の端部に位置する第1部分301と、厚さ方向において上記内部電極層に挟まれる部分のうち積層体の幅方向の中央に位置する第2部分302と、を有し、第1部分に含まれる誘電体グレイン31の平均粒径が、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に対向する主面、前記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、前記厚さ方向及び前記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層と誘電体層とが前記厚さ方向に積層された直方体の積層体と、前記積層体の前記幅方向における両側面をそれぞれ覆うサイドマージンと、からなる素体と、
前記素体の前記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、前記内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を備える電子部品であって、
前記積層体は、前記厚さ方向において前記内部電極層に挟まれる部分のうち前記積層体の前記幅方向の端部に位置する第1部分と、前記厚さ方向において前記内部電極層に挟まれる部分のうち前記積層体の前記幅方向の中央に位置する第2部分と、を有し、
前記第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、前記第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記積層体は、さらに、前記厚さ方向において前記誘電体層に挟まれる部分のうち前記幅方向の端部に位置する第3部分を有し、
前記内部電極層の前記幅方向の端部の少なくとも一部が、前記第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、前記第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記内部電極層の端部の全部が、前記第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われている、請求項2又は3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記内部電極層の厚みよりも大きい、請求項2又は3に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、200nm以上、1000nm以下である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項7】
厚さ方向に対向する主面、前記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、前記厚さ方向及び前記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層となる導電性ペースト層と誘電体層となる誘電体セラミック層とが前記厚さ方向に積層され、且つ、前記側面及び前記端面に前記導電性ペースト層が露出した直方体の積層体前駆体を準備する積層体前駆体準備工程と、
前記積層体前駆体の前記側面を加熱して、前記積層体前駆体の前記側面に露出した前記導電性ペースト層を除去するとともに、前記積層体前駆体の前記側面に露出した前記導電性ペースト層に隣接する前記誘電体セラミック層に含まれる誘電体グレインを粒成長させる側面加熱工程と、
加熱された前記積層体前駆体の前記幅方向の両側面にそれぞれサイドマージンを形成するサイドマージン形成工程と、
サイドマージンを形成した前記積層体前駆体を焼成して素体を得る焼成工程と、
前記素体の前記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、内部電極層と電気的に接続される外部電極を形成する外部電極形成工程と、
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記側面加熱工程では、前記積層体前駆体の側面にフラッシュライトを照射する、請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記側面加熱工程では、前記積層体前駆体の前記側面を1000℃以上、1500℃未満の温度まで加熱する、請求項7又は8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
粒成長した前記誘電体グレインの平均粒径は、200nm以上、1000nm以下である、請求項7又は8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記側面加熱工程では、粒成長させた前記誘電体グレインによって、前記導電性ペースト層の側面の少なくとも一部を覆う、請求項7又は8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記側面加熱工程では、粒成長させた前記誘電体グレインによって、前記導電性ペースト層の側面の全部を覆う、請求項7又は8に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部電極層と誘電体層とを積層した積層体を備えるセラミックコンデンサ等の電子部品には、内部電極層の周囲を保護するための保護部が設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、内部電極と誘電体層とを積層した積層体を準備し、積層体の側面に保護部となるサイドマージン部を設けたあと、端面に外部電極を形成する積層セラミックコンデンサの製造方法が開示されている。また、特許文献1には、積層体を製造する方法として、大面積の内部電極と大面積の誘電体層となるシートを積層した後、個片化して多数の積層体を一度に製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、積層体を構成する内部電極と誘電体層とは物性が異なるため、内部電極と誘電体層との間で剥がれが生じやすいといった問題があった。この問題は特に、積層体を個片化する際や、サイドマージン部を形成する際に生じやすかった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、内部電極層と誘電体層との間に剥がれが生じにくい電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品は、厚さ方向に対向する主面、上記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、上記厚さ方向及び上記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層と誘電体層とが上記厚さ方向に積層された直方体の積層体と、上記積層体の上記幅方向における両側面をそれぞれ覆うサイドマージンと、からなる素体と、上記素体の上記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、上記内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を備える電子部品であって、上記積層体は、上記厚さ方向において上記内部電極層に挟まれる部分のうち上記積層体の上記幅方向の端部に位置する第1部分と、上記厚さ方向において上記内部電極層に挟まれる部分のうち上記積層体の上記幅方向の中央に位置する第2部分と、を有し、上記第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、上記第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の電子部品の製造方法は、厚さ方向に対向する主面、上記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、上記厚さ方向及び上記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層となる導電性ペースト層と誘電体層となる誘電体セラミック層とが上記厚さ方向に積層され、且つ、上記側面及び上記端面に上記導電性ペースト層が露出した直方体の積層体前駆体を準備する積層体前駆体準備工程と、上記積層体前駆体の上記側面を加熱して、上記積層体前駆体の上記側面に露出した上記導電性ペースト層を除去するとともに、上記積層体前駆体の上記側面に露出した上記導電性ペースト層に隣接する上記誘電体セラミック層に含まれる誘電体グレインを粒成長させる側面加熱工程と、加熱された上記積層体の上記幅方向における両側面にそれぞれサイドマージンを形成するサイドマージン形成工程と、サイドマージンを形成した上記積層体前駆体を焼成して素体を得る焼成工程と、上記素体の上記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、内部電極層と電気的に接続される外部電極を形成する外部電極形成工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部電極層と誘電体層との間に剥がれが生じにくい電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の電子部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す積層体のさらなる部分拡大図において、誘電体グレインの粒径の違いを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の電子部品の別の一例において、誘電体グレインの粒径の違いを模式的に示す、積層体のWT面の部分断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の電子部品のさらに別の一例において、誘電体グレインの粒径の違いを模式的に示す、積層体のWT面の部分断面図である。
【
図8】
図8は、側面加熱工程を実施する前の積層体前駆体における誘電体グレインの様子を模式的に示すWT面の部分断面図である。
【
図9】
図9は、側面加熱工程を実施した後の積層体前駆体における誘電体グレインの様子を模式的に示すWT面の部分断面図である。
【
図10】
図10は、サイドマージン形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、焼成工程により準備される素体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、外部電極形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電子部品及び電子部品の製造方法について説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば、「対向」、「直交」等)及び要素の形状(例えば、「直方体」等)を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に平等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0013】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比等の縮尺等は、実際の製品と異なる場合がある。
【0014】
本発明の電子部品は、厚さ方向に対向する主面、上記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、上記厚さ方向及び上記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層と誘電体層とが上記厚さ方向に積層された直方体の積層体と、上記積層体の上記幅方向における両側面をそれぞれ覆うサイドマージンと、からなる素体と、上記素体の上記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、上記内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を備える電子部品であって、上記積層体は、上記厚さ方向において上記内部電極層に挟まれる部分のうち上記積層体の上記幅方向の端部に位置する第1部分と、上記厚さ方向において上記内部電極層に挟まれる部分のうち上記積層体の上記幅方向の中央に位置する第2部分と、を有し、上記第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、上記第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする。
【0015】
図1は、本発明の電子部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【0016】
図1に示す電子部品1は、厚さ方向(
図1中、矢印Tで示す方向)に対向する主面である第1主面50a及び第2主面50b、厚さ方向に直交する幅方向(
図1中、矢印Wで示す方向)に対向する側面である第1側面50c及び第2側面50d、並びに、厚さ方向及び幅方向に直交する長さ方向(
図1中、矢印Lで示す方向)に対向する端面である第1端面50e及び第2端面50fを備える直方体の素体50と、素体50の第1端面50e及び第2端面50fをそれぞれ覆う第1外部電極70e及び第2外部電極70fを備える。
【0017】
第1外部電極70eは、素体の第1端面50eの他に、第1主面50a、第2主面50b、第1側面50c及び第2側面50dの一部を、第1端面50eから延伸して回り込むように覆っている。
第2外部電極70fは、素体の第2端面50fの他に、第1主面50a、第2主面50b、第1側面50c及び第2側面50dの一部を、第2端面50fから延伸して回り込むように覆っている。
第1外部電極70eと第2外部電極70fは、第1主面50a、第2主面50b、第1側面50c、第2側面50dの表面の一部をそれぞれ覆っているが、互いに接触していない。
【0018】
図2は、
図1に示す電子部品のA-A線断面図である。
図2に示す断面図は、
図1に示す電子部品1の幅方向(W)及び厚さ方向(T)に平行な断面であるため、当該断面をWT断面ともいう。
【0019】
図2に示すように、素体50は、積層体30と、積層体30の幅方向の側面である第1側面30c及び第2側面30dをそれぞれ覆う、第1サイドマージン40c及び第2サイドマージン40dと、を有している。
【0020】
積層体30は、内部電極層10及び誘電体層20が厚さ方向に積層されてなる。
内部電極層10は、積層体30の第1側面30c及び第2側面30dにそれぞれ露出している。
【0021】
誘電体層20は、中間誘電体層21と、上層誘電体層22と、下層誘電体層23とを有する。
中間誘電体層21は、2つの内部電極層10に挟まれている部分の誘電体層20である。
上層誘電体層22は、1つの内部電極層10に隣接し、積層体30の第1主面30aの側に位置する誘電体層20である。
下層誘電体層23は、1つの内部電極層10に隣接し、積層体30の第2主面30bの側に位置する誘電体層20である。
【0022】
なお、
図2に示す電子部品1では、積層体30の第1側面30c及び第2側面30dにそれぞれ内部電極層10が露出しているが、本発明の電子部品においては、積層体の第1側面及び第2側面に内部電極層が露出していなくてもよい。
【0023】
第1サイドマージン40cは、積層体30の第1側面30cの全部を覆っている。すなわち、積層体30を構成する誘電体層20のうち、上層誘電体層22及び下層誘電体層23の第1側面30c側の側面も、第1サイドマージン40cにより覆われている。
同様に、上層誘電体層22及び下層誘電体層23の第2側面30d側の側面も、第2サイドマージン40dにより覆われている。
【0024】
なお、積層体30と第1サイドマージン40c、及び、積層体30と第2サイドマージン40dとの境界は、電子部品のWT断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際に、界面が形成されていることや、粒径が異なっていることなどから判断することができる。
【0025】
図3は、
図1に示す電子部品のB-B線断面図である。
