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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146113
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】無線局および無線システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H04B1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058834
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】福有 啓史
(72)【発明者】
【氏名】岸部 真一
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB07
5K060CC04
5K060HH06
5K060HH09
5K060LL01
5K060LL24
(57)【要約】
【課題】精度よく歪を補償して送信信号の電力を維持可能な無線局および無線システムを提供する。
【解決手段】無線局1が備えるFB制御部22は、第1送信信号S1の電力と第1目標値との差を示すデジタル電圧信号V2が示す値と定められたALC基準値A1との差から、第1送信信号S1の電力と第1目標値との差を低減させる目標ゲインG1を求める。デジタル増幅回路13は、目標ゲインG1に応じてデジタル信号Sdを増幅する。FB制御部22は、デジタル領域の電力データD1が示す出力信号の電力と定められた帰還電力目標値R1との差を低減させる第1減衰量を求める。第1減衰器15は、求められた第1減衰量をアナログ変換して得られる第1減衰量ATT1に応じて、デジタル信号Sdをアナログ変換して得られるアナログ信号Saを減衰させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル領域の送信用データを変調することで生成されたデジタル信号の振幅を、供給される目標ゲインに応じて増幅するデジタル増幅回路と、
前記デジタル信号をアナログ変換してアナログ信号を生成する第1D/A変換器と、
前記アナログ信号を、供給される第1減衰量に応じて減衰させる第1減衰器と、
前記第1減衰器で減衰された前記アナログ信号を増幅して第1送信信号を生成するアナログ増幅回路と、
アンテナに供給される出力信号をデジタル変換してデジタル出力信号を生成する第1A/D変換器と、
前記デジタル出力信号の電力を示す電力データを生成する電力検出部と、
前記第1送信信号の電力を検出する電力検出回路と、
前記電力検出回路で検出された前記第1送信信号の電力と前記第1送信信号の電力の目標値である第1目標値との差に応じたアナログ電圧信号を出力する差動増幅器と、
前記アナログ電圧信号をデジタル変換してデジタル電圧信号を生成する第2A/D変換器と、
前記電力データが示す前記出力信号の電力と定められた帰還電力目標値との差を低減させる前記第1減衰量を求めて、求めた前記第1減衰量を前記第1減衰器に送り、前記デジタル電圧信号が示す値と定められたALC基準値との差から、前記第1送信信号の電力と前記第1目標値との差を低減させる前記目標ゲインを求めて、求めた前記目標ゲインを前記デジタル増幅回路に送るFB制御部と、
を備える無線局。
【請求項2】
前記FB制御部は、前記デジタル電圧信号が示す値と定められた前記ALC基準値との差、前記電力データ、および前記第1減衰量から、前記目標ゲインを求める、
請求項1に記載の無線局。
【請求項3】
前記第1減衰器で減衰された前記アナログ信号を、前記アナログ電圧信号に応じて減衰させる第2減衰器をさらに備え、
前記アナログ増幅回路は、前記第1減衰器および前記第2減衰器で減衰された前記アナログ信号を増幅して前記第1送信信号を生成する、
請求項1または2に記載の無線局。
【請求項4】
前記ALC基準値は、前記第1目標値が前記無線局の定格電力であるときの前記デジタル電圧信号が示す値に応じて、前記第2減衰器による減衰が抑制される範囲の値に定められる、
請求項3に記載の無線局。
【請求項5】
前記ALC基準値として、前記第1送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合と付加装置が前記第1送信信号に信号処理を施して生成する第2送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合に共通の値が定められる、
請求項1または2に記載の無線局。
【請求項6】
前記ALC基準値として、前記無線局の異なる使用周波数帯に対して共通の値が定められる、
請求項1または2に記載の無線局。
【請求項7】
前記デジタル信号の振幅を、前記デジタル信号の電力と定められた出力電力目標値との差を低減させる調節量に応じて調節するFF制御部をさらに備え、
前記デジタル増幅回路は、前記FF制御部で振幅が調節された前記デジタル信号を、前記目標ゲインに応じて増幅する、
請求項3に記載の無線局。
【請求項8】
前記ALC基準値は、前記出力電力目標値が下限値であって、前記第1目標値が前記無線局の定格電力であるときの前記デジタル電圧信号が示す値に応じて、前記第2減衰器による減衰が抑制される範囲の値に定められる、
請求項7に記載の無線局。
【請求項9】
