(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146086
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂配管部材及びその製造方法並びにプレハブ配管
(51)【国際特許分類】
F16L 47/14 20060101AFI20241004BHJP
F16L 23/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16L47/14
F16L23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058799
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391033724
【氏名又は名称】シーケー金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】井関 知美
(72)【発明者】
【氏名】青山 航大
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一善
(72)【発明者】
【氏名】山本 匡秀
(57)【要約】
【課題】フランジ部を有する樹脂配管部材において、フランジ部の強度を高める。
【解決手段】熱可塑性樹脂の筒状の配管本体10と、前記配管本体10と一体であり、前記配管本体10の一方の端縁に位置し、前記配管本体10の開口部の周縁から外方に張り出すフランジ部20と、を有し、特定の試験方法により前記フランジ部20に相当する部分が解裂しないことよりなる。前記フランジ部20の形状に対応するキャビティを有する金型に、熱可塑性樹脂の筒状の素管の端部を挿入し、前記素管の端部を特定の温度及び圧力で、前記フランジ部20を形成する工程を有することよりなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の筒状の配管本体と、前記配管本体と一体であり、前記配管本体の一方の端縁に位置し、前記配管本体の開口部の周縁から外方に張り出すフランジ部と、を有し、
下記試験方法により前記フランジ部に相当する部分が解裂しない、樹脂配管部材。
<試験方法>
樹脂配管部材から軸線に沿う断面で切断し、フランジ部を含む試験片を得る。得られた試験片のフランジ部に相当する部分を配管本体に相当する部分から離れる方向に50mm/分で引っ張り、フランジ部に相当する部分の解裂の有無を判定する。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載の樹脂配管部材。
【請求項3】
請求項1又は2の記載の樹脂配管部材を有する、プレハブ配管。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂配管部材の製造方法であって、
前記フランジ部の形状に対応するキャビティを有する金型に、熱可塑性樹脂の筒状の素管の端部を挿入し、前記素管の端部を150℃以上とし、前記素管を前記金型への挿入方向に0.07MPa以上で押し付けて、前記フランジ部を形成する工程を有する、樹脂配管部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂配管部材及びその製造方法並びにプレハブ配管に関する。
【背景技術】
【0002】
給水管等の配管や継手として、樹脂製の配管部材(樹脂配管部材)が用いられる。樹脂配管部材は、耐震性に優れるという利点を有する。
例えば、ポリエチレン製の樹脂配管部材は、いわゆる電気融着継手で配管同士を接続する必要がある。しかし、施工現場で電気融着継手による接続処理は、作業が煩雑となる場合がある。
また、樹脂配管部材の接続は、いわゆるバット融着により行われる。バット融着は、一対の樹脂配管の端部を加熱し、その端部を突き合せて融着する。バット融着では、融着部の品質が不安定であり、融着部のバリ除去が必要となる。加えて、施工現場にて、樹脂配管をバット融着機まで持ってくる必要があり、縦管等の配管には適用できない。
さらに、施工現場において、現場の施工作業の簡便化及び施工作業の迅速化(施工性の向上)が求められている。
こうした問題に対し、樹脂管の端部側に溶融成形された接続部(フランジ部)を有し、この接続部を用いて配管接続が可能であることを特徴とする樹脂配管部材が提案されている(特許文献1)。特許文献1の発明では、現場での施工性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明では、フランジ部の強度が不十分であるという問題があった。
