IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 安斎 聡の特許一覧

<>
  • 特開-内燃機関 図1
  • 特開-内燃機関 図2
  • 特開-内燃機関 図3
  • 特開-内燃機関 図4
  • 特開-内燃機関 図5
  • 特開-内燃機関 図6
  • 特開-内燃機関 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146090
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/12 20060101AFI20241004BHJP
   F02B 51/00 20060101ALI20241004BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 23/232 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 25/452 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241004BHJP
【FI】
F02M25/12 C
F02B51/00
B01F23/231
B01F23/232
B01F25/452
B01F23/2373
B01F35/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058804
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4G035AB08
4G035AC26
4G035AE13
4G035AE17
4G037AA01
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】燃料に微細気泡を混合することで、燃料を改質して燃焼効率を向上させて、窒素酸化物や一酸化炭素などの不完全燃焼により発生する有害ガスの発生を抑制することができる内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関1は、燃料タンク3からの燃料に気体を微細気泡として混合することにより改質燃料を生成して、前記改質燃料をエンジン本体2に供給する。内燃機関1は、燃料タンク3からエンジン本体2へ燃料を供給する燃料供給通路4と、燃料供給通路4の中途部に配置され、複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出する微細気泡発生装置11と、を備え、微細気泡発生装置11は、多孔質の素材である微細気泡発生媒体24、24を備え、微細気泡発生媒体24、24は、燃料供給通路4において燃料の流れる向きと平行な面に最も面積の大きい主面24sを備える
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからの燃料に気体を微細気泡として混合することにより改質燃料を生成して、前記改質燃料をエンジン本体に供給する内燃機関であって、
前記燃料タンクから前記エンジン本体へ燃料を供給する燃料供給通路と、エンジン本体に供給される燃料に複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出する微細気泡発生装置と、を備え、
前記微細気泡発生装置は、多孔質の素材である微細気泡発生媒体を備え、
前記微細気泡発生媒体は、燃料の流れる向きと平行な面に最も面積の大きい主面を備える、内燃機関。
【請求項2】
前記微細気泡発生装置は、前記燃料供給通路の中途部に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記微細気泡発生媒体に、二つ以上の気体を供給するための複数の内部空間を形成し、
前記複数の内部空間からそれぞれ種類の異なる気体を排出することで、複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記微細気泡発生装置は複数の微細気泡発生媒体を備え、前記複数の微細気泡発生媒体は、それぞれが異なる表面積を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記微細気泡発生装置に供給される気体は、水素および酸素である、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項6】
水を電気分解して水素及び酸素を発生させる電気分解装置を備え、
前記微細気泡発生装置に供給される水素及び酸素は、前記電気分解装置から供給される、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記内燃機関の排気から空気を分離するエアーセパレータを備え、
