(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146083
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】多孔膜の欠陥評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/898 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N21/898
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058793
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓介
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA34
2G051AA40
2G051AB04
2G051AB10
2G051BA01
2G051CA04
2G051EA12
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】多孔膜の欠陥に関する評価を客観的に行うことが可能な多孔膜の欠陥評価方法を提供する。
【解決手段】多孔膜31の欠陥評価方法において、多孔膜31の画像データである画像データ57と、画像データ57の平滑化処理を通じて得られる輝度ムラ低減画像データ58と、の輝度に基づいて、多孔膜31の欠陥を評価する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔膜(31)の画像データである第1画像データ(57)と、前記第1画像データの平滑化処理を通じて得られる第2画像データ(58)と、の少なくともいずれかにおける明るさに関する指標に基づいて、前記多孔膜の欠陥を評価する、
多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項2】
前記多孔膜は、繊維を含むものである、
請求項1に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項3】
前記多孔膜は、濾材である、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項4】
前記多孔膜は、フッ素樹脂多孔膜の濾材である、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項5】
前記第1画像データの明るさに関する指標と、前記第2画像データの明るさに関する指標と、の両方に基づいて、前記多孔膜の欠陥を評価する、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項6】
前記多孔膜が所定面積以上の面積の穴を有するか否か、前記多孔膜が所定のヨレを有するか否か、および、前記多孔膜が所定のムラを有するか否か、の少なくともいずれかを評価する、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項7】
前記多孔膜が前記穴を有するか否かを、前記明るさに関する指標の小ささに基づいて判断する、
請求項6に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項8】
前記多孔膜が前記ヨレと前記ムラの少なくともいずれかを有するか否かを、前記第1画像データと前記第2画像データの少なくともいずれかにおける前記明るさに関する指標の部分的な偏りに基づいて判断する、
請求項6に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項9】
前記多孔膜が前記ヨレを有するか否かを、前記第1画像データと前記第2画像データの少なくともいずれかにおける前記明るさに関する指標が部分的に高くなっている箇所を有するか否かに基づいて判断する、
請求項6に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項10】
前記多孔膜が前記ムラを有するか否かを、前記第1画像データと前記第2画像データの少なくともいずれかにおける前記明るさに関する指標が部分的に低くなっている箇所を有するか否かに基づいて判断する、
請求項6に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項11】
前記第1画像データは、前記多孔膜の後方に穴を強調した撮像が可能なシート(18)を置いた状態で撮像して得られる、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項12】
前記第1画像データは、前記多孔膜の手前側複数箇所に光源(19)を置いた状態で撮像して得られる、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項13】
前記多孔膜における評価部位の前記第1画像データを撮像した後に、前記多孔膜を連続搬送しながら前記多孔膜における張力を調整する工程と、
前記張力を調整する工程の後に、前記多孔膜における前記評価部位に対応した評価結果を前記評価部位に示す工程と、
を備え、
前記搬送の速度および前記張力を調整する工程での前記多孔膜における前記評価部位の位置変動分に基づいて、前記評価結果を示す前記評価部位を特定する、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【請求項14】
前記第1画像データと前記第2画像データの少なくともいずれかと、前記多孔膜の評価結果と、の関係を機械学習させることにより評価方法を更新させる、