そこで、本発明は、フランジ部の強度の高い樹脂配管部材を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が検討した結果、従来の技術では、樹脂管の端部を金型内で溶融しつつ、フランジ部を成形すると、樹脂管の端部が折り返されてフランジ部になるという知見を得た。かかる製造方法によると、折り返されて形成されたフランジ部と配管本体との境界近傍に界面が形成され、この界面を解裂しにくくすることで、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
熱可塑性樹脂の筒状の配管本体と、前記配管本体と一体であり、前記配管本体の一方の端縁に位置し、前記配管本体の開口部の周縁から外方に張り出すフランジ部と、を有し、
下記試験方法により前記フランジ部に相当する部分が解裂しない、樹脂配管部材。
<試験方法>
樹脂配管部材から軸線に沿う断面で切断し、フランジ部を含む試験片を得る。得られた試験片のフランジ部に相当する部分を配管本体に相当する部分から離れる方向に50mm/分で引っ張り、フランジ部に相当する部分の解裂の有無を判定する。
<2>
前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂である、<1>に記載の樹脂配管部材。
【0006】
<3>
<1>又は<2>の記載の樹脂配管部材を有する、プレハブ配管。
【0007】
<4>
<1>又は<2>に記載の樹脂配管部材の製造方法であって、
前記フランジ部の形状に対応するキャビティを有する金型に、熱可塑性樹脂の筒状の素管の端部を挿入し、前記素管の端部を150℃以上とし、前記素管を前記金型への挿入方向に0.07MPa以上で押し付けて、前記フランジ部を形成する工程を有する、樹脂配管部材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂配管部材によれば、フランジ部の強度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂配管部材の側面視の部分断面図である。
【
図2】本発明に一実施形態に係る樹脂配管部材の正面図である。
【
図3】(a)試験片の正面図である。(b)試験片の左側面図である。
【
図6】樹脂配管部材の製造方法を説明する工程図である。
【
図7】本発明のプレハブ配管の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載した数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
(樹脂配管部材)
本発明の樹脂配管部材は、筒状の配管本体と、配管本体の端縁に位置するフランジ部とを有する。以下、本発明の樹脂配管部材の一実施形態について、図面を参照して説明する。
樹脂配管部材の用途としては、空調用、給水・給湯用、ガス用、燃料用、工場排水用の配管又は継手が好ましい。
【0012】
図1の樹脂配管部材1は、軸線O1を管軸とする筒状の配管本体10と、配管本体10の軸線O1方向の端部に位置するフランジ部20とを有する。配管本体10とフランジ部20とは、一体となっている。フランジ部20の端面22は、樹脂配管部材1の端面となっている。
配管本体10は、円筒状又は多角筒状のいずれでもよい。但し、樹脂配管部材1を給水管、排水管又はこれらの継手として用いる場合には、通常、配管本体10は円筒状である。
【0013】
フランジ部20は、配管本体10の端縁で、開口部2の周縁から外方に張り出している。フランジ部20は、開口部2の周縁を周回している(
図2)。即ち、フランジ部20は、正面視で、軸線O1を中心とする環状となっている。
【0014】
樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリエステル(熱可塑性ポリエチレンテレフタレート等)等を例示できる。中でも、耐震性をより高め、耐久性をより高める観点から、樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
オレフィン系樹脂管は硬質塩化ビニル管に比べてJIS K 6815-1,JIS K 6815-3に従って測定される引張破断伸びが高い。硬質塩化ビニル管の引張破断伸びが50~150%であるのに対して、オレフィン系樹脂管の引張破断伸びは350%以上である。特に、ISO/TR9080に規定する外挿方法で、PE100の高密度ポリエチレンの管は、引張破断伸びが500%以上となるため、地震によって損傷するのをより良好に抑制することができる。
ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリαオレフィン等が好適である。
【0015】
熱可塑性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、例えば、0.1~25g/10分が好ましく、0.1~10g/10分がより好ましく、0.29~0.45g/10分がさらに好ましくい。MFRが上記下限値以上であると、フランジ部20をより容易に形成できる。MFRが上記上限値以下であると、熱安定性をより高められる。