図3に示す断面図は、電子部品1の長さ方向(L)及び厚さ方向(T)に平行な断面であるため、当該断面をLT断面ともいう。
【0026】
図3に示すように、内部電極層10は、素体50の第1端面50eに露出し、第1外部電極70eと電気的に接続される第1内部電極層10eと、素体50の第2端面50fに露出し、第2外部電極70fと電気的に接続される第2内部電極層10fと、を有する。
【0027】
素体50の第1端面50eには、積層体30の第1端面30e及びサイドマージン(図示しない)が露出している。そのため、素体50の第1端面50eのうち、積層体30が露出している部分は、積層体30の第1端面30eでもある。
従って、第1内部電極層10eは、積層体30の第1端面30eに露出しているともいえる。また、第1外部電極70eは、積層体30の第1端面30eを覆っているともいえる。
【0028】
素体50の第2端面50fには、積層体30の第2端面30f及びサイドマージン(図示しない)が露出している。そのため、素体50の第2端面50fのうち、積層体30が露出している部分は、積層体30の第2端面30fでもある。
従って、第2内部電極層10fは、積層体30の第2端面30fに露出しているともいえる。また、第2外部電極70fは、積層体30の第2端面30fを覆っているともいえる。
【0029】
内部電極層10のうち、中間誘電体層21を介して互いに対向する領域を対向電極部ともいい、対向電極部以外の領域を引出電極部ともいう。
長さ方向における、第1内部電極層10eの第2端面50f側の端部から素体50の第2端面50fまでの距離、及び、第2内部電極層10fの第1端面50e側の端部から素体50の第1端面50eまでの距離をLギャップともいう。
【0030】
以下、本発明の電子部品の各構成の好ましい態様について説明する。
【0031】
[誘電体層]
誘電体層は、誘電体セラミックスを含む。
誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム[Ca(Zr,Ti)O3]、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。
また、これらの成分に、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物等を添加したものであってもよい。
また、さらに、上記成分に加えて、Ho、Dy、Tb等を含んでいてもよい。
【0032】
誘電体層は、誘電体セラミックスの粒子(誘電体グレイン)を主成分としている。
【0033】
誘電体グレインは、コアシェル構造であってもよい。
誘電体グレインの粒径が大きいものほど、コアシェル構造のシェル部分の厚みが厚くなった構造であってもよい。シェル部分の厚みが大きいと、信頼性が向上する。
【0034】
誘電体層の厚みは、中間誘電体層、上層誘電体層、下層誘電体層で異なっていてもよい。
誘電体層のうち、2層の内部電極層に挟まれる領域が、中間誘電体層である。
誘電体層のうち、1層の内部電極層に隣接し、積層体の最も第1主面側に配置される誘電体層が、上層誘電体層である。また、誘電体層のうち、1層の内部電極層に隣接し、誘電体層の最も第2主面側に配置される誘電体層が、下層誘電体層である。
【0035】
中間誘電体層の厚みは、1層あたり、0.3μm以上、0.45μm以下であることが好ましい。
上層誘電体層及び下層誘電体層の厚みは、それぞれ、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0036】
誘電体層の厚みは、以下の方法により測定される。
まず、研磨により積層体のWT断面を露出させ、研磨した後、走査型電子顕微鏡によりその表面を観察する。積層体を幅方向に6等分する5本の線を仮定し、各線上における誘電体層の厚さの平均値を誘電体層の厚さとする。
【0037】
誘電体層の層数は、特に限定されないが、100層以上、600層以下が好ましい。
なお、上層誘電体層及び下層誘電体層の数も、誘電体層の層数に含めるものとする。
【0038】
[内部電極層]
内部電極層を構成する導電材料としては、Ni、Cu、Ag、Pd、Au及びこれらの合金等が挙げられる。
【0039】
内部電極層の厚みは、1層あたり0.3μm以上、0.45μm以下であることが好ましく、0.3μm以上、0.38μm以下であることがより好ましい。
【0040】
内部電極層の層数は、100層以上、600層以下であることが好ましい。
【0041】
内部電極層の厚みは、以下の方法により測定される。
まず、研磨により積層体のWT断面を露出させ、研磨した後、走査型電子顕微鏡によりその表面を観察する。積層体を幅方向に6等分する5本の線を仮定し、各線上における内部電極層の厚さの平均値を内部電極層の厚さとする。
【0042】
内部電極層の積層方向における投影面積は、誘電体層の積層方向における投影面積の80%以上、95%以下であることが好ましい。
【0043】
内部電極層には、誘電体層に含まれる誘電体セラミックスと同一組成系の誘電体セラミックスを含んでいてもよい。
【0044】
内部電極層の表層には、Snが固溶していてもよい。
内部電極層の表層にSnが固溶していると、信頼性が向上する。
【0045】
内部電極層は、積層体の第1端面に露出するが積層体の第2端面に露出しない第1内部電極層と、積層体の第2端面に露出するが積層体の第1端面に露出しない第2内部電極層を有することが好ましい。
第1内部電極層は、積層体の第1端面に露出し、第1外部電極と電気的に接続される。
第2内部電極層は、積層体の第2端面に露出し、第2外部電極と電気的に接続される。
【0046】
第1内部電極層及び第2内部電極層は、厚さ方向に互いに対向する部分である対向電極部と、対向電極部から積層体の第1端面又は第2端面までの引出電極部を有している。
第1内部電極層と第2内部電極層とが、誘電体層を介して対向することで、電子部品がコンデンサとして機能する。
【0047】
第1内部電極層の第2端面側の端部から第2端面までの距離、及び、第2内部電極層の第1端面側の端部から第1端面までの距離を、Lギャップともいう。
Lギャップは、5μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0048】
幅方向における内部電極層の端部の位置は、揃っていることが好ましい。
具体的には、内部電極層の幅方向の端部の位置は、幅方向において1μm以内に収まっていることが好ましい。
例えば、積層体を構成する内部電極層の端部のうち、積層体の第1側面側の端部の位置をみたときに、最も外側に配置される内部電極層の端部の位置と、最も内側に配置される内部電極層の端部の位置とが、幅方向において1μm以内にあることが好ましい。
同様に、積層体の第2側面側の端部の位置を見たときに、最も外側に配置される内部電極層の端部の位置と、最も内側に配置される内部電極層の端部の位置とが、幅方向において1μm以内にあることが好ましい。
【0049】
本発明の電子部品においては、第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい。
【0050】
積層体は、第1部分及び第2部分を有する。
第1部分は、積層体の内部電極層に挟まれる部分のうち、幅方向の端部に位置する部分である。
第2部分は、積層体の内部電極層に挟まれる部分のうち、幅方向の中央に位置する部分である。
【0051】
第1部分は、積層体の内部電極層に挟まれる部分のうち、積層体の幅方向の一方の端部(積層体の第1側面)から積層体の幅方向の他方の端部(積層体の第2側面)に向かって1μmまでの部分、及び、積層体の幅方向の他方の端部(積層体の第2側面)から積層体の幅方向の一方の端部(積層体の第1側面)に向かって1μmまでの部分であることが好ましい。第2部分は積層体の内部電極層に挟まれる部分のうち、第1部分以外の部分であることが好ましい。
すなわち、積層体をWT断面で見たときに、内部電極層に挟まれる部分のうち、積層体の側面から幅方向に1μmまでの領域が第1部分であり、それ以外の部分が第2部分である。
【0052】
図4は、
図2における積層体の部分拡大図である。
図4に示すように、積層体30は、第1部分301と第2部分302を有する。
【0053】
