(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146104
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】シューズのアッパー用布地、シューズのアッパー及びシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
A43B23/02 101B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058820
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】北 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】尾田 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】林口 未奈
(72)【発明者】
【氏名】田口 剛太
(72)【発明者】
【氏名】田中 一成
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC01
4F050BC03
4F050BC07
4F050BC11
4F050HA56
4F050HA59
4F050HA60
4F050HA63
4F050HA70
4F050JA09
4F050KA04
4F050KA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サポート性や着脱性の調整変更がしやすいシューズを提供する。
【解決手段】シューズの舌革部一体化型アッパーに用いる布地であって、布地10は、筒状布地要素20を含み、筒状布地要素20は、第1ソックス部1及び第2ソックス部2を含み、第1ソックス部1は、第1足部11、及び第1レッグ部21を含み、第2ソックス部2は、第2足部12、及び第2レッグ部22を含み、第1足部11、第1レッグ部21、第2レック部22及び第2足部12の順に連続的に形成されており、第1レッグ部21の中心軸S1と、第2レッグ部22の中心軸S2は互いに一致も平行もせず、第1ソックス部1と第2ソックス部2を重ね合わせることで、第1ソックス部1は、アッパーの足側に配置される第1層を形成し、第2ソックス部は、第1層を覆うように配置される第2層を形成することができる布地に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズの舌革部一体化型アッパーに用いる布地であって、
前記布地は、筒状布地要素を含み、前記筒状布地要素は、第1ソックス部及び第2ソックス部を含み、
第1ソックス部は、第1足部、及び第1レッグ部を含み、第2ソックス部は、第2足部、及び第2レッグ部を含み、第1足部、第1レッグ部、第2レック部及び第2足部の順に連続的に形成されており、
第1レッグ部の中心軸と、第2レッグ部の中心軸は互いに一致も平行もせず、
第1ソックス部と第2ソックス部を重ね合わせることで、第1ソックス部は、アッパーの足側に配置される第1層を形成し、第2ソックス部は、前記第1層を覆うように配置される第2層を形成することができる、布地。
【請求項2】
前記布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部と第2レッグ部の上端部は、上方に突出している凸部又は下方に突出している凹部を有し、前記凸部の頂点又は前記凹の底点は第1レッグ部と第2レッグ部の境界線上に配置されている、請求項1に記載のシューズのアッパー用布地。
【請求項3】
前記布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部の上端部の長さと第2レッグ部の上端部の長さは異なる、請求項1に記載のシューズのアッパー用布地。
【請求項4】
第1足部は、つま先部或いはその足裏側付近に第1開口部を有し、第2足部は、つま先部或いはその足裏側付近に第2開口部を有し、第1開口部及び/又は第2開口部は縫製にて閉じられている、請求項1に記載のシューズのアッパー用布地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のシューズのアッパー用布地を含むシューズのアッパーであって、
前記アッパーは、第1ソックス部で形成され、足側に配置される第1層と、第2ソックス部で形成され、第1層を覆うように配置される第2層を含み、
第1レッグ部と第2レッグ部の境界線付近に形成された履き口において、踵側の高さと足甲側の高さが水平でない、シューズのアッパー。
【請求項6】
前記履き口の上端部は、踵側と足甲側がその他の部分より高い湾曲形状を有する、請求項5に記載のシューズのアッパー。
【請求項7】
前記履き口は、第1レッグ部の2重構造部と第2レッグ部の2重構造部で形成された4層折り畳み部を有する、請求項5に記載のシューズのアッパー。
【請求項8】