前記出力電力目標値として、前記無線局の使用周波数帯ごとに、前記第1送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合と付加装置が前記第1送信信号に信号処理を施して生成する第2送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合に共通の値が定められる、
請求項7に記載の無線局。
【請求項10】
前記第1目標値ごとに、前記出力電力目標値を下限値から増大させて前記FF制御部での減衰量を減少させていき、前記デジタル電圧信号が示す値が前記ALC基準値に到達するときの前記出力電力目標値が定められた前記出力電力目標値として設定される、
請求項7に記載の無線局。
【請求項11】
前記第1送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合、前記第1目標値は前記無線局の定格電力であり、前記出力電力目標値を下限値から増大させて前記FF制御部での減衰量を減少させていき、前記デジタル電圧信号が示す値が前記ALC基準値に到達するときの前記電力データが示す値が、定められた前記帰還電力目標値として設定される、
請求項7に記載の無線局。
【請求項12】
前記第1送信信号に信号処理を施して第2送信信号を生成し、前記アンテナに前記第2送信信号を供給する付加装置のゲインに基づいて定められた付加装置補償量に応じて、前記デジタル増幅回路で増幅された前記デジタル信号の振幅を調節する付加装置補償器をさらに備え、
前記第1D/A変換器は、前記付加装置補償器で振幅が調節された前記デジタル信号をアナログ変換して前記アナログ信号を生成する、
請求項1または2に記載の無線局。
【請求項13】
前記付加装置補償量は、前記無線局の使用周波数帯ごとに、前記付加装置の動作電圧と定格電力との組合せに応じて定められる、
請求項12に記載の無線局。
【請求項14】
前記付加装置補償器の減衰量が最大とみなせる状態から、前記付加装置補償量を調節して前記付加装置補償器の減衰量を減少させていき、前記電力データが示す前記出力信号の電力が目標範囲に到達したときの前記付加装置補償量の値および前記電力データが示す前記出力信号の電力が示す値がそれぞれ、定められた前記付加装置補償量および定められた前記帰還電力目標値に設定される、
請求項12に記載の無線局。
【請求項15】
前記帰還電力目標値は、前記無線局の使用周波数帯ごとに、前記付加装置の定格電力、または前記付加装置の動作電圧と定格電力との組合せに応じて定められる、
請求項14に記載の無線局。
【請求項16】
請求項12に記載の無線局と、
前記無線局の後段に設けられ、前記無線局が生成する前記第1送信信号に信号処理を施すことで第2送信信号を生成し、生成した前記第2送信信号を前記アンテナに供給する付加装置と、を備え、
前記無線局が備える前記付加装置補償器は、前記付加装置のゲインに基づいて定められた前記付加装置補償量に応じて、前記デジタル増幅回路で増幅された前記デジタル信号の振幅を調節する、
無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線局および無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線局には、送信信号の電力を一定に保つために、ALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路を備えるものがある。この種の無線局の一例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-032129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される無線局において、アナログの送信信号を増幅する増幅器の利得が制御され、送信信号の電力が一定に保たれる。特許文献1に開示される無線局のようにアナログ方式でのALC回路を備える無線局に、パワーアンプの非線形性によって生じる歪を補正するためのDPD(Digital Pre-Distortion)を実装すると、アナログ方式でのALC回路によって生じる歪みをDPDで補償する必要がある。アナログ方式でのALC回路の歪は高速で変化するため、DPDの補償速度が歪の変化に追従できないと、歪を十分に補償できないことがある。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、精度よく歪を補償して送信信号の電力を維持可能な無線局および無線システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線局は、
デジタル領域の送信用データを変調することで生成されたデジタル信号の振幅を、供給される目標ゲインに応じて増幅するデジタル増幅回路と、
前記デジタル信号をアナログ変換してアナログ信号を生成する第1D/A変換器と、
前記アナログ信号を、供給される第1減衰量に応じて減衰させる第1減衰器と、
前記第1減衰器で減衰された前記アナログ信号を増幅して第1送信信号を生成するアナログ増幅回路と、
アンテナに供給される出力信号をデジタル変換してデジタル出力信号を生成する第1A/D変換器と、
前記デジタル出力信号の電力を示す電力データを生成する電力検出部と、
前記第1送信信号の電力を検出する電力検出回路と、