第1部分301は、2つの内部電極層10に挟まれる部分のうち、積層体30の幅方向の端部に位置する部分である。
第2部分302は、2つの内部電極層10に挟まれる部分のうち、積層体30の幅方向の中央に位置する部分である。
【0054】
第1部分301の幅方向における長さは1μmである。すなわち、内部電極層10に挟まれる部分のうち、積層体30の第1側面30cから第2側面30dに向かう1μmの領域、及び、第2側面30dから第1側面30cに向かう1μmの領域が第1部分301である。
【0055】
積層体30の内部電極層10に挟まれる部分のうち、第1部分301以外の部分が第2部分302である。
【0056】
図5は、
図4に示す積層体のさらなる部分拡大図において、誘電体グレインの粒径の違いを模式的に示す図である。誘電体層を構成する誘電体粒子を、誘電体グレインともいう。
図5に示すように、第1部分301に含まれる誘電体グレイン31の平均粒径は、第2部分302に含まれる誘電体グレイン32の平均粒径よりも大きい。このため、第1部分301に含まれる誘電体グレイン31aが内部電極層10にめり込んでおり、アンカー効果によって誘電体層20と内部電極層10の密着性が向上し、剥離が生じることを防止できる。
【0057】
第1部分に含まれる誘電体グレインのうち、積層体の側面に露出する誘電体グレインと、その内側に配置される誘電体グレインとは、粒径が異なっていてもよい。
例えば、
図5に示す積層体30では、第1部分301に含まれる誘電体グレインのうち、積層体30の第1側面30c又は第2側面30dに露出する誘電体グレインの平均粒径が、第1部分301に含まれる誘電体グレインのうち、積層体の側面に露出しない誘電体グレインの平均粒径よりも大きくなっている。なお、積層体の側面に露出する誘電体グレインが加熱により、周囲の添加材と反応しコアシェル構造を備えていてもいい。
【0058】
第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、10nm以上、200nm未満であることが好ましい。
【0059】
第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、200nm以上、1000nm以下であることが好ましい。
【0060】
誘電体グレイン(誘電体粒子)の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。具体的には、SEMを用いて積層体のWT断面において、積層体の厚さ方向の中央近傍にある中間誘電体層の拡大画像を撮像する。撮像した中間誘電体層の画像において、中間誘電体層を第1部分と第2部分に分け、第1部分及び第2部分からそれぞれ20個の誘電体グレインをランダムに選択し、各誘電体グレインの面積から求めた円相当径の平均値を、当該部分の誘電体グレインの平均粒径とする。なお、誘電体グレインの面積を求める際のSEMの視野は、15μm×15μmとする。ただし、上記視野に不完全に含まれる(一部が表示されていない)誘電体グレインは、粒径を求める対象としない。
【0061】
なお、誘電体グレインが第1部分及び第2部分に跨って配置されている場合、当該誘電体グレインは、第1部分及び第2部分の両方に含まれる誘電体グレインとする。
ただし、第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径、及び、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径を算出する際、第1部分及び第2部分の両方に含まれる誘電体グレインは、粒径を求める対象としない。
【0062】
第1部分に含まれる誘電体グレイン同士は、ネッキングしていてもよい。第1部分において誘電体グレイン同士がネッキングしていると、誘電体グレインの見かけの平均粒径が増加するとともに、内部電極層に対する誘電体グレインのめり込みが強くなるため、内部電極層と誘電体層の密着性が向上し、内部電極層の剥離をより防止することができる。
また、内部電極層を介して対向する2つの第1部分に含まれる誘電体グレイン同士が、互いにネッキングしていてもよい。このとき、ネッキングした誘電体グレインが内部電極層を貫通していることになる。
【0063】
第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径の2倍以上、10倍以下であることが好ましい。
【0064】
第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、内部電極層の厚みよりも大きいことが好ましい。
第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、内部電極層の厚みよりも大きいと、第1部分に含まれる誘電体グレインが内部電極層にめり込みやすくなる。
【0065】
積層体は、さらに、第3部分を有している。
第3部分は、厚さ方向において誘電体層に挟まれた部分のうち積層体の幅方向の端部に位置する部分である。
【0066】
内部電極層の幅方向の端部の少なくとも一部は、第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われていることが好ましい。
【0067】
図6は、本発明の電子部品の別の一例において、誘電体グレインの粒径の違いを模式的に示す、積層体のWT面の部分断面図である。また、
図6は、積層体の第3部分に含まれる誘電体グレインが、内部電極層の幅方向の端部の一部を覆っている例でもある。
【0068】
図6に示す積層体30は、中間誘電体層21で挟まれる部分のうち、幅方向の端部に第3部分303を有している。
第3部分303の幅方向における長さは1μmである。すなわち、誘電体層20に挟まれる部分のうち、積層体30の第1側面30cから第2側面30d側に向かう1μmの領域、及び、第2側面30dから第1側面30c側に向かう1μmの領域が第3部分303である。
【0069】
図6に示すように、内部電極層10の幅方向の端面の一部は、第3部分303に含まれる誘電体グレイン33で覆われている。
図6では、内部電極層10の幅方向の端部のうち、第3部分303に含まれる誘電体グレイン33で覆われている部分を破線で示している。
【0070】
内部電極層の幅方向の端部の少なくとも一部を、第3部分に含まれる誘電体グレインが覆うことで、内部電極層の剥離を抑制する効果が高まる。
【0071】
第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きいことが好ましい。
図6に示す積層体30では、第3部分303に含まれる誘電体グレイン33の平均粒径は、第2部分302に含まれる誘電体グレイン32の平均粒径よりも大きい。
【0072】
第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、200nm以上、1000nm以下であることが好ましい。
【0073】
第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径の2倍以上、10倍以下であることが好ましい。
【0074】
第3部分に含まれる誘電体グレイン同士は、ネッキングしていてもよい。
また、第1部分に含まれる誘電体グレインと第3部分に含まれる誘電体グレインとがネッキングしていてもよい。
【0075】
第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、内部電極層の厚みよりも大きいことが好ましい。
第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、内部電極層の厚みよりも大きいと、第3部分により内部電極層の端面の全部を覆いやすくなる。
【0076】
内部電極層の端部の全部が、第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われていることが好ましい。
内部電極層の端部の全部が、第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われていると、内部電極層の剥離を特に抑制することができる。
【0077】
