(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146084
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】診断システム、診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241004BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058794
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 剛
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AD03
2G024BA27
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】フィルタの目詰まり時以外に、モータのベアリング異常でもフィルタの目詰まりであると誤検知する場合があるという課題がある。
【解決手段】診断システム100は、回転装置と、フィルタ32と、凝縮器24とを有する流体搬送装置60の診断を行う。回転装置は、回転することによって流体を搬送するファン29をモータ30によって駆動する。フィルタ32と凝縮器24は、流体の流路61に設けられ流体が通過する経路が形成されている。取得部41は、モータ30の負荷に関する情報を取得する。診断部42は、少なくとも2時点以上のモータ30の負荷に関する情報に基づいて、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスに関する第1判断およびベアリング30dの故障に関する第2判断を行う。診断部42は、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスを促す診断、又は、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することによって流体を搬送する回転体(29)をモータ(30)によって駆動する回転装置と、前記流体の流路(61)に設けられ前記流体が通過する経路が形成されている構造物(24、25、32)とを有する流体搬送装置(60)、の診断を行う診断システムであって、
前記モータの負荷に関する情報を取得する取得部(41)と、
診断部(42)と、
を備え、
前記診断部は、
少なくとも2時点以上の前記モータの負荷に関する情報に基づいて、前記構造物のメンテナンスに関する第1判断および前記回転装置の故障に関する第2判断を行い、
前記構造物のメンテナンスを促す診断、又は、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
診断システム(100)。
【請求項2】
少なくとも2時点以上の前記モータの負荷に関する情報は、
前記モータの負荷に関する時系列の情報、及び、前記メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記モータの負荷に関する時系列の情報は、
前記モータの負荷の経時変化に関する情報、及び、前記メンテナンスの前後の前記モータの負荷の変化に関する情報の少なくとも1つを含み、
前記メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報は、前記メンテナンスを促す間隔に関する情報を含む、
請求項2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記モータの負荷に関する情報は、前記回転体の駆動力を無くしてからの減速度合い、又は前記モータの負荷を含み、
前記取得部は、
前記減速度合いを、前記回転体の減速時間又は減速率として取得し、前記モータの負荷を、前記モータの電流、電圧、電力又は周波数から取得する、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項5】
前記構造物は、フィルタ又は熱交換器であり、
前記メンテナンスは、前記構造物の交換又は付着物の除去である、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項6】
前記第1判断は、前記構造物の目詰まりに関する判断を含み、
前記第2判断は、前記回転装置の軸受(30d)の異常に関する判断を含む、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項7】
前記診断部によって前記構造物のメンテナンスを促す診断が行なわれると、前記メンテナンスを促す報知を行う報知部、
をさらに備え、
前記診断部は、
前記モータの負荷に関する情報が、所定のメンテナンス閾値(Th)を超えると、前記メンテナンスを促す診断を行い、
前記報知部による報知が行なわれる間隔が所定レベルまで短くなると、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項8】
前記診断部は、前記メンテナンスの終了後に、前記モータの負荷に関する情報が所定値まで戻らない場合に、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項9】
前記診断部は、前記メンテナンスの前後において、前記モータの負荷に関する情報の変化量が、所定量よりも小さくなった場合に、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
請求項8に記載の診断システム。
【請求項10】
前記診断部は、前記メンテナンスの直後に、前記モータの負荷に関する情報の経時変化率が、所定値よりも大きくなった場合に、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項11】
前記診断部は、
前記モータの負荷に関する情報が、前記メンテナンス閾値を超えていない時点において、前記モータ負荷に関する情報の経時変化率が所定値よりも大きくなった場合に、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
請求項1又は2に記載の診断システム。
【請求項12】
回転することによって流体を搬送する回転体をモータによって駆動する回転装置と、前記流体の流路に設けられ前記流体が通過する経路が形成されている構造物とを有する流体搬送装置、の診断を行う診断方法であって、
前記モータの負荷に関する情報を取得する取得ステップと、
診断ステップと、
を備え、
前記診断ステップは、
少なくとも2時点以上の前記モータの負荷に関する情報に基づいて、前記構造物のメンテナンスに関する第1判断および前記回転装置の故障に関する第2判断を行い、
前記構造物のメンテナンスを促す診断、又は、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
診断方法。
【請求項13】
回転することによって流体を搬送する回転体をモータによって駆動する回転装置と、前記流体の流路に設けられ前記流体が通過する経路が形成されている構造物とを有する流体搬送装置、の診断を行う診断システムを、コンピュータによって実現するための診断プログラムであって、コンピュータを、
前記モータの負荷に関する情報を取得する取得手段と、
診断手段と、して機能させ、
前記診断手段は、
少なくとも2時点以上の前記モータの負荷に関する情報に基づいて、前記構造物のメンテナンスに関する第1判断および前記回転装置の故障に関する第2判断を行い、
前記構造物のメンテナンスを促す診断、又は、前記回転装置の故障判定を下す診断を行う、
診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
診断システム、診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタの目詰まりが発生すると、同じファン回転数でもモータの負荷が目詰まりしていない状態よりも増加することから、モータの負荷に関する物理量としてファンの駆動力を無くした状態での減速度合いを使って目詰まりを検知している(特許文献1(特開2022-155832号公報))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の検知方法では、モータの負荷は、フィルタの目詰まり時以外に、モータのベアリング異常時にも増加するため、モータのベアリング異常でもフィルタの目詰まりであると誤検知する場合があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の診断システムは、回転装置と、構造物とを有する流体搬送装置、の診断を行う診断システムである。回転装置は、回転することによって流体を搬送する回転体をモータによって駆動する。構造物は、流体の流路に設けられ前記流体が通過する経路が形成されている。診断システムは、取得部と、診断部と、を備える。取得部は、モータの負荷に関する情報を取得する。診断部は、少なくとも2時点以上のモータの負荷に関する情報に基づいて、構造物のメンテナンスに関する第1判断および回転装置の故障に関する第2判断を行う。診断部は、構造物のメンテナンスを促す診断、又は、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0005】
この診断システムでは、構造物のメンテナンス及び回転装置の故障に関する判断を精度良く行うことができ、流体搬送装置の診断工数の削減が可能になる。
【0006】
第2観点の診断システムは、第1観点のシステムであって、少なくとも2時点以上のモータの負荷に関する情報は、モータの負荷に関する時系列の情報、及び、メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報の少なくとも1つを含む。
【0007】
この診断システムでは、モータの負荷に関する時系列の情報、及び、メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報を用いることで、構造物のメンテナンス及び回転装置の故障に関する判断を容易に行うことができる。
【0008】