前記エアーセパレータから前記燃料供給通路に空気を供給する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関であって、燃料タンクの燃料を改質した改質燃料の供給手段を備えた内燃機関の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体中において気泡のサイズ(直径)が常温常圧で100μm未満の微細気泡を使用する技術が注目されている。微細気泡は、表面積が非常に大きい特性及び自己加圧効果などの物理化学的な特性を有しており、その特性を生かして、排水浄化、洗浄、気体溶存、撹拌等に使用する技術が開発されている。
【0003】
前記特性を持った微細気泡の発生装置として、液体を流す通路と、通路へ気体を圧送するための圧縮装置と、圧縮装置により圧送された気体を微細気泡として通路内の液体へ放出する微細気泡発生媒体とを備える微細気泡発生装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
一方、ディーゼルエンジンなどの内燃機関であって、液体燃料中に微細な気泡を混入させることで燃焼性の高い燃料に改質する燃料改質装置を設けた内燃機関が公知となっている。ディーゼルエンジンにおいては、エンジンの燃焼を改善し、有害排気ガスを低減するために燃料にあらかじめ酸素を含む気体を混入させて、燃料中の溶存酸素量を高める技術が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
従来の燃料改質装置は、液体燃料を加圧するポンプと、ポンプによって加圧された液体燃料と、気体とが供給され、液体燃料と気体とを混合撹拌して液体燃料中に気体の微細気泡を生じさせた後貯留槽に吹き込むノズルと、貯留槽に貯留された改質燃料を抜き出して燃焼装置に供給する改質燃料供給手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6815397号公報
【特許文献2】実用新案登録第3203452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし従前の改質燃料装置は、混合させる気体は空気、酸素、オゾン、水素であるが、特に水素ガス、酸素ガスについて単独で供給した場合の燃料改質効果は低く、二種類の気体を燃料に混合する燃料改質装置が望ましい。
【0008】
また、二種類の気体は、自然界に存在する水や空気から取得されることで原料気体の供給を十分に行うことが可能となる。また、水素ガスおよび酸素ガスを混合して燃料に混合する場合に、大きなサイズの気泡として燃料に大量に供給すると燃料内で燃焼してしまし燃料供給通路や、ディーゼルエンジン本体が故障する可能性があった。
【0009】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、燃料に微細気泡を混合することで、燃料を改質して燃焼効率を向上させて、窒素酸化物や一酸化炭素などの不完全燃焼により発生する有害ガスの発生を抑制することができる内燃機関を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、本発明においては、燃料タンクからの燃料に気体を微細気泡として混合することにより改質燃料を生成して、前記改質燃料をエンジン本体に供給する内燃機関であって、
前記燃料タンクから前記エンジン本体へ燃料を供給する燃料供給通路と、エンジン本体に供給される燃料に複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出する微細気泡発生装置と、を備え、
前記微細気泡発生装置は、多孔質の素材である微細気泡発生媒体を備え、
前記微細気泡発生媒体は、燃料の流れる向きと平行な面に最も面積の大きい主面を備えるものである。
【0012】
また、本発明においては、前記微細気泡発生装置は、前記燃料供給通路の中途部に配置されるものである。
【0013】
また、本発明においては、二つ以上の気体を供給するための複数の内部空間を形成し、
前記複数の内部空間からそれぞれ種類の異なる気体を排出することで、複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出するものであってもよい。
【0014】
また、本発明においては、前記微細気泡発生装置は複数の微細気泡発生媒体を備え、前記複数の微細気泡発生媒体は、それぞれが異なる表面積を有するものであってもよい。
【0015】
また、本発明においては、前記微細気泡発生装置に供給される気体は、水素および酸素であってもよい。
【0016】
また、本発明においては、水を電気分解して水素及び酸素を発生させる電気分解装置を備え、
前記微細気泡発生装置に供給される水素及び酸素は、前記電気分解装置から供給されるものであってもよい。
【0017】
また、本発明においては、前記内燃機関の排気から空気を分離するエアーセパレータを備え、
前記エアーセパレータから前記燃料供給通路に空気を供給するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