図7は、本発明の電子部品のさらに別の一例において、誘電体グレインの粒径の違いを模式的に示す、積層体のWT面の部分断面図である。また、
図7は、内部電極層の幅方向の端部の全部を、積層体の第3部分に含まれる誘電体グレインが覆っている例でもある。
【0078】
図7に示す積層体30は、誘電体層20で挟まれる部分のうち、幅方向の端部に第3部分303を有している。
積層体30を構成する内部電極層10の幅方向の端部の全部が、第3部分303に含まれる誘電体グレイン33で覆われている。
図7では、内部電極層10の幅方向の端部のうち、第3部分303に含まれる誘電体グレイン33で覆われている部分を破線で示している。
第3部分303に含まれる誘電体グレイン33の平均粒径は、第2部分302に含まれる誘電体グレイン32の平均粒径よりも大きい。
【0079】
第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径及び第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径と同様の方法で求めることができる。
ただし、第1部分及び第3部分の両方に含まれる誘電体グレインについては、誘電体グレインの外形形状から求められる重心を基準として、第1部分又は第3部分への帰属を判定する。すなわち、誘電体グレインの粒径を求める際には、重心が第1部分に含まれる誘電体グレインは第1部分に含まれる誘電体グレインとして扱い、重心が第3部分に含まれる誘電体グレインは第3部分に含まれる誘電体グレインとして扱う。
なお、誘電体グレインの重心を容易に求めることができない場合には、以下の方法で、第1部分又は第3部分への帰属を判定する。この場合、サイドマージンとの境界に接するグレインを第3部分に含まれる誘電体グレインとして扱い、内部電極層の幅方向端部と積層体の端部とで挟まれた部分に含まれる誘電体グレインを、第1部分に含まれる誘電体グレインとして扱ってもいい。
【0080】
[サイドマージン]
続いて、積層体の側面に形成されるサイドマージンについて説明する。
積層体の側面は、それぞれサイドマージンで覆われている。
積層体の第1側面側に配置されるサイドマージンが、第1サイドマージンである。
積層体の第2側面側に配置されるサイドマージンが、第2サイドマージンである。
【0081】
サイドマージンを構成する材料は、上述した誘電体層と同じ材料を好適に用いることができる。なお、誘電体層を構成する材料とサイドマージンを構成する材料は、互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
なお、サイドマージンと積層体の境界は容易に確認することができる。従って、サイドマージンを構成する材料が誘電体層と同じ材料であったとしても、サイドマージンを構成する誘電体グレインと誘電体層を構成する誘電体グレインは、明確に区別できる場合もある。
【0082】
サイドマージンの厚さは特に限定されないが、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0083】
サイドマージンはそれぞれ、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
サイドマージンの層数は、サイドマージンを構成する粒子の粒径の違いや、境界線(界面)の有無により、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して判断することができる。
【0084】
第1サイドマージン及び第2サイドマージンの厚さの合計と、積層体の幅方向の寸法の合計が、素体の幅方向の長さとなる。
【0085】
[外部電極]
続いて、素体の端面に形成される外部電極について説明する。
素体の端面に外部電極を形成したものが、電子部品である。
【0086】
外部電極は、電子部品を構成する素体の長さ方向の端面である第1端面及び第2端面を覆うように設けられる。
素体の第1端面を覆う外部電極が第1外部電極であり、素体の第2端面を覆う外部電極が第2外部電極である。
【0087】
第1外部電極は、積層体の第1端面に露出する第1内部電極層と電気的に接続される。
第2外部電極は、積層体の第2端面に露出する第2内部電極層と電気的に接続される。
【0088】
外部電極は、下地電極層と、下地電極層上に配置されるめっき層とを含むことが好ましい。
【0089】
下地電極層は、焼付層、樹脂層、薄膜層から選ばれる少なくとも1層を含むことが好ましい。
【0090】
焼付層は、ガラス及び金属を含む導電性ペーストを素体に塗布して焼き付けたものである。
導電性ペーストの焼き付けは、内部電極の焼成と同時に行われてもよく、内部電極を焼成した後に焼き付けてもよい。
【0091】
内部電極層の焼成と同時に導電性ペーストの焼き付けを行う場合、共材として、積層体を構成する誘電体セラミックスと同じ誘電体セラミックスを、30重量%以上、40重量%未満程度の割合で含んでいることが好ましい。
内部電極の焼成と同時に焼き付けを行った焼付層は、ガラスを含んでいる。
【0092】
焼付層に含まれるガラスとしては、例えば、ホウ酸系等のガラスが挙げられる。
焼付層に含まれる金属としては、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Au及びこれらの合金等が挙げられる。
【0093】
焼付層は、複数層であってもよい。
【0094】
樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0095】
樹脂層を構成する導電性粒子としては、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Au及びこれらの合金等を含む粒子が挙げられる
【0096】
樹脂層を構成する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0097】
樹脂層は、素体の端面に直接形成されていてもよい。
樹脂層を設ける場合、上述した焼付層は不要であり、素体の端面に直接樹脂層を設けてもよい。
【0098】
樹脂層は、複数層であってもよい。
【0099】
薄膜層は、スパッタ法や蒸着法等の薄膜形成法により形成された、金属粒子が堆積された厚さ1μm以下の層である。
【0100】
薄膜層を形成する金属粒子としては、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Au及びこれらの合金等を含む粒子が挙げられる。
【0101】
めっき層は、下地電極層の表面にめっき処理を施して形成される層である。
めっき層は、電解めっき処理により形成されてもよく、無電解めっき処理により形成されてもよい。
【0102】
めっき層を構成する導電材料としては、例えば、Ni、Sn、Cu、Ag、Pd、Au及びこれらの合金等が挙げられる。
【0103】
めっき層は、複数層あってもよい。例えば、めっき層は、Niめっき層と、その表面に形成されるSnめっき層の2層構造であってもよい。
Niめっき層は、電子部品を実装する際に、はんだによって下地電極層が侵食されることを防止することができる。
Snめっき層は、電子部品を実装する際に、はんだの濡れ性を向上させ、実装性を向上させることができる。
【0104】
電子部品の長手方向の長さ(L寸法)は、0.1mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
電子部品の幅方向及び高さ方向の寸法(W寸法及びT寸法)は、それぞれ、0.05mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。
なお、電子部品のL寸法、W寸法及びT寸法には、素体だけでなく外部電極も含む。
【0105】
[電子部品の製造方法]