MFRは、JIS K 7210:1999に従い、試験温度220℃、試験荷重10kgで測定できる。
【0016】
熱可塑性樹脂の比重は、特に限定されないが、例えば、942~953kg/m3である。
熱可塑性樹脂の比熱は、特に限定されないが、例えば、1.9~2.3kJ/kg・[K]である。
熱可塑性樹脂の熱伝導率は、特に限定されないが、例えば、0.46~0.5W/m・Kである。
【0017】
熱可塑性樹脂は、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を含む組成物でもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂の融点(即ち、樹脂配管部材1の溶融温度)は、125~260℃が好ましく、150~260℃がより好ましい。熱可塑性樹脂の融点が上記下限値以上であると、後述する製造方法において、端面22での焼けの発生をより良好に抑制できる。熱可塑性樹脂の融点が上記上限値以下であると、後述する製造方法において、流動性が高まって、フランジ部20をより容易に形成できる。
【0019】
樹脂配管部材1は、外周面及び内周面の少なくとも一方に表層を有する多層構造でもよい。例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有する表層を有することで、樹脂配管部材1は、空調用、給湯用、ガス用又は燃料用としてより好適である。エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有する表層とすることで、水素や酸素、プロパン、ブタン等のガスや、ガソリンやベンゼン等の炭化水素を透過しにくくなるためである。
表層は、例えば、無機繊維及び有機繊維の少なくとも一方を含んでもよい。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコン・チタン・炭素複合繊維、ボロン繊維、又は金属繊維等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、又はポリアミド繊維等が挙げられる。表層が、これらの繊維を含むと、樹脂配管部材1の引張強度を高め、熱膨張をより抑制できる。また、表層は、フッ素樹脂を含んでもよい。表層がフッ素を含むことで、酸やアルカリ等に対する耐性(耐薬品性)を高められる。
また、上記表層と同様の層を樹脂配管部材1の壁内に設けてもよい。
【0020】
樹脂配管部材1の長さ(一方の端面22から他方の端面までの距離)は、用途に応じて適宜決定する。
【0021】
樹脂配管部材1の配管本体10の太さ(但し、拡径部12を除く)は、用途等に応じて適宜決定される。例えば、配管本体10が給水管又は排水管であれば、JIS規格の規定に準じて、配管本体10の外径(呼び径)R1を決定してもよい。外径R1は、27~216mmが好ましく、45~114mmがより好ましい。
配管本体10の内径r1は、呼び径R1に応じて適宜決定する。
【0022】
配管本体10の筒壁11の厚さt1は、呼び径R1、配管本体10に求める強度等を勘案して決定できる。厚さt1は、例えば、2~30mmが好ましく、3.5~20mmがより好ましく、3.5~10mmがさらに好ましい。厚さt1が上記下限値以上であると、配管本体10の強度をより高められる。厚さt1が上記上限値以下であると、軽量かつ高強度を両立できるため、施工性をより高められる。
【0023】
フランジ部20の高さh1は、呼び径R1、フランジ部20に求める強度等を勘案して決定される。高さh1は、例えば、10~50mmが好ましく、15~30mmがより好ましい。高さh1が上記下限値以上であると、フランジ部20の強度をより高められる。高さh1が上記上限値以下であると、フランジ部20を他の部材のフランジ部と突き合せ、これをクランプ等で固定する際に、呼び径R1に応じた汎用のクランプを利用できる。
【0024】
フランジ部20の幅w1は、呼び径R1、フランジ部20に求める強度等を勘案して決定される。幅w1は、例えば、15~90mmが好ましく、20~75mmがより好ましい。幅w1が上記下限値以上であると、引抜応力に対する剛性をより高められる。引抜応力は、接続対象物と接続された状態で、樹脂配管部材1を接続対象物から離れる方向に引っ張った時に生じる応力である。幅w1が上記上限値以下であると、フランジ部20の剛性をより高められる。これは、接続対象物に対して、フランジ部20をボルト等で固定する場合、ボルト同士の間隔が大きくなる。ボルト同士の間隔が大きくなると、ボルトの締め付け力を高める必要が生じ、フランジ部20への負荷が大きくなるためである。加えて、幅w1が上記上限値以下であると、樹脂配管部材1の最大径が過度に大きくならず、よりコンパクトにできる。
幅w1は、正面視で、フランジ部20の内縁23から外縁24までの距離である。