前記履き口において、第1層の上端部が第2層の上端部より高い、請求項5に記載のシューズのアッパー。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかに記載のシューズのアッパーがソールと一体化されているシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズのアッパーに用いる布地、シューズのアッパー及びシューズに関し、具体的には、シューズの舌革部一体型アッパーに用いることで、着用しやすいシューズを得ることができる、シューズのアッパー用布地、シューズのアッパー及びシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
シューズ、特にスポーツシューズのアッパーには、各種素材や部材を縫製等で接合させて足形状にフィットするように立体形状にしたモノが一般的であるが、異なる部材の縫製や接着等の手間や接合部段差等への対応に工夫が必要であること、及び単なる足形状への適合フィット性だけでなく足形状変化への追随性や特に足表面接触部分の柔らかさを向上すること等が求められるようになっている。そこで、布地を用いたアッパーが提案されている。例えば、特許文献1には、一体のニット構成で形成されたチューブ状の構造を形成するニット構成要素と、一次元の材料の構成を有し、前記チューブの長手方向の少なくとも一部を通って延びるヤーンとを有するアッパーが記載されている。また、特許文献2には、ソックス足部と、第1の踵部と、第1の上側部と、前記上側部の上端部に配置され、前記上側部の軸に垂直な平面に関して前記第1の踵部と実質的に対称な第2の踵部と、前記第2の踵部の延長上にある第2の上側部とを備え、前記第2の踵部は、前記第2の上側部が前記ソックス足部へ引かれたとき、前記第1の踵部を覆うように構成されている布地要素が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-512698号公報
【特許文献2】特表2016-504106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1において、舌革部(ベロ部)はアッパーと分かれており、一部重なっている状態で、足の甲を覆っていることから、足当たりが劣る。また、引用文献2では、布地要素を補強構造体に連結しているが、補強体を用いず、該布地要素のみでアッパーを形成した場合、第1の踵部と第2の踵部が、第1の上側部の軸に垂直な平面に関して実質的に対称であることから、履き口の踵側高さと足甲側高さがほぼ水平であり、着脱性を調整しにくい問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解決するため、シューズの舌革部一体型アッパーに用いた場合、サポート性や着脱性の調整変更がしやすいシューズを得ることができる、シューズのアッパー用布地、シューズのアッパー及びシューズに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シューズの舌革部一体化型アッパーに用いる布地であって、前記布地は、筒状布地要素を含み、前記筒状布地要素は、第1ソックス部及び第2ソックス部を含み、第1ソックス部は、第1足部、及び第1レッグ部を含み、第2ソックス部は、第2足部、及び第2レッグ部を含み、第1足部、第1レッグ部、第2レック部及び第2足部の順に連続的に形成されており、第1レッグ部の中心軸と、第2レッグ部の中心軸は互いに一致も平行もせず、第1ソックス部と第2ソックス部を重ね合わせることで、第1ソックス部は、前記アッパーの足側に配置される第1層を形成し、第2ソックス部は、前記第1層を覆うように配置される第2層を形成することができる布地に関する。
【0007】
本発明は、前記シューズのアッパー用布地を含むシューズのアッパーであって、前記アッパーは、第1ソックス部で形成され、足側に配置される第1層と、第2ソックス部で形成され、第1層を覆うように配置される第2層を含み、第1レッグ部と第2レッグ部の境目付近に形成された履き口において、踵側の高さと足甲側の高さが水平でない、シューズのアッパーに関する。
【0008】
本発明は、前記シューズのアッパーがソールと一体化されているシューズに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の1以上の実施態様によれば、シューズの舌革部一体型アッパーに用いた場合、サポート性や着脱性の調整変更がしやすいシューズを得ることができる、シューズのアッパー用布地、シューズのアッパー及びシューズに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
【
図2】同布地でアッパーを形成する工程を説明する模式図である。
【
図3】同布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。
【
図6】本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
【
図7】同布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。
【
