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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146098
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】搬送用ベルト及びベルト用帆布
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/34 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B65G15/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058814
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優太
(72)【発明者】
【氏名】内藤 颯
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024AA01
3F024AA09
3F024BA01
3F024BA04
3F024CB02
3F024CB09
(57)【要約】
【課題】重量物の搬送と、軸荷重の大きさによる機械への負荷の低減とを両立することができる搬送用ベルト及びそれに用いることができるベルト用帆布を提供する。
【解決手段】搬送用ベルトは、ベルト用帆布10と、ベルト用帆布10の一方の面及び他方の面の少なくともいずれかに積層された樹脂層とを有し、ベルト用帆布10は、搬送用ベルトの長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成されるストレート状の複数の経糸11と、経糸11の搬送用ベルトの一方及び他方の面側において経糸11と交差する方向に伸びるとともに経糸11より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第1緯糸12及び第2緯糸13と、経糸11と同じ方向に伸びるとともに経糸11、第1緯糸12、及び第2緯糸13を連結する複数のバインダー糸14とを備える構成である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト用帆布と、前記ベルト用帆布の一方の面及び他方の面の少なくともいずれかに積層された樹脂層とを有する搬送用ベルトであって、
前記ベルト用帆布は、
前記搬送用ベルトの長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成されるストレート状の複数の経糸と、
前記経糸の前記搬送用ベルトの一方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第1緯糸と、
前記経糸の前記搬送用ベルトの他方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第2緯糸と、
前記経糸と同じ方向に伸びるとともに前記経糸、前記第1緯糸、及び前記第2緯糸を連結する複数のバインダー糸と
を備える、
搬送用ベルト。
【請求項2】
前記搬送用ベルトが伸張率2%となるときの前記搬送用ベルトの張力が0.5N/mm以上4N/mm以下である
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
前記搬送用ベルトが伸張率3%となるときの前記搬送用ベルトの張力が1N/mm以上6N/mm以下である
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
前記経糸は、共重合ポリエステル或いはポリウレタンから構成されている
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
前記第1緯糸は、モノフィラメントからなる
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項6】
前記第2緯糸は、マルチフィラメントからなる
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項7】
前記バインダー糸は、マルチフィラメントからなる
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項8】
搬送用ベルトに用いられる帆布であって、
前記搬送用ベルトの長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成されるストレート状の複数の経糸と、
前記経糸の前記搬送用ベルトの一方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第1緯糸と、
前記経糸の前記搬送用ベルトの他方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第2緯糸と、
前記経糸と同じ方向に伸びるとともに前記経糸、前記第1緯糸、及び前記第2緯糸を連結する複数のバインダー糸と
を備える、ベルト用帆布。
【請求項9】