なお、幅w1は、端縁s22に向かうに従い大きくなってもよい。この場合、幅w1は、軸線O1方向で最も短い長さを意味する。
【0025】
フランジ部20を突出幅w11は、呼び径R1、フランジ部20に求める強度等を勘案して決定される。突出幅w11は、例えば、15~90mmが好ましく、20~75mmがより好ましい。突出幅w11が上記下限値以上であると、引抜応力に対する剛性をより高められる。引抜応力は、接続対象物と接続された状態で、樹脂配管部材1を接続対象物から離れる方向に引っ張った時に生じる応力である。突出幅w11が上記上限値以下であると、フランジ部20の剛性をより高められる。これは、接続対象物に対して、フランジ部20をボルト等で固定する場合、ボルト同士の間隔が大きくなる。ボルト同士の間隔が大きくなると、ボルトの締め付け力を高める必要が生じ、フランジ部20への負荷が大きくなるためである。加えて、幅w1が上記上限値以下であると、樹脂配管部材1の最大径が過度に大きくならず、よりコンパクトにできる。突出幅w11は、側面視で、配管本体10の外面とフランジ部20との境界からフランジ部20の外側面25までの距離である。
【0026】
本実施形態の樹脂配管部材1は、開口部2の周縁(即ちフランジ部20の内縁)23の頂角(即ち、内側面27と端面22との交点)が略90°となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、内縁23が面取りされてテーパー状となっていてもよいし、端面22及び内縁23がR面(曲面)であるフィレットとなっていてもよい。
樹脂配管部材1は、フランジ部20の外縁24の頂角(即ち、外側面25と端面22との交点)が略90°となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、外縁24が面取りされて、テーパー状となっていてもよいし、端面22及び外縁24がR面(曲面)であるフィレットとなっていてもよい。
【0027】
樹脂配管部材1は、下記試験方法による引張試験において、フランジ部20に相当する部分(フランジ相当部)が解裂しないことが好ましい。
樹脂配管部材1には、フランジ部20を成形した際に、配管本体10跡とフランジ部20との境界に界面21が形成されている。この界面21は、目視できないものの、他の部分に比べて解裂しやすい。
本発明においては、特定の引張試験で試験片が解裂しないため、樹脂配管部材1の強度がより高められている。
【0028】
<試験方法>引張試験
樹脂配管部材から軸線に沿う断面で切断し、フランジ部を含む試験片を得る。得られた試験片のフランジ部に相当する部分を配管本体に相当する部分から離れる方向に50mm/分で引っ張り、フランジ部に相当する部分の解裂の有無を判定する。
【0029】
図2に示すように、樹脂配管部材1から試験片s1を切り出す。試験片s1は、軸線O1に沿う断面で切断して得られる。
図3(a)、(b)に試験片s1を示す。
図3(a)は、試験片s1の切断面を見た図である。
図3(b)は、樹脂配管部材1の径方向外側から見た図である。
図3の試験片s1は、長尺矩形の配管本体相当部s10と、配管本体相当部s10の長さ方向の先端に位置する矩形のフランジ相当部s20とを有する。フランジ相当部s20の幅sw1は、配管本体相当部s10の幅sw10よりも大きくなっている。
【0030】
試験片s1において、配管本体相当部s10は、配管本体10に相当する部分である。試験片s1において、フランジ相当部s20は、フランジ部20に相当する部分である。
試験片s1において、端縁(配管本体相当部s10とは反対の端縁)s22は、樹脂配管部材1の端面22に相当する。
試験片s1において、端縁s25は、樹脂配管部材1の外側面25に相当する。
試験片s1において、端縁s27は、樹脂配管部材1の内側面27方向の端縁である。
試験片s1において、頂角s24は、樹脂配管部材1の外縁24に相当する。
【0031】
試験片s1の厚さst1は、例えば、5~25mmである。厚さst1は、樹脂配管部材1における周方向の長さである。
試験片s1の長さsh1は、例えば、80~150mmである。長さsh1は、樹脂配管部材1における軸線O1方向の長さである。
樹脂配管部材の周方向が試験片の厚さ方向であり、樹脂配管部材の軸線方向が試験片の長さ方向である。
試験片s1のフランジ相当部s20の幅sw1は、例えば、15~90mmが好ましく、20~75mmがより好ましい。長さsw1は、樹脂配管部材1における径方向の長さである。幅sw1は、幅w1と同じでもよいし、異なってもよい。例えば、筒壁11の厚さt1が過度に厚い場合、試験片s1の側縁s27側を切除して、幅sw1を調節してもよい。