第3観点の診断システムは、第2観点のシステムであって、モータの負荷に関する時系列の情報は、モータの負荷の経時変化に関する情報、及び、メンテナンスの前後のモータの負荷の変化に関する情報の少なくとも1つを含む。メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報は、メンテナンスを促す間隔に関する情報を含む。
【0009】
この診断システムでは、モータの負荷に関する経時変化若しくはメンテナンスの前後での変化に関する情報、又は、メンテナンスを促す間隔に関する情報を用いることで、構造物のメンテナンス及び回転装置の故障に関する判断を容易に行うことができる。
【0010】
第4観点の診断システムは、第1観点から第3観点のいずれかのシステムであって、モータの負荷に関する情報は、回転体の駆動力を無くしてからの減速度合い、又はモータの負荷を含む。取得部は、減速度合いを、回転体の減速時間又は減速率として取得する。取得部は、モータの負荷を、モータの電流、電圧、電力又は周波数から取得する。
【0011】
この診断システムでは、モータ負荷に関する状態値の変化に関する情報を用いることで、構造物のメンテナンス及び回転装置の故障に関する判断を容易に行うことができる。
【0012】
第5観点の診断システムは、第1観点から第4観点のいずれかのシステムであって、構造物は、フィルタ又は熱交換器である。メンテナンスは、構造物の交換又は付着物の除去である。
【0013】
この診断システムでは、フィルタ及び熱交換器のメンテナンスに関する判断を行うことができる。
【0014】
第6観点の診断システムは、第1観点から第5観点のいずれかのシステムであって、第1判断は、構造物の目詰まりに関する判断を含む。第2判断は、回転装置の軸受の異常に関する判断を含む。
【0015】
この診断システムでは、構造物の目詰まりが生じた場合において、回転装置の異常が生じていない場合は構造物のメンテナンスを促す診断を行い、回転装置の異常が生じた場合に回転装置の故障判定を下す診断を行うことができる。
【0016】
第7観点の診断システムは、第1観点から第6観点のいずれかのシステムであって、報知部をさらに備える。報知部は、診断部によって構造物のメンテナンスを促す診断が行なわれると、メンテナンスを促す報知を行う。診断部は、モータの負荷に関する情報が、所定のメンテナンス閾値を超えると、メンテナンスを促す診断を行う。診断部は、報知部による報知が行なわれる間隔が所定レベルまで短くなると、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0017】
この診断システムでは、報知部による報知間隔を用いることで、回転装置の故障判定を容易に行うことができる。
【0018】
第8観点の診断システムは、第1観点から第6観点のいずれかのシステムであって、診断部は、メンテナンスの終了後に、モータの負荷に関する情報が所定値まで戻らない場合に、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0019】
この診断システムでは、メンテナンス後のモータの負荷に関する状態値を用いることで、回転装置の故障判定を容易に行うことができる。
【0020】
第9観点の診断システムは、第8観点のシステムであって、診断部は、メンテナンスの前後において、モータの負荷に関する情報の変化量が、所定量よりも小さくなった場合に、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0021】
この診断システムでは、メンテナンス前後のモータの負荷に関する状態値を用いることで、回転装置の故障判定を容易に行うことができる。
【0022】
第10観点の診断システムは、第1観点から第6観点のいずれかのシステムであって、診断部は、メンテナンスの直後に、モータの負荷に関する情報の経時変化率が、所定値よりも大きくなった場合に、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0023】
この診断システムでは、メンテナンス直後のモータの負荷に関する状態値を用いることで、回転装置の故障判定を容易に行うことができる。
【0024】
第11観点の診断システムは、第1観点から第6観点のいずれかのシステムであって、診断部は、モータの負荷に関する情報が、メンテナンス閾値を超えていない時点において、モータ負荷に関する情報の経時変化率が所定値よりも大きくなった場合に、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0025】
この診断システムでは、メンテナンス閾値を超えていない場合でも、回転装置の故障判定を早期に行うことができる。
【0026】
第12観点の診断方法は、回転装置と、構造物とを有する流体搬送装置、の診断を行う診断方法である。回転装置は、回転することによって流体を搬送する回転体をモータによって駆動する。構造物は、流体の流路に設けられ前記流体が通過する経路が形成されている。診断方法は、取得ステップと、診断ステップと、を備える。取得ステップは、モータの負荷に関する情報を取得する。診断ステップは、少なくとも2時点以上のモータの負荷に関する情報に基づいて、構造物のメンテナンスに関する第1判断および回転装置の故障に関する第2判断を行う。診断ステップは、構造物のメンテナンスを促す診断、又は、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0027】
この診断方法では、構造物のメンテナンス及び回転装置の故障に関する判断を精度良く行うことができ、流体搬送装置の診断工数の削減が可能になる。
【0028】
第13観点の診断プログラムは、回転装置と、構造物とを有する流体搬送装置、の診断を行う診断システムを、コンピュータによって実現するための診断プログラムである。回転装置は、回転することによって流体を搬送する回転体をモータによって駆動する。構造物は、流体の流路に設けられ流体が通過する経路が形成されている。コンピュータを、取得手段と、診断手段と、して機能させる。取得手段は、モータの負荷に関する情報を取得する。診断手段は、少なくとも2時点以上のモータの負荷に関する情報に基づいて、構造物のメンテナンスに関する第1判断および回転装置の故障に関する第2判断を行う。診断手段は、構造物のメンテナンスを促す診断、又は、回転装置の故障判定を下す診断を行う。
【0029】
この診断プログラムでは、構造物のメンテナンス及び回転装置の故障に関する判断を精度良く行うことができ、流体搬送装置の診断工数の削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】診断システムにおける油冷却装置の概略構成図である。
【
図2】油冷却装置の縦断面を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】枠Bで囲んだベアリング30d周辺の拡大図である。
【
図5】制御装置、並びに制御装置に接続される各部及び出力装置を模式的に示したブロック図である。
【
図6】診断システムの動作を説明するための図である。
【
図8】変形例1Aの診断システムの動作を説明するための図である。
【
図9】変形例1Aの診断システムのフローチャートである。
【
図10】変形例1Bの診断システムのフローチャートである。
【
図11】変形例1Cの診断システムのフローチャートである。
【
図12】ベアリング損失を説明するための図である。
【
図13】変形例1Dの診断システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
(1)診断システムの構成
以下、実施形態を説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表す。長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更され、実際の相対寸法を表していない場合がある。
【0032】
本実施形態の診断システム100は、回転装置と、構造物とを有する流体搬送装置70の診断を行う。本実施形態の診断システム100は、
図1に示すように、主に、油冷却装置1と、工作機械90と、を有している。
【0033】
(2)油冷却装置
図1は、本実施形態の診断システム100における油冷却装置の概略構成図である。
図1に示す油冷却装置1は、流体を冷却する流体冷却装置の一例であり、この例では、油を冷却する。
図1に示す油冷却装置1は、工作機械90の作動油、潤滑 油又は冷却油(以下、単に「油」ともいう)を、油タンクTを介して循環させながら冷却する。工作機械100の具体例として、マシニングセンタ、NC(Numerical Control)旋盤、研削盤、NC専用機、NC放電加工機などが挙げられる。油冷却装置10は、工作機械とは種類が異なる機械(成形機、プレス機など)の油を冷却する装置でもよい。
【0034】
油冷却装置1は、圧縮機21と凝縮器24と電子膨張弁EVと蒸発器25が環状に接続された冷媒回路RCと、冷媒回路RCの冷媒循環方向を正サイクルから逆サイクルに切り換える四路切換弁22と、凝縮器24に空気を供給するファン29と、冷媒回路RC及び四路切換弁22を制御する制御装置40とを備える。電子膨張弁EVは、減圧機構の一例である。冷媒回路RCは、ホットガスバイパス配管L10と、そのホットガスバイパス配管L10に配設されたホットガスパイパス弁HGBを有する。
【0035】
なお、ここで示す実施例は、正サイクルと逆サイクルを四路切換弁により切り換えできる油冷却装置であるが、油冷却装置の冷却サイクルは、四路切換弁のないサイクルでもよい。
【0036】
冷媒回路RC、四路切換弁22、ファン29及び制御装置40は、筐体3内に収容されている。
【0037】
凝縮器24は、第1の熱交換器の一例であり、蒸発器25は、第2の熱交換器の一例である。
【0038】
圧縮機21の吐出側は、四路切換弁22の第1ポート22aに接続されている。四路切換弁22の第2ポート22bは、閉鎖弁V1を介して凝縮器24の一端に接続されている。凝縮器24の他端は、閉鎖弁V2を介して電子膨張弁EVの一端に接続されている。
【0039】