本発明においては、燃料供給通路に配置された微細気泡発生装置から燃料に微細気泡を混合することで、燃料を改質して燃焼効率を向上させて、窒素酸化物や一酸化炭素などの不完全燃焼により発生する有害ガスの発生を抑制することができる。また、微細気泡発生装置を複数設けて一種類ずつ気体を発生させることにより、水素および酸素などの、混合すると燃焼する可能性のある気体を個別に供給することができるので、様々な割合で気体を混合することができ、エンジン本体の性能を向上させることができる改質燃料を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一の実施形態に係る内燃機関を示す概略図。
図2】燃料供給通路の内部の微細気泡発生媒体を示す斜視図。
図3】第二の実施形態に係る内燃機関を示す側面図。
図4】第三の実施形態に係る微細気泡発生装置を示す側面断面図。
図5】第四の実施形態に係る微細気泡発生装置を示す側面断面図。
図6】第五の実施形態に係るサービスタンク及び微細気泡発生装置を示す側面図。
図7】第六の実施形態に係るサービスタンク及び微細気泡発生装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一の実施形態>
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる内燃機関の全体構成について図1を用いて説明する。
図1に示されるように、内燃機関1は、エンジン本体2と、エンジン本体2へ供給する燃料を貯蔵する燃料タンク3と、燃料タンク3から供給される燃料を通すために燃料タンク3とエンジン本体2とを連結する燃料供給通路4と、備える。
エンジン本体2は、例えば、ディーゼルエンジンであり、船舶などの動力源となる装置である。燃料タンク3は、船舶などの貯蔵スペースに設けられたメインタンクであり、軽油などの燃料油が貯蔵されている。
【0022】
燃料タンク3の排出口が燃料供給通路4の上流端に連結されている燃料タンク3の下流側には、サービスタンク5が配置されている。サービスタンク5は、燃料タンク3から使用分をギアポンプなどで使用場所近くまで移動させて、エンジン本体2へ供給用に使用するタンクである。
【0023】
サービスタンク5の下流側には、フィードポンプ6と、フィードポンプ6の上流側、下流側に配置される、第一フィルタ7、第二フィルタ8が設けられている。フィードポンプ6は、燃料をサービスタンク5からエンジン本体2の噴射ポンプへと供給するポンプである。第一フィルタ7、第二フィルタ8は、フィードポンプ6へ供給される燃料に含まれる塵埃等を取り除く金属製のフィルタであり、数mm程度の塵埃を取り除くことができる。
【0024】
燃料供給通路4は、金属製もしくは樹脂製のパイプで構成されており、燃料供給通路4には、燃料タンク3、サービスタンク5、第一フィルタ7、フィードポンプ6、第二フィルタ8、がそれぞれ連結されている。燃料供給通路4の下流端に連結されたエンジン本体2には、図示せぬ噴射ポンプが設けられており、前記噴射ポンプから噴射された燃料が燃焼されることによりエンジン本体2が駆動する。
【0025】
エンジン本体2からの排気は、排気管9から、NOx還元触媒が設けられた排気浄化装置14へと送られる。また、排気浄化装置14においてNOxが取り除かれた排気は、排気から空気を分離するエアーセパレータ15へと送られる。
【0026】
エアーセパレータ15から分離された空気は、一部が燃料供給通路4へと還流される。燃料にエアーセパレータ15から分離された空気が混入されることにより、エンジン本体2で燃焼する際に燃料内に溶解していた気体が熱膨張を起こし、シリンダー内に飛散する。これにより、微細な燃料粒子が内部から膨張破裂し、極微細となって飛散するため一斉に燃焼する。そして、燃料粒子が、一斉に燃焼するため高温にならずに燃焼してNOxを低減することができる。
【0027】
燃料供給通路4の中途部には、微細気泡発生装置11が配置されている。微細気泡発生装置11は、燃料中に気体を微細気泡として供給する装置である。微細気泡発生装置としては、ジェット水流式、気液2相流旋回方式、ベンチュリー管方式が採用されることもある。本実施形態においては、炭素系の多孔質素材である微細気泡発生媒体24を備えた微細気泡発生装置11で構成されている。
【0028】
微細気泡発生媒体24は、本実施形態においては二つ並列に配置されている。微細気泡発生媒体24は、圧送される気体を細かな孔24Aを通して燃料中に放出することにより、微細気泡を発生させる装置である。微細気泡は、気泡のサイズ(直径)が常温常圧で100μm未満の泡であり、特に、数百nm~数μmの気泡である。微細気泡は、表面に負の電荷を有し、凝縮したイオンの殻を被った気泡である。負の電荷を有することで、微細気泡は常時ブラウン運動を行っており、この力が泡の浮力よりも大きいため、長時間燃料中に存在するという性質を有する。
【0029】
