(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146071
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
E01C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058779
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅嶋 進弥
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勉
(72)【発明者】
【氏名】早坂 喜憲
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA09
2D052AD01
2D052AD11
2D052BA05
2D052BA20
2D052CA21
2D052CA24
(57)【要約】
【課題】散水状態を視認可能にすると共に、貯水タンクの容量を増加することができる転圧機械を提供する。
【解決手段】車体2の左右両側に左タンク25及び右タンク26を内蔵すると共に、それらの間に中央タンク27を内蔵して、各タンク25~27に前部及び後部転圧輪3f,3rの外周面に散布する水を貯留する。車体2上の右側に運転席9を設け、運転席9の前側位置に、運転席9側と前部転圧輪3f側とを連通させる開口部21を形成する。左タンク25の前端部25cを前部転圧輪3fの上方位置まで延設し、開口部21の形成に伴って右タンク26の前端部26cを前部転圧輪3fの後側に位置させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクを内蔵した車体と、
前記車体の前部に設けられた前部転圧輪と、
前記車体に設けられた運転席と、
を備えた転圧機械において、
前記車体には、前記運転席の前側位置に、前記運転席側と前記前部転圧輪側とを連通させる開口部が形成され、
前記貯水タンクは、車幅方向に分割された第1タンクと第2タンクとを有し、
前記第1タンクは、車幅方向で前記運転席側であり、前記開口部の後側に配置され、
前記第1タンクの前端部は、前記前部転圧輪よりも後側に配置され、
前記第2タンクは、車幅方向で前記運転席の反対側に配置され、
前記第2タンクの前端部は、前記前部転圧輪の上方位置まで延設された
ことを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記運転席は、前記車体の後側に配設され、
前記第2タンクは、前記第1タンクよりも容量が大きく設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記車体は、車幅方向で前記運転席とは反対側に階段状のステップが形成され、
前記第2タンクの後端部は、前記ステップの前側に位置している
ことを特徴とする請求項2に記載の転圧機械。
【請求項4】
前記第1タンクの後端部は、前記第2タンクの後端部よりも後側に延設されている
ことを特徴とする請求項4に記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤローラ等の転圧機械による舗装作業では、転圧輪への舗装材の付着防止のために外周面に散水したり、或いは転圧後の舗装材の冷却のために路面に散水したりしている。また、作業中に貯水タンクの水を使い尽くすと、補給のために作業を中断する必要が生じることから、転圧機械に搭載される貯水タンクには、大容量の貯水タンクが望まれている。そこで、転圧機械には、貯水タンクの前端部を車体の前部、例えば前部転圧輪の上方位置まで延設した貯水タンクを内蔵している場合がある。一方、転圧機械による舗装作業中のオペレータは、散水ノズルからの散水状態を確認するために、転圧輪の上部周辺等を視認する必要がある。ここで、大量の水を貯留するための貯水タンクによりオペレータの視界が遮られて所望の部位を視認し難い場合がある。
【0003】