請求項1または2に記載の多孔膜の欠陥評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔膜の欠陥評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1(特開2020-163311号公報)に記載のエアフィルタ濾材のように、所望の多孔膜を得るために、様々な製造条件を調整することが検討されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、得られた多孔膜について欠陥が有るか否かの判断は、専ら人間の目視に委ねられているのが現状であり、客観的な評価を行うことが困難であった。
【0004】
このため、多孔膜の欠陥に関する評価を客観的に行うことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜の画像データである第1画像データと、第1画像データの平滑化処理を通じて得られる第2画像データと、の少なくともいずれかにおける明るさに関する指標に基づいて、多孔膜の欠陥を評価する。
【0006】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜の第1画像データまたは第2画像データについて明るさに関する指標に基づいて欠陥を評価することにより、多孔膜の欠陥を客観的に評価することが可能になる。
【0007】
第2観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点の多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜は、繊維を含むものである。
【0008】
この多孔膜の欠陥評価方法は、繊維を含む多孔膜における欠陥を客観的に評価することが可能になる。
【0009】
第3観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点または第2観点の多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜は、濾材である。
【0010】
この多孔膜の欠陥評価方法は、濾材として用いられる多孔膜における欠陥を客観的に評価することが可能になる。
【0011】
第4観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第3観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜は、フッ素樹脂多孔膜の濾材である。
【0012】
この多孔膜の欠陥評価方法は、濾材として用いられるフッ素樹脂多孔膜における欠陥を客観的に評価することが可能になる。
【0013】
第5観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第4観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、第1画像データの明るさに関する指標と、第2画像データの明るさに関する指標と、の両方に基づいて、多孔膜の欠陥を評価する。
【0014】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜の画像データと、平滑化させた画像データと、の両方を用いて欠陥を評価することにより、撮像時の一時的な光の変動に起因して誤った評価を抑制することが可能になる。
【0015】
第6観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第5観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜が所定面積以上の面積の穴を有するか否か、多孔膜が所定のヨレを有するか否か、および、多孔膜が所定のムラを有するか否か、の少なくともいずれかを評価する。
【0016】
この多孔膜の欠陥評価方法は、特定の欠陥の有無を客観的に評価することが可能になる。
【0017】
第7観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第6観点の多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜が穴を有するか否かを、明るさに関する指標の小ささに基づいて判断する。
【0018】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜の穴がある部分における光の反射の小ささに基づいて穴の有無を客観的に判断することが可能となる。
【0019】
第8観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第6観点または第7観点の多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜がヨレとムラの少なくともいずれかを有するか否かを、第1画像データと第2画像データの少なくともいずれかにおける明るさに関する指標の部分的な偏りに基づいて判断する。
【0020】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜のヨレまたはムラの有無を客観的に評価することが可能になる。
【0021】
第9観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第6観点から第8観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜がヨレを有するか否かを、第1画像データと第2画像データの少なくともいずれかにおける明るさに関する指標が部分的に高くなっている箇所を有するか否かに基づいて判断する。