図8】本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
【
図9】同布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。
【
図10】本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
【
図11】同布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。
【
図12】本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
【
図13】同布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願の発明者らは、舌革部一体型アッパーの着用しやすさを向上するために、検討を重ねた。その結果、第1足部及び第1レッグ部を含む第1ソックス部、並びに第2足部及び第2レッグ部を含む第2ソックス部を含む筒状布地要素において、連続的形成されている第1レッグ部と第2レッグ部の中心軸を互いに一致させない又は平行させないことで、第1ソックス部がアッパーの足側に配置される第1層を形成し、第2ソックス部が第1層を覆うように配置される第2層を形成した際、履き口において、踵側の高さと足甲側の高さが水平にならず、サポート性や着脱性の調整変更がしやすくなることを見出した。
具体的には、履き口の踵側が足甲側より高い場合は、シューズが脱げにくくなる上、足首のホールド性も高まる。また、履き口の踵側が足甲側より低い場合は、シューズに足を入れやすくなる。
【0012】
(布地)
本発明の1以上の実施形態の布地は、シューズの舌革部一体化型アッパーに用いる。前記布地は、筒状布地要素を含み、前記筒状布地要素は、第1ソックス部及び第2ソックス部を含み、第1ソックス部は、第1足部、及び第1レッグ部を含み、第2ソックス部は、第2足部、及び第2レッグ部を含み、第1足部、第1レッグ部、第2レック部及び第2足部の順に連続的に形成されており、第1レッグ部の中心軸と、第2レッグ部の中心軸は互いに一致も平行もしない。
【0013】
第1レッグ部の中心軸と、第2レッグ部の中心軸は互いに一致も平行もしないとは、具体的には、布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部と第2レッグ部の上端部は、上方に突出している湾曲部(以下、凸部とも記す。)又は下方に凹んでいる湾曲部(以下、凹部とも記す。)を有し、前記凸部の頂点(最上点)又は前記凹部の底点(最下点)は第1ソックス部と第2ソックス部の境界線(繋ぎラインとも称される。)上に配置されていることが好ましい。これにより、第1ソックス部と第2ソックス部を重ね合わせて形成したアッパーの履き口の踵側の高さと足甲側の高さが異なり、着用性が向上する。
【0014】
或いは、第1レッグ部の中心軸と、第2レッグ部の中心軸は互いに一致も平行もしないとは、具体的には、布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1ソックス部と第2ソックス部の境界線付近において、第1レッグ部及び第2レッグ部のいずれか一方又は両方の下部にしわ部が形成されることが好ましい。これにより、第1ソックス部と第2ソックス部を重ね合わせて形成したアッパーの履き口は、湾曲部(湾曲形状)を有し、着用性及びフィット性が向上する。
【0015】
布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部の上端部の長さと第2レッグ部の上端部の長さは同じでもよく、異なってもよい。履き口において、第1層と第2層の高さを異なるようにしやすい観点から、第1レッグ部の上端部の長さと第2レッグ部の上端部の長さは異なることが好ましい。また、足側に配置される第1層を高くしやすい観点では、第1レッグ部の上端部の長さは第2レッグ部の上端部の長さより大きいことがより好ましい。
【0016】
第1足部は、つま先部或いはその足裏側付近に第1開口部を有してもよく、第2足部は、つま先部近或いはその足裏側付近に第2開口部を有してよい。また、第1開口部及び/又は第2開口部は縫製や接着剤等にて閉じられていてもよい。
【0017】
筒状布地要素としては、丸編機、例えば靴下編機等で編成する丸編地を用いることができる。丸編地の組織は、特に限定されず、例えば、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編の三原組織に加えて、針抜編、タック編、浮編、タックメッシュ編、アイレット編、ジャガードメッシュ編などの変更組織も含む。
【0018】
丸編地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。
【0019】