電子膨張弁EVの他端は、蒸発器25の一端25aに接続されている。蒸発器25の他端25bは、四路切換弁22の第3ポート22cに接続されている。四路切換弁22の第4ポート22dは、アキュムレータ23を介して圧縮機21の吸入側に接続されている。蒸発器25の一端25a側は、ホットガスバイパス配管L10の一端に接続されている。ホットガスバイパス配管L10の他端は、四路切換弁22の第2ポート2b側に接続されている。
【0040】
油タンクT内の油に一端が浸漬された配管L1の他端は、循環ポンプPの吸込ポートに接続されている。循環ポンプPの吐出ポートは、配管L2を介して蒸発器25の流入ポート25cに接続されている。
【0041】
蒸発器25の流出ポート25dは、配管L3の一端に接続され、配管L3の他端は、工作機械90の流入ポート91に接続されている。工作機械90の流出ポート92と油タンクTとは、配管L4を介して接続されている。
【0042】
油タンクT、蒸発器25、工作機械90及び配管L1~L4は、油が循環する循環経路に含まれている。
【0043】
油冷却システムは、油冷却装置1及び循環経路を備える。なお、第1実施形態では、油冷却装置1は、循環ポンプPを備えるが、油冷却システムは、油冷却装置の外部に循環ポンプを備えるシステムでもよい。
【0044】
油冷却装置1の油の冷却運転において、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を介して凝縮器24に流入し、凝縮器24で外気と熱交換されて凝縮することにより液冷媒となる。次に、電子膨張弁EVにおいて減圧された液冷媒は、蒸発器25に流入して油と熱交換されて蒸発することにより低圧のガス冷媒となり、アキュムレータ23を介して圧縮機1の吸入側に戻る。これにより、蒸発器25において、油が冷却される。この油の冷却運転では、制御装置40は、油の温度や室内温度などに基づいて、圧縮機21の回転周波数や電子膨張弁EVの開度を制御する。なお、ホットガスバイパス配管L10に配設されたホットガスパイパス弁HGBは、蒸発器25に供給する高温・高圧ガス量を調整することで、低負荷時の冷却能力をコントロールする。
【0045】
図2は、油冷却装置の縦断面を模式的に示す部分断面図である。フィルタ32、凝縮器24及びファン29は、吸込口31側から、フィルタ32、凝縮器24及びファン29の順に、筐体3内に配置されている。フィルタ32は、凝縮器24に対して間隔D(例えば、10mm)をあけて筐体3の吸込口31に取り付けられてもよいし、凝縮器24に一部又は全部が接触してもよい(間隔D=0mm)。
【0046】
油冷却装置1では、ファン29の回転により外気が吸込口31からフィルタ32を介して吸い込まれて、凝縮器24に供給された後、吹出口33から排出される。
【0047】
油冷却装置1が使用される環境によっては、工作機械90により発生する油煙(オイルミスト)や粉塵などの異物を含む空気Aが、フィルタ32又は凝縮器24に供給される場合がある。異物を含む空気Aがフィルタ32又は凝縮器24に供給されると、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりが発生する。目詰まりが発生すると、油冷却装置1の油の冷却能力が低下するため、例えば、工作機械90の突発的な停止や加工精度の低下を引き起こすおそれがある。凝縮器24の目詰まりが発生すると、凝縮器24を筐体3から取り外して洗浄や交換などの措置が必要となるので、長時間のダウンタイムが発生し、大きな機会損失を招く。
【0048】
(2-1)流体搬送装置
本実施形態の油冷却装置1は、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりを検知する機能を備えた流体搬送装置60を備える。流体搬送装置60は、回転装置と、構造物と、制御装置40と、出力装置50と、を有している。言い換えると、流体搬送装置60は、流体の一例である空気Aを吸込口31から吹出口33に搬送する装置である。流体搬送装置60は、ファン29、モータ30、フィルタ32、凝縮器24、制御装置40及び出力装置50を備える。
【0049】
(2-1-1)回転装置
本実施形態において、回転装置は、ファン29と、モータ30を含む。回転装置は、回転することによって流体を搬送する回転体をモータによって駆動する。
【0050】
ファン29は、筐体3内部の流路61に沿って空気Aをモータ30による回転駆動により搬送する回転体の一例である。この例では、ファン29は、流路61の途中に配置されているが、流路61の端部(例えば、吹出口33)に配置されてもよい。流路61に流れる流体Aは、ファン29の回転により、吸込口31から吹出口33に移送される。ファン29は、空気Aが吸込口32からフィルタ32を経由して吸い込まれるように回転し、フィルタ32の通過によりろ過された空気Aは、凝縮器24に供給される。ファン29の回転によって、凝縮器24を通過した空気Aは、吹出口33から排出される。
【0051】
流路61は、空気Aが流れる通路である。流路61の少なくとも一部は、筐体3内に配置されたダクト等の構造体により形成されてもよいし、筐体3内の内壁62により形成されてもよいし、筐体3により形成されてもよい。
図1に示す例では、流路61は、筐体3内の内壁62と、筐体3の内面3aと、油溜め部81とにより囲まれた内部空間である。
【0052】
筐体3は、例えば、筐体3の下側を覆う底フレーム80を有する。底フレーム80は、凝縮器24及びフィルタ32の下方に設けられた油溜め部81を有する。油溜め部81は、凝縮器24及びフィルタ32からの油滴を受けて溜める。油溜め部81は、オイルパンとも称される。油溜め部81は、底フレーム80に一体に形成されてもよいし、底フレーム80とは別に設けられてもよい。
【0053】
モータ(ファンモータ)30は、ファン29を回転させる電動機である。モータ30の回転軸は、ファン29の回転中心部に直接又はギアを介して接続される。モータ30は、制御装置40により制御される。モータ30は、流路61内に配置されても流路61外に配置されてもよい。モータ30が流路61内に配置されることで、空気Aによりモータ30を冷却できる。
【0054】
図3は、モータの断面図である。モータ30は、インバータ(図示省略)を備えた回転数可変のインバータモータである。モータ30は、制御部43(
図5参照)から出力される制御信号により回転数が制御される。モータ30は、主として、固定子30aと、回転子30bと、回転軸30cと、2つのベアリング30dと、ケーシング30eとを有している。ベアリング30dは、回転軸30cを固定子30aに対して回転自在に保持する。
【0055】
図4は、枠Bで囲んだベアリング30d周辺の拡大図である。ベアリング30dは、外輪30d1と、内輪30d2と、ボール30d3とを有するボールベアリングである。外輪30d1の外周面が固定子134aの内周面に嵌合により固定されるとともに、内輪30d2の内周面が回転軸30cの外周面に嵌合により固定されている。ベアリング30dは、グリス等の潤滑剤30d5が内部に充填された密封型のベアリングである。
【0056】
モータ30では、2つのベアリング30dが回転軸30cを支持している。2つのベアリング30dは、固定子30aの内周に、回転軸心Oの延伸方向において所定の隙間を有した状態で並べて配置されている。
【0057】
(2-1-2)構造物
本実施形態において、構造物は、フィルタ32と、凝縮器24を含む。構造物は、流体の流路61に設けられ流体が通過する経路が形成されている。
【0058】
フィルタ32は、流路61に設けられ、空気Aが通過する経路を有する構造物の一例である。フィルタ32は、空気Aが通り抜ける構造体であり、空気Aをろ過する。フィルタ32は、流路61の端部(例えば、流路61の開口端、より詳しくは、吸込口31)に設けられてもよいし、流路61の途中(例えば、流路61を形成するダクトの内部)に設けられてもよい。例えば、フィルタ32が不織布で形成されている場合、不織布の繊維の隙間は、空気Aが通過する通路に相当する。
【0059】
凝縮器24は、流路61に設けられ、空気Aが通過する経路を有する構造物の一例である。凝縮器24は、空気Aが通り抜ける構造体であり、流路61の途中に設けられている。凝縮器24は、高圧・高温のガス冷媒を空気Aと熱交換することで液化する熱交換器である。
図1に示す例では、凝縮器24は、フィルタ32とファン29との間に配置されている。凝縮器24が有する複数のフィン間の隙間は、空気Aが通過する通路に相当する。
【0060】
(2-1-3)制御装置
図5は、制御装置40、並びに制御装置40に接続される各部及び出力装置50を模式的に示したブロック図である。制御装置40は、コンピュータにより実現されるものである。制御装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びメモリを備える制御部である。制御装置40の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、プロセッサが動作することにより実現される。制御装置40の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0061】
制御装置40は、取得部41と、診断部42と、制御部43とを有する。
【0062】
取得部41は、モータ30の負荷に関する情報を取得する。モータ30の負荷に関する情報は、モータ30の負荷に関する時系列の情報、及び、メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報の少なくとも1つを含む。また、モータ30の負荷に関する時系列の情報は、モータ30の負荷の経時変化に関する情報、及び、メンテナンスの前後のモータ30の負荷の変化に関する情報の少なくとも1つを含む。メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報は、メンテナンスを促す間隔に関する情報を含む。
【0063】
診断部42は、少なくとも2時点以上のモータ30の負荷に関する情報に基づいて、フィルタ32又は凝縮器24のメンテナンスに関する第1判断、および、モータ30のベアリング(軸受)30dの故障に関する第2判断を行う。
【0064】