【0022】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜のヨレの有無を客観的に評価することが可能になる。
【0023】
第10観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第6観点から第9観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜がムラを有するか否かを、第1画像データと第2画像データの少なくともいずれかにおける明るさに関する指標が部分的に低くなっている箇所を有するか否かに基づいて判断する。
【0024】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜のムラの有無を客観的に評価することが可能になる。
【0025】
第11観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第10観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、第1画像データは、多孔膜の後方に穴を強調した撮像が可能なシートを置いた状態で撮像して得られる。
【0026】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜が穴を有するか否かを精度良く評価することが可能になる。
【0027】
第12観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第11観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、第1画像データは、多孔膜の手前側複数箇所に光源を置いた状態で撮像して得られる。
【0028】
この多孔膜の欠陥評価方法は、光源からの光の当たり方に起因する誤った評価を抑制することが可能になる。
【0029】
第13観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第12観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、多孔膜における評価部位の第1画像データを撮像した後に、多孔膜を連続搬送しながら多孔膜における張力を調整する工程と、張力を調整する工程の後に、多孔膜における評価部位に対応した評価結果を評価部位に示す工程と、を備える。搬送の速度および張力を調整する工程での多孔膜における評価部位の位置変動分に基づいて、評価結果を示す評価部位を特定する。
【0030】
この多孔膜の欠陥評価方法は、多孔膜の張力の調整が行われる場合であっても、評価部位と評価結果とを適切に対応させることが可能となる。
【0031】
第14観点に係る多孔膜の欠陥評価方法は、第1観点から第13観点のいずれかの多孔膜の欠陥評価方法であって、第1画像データと第2画像データの少なくともいずれかと、多孔膜の評価結果と、の関係を機械学習させることにより評価方法を更新させる。
【0032】
この多孔膜の欠陥評価方法は、評価結果の客観性を高めていくことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】多孔膜の縦方向の延伸に用いた装置の模式図である。
【
図2】多孔膜の幅方向への延伸、通気性支持材のラミネート、アキュムレータによる張力調整等の装置を模式的に示す図である。
【
図3】製造評価システムの機能ブロック構成図である。
【
図5】穴を有する多孔膜と、ヨレを有する多孔膜と、ムラを有する多孔膜と、正常な多孔膜の画像データの例を示す図である。
【
図6】多孔膜の画像データ、平滑化画像データ、輝度ムラ低減画像データの例を示す図である。
【
図7】輝度ムラ低減画像データに対応させてx軸の移動平均プロットのグラフとy軸の移動平均プロットのグラフを示す図である。
【
図8】穴欠陥を有する輝度ムラ低減画像データにおいて穴欠陥の位置を特定するためのx軸の移動平均プロットのグラフとy軸の移動平均プロットのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(1)多孔膜の製造工程
以下、多孔膜の一例であるPTFE多孔膜等のフッ素樹脂多孔膜を例に挙げて、製造例を説明する。
【0035】
フッ素樹脂多孔膜の製造においては、まず、例えば、TFEの乳化重合から凝析、共凝析によって得られるファインパウダー等を用いて、脱水、乾燥後に、液体潤滑剤(押出助剤)を混合し、ペースト押出を行うことでシート状の押出物を得る。そして、シート状の押出物をカレンダーロール等により圧延して得られる未焼成フィルムから、液体潤滑剤を除去し、延伸を行うことによりフッ素樹脂多孔膜が得られる。未焼成フィルムの延伸は、例えば、搬送方向である長手方向に沿った縦方向の延伸を行った後に、搬送方向である長手方向に直交する幅方向の延伸を行うことにより実行される。
【0036】
このような多孔膜の延伸は、例えば、
図1および
図2の左半分に示す製造装置を用いて行うことができる。
【0037】
図1に示す製造装置13は、巻き出しロール1、巻き取りロール2、ロール3~5、ヒートロール6、7、ロール8~12を備えている。この製造装置13により長手方向に延伸された延伸シートのロールが得られる。
【0038】
また、
図2に示す製造装置40は、巻き出しロール14、ロール15、延伸炉16、ロール17、低反射シート18、光源19、通気性支持材21、22、ラミネートロール23、24、アキュムレータ25、トリマー26、ロール27、巻き取りロール29を備える。
【0039】
そして、