丸編地に用いる糸は、紡績糸でもよいが、フィラメントであることが好ましい。フィラメントは、モノフィラメントでもよく、マルチフィラメントでもよい。丸編地に用いる糸は、補強材を用いず、足の形状に合わせて立体成形しやすい観点から、熱融着糸を含むことが好ましい。熱融着糸(ホットメルト糸とも称される。)は、熱融着繊維を含むものであればよく、熱融着繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、及びポリプロピレンからなる群から選択される一種以上の低融点樹脂を含む繊維が挙げられる。熱融着繊維は、芯部及び鞘部を含み、鞘部が低融点樹脂で構成され、芯部は鞘部を構成する低融点樹脂より融点が高い熱可塑性樹脂で構成された繊維でもよい。熱融着糸は、例えば、60℃以上200℃以下の温度で融着することが望ましい。本明細書において、熱融着とは、熱融着性繊維が外からの熱又は熱と圧力とにより、熱融着性繊維どうしの接触部において、互いの繊維の少なとも一部が接着している状態又は融着し密着している状態を意味する。
【0020】
丸編地は、熱融着糸に加えて、弾性糸や非弾性糸を含んでもよい。前記弾性糸は、例えば、破断伸度が20%以上であることが好ましく、20~50%であることがより好ましい。前記弾性糸は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系弾性繊維(スパンデックスとも称される。)、ポリエーテルエステル系弾性繊維、ナイロン繊維等で構成された弾性糸等が挙げられる。弾性糸は、弾性繊維のみで構成されてもよく、弾性繊維と後述する非弾性繊維を組み合わせた糸でもよい。前記非弾性糸は、例えば、破断伸度が20%未満であることが好ましい。非弾性糸としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維;ポリアミド系繊維;ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;キュプラ、レーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維;羊毛等の獣毛系繊維等の非弾性繊維で構成された非弾性糸等が挙げられる。
【0021】
(アッパー)
本発明の1以上の実施形態のアッパーは、舌革部一体型アッパーであり、本発明の1以上の実施形態の布地を含み、第1ソックス部で形成され、足側に配置される第1層と、第2ソックス部で形成され、第1層を覆うように配置される第2層を含み、第1レッグ部と第2レッグ部の境目(第1ソックス部と第2ソックス部の境界線とも称される。)付近に形成された履き口において、踵側の高さと足甲側の高さが水平でない。本明細書において、「高さ」とは、アッパーを水平面上に配置して測定した水平面からの高さを意味する。
【0022】
具体的には、第1ソックス部の第1足部は、アッパーの第1層の前中足部を形成し、第2ソックス部の第2足部は、アッパーの第2層の前中足部を形成し、第1ソックス部の第1レッグ部は、アッパーの第1層の後足部を形成し、第2ソックス部の第2レッグ部は、アッパーの第2層の後足部を形成する。第1ソックス部の第1開口部及び第2ソックス部の第2開口部は、アッパーのつま先部或いはその足裏側付近に位置し、そのまま縫い合わされるか、端部布地要素を介して縫い合わされてもよい。
【0023】
履き口において、踵側が足甲側より高くてもよい。これにより、シューズが脱げにくくなる上、足首のホールド性も高まる。或いは、履き口において、足甲側が踵側より高くてもよい。これにより、シューズに足を入れやすくなる。さらに、履き口の上端部は、踵側と足甲側がその他の部分より高い湾曲形状(湾曲部)を有してもよい。これにより、シューズが脱げにくくなる上、足首のホールド性及びフィット性も高まる。湾曲部(凹部)の最下点は、踵側より(後ろよりとも称される。)か、又は、足甲側より(前よりとも称される。)に配置されていることが好ましい。湾曲部(凹部)の最下点が足甲側よりであると、シューズが脱げにくく、サポート性も向上する、湾曲部(凹部)の最下点が踵側よりであると、シューズを着用しやすい。
【0024】
履き口において、第1層及び第2層はいずれも2重構造を有することが好ましい。これにより、履き口が4層折り畳み構造を有することになり、足首のホールド性も高まりやすい。また、アッパーにおいて、該4層構造部と2層構造部の境目が踝より下に位置するようにし、該境目に縫製線による縫目を形成することで、足首のホールド性がさらに高まりやすい。
【0025】
履き口において、第1層の上端部の高さと第2層の上端部の高さは水平でもよいが、滑らかな着用感の観点から、第1層の上端部の高さが第2層の上端部のより高いことが好ましい。
【0026】
(シューズ)
本発明の1以上の実施態様のシューズにおいて、本発明の1以上の実施形態のアッパーがソールと一体化されている。これにより、足当たりが良好であり、着脱性とサポート性を両立させやすいシューズを得ることができる。ソールは、特に制限がなく、シューズ用のものを適宜用いることができる。アッパーとソールを一体化する方法も、特に制限されず、例えば通常のセメンテッド式製法などによる一体化が挙げられる。