前記電力検出回路で検出された前記第1送信信号の電力と前記第1送信信号の電力の目標値である第1目標値との差に応じたアナログ電圧信号を出力する差動増幅器と、
前記アナログ電圧信号をデジタル変換してデジタル電圧信号を生成する第2A/D変換器と、
前記電力データが示す前記出力信号の電力と定められた帰還電力目標値との差を低減させる前記第1減衰量を求めて、求めた前記第1減衰量を前記第1減衰器に送り、前記デジタル電圧信号が示す値と定められたALC基準値との差から、前記第1送信信号の電力と前記第1目標値との差を低減させる前記目標ゲインを求めて、求めた前記目標ゲインを前記デジタル増幅回路に送るFB制御部と、
を備える。
【0007】
好ましくは、前記FB制御部は、前記デジタル電圧信号が示す値と定められた前記ALC基準値との差、前記電力データ、および前記第1減衰量から、前記目標ゲインを求める。
【0008】
好ましくは、前記第1減衰器で減衰された前記アナログ信号を、前記アナログ電圧信号に応じて減衰させる第2減衰器をさらに備え、
前記アナログ増幅回路は、前記第1減衰器および前記第2減衰器で減衰された前記アナログ信号を増幅して前記第1送信信号を生成する。
【0009】
好ましくは、前記ALC基準値は、前記第1目標値が前記無線局の定格電力であるときの前記デジタル電圧信号が示す値に応じて、前記第2減衰器による減衰が抑制される範囲の値に定められる。
【0010】
好ましくは、前記ALC基準値として、前記第1送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合と付加装置が前記第1送信信号に信号処理を施して生成する第2送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合とで共通の値が定められる。
【0011】
好ましくは、前記ALC基準値として、前記無線局の異なる使用周波数帯に対して共通の値が定められる。
【0012】
好ましくは、前記デジタル信号の振幅を、前記デジタル信号の電力と定められた出力電力目標値との差を低減させる調節量に応じて調節するFF制御部をさらに備え、
前記デジタル増幅回路は、前記FF制御部で振幅が調節された前記デジタル信号を、前記目標ゲインに応じて増幅する。
【0013】
好ましくは、前記ALC基準値は、前記出力電力目標値が下限値であって、前記第1目標値が前記無線局の定格電力であるときの前記デジタル電圧信号が示す値に応じて、前記第2減衰器による減衰が抑制される範囲の値に定められる。
【0014】
好ましくは、前記出力電力目標値として、前記無線局の使用周波数帯ごとに、前記第1送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合と付加装置が前記第1送信信号に信号処理を施して生成する第2送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合とで共通の値が定められる。
【0015】
好ましくは、前記第1目標値ごとに、前記出力電力目標値を下限値から増大させて前記FF制御部での減衰量を減少させていき、前記デジタル電圧信号が示す値が前記ALC基準値に到達するときの前記出力電力目標値が定められた前記出力電力目標値として設定される。
【0016】
好ましくは、前記第1送信信号に基づく前記出力信号が前記アンテナから送信される場合、前記第1目標値は前記無線局の定格電力であり、前記出力電力目標値を下限値から増大させて前記FF制御部での減衰量を減少させていき、前記デジタル電圧信号が示す値が前記ALC基準値に到達するときの前記電力データが示す値が、定められた前記帰還電力目標値として設定される。
【0017】
好ましくは、前記第1送信信号に信号処理を施して第2送信信号を生成し、前記アンテナに前記第2送信信号を供給する付加装置のゲインに基づいて定められた付加装置補償量に応じて、前記デジタル増幅回路で増幅された前記デジタル信号の振幅を調節する付加装置補償器をさらに備え、
前記第1D/A変換器は、前記付加装置補償器で振幅が調節された前記デジタル信号をアナログ変換して前記アナログ信号を生成する。
【0018】
好ましくは、前記付加装置補償量は、前記無線局の使用周波数帯ごとに、前記付加装置の動作電圧と定格電力との組合せごとに定められる。
【0019】
好ましくは、前記付加装置補償器の減衰量が最大とみなせる状態から、前記付加装置補償量を調節して前記付加装置補償器の減衰量を減少させていき、前記電力データが示す前記出力信号の電力が目標範囲に到達したときの前記付加装置補償量の値および前記電力データが示す前記出力信号の電力が示す値がそれぞれ、定められた前記付加装置補償量および定められた前記帰還電力目標値に設定される。
【0020】
好ましくは、前記帰還電力目標値は、前記無線局の使用周波数帯ごとに、前記付加装置の定格電力、または前記付加装置の動作電圧と定格電力との組合せに応じて定められる。
【0021】
本発明の第2の観点に係る無線システムは、
上述の無線局と、
前記無線局の後段に設けられ、前記無線局が生成する前記第1送信信号に信号処理を施すことで第2送信信号を生成し、生成した前記第2送信信号を前記アンテナに供給する付加装置と、を備え、