図3に示すように、製造装置40と、評価情報処理装置50と、カメラ20と、ラベラー28は、ローカルエリアネットワーク等の通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されることで、製造評価システム100を構成している。
【0040】
カメラ20は、多孔膜における所定の面積を撮像するエリアセンサカメラである。カメラ20は、搬送されている多孔膜31について所定の時間間隔で撮影部位を変えながら定位置からの撮像を繰り返し、得られた各画像データ20aを格納する。また、カメラ20は、格納した画像データ20aを評価情報処理装置50に対して送信する。
【0041】
ラベラー28は、後述の評価結果をラベル28xに印字し、評価部位に対して貼付する。ラベラー28は、各種情報処理を行うCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ28aと、RAMやROM等を有して構成されるメモリ28bと、ラベルに印字処理を行う印字処理部28cと、ラベルを貼り付ける貼付処理部28dと、を有している。なお、メモリ28bには、カメラ20による撮影位置とアキュムレータ25との距離に関する情報や、アキュムレータ25からラベラー28までの距離に関する情報等が格納されている。
【0042】
製造装置40は、各種情報処理を行うCPU等のプロセッサ41と、RAMやROM等を有して構成されるメモリ45と、設定情報や駆動状態を表示出力するためのディスプレイ42と、各種製造条件の情報の入力を受け付ける受付部43と、駆動部群44と、を有している。駆動部群44は、巻き出しロール14における巻きだし速度の調整、ロール15の搬送速度の調整、延伸炉16における幅方向の延伸条件の調整および炉内の温度の調整、ロール17の搬送速度の調整、光源19のON,OFF制御、ラミネートロール23、24の加熱温度および搬送速度の調整、アキュムレータ25において付与する張力の調整、トリマー26におけるカット幅の調整、ロール27における搬送速度の調整、巻き取りロール29における巻き取り速度の調整を行うそれぞれに対応した駆動部を有している。なお、メモリ45には、各ロールにおける搬送制御データ46や、アキュムレータ25における張力調整データ47等が格納される。
【0043】
製造装置40では、巻き出しロール14から送り出された延伸シートが、ロール15で搬送されることで、延伸炉16に送られる。延伸炉16では、延伸シートが加熱されつつ、搬送方向である長手方向に直交する幅方向に延伸されることで、多孔膜31が得られる。得られた多孔膜31は、ロール17により搬送されながら、カメラ20による撮影場所に送られる。
【0044】
なお、ユーザは、製造使用とする濾材に応じた搬送速度の設定やアキュムレータ25において付与する張力の程度の設定等を、製造装置40の受付部43を介して入力する。例えば、ラミネートロール23を通過する際に、通気性支持材21、22の材料を溶融するのに十分な熱を伝えることができるようにかつ加熱し過ぎにならない程度に搬送速度を設定する。また、張力が付与されることで均一に広がったエアフィルタ濾材30を得るために、通気性支持材21、22や多孔膜31の物性に応じた張力が付与されるようにアキュムレータ25におけるロール間高さ等を変更させることで付与張力を設定する。具体的には、アキュムレータ25におけるロール間高さが大きくなるほど、エアフィルタ濾材30に付与される張力は増大し、搬送方向におけるエアフィルタ濾材30の長さが延伸されることになる。なお、受付部43が受け付けたこれらのデータは、搬送制御データ46、張力調整データ47としてメモリ45に格納される。また、製造装置40は、メモリ45に格納させた搬送制御データ46と張力調整データ47をラベラー28に対して送信する。
【0045】
カメラ20による撮影場所では、多孔膜31に対するカメラ20側とは反対側に低反射シート18が位置している。低反射シート18は、多孔膜31の色とは補色の関係にある色であることが好ましい。フッ素樹脂多孔膜として光を反射して白色に見える多孔膜を用いる場合には、低反射シート18としては光の反射が抑制された黒色のシートを用いることが好ましい。これにより、多孔膜の画像データから、輝度の濃淡を把握しやすくすることができる。さらに、カメラ20による撮影場所では、多孔膜31に対するカメラ側と同じ側から、多孔膜31の撮影箇所を照らすための光源19が複数設けられている。複数の光源19は、多孔膜の輝度ムラを低減させる観点から、例えば、多孔膜31の厚み方向視において互いに異なる方向を照射するように設けられていることが好ましく、例えば、対向する方向に照射するように設けられていることがより好ましい。これにより、多孔膜が光透過性のものであったり、光を乱反射させるものであっても、輝度値の分布をより適切に把握することが可能になる。
【0046】
なお、延伸により得られる多孔膜31は、繊維径が細く、薄く、柔らかいものであるため、多孔膜31に対して通気性支持材21、22が積層される。なお、フッ素樹脂多孔膜の膜厚としては、圧力損失を低減させる観点から、1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上30μm以下がより好ましい。また、フッ素樹脂多孔膜の平均繊維径としては、例えば、0.01μm以上0.25μm以下であってよく、0.05μm以上0.2μm以下であることが好ましい。当該平均繊維径は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、数平均繊維径として算出してもよい。
【0047】
通気性支持材21、22を多孔膜31に積層させる工程では、多孔膜31の両側に不織布からなる通気性支持材21、22を積層させた状態で、ラミネートロール23の間を通過させることにより熱ラミネート行うことで、接合させる。そして、接合されたフィルムに対してアキュムレータ25を用いて張力分布の調整を行った後、幅方向の両端をトリマー26によりトリミングすることで、エアフィルタ濾材30を得る。