本発明の電子部品の製造方法は、厚さ方向に対向する主面、上記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、上記厚さ方向及び上記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層となる導電性ペースト層と誘電体層となる誘電体セラミック層とが上記厚さ方向に積層され、且つ、上記側面及び上記端面に上記導電性ペーストが露出した直方体の積層体前駆体を準備する積層体前駆体準備工程と、上記積層体前駆体の上記側面を加熱して、上記積層体前駆体の上記側面に露出した上記導電性ペースト層を除去するとともに、上記積層体前駆体の上記側面に露出した上記導電性ペースト層に隣接する上記誘電体セラミック層に含まれる誘電体グレインを粒成長させる側面加熱工程と、加熱された上記積層体前駆体の上記幅方向の両側面にそれぞれサイドマージンを形成するサイドマージン形成工程と、サイドマージンを形成した上記積層体前駆体を焼成して素体を得る焼成工程と、上記素体の上記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、内部電極層と電気的に接続される外部電極を形成する外部電極形成工程と、を有することを特徴とする。
【0106】
[積層体前駆体準備工程]
積層体前駆体準備工程では、積層体前駆体を準備する。
積層体前駆体準備工程としては、内部電極層となる導電性ペースト層と誘電体層となる誘電体セラミック層とが積層されてなる直方体の積層体前駆体を製造する公知の方法を用いることができる。
【0107】
例えば、誘電体シート上に第1内部電極層となる導電性ペーストが塗布された第1のセラミックグリーンシートと、誘電体シート上に第2内部電極層となる導電性ペーストが塗布された第2のセラミックグリーンシートとを準備し、第1内部電極層と第2内部電極層の引き出し方向がそれぞれ異なる向きとなるように積層することでセラミックシート積層体を得ることができる。
【0108】
誘電体シートは、例えば、誘電体セラミックスを含むセラミックスラリーから形成することができる。
【0109】
誘電体シートの表面に、内部電極層となる導電性ペーストを所定のパターンで印刷することによって、第1のセラミックグリーンシート及び第2のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0110】
第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートは、必ずしも交互に積層する必要はなく、必要に応じて、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートの間に、導電性ペーストが塗布されていない誘電体シートを積層してもよい。これにより、第1内部電極層と第2内部電極層の間の距離を調整する事ができる。
【0111】
また、第1のセラミックグリーンシート及び第2のセラミックグリーンシートを積層する際に、最下段及び最上段に、導電性ペーストが塗布されていない誘電体シートを積層することにより、誘電体層のうち、上層誘電体層及び下層誘電体層を形成することができる。
【0112】
セラミックシート積層体は、個片化されていない大判のシートであってもよいし、単一の積層体であってもよい。
セラミックシート積層体が個片化されていない大判のシートである場合、切断し個片化してもよい。
【0113】
得られたセラミックシート積層体、又はこれを個片化したものが、積層体前駆体となる。
【0114】
[側面加熱工程]
側面加熱工程では、積層体前駆体の側面を加熱する。
【0115】
図8は、側面加熱工程を実施する前の積層体前駆体における誘電体グレインの様子を模式的に示すWT面の部分断面図である。
図9は、側面加熱工程を実施した後の積層体前駆体における誘電体グレインの様子を模式的に示すWT面の部分断面図である。
図8に示すように、側面加熱工程を実施する前の積層体前駆体130では、内部電極層となる導電性ペースト層110と誘電体層となる誘電体セラミック層120とが積層されてなる。
【0116】
積層体前駆体130は、第1部分及び第2部分を有する。
ただし、積層体前駆体130の第1部分1301、第2部分1302は、積層体30の第1部分301、及び第2部分302に対応する。
すなわち、後述する焼成工程により積層体30となった際の第1部分301、及び第2部分302の位置は、焼成工程を実施する前の積層体前駆体130における第1部分1301、及び第2部分1302の位置と同じである。
【0117】
第1部分1301は、積層体前駆体130の導電性ペースト層110に挟まれる部分のうち、幅方向の端部に位置する部分である。
第2部分1302は、積層体前駆体130の導電性ペースト層110に挟まれる部分のうち、幅方向の中央に位置する部分である。
【0118】
図8に示すように、側面加熱工程を行う前の積層体前駆体130では、第1部分1301に含まれる誘電体グレイン31の平均粒径と、第2部分1302に含まれる誘電体グレイン32の平均粒径は等しくなっている。
【0119】
これに対して、側面加熱工程を経た積層体前駆体では、
図9に示すように、第1部分1301に含まれる誘電体グレイン31が粒成長し、粒子径が大きくなる。一方で、第2部分1302に含まれる誘電体グレイン32は加熱による影響を受けないため粒成長しない。
その結果、第1部分1301に含まれる誘電体グレイン31の平均粒径が、第2部分1302に含まれる誘電体グレイン32の平均粒径よりも大きくなる。
【0120】
なお、上記
図8及び
図9では示していないが、積層体前駆体は第3部分を有している。積層体前駆体の第3部分の位置は、焼成後の積層体の第3部分の位置と同じである。
【0121】
側面加熱工程では、積層体前駆体の側面を1000℃以上、1500℃未満の温度まで加熱することが好ましく、1000℃以上、1300℃以下の温度まで加熱することがより好ましい。
【0122】
側面加熱工程では、積層体前駆体の側面を、100μ秒以上、2000μ秒以下の時間、1000℃以上、1500℃未満の温度で加熱することが好ましい。
【0123】
積層体前駆体の側面を加熱する方法は特に限定されないが、例えば、フラッシュライトの照射が挙げられる。
【0124】
積層体前駆体の側面にフラッシュライトを照射する場合、加熱の程度は、フラッシュライトに印加する電圧、照射時間及び照射回数により調整することができる。
フラッシュライトの線源(光源)としては、キセノン等が挙げられる。
フラッシュライトに印加する電圧は、1500V以上、2000V以下が好ましい。
【0125】
側面加熱工程によって積層体前駆体の側面が加熱されることで、積層体前駆体の側面近傍にある第1部分に含まれる誘電体グレインが粒成長し、加熱前よりも誘電体グレインの粒径が大きくなる。
一方で、積層体前駆体の側面近傍にない誘電体グレインは、側面加熱工程によって加熱されないから、誘電体グレインの粒径は側面加熱工程前と変わらない。
そのため、誘電体層のうち、積層体前駆体の側面近傍に配置された誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、積層体前駆体の側面近傍に配置されていない誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくなる。
【0126】
積層体前駆体の側面近傍にあり、側面加熱工程によって積層体の第1部分に含まれる誘電体グレインが粒成長する。
そのため、側面加熱工程を実施することで本発明の電子部品を得ることができる。
【0127】
側面加熱工程では、積層体の第1側面及び第2側面の両方を、それぞれ加熱する。
積層体の第1側面と第2側面は、同時に加熱されてもよいし、個別に加熱されてもよい。
【0128】
積層体の第1側面と第2側面を個別に加熱する場合、その順序は特に限定されず、最初に第1側面を加熱し、後で第2側面を加熱してもよいし、最初に第2側面を加熱し、後で第1側面を加熱してもよい。
【0129】
第1側面と第2側面を個別に加熱する場合、例えば、金属上の凹部を複数備えた平板状の治具を準備し、該凹部に、加熱対象面が上面を向くように積層体前駆体を振り込み、上面を加熱する方法が挙げられる。
例えば、特開2020-144700号公報に記載されたセラミックチップ部品の処理方法を用いることで、治具の凹部に、積層体前駆体を加熱対象面が上面を向くように振り込むことができる。
【0130】
側面加熱工程において、積層体前駆体の側面の誘電体グレインが粒成長することにより、粒成長した誘電体グレインによって導電性ペースト層の側面の少なくとも一部を覆ってもよい。また、粒成長した誘電体グレインによって導電性ペースト層の側面の全部を覆ってもよい。