試験片s1の配管本体相当部s10の幅sw10は、例えば、2~30mmが好ましく、3.5~20mmがより好ましく、3.5~10mmがさらに好ましい。長さsw1は、配管本体10における径方向の長さである。幅sw10は、厚さt1と同じでもよいし、異なってもよい。例えば、筒壁11の厚さt1が過度に厚い場合、試験片s1の側縁s27側を切除して、幅sw10を調節してもよい。
【0032】
得られた試験片s1に貫通孔90を形成する。
貫通孔90の開口径sr1は、例えば、3~15mmである。
貫通孔90の位置は、例えば、端縁s22から配管本体相当部s10方向に距離d1=5~15mm、端縁s25から端縁s27方向に距離d2=5~15mmの位置とする。但し、貫通孔90の位置は、フランジ部と配管本体との界面の位置を避けることが好ましい。
【0033】
試験片s1の貫通孔90に治具92を取り付ける。
治具92としては、貫通孔90を貫通する金属棒と、金属棒に接続された金属ワイヤとの組み合わせを例示できる。
試験片s1に取り付けた治具92を引張試験機に接続し、治具92を配管本体相当部s10から離れる方向(即ち、端縁s27から離れる方向)Fに引っ張る(
図4)。本発明の樹脂配管部材1から採取した試験片s1は、引張応力が25MPaに達した時点で、フランジ相当部s20に解裂が生じない(解裂強度が高い)ため、強度に優れている。フランジ部20と配管本体10との融着の程度が低いと、例えば亀裂99を生じて、フランジ相当部s20が解裂する。引張試験において、フランジ相当部s20に解裂が生じる場合、その試験片を採取した樹脂配管部材は強度が不十分である。
【0034】
引張試験機としては、例えば、テンシロン万能材料試験機RTF-2410(株式会社エー・アンド・デイ)を例示できる。
引張試験における引張応力は、25MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましい。引張応力が上記下限値以上であると、フランジ部20の強度をより高められる。引張試験における引張応力の上限値は、特に限定されない。
【0035】
(樹脂配管部材の製造方法)
本発明の樹脂配管部材の製造方法は、熱可塑性樹脂の筒状体の端部を金型に挿入し、筒状体の端部を熱可塑性樹脂の融点以上で加熱し、筒状体を金型への挿入方向に押し付けて、接続部を形成する工程(フランジ成形工程)を有する。
以下、樹脂配管部材の製造方法の一例を挙げて説明する。
【0036】
本実施形態の樹脂配管部材の製造方法は、例えば、フランジ成形工程と、脱型工程と、を有する。
フランジ成形工程は、熱可塑性樹脂の筒状体(以下、「素管」ということがある)の端部にフランジ部を形成する工程である。
素管は、一方の端縁から他方の端縁にかけて、略同一の太さの部材である。素管を構成する熱可塑性樹脂は、樹脂配管部材を構成する熱可塑性樹脂である。
【0037】
フランジ成形工程に用いる金型の例について、図面を参照して説明する。
図5の金型50は、ベース型52と開閉型54とを有する。ベース型52と開閉型54とは、内部にキャビティ51を形成している。キャビティ51は、フランジ部20に対応する形状である。開閉型54は、ベース型52に対して、X方向に移動することで、キャビティ51を開閉する。
金型50は挿入口59を有している。ベース型52は、底面57から挿入口59の方向に立ち上がる柱部56を有する。柱部56は円柱状である。
ベース型52と開閉型54とを組み合わせた状態で、金型50は、ベース型52と開閉型54との境界に、流路60を有する。流路60は、キャビティ51と金型50の外部とを連通している。金型50において、ベース型52と開閉型54との境界は、側壁53に位置している。即ち、流路60は、ベース型52の内部の底面57と離間している。
流路60は、金型50の内外を連通できればよく、いわゆる貫通孔でもよいし、スリットでもよい。
流路60の形状は、特に限定されず、流路60の両開孔を結ぶ方向に直交する断面(横断面)形状が、矩形等の多角形でもよいし、円形でもよい。
流路60の横断面の大きさは、溶融した熱可塑性樹脂が流路60に侵入しにくく、かつキャビティ51内の気体(例えば、空気)が流路60から金型50外に排出される大きさである。例えば、流路60の開孔の大きさは、0.05~0.4mmが好ましい。開孔の大きさが上記下限値以上であると、ガスヤニによる閉塞を防止できる。開孔の大きさが上記上限値以下であると、フランジ成形工程において、溶融した熱可塑性樹脂が流路60に流入するのを防止できる。流路60の断面が円形であれば、開孔の大きさは、流路60の断面の直径である。流路60の断面が多角形であれば、開孔の大きさは、流路60の断面形状に対する外接円の直径である。流路60がスリットである場合、開孔の大きさは、流路60の幅(開孔面の短手方向)である。
【0038】
まず、素管を得る。素管は、予め成形されたものを用意してもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0039】