前記経糸は、共重合ポリエステル或いはポリウレタンから構成されている
請求項8に記載のベルト用帆布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ベルト及びベルト用帆布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送用ベルトには、例えば、樹脂単一の層で構成されたものと、帆布等の芯体を用いて構成されたものが用いられている。
【0003】
樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトは、伸張させやすいためBOR(Belt on roller)等のローラーコンベヤの用途で使用されている。樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトは、張力が低いため重量物の搬送に用いることはできず、横剛性が低いためコンベヤに取り付けた際にシワが入りやすい。樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトの張力は低く、軸荷重による機械への負荷は小さい。
【0004】
帆布等の芯体を用いた搬送用ベルトは、樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトとは異なり、張力が高く、重量物の搬送にも用いることができる。また、帆布の緯糸にモノフィラメントを使用することで、横剛性を確保できるため、コンベヤに取り付けた際にシワを入りにくくできる。しかし、張力が高いために軸荷重が大きくなりすぎて機械への負荷が大きくなる。また、短機長型のコンベヤに使用する場合は、搬送用ベルトの長さをコンベヤの機長に適合した長さにして用いないと、搬送用ベルトの取り付け時の張力が増減して搬送できなくなったり、機械を損傷させたりする可能性がある。
【0005】
特許文献1には、樹脂層、織布からなる芯体層、及び芯体層と樹脂層を接着する接着層を含む複合ベルトが開示されている。
【0006】
特許文献2には、経糸と緯糸とを上下に重なるように交差させ、それら経糸と緯糸とをバインダー糸により絡めてなる織物を、経糸が長手方向に沿って配列するように埋設したコンベヤベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002―68440号公報
【特許文献2】特許第4089767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、搬送用ベルトにおいて、重量物の搬送と、軸荷重の大きさによる機械への負荷の低減とを両立することが求められている。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、重量物の搬送と、軸荷重の大きさによる機械への負荷の低減とを両立することができる搬送用ベルト及びそれに用いることができるベルト用帆布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る搬送用ベルトは、ベルト用帆布と、前記ベルト用帆布の一方の面及び他方の面の少なくともいずれかに積層された樹脂層とを有する搬送用ベルトであって、前記ベルト用帆布は、前記搬送用ベルトの長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成されるストレート状の複数の経糸と、前記経糸の前記搬送用ベルトの一方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第1緯糸と、前記経糸の前記搬送用ベルトの他方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第2緯糸と、前記経糸と同じ方向に伸びるとともに前記経糸、前記第1緯糸、及び前記第2緯糸を連結する複数のバインダー糸とを備える。
【0011】
本発明に係るベルト用帆布は、搬送用ベルトに用いられる帆布であって、前記搬送用ベルトの長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成されるストレート状の複数の経糸と、前記経糸の前記搬送用ベルトの一方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第1緯糸と、前記経糸の前記搬送用ベルトの他方の面側において前記経糸と交差する方向に伸びるとともに前記経糸より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第2緯糸と、前記経糸と同じ方向に伸びるとともに前記経糸、前記第1緯糸、及び前記第2緯糸を連結する複数のバインダー糸とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重量物の搬送と、軸荷重の大きさによる機械への負荷の低減とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る搬送用ベルトに用いられるベルト用帆布の平面図である。
図2図1に示すベルト用帆布の模式断面を示す断面図である。