例えば特許文献1には、前部転圧輪への視認性を改善した転圧機械が開示されている。左右の前部転圧輪の上方位置から転圧輪が視認可能なように、車体前部の左右上部が開口し、その近傍に設けられた確認鏡により、転圧機械に搭乗したオペレータは、運転席から確認鏡に映し出された鏡像により前部転圧輪の上部周辺を視認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の転圧機械は、車体上の左右上部に開口した開口部を形成するために、左右の貯水タンクの前端部がそれぞれ前部転圧輪よりも後側位置に制限され、貯水タンクの容量が減少するという問題がある。その結果として作業中の水の補給頻度が増加し、作業効率が低下してしまう。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、散水状態を視認可能にすると共に、貯水タンクの容量を増加することができる転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械は、貯水タンクを内蔵した車体と、前記車体の前部に設けられた前部転圧輪と、前記車体に設けられた運転席と、を備えた転圧機械において、前記車体には、前記運転席の前側位置に、前記運転席側と前記前部転圧輪側とを連通させる開口部が形成され、前記貯水タンクが、車幅方向に分割された第1タンクと第2タンクとを有し、前記第1タンクが、車幅方向で前記運転席側であり、前記開口部の後側に配置され、前記第1タンクの前端部が、前記前部転圧輪よりも後側に配置され、前記第2タンクが、車幅方向で前記運転席の反対側に配置され、前記第2タンクの前端部が、前記前部転圧輪の上方位置まで延設された
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の転圧機械によれば、散水状態を視認可能にすると共に、貯水タンクの容量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のタイヤローラ及び内部の右タンクを示す右側面図である。
【
図2】タイヤローラ及び内部の左タンクを示す左側面図である。
【
図4】前部転圧輪の散水及び溶剤散布ノズルの周辺を示す詳細図である。
【
図5】タイヤローラ及び内部の中央タンクを示す右側面図である。
【
図6】車両の直進時の開口部を介したオペレータの視界を示す説明図である。
【
図7】車両の左旋回時の開口部を介したオペレータの視界を示す説明図である。
【
図8】車両の右旋回時の開口部を介したオペレータの視界を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をタイヤローラに具体化した一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のタイヤローラ及び内部の右タンクを示す右側面図、
図2は、タイヤローラ及び内部の左タンクを示す左側面図、
図3は、タイヤローラを示す平面図、
図4は、前部転圧輪の散水及び溶剤散布ノズルの周辺を示す詳細図である。以下の説明では、車両に搭乗した運転者を主体として前後、左右及び上下方向を規定する。
【0011】
タイヤローラ1(以下、車両と称する場合もある)の車体2の前部には、走行輪を兼ねた3本のゴム製の前部転圧輪3fが左右方向に並列配置され、車体2からヨーク3を介して操舵可能に支持されている。また車体2の後部には、走行輪を兼ねた4本のゴム製の後部転圧輪3rが左右方向に並列配置され、車体2から図示しないアクスルを介して支持されている。
【0012】
車体2上の前後方向の略中央において、その右側には、フロアプレートによりフロア4が形成され、左側には、車体2の左側面が切り欠かれて階段状のステップ5が形成され、ステップ5を経てオペレータが車両1に乗降可能となっている。フロア4上の前側には、ステアリング6及び前後進レバー7を備えた操作台8が設置され、後側には運転席9が設置されている。運転席9の左側には、隣接して給水ポンプ10が設置され、運転席9の右側面には梯子11が設けられている。運転席9の直上にはルーフスタンド12を介してルーフ13が支持され、以上により車体2上の右側位置に運転室14が構成されている。運転席9に着座したオペレータは、ステアリング6、前後進レバー7、及びフロア4上のペダル15を操作してタイヤローラ1を走行させ、舗装作業中には前部及び後部転圧輪3f,3rにより路面に敷きつめられた舗装材を締め固める。また、給水ポンプ10は、後述する貯水タンク25~27に周辺の池や河川等からの水を補給する際等に使用される。
【0013】
前部及び後部転圧輪3f,3rの上部近傍には、それぞれ散水ノズル17及び溶剤散布ノズル18が配設され、それぞれ車体2内に設けられた図示しない貯水タンク及び溶剤タンクと接続されている。舗装作業時には、前部及び後部転圧輪3f,3rの外周面への舗装材や泥の付着を防止すべく、それぞれの外周面に貯水タンクに貯留された水が散水ノズル17から散布されたり、溶剤タンクに貯留された溶剤が溶剤散布ノズル18から散布されたりする。
【0014】