素管の端部を挿入口59からキャビティ51内に挿入する。この際、柱部56を素管の内部に受け入れつつ、キャビティ51内に素管を挿入する。素管をキャビティ51内に挿入する前に、素管を予め加熱してもよい。
次いで、金型50内で素管の端部を加熱して、溶融させる。素管の端部が溶融した状態で、素管の端部を底面57に押し付ける。即ち、素管を金型50への挿入方向に押し付ける。素管の端部を底面57に押し付けると、端部が折り返されつつ、溶融した熱可塑性樹脂がキャビティ内に広がり、フランジ部20の形状となる(フランジ成形工程)。この時、キャビティ51内の空気が流路60及び金型50の外部へ流れ、キャビティ51内の空気が除去される。キャビティ51内に空気が除去されると、素管と金型との間に存在する空気が過加熱になるのを防止して、焼けを防止する。
【0040】
フランジ部20が成形される工程について
図6を用いて説明する。
素管70(
図6(a))を金型50内で加熱しつつ、金型の底面57に押し付けると、端部が折り返し部72となる(
図6(b))。さらに金型50内で素管70を加熱しつつ、金型の底面57に押し付けると、溶融した熱可塑性樹脂と折り返し部72とが一体となって、フランジ部20となる(
図6(c))。
こうして、金型50内でフランジ部20を形成して、素管を樹脂配管部材1とする。
なお、底面57に当接した面が、樹脂配管部材1の端面22となる。
【0041】
素管の端部を加熱する温度(加熱温度)は、樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂の融点を勘案して決定できる。樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂が高密度ポリエチレン(HDPE)である場合、加熱温度は150℃以上が好ましく、150~260℃がより好ましく、180~240℃がさらに好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、素管の端部を十分に溶融し、解裂強度をより高められる。加熱温度が上記上限値以下であると、フランジ部20での「焼け」の発生を抑制し、強度のさらなる向上を図れる。加熱温度は、金型内で溶融した熱可塑性樹脂の到達温度である。
【0042】
加熱温度は、樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂の融点のよりも、20~40℃高い温度が好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、素管の端部を十分に溶融し、解裂強度をより高め、かつ素管の端部を速やかに溶融して、作業効率と高められる。加熱温度が上記上限値以下であると、フランジ部20での「焼け」の発生を抑制し、強度のさらなる向上を図れる。
【0043】
素管を金型50の底面57に押し付ける圧力(押込圧力)は、例えば、0.07MPa以上が好ましく、0.07~3.0MPaがより好ましく、1.0~2.0MPaがさらに好ましい。押込圧力が上記下限値以上であると、熱可塑性樹脂の溶融状態に合わせて、熱可塑性樹脂を適度に保圧しながら、フランジ部20を成形できる。押込圧力が上記下限値以上であると、金型のキャビティ内に溶融樹脂が十分に充填されて、より良好に成形できる。押込圧力が高いと金型のパーティング面が圧力で瞬間的に開いてしまい、樹脂配管部材1の周囲にバリなどを生じることがある。このため、押込圧力が上記上限値以下であると、バリ等の発生を抑制して、外観不良を抑制できある。
なお、押込圧力は、素管を押し込む機械側に取付けられた圧力計により測定した圧力である(押込圧力(MPa)=役機械で押し込んだ力(N/m2)/素管の断面積(m2))。
【0044】
次いで、脱型工程では、樹脂配管部材1を冷却した後、金型50を開いて、樹脂配管部材1を取り出す。
【0045】
フランジ部成形用の金型は上述の形態に限られない。
例えば、ベース型が流路60を有してもよい。ベース型が流路60を有する場合、流路60は、底面57に接していてもよい。即ち、流路60の内面の一部は、底面57と面一となっている。
キャビティ51内において、底面57と側壁53の内面との境界部分には、空気がたまりやすい。流路60が底面57に接していることで、成形工程で、キャビティ51から空気をより容易に除去できる。
【0046】
あるいは、ベース型52が中子を有してもよい。中子は、底面57から挿入口59に向かう柱部を有する部材であり、ベース型52に対して、X方向に移動可能となっている。金型50の流路60は、開閉型54とベース型52との境界に位置している。
中子を有する金型を用いる場合、脱型工程では、開閉型54をベース型52から離れる方向に移動させ、かつ中子を開閉型54から離れる方向に移動して、樹脂配管部材1を取り出す。
フランジ部20の端面22に凹条(例えば、軸線O1回りに周回する凹条)を形成する場合、係る凹条に空気が溜まりやすくなる。このため、中子58をさらに分割して、中子58に流路60と同様の流路を形成してもよい。