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の1以上の実施形態を具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施形態に限定されない。図面において、同一符号は同一又は相当部分を示しており、繰り返し説明は省略する。
【0028】
図1は本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
図2は該布地でアッパーを形成する工程を説明する模式図である。
図3は同布地で形成されたアッパーの模式的側面図であり、
図4は同アッパーの模式的底面図であり、
図5は同アッパーの模式的A-A線断面図である。
【0029】
該実施形態の布地10は、筒状布地要素20を含み、筒状布地要素20は、第1ソックス部1及び第2ソックス部2を含む。第1ソックス部1は、第1足部11、及び第1レッグ部21を含む。第2ソックス部2は、第2足部12、及び第2レッグ部22を含む。第1足部11、第1レッグ部21、第2レック部22及び第2足部12の順に連続的に形成されている。第1レッグ部21の中心軸S1と、第2レッグ部22の中心軸S2は、互いに一致もせず、平行もしない。第1足部11は、つま先部付近の足裏側に第1開口部31を有する。第2足部12は、つま先部付近の足裏側に第2開口部32を有する。該実施形態において、第2開口部32は、縫製にて閉じられている。
【0030】
図1に示すように、該実施形態の布地10を第1ソックス部1の踵23及び第2ソックス部2の踵24のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部21と第2レッグ部22の上端部は、下方に突出している湾曲部、すなわち凹部3を有し、凹部3の底点は第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3上に配置されている。凹部3は、尖っている形状でもよく、丸みを帯びた形状でもよい。また、第1レッグ部21の上端部の長さL1は第2レッグ部22の上端部の長さL2より長い。
【0031】
図2に示すように、第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3において、第1ソックス部1を第2ソックス部2の内部に挿入して、第1ソックス部1と第2ソックス部2を重ね合わせることで、
図3に示すように、第1ソックス部1で形成され、足側に配置される第1層101、及び第2ソックス部2で形成され、第1層を覆うように配置される第2層102を含む舌革部一体型アッパー100を得ることができる。具体的には、第1ソックス部の第1足部11は、アッパー100の第1層の前中足部103を形成し、第2ソックス部の第2足部12は、アッパー100の第2層の前中足部104を形成し、第1ソックス部の第1レッグ部21は、アッパー100の第1層の後足部105を形成し、第2ソックス部の第2レッグ部22は、アッパー100の第2層の後足部106を形成する。アッパー100において、履き口107は、足甲側が踵側より高い前後傾斜構造を有し、シューズに足を入れやすくなる。
【0032】
第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3と、第1ソックス部の踝線S4及び第2ソックス部の踝線S5が一致し、第1ソックス部の履き口上端線S6と第2ソックス部の履き口上端線S7がそれぞれ、第1層の履き口上端線及び第2層の履き口上端線になるようにすることで、
図4に示すように、履き口107において、第1層及び第2層はいずれも2重構造部を有し、履き口107が4層折り畳み構造を有することになる。該4層構造部と2層構造部の境目(S3、S4及びS5)が踝より下に位置することで、足首のホールド性がさらに高まりやすい。必要に応じて、該4層構造部と2層構造部の境目に縫製線による縫目を形成してもよい。
【0033】
第1レッグ部21の中心軸S1と、第2レッグ部22の中心軸S2は、互いに一致もせず、平行もしないことで、履き口107において、踵側の高さと足甲側の高さが異なる。また、該実施形態において、第1レッグ部11の上端部の長さL1が第2レッグ部の上端部の長さL2より長い布地10を用いたことで、履き口107において、第1層117の上端部の位置が第2層127の上端部の位置より高い。
【0034】
図5に示すように、第1ソックス部1の開口部31及び第2ソックス部2の開口部32は、アッパー100のつま先部付近の足裏側に位置し、そのまま縫い合わされてもよい。その後、アッパー100を、所定の形状の足型に履かせ、アッパー100を形成した布地10に含まれる熱融着糸が融着される温度、例えば、60℃以上200℃以下の温度で熱処理することで、形状を整えることができる。
【0035】
図6は本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵23及び第2ソックス部の踵24のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
図7は該布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。該実施形態の布地50は、