前記無線局が備える前記付加装置補償器は、前記付加装置のゲインに基づいて定められた前記付加装置補償量に応じて、前記デジタル増幅回路で増幅された前記デジタル信号の振幅を調節する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る無線局は、第1送信信号の電力と第1目標値との差に応じたデジタル電圧信号が示す値と定められたALC基準値との差から、第1送信信号の電力と第1目標値との差を低減させる目標ゲインを求めて、求めた目標ゲインに応じてデジタル信号を増幅する。無線局は、デジタル領域の電力データが示す出力信号の電力と定められた帰還電力目標値との差を低減させる第1減衰量を求めて、求めた第1減衰量に応じて、デジタル信号をアナログ変換して得られるアナログ信号を減衰させる。この結果、精度よく歪を補償して第1送信信号の電力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係る無線局の構成を示すブロック図
図2】実施の形態1に係る無線局が行うALC基準値設定処理の動作の一例を示すフローチャート
図3】実施の形態1に係る無線局が行う出力電力目標値設定処理の動作の一例を示すフローチャート
図4】実施の形態1に係る無線局が行う帰還電力目標値設定処理の動作の一例を示すフローチャート
図5】実施の形態1に係る無線局の設定値の一例を示す図
図6】本発明の実施の形態2に係る無線システムの構成を示すブロック図
図7】実施の形態2に係る無線局が行う帰還電力目標値および付加装置補償量設定処理の動作の一例を示すフローチャート
図8】実施の形態2に係る無線局の設定値の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る無線局および無線システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0025】
(実施の形態1)
図1に示す無線局1は、変調部11と、FF(FeedForward)制御部12と、デジタル増幅回路13と、第1D/A(Digital/Analog)変換器14と、第1減衰器15と、第2減衰器16と、アナログ増幅回路17と、電力検出回路18と、差動増幅器19と、第1A/D(Analog/Digital)変換器20aと、第2A/D変換器20bと、電力検出部21と、FB(FeedBack)制御部22と、第2D/A変換器23aと、第3D/A変換器23bと、設定値調節部24と、を備える。
【0026】
変調部11、FF制御部12、デジタル増幅回路13、電力検出部21、および、FB制御部22は、FPGA(Field Programmable Gate Array)100に実装される。設定値調節部24は、図示しないCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、I/O(Input/Output)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read-Only Memory)で構成される。
【0027】
変調部11は、図示しない入力部から入力される送信用データ、例えば、音声データに対して、A/D変換を行ってデジタル領域の送信用データを生成する。変調部11は、定められた変調方式に従って、デジタル領域の送信用データを変調することでデジタル信号Sdを生成する。変調方式は、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)等の任意の変調方式である。変調部11は、デジタル信号SdをFF制御部12に出力する。
【0028】
FF制御部12は、調節器25と、調節量決定部26と、を有する。調節量決定部26は、設定値調節部24から、出力電力目標値P1の値を取得する。調節量決定部26は、デジタル信号Sdの電力を検出する。調節量決定部26は、検出したデジタル信号Sdの電力と定められた出力電力目標値P1との差を低減するための調節器25での調節量を求め、求めた調節量を調節器25に送る。
【0029】
実施の形態1では、調節量決定部26は、デジタル信号Sdの電力が出力電力目標値P1以下であるとき、0dBである調節量を調節器25に送る。調節量決定部26は、デジタル信号Sdの電力が出力電力目標値P1より大きいとき、デジタル信号Sdの電力と出力電力目標値P1との差を低減する調節量を調節器25に送る。
【0030】
調節器25は、調節量決定部26から取得した調節量に応じてデジタル信号Sdの振幅を調節する。調節器25は、振幅が調節されたデジタル信号Sdをデジタル増幅回路13に送る。
【0031】
実施の形態1では、調節器25は、デジタル信号Sdの電力と出力電力目標値P1との差に応じて調節量決定部26で求められた調節量に従って、デジタル信号Sdを減衰させる。調節器25は、減衰されたデジタル信号Sdをデジタル増幅回路13に送る。
【0032】
デジタル増幅回路13は、FB制御部22から供給される目標ゲインG1に応じて、FF制御部12で振幅が調節されたデジタル信号Sdを増幅する。デジタル増幅回路13は、増幅されたデジタル信号Sdを第1D/A変換器14に送る。
【0033】
第1D/A変換器14は、デジタル信号Sdをアナログ変換してアナログ信号Saを生成する。第1D/A変換器14は、アナログ信号Saを第1減衰器15に送る。
【0034】
第1減衰器15は、第2D/A変換器23aを介してFB制御部22から取得した第1減衰量ATT1に応じてアナログ信号Saを減衰させる。第1減衰器15は、第1減衰量ATT1に応じて減衰量が変化する可変減衰器で構成される。第1減衰器15は、減衰されたアナログ信号Saを第2減衰器16に送る。