【0048】
また、ラベラー28では、プロセッサ28aが、評価情報処理装置50から送信されてきた後述の欠陥評価の結果を印字処理部28cに印字処理させることでラベル28xを作成する。そして、ラベラー28では、プロセッサ28aが貼付処理部28dに貼付処理させることにより、作成されたラベル28xをエアフィルタ濾材30のうち当該評価結果に対応する評価位置に貼付する。ここで、プロセッサ28aは、製造装置40から送られてきた搬送制御データ46と張力調整データ47と、メモリ28bに格納されている撮影位置とアキュムレータ25とラベラー28に関する距離の情報と、を用いて、カメラ20において画像が取得された多孔膜の部分がラベラー28まで搬送されてくるのに要する時間を算出する。これにより、アキュムレータ25による張力付与によりエアフィルタ濾材30の搬送方向の長さが変化したとしても、貼付処理部28dによって評価結果が示されたラベル28xを対応する評価部位に対して適切に貼付することが可能になる。
【0049】
その後、巻き取り工程において、エアフィルタ濾材30は巻き取りロール29に巻き取られる。
【0050】
(2)多孔膜の評価
以下では、
図4のフローチャートを参照しつつ、評価情報処理装置50における評価処理の例を説明する。
【0051】
ここでは、多孔膜の評価では、多孔膜の一部について撮影された画像において、穴があるか否か、ヨレが有るか否か、ムラが有るか否か、正常であるか否かを評価する。ここで、穴が有ると評価される多孔膜、ヨレが有ると評価される多孔膜、ムラが有ると評価される多孔膜、正常であると評価される多孔膜の各例を、
図5に示す。また、穴部分、ヨレ部分、ムラ部分について強調のため、四角で囲って示す。
【0052】
ここで、濾材において穴がある場合には、捕捉対象を捉えることができず、リークしてしまうことになるため、多孔膜においては、穴が無いことが他の項目よりも重視される。穴は、例えば、多孔膜において所定面積以上の大きさを有する貫通部分ということができ、多孔膜において周囲との輝度の差が所定値よりも大きい部分の面積が所定面積以上である部分と評価されるものということができる。
【0053】
また、多孔膜では、ヨレが生じていたとしても捕捉対象のリークは生じにくいが、ムラが生じている場合には多孔膜が薄くなっている部分においてリークが生じがちであることから、ヨレが無いことよりもムラが無いことが重視される。ヨレは、多孔膜において部分的な重なりや繊維の集合が生じている部分ということができ、局所的に輝度が大きくなっている部分の面積が所定面積以上であると評価されるものということができる。また、ムラは、多孔膜において部分的に繊維が粗になっているか厚みが薄くなっている部分であって、穴とは評価されない部分ということができ、輝度が局所的に小さくなっている部分の面積が所定面積以上であると評価されるものということができる。
【0054】
また、ここでは、穴もヨレもムラも無い場合には、正常な多孔膜であると評価される。
【0055】
なお、評価情報処理装置50は、各種情報処理を行うCPUやGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ51と、RAMやROM等のメモリ53と、ディスプレイ52と等を備えている。メモリ53には、多孔膜の評価を行うための評価モデル56と、機械学習を行うことで評価モデル56を更新させるための評価学習プログラム54と、画像データを平滑化処理することで平滑化画像データを得るための平滑化プログラム55と、が格納されている。また、メモリ53には、カメラ20から送信されたデータが多孔膜の位置データと対応させつつ画像データ57として格納される。さらに、メモリ53には、平滑化処理により得られる平滑化画像データを画像データ57から差し引くことで得られる輝度ムラ低減画像データ58が、多孔膜の位置データと対応した状態で格納される。以下、具体的な処理ステップを説明する。
【0056】
ステップS11では、プロセッサ51は、カメラ20が撮像した画像データ20aを受信することで取得する。プロセッサ51は、取得した画像データについて中央部分をトリミングして画像データ57としてメモリ53に格納させる。なお、ここでは、画像データ57は、多孔膜の位置データと対応させてメモリ53に格納される。なお、カメラ20で得られる画像データ20aについて、光源19から近い部分の輝度が光源19から遠い部分の輝度よりも高めになってしまう場合がある。この場合には、例えば、光源19からの距離によらず一様な輝度を示す画像データが得られるように、事前に輝度が一様であるサンプルを用いる等により補正処理のための関数を特定しておき、補正処理されたデータを画像データ57として保存することが好ましい。
【0057】
ステップS12では、プロセッサ51は、平滑化プログラム55を読み出して画像データ57について実行することにより、画像データ57を平滑化させた平滑化画像データを得る。ここで、平滑化画像データとしては、特に限定されないが、画像データ57をぼかした画像とすることができ、例えば、画像データ57をガウシアン平滑化処理して得られるものであってよい。さらに、プロセッサ51は、画像データ57から、対応する平滑化画像データをピクセル毎に差し引き、さらに平滑化画像データの平均輝度値を各ピクセルに足し合わせることで、輝度ムラ低減画像データ58を得る。そして、得られた輝度ムラ低減画像データ58は、多孔膜の位置データおよび画像データ57と対応させてメモリ53に格納させる。なお、画像データ57、平滑化画像データ、輝度ムラ低減画像データ58の各例を、
図6に示す。
【0058】