車体2上の操作台8の前側には、開閉可能なエンジンフード19を備えたエンジンルーム20が画成され、図示はしないが、エンジンルーム内にはHST(Hydro Static Transmission)が搭載されている。HSTの構成は周知のため概略のみを述べるが、エンジンより駆動される油圧ポンプからの作動油により車体2の各部に設置された油圧アクチュエータを駆動する油圧システムである。このHSTにより、後部転圧輪3rの駆動や前部転圧輪3fの操舵等が行われる。
【0015】
車体2上の運転席9の前側位置には、オペレータの視認性を確保するための開口部21が形成されている。開口部21は、車体2のエンジンルーム20の右側が前後に分割されることで形成され、以下、分割された前側の領域を前部構造体24と称する。開口部21の左側はエンジンルーム20の右側面により規定され、開口部21の後側は車体2に形成された斜状の切欠き面2aにより規定され、開口部21の前側は前部構造体24の下部により規定され、開口部21の右側は右方に向けて開放されている。前部構造体24にはHSTの作動油タンク22が内蔵され、その前面には前照灯23が設けられている。
【0016】
結果として、
図1に示すように開口部21は、運転席9側に開口する上部後端21aから前斜め下方へと斜状に延び、その下部前端21bを最も右側の前部転圧輪3fの外周面に相対向させている。このような開口部21を介して運転席9側と前部転圧輪3f側とが連通している。
図1中には、オペレータのアイポイントPからの視線を矢印で示している。このように運転席9に着座したオペレータは、開口部21を介して前部転圧輪3fの上部周辺の状況、例えば前部転圧輪3fの外周面への舗装材や泥の付着状態、或いは各ノズル17,18からの水や溶剤の散布状態を視認可能となっている。また、前部転圧輪3fの外周面のぬれ具合も視認できるため、ぬれ具合に基づき散水がされているか否かが判断できる。
【0017】
オペレータが視認可能な前部転圧輪3fは最も右側のものに限られるが、全ての前部転圧輪3fへの舗装材や泥の付着状態はほぼ等しいと見なせる。また、各前部転圧輪3fの散水ノズル17の回路は同一系統であることから散水状態がほぼ等しいと見なせ、同じく溶剤散布ノズル18の回路も同一系統であることから溶剤の散布状態がほぼ等しいと見なせる。従って、最も右側の前部転圧輪3fを視認することで、他の前部転圧輪3fの状況についても把握できる。
【0018】
また、本実施形態では、車両1の直進時のみならず旋回時にも可能な限り前部転圧輪3fの上部周辺を視認可能なように、前後方向に大きな開口部21を形成している。このため、
図6に示す直進時に、前部転圧輪3fの外周面及び各ノズル17,18の散布状態を視認できるだけでなく、
図7に示す最大舵角での左旋回時には、主として前部転圧輪3fの外周面を視認でき、
図8に示す最大舵角での右旋回時には、主として各ノズル17,18の散布状態を視認できる。従って、前部転圧輪3fの上部周辺を視認可能な機会が直進時に限られないため、より容易に前部転圧輪3fの上部周辺の状況を把握することができる。
【0019】
但し、以上の開口部21の設定に本発明は限定されるものではない。例えば、
図6に示す直進時のみに前部転圧輪3fの上部周辺を視認可能なように、開口部21を前後方向に縮小してもよい。また、このような直進時を想定した開口部21を前方に拡大して、
図7に示す左旋回時に前部転圧輪3fの外周面を視認可能としてもよいし、逆に、直進時を想定した開口部21を後方に拡大して、
図8に示す右旋回時に各ノズル17,18の散布状態を視認可能としてもよい。
【0020】
加えて、本実施形態のように前後方向に大きな開口部21を形成した場合には、前部転圧輪3fの操舵状態も視認できる。HSTによる油圧式の操舵システムでは、ステアリング6の操作量と前部転圧輪3fの操舵角とが一致せず、ステアリング6を中立位置に戻しても操舵角は中立位置に戻らない。このため、確実な操舵のためには、前部転圧輪3fの実際の操舵角を視認しながら操舵することが望ましいが、本実施形態では、開口部21を介して操舵状態を視認できることから実際の操舵角を容易に認識することができる。
【0021】
本実施形態のタイヤローラ1と同じく特許文献1の転圧機械も開口部を備えているが、視認性に関して大きく相違する。即ち、特許文献1は、オペレータが確認鏡を介して前部転圧輪の上部周辺を間接的に視認するため、その視野が狭く且つ小さく視認性が良好とは言い難い。これに対して本実施形態では、前部転圧輪3fの上部周辺を直接的に視認できるため、格段に良好な視認性を実現できる。従って、オペレータは、車両1の運転操作に支障を生じることなく、前部転圧輪3fの上部周辺の状況を迅速且つ容易に把握することができる。
【0022】