【0035】
第2減衰器16は、差動増幅器19が出力するアナログ電圧信号V1に応じて、第1減衰器15で減衰されたアナログ信号Saを減衰させる。第2減衰器16は、アナログ電圧信号V1に応じて減衰量が変化する可変減衰器で構成される。第2減衰器16は、減衰されたアナログ信号Saをアナログ増幅回路17に送る。
【0036】
アナログ増幅回路17は、無線局1のゲインの目標値に基づいて定められた固定ゲインに応じて、第1減衰器15および第2減衰器16で減衰されたアナログ信号Saを増幅して第1送信信号S1を生成する。第1減衰器15および第2減衰器16で行われる減衰は、減衰量が0dBの減衰、すなわち、減衰が行われないことも含むものとする。一例として、第1減衰器15および第2減衰器16で減衰されたアナログ信号Saは、第1減衰器15でのみ減衰され、第2減衰器16での減衰量は0dBであるアナログ信号Saでもよい。アナログ増幅回路17は、第1送信信号S1をアンテナ41、電力検出回路18、および第1A/D変換器20aに送る。
【0037】
アンテナ41は、供給される出力信号を他の無線局に送信する。他の無線局は、無線局に限られず、中継装置を含むものとする。実施の形態1では、アンテナ41は、第1送信信号S1に基づく出力信号を他の無線局に送信する。
【0038】
電力検出回路18は、第1送信信号S1の電力を検出する。詳細には、電力検出回路18は、第1送信信号S1を抽出するCM型方向性結合器と、CM型方向性結合器の出力を検波して第1送信信号S1の信号レベルを示す検波電圧を差動増幅器19に出力する検波器と、を有する。
【0039】
差動増幅器19は、第1送信信号S1の電力と第1送信信号S1の電力の目標値である第1目標値との差を示すアナログ電圧信号V1を第2減衰器16および第2A/D変換器20bに出力する。差動増幅器19は、電力検出回路18が有する検波器から、第1送信信号S1の信号レベルを示す検波電圧を取得する。差動増幅器19は、設定値調節部24から、第3D/A変換器23bを介して第1目標値に応じたアナログ電圧である第1目標電圧T1を取得する。差動増幅器19は、電力検出回路18が有する検波器から取得した検波電圧と設定値調節部24から第3D/A変換器23bを介して取得した第1目標電圧T1との差を出力する。アナログ電圧信号V1は、第2減衰器16での減衰量を示す。
【0040】
差動増幅器19と第2減衰器16は協働してアナログALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路101を形成する。差動増幅器19と第2減衰器16によって、アナログ方式のALCが実現される。
【0041】
第1A/D変換器20aは、アンテナ41に供給される出力信号をデジタル変換して、デジタル出力信号を生成する。実施の形態1では、出力信号は第1送信信号S1に基づくものであるため、第1A/D変換器20aは、第1送信信号S1をデジタル変換して、デジタル出力信号を生成する。第1A/D変換器20aは、デジタル出力信号を電力検出部21に送る。
【0042】
第2A/D変換器20bは、アナログ電圧信号V1をデジタル変換して、デジタル電圧信号V2を生成する。第2A/D変換器20bは、デジタル電圧信号V2をFB制御部22および設定値調節部24に送る。
【0043】
電力検出部21は、デジタル出力信号の電力を検出し、出力信号の電力を示す電力データD1を生成する。実施の形態1では、出力信号は第1送信信号S1に基づくものであるため、電力検出部21は、第1送信信号S1の電力を検出する。電力検出部21は、電力データD1をFB制御部22および設定値調節部24に送る。
【0044】
FB制御部22は、第1減衰器15の減衰量を決定する第1減衰量およびデジタル増幅回路13のゲインを決定する目標ゲインを求める。詳細には、FB制御部22は、第1減衰量を求める減衰量決定部27と、目標ゲインを求めるゲイン決定部28と、を有する。
【0045】
減衰量決定部27は、設定値調節部24から、定められた帰還電力目標値R1を取得する。減衰量決定部27は、電力データD1が示す第1送信信号S1の電力と定められた帰還電力目標値R1との差を低減させる第1減衰量を求める。減衰量決定部27は、求めた第1減衰量を第2D/A変換器23aおよびゲイン決定部28に送る。
【0046】
具体的には、減衰量決定部27は、第1送信信号S1の電力が帰還電力目標値R1以下であるとき、0dBである第1減衰量を第2D/A変換器23aおよびゲイン決定部28に送る。減衰量決定部27は、第1送信信号S1の電力が帰還電力目標値R1より大きいとき、第1送信信号S1の電力と帰還電力目標値R1との差を低減させる第1減衰量を求め、求めた第1減衰量を第2D/A変換器23aおよびゲイン決定部28に送る。
【0047】
ゲイン決定部28は、設定値調節部24から、定められたALC基準値A1、および、帰還電力目標値R1に所定の比率を乗算した値である乗算結果R1’を取得する。ゲイン決定部28は、デジタル電圧信号V2が示す値と定められたALC基準値A1との差から、第1送信信号S1の電力と第1目標値との差を低減させる目標ゲインG1を求める。ALC基準値A1は、FF制御部12の減衰量が最大であって、第1目標値が無線局1の定格電力であるときのデジタル電圧信号V2が示す値に応じて設定される。詳細には、ALC基準値A1は、第2減衰器16による減衰が抑制される範囲の値、具体的には、第2減衰器16による減衰が開始された直後のデジタル電圧信号V2が示す値に設定される。このため、デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値A1以上であれば、第2減衰器16による減衰は行われない。