図6に示されているように、第1レッグ部21の上端部の長さL1と第2レッグ部22の上端部の長さL2が同じである以外は、布地10と同様の構成を有する。布地50を、布地10と同じようにして、第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3において、第1ソックス部1を第2ソックス部2の内部に挿入して、第1ソックス部1と第2ソックス部2を重ね合わせることで形成したアッパー200は、
図7に示されているように、履き口207の第1層217の上端部と第2層227の上端部が同じ高さになる以外は、アッパー100と同様の構成を有する。
【0036】
図8は本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵23及び第2ソックス部の踵24のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
図9は該布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。該実施形態の布地60は、
図8に示されているように、第1レッグ部21と第2レッグ部22の上端部が上方に突出している凸部4を有し、凸部4の頂点が第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3上に配置されている以外は、布地10と同様の構成を有する。凸部4は、尖っている形状でもよく、丸みを帯びた形状でもよい。布地60を、布地10と同じようにして、第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3において、第1ソックス部1を第2ソックス部2の内部に挿入して、第1ソックス部1と第2ソックス部2を重ね合わせることで形成したアッパー300は、
図9に示されているように、履き口307において、踵側が足甲側より高い前後傾斜構造を有する以外は、アッパー100と同様の構成を有する。履き口307において、踵側が足甲側より高いことにより、シューズが脱げにくくなる上、足首のホールド性も高まる。履き口307において、第1層317の上端部の位置が第2層327の上端部の位置より高い。
【0037】
図10は本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵23及び第2ソックス部の踵24のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
図11は該布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。該実施形態の布地70は、
図10に示されているように、第1レッグ部21と第2レッグ部22の上端部が上方に突出している凸部4を有し、凸部4の頂点が第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3上に配置されていること、及び第1レッグ部21の上端部の長さL1と第2レッグ部22の上端部の長さL2が同じであること以外は、布地10と同様の構成を有する。凸部4は、尖っている形状でもよく、丸みを帯びた形状でもよい。布地70を、布地10と同じようにして、第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3において、第1ソックス部1を第2ソックス部2の内部に挿入して、第1ソックス部1と第2ソックス部2を重ね合わせることで形成したアッパー400は、
図11に示されているように、履き口407において、踵側が足甲側より高い前後傾斜構造になっていること、及び履き口407の第1層417の上端部と第2層427の上端部が同じ高さであること以外は、アッパー100と同様の構成を有する。履き口407において、踵側が足甲側より高いことにより、シューズが脱げにくくなる上、足首のホールド性も高まる。
【0038】
図12は本発明の1実施形態の布地を第1ソックス部の踵23及び第2ソックス部の踵24のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした状態の模式図である。
図13は該布地で形成されたアッパーの模式的側面図である。該実施形態の布地80は、
図12に示されているように、第1レッグ部21と第2レッグ部22の上端部が上方に突出している凸部4を有し、凸部4の頂点が第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3上に配置されていること、及び第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3付近において、第1レッグ部及び第2レッグ部の両方の下部にしわ部5が形成されること以外は、布地10と同様の構成を有する。布地80を、布地10と同じようにして、第1ソックス部1と第2ソックス部2の境界線S3において、第1ソックス部1を第2ソックス部2の内部に挿入して、第1ソックス部1と第2ソックス部2を重ね合わせることで形成したアッパー500は、