カメラ20により撮像される評価対象となる多孔膜は、薄く、軽いものであることから、搬送時における微風等の影響を受けて揺れ動いてしまう場合がある。このように多孔膜が揺れ動くと、撮影タイミングによって輝度ムラが生じてしまう場合がある。しかし、上述のように、画像データ57だけでなく、輝度ムラ低減画像データ58も用いて評価を行うことにより、撮像時の多孔膜の揺れ動きに起因する評価誤りを抑制することが可能になる。
【0059】
ステップS13では、プロセッサ51は、画像データ57と対応する輝度ムラ低減画像データ58を用いて、評価モデル56に従った評価処理として、まず欠陥についての粗分析を行う。なお、評価モデル56としては、後述の機械学習により更新される前は、予め定められた評価基準が用いられる。
【0060】
粗分析では、
図7に示すように、輝度ムラ低減画像データ58における各x座標における輝度分布と各y座標における輝度分布と、x座標とy座標についての輝度の最大値と最小値の移動平均プロットをそれぞれ作成し、輝度ムラ低減画像データ58において輝度の平均よりもかなり大きい部分の有無を判断する。さらに、粗分析では、画像データ57において、所定値よりも輝度が低い部分のうち面積が所定面積以上である部分の有無を判断する。
【0061】
図7において、輝度ムラ低減画像データ58の下方に示すx軸グラフは、左右方向であるx方向におけるある座標について最大輝度値から最小輝度値を差し引いて得られる値を、各x座標についてプロットして得られるグラフである。また、このx軸グラフにおいて、下方の点線は、各x座標における最小輝度値の平均値を示し、上方の点線は、下方の点線についての輝度値に所定数を乗じて得られるx方向閾値ラインを示す。ここで所定数としては、1より多ければ特に限定されないが、例えば、1.2以上1.5以下であることが好ましい。
【0062】
図7において、輝度ムラ低減画像データ58の左方に示すy軸グラフは、上下方向であるy方向におけるある座標について最大輝度値から最小輝度値を差し引いて得られる値を、各y座標についてプロットして得られるグラフである。また、このy軸グラフにおいて、左方の点線は、各y座標における最小輝度値の平均値を示し、右方の点線は、左方の点線についての輝度値に所定数を乗じて得られるy方向閾値ラインを示す。ここで所定数としては、1より多ければ特に限定されないが、例えば、1.2以上1.5以下であることが好ましい。
【0063】
ここで、粗分析においては、x軸グラフにおいて、x方向閾値ラインを超える輝度を有する部分の面積に対応する積分値が第1所定値より大きい場合には、粗欠陥があると判断する。また、y軸グラフにおいて、y方向閾値ラインを超える輝度を有する部分の面積に対応する積分値が第2所定値より大きい場合には、粗欠陥があると判断する。これにより、多孔膜において局所的に輝度が高い部分が生じていることを把握し、欠陥がある可能性が高いと判断することが可能になる。ここで、第1所定値と第2所定値とは、同じであっても異なっていてもよく、値を大きくするほど大きな欠陥だけを認識することが可能となり、値を小さくするほど小さな欠陥も認識することが可能になる。
【0064】
また、粗分析においては、さらに、画像データ57において、所定値よりも輝度が低い部分のうち面積が所定面積以上である部分がある場合には粗欠陥があると判断するが、ここでは、低反射シート18として黒い無反射材料を用いており、画像データ57の単位ピクセルの面積を所定面積に対応させているため、画像データ57における最小輝度値が第3所定値より小さい場合には粗欠陥があると判断する。ここで粗欠陥があると判断された場合には、ステップS14に移行し、粗欠陥がないと判断された場合には、ステップS20に移行する。
【0065】
ステップS14では、プロセッサ51は、穴検知の処理を行う。具体的には、ステップS13の粗分析の一部と同様に、画像データ57において、所定値よりも輝度が低い部分のうち面積が所定面積以上である部分を有すること、より具体的には、画像データ57における最小輝度値が第3所定値より小さいことという穴条件を満たすか否かを判断する。ここで、画像データ57における1つの画素が対応する多孔膜の面積を、穴検知における所定面積に対応するように画像取得しておくことにより、面積要件の判定処理を行うまでもなく、最小輝度値に関する判定のみにより、穴検知の処理を行うことが可能になる。このような1つの画素に対応する多孔膜の面積としては、例えば、1cm×1cmとすることができる。なお、このような小さい穴については、人間による目視検査においては見落としが生じうるが、画像データ57をコンピュータを用いて穴検知処理することにより、見落としが抑制される。また、例えば、ラインカメラを用いて欠陥検知する場合には面積を評価するために多孔膜を搬送させていく必要があるが、エリアカメラを用いた欠陥検知によれば、面積の評価を迅速かつ正確に行うことが可能になり、リアルタイムで判定処理を進めていくことが可能になる。なお、第3所定値は、多孔膜の背面に配置されている低反射シート18の輝度に対応する輝度として設定することができる。ここで、穴条件を満たすと判断された場合には、ステップS17に移行し、穴条件を満たさないと判断された場合には、ステップS15に移行する。
【0066】