微細気泡発生媒体24、24は、図2に示すように、気体通路23に連結して配置されている。微細気泡発生媒体24は多角形状もしくは楕円球状に形成されている。微細気泡発生媒体24は、多角面(楕円球状にあっては最も平面に近い球面)のうち、最も大きな面である主面24sを備える。主面24sは、燃料供給通路4において燃料の流れる向き(図2の黒塗り矢印方向)と平行に配置されている。微細気泡発生媒体24には、内部空間24aが設けられている。
【0030】
また、微細気泡発生媒体24は、炭素系の多孔質素材で構成されており、図2に示すように、直径数μm~数十μmの細かな孔24Aを多数有している。また、微細気泡発生媒体24は導電体であり、微細気泡発生媒体24から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である微細気泡発生媒体24を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0031】
炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。炭素系の多孔質素材は、耐酸化性を有しており、錆が発生せず長期間燃料供給通路4中に配置した場合であっても酸化による劣化が発生しない。また、表面がケイ素を含む無機質の膜で形成されており、パラフィン状の膜が形成し難い性質も有する。
【0032】
内部空間24aへ送られた気体は、微細気泡発生媒体24に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔24Aを通って、微細気泡発生媒体24の表面へ移動する。微細気泡発生媒体24の表面に移動した気体は微細気泡となり、燃料供給通路4中を流れる燃料の流れによって燃料中へ放出される。
【0033】
微細気泡発生装置11の各微細気泡発生媒体24に供給する気体は、水素、酸素、空気、オゾン、窒素等である。本実施形態においては、水素及び酸素を各微細気泡発生媒体24に供給することで、微細気泡としてそれぞれを排出する。
【0034】
内燃機関1は、各微細気泡発生媒体に水素及び酸素を供給する電気分解装置21をさらに備える。電気分解装置21は、水から水素を生成する装置であり、アルカリ型またはPEM(高分子膜)型で構成されている。アルカリ型の電気分解装置では、水酸化カリウムの水溶液を電気分解して水素を製造するものである。また、固体高分子型水電気分解装置とは、電極21aと電極21aの間に固体高分子(PEM:Polymer Electrolyte Menbrane)を配置することで、水を電気分解し、水素を製造するものである。本実施形態においてはPEM型の電気分解装置を採用している。
【0035】
電気分解装置21によって、水から生成されたH2およびO2はそのモル比において2:1となるように生成される。したがって、H2を微細気泡として供給する微細気泡発生媒体24の表面積は、O2を微細気泡として供給する微細気泡発生媒体24の表面積の二倍であることが望ましい。
【0036】
電気分解装置21で発生したH2およびO2は気体通路23でそれぞれが微細気泡発生媒体24の内部空間24a内へ送られる。気体通路23の中途部には増圧器22であるコンプレッサが設けられており、H2およびO2の圧力を空気圧より0.5MPa~1.0MPa高い圧力で圧送することができるように構成されている。
【0037】
次に、本発明の内燃機関1の運転方法について説明する。本発明の内燃機関1を動作させる際は、フィードポンプ6を作動させることにより、燃料タンク3からサービスタンク5を介して燃料供給通路4を通して燃料を供給する。燃料供給通路4の中途部に設けられた微細気泡発生装置11の微細気泡発生媒体24から、水素および酸素が微細気泡として燃料内に混合される。燃料内に、微細気泡として混合された水素および酸素は、微細気泡の性質としてそれぞれ電荷を有しているため、それぞれの気泡が合体し難い。したがって、異なる気体同士が合体する機会が少なくなるため、燃料内にそれぞれの気体として溶存することができる。
【0038】
水素および酸素を微細気泡として混合した改質燃料は、下流側の第一フィルタ7、第二フィルタ8によって塵埃などがろ過されてエンジン本体2の噴射ノズルへ供給される。改質燃料内の微細気泡はサイズが十分に小さいので第一フィルタ7、第二フィルタ8を透過する。
【0039】
微細気泡の混合によって、気体充填効率が上昇する。気体充填効率が上昇すると、エンジン本体2内の燃焼が改善する。さらに、微細気泡の混合により、軽油の粘度や表面張力の低下,噴霧液滴の微粒化の促進などの物理的効果、および含有酸素量と含有ラジカル量の増大などの化学的効果によって燃費が向上する。
また、ディーゼルエンジンの短所である黒煙は、微細気泡の混合によって拡散燃焼の不均一性が改善されることで減少する。黒鉛の減少により、黒煙に起因するPMも低減する。
【0040】
また、エンジン本体2の排気は、排気浄化装置14においてNOxが取り除かれ一部の空気はエアーセパレータによって分離されて、燃料内に供給される。エアーセパレータによって分離された空気は、通常のノズルによって供給される。この空気の気泡は、燃料内に溶解していた気体が熱膨張を起こし、シリンダー内に飛散することでNox低減に寄与する。