図13に示されているように、履き口507において、踵側と足甲側がその他の部分(中央部)より高い湾曲形状(湾曲部)を有する以外は、アッパー100と同様の構成を有する。履き口507が湾曲形状を有することで、シューズが脱げにくくなる上、足首のホールド性及びフィット性も高まる。履き口507において、第1層517の上端部の位置が第2層527の上端部の位置より高い。
【0039】
上述した実施態様はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神及び本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の実施態様を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の1以上の実施態様の布地は、舌革部一体型アッパーに用いられ、該布地を用いたアッパーは、ランニングシューズ等のスポーツシューズのアッパーとして好適に用いることができ、該アッパーを用いたシューズは、ランニングシューズ等のスポーツシューズとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 第1ソックス部
2 第2ソックス部
3 凹部
4 凸部
5 しわ部
10、50、60、70、80 布地
11 第1足部
12 第2足部
20 筒状布地要素
21 第1レッグ部
22 第2レッグ部
23 第1レッグ部の踵
24 第2レッグ部の踵
31 第1開口部
32 第2開口部
100、200、300、400、500 アッパー(舌革部一体型アッパー)
101 第1層
102 第2層
103 第1層の前中足部
104 第2層の前中足部
105 第1層の後足部
106 第2層の後足部
107、207、307、407、507 履き口
117、217、317、417、517 履き口の第1層
127、227、327、427、527 履き口の第2層
S1 第1レッグ部の中心軸
S2 第2レッグ部の中心軸
S3 第1ソックス部と第2ソックス部の境界線S3
S4 第1ソックス部の踝線
S5 第2ソックス部の踝線
S6 第1ソックス部の履き口上端線
S7 第2ソックス部の履き口上端線
L1 第1レッグ部の上端部の長さ
L2 第2レッグ部の上端部の長さ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズの舌革部一体化型アッパーに用いる布地であって、
前記布地は、筒状布地要素を含み、前記筒状布地要素は、第1ソックス部及び第2ソックス部を含み、
第1ソックス部は、第1足部、及び第1レッグ部を含み、第2ソックス部は、第2足部、及び第2レッグ部を含み、第1足部、第1レッグ部、第2レック部及び第2足部の順に連続的に形成されており、
第1レッグ部の中心軸と、第2レッグ部の中心軸は互いに一致も平行もせず、
第1ソックス部と第2ソックス部を重ね合わせることで、第1ソックス部は、アッパーの足側に配置される第1層を形成し、第2ソックス部は、前記第1層を覆うように配置される第2層を形成することができる、布地。
【請求項2】
前記布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部と第2レッグ部の上端部は、上方に突出している凸部又は下方に突出している凹部を有し、前記凸部の頂点又は前記凹の底点は第1レッグ部と第2レッグ部の境界線上に配置されている、請求項1に記載のシューズのアッパー用布地。
【請求項3】
前記布地を第1ソックス部の踵及び第2ソックス部の踵のそれぞれが上部の両側端部に配置されるように平置きした場合、第1レッグ部の上端部の長さと第2レッグ部の上端部の長さは異なる、請求項1に記載のシューズのアッパー用布地。
【請求項4】
第1足部は、つま先部或いはその足裏側付近に第1開口部を有し、第2足部は、つま先部或いはその足裏側付近に第2開口部を有し、第1開口部及び/又は第2開口部は縫製にて閉じられている、請求項1に記載のシューズのアッパー用布地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のシューズのアッパー用布地を含むシューズのアッパーであって、
前記アッパーは、第1ソックス部で形成され、足側に配置される第1層と、第2ソックス部で形成され、第1層を覆うように配置される第2層を含み、
第1レッグ部と第2レッグ部の境界線付近に形成された履き口において、踵側の高さと足甲側の高さが水平でない、シューズのアッパー。
【請求項6】
前記履き口の上端部は、踵側と足甲側がその他の部分より高い湾曲形状を有する、請求項5に記載のシューズのアッパー。
【請求項7】
前記履き口は、第1レッグ部の2重構造部と第2レッグ部の2重構造部で形成された4層折り畳み部を有する、請求項5に記載のシューズのアッパー。
【請求項8】
前記履き口において、第1層の上端部が第2層の上端部より高い、請求項5に記載のシューズのアッパー。
【請求項9】
請求項5に記載のシューズのアッパーがソールと一体化されているシューズ。