ステップS15では、プロセッサ51は、ヨレ検知の処理を行う。具体的には、画像データ57において、最大輝度値を平均輝度値で除して得られる輝度比の値が第4所定値より大きく、画像データ57における最小輝度が第5所定値より大きく、かつ、輝度ムラ低減画像データ58において、x方向閾値ラインを超える輝度を有する部分の面積に対応する積分値が第6所定値より大きいというヨレ条件を満たすか否かを判断する。ここで、最大輝度値を平均輝度値で除して得られる輝度比を用いた判断を行うことで、多孔膜がヨレることで局所的に輝度が高くなっている箇所を認識させることが可能になる。なお、輝度比を用いた判断では多孔膜が部分的に薄くなっていることで輝度が小さくなっている部分があると平均輝度値が低下することで輝度比が大きくなる場合があるが、さらに画像データ57における最小輝度値を用いた判断も行うことで、ムラとして評価されるべき部分がヨレとして評価されることを防いでいる。ここで、第5所定値は、穴を判断するための第3所定値よりも大きな値とすることができる。さらに、輝度ムラ低減画像データ58において第6所定値を用いた判断を行うことで、輝度が大きい部分の面積が大きいものだけ認識できるようにして、小さなヨレ部分についても必要以上認識されてしまうことを防ぐことが可能になっている。ここで、第6所定値は、粗欠陥の判断で用いた第1所定値や第2所定値よりも大きい値とすることができる。ここで、ヨレ条件を満たすと判断された場合には、ステップS18に移行し、ヨレ条件を満たさないと判断された場合には、ステップS16に移行する。
【0067】
ステップS16では、プロセッサ51は、ムラ検知の処理を行う。具体的には、輝度ムラ低減画像データ58において、x方向閾値ラインを超える輝度を有する部分の面積に対応する積分値が第7所定値より大きく、かつ、輝度ムラ低減画像データ58においてx方向閾値ラインを超える輝度を有する部分のx座標の範囲を特定し、画像データ57における当該特定されたx座標の範囲内において最小輝度値が第8所定値より小さいものがある、というヨレ条件を満たすか否かを判断する。なお、ムラがある部分では、多孔膜が周囲より薄くなり、平均輝度値を低下させる傾向があるため、x方向閾値ラインを超える輝度を有する部分が生じ、ムラとして認定されやすくすることができている。ここで、輝度ムラ低減画像データ58について第7所定値を用いた判断を行うことで、小さなムラについても必要以上に認識されてしまうことを防ぐことが可能になっている。また、画像データ57において対応するx座標の範囲内の最小輝度値を第8所定値と比較する判断を行うことで、多孔膜において部分的に薄くなっているムラを認識することが可能になる。ここで、第8所定値は、穴条件の判断で用いた第3所定値よりも大きな値とすることができる。ここで、ムラ条件を満たすと判断された場合には、ステップS19に移行し、ムラ条件を満たさないと判断された場合には、ステップS20に移行する。
【0068】
ステップS17では、プロセッサ51は、多孔膜の評価対象部位については、穴欠陥があると評価し、ステップS21に移行する。これにより、多孔膜において、穴が生じていることを把握することができる。
【0069】
ステップS18では、プロセッサ51は、多孔膜の評価対象部位については、ヨレ欠陥があると評価し、ステップS21に移行する。これにより、多孔膜において、部分的に分厚くなっており、周囲よりも輝度が高くなっている箇所について、ヨレとして認識することが可能になる。これにより、多孔膜において不均一な部分があることを把握することができる。
【0070】
ステップS19では、プロセッサ51は、多孔膜の評価対象部位については、ムラ欠陥があると評価し、ステップS21に移行する。これにより、穴は無いものの、リークが生じやすいムラがある多孔膜についても把握することが可能になる。
【0071】
ステップS20は、プロセッサ51は、多孔膜の評価対象部位については、欠陥が無いものと判断し、ステップS23に移行する。
【0072】
ステップS21では、プロセッサ51は、穴欠陥とヨレ欠陥とムラ欠陥の種別と多孔膜における評価対象部位とを対応付けて、欠陥部位対応データ59としてメモリ53に格納する。欠陥の位置特定のために用いる画像としては、特に限定されないが、多孔膜の揺れ動きに起因する評価誤りを抑制させる観点から、画像データ57よりも輝度ムラ低減画像データ58を用いることが好ましい。
図8に、穴欠陥が検出された多孔膜の輝度ムラ低減画像データ58について、穴のx座標とy座標を把握するための位置の特定を行った例を示す。
図8においても、
図7に示す輝度の最大値と最小値の移動平均プロットと同様にして、x座標とy座標が特定される。
【0073】
ステップS22では、プロセッサ51は、画像データ57のうち欠陥が確認された画像データとその欠陥部位の輝度値に関するデータと、対応する輝度ムラ低減画像データ58と、を含んだ欠陥関連データ60を、その欠陥の種類と対応させつつメモリ53に格納する。なお、輝度値に関するデータとしては、穴欠陥については、例えば、画像データ57において穴と評価される部位の最小輝度値およびその穴の面積に対応する画素数の積分値とすることができる。また、ヨレ欠陥については、例えば、画像データ57において最大輝度値を平均輝度値で除して得られる輝度比とすることができる。また、ムラ欠陥については、例えば、画像データ57においてムラとして特定されたx座標の範囲内における最小輝度値とすることができる。なお、評価情報処理装置50は、ステップS21、S22で得られた欠陥評価の結果のデータをラベラー28に対して送信する。
【0074】
なお、カメラ20は、搬送されている多孔膜31について所定の時間間隔で撮影部位を変えながら各画像データ20aを取得するが、評価情報処理装置50のプロセッサ51は、カメラ20から送信されてきた画像データについて中央部分をトリミングして画像データ57としている。ここで、評価漏れ部位が生じることを抑制するために、画像データ57とその後の画像データ57を、一部分を重複させるように取得することが好ましい。そして、評価情報処理装置50のプロセッサ51は、前後の画像データ57の結合処理を、輝度値の差の分散値を求める作業を、搬送方向における所定ピクセル幅毎にピクセル位置をずらしながら行うことで、当該差の分散値が最も低い位置を結合位置として処理することができる。