また、診断部42は、フィルタ32若しくは凝縮器24のメンテナンスを促す診断、又は、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。診断部42は、モータ30の負荷に関する情報が、所定の目詰まり判定閾値(メンテナンス閾値)Thを超えると、メンテナンスを促す診断を行う。診断部42は、出力装置50の報知部51による報知が行なわれる間隔が所定レベルまで短くなると、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。
【0065】
制御部43は、ファン29を制御し、より具体的には、ファン29を回転させるモータ30を制御する。
【0066】
また、
図2に示すように、制御装置40は、モータ30を複数の半導体スイッチング素子のスイッチングにより駆動する駆動回路45をさらに有する。駆動回路45は、モータ30に駆動電流を供給し、モータ30は、駆動回路45から駆動電流が供給されることで、ファン29を回転させる。駆動回路45は、例えば、直流源からの直流をモータ30に供給する交流に変換するインバータ回路である。
【0067】
駆動回路45の熱は、ヒートシンク46に伝達する。ヒートシンク46が流路61内に配置されていることで、ヒートシンク46は空気Aにより冷却され、ヒートシンク46による駆動回路45の放熱効果が向上する。
図1に示す例では、制御装置40は、内壁62によって流路61から隔てられているが、制御装置40が流路61内に配置されてもよい。駆動回路45は、制御装置40とは別の箇所に配置されてもよい。
【0068】
制御装置40は、ファン29の駆動力を無くしてからの減速度合い(以下、減速度合いGともいう。)を測定する測定部の一例であり、例えば、モータ30の負荷に関する情報として、駆動回路45を停止してからのファン29の減速度合いGを測定する。より詳細には、制御装置40は、駆動回路45からモータ30への駆動電流(例えば、モータ30が三相モータの場合、三相の交流駆動電流)の供給を停止してからのファン29の減速度合いGを測定してもよい。本実施形態では、制御装置40の取得部41は、減速度合いGを、ファン29の減速時間として取得するが、ファン29の減速率として取得してもよい。
【0069】
制御装置40は、ファン29の駆動力を無くしてからのファン29の減速中にモータ30を回生制御し、モータ30を回生制御しながらファン29の減速度合いGを測定してもよい。駆動回路45からモータ30への駆動電流の供給の停止期間にモータ30の回生制御が行われていると、モータ30から駆動回路45に回生電流が流れる。あるいは、制御装置40は、ファン29の駆動力を無くしてからのファン29の減速中にモータ30のトルクを制御し、モータ30のトルクを制御しながらファン29の減速度合いGを測定してもよい。
【0070】
ファン29の駆動力を無くした状態(空転状態(フリーラン状態)や、上記の回生制御又はトルク制御の状態を含んだ停止動作でもよい)にすると、ファン29は、慣性で回転し続けようとする。しかしながら、ファン29及びモータ30に負荷トルクが発生するため、ファン29及びモータ30の回転は減速する。このときの負荷トルクTは、
T=(Ps+Pv)×Q/N
Ps:静圧[Pa]
Pv:動圧「Pa」
Q:風量[m3/秒]
N:ファン29又はモータ30の回転数[rpm]
で表される。
【0071】
フィルタ32又は凝縮器24に目詰まりが発生すると、静圧Psが大きくなり、流路61内の圧力損失が大きくなる。同一回転数で比較すると、流路61内の圧力損失が大きくなると負荷トルクが増える特性を有するファンにおいては、ファン29の回転が停止するまでの時間が短くなる。つまり、ファン29の減速度合いが大きくなる。前記特性を有するファンは、例えば、プロペラファンなどの軸流ファンである。
【0072】
このような特徴に着目し、制御装置40において、診断部42は、測定部42で測定された減速度合いG(圧損指標値)が目詰まり判定閾値Thと等しいか否かを判定する。制御装置40は、測定された減速度合いGが目詰まり判定閾値Thと等しいと判定した場合、流路61内の圧力損失が基準値と比較して増加したと判定し、流路61内の圧力損失の増加を示す情報を出力装置50に出力させる。また、制御装置40は、メンテナンス間隔を比較し、診断部42によって行われた流体搬送装置60の診断結果を、出力装置50に出力させる。
【0073】
このようにして、流体搬送装置60の診断方法を実行することにより、目詰まり状態を検知可能となり、さらに、検知された目詰まり状態が、ベアリング30dの異常の発生、又は、フィルタ32若しくは凝縮器24の目詰まりの発生であるかを診断することができる。
【0074】
目詰まり状態を検知してから、検知された目詰まり状態が、ベアリング30dの異常の発生、又は、フィルタ32若しくは凝縮器24の目詰まりの発生であるかを診断可能となるので、例えば、フィルタ32又は凝縮器24のメンテナンス作業が容易になり、管理、整備などの工数及びコストの増加を抑制できる。
【0075】
また、目詰まり状態を検知してから、検知された目詰まり状態が、ベアリング30dの異常の発生、又は、フィルタ32若しくは凝縮器24の目詰まりの発生であるかを診断可能となるので、油冷却装置1の油の冷却能力の低下などの不具合が生じる前に、フィルタ32又は凝縮器24の洗浄や交換などの事前措置を講ずることができる。
【0076】
制御装置40は、ファン29の駆動力を無くした状態で減速度合いGを測定するので、電気的な測定誤差を与える要因の影響を低減できる。
【0077】
(2-1-4)出力装置
出力装置50は、報知部51と、表示部52とを有する。出力装置50は、制御装置40により測定された減速度合いGが基準値よりも増加して目詰まり判定閾値Thと等しくなると、流路61内の圧力損失の増加を表す情報(圧損増加情報)を出力する出力部の一例である。圧損増加情報は、流路71内の圧力損失の状態を表す圧力損失情報の一つである。言い換えると、圧損増加情報は、目詰まり状態であることを示す情報である。また、出力装置50は、制御装置40の診断部42による診断結果を出力する。
【0078】
出力装置50は、例えば、音、光、表示、通信又はそれらのいずれかの組み合わせによって、流体搬送装置60の外部に向けて圧損増加情報、及び診断結果を出力する。出力装置50の具体例として、スピーカ、ランプ、ディスプレイ、通信装置又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0079】
本実施形態では、報知部51は、診断部42によって、フィルタ32又は凝縮器24のメンテナンスを促す診断が行なわれると、メンテナンスを促す報知を行う。言い換えると、報知部51は、圧損指標値(減速度合いG)が基準値よりも増加して目詰まり判定閾値Thに等しくなると、目詰まり状態が検知されたことを報知することで、圧損増加情報を出力する。また、本実施形態では、表示部52は、診断部42による診断結果を表示する。
【0080】
(3)診断システムの全体動作
図6は、診断システム100の動作を説明するための図である。本実施形態の診断システム100では、メンテナンス間隔(以下、メンテ間隔ともいう。)によって故障要因を判定する。
【0081】
図6の縦軸は圧損指標値、横軸は流体搬送装置60の駆動時間を示す。圧損指標値は、モータ30の負荷に関する情報である。本実施形態では、圧損指標値は、ファン29の駆動力を無くしてからの減速度合いGであり、ファン29の減速時間である。圧損指標値が大きいとは、ファン29の減速時間が小さいことをいう。圧損指標値が小さいとは、ファン29の減速時間が大きいことをいう。
【0082】
目詰まり判定閾値Thは、目詰まり状態であるかを判断するための値である。
【0083】
メンテナンス間隔は、フィルタ32のメンテナンスが実施されてから目詰まりを検知するまでの時間をいう。
【0084】
基準メンテナンス間隔(以下、基準メンテ間隔ともいう。)a1は、正常時におけるメンテナンス間隔をいう。正常時とは、ベアリング30dが正常な状態をいう。言い換えると、基準メンテナンス間隔a1は、ベアリング30dが正常な状態において、圧損指標値が基準値t1から目詰まり判定閾値Thになるまでの流体搬送装置60の駆動時間の変化量をいう。
【0085】
ベアリング30dが正常であれば、目詰まり判定閾値Thで正しく、フィルタ32の目詰まり状態が検知される。しかしながら、ベアリング30dの異常が発生してモータ30の負荷が増加した場合、圧損指標値は実際の目詰まり度とは異なる状態になり、フィルタ32が目詰まりしていない場合であっても、フィルタ32が目詰まりしていると誤検知してしまう。
【0086】
ベアリング30dの異常が発生した場合、フィルタ32のメンテナンスが実施されてから目詰まりを検知するまでの流体搬送装置60の駆動時間の変化量であるメンテナンス間隔a2が、基準メンテナンス間隔a1に比べて短くなる。本実施形態の診断システム100では、メンテナンス間隔の差から異常要因を判定する。メンテナンス間隔(目詰まり警報間隔)が基準メンテナンス間隔と比較して急に短くなった場合に、ベアリング30dが異常であると診断する。
【0087】
【0088】
ステップS1において、取得部41は、圧損指標値を取得する。本実施形態では、圧損指標値として、ファン29の減速時間を取得する。
図6に示すように、流体搬送装置60の駆動時間に伴い、圧損指標値は基準値t1よりも大きくなっていく。例えば、圧損指標値(ファン29の減速時間)の基準値t1が10秒であり、ステップS1で取得した圧損指標値は5秒である。
【0089】
ステップS2において、診断部42は、ステップS1で取得した圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しいかを判断する。
【0090】
圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しい場合(ステップS2でYes)、ステップS3に進む。本実施形態では、目詰まり判定閾値Thは5秒であるが、これに限るものではない。ステップS1で取得した圧損指標値は目詰まり判定閾値Thと等しいので、ステップS3に進む。
【0091】
圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しくない場合(ステップS2でNo)、ステップS1に戻る。言い換えると、圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しくなるまで大きくなっていない場合は、ステップS1に戻る。