【0048】
実施の形態1では、ゲイン決定部28は、デジタル電圧信号V2が示す値と定められたALC基準値A1との差、電力データD1、および減衰量決定部27で求められた第1減衰量から、目標ゲインG1を求める。ゲイン決定部28は、求めた目標ゲインG1をデジタル増幅回路13に送る。
【0049】
具体的には、ゲイン決定部28は、デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値A1未満になると、目標ゲインG1を減少させる。また、ゲイン決定部28は、第1減衰量の絶対値が0より大きい、換言すれば、第1減衰器15による減衰が行われていると、目標ゲインG1を減少させる。また、ゲイン決定部28は、電力データD1が乗算結果R1’より大きいときは、目標ゲインG1を減少させる。ゲイン決定部28は、(i)デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値A1以上、(ii)第1減衰量の絶対値が0であり、かつ、(iii)電力データD1が乗算結果R1’以下であれば、目標ゲインG1を増大させる。
【0050】
第2D/A変換器23aは、減衰量決定部27から取得した第1減衰量をアナログ変換して第1減衰量ATT1を生成する。第2D/A変換器23aは、第1減衰量ATT1を第1減衰器15に送る。
【0051】
第3D/A変換器23bは、設定値調節部24から供給されるデジタル領域の電圧値をアナログ変換して、第1目標電圧T1を生成する。第3D/A変換器23bは、第1目標電圧T1を差動増幅器19に送る。
【0052】
設定値調節部24は、精度よく歪を補償するための各種パラメータを保持している。設定値調節部24は、帰還電力目標値R1をFB制御部22が有する減衰量決定部27に送り、ALC基準値A1、および帰還電力目標値R1に所定の比率を乗算した値である乗算結果R1’をFB制御部22が有するゲイン決定部28に送り、出力電力目標値P1をFF制御部12に送る。設定値調節部24は、第1目標値に応じたデジタル領域の電圧値を第3D/A変換器23bに送る。所定の比率は、定格電力から第1目標値を求める際に定格電力に乗算される値である。詳細には、所定の比率は、0より大きく、かつ、100%以下の値であって、例えば、1%、10%、50%、90%、100%のように、定格電力に比べて十分に小さい電力から定格電力までを第1目標値として設定可能な比率である。
【0053】
設定値調節部24は、図示しない無線局1の操作部による操作によって、無線局1が調節モードになると、図2に示すALC基準値設定処理を開始する。ALC基準値が設定されるまでは、デジタル増幅回路13に供給される目標ゲインG1および第1減衰器15に供給される第1減衰量ATT1は0dBに設定される。換言すれば、デジタル増幅回路13による増幅および第1減衰器15による減衰は行われない。
【0054】
設定値調節部24は、出力電力目標値P1を閾値電力以下の値、例えば、下限値に設定し、下限値である出力電力目標値P1をFF制御部12に送る(ステップS11)。閾値電力とは、FF制御部12によってデジタル信号Sdが十分に減衰されることで、第1送信信号S1の電力が第1目標値より十分に小さくなるときの出力電力目標値P1の値である。例えば、設定値調節部24は、出力電力目標値P1に下限値として0を設定し、0である出力電力目標値P1をFF制御部12に送る。この結果、デジタル信号Sdの電力と出力電力目標値P1との差が最大となるため、FF制御部12によるデジタル信号Sdの減衰量は最大となる。
【0055】
設定値調節部24は、第1目標値を無線局1の定格電力に設定する(ステップS12)。設定値調節部24は、定格電力に応じた電圧値を第3D/A変換器23bに送る。第3D/A変換器23bは、設定値調節部24から供給される電圧値をアナログ変換して得られる第1目標電圧T1を差動増幅器19に送る。FF制御部12によるデジタル信号Sdの減衰量が最大であるため、第1送信信号S1の電力は、定格電力である第1目標値より小さくなる。このとき、差動増幅器19が理想的な差動増幅器であれば、第1送信信号S1の電力と定格電力との差に応じた正の値となり、差動増幅器19の出力にカソードが接続される図示しないダイオードが設けられていることで、アナログ電圧信号V1が示す値は0Vとなる。しかしながら、実際には、第1送信信号S1の電力が第1目標電圧T1より小さいときのアナログ電圧信号V1が示す値は0Vとは異なる値となる。アナログ電圧信号V1が示す値が当該値を下回ると、第2減衰器16による減衰が行われる。
【0056】