【0041】
以上のように、内燃機関1は、燃料タンク3からの燃料に気体を微細気泡として混合することにより改質燃料を生成して、前記改質燃料をエンジン本体2に供給する。内燃機関1は、燃料タンク3からエンジン本体2へ燃料を供給する燃料供給通路4と、エンジン本体2へ供給される燃料に複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出する微細気泡発生装置11と、を備え、微細気泡発生装置11は、多孔質の素材である微細気泡発生媒体24、24を備え、微細気泡発生媒体24、24は、燃料供給通路4において燃料の流れる向きと平行な面に最も面積の大きい主面24sを備えるものである。
このように構成することにより、異なる成分の気体を燃料内に混合することができるため、水素および酸素などの、混合すると燃焼する可能性のある気体を個別に供給することができる。燃料供給通路4に配置された微細気泡発生装置11から燃料に微細気泡を混合することで、燃料を改質して燃焼効率を向上させて、窒素酸化物や一酸化炭素などの不完全燃焼により発生する有害ガスの発生を抑制することができる。
【0042】
また、微細気泡発生装置11は、燃料供給通路4の中途部に配置されるものである。
このように構成することにより、微細気泡発生媒体24に接触する燃料の流れを最大限に利用して微細気泡を微細気泡発生媒体24から離間させることができる。
【0043】
また、二つ以上の気体を供給するための複数の内部空間24a、24aを形成し、複数の内部空間24a、24aからそれぞれ種類の異なる気体を排出することで、複数の気体をそれぞれ微細気泡として排出するものである。
このように構成することにより、異なる成分の気体を燃料内に混合することができるため、水素および酸素などの、混合すると燃焼する可能性のある気体を個別に供給することができる。
また、微細気泡発生装置11は複数の微細気泡発生媒体24、24を備え、複数の微細気泡発生媒体24、24は、それぞれが異なる表面積を有するものである。
このように構成することにより、異なる成分の気体を所望の割合で燃料内に混合することができるため、水素および酸素などの、混合すると燃焼する可能性のある気体を個別に供給することができる。
【0044】
また、微細気泡発生装置11に供給される気体は、水素および酸素である。このように構成することにより、水素と酸素を混合した状態で燃料内に供給すると水素が燃焼しやすいが、微細気泡として燃料内に供給することにより、各気体が気泡内に存在するため、水素が燃焼することなく、エンジン本体2へ供給される。
【0045】
また、水を電気分解して水素及び酸素を発生させる電気分解装置21を備え、微細気泡発生装置11に供給される水素及び酸素は、電気分解装置21から供給されるものである。
このように構成することにより、自然界に存在する水を用いて生成した水素及び酸素を用いて燃料を改質することができる。また、水素及び酸素の生成される比率に合わせて気体を混合することができ、エンジン本体2の性能を向上させることができる改質燃料を生成することができる。
【0046】
また、内燃機関1の排気から空気を分離するエアーセパレータ15を備え、エアーセパレータ15から空気を燃料供給通路4に供給するものである。
このように構成することにより、燃料にエアーセパレータ15から分離された空気が混入されることにより、エンジン本体2で燃焼する際に燃料内に溶解していた気体が熱膨張を起こし、シリンダー内に飛散する。これにより、微細な燃料粒子が内部から膨張破裂し、極微細となって飛散するため一斉に燃焼する。そして、燃料粒子が、一斉に燃焼するため高温にならずに燃焼してNOxを低減することができる。
【0047】
<第二の実施形態>
また、第二の実施形態においては、図3に示すように、微細気泡発生装置11をサービスタンク5よりも上流側に配置する。このように構成することにより、サービスタンク5内の燃料に微細気泡を混入させることができるので、改質燃料の状態でサービスタンク5に貯蔵することが可能となる。
【0048】
サービスタンク5内に貯蔵された燃料は、エンジン本体2の他、その他の駆動装置へ供給することもできる。このように構成することにより、船舶などの複数の駆動装置を有する大型の乗り物において、改質燃料を多様な用途に用いることができる。
【0049】
<改質に用いる気体の別実施例>
なお、本実施形態においては、燃料に水素及び酸素を微細気泡として混合することで改質燃料を生成したが、改質に用いられる気体はこれに限定する物でなく、例えば、オゾン及び酸素であってもよい。シリンダー内において、オゾンと酸素が反応することで過酸化となり、燃焼が促進されることで熱発生率が増加する。また、OHラジカルの輸送による燃焼温度の低下とともに、コロナ放電により燃焼性を維持できるので、NOxを低減することができる。
【0050】
<第三の実施形態>