【0092】
ステップS3において、報知部51は、目詰まり状態が検知されたことを報知する。
【0093】
ステップS4において、取得部41は、基準メンテ間隔a1を取得する。本実施形態では、基準メンテナンス間隔a1は、圧損指標値が、基準値t1の10秒から目詰まり判定閾値Thの5秒になるまでの流体搬送装置60の駆動時間の変化量である。例えば、基準メンテ間隔a1は30日である。
【0094】
ステップS5において、フィルタ32のメンテナンスを行う。本実施形態では、メンテナンスはフィルタ32の洗浄を行う。
【0095】
ステップS6において、取得部41は、圧損指標値を取得する。本実施形態では、
図6に示すように、ステップS5でフィルタ32の洗浄を行うことで、ファン29の減速時間が、目詰まり判定閾値Thの5秒から、基準値の10秒に戻る。その後、時間の経過とともに、圧損指標値は基準値t1よりも大きくなっていく。例えば、圧損指標値(ファン29の減速時間)の基準値t1が10秒であり、ステップS6で取得した圧損指標値は5秒である。
【0096】
ステップS7において、診断部42は、ステップS6で取得した圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しいかを判断する。言い換えると、診断部42は、ファン29の減速時間が目詰まり判定閾値Thと等しい場合、目詰まり状態であると判断する。
【0097】
圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しい場合(ステップS7でYes)、ステップS8に進む。目詰まり判定閾値Thは5秒であり、ステップS6で取得した圧損指標値は目詰まり判定閾値Thと等しいので、ステップS8に進む。圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しくない場合(ステップS7でNo)、ステップS6に戻る。
【0098】
ステップS8において、報知部51は、目詰まり状態が検知されたことを報知する。
【0099】
ステップS9において、取得部41は、メンテナンス後のメンテナンス間隔(以下、メンテナンス後メンテ間隔ともいう。)a2を取得する。本実施形態では、メンテナンス後メンテ間隔a2は、ステップS5でフィルタ32のメンテナンスが行なわれてから、ステップS7で目詰まり状態が検知されるまでの流体搬送装置60の駆動時間の変化量をいう。例えば、メンテナンス後メンテ間隔a2は20日である。
【0100】
ステップS10において、診断部42は、基準メンテ間隔a1とメンテナンス後のメンテ間隔a2との差が、第1判定値より大きいかを判断する。
【0101】
基準メンテ間隔a1とメンテナンス後のメンテ間隔a2との差が、第1判定値より大きい場合(ステップS10でYes)、ステップS11に進む。本実施形態では、第1判定値は5日であるが、これに限るものではない。基準メンテ間隔a1とメンテナンス後メンテ間隔a2との差は10日であり、第1判定値より大きいので、ステップS11に進む。基準メンテ間隔a1とメンテナンス後メンテ間隔a2との差が、第1判定値以下である場合(ステップS10でNo)、ステップS12に進む。
【0102】
ステップS11において、診断部42は、モータ(ファンモータ)30のベアリング30dの異常であると診断する。
【0103】
ステップS12において、診断部42は、フィルタ32の目詰まり異常であると診断する。
【0104】
ステップS13において、出力装置50は、診断部42の診断結果を出力する。本実施形態では、表示部52が、ステップS7で検知された目詰まり状態が、ファンモータのベアリング異常であるという診断(ステップS11)の結果を表示する。
【0105】
(4)特徴
(4-1)
本実施形態に係る診断システム100は、回転装置と、フィルタ32と、凝縮器24とを有する流体搬送装置60、の診断を行う診断システムである。回転装置は、回転することによって流体を搬送するファン29をモータ30によって駆動する。フィルタ32と、凝縮器24とは、流体の流路61に設けられ流体が通過する経路が形成されている。診断システム100は、取得部41と、診断部42と、を備える。取得部41は、モータ30の負荷に関する情報を取得する。診断部42は、少なくとも2時点以上のモータ30の負荷に関する情報に基づいて、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスに関する第1判断およびベアリング30dの故障に関する第2判断を行う。診断部42は、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスを促す診断、又は、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。
【0106】
従来は、フィルタの目詰まりが発生すると、同じファン回転数でもファンモータ負荷が目詰まりしていない状態から増加することから、このファンモータ負荷に相関する物理量として、ファンの駆動力を無くした状態での減速度合いを使って目詰まりを検知している。
【0107】
しかし、ファンモータ負荷はフィルタ目詰まり時以外に、モータのベアリング異常時にも増加するため、従来技術ではモータのベアリング異常でもフィルタ目詰まりであると誤検知してしまう。
【0108】
本実施形態に係る診断システム100では、ファンモータ30の負荷情報から算出したフィルタ32の目詰まり度が異常閾値(目詰まり判定閾値)Thまで達し、フィルタ32の目詰まりを検知した後に、検知要因がベアリング30dの異常でないかを判定する。
【0109】
ファンモータ30から得られる負荷情報に基づいて目詰まり警報を発した後、メンテナンスされることで、ファンモータ30の負荷情報に含まれる圧損分は0になるが、ベアリング30dの異常分は0にはならない。
【0110】
メンテナンスと、それにより変化する負荷情報からベアリング30dの異常分の変化を抽出し、ベアリング30dの異常であるかを判定する。メンテナンスした結果、残っているベアリング30dの異常分の変化を抽出する情報として、フィルタ32のメンテ間隔に関する情報を用いて故障要因を判定する。
【0111】
この診断システム100では、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンス及びベアリング30dの故障に関する判断を精度良く行うことができ、流体搬送装置60の診断工数の削減が可能になる。また、この診断システム100では、故障要因を正確に検知することができ、正しい対処を実施することで、流体搬送装置60の修理工数の削減が可能である。
【0112】
(4-2)
本実施形態に係る診断システム100では、少なくとも2時点以上のモータ30の負荷に関する情報は、モータ30の負荷に関する時系列の情報、及び、メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報の少なくとも1つを含む。
【0113】
この診断システムで100は、モータ30の負荷に関する時系列の情報、及び、メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報を用いることで、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンス及びベアリング30dの故障に関する判断を容易に行うことができる。
【0114】
(4-3)
本実施形態に係る診断システム100では、モータ30の負荷に関する時系列の情報は、モータ30の負荷の経時変化に関する情報、及び、メンテナンスの前後のモータ30の負荷の変化に関する情報の少なくとも1つを含む。メンテナンスを促すタイミングに関する時系列の情報は、メンテナンスを促す間隔に関する情報を含む。
【0115】
この診断システム100では、モータ30の負荷に関する経時変化若しくはメンテナンスの前後での変化に関する情報、又は、メンテナンスを促す間隔に関する情報を用いることで、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンス及びベアリング30dの故障に関する判断を容易に行うことができる。
【0116】
(4-4)
本実施形態に係る診断システム100では、モータ30の負荷に関する情報は、ファン29の駆動力を無くしてからの減速度合いを含む。取得部41は、減速度合いを、ファン29の減速時間又は減速率として取得する。
【0117】
この診断システム100では、モータ30の負荷に関する状態値の変化に関する情報を用いることで、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンス及びベアリング30dの故障に関する判断を容易に行うことができる。
【0118】
(4-5)
本実施形態に係る診断システム100では、第1判断は、フィルタ32と凝縮器24の目詰まりに関する判断を含む。第2判断は、回転装置のベアリング30dの異常に関する判断を含む。
【0119】
この診断システム100では、フィルタ32と凝縮器24の目詰まりが生じた場合において、ベアリング30dの異常が生じていない場合はフィルタ32と凝縮器24のメンテナンスを促す診断を行い、ベアリング30dの異常が生じた場合にベアリング30dの故障判定を下す診断を行うことができる。
【0120】
(4-6)
本実施形態に係る診断システム100では、報知部51をさらに備える。報知部51は、診断部42によってフィルタ32と凝縮器24のメンテナンスを促す診断が行なわれると、メンテナンスを促す報知を行う。診断部42は、モータ30の負荷に関する情報が、所定の目詰まり判定閾値Thを超えると、メンテナンスを促す診断を行う。診断部42は、報知部51による報知が行なわれる間隔が所定レベルまで短くなると、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。
【0121】
この診断システム100では、報知部51による報知間隔を用いることで、ベアリング30dの故障判定を容易に行うことができる。
【0122】
(4-7)