一方、以上のような機能を奏する開口部21の形成により車体2は左右非対称の形状をなし、車体2に内蔵されている貯水タンクも左右非対称の構成が採られている。貯水タンクは、車体2内の左側に左タンク25(本発明の「第2タンク」に相当)を配設し、右側に右タンク26(本発明の「第1タンク」に相当)を配設し、両タンク25,26の間に中央タンク27を配設してなり、互いに配管を介して接続されている。以下の説明では、全てのタンク25~27をまとめて貯水タンクと総称する場合もある。
図1では右タンク26の領域を破線のハッチングで示し、同様に
図2では左タンク25の領域を、
図5では中央タンク27の領域をそれぞれ破線のハッチングで示している。
【0023】
図2に示すように、左タンク25の下端部25bは車体2の最下部に位置し、上端部25aはエンジンフード19に達し、前端部25cは前部転圧輪3fの上方位置まで延設され、後端部25dはステップ5の前側に位置している。左タンク25は、3つのタンク25~27の中で最も容量が大きく、例えば、1000リットル程度の容量である。
【0024】
図1に示すように、右タンク26の下端部26bは車体2の最下部に位置し、上端部26aはエンジンフード19に達しており、この点は左タンク25と同様である。しかし、右タンク26の前端部26cは、開口部21の形成により前方への延設を制限されて前部転圧輪3fの後側に位置すると共に、前端部26cの上側は、車体2に形成された切欠き面2aに倣って斜状に切り欠かれている。また、右タンク26の後端部26dの上側半分は、左タンク25の後端部25dと略一致し、後端部26dの下側半分は、左タンク25の後端部25dよりも後側に延設されて梯子11の前側に位置している。右タンク26は、3つのタンク25~27の中で最も容量が小さい。右タンク26の容量は、例えば、左タンク25の容量の80%程度である。
【0025】
図5に示すように、中央タンク27の下端部27bは車体2の最下部に位置し、上端部27aは下端部から所定の高さに位置し、前端部27cは前部転圧輪3fの後側に位置し、後端部27dは後部転圧輪3rの前側に位置している。中央タンク27は、左タンク25よりも容量が小さく、かつ、右タンク26よりも容量が大きい。中央タンク27の容量は、例えば、左タンク25の容量の90%程度である。
【0026】
以上の本実施形態の貯水タンク25~27の容量を、特許文献1のものと比較する。特許文献1の転圧機械は、確認鏡を介して左右の前部転圧輪3fを視認可能とするために、車体2上の左右にそれぞれ開口部を形成している。これらの開口部により、左右の貯水タンクの前端部がそれぞれ前部転圧輪よりも後側位置に制限され、結果として左右の貯水タンクの容量が共に減少してしまう。現状で貯水タンクの設置のために車体内のスペースが利用し尽くされているため、十分なタンク容量を確保するには、中央タンクの容量を増大する必要が生じる。本実施形態のタンク容量の例示に倣った場合には、左右の貯水タンクの容量がそれぞれ300リットル減少し、全体で600リットル分の容量が減少する。この減少分を中央タンクの容量増大で補った場合にはタンク高さが大幅に増加し、直上に形成されたフロアの高さも大幅に増加することから、オペレータの車両への乗降性が極端に悪化してしまう。
【0027】
また、フロア高さの増加は、フロアからルーフスタンドを介して支持されたルーフの高さの増加につながる。この種のタイヤローラをトレーラで搬送する際には、法規に基づき最大高さが3.8mに制限されるため、固定式のルーフを折り畳み式に仕様変更する必要が生じる。しかし、ルーフスタンドに可動部分が追加されるため、故障の懸念及び製造コストの高騰等の弊害が生じてしまう。
【0028】
本実施形態では、3本の前部転圧輪3fの上部周辺の状況が近似する点を鑑みて、車体2上の運転席9側だけに開口部21を形成している。このため、開口部21の形成により右タンク26は制限を受けるが、左タンク25は制限を受けない。従って、タンク容量の減少は特許文献1に比較して半分程度にとどまり、容量減少を補うための中央タンク27の容量増大、ひいては中央タンク27の高さの増加についても特許文献1の半分程度にとどまる。このため、フロア4の高さが若干増加するものの車両1への乗降性はほとんど低下せず、乗降の際のオペレータの負担を軽減することができる。また、ルーフ13を固定式とした場合でもトレーラによる搬送時の法規を満たすため、上記のような折り畳み式のルーフとした場合の弊害を未然に防止することができる。
【0029】
ところで、前部及び後部転圧輪3f,3rにより路面を良好に締め固めるには、各転圧輪3f,3rに均等に荷重が加わるように、