また、第三の実施形態においては、図4に示すように、微細気泡発生装置11を燃料供給通路4の中途部に配置する配管ユニット41で構成することも可能である。配管ユニット41は、燃料供給通路4と接続する流入管42、流出管43と、流入管42から流入した燃料を通す配管44と、配管44の内部に設けた、板状の微細気泡発生媒体45とを備える。
【0051】
微細気泡発生媒体45は、その長手方向両端から中央部にかけて二つの内部空間45a、45aを配置している。内部空間45a、45aは微細気泡発生媒体の長手方向中央部に設けられた隔壁45bによって離隔されており、二つの内部空間45a、45aに流入する気体は微細気泡発生媒体45内で混合しないように構成されている。隔壁45bは、微細気泡発生媒体45の壁面を利用して形成しており、微細気泡発生媒体45の一部である。
【0052】
微細気泡発生媒体45は、多角面(楕円球状にあっては最も平面に近い球面)のうち、最も大きな面である主面45sを備える。主面45sは、配管44において燃料の流れる向き(図4の黒塗り矢印方向)と平行に配置されている。
【0053】
また、微細気泡発生媒体45は、炭素系の多孔質素材で構成されており、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。また、微細気泡発生媒体45は導電体であり、微細気泡発生媒体45から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である微細気泡発生媒体45を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0054】
炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。炭素系の多孔質素材は、耐酸化性を有しており、錆が発生せず長期間配管44中に配置した場合であっても酸化による劣化が発生しない。また、表面がケイ素を含む無機質の膜で形成されており、パラフィン状の膜が形成し難い性質も有する。
【0055】
内部空間45a、45aへ送られた二種類の気体は、微細気泡発生媒体45に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔を通って、微細気泡発生媒体45の表面へ移動する。微細気泡発生媒体45の表面に移動した気体は微細気泡となり、配管44中を流れる燃料の流れによって燃料中へ放出される。
【0056】
微細気泡発生装置11の微細気泡発生媒体45に供給する気体は、水素、酸素、空気、オゾン、窒素等である。本実施形態においては、水素及び酸素を各微細気泡発生媒体に供給することで、微細気泡としてそれぞれを排出する。
【0057】
このように構成することにより、一つの微細気泡発生媒体45を用いることで、二種類の気体を個別に微細気泡として燃料内に放出することが可能となる。
【0058】
<第四の実施形態>
また、第四の実施形態においては、図5に示すように、微細気泡発生装置11を燃料供給通路4の中途部に配置する配管ユニット51で構成することも可能である。配管ユニット51は、燃料供給通路4と接続する配管54と、配管54の内部に設けた、板状の微細気泡発生媒体55とを備える。
【0059】
微細気泡発生媒体55は、二つの内部空間55a、55aを配置している。内部空間55a、55aは微細気泡発生媒体55の長手方向両側に分かれて設けられており、一つの内部空間55aは複数の短手方向に延びた通路と当該通路をつなぐ斜辺となる通路で構成されており、側面視において「N」字状もしくは「N」を左右反転したものを二つ並べた形状で構成されている。二つの内部空間55a、55aに流入する気体は微細気泡発生媒体55内で混合しないように構成されている。
【0060】
微細気泡発生媒体55は、多角面(楕円球状にあっては最も平面に近い球面)のうち、最も大きな面である主面55sを備える。主面55sは、配管54において燃料の流れる向き(図5の黒塗り矢印方向)と平行に配置されている。
【0061】
また、微細気泡発生媒体55は、炭素系の多孔質素材で構成されており、直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している。また、微細気泡発生媒体55は導電体であり、微細気泡発生媒体55から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である微細気泡発生媒体55を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
【0062】
炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。炭素系の多孔質素材は、耐酸化性を有しており、錆が発生せず長期間配管54中に配置した場合であっても酸化による劣化が発生しない。また、表面がケイ素を含む無機質の膜で形成されており、パラフィン状の膜が形成し難い性質も有する。
【0063】