本実施形態に係る診断方法は、回転装置と、フィルタ32と、凝縮器24とを有する流体搬送装置60、の診断を行う診断方法である。回転装置は、回転することによって流体を搬送するファン20をモータ30によって駆動する。フィルタ32と、凝縮器24は、流体の流路61に設けられ流体が通過する経路が形成されている。診断方法は、取得ステップと、診断ステップと、を備える。取得ステップは、モータ30の負荷に関する情報を取得する。診断ステップは、少なくとも2時点以上のモータ30の負荷に関する情報に基づいて、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスに関する第1判断およびベアリング30dの故障に関する第2判断を行う。診断ステップは、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスを促す診断、又は、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。
【0123】
この診断方法では、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンス及びベアリング30dの故障に関する判断を精度良く行うことができ、流体搬送装置60の診断工数の削減が可能になる。
【0124】
(4-8)
本実施形態に係る診断プログラムは、回転装置と、フィルタ32と、凝縮器24とを有する流体搬送装置60、の診断を行う診断システムを、コンピュータによって実現するための診断プログラムである。回転装置は、回転することによって流体を搬送するファン29をモータ30によって駆動する。フィルタ32と凝縮器24は、流体の流路61に設けられ流体が通過する経路が形成されている。コンピュータを、取得手段と、診断手段と、して機能させる。取得手段は、モータ30の負荷に関する情報を取得する。診断手段は、少なくとも2時点以上のモータ30の負荷に関する情報に基づいて、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスに関する第1判断およびベアリング30dの故障に関する第2判断を行う。診断手段は、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンスを促す診断、又は、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行う。
【0125】
この診断プログラムでは、フィルタ32と凝縮器24のメンテナンス及びベアリング30dの故障に関する判断を精度良く行うことができ、流体搬送装置60の診断工数の削減が可能になる。
【0126】
(5)変形例
(5-1)変形例1A
図1に示す診断システム100において、診断部42は、フィルタ32のメンテナンスの終了後に、モータ30の負荷に関する情報が所定値まで戻らない場合に、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行うようにしてもよい。
【0127】
図8は、変形例1Aの診断システムの動作を説明するための図である。
【0128】
図8の縦軸は圧損指標値を示し、横軸は流体搬送装置60の駆動時間を示す。圧損指標値は、モータ30の負荷に関する情報である。変形例1Aでは、圧損指標値は、ファン29の駆動力を無くしてからの減速度合いGであり、ファン29の減速時間である。
【0129】
圧損指標値(減速度合いG)の初期値t11は、フィルタ32の目詰まりが生じていない状態、及び、ベアリング30dの異常が生じていない状態における圧損指標値をいう。
【0130】
目詰まり判定閾値Thは、目詰まり状態であるかを判断するための値である。
【0131】
ベアリング30dが正常であれば、フィルタ32のメンテナンス後に圧損指標値は初期値t11に戻る。しかし、ベアリング30dの異常が発生し、モータ30の負荷が増加した場合、フィルタ32をメンテナンスしてもこの影響分は0にならないため、圧損指標値は初期値t11には戻らない。
【0132】
変形例1Aでは、フィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値t12と初期値t11との差d1から異常要因を判定する。フィルタ32のメンテナンスをしても圧損指標値が回復しない場合、ベアリング30dの異常と判定する。
【0133】
変形例1Aの診断システムのフローチャートを
図9に示す。
【0134】
ステップS21において、取得部41は、圧損指標値を取得する。変形例1Aでは、圧損指標値として、ファン29の減速時間を取得する。
図8に示すように、流体搬送装置60の駆動時間に伴い、圧損指標値は初期値t11よりも大きくなる。例えば、圧損指標値(ファン29の減速時間)の初期値t11が10秒であり、ステップS21で取得した圧損指標値は5秒である。
【0135】
ステップS22において、診断部42は、ステップS21で取得した圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しいか判断する。
【0136】
圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しい場合(ステップS22でYes)、ステップS23に進む。変形例1Aで目詰まり判定閾値Thは5秒とすると、ステップS21で取得した圧損指標値は目詰まり判定閾値Thと等しいので、ステップS23に進む。圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しくない場合(ステップS22でNo)、ステップS21に戻る。
【0137】
ステップS23において、報知部51は、目詰まり状態が検知されたことを報知する。
【0138】
ステップS24において、フィルタ32のメンテナンスを行う。変形例1Aでは、メンテナンスはフィルタ32の洗浄を行う。
【0139】
ステップS25において、診断部42は、ステップS24のフィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値t12と初期値t11との差d1が第2判定値より大きいか判断する。ステップS24でフィルタ32の洗浄を行うことで、圧損指標値は目詰まり判定閾値Thよりも小さくなる。
【0140】
フィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値s12と初期値s11との差が第2判定値より大きい場合(ステップS25でYes)、ステップS26に進む。変形例1Aでは、第2判定値は1秒であるが、これに限るものではない。変形例1Aでは、ステップS24のフィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値t12は8秒である。初期値t11は10秒なので、メンテナンス後の圧損指標値t12と初期値t11との差d1は2秒である。従って、フィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値t12と初期値t11との差d1は第2判定値より大きいので、ステップS26に進む。
【0141】
ステップS26において、診断部42は、ファンモータ30のベアリング30dが異常であると診断する。
【0142】
フィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値t12と初期値t11との差d1が第2判定値以下である場合(ステップS25でNo)、ステップS27に進む。
【0143】
ステップS27において、診断部42は、ファンモータ30のベアリング30dが正常であると診断する。言い換えると、ステップS27で、ステップS22で検知された目詰まり状態について、ファンモータ30のベアリング30dの異常は発生しておらず、フィルタ32の目詰まりであると診断する。
【0144】
ステップS28において、出力装置50は、制御装置40の診断結果を出力する。変形例1Aでは、表示部52が、ステップS22で検知された目詰まり状態が、ファンモータ30のベアリング30dが異常であるという診断(ステップS26)の結果を表示する。
【0145】
変形例1Aでは、フィルタ32のメンテナンスをした結果、残っているベアリング30dの異常分の変化を抽出する情報として、フィルタ32のメンテナンス後の目詰まり度に関する情報を用いて、故障要因を判定する。
【0146】
変形例1Aの診断システムでは、フィルタ32のメンテナンス後のモータ30の負荷に関する状態値を用いることで、ベアリング30dの故障判定を容易に行うことができる。
【0147】
(5-2)変形例1B
図1に示す診断システム100において、診断部42は、フィルタ32のメンテナンスの前後において、モータ30の負荷に関する情報の変化量が、所定量よりも小さくなった場合に、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行うようにしてもよい。
【0148】
ベアリング30dが正常であれば、フィルタ32のメンテナンス後に圧損指標値は初期値t11に戻る。しかし、ベアリング30dの異常が発生し、モータ30の負荷が増加した場合、フィルタ32をメンテナンスしてもこの影響分は0にならないため、圧損指標値は初期値t11には戻らない。
【0149】
変形例1Bでは、フィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値t12と目詰まり判定閾値Thとの差d2(
図8参照)から異常要因を判定する。フィルタ32のメンテナンスをしても、圧損指標値が回復しない場合、ベアリング30dの異常であると判定する。
【0150】
変形例1Bの診断システムのフローチャートを
図10に示す。
図10に示すフローチャートと
図9に示すフローチャートとの相違点は、
図10のフローチャートでは、ステップS25に替えて、ステップS250を有している点である。
【0151】
ステップS250において、目詰まり判定閾値Thとメンテナンス後の圧損指標値t12との差d2が第3判定値より小さいと判断した場合(ステップS250でYes)、ステップS26に進む。変形例1Bでは、第3判定値は4秒であるが、これに限るものではない。また、目詰まり判定閾値Thは5秒であり、メンテナンス後の圧損指標値t12は8秒である。変形例1Bでは、目詰まり判定閾値Thとメンテナンス後の圧損指標値t12との差d2は3秒である。従って、目詰まり判定閾値Thとメンテナンス後の圧損指標値t12との差d2は第3判定値より小さく、ステップS26に進む。