図2に示す平面視において車体2の中心点P1の近傍に車体2の重心位置P2を保つことが望ましい。しかしながら、開口部21の形成により車体2の一部が大きく切り欠かれると、車体2の重量バランスが左右方向及び前後方向で不均衡になり、車体2の中心点P1から重心位置P2が離間してしまう。詳しくは、開口部21が形成された側の右タンク26の前端部26cに比して左タンク25の前端部25cがより前方に延設されているため、この前端部25cの延設箇所の重量の影響を受けて、車体2の中心点P1から重心位置P2が左側且つ前側に離間してしまう。そこで本実施形態では、開口部21を運転席9側に形成すると共に、運転席9を運転室14として構成して重量を集中させることにより、重量バランスの不均衡を軽減しており、その詳細を以下に述べる。
【0030】
車体2上の運転席9側に開口部21を形成した意図は、運転席9とは反対側の場合に比して、開口部21を介したオペレータの視認性が向上するだけでなく、運転室14に集中している重量を、重量バランスの不均衡を軽減する方向に作用させることにある。即ち、運転席9は重量物であるフロアパネルで支えられると共に、運転席9、操作台8、ルーフスタンド12及びルーフ13も重量物であり、本実施形態では、これらの部材により運転室14を構成している。加えて、重量物である給水ポンプ10も運転室14の付属品として運転席9の左側に設置し、運転席9に着座したオペレータの体重も運転室14の重量の一部となる。
【0031】
このような重量を集中させた運転室14が開口部21の後側位置に配設されるため、結果として運転室14単体の重心位置P3は、中心点P1を基準として右側且つ後側に位置し、換言すると、中心点P1を基準として車体2の重心位置P2の対角線上に位置することになる。従って、運転室14の重量により車体2の重心位置P2が中心点P1へと接近し、車体2の左右方向及び前後方向の重量バランスの不均衡を共に軽減する。従って、車体2上に開口部21を形成したことによる重量バランスの不均衡という弊害を未然に防止でき、各転圧輪3f,3rに均等に荷重を作用させて良好な路面の転圧性能を維持することができる。
【0032】
加えて、開口部21の形成により右タンク26の前端部26cは前部転圧輪3fの後側に制限されているものの、開口部21の前側には作動油タンク22が内蔵されている。右タンク26の前端部26cに比して左タンク25の前端部25cはより前側に延設されているが、この延設箇所の重量が作動油タンク22の重量により打ち消されるため、車体2の左右方向の重量バランスの不均衡を一層軽減することができる。
【0033】
また、運転席9への乗降のためのステップ5は、車体2の左側面(本発明の「運転席とは反対側の側面」に相当)に形成されており、ステップ5が大きく切り欠かれることで車体2の左側がより軽量化されている。従って、特に左右方向においてより多くの重量が運転室14に集中し、車体2の左右方向の重量バランスを均衡させるために寄与する。
【0034】
また、左タンク25の後端部25dは、ステップ5の前側に位置している。従って、オペレータが車両1に乗降するためのステップ5の機能を確保した上で、左タンク25の容量を最大限に増加することができる。
【0035】
また、右タンク26の後端部26dの下側半分は、左タンク25の後端部25dよりも後側に延設されて梯子11の前側に隣接して位置している。開口部21の形成により左タンク25に比して右タンク26の容量は少ないものの、後端部26dが延設されることで容量を増加されることから、左タンク25との容量の格差を縮小することができる。また、ステップ5により車体2の左側が軽量化されているのとは反対に、右タンク26の後端部26dが延設されると車体2の右側の重量が増加するため、車体2の左右方向の重量バランスを均衡させるために寄与する。
【0036】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではタイヤローラ1に具体化したが、他の転圧機械に適用してもよい。
【0037】
また上記実施形態では、運転席9及び開口部21を車体2上の右側に設けたが、これに限るものではなく、車体2上の左側に設けてもよい。
【0038】
また上記実施形態では、タイヤローラ1の前部及び後部転圧輪3f,3rに散水ノズル17と共に溶剤散布ノズル18を配設したが、これに限るものではない。例えば、溶剤散布ノズル18を省略してもよいし、路面に散水する路面散水ノズルを追加してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 タイヤローラ(転圧機械)
2 車体
3f 前部転圧輪
5 ステップ
9 運転席
14 運転室
21 開口部
25 左タンク(第2タンク)
25c,26c 前端部
25d,26d 後端部
26 右タンク(第1タンク)