【0075】
ステップS23では、プロセッサ51は、新たに欠陥が確認されてメモリ53に格納された欠陥関連データ60が所定数以上蓄積されているか否かを判断する。ここで、所定数に達していない場合には、ステップS11に戻り、多孔膜の次の評価対象部位についての処理を進める。所定数に達している場合には、ステップS24に移行する。
【0076】
ステップS24では、プロセッサ51は、評価学習プログラム54を読み出して、メモリ53に格納されている複数の欠陥関連データ60を用いて、機械学習を実行する。具体的には、プロセッサ51は、欠陥関連データ60に含まれた欠陥が確認された画像データと輝度ムラ低減画像データと輝度値を関係付けてニューラルネットワークを機械学習させることで評価モデル56を更新させ、更新された評価モデル56をメモリ53に上書き保存する。そして、ステップS11に戻り、多孔膜の次の評価対象部位について、更新された評価モデル56を用いた評価処理を進める。
【0077】
ここで実行される機械学習の処理としては、特に限定されず、例えば、穴欠陥について機械学習することにより、穴欠陥と判断された最小輝度値の傾向を把握して、最小輝度値と比較される値である第3所定値を新たな値に更新させるようにしてもよい。また、例えば、高いグレードが要求されないエアフィルタ濾材30を製造する場合等には、必要以上に穴欠陥が検知されないように、穴欠陥と判断された画素数の積分値の傾向に基づいて穴欠陥と判断されるための穴が有する画素数の基準条件を改めに設定するようにしてもよい。また、ヨレ欠陥について機械学習することにより、例えば、ヨレ欠陥と判断された部分の輝度比の傾向を把握し、輝度比と比較される値である第4所定値を新たな値に更新させるようにしてもよい。具体的には、例えば、ヨレ欠陥と判断された部分の輝度比の大多数が第4所定値と所定差以内である等の近い値である場合には、本来正常と判断されるべきものがヨレ欠陥と判断されることで、過度に欠陥扱いされているおそれがあることから、第4所定値の値が大きくなるように更新されてもよい。また、ムラ欠陥について機械学習することにより、例えば、ムラ欠陥と判断された部分の最小輝度値の傾向を把握し、最小輝度値と比較される値である第8所定値を新たな値に更新させるようにしてもよい。具体的には、例えば、ムラ欠陥と判断された部分の最小輝度値の大多数が第8所定値と所定差以内である等の近い値である場合には、本来ムラ欠陥として判断されるべきものが正常と判断されているおそれがあることから、第8所定値の値が大きくなるように更新されてもよい。
【0078】
(3)他の実施形態
(3-1)多孔膜の例
上記実施形態では、多孔膜として濾材を例に挙げて説明したが、評価対象としては、濾材に限られるものではない。例えば、地合ムラが生じ得るシート状のものであれば、評価対象として適している。具体的には、評価対象としては、繊維を有して構成されているシート状のものであることが好ましく、不織布が好ましい例として挙げられる。また、用途としては、例えば、和紙、感熱記録紙、リチウム電池や鉛蓄電池等の電池で用いられるセパレータ、紙おむつ、粉粒体担持シート、化粧材、建築資材、作業衣類等の透湿防水布、カイロ、乾燥剤、除湿剤において用いられる包装材等を挙げることができる。
【0079】
(3-2)
上記実施形態では、多孔膜の評価として輝度を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、照度を用いてもよいし、光度を用いてもよいし、明度を用いてもよいし、輝度と照度と光度と明度のいずれか2つ以上の組合せのパラメータを用いるようにしてもよい。また、この場合には、輝度ムラ低減画像データの代わりに、特定のパラメータのムラを低減させた画像データを用いるようにしてもよい。
【0080】
(3-3)
上記実施形態では、多孔膜の画像データとして、画像データ57および輝度ムラ低減画像データ58の両方を用いて評価する場合を例に挙げて説明した。これに対して、多孔膜の欠陥評価においては、画像データ57のみを用いて評価してもよいし、輝度ムラ低減画像データ58のみを用いて評価してもよい。
【0081】
(3-4)
上記実施形態では、欠陥が確認された画像データ57や輝度ムラ低減画像データ58と欠陥部分の輝度値等を用いて機械学習させることにより、欠陥評価のための閾値を更新させる場合を例に挙げて説明した。
【0082】
これに対して、評価に機械学習を利用する方法としては、これに限定されるものではない。例えば、多孔膜の欠陥の判断を熟知した人間に多孔膜の画像データ57をランダムに目視観察させ、穴欠陥を有する多孔膜と、ヨレ欠陥を有する多孔膜と、ムラ欠陥を有する多孔膜と、正常な多孔膜と、を選択させて得られる教師データを評価情報処理装置50に入力することで、目視観察による評価結果と画像データ等の対応関係を機械学習させることで評価モデル56が更新されるようにしてもよい。
【0083】
また、機械学習により得られる評価モデル56は、上記実施形態に示すように閾値を更新させたモデルであってもよいし、画像データ57と輝度ムラ低減画像データ58とこれらの欠陥部分のトリミング画像データとの少なくともいずれかについて、同じ欠陥を有すると評価されるものに共通する輝度等の明るさに関する新たなパラメータおよびその閾値を用いた判断が組み込まれるようにしたモデルであってもよい。
【0084】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0085】
18 低反射シート(シート)
19 光源
31 多孔膜
57 画像データ(第1画像データ)
58 輝度ムラ低減画像データ(第2画像データ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】