【0152】
ステップS250において、目詰まり判定閾値Thとメンテナンス後の圧損指標値t12との差d2が第3判定値以上である判断した場合(ステップS250でNo)、ステップS27に進む。
【0153】
変形例1Bでは、フィルタ32のメンテナンスをした結果、残っているベアリング30dの異常分の変化を抽出する情報として、メンテナンス前後の目詰まり度の変化に関する情報を用いて、故障要因を判定する。
【0154】
変形例1Bの診断システムでは、フィルタ32のメンテナンス前後のモータ30の負荷に関する状態値を用いることで、ベアリング30dの故障判定を容易に行うことができる。
【0155】
(5-3)変形例1C
図1に示す診断システム100において、診断部42は、フィルタ32のメンテナンスの直後に、モータ30の負荷に関する情報である圧損指標値の経時変化率が、所定値よりも大きくなった場合に、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行うようにしてもよい。
【0156】
ベアリング30dの異常が発生した場合、フィルタ32のメンテナンス後の圧損指標値の経時変化率b2は、ベアリング30dが正常であるときの圧損指標値の経時変化率b1に比べて大きくなる(
図6参照)。変形例1Cでは、この圧損指標値の経時変化率の違いから異常要因を判定する。
【0157】
基準経時変化率b1は、ベアリング30dが正常であるときの圧損指標値の経時変化率をいい、例えば、流体搬送装置60の駆動時間1日あたり0.5W(0.5W/日)である。
【0158】
フィルタ32のメンテナンス後の経時変化率b2は、フィルタ32のメンテナンスを実施した後の、圧損指標値の経時変化率をいい、例えば、ベアリング30dの異常が発生した場合、流体搬送装置60の駆動時間1日あたり5W(5W/日)である。
【0159】
変形例1Cの診断システムのフローチャートを
図11に示す。
図11に示すフローチャートと
図7に示すフローチャートとの相違点は、
図11のフローチャートは、ステップS4に替えてステップS40を有している点、ステップS9に替えてステップS90を有している点、及びステップS10に替えてステップS100を有している点である。
【0160】
ステップS40において、取得部41は、基準経時変化率b1を取得する。
【0161】
ステップS90において、取得部41は、メンテナンス後の経時変化率b2を取得する。
【0162】
ステップS100において、診断部42は、メンテナンス後の経時変化率b2が基準経時変化率b1よりも大きいか判断する。メンテナンス後の経時変化率b2が基準経時変化率b1よりも大きい場合(ステップS100でYes)、ステップS11に進む。
メンテナンス後の経時変化率b2が基準経時変化率b1以下である場合(ステップS100でNo)、ステップS12に進む。
【0163】
図12は、ベアリング損失を説明するための図である。
図11の縦軸は圧損指標値を示し、横軸は流体搬送装置60の駆動時間を示す。圧損指標値は、モータ30の負荷に関する情報である。
【0164】
第1メンテナンス間隔a11は、圧損指標値が基準値t1である時から目詰まりを検知するまでの、流体搬送装置60の駆動時間の変化量をいう。圧損指標値が基準値t1である時、ベアリング30dは正常である。第1メンテナンス間隔a11では、圧損指標値が基準値t1から目詰まり判定閾値Thになるまでの間に、ベアリング30dの異常が発生している。
【0165】
第2メンテナンス間隔a12は、ベアリング30dの異常発生後に1回目のフィルタ32のメンテナンスが実施されてから目詰まりを検知するまでの、流体搬送装置60の駆動時間の変化量をいう。第3メンテナンス間隔a13は、ベアリング30dの異常発生後に2回目のフィルタ32のメンテナンスが実施されてから目詰まりを検知するまでの、流体搬送装置60の駆動時間の変化量である。
【0166】
ベアリング30dが正常であれば、目詰まり判定閾値Thで正しく、フィルタ32の目詰まり状態が検知されるが、ベアリング30dの異常が発生し、モータ30の負荷が増加した場合、圧損指標値は実際の目詰まり度とは異なる状態になり、フィルタ32が目詰まりしていないのに目詰まりしていると誤検知してしまう。言い換えると、ベアリング30dの異常が発生すると、圧損指標値にベアリング損失が含まれる。例えば、ベアリング30dが正常であれば、フィルタ32のメンテナンスを実行した後の圧損指標値は基準値t1に戻る(
図6参照)。しかしながら、
図12に示すように、ベアリング30dの異常が発生した場合は、ベアリングの損失がファン29の運転時間(流体搬送装置60の駆動時間)に伴い増加する。従って、基準値t1、1回目のメンテナンス後の圧損指標値t2、及び2回目のメンテナンスを実行した後の圧損指標値t3の関係は、t1<t2<t3となる。
【0167】
また、
図12に示すように、第1メンテナンス間隔a11よりも第2メンテナンス間隔a12が短くなり、第2メンテナンス間隔a12よりも第3メンテナンス間隔a13が短くなる。従って、フィルタ32のメンテナンスをした結果、残っているベアリング30dの異常分の変化を抽出する情報として、フィルタ32のメンテ周期に関する情報を用いて、故障要因を判定してもよい。
【0168】
また、
図12に示すように、ベアリング損失がファン29の運転時間に伴い増加していることで、目詰まり度は一定で増加しても、このベアリング損失分(時間変化)が加わるため、第1メンテナンス期間a11で、ベアリング30dの異常が発生した後の経時変化率b11、第2メンテナンス間隔a12における経時変化率b12、及び第3メンテナンス間隔a13における経時変化率b13の関係は、b11<b12<b13となる。また、経時変化率b11~b13は、基準経時変化率b1(
図6参照)に比べて大きくなる。
【0169】
変形例1Cの診断システムでは、メンテナンス直後のモータ30の負荷に関する状態値を用いることで、ベアリング30dの故障判定を容易に行うことができる。
【0170】
(5-4)変形例1D
図1に示す診断システム100において、診断部42は、モータ30の負荷に関する情報が、メンテナンス閾値を超えていない時点において、モータ30の負荷に関する情報の経時変化率が所定値よりも大きくなった場合に、ベアリング30dの故障判定を下す診断を行うようにしてもよい。
【0171】
変形例1Dの診断システムのフローチャートを
図13に示す。
【0172】
図13のフローチャートにおいて、ステップS35の基準メンテ間隔は、本実施形態の
図7のステップS4と同様にして取得し、メンテナンス後メンテ間隔は
図7のステップS9と同様にして取得するため、詳細な説明を省略する。また、ステップS34の基準経時変化率は、
図11のステップS40と同様にして取得するため、詳細な説明を省略する。
【0173】
ステップS31において、取得部41は、圧損指標値を取得する。
【0174】
ステップS32において、診断部42は、圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しいか判断する。
【0175】
圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しい場合(ステップS32でYes)、ステップS33に進む圧損指標値が目詰まり判定閾値Thと等しくない場合(ステップS32でNo)、ステップS35に進む。
【0176】
ステップS33において、フィルタ32のメンテナンスを行う。変形例1Dでは、メンテナンスはフィルタ32の洗浄を行う。
【0177】
ステップS34において、基準メンテ間隔a1とメンテナンス後メンテ間隔a2との差が第1判定値より大きいかを判断する。
【0178】
基準メンテ間隔a1とメンテナンス後メンテ間隔a2との差が第1判定値より大きい場合(ステップS34でYes)、ステップS36に進む。基準メンテ間隔a1とメンテナンス後メンテ間隔a2との差が第1判定値以下である場合(ステップS34でNo)、ステップS37に進む。
【0179】
ステップS35において、経時変化率が基準経時変化率b1よりも大きいか判断する。変形例1Dでは、ステップS35の経時変化率は、圧損指標値(減速度合いG)が目詰まり判定閾値Thを超えていない時点で取得している点が、
図11のステップS90のメンテナンス後の経時変化率とは異なる。
【0180】
経時変化率が基準経時変化率b1よりも大きい場合(ステップS35でYes)、ステップS36に進む。経時変化率が基準経時変化率b1以下の場合(ステップS35でNo)、ステップS31に戻る。
【0181】
ステップS36において、診断部42は、ファンモータ30のベアリング30dが異常であると診断する。
【0182】
ステップS37において、診断部42は、フィルタ32の目詰まり異常であると診断する。
【0183】
ステップS38において、出力装置50は、診断部42の診断結果を出力する。変形例1Dでは、表示部52が、ステップS7で検知された目詰まり状態が、ファンモータ30のベアリング30dの異常であるという診断(ステップS36)の結果を表示する。
【0184】
変形例1Dの診断システムでは、メンテナンス閾値を超えていない場合でも、ベアリング30dの故障判定を早期に行うことができる。
【0185】
(5-5)変形例1E
本実施形態では、制御装置40は、モータ負荷に関する情報(圧損指標値)として、回転体の駆動力を無くしてからの減速度合いGを取得する場合について説明したが、これに限るものではない。制御装置40は、モータ30の負荷に関する情報は、モータ30の負荷を取得してもよい。取得部41は、モータ30の負荷を、モータ30の電流、電圧、電力又は周波数から取得する。例えば、取得部41は、モータ30が所定回転数で回っているときの電力値、電流値、又は電力値と電流値の両方を取得するようにしてもよい。
【0186】
(5-6)変形例1F
目詰まり判定閾値Thは、予め定められた値または過去の測定値から得られた値であってもよい。これにより、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりを検知する精度を変更できる。予め定められた値とは、例えば、製品出荷時の値である。過去の測定値から得られた値とは、例えば、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりのない初期状態での測定値から得られた値、あるいは、初期状態から現在までの一又は複数の時点での測定値から得られた値である。