【0047】
(プレハブ配管)
本発明のプレハブ配管は、本発明の樹脂配管部材を有する。
プレハブ配管の一例について、図面を参照して説明する。
図6のプレハブ配管100は、樹脂配管部材101と、受口部121と、ベント部122と、配管123と、を有する。ベント部122は、樹脂配管部材101と配管123とを接続している。受口部121は、配管123の端部に位置している。
【0048】
受口部121は、いわゆる電気融着継手であり、内部に電熱線を有している。受口部121は、電熱線と接続された端子124を有する。受口部121は、配管123と融着している。
ベント部122は、配管123及び樹脂配管部材101と融着している。
樹脂配管部材101は、端縁にフランジ部20を有している。
【0049】
図に示すプレハブ配管100は一例であり、継手として公知の種々の構成を採用することができる。また、フランジ部20には、配管に接続される公知の構成が接続されていてもよい。
【0050】
本実施形態のプレハブ配管によれば、本発明の樹脂配管部材のフランジ部と、他の設備(例えば、ポンプ、給湯器、他のプレハブ配管等)のフランジ部と、を突き合せ、これをクランプで固定することで、施工現場で容易に配管作業を行える。
加えて、施工現場にてフランジ部を作製する必要がないため、施工現場でのバット溶接を不要にできる。このため、プレハブ配管のフランジ部近傍には、バット溶接に伴うビードが形成されない。
【0051】
なお、本実施形態のプレハブ配管100において、受口部121と、ベント部122と、配管123と、樹脂配管部材101とは、互いに融着している。即ち、受口部121と、ベント部122と、配管123と、樹脂配管部材101は、いずれも樹脂材料で形成されているが、本発明はこれに限らない。受口部121、ベント部122及び配管123のいずれかが金属材料で形成された部材であり、異種接続される構成であってもよい。
【0052】
上記金属材料としては、例えば、鉄、真鍮(黄銅)、銅、ステンレス、アルミニウム、チタン、銀合金等が挙げられる。また、金属管の内面は、フッ素樹脂などの樹脂材料によりライニング加工されていてもよい。
【実施例0053】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0054】
(使用原料)
・熱可塑性樹脂A:ポリエチレン(融点=130℃)。
【0055】
(実施例1~4、比較例1、参考例1)
熱可塑性樹脂Aを溶融し、押し出して、100A(呼び径=114mm、厚さ=6mm)の素管を得た。
図5の金型50と同様の金型Aを用い、素管を金型に挿入し、フランジ部を成形して(フランジ成形工程)、本例の樹脂配管部材を得た。フランジ成形工程での加熱温度及び押込圧力を表中に示す。本例の樹脂配管部材は、呼び径(外径)R1=114mm、厚さt1=10.4mm、幅w1=28.4mm、突出幅w11=18mm、高さh1=25mmであった。
樹脂配管部材から、
図3の試験片s1と同様の試験片(長さsh1=100mm、厚さst1=10mm、幅sw1=10.4mm、幅sw10=28.4mm)を切り出した。得られた試験片に貫通孔(開口径sr1=3mm、距離d1=5mm、距離d2=5mm)を形成した。貫通孔に金属棒を通し、この金属棒の両端をU字金具で支持し、U字金具に金属ワイヤを取り付けた。U字金具に取り付けたワイヤをテンシロン万能材料試験機RTF-2410(株式会社エー・アンド・デイ)で引っ張り(50mm/分)、引張応力25MPa時に、フランジ相当部の解裂の有無を目視で確認した。解裂の確認できないものを「〇」、解裂を確認できたものを「×」と記載した。
得られた樹脂配管部材について、強度及び焼けを評価し、その結果を表中に示す。
なお、参考例1は、押込圧力が低く、フランジ部を成形できなかった。
【0056】
(評価方法)
<強度>
各例の樹脂配管部材について、フランジ部を下方にして、1mの高さからコンクリート面へ落下させた。落下させた後のフランジ部を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
≪評価基準≫
〇:フランジ部に損傷はなく、強度が十分である。
×:フランジ部に損傷があり、強度が不十分である。
【0057】
<焼け>
各例の樹脂配管部材のフランジ部の端面を目視で観察し、焼けの有無を確認した。
【0058】
【0059】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~4は、いずれも強度の評価が「〇」であった。加えて、加熱温度が180-220℃である実施例1~3は焼けが認められなかった。
引張試験が「×」である比較例1は、強度の評価が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、強度を高められることを確認できた。