内部空間55a、55aへ送られた二種類の気体は、微細気泡発生媒体55に設けられた直径数μm~数十μmの細かな孔を通って、微細気泡発生媒体55の表面へ移動する。この際、内部空間55aは長さが確保されているので微細気泡発生媒体55内でより多く微細な孔と接触する機会を得る。微細気泡発生媒体55の表面に移動した気体は微細気泡となり、配管54中を流れる燃料の流れによって燃料中へ放出される。
【0064】
微細気泡発生装置11の微細気泡発生媒体55に供給する気体は、水素、酸素、空気、オゾン、窒素等である。本実施形態においては、水素及び酸素を各微細気泡発生媒体に供給することで、微細気泡としてそれぞれを排出する。
【0065】
このように構成することにより、一つの微細気泡発生媒体55を用いることで、二種類の気体を個別に微細気泡として燃料内に放出することが可能となる。
【0066】
<第五の実施形態>
また、第五の実施形態においては、図6に示すように、微細気泡発生装置11をサービスタンク5内に配置することも可能である。サービスタンク5内において貯蔵された燃料内に微細気泡を供給するための微細気泡発生装置11が配置されている。微細気泡発生装置11は、気体通路23、23から送られてきた複数の種類の気体を燃料内に微細気泡を供給する。
【0067】
内燃機関1は、微細気泡発生装置11に水素及び酸素を供給する電気分解装置21をさらに備える。電気分解装置21は、水から水素を生成する装置であり、アルカリ型またはPEM(高分子膜)型で構成されている。アルカリ型の電気分解装置では、水酸化カリウムの水溶液を電気分解して水素を製造するものである。また、固体高分子型水電気分解装置とは、電極21aと電極21aの間に固体高分子(PEM:Polymer Electrolyte Menbrane)を配置することで、水を電気分解し、水素を製造するものである。本実施形態においてはPEM型の電気分解装置を採用している。
【0068】
電気分解装置21で発生したH2およびO2は気体通路23でそれぞれが微細気泡発生装置11へ送られる。気体通路23の中途部には増圧器22であるコンプレッサが設けられており、H2およびO2の圧力を空気圧より0.5MPa~1.0MPa高い圧力で圧送することができるように構成されている。
【0069】
このように構成することにより、サービスタンク5内に貯蔵された燃料に二種類の気体を個別に微細気泡として燃料内に放出することが可能となる。
【0070】
<第六の実施形態>
また、第六の実施形態においては、図7に示すように、微細気泡発生装置11をサービスタンク5内の燃料を循環させる循環通路62内に配置することも可能である。サービスタンク5には、サービスタンク5内の燃料を循環させるための循環ポンプ61および循環通路62が接続されている。微細気泡発生装置11は、循環通路62の中途部に配置されている。
【0071】
内燃機関1は、微細気泡発生装置11の微細気泡発生媒体24に水素及び酸素を供給する電気分解装置21をさらに備える。電気分解装置21は、水から水素を生成する装置であり、アルカリ型またはPEM(高分子膜)型で構成されている。アルカリ型の電気分解装置では、水酸化カリウムの水溶液を電気分解して水素を製造するものである。また、固体高分子型水電気分解装置とは、電極21aと電極21aの間に固体高分子(PEM:Polymer Electrolyte Menbrane)を配置することで、水を電気分解し、水素を製造するものである。本実施形態においてはPEM型の電気分解装置を採用している。
【0072】
電気分解装置21で発生したH2およびO2は気体通路23でそれぞれが微細気泡発生装置11へ送られる。気体通路23の中途部には増圧器22であるコンプレッサが設けられており、H2およびO2の圧力を空気圧より0.5MPa~1.0MPa高い圧力で圧送することができるように構成されている。
【0073】
このように構成することにより、サービスタンク5から循環通路62を通って循環移動される燃料の流れを用いて微細気泡を供給することができる。循環通路62の内部には、微細気泡を供給するための微細気泡発生装置11が配置されている。微細気泡発生装置11は、気体通路23、23から送られてきた複数の種類の気体を燃料内に微細気泡を供給する。
このように構成することにより、サービスタンク5内に貯蔵された燃料に二種類の気体を個別に微細気泡として燃料内に放出することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 内燃機関
2 エンジン本体
3 燃料タンク
4 燃料供給通路
5 サービスタンク
6 フィードポンプ
7 第一フィルタ
8 第二フィルタ
9 排気管
11 微細気泡発生装置
14 排気浄化装置
15 エアーセパレータ
21 電気分解装置
21a 電極
23 気体通路
24 微細気泡発生媒体
24a 内部空間
24s 主面
24A 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7