図3】実施形態に係る搬送用ベルトの断面図である。
図4】第1実施例に係る搬送用ベルトの伸張率に対する張力を示すグラフである。
図5図4のグラフの伸張率0~5%の部分を拡大した伸張率に対する張力を示すグラフである。
図6】第2実施例に係るベルト用帆布の伸張率に対する張力を示すグラフである。
図7図6のグラフの伸張率0~5%の部分を拡大した伸張率に対する張力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について本発明の一実施形態を詳述する。なお、以下の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(1)搬送用ベルト1に用いられるベルト用帆布10の構成
図1は実施形態に係る搬送用ベルト1に用いられるベルト用帆布10の平面図である。図2は、図1に示すベルト用帆布10の模式断面を示す断面図である。ベルト用帆布10は、搬送用ベルト1に用いられる帆布であり、搬送用ベルト1の長さ方向に延伸した帯状に形成されている。ベルト用帆布10は、経糸11、第1緯糸12、第2緯糸13、及びバインダー糸14を有する。
【0016】
経糸11は、搬送用ベルト1の長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成され、ストレート状の形状である。複数の経糸11が並列に配置されている。経糸11は、例えば、共重合ポリエステル或いはポリウレタンから構成され、具体的にはポリエーテルポリエステル共重合体から構成されている。経糸11の繊維径は、例えば500dtex~2000dtex、具体的には1100dtexである。経糸11は、搬送用ベルト1の幅方向の10cmあたり、例えば60本~200本、具体的には166本が配列されている。
【0017】
第1緯糸12は、経糸11の搬送用ベルト1の一方の面側において経糸と交差する方向に伸びるとともに経糸11より低弾性の材料から構成され、ストレート状の形状である。複数の第1緯糸12が並列に配置されている。第1緯糸12は、モノフィラメント或いはマルチフィラメントから構成され、好ましくはモノフィラメントから構成されている。第1緯糸12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、PA6、PA66等のポリアミド等から構成されている。第1緯糸12の繊維径は、例えば500dtex~2000dtex、具体的には1100dtexである。第1緯糸12は、搬送用ベルト1の長さ方向の10cmあたり、例えば50本~170本、具体的には111本が配列されている。
【0018】
第2緯糸13は、経糸11の搬送用ベルト1の他方の面側において経糸と交差する方向に伸びるとともに経糸11より低弾性の材料から構成され、ストレート状の形状である。複数の第2緯糸13が並列に配置されている。第2緯糸13は、モノフィラメント或いはマルチフィラメントから構成され、好ましくはマルチフィラメントから構成されている。第2緯糸13は、例えば、第1緯糸12と同様の材料から構成されている。第2緯糸13の繊維径は、例えば500dtex~2000dtex、具体的には1100dtexである。第2緯糸13は、搬送用ベルト1の長さ方向の10cmあたり、例えば50本~170本、具体的には111本が配列されている。
【0019】
バインダー糸14は、経糸11と同じ方向に伸びるとともに経糸11、第1緯糸12、及び第2緯糸13を連結するように配置されている。複数のバインダー糸14が並列に配置されている。バインダー糸14は、モノフィラメント或いはマルチフィラメントから構成され、好ましくはマルチフィラメントから構成されている。バインダー糸14は、例えば、第1緯糸12と同様の材料から構成されている。バインダー糸14の繊維径は、例えば500dtex~2000、具体的には1100dtexである。バインダー糸14は、搬送用ベルト1の幅方向の10cmあたり、例えば100本~200本、具体的には166本が配列されている。
【0020】
ベルト用帆布10の厚さは、例えば0.7mm~1.5mmであり、具体的には1.1mmである。
【0021】
ベルト用帆布10は、上記のように4種類の糸が用いられたストレートワープ構造を有する。経糸11は弾性材料から構成されており、これによりベルト用帆布10の張力を低減できる。バインダー糸14は、経糸11、第1緯糸12、及び第2緯糸13を連結するために凹凸が大きくなるように配置されており、これによりベルト用帆布10の低伸張域での張力を低減できる。第1緯糸12は、モノフィラメントで構成されているとベルト用帆布10の横剛性を確保することができる。
【0022】
上記のベルト用帆布10は、第1緯糸12がモノフィラメントで構成され、第2緯糸13がマルチフィラメントで構成されている場合、硬いモノフィラメントで構成された第1緯糸12が配置された側のベルト用帆布10の面が戴置面であり、柔らかいマルチフィラメントで構成された第2緯糸13が配置された側のベルト用帆布10の面がプーリと接する面である。
【0023】
(2)搬送用ベルト1の構成