そこで、設定値調節部24は、第1送信信号S1の電力が第1目標値より小さいときのデジタル電圧信号V2が示す値にオフセットを加算した値をALC基準値A1に設定する(ステップS13)。具体的には、設定値調節部24は、上述のようにFF制御部12での減衰量が最大であって、定格電力に応じた第1目標電圧T1が差動増幅器19に供給されているときのデジタル電圧信号V2が示す値に、オフセットを加算した値を、ALC基準値A1に設定する。設定値調節部24は、設定したALC基準値A1をFB制御部22が有するゲイン決定部28に送る。換言すれば、ステップS13で定められたALC基準値A1は、第2減衰器16による減衰が開始された直後のアナログ電圧信号V1が示す値に対応するものである。ステップS13の処理が終了すると、設定値調節部24は、ALC基準値設定処理を終了する。上述のようにALC基準値A1が設定されると、アナログ電圧信号V1が示す値がALC基準値A1からオフセットを減算した値未満のときに、第2減衰器16による減衰が開始される。
【0057】
設定値調節部24は、ALC基準値設定処理の終了後に、図3に示す出力電力目標値設定処理を開始する。設定値調節部24は、定格電力に所定の比率を乗算した値である第1目標値を設定する(ステップS21)。設定値調節部24は、定格電力に所定の比率を乗算した値である第1目標値に応じた電圧値を第3D/A変換器23bに送る。第3D/A変換器23bは、定格電力に所定の比率を乗算した値である第1目標値に応じた電圧値をアナログ変換して得られる第1目標電圧T1を差動増幅器19に送る。
【0058】
設定値調節部24は、出力電力目標値P1を増加させる(ステップS22)。なお出力電力目標値設定処理の前に行われたALC基準値設定処理において、出力電力目標値P1は下限値、例えば0に設定されている。出力電力目標値P1を増加させることで、FF制御部12における減衰量が減少する。これにより、デジタル信号Sdの電力が増大し、結果として、第1送信信号S1の電力が増大する。設定値調節部24は、デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値に到達したか否かを判別する(ステップS23)。デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値に到達していなければ(ステップS23;No)、ステップS22から上述の処理が繰り返される。
【0059】
デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値に到達すると(ステップS23;Yes)、設定値調節部24は、このときの出力電力目標値P1をステップS21で用いられた比率に応じて定められた出力電力目標値P1として記憶する。記憶される出力電力目標値P1は、出力電力目標値P1に対応する比率を定格電力に乗算した値が第1目標値であるときに、第2減衰器16による減衰が抑制される範囲での最大の出力電力目標値P1である。
【0060】
設定対象となる比率の全てについて出力電力目標値P1の記憶が行われていない間は(ステップS25;No)、ステップS21から上述の処理が繰り返される。設定対象となる比率の全てについて出力電力目標値P1の記憶が行われると(ステップS25;Yes)、設定値調節部24は、出力電力目標値設定処理を終了する。具体的には、1%、10%、50%、90%、100%の各比率について、比率に応じて定められた出力電力目標値P1が記憶されると、設定値調節部24は、出力電力目標値設定処理を終了する。
【0061】
上述のように、所定の比率に応じて求められた出力電力目標値P1を補間することで、任意の比率に応じた出力電力目標値P1を求めることができる。例えば、設定値調節部24は、比率を変数として出力電力目標値P1を得るための一次関数を求める。設定値調節部24は、この一次関数に基づいて、任意の第1目標値に応じた出力電力目標値P1を得ることができる。
【0062】
設定値調節部24は、図3に示す出力電力目標値設定処理の終了後に、図4に示す帰還電力目標値設定処理を開始する。設定値調節部24は、第1目標値を無線局1の定格電力に設定する(ステップS31)。設定値調節部24は、定格電力に応じた電圧値を第3D/A変換器23bに送る。第3D/A変換器23bは、定格電力に応じた電圧値をアナログ変換して得られる第1目標電圧T1を差動増幅器19に送る。
【0063】
設定値調節部24は、出力電力目標値P1を下限値に設定し、下限値である出力電力目標値P1をFF制御部12に送る(ステップS32)。例えば、設定値調節部24は、出力電力目標値P1に0を設定し、0である出力電力目標値P1をFF制御部12に送る。この結果、FF制御部12によるデジタル信号Sdの減衰量は最大となる。
【0064】
設定値調節部24は、出力電力目標値P1を増加させる(ステップS33)。出力電力目標値P1を増加させることで、FF制御部12における減衰量が減少する。これにより、デジタル信号Sdの電力が増大し、結果として、第1送信信号S1の電力が増大する。設定値調節部24は、デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値に到達したか否かを判別する(ステップS34)。デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値に到達していなければ(ステップS34;No)、ステップS33から上述の処理が繰り返される。
【0065】
デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値に到達すると(ステップS34;Yes)、設定値調節部24は、このときの電力データD1が示す値を帰還電力目標値R1に設定する(ステップS35)。ステップS35の処理が終了すると、設定値調節部24は、帰還電力目標値設定処理を終了する。上述のように帰還電力目標値R1が設定されると、第1減衰器15の減衰量を決定する第1減衰量を求めることが可能となる。また、上述のように出力電力目標値P1および帰還電力目標値R1が設定されると、デジタル増幅回路13に供給される目標ゲインG1を求めることが可能となる。
【0066】
無線局1には、複数の使用周波数帯が設定されている。設定値調節部24は、異なる使用周波数帯に対して共通のALC基準値A1を設定する。設定値調節部24は、各使用周波数帯のそれぞれに対して、出力電力目標値P1および帰還電力目標値R1を設定する。換言すれば、設定値調節部24は、使用周波数帯のそれぞれに対して、図3に示す出力電力目標値設定処理および図4に示す帰還電力目標値設定処理を行う。
【0067】
無線局1に3つの使用周波数帯、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3が設定されている場合を例にして、ALC基準値、出力電力目標値、および帰還電力目標値の設定値の一例を図5に示す。
【0068】
設定値調節部24は、ALC基準値に、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに共通の値ALC1を設定する。設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、出力電力目標値にP1,P1,P1を設定する。設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、帰還電力目標値にR1,R1,R1を設定する。
【0069】
以上説明した通り、実施の形態1に係る無線局1は、デジタル電圧信号V2が示す値と定められたALC基準値A1との差から、目標ゲインG1を求めて、求めた目標ゲインG1に応じてデジタル信号Sdを増幅する。無線局1は、電力データD1が示す第1送信信号S1の電力と定められた帰還電力目標値R1との差を低減させる第1減衰量を求めて、求めた第1減衰量ATT1に応じて、アナログ信号Saを減衰させる。この結果、精度よく歪を補償して第1送信信号S1の電力を維持することが可能となる。
【0070】
上述のように設定値調節部24が、ALC基準値A1、出力電力目標値P1および帰還電力目標値R1を設定することで、第2減衰器16による減衰、換言すれば、アナログALC回路101による減衰が抑制されるため、アナログALC回路101に起因する歪が生じることが抑制される。この結果、精度よく第1送信信号S1の電力を維持することが可能となる。
【0071】
ALC基準値A1は、異なる使用周波数帯について共通の値が設定されるため、歪補償のために必要な設定値の個数を低減することができ、設定値の保持に必要な記憶容量を低減することが可能となる。
【0072】
実施の形態1の無線局1は、以上説明した以外に様々な変形が可能である。
【0073】
第1に、無線局1の回路構成は、上述の例に限られず、デジタル信号Sdから第1送信信号S1を生成する回路であれば任意である。一例として、無線局1は、FF制御部12で振幅が調節されたデジタル信号Sdを固定ゲインに応じて増幅する固定増幅器をさらに備えてもよい。この場合、デジタル増幅回路13は、固定増幅器で増幅されたデジタル信号Sdを増幅すればよい。
【0074】
第2に、第1減衰器15と第2減衰器16とは、1つの減衰器で実現されてもよい。この場合、減衰器は、アナログ電圧信号V1と第2D/A変換器23aを介してFB制御部22から取得した第1減衰量ATT1に応じて、アナログ信号Saを減衰すればよい。
【0075】
第3に、設定値調節部24は、FPGA100に実装されてもよい。
【0076】
第4に、無線局1は、上述の送信機能に加えて、受信機能を有してもよい。
【0077】
(実施の形態2)
無線局1の後段には、トランスバーター、ブースター、線形増幅器等の付加装置を設けることが可能である。図6に示す実施の形態2に係る無線システム4は、無線局2と、付加装置3と、を備える。
【0078】
付加装置3は、無線局2の後段に設けられ、無線局2が生成する第1送信信号S1に信号処理を施して第2送信信号S2を生成する。例えば、付加装置3は、第1送信信号S1の増幅、周波数変換、ノイズ除去等を行って第2送信信号S2を生成する。付加装置3は、第2送信信号S2をアンテナ42に送る。
【0079】
無線局2は、実施の形態1の構成に加えて、付加装置補償器29と、切替回路30a,30bと、を備える。付加装置補償器29は、付加装置3のゲインに基づいて定められた付加装置補償量C1を設定値調節部24から取得する。付加装置補償器29は、定められた付加装置補償量C1に応じて、デジタル増幅回路13で増幅されたデジタル信号Sdの振幅を調節する。付加装置補償器29は、FPGA100に実装される。
【0080】
例えば、第1送信信号S1の電力が一定に維持されている無線局2にゲインが10dBの線形増幅器である付加装置3を接続すると、第2送信信号S2の電力が1kWになるとする。このとき、付加装置3をゲインが15dBの線形増幅器に代えると第2送信信号S2の電力が1kWより大きくなるが、付加装置補償量C1を-5dBとして、付加装置補償器29でデジタル信号Sdを5dB減衰させることで、1kWの第2