【0131】
側面加熱工程では、粒成長した誘電体グレインの平均粒径が、200nm以上、1000nm以下となるまで、積層体前駆体の表面を加熱することが好ましい。
【0132】
側面加熱工程では、積層体前駆体の側面に露出する導電性ペースト層の一部を除去する。導電性ペースト層の一部を除去する方法としては、例えば、積層体前駆体の側面に露出する導電性ペースト層を加熱により蒸発させる方法が挙げられる。
【0133】
セラミックシート積層体を切断・個片化して得られる積層体前駆体は、切断面において内部電極となる導電性ペーストが変形し、厚さ方向に積層された複数の導電性ペースト層同士が接触してしまうことがある。上記工程により導電性ペースト層の一部を除去することで、切断ダレを除去し、焼成後の積層体において内部電極層の短絡を防止することができる。
【0134】
[サイドマージン形成工程]
サイドマージン形成工程では、加熱された積層体前駆体の幅方向の両側面にそれぞれサイドマージンを形成する。
サイドマージン形成工程としては、サイドマージンを形成する従来公知の方法を用いることができる。
【0135】
サイドマージン形成工程では、例えば、積層体前駆体の幅方向の両側面にサイドマージンとなるサイドマージン形成用シートを貼り付けることで、積層体前駆体の幅方向の両側面にサイドマージンを形成することができる。
【0136】
サイドマージン形成用シートは、例えば、サイドマージンを構成する原料粒子を有機バインダー及び溶媒と混合してサイドマージン用スラリーを準備し、これを平板上に塗布し乾燥させる方法により得ることができる。
サイドマージンを構成する原料粒子としては、誘電体シートを構成する誘電体グレインと同じ材料を公的に用いることができる。
【0137】
[焼成工程]
焼成工程では、サイドマージンを形成した積層体前駆体を焼成して素体を得る。
焼成条件は特に限定されないが、例えば、誘電体セラミックスがチタン酸バリウムの場合、1000~1300℃の温度で数時間焼成すればよい。
焼成は、例えば、還元雰囲気下又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0138】
焼成により、導電性ペースト層は内部電極層となり、誘電体セラミック層は誘電体層となる。また、積層体前駆体は積層体となるため、積層体の両側面にサイドマージンが形成されてなる素体が得られる。
【0139】
図10は、サイドマージン形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図11は、焼成工程により準備される素体の一例を模式的に示す斜視図である。
図10に示すように、サイドマージン形成工程では、積層体前駆体130の第1側面130c及び第2側面130dに、サイドマージンとなるサイドマージン形成用シート140を貼り付ける。続いて、サイドマージンを形成した積層体前駆体を焼成することで、
図11に示す素体50が得られる。
【0140】
素体50は、厚さ方向に対向する第1主面50aと第2主面50b、幅方向に対向する第1側面50c及び第2側面50d、長さ方向に対向する第1端面50e及び第2端面50fを有する直方体の形状を有している。
【0141】
素体に対して、バレルロール等の研磨処理を行ってもよい。
素体に対してバレルロール等の研磨処理を行うことで、素体の角部及び稜線部に丸みを付けることができる。
【0142】
[外部電極形成工程]
外部電極形成工程では、素体の長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、内部電極層と電気的に接続される外部電極を形成する。
【0143】
素体の端面に外部電極を形成する方法は特に限定されず、従来公知の外部電極の形成方法を用いることができる。
【0144】
外部電極形成工程では、例えば、素体の端面に下地電極を形成する下地電極形成工程と、下地電極の表面にめっき層を形成するめっき層形成工程を行うことが好ましい。
【0145】
図12は、外部電極形成工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図11に示す素体50の第1端面50e及び第2端面50fにそれぞれ第1外部電極70e及び第2外部電極70fを形成することで、
図12に示す電子部品1が得られる。
【0146】
第1外部電極70eは、素体50の第1端面50eに露出する第1内部電極層10eと電気的に接続される。
第1外部電極70eは、素体50の第1端面50eの他に、第1主面50a、第2主面50b、第1側面50c及び第2側面50dの一部を、回り込むように覆っていてもよい。
【0147】
第2外部電極70fは、素体50の第2端面50fに露出する第2内部電極層10fと電気的に接続される。
第2外部電極70fは、素体50の第2端面50fの他に、第1主面50a、第2主面50b、第1側面50c及び第2側面50dの一部を、回り込むように覆っていてもよい。
ただし、第1外部電極70eと第2外部電極70fは互いに接しないよう構成される。
【0148】
ただし、外部電極形成工程を、焼成工程を経る前のサイドマージンを形成した積層体前駆体に対して行い、その後焼成することによっても、本発明の電子部品を得ることができる。
特に、外部電極の下地層として焼付層を形成する場合、焼成工程を経る前のサイドマージンを形成した積層体前駆体の第1端面及び第2端面に、ガラス及び金属を含む導電性ペーストを塗布し、焼成することによって、素体の形成と焼付層の形成を同時に行うことができる。
【0149】
本明細書には、以下の事項が記載されている。
【0150】
本開示(1)は、厚さ方向に対向する主面、前記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、前記厚さ方向及び前記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層と誘電体層とが前記厚さ方向に積層された直方体の積層体と、前記積層体の前記幅方向における両側面をそれぞれ覆うサイドマージンと、からなる素体と、
前記素体の前記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、前記内部電極層と電気的に接続される外部電極と、を備える電子部品であって、
前記積層体は、前記厚さ方向において前記内部電極層に挟まれる部分のうち前記積層体の前記幅方向の端部に位置する第1部分と、前記厚さ方向において前記内部電極層に挟まれる部分のうち前記積層体の前記幅方向の中央に位置する第2部分と、を有し、
前記第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、前記第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする電子部品である。
【0151】
本開示(2)は、前記積層体は、さらに、前記厚さ方向において前記誘電体層に挟まれる部分のうち前記幅方向の端部に位置する第3部分を有し、
前記内部電極層の前記幅方向の端部の少なくとも一部が、前記第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われている、本開示(1)に記載の電子部品である。
【0152】
本開示(3)は、前記第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、前記第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、本開示(2)に記載の電子部品である。
【0153】
本開示(4)は、前記内部電極層の端部の全部が、前記第3部分に含まれる誘電体グレインによって覆われている、本開示(2)又は(3)に記載の電子部品である。
【0154】
本開示(5)は、前記第3部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記内部電極層の厚みよりも大きい、本開示(2)~(4)のいずれかに記載の電子部品である。
【0155】