図3に示すように、本実施形態に係る搬送用ベルト1は、帯状に形成された上記のベルト用帆布10と、ベルト用帆布10の一方の面に積層された帯状の樹脂層20とを有する。
【0024】
樹脂層20は、例えば、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂材料から形成されている。樹脂層20は、例えば第1緯糸12が配置された側のベルト用帆布10の戴置面を構成するように設けられている。或いは、第2緯糸13が配置された側のベルト用帆布10のプーリと接する面を構成するように設けられていてもよい。
【0025】
樹脂層20の厚さは、例えば0.5mm~3.0mmであり、具体的には1.0mmである。ベルト用帆布10の厚さ及び樹脂層20の厚さを合わせた搬送用ベルト1の厚さは、例えば1.5mm~5.0mmであり、具体的には2.1mmである。
【0026】
本実施形態の搬送用ベルト1は、好ましくは、搬送用ベルト1が伸張率2%となるときの搬送用ベルト1の張力が0.5N/mm以上4N/mm以下である。また、搬送用ベルト1が伸張率3%となるときの搬送用ベルト1の張力が1N/mm以上6N/mm以下である。
【0027】
搬送用ベルト1は、ベルト端部同士が接合されて無端状に形成され、複数のプーリに掛け渡される。搬送用ベルト1は、例えば、樹脂層20の外表面に搬送物が載置され、ベルト用帆布10の外表面にプーリが接するように配置され、当該プーリが回転することで搬送用ベルト1が回転移動し、樹脂層20の外表面上に載置された搬送物を移動させる。或いは、ベルト用帆布10の外表面に搬送物が載置され、樹脂層20の外表面にプーリが接するように配置されていてもよい。
【0028】
図3に示す搬送用ベルト1はベルト用帆布10の一方の面に樹脂層20が積層された構成であるが、ベルト用帆布10の両方の面に樹脂層20がそれぞれ積層された構成としてもよい。この場合には、ベルト用帆布10の第1緯糸12が配置された側の一方の面に設けられた樹脂層20の外表面に搬送物が載置され、ベルト用帆布10の第2緯糸13が配置された側の他方の面に設けられた樹脂層20の外表面にプーリが接するように配置されて用いられる。
【0029】
図3に示す搬送用ベルト1に限らず、樹脂層20が形成されていないベルト用帆布10そのものを搬送用ベルトとして用いてもよい。この場合には、ベルト用帆布10の第1緯糸12が配置された側の一方の面に搬送物が載置され、ベルト用帆布10の第2緯糸13が配置された側の他方の面にプーリが接するように配置されて用いられる。
【0030】
本実施形態に係る搬送用ベルト1は、無端状の搬送用ベルト1を掛け渡すプーリの直径は特に限定されないが、例えば、直径が25mmの小径プーリに対しても適用することができる。
【0031】
(3)搬送用ベルト1の製造方法
搬送用ベルト1は、ベルト用帆布10と樹脂層20とが剥離しないような手法であれば、ベルト用帆布10の表面に樹脂層20を任意の手法で接着させて搬送用ベルト1を製造する方法等、任意の手法で製造することができる。ベルト用帆布10と樹脂層20との接着は、接着剤を使用してもよく、或いは、加熱加圧による接着でもよい。
【0032】
(4)搬送用ベルト1の作用・効果
以上の構成において、搬送用ベルト1は、搬送用ベルト1の長さ方向に伸びるとともに弾性材料のモノフィラメントから構成されるストレート状の複数の経糸11と、経糸11の搬送用ベルト1の一方及び他方の面側において経糸11と交差する方向に伸びるとともに経糸11より低弾性の材料から構成されるストレート状の複数の第1緯糸12及び第2緯糸13と、これらを連結する複数のバインダー糸14とを有する構成であるベルト用帆布10を有する構成である。上記の構成の搬送用ベルト1は、特に低伸張域において、樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトよりも高く、かつ、低弾性材料のフィラメントで形成された帆布を芯体として用いた従来の搬送用ベルトよりも低い張力を実現できる。これにより、重量物の搬送と、軸荷重の大きさによる機械への負荷の低減とを両立することができる。
【0033】
特に、上記の構成の搬送用ベルト1は、低伸張域における伸張率に対する張力の変化量を小さくすることができる。
【0034】
また、第1緯糸12にモノフィラメントを使用することで、搬送用ベルト1の横剛性を高くし、シワの発生を抑えることができる。
【0035】
(5)第1実施例
次に、実施例に係る搬送用ベルト1と、比較例1及び比較例2に係る搬送用ベルトとについて、それぞれ伸張率に対する張力を確認する検証試験を行った。実施例に係る搬送用ベルト1は、幅20mmの無端状のベルトであり、厚さが1.1mmのベルト用帆布10と厚さが1.0mmのポリ塩化ビニルからなる樹脂層20とを積層して得た。ここで、ベルト用帆布10は、共重合ポリエステルから構成された繊維径1100dtexのモノフィラメントの経糸11、ポリエステルから構成された繊維径1100dtexのモノフィラメントの第1緯糸12、ポリエステルから構成された繊維径1100dtexのマルチフィラメントの第2緯糸13、及びポリエステルから構成された繊維径1100dtexのマルチフィラメントのバインダー糸14を用い、経糸11及びバインダー糸14については搬送用ベルト1の幅方向の10cmあたり166本で配列し、第1緯糸12及び第2緯糸13については搬送用ベルト1の幅方向の10cmあたり111本で配列した。