【0187】
具体例を示すと、目詰まり判定閾値Thは、標準的な使用環境を想定した値に、予め(例えば、製品出荷時に)定められている。目詰まり判定閾値Thと圧力損失との関係が大きく変化する環境に製品が持ち込まれた場合(例えば、標高の高い(空気密度が低い)環境に持ち込まれた場合)、目詰まりのない初期状態において、フィルタ32又は凝縮器24に供給される流体の密度などの環境値が現地で測定される。目詰まり判定閾値Thは、測定された環境値に応じて決まる値に更新される。これにより、使用環境条件によらずに、目詰まりを検知する精度を調整できる。あるいは、製品出荷検査時に初期状態で測定された環境値に応じて目詰まり判定閾値Thを設定することで、製品の個体差を補正できる。
【0188】
(5-7)変形例1G
制御装置40は、ファン29の速度が第1所定速度から第2所定速度まで減速するのに要した時間Tdの短縮を検出することで、減速度合いG(圧損指標値)の増大を測定してもよい。例えば、制御装置40は、モータ30の回転を検出する回転センサから出力されるセンサデータに基づいてファン29の回転速度Vrを計測する。制御装置40は、計測された回転速度Vrが第1所定速度から第2所定速度まで減速するのに要した時間Tdが基準時間RTよりも短い場合、測定された減速度合いGが目詰まり判定閾値Thよりも大きいと判定する。
【0189】
(5-8)変形例1H
制御装置40は、ファン29の駆動力を無くしてからファン29が停止するまでのファン29の回転回数Nrの減少を検出することで、減速度合いGの増大を測定してもよい。例えば、制御装置40は、モータ30の回転を検出する回転センサから出力されるセンサデータに基づいてファン29の回転回数Nrを計測する。制御装置40は、計測された回転回数Nrが基準回数RNよりも少ない場合、測定された減速度合いGが目詰まり判定閾値Thよりも大きいと判定する。
【0190】
(5-9)変形例1I
制御装置40は、ファン29の速度が第1所定速度になってから所定時間経過後における回転数revの低下を検出することで、減速度合いGの増大を測定してもよい。例えば、制御装置40は、モータ30の回転を検出する回転センサから出力されるセンサデータに基づいてファン29の回転数revを計測する。制御装置40は、計測された回転数revが基準回転数Rrevよりも低い場合、測定された減速度合いGが目詰まり判定閾値Thよりも大きいと判定する。
【0191】
(5-10)変形例1J
制御装置40は、ファン29によるモータ30の逆起電圧の波高値Vwが第1波高値から第2波高値まで減少するのに要した時間Tvの短縮を検出することで、減速度合いGの増大を測定してもよい。例えば、制御装置40は、モータ30の電圧を検出する電圧センサから出力されるセンサデータに基づいて、ファン29によるモータ30の逆起電圧の波高値Vwを計測する。制御装置40は、計測された波高値Vwが第1波高値から第2波高値まで減少するのに要した時間Tvが基準時間RTvよりも短い場合、測定された減速度合いGが基準値Rよりも大きいと判定する。
【0192】
(5-11)変形例1K
制御装置40は、ファン29によるモータ30の逆起電圧の周波数fが第1周波数から第2周波数まで減少するのに要した時間Tfの短縮を検出することで、減速度合いGの増大を測定してもよい。例えば、制御装置40は、モータ30の電圧を検出する電圧センサから出力されるセンサデータに基づいて、ファン29によるモータ30の逆起電圧の周波数fを計測する。制御装置40は、計測された周波数fが第1周波数から第2周波数まで減少するのに要した時間Tfが基準時間RTfよりも短い場合、測定された減速度合いGが基準値Rよりも大きいと判定する。
【0193】
(5-12)変形例1L
出力装置50は、圧損増加情報をユーザ又は外部機器に報知してもよい。出力装置50は、診断結果をユーザ又は外部機器に報知してもよい。これにより、ユーザ又は外部機器は、フィルタ32若しくは凝縮器24の目詰まりであるか、又は、ベアリング30dの異常であるかを認知できる。
【0194】
出力装置50から出力される圧損増加情報は、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりを表す情報であってもよい。これにより、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりを表す情報を取得可能となる。フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりを表す情報とは、例えば、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まり度合いである。目詰まり度合いが出力されることで、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりのレベルを認知できる。
【0195】
(5-13)変形例1M
制御装置40は、例えば、相違する複数の目詰まり判定閾値Thと減速度合いGの測定値とを比較することで、目詰まり度合いを測定する。出力装置50は、制御装置40により測定された目詰まり度合いに応じて圧損増加情報の出力形式を変更する。これにより、出力形式の変更によって、目詰まり度合いの違いを識別可能となる。出力形式の変更とは、例えば、音の強弱や高低、光の明暗、表示内容の変更、通信信号の変更などである。
【0196】
(5-14)変形例1N
制御装置40は、減速度合いGの増大に応じて、ファン29を逆転させることで空気Aを逆流させてもよい。これにより、フィルタ32又は凝縮器24の目詰まりを浄化でき、目詰まりの解消を図ることができる。例えば、制御装置40は、減速度合いGが目詰まり判定閾値Thよりも増大すると、ファン29を一定期間逆転させる。
【0197】
(5-15)変形例1O
目詰まり判定閾値Thは、空気Aの流体密度に応じて変化してもよい。これにより、フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりを検知する精度を調整できる。目詰まり度合いが変化しなくても、流体の温度、湿度、圧力、種類などで流体密度が変化すると、減速度合いGが変化する。静圧Ps及び動圧Pvは、流体密度に相関するからである。制御装置50は、空気Aの流体密度に応じて目詰まり判定閾値Thを補正することで、目詰まりの検知誤差を低減できる。空気A等の流体の密度は、流体の物性値に応じて決まる定数でもよいし、センサにより実測されてもよい。
<第2実施形態>
流体搬送装置は、油とは異なる液体を冷却する液体冷却装置に適用されてもよい。第2実施形態の液体冷却装置は、第1実施形態の油冷却装置1と同様の構成及び効果を有してよい。第1実施形態の油冷却装置1と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。第2実施形態の液体冷却装置は、例えば、工作機械90の切削液を冷却する装置である。
<第3実施形態>
流体搬送装置は、気体を冷却する気体冷却装置に適用されてもよい。第3実施形態の気体冷却装置は、第1実施形態の油冷却装置1と同様の構成及び効果を有してよい。第1実施形態の油冷却装置1と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。第3実施形態の気体冷却装置は、例えば、冷房または暖房の少なくとも一方の空調運転を行う空気調和機である。この場合、流体が供給される熱交換器は、凝縮器として機能する熱交換器であってもよいし、蒸発器として機能する熱交換器であってもよい。
【0198】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0199】
例えば、"内部の流路"は、仕切りにより仕切られた流路であれば、筐体内部の流路に限られず、筐体とは異なる部材の内部の流路でもよく、例えば、ダクト等の管の内部の流路(中空部分)でもよい。
【0200】
内部の流路に沿って搬送される流体は、空気以外の気体でもよいし、例えば水や油などの液体でもよい。つまり、流体搬送装置は、内部の流路に沿って流体を回転体の回転駆動により搬送する装置であれば、空気以外の気体を搬送する装置でも、例えば水や油などの液体を搬送する装置でもよい。
【0201】
流体を搬送する回転体は、ファンに限られず、ポンプ内の回転体など、他の回転体でもよい。前記ポンプは、例えば、ギアポンプ、ベーンポンプなどである。回転体を回転させるモータは、交流モータでも、直流モータでもよい。
【0202】
流路に設けられる構造物は、フィルタ32又は凝縮器24に限られず、蒸発器25などの他の構造物でもよい。
【0203】
構造物のメンテナンスは、フィルタ32の洗浄による付着物の除去に限られない。凝縮器24の洗浄でもよい。また、フィルタ32及び凝縮器24の洗浄でもよい。また、フィルタ32又は凝縮器24のいずれか一方の交換でもよいし、フィルタ32及び凝縮器24の交換でもよい。
【0204】
流体搬送装置60は、流体を冷却する冷却装置に備えられた装置に限られず、冷却装置自体であってもよい。
【符号の説明】
【0205】
21…圧縮機
22…四路切換弁
24…凝縮器(第1の熱交換器、構造物)
25…蒸発器(第2の熱交換器、構造物)
23…アキュムレータ
29…ファン(回転体)
30…モータ
30d…ベアリング(軸受)
1…油冷却装置
3…筐体
31…吸込口
32…フィルタ(構造物)
33…吹出口
80…底フレーム
81…油溜め部
40…制御装置
41…取得部
42…診断部
43…制御部
45…駆動回路
46…ヒートシンク
50…出力装置
51…報知部
52…表示部
60…流体搬送装置
61…流路
62…内壁
90…工作機械
100…診断システム
EV…電子膨張弁
HGB…ホットガスパイパス弁
L1,L2,L3,L4…配管
L10…ホットガスパイパス配管
P…循環ポンプ
RC…冷媒回路
T…油タンク
V1,V2…閉鎖弁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0206】