本開示(6)は、前記第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、200nm以上、1000nm以下である、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の電子部品である。
【0156】
本開示(7)は、厚さ方向に対向する主面、前記厚さ方向に直交する幅方向に対向する側面、並びに、前記厚さ方向及び前記幅方向に直交する長さ方向に対向する端面を有し、内部電極層となる導電性ペースト層と誘電体層となる誘電体セラミック層とが前記厚さ方向に積層され、且つ、前記側面及び前記端面に前記導電性ペースト層が露出した直方体の積層体前駆体を準備する積層体前駆体準備工程と、
前記積層体前駆体の前記側面を加熱して、前記積層体前駆体の前記側面に露出した前記導電性ペースト層を除去するとともに、前記積層体前駆体の前記側面に露出した前記導電性ペースト層に隣接する前記誘電体セラミック層に含まれる誘電体グレインを粒成長させる側面加熱工程と、
加熱された前記積層体前駆体の前記幅方向の両側面にそれぞれサイドマージンを形成するサイドマージン形成工程と、
サイドマージンを形成した前記積層体前駆体を焼成して素体を得る焼成工程と、
前記素体の前記長さ方向の両端面をそれぞれ覆い、前記内部電極層と電気的に接続される外部電極を形成する外部電極形成工程と、
を有することを特徴とする電子部品の製造方法である。
【0157】
本開示(8)は、前記側面加熱工程では、前記積層体前駆体の側面にフラッシュライトを照射する、本開示(7)に記載の電子部品の製造方法である。
【0158】
本開示(9)は、前記側面加熱工程では、前記積層体前駆体の前記側面を1000℃以上、1500℃未満の温度まで加熱する、本開示(7)又は(8)に記載の電子部品の製造方法である。
【0159】
本開示(10)は、粒成長した前記誘電体グレインの平均粒径は、200nm以上、1000nm以下である、本開示(7)~(9)のいずれかに記載の電子部品の製造方法である。
【0160】
本開示(11)は、前記側面加熱工程では、粒成長させた前記誘電体グレインによって、前記導電性ペースト層の側面の少なくとも一部を覆う、本開示(7)~(10)のいずれかに記載の電子部品の製造方法である。
【0161】
本開示(12)は、前記側面加熱工程では、粒成長させた前記誘電体グレインによって、前記導電性ペースト層の側面の全部を覆う、本開示(7)~(10)のいずれかに記載の電子部品の製造方法である。
【実施例0162】
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0163】
(実施例1)
[積層体前駆体準備工程]
誘電体としてBaTiO3に有機バインダー、可塑剤および分散媒であるエタノール、トルエンを加えて、PSZボールと共にボールミルにより湿式混合し、シート成形用のセラミックスラリーを作成した。
このセラミックスラリーをドクターブレード法によりシート成形し、矩形のセラミックグリーンシートAを得た。
また、同様の手順でセラミックグリーンシートBを得た。
【0164】
セラミックグリーンシートA上に、Niを導電成分として含む導電性ペーストを印刷し、誘電体シート上に、内部電極層を構成するための導電性ペースト層が形成された、第1のセラミックグリーンシート及び第2のセラミックグリーンシートを形成した。
【0165】
導電性ペースト層が印刷された第1のセラミックグリーンシート及び第2のセラミックグリーンシートを、導電性ペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、上下面をそれぞれセラミックグリーンシートB6枚で挟み、加圧して、個片化して積層体前駆体を得た。
得られた積層体前駆体の両側面には内部電極層となる導電性ペースト層が露出していた。
【0166】
[側面加熱工程]
得られた積層体前駆体の一方の側面にフラッシュライトを照射し、積層体前駆体の側面を加熱した。なお、加熱時の積層体前駆体の側面温度は、フラッシュライトの電圧により変動する。ここでは、フラッシュライトの電圧を、積層体前駆体の側面温度が1000℃程度となるよう調整した。
さらに、加熱されていない積層体前駆体の他方の側面にも同様の条件でフラッシュライトを照射し、加熱を行った。
【0167】
[サイドマージン形成工程]
積層体前駆体準備工程で準備されたセラミックスラリーを用いて、セラミックグリーンシートを作製し、サイドマージン形成用シートとした。
側面加熱工程により側面が加熱された積層体前駆体の両側面に、サイドマージン形成用シートを貼り付けた。
【0168】
[焼成工程]
サイドマージン形成用シートを貼り付けた積層体前駆体を、還元性雰囲気下で、1300℃で数時間加熱し、素体を得た。
【0169】
[外部電極形成工程]
得られた素体の端面にガラスと金属粒子からなるスラリーを塗布した後、800から900℃で数時間焼成し、焼付電極を形成した後、めっき処理によりNi/Snめっき層を形成し、素体の端面に外部電極が形成された実施例1に係る電子部品を得た。
なお、内部電極層の平均厚みは450nmであり、内部電極層の層数は300層であった。
また、上層電極層、中間誘電体層および下層電極層の厚みは、それぞれ0.3~0.4μmであり、誘電体層の層数は、上層電極層、中間電極層および下層誘電体層をあわせて1000層であった。
得られた電子部品の寸法は、外部電極層および公差を考慮して、厚さ0.5mm、高さ0.5mm、長さ1mmであった。
【0170】
(実施例2~5および比較例1~3)
側面加熱工程においてフラッシュライトに印加する電圧を調整して、加熱時の積層体側面の加熱温度を表1のように変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例2~5および比較例2~3に係る電子部品を製造した。
また、側面加熱工程を行わないほかは実施例1と同様の手順で、比較例1に係る電子部品を製造した。
【0171】
【0172】
[第1部分および第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径の測定]
各実施例および各比較例に係る電子部品を、長さ方向の略中央で切断した後、研磨し、WT断面をSEMで撮影して、第1部分および第2部分の誘電体グレインの平均粒径を求めた。結果を表1に示す。
【0173】
[信頼性試験]
各実施例および比較例に係る電子部品をそれぞれ500個用い、絶縁破壊電圧(65V)を下回るが、定格電圧(10V)より高い電圧(25V)を印加した後に、絶縁抵抗値を測定した。測定した絶縁抵抗値が、既定値(45.5MΩ)を下回るサンプルの数を調べた。結果を表1に示す。
内部電極層と誘電体層の間で剥がれが生じると絶縁抵抗値が低下するため、絶縁抵抗値が既定値を下回るサンプルの数が多いほど、内部電極層と誘電体層の間で剥がれが生じやすいといえる。
【0174】
表1の結果より、積層体前駆体の側面を1000℃以上1500℃未満の温度に加熱した実施例1~5については、層間剥がれが抑制できることがわかった。
また実施例1~5では、第1部分に含まれる誘電体グレインが粒成長していることを確認した。側面加熱工程によって第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径が、第2部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくなったことで、内部電極層の幅方向の端部において、内部電極層と誘電体層との密着性が高まり剥がれが抑制できたと考えられる。
【0175】
一方、側面加熱工程を行わなかった比較例1およびフラッシュライトの出力を大きく低下させて、積層体前駆体の端面を400℃で加熱した比較例2については、層関剥がれが抑制できていなかった。これは、側面加熱工程において第1部分に含まれる誘電体グレインが充分に加熱されず、粒成長していないことによると推測できる。
【0176】
なお、比較例3に係る電子部品では、側面加熱工程により導電性ペースト層の一部が蒸発してしまい、電子部品として機能しなかった。また、第1部分に含まれる誘電体グレインの平均粒径の測定も不可能であった。そのため、層関剥がれ評価を行っていない。