【0036】
比較例に係る搬送用ベルトとして、比較例1に係る低弾性材料のフィラメントで形成された帆布を芯体として用いた搬送用ベルトと、比較例2に係る樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトを用意した。比較例1に係る搬送用ベルトは、低弾性材料のフィラメントで形成された厚さが0.5mmの帆布と厚さが0.3mmのポリウレタンからなる樹脂層とを積層して得た。比較例2に係る搬送用ベルトは、ポリウレタンの樹脂単一の層で形成した。
【0037】
上記のようにして得た実施例、比較例1、及び比較例2に係る搬送用ベルトをベルトの長手方向に引っ張ることにより、その伸張率と張力との関係を求めて、引張特性を測定した。実施例及び比較例1に係る各搬送用ベルトについて、サンプルサイズを幅20mm×長さ450mm、引張速度を50mm/min、チャック間距離を400mmとし、測定した。比較例2に係る搬送用ベルトについては、低伸張域(1~10%)において、サンプルサイズを幅10mm×長さ200mmのダンベル状、引張速度を50mm/minとし、高伸張域(10%以上)において、サンプルサイズをJIS K 6251に規定される幅5mm×長さ20mmのダンベル状3号型、引張速度を500mm/minとし、測定した。上記の測定は、いずれも、23℃、50%RHの条件下で行った。その結果を図4及び図5に示す。
【0038】
図4は第1実施例に係る搬送用ベルトの伸張率に対する張力を示すグラフである。また、図5図4のグラフの伸張率0~5%の部分を拡大した伸張率に対する張力を示すグラフである。図4及び図5は、縦軸が張力(N/mm)、横軸が伸張率(%)を示す。図4及び図5において、グラフaは比較例1の搬送用ベルト、グラフbは比較例2の搬送用ベルト、グラフcは実施例の搬送用ベルト1を示す。
【0039】
実施例の搬送用ベルト1は、特に低伸張域において、樹脂単一の層で構成された搬送用ベルトよりも高く、かつ、低弾性材料のフィラメントで形成された帆布を芯体として用いた従来の搬送用ベルトよりも低い張力を実現できた。また、特に、実施例の搬送用ベルト1は、低伸張域における伸張率に対する張力の変化量を低弾性材料のフィラメントで形成された帆布を芯体として用いた従来の搬送用ベルトより小さくすることができた。
【0040】
(6)第2実施例
次に、上記の実施例に係る搬送用ベルト1に用いたベルト用帆布10と、上記の比較例1の搬送用ベルトに用いた低弾性材料のフィラメントで形成された帆布とについて、それぞれ伸張率に対する張力を確認する検証試験を行った。実施例に係る搬送用ベルト1に用いたベルト用帆布10と、比較例1の搬送用ベルトに用いた低弾性材料のフィラメントで形成された帆布との引張特性を測定した。ここで、各帆布について、サンプルサイズを幅20mm×長さ300mm、引張速度を50mm/min、チャック間距離を200mmとしたこと以外は、第1実施例と同様にして、JIS L 1096:2020の織物及び編物の生地試験方法に記載された引張特性の試験方法に従い、帆布の幅を適宜変更した上で、測定した。上記の測定は、いずれも、23℃、50%RHの条件下で行った。その結果を図6及び図7に示す。
【0041】
図6は第2実施例に係るベルト用帆布の伸張率に対する張力を示すグラフである。また、図7図6のグラフの伸張率0~5%の部分を拡大した伸張率に対する張力を示すグラフである。図6及び図7は、縦軸が張力(N/mm)、横軸が伸張率(%)を示す。図6及び図7において、グラフdは比較例1の搬送用ベルトに用いた低弾性材料のフィラメントで形成された帆布、グラフeは実施例に係る搬送用ベルト1に用いたベルト用帆布10を示す。
【0042】
実施例に係る搬送用ベルト1に用いたベルト用帆布10は、特に低伸張域において、比較例の搬送用ベルトに用いた低弾性材料のフィラメントで形成された帆布よりも低い張力を実現できた。また、特に、実施例に係る搬送用ベルト1に用いたベルト用帆布10は、低伸張域における伸張率に対する張力の変化量を比較例の搬送用ベルトに用いた低弾性材料のフィラメントで形成された帆布より小さくすることができた。
【0043】
(7)他の実施形態
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、第1緯糸12、第2緯糸13、及びバインダー糸14は、モノフィラメント及びマルチフィラメントのいずれの構成でもよい。第1緯糸12、第2緯糸13、及びバインダー糸14は、同一の材料から形成されていてもよく、異なる材料から形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 搬送用ベルト
10 ベルト用帆布
11 経糸
12 第1緯糸
13 第2緯糸
14 バインダー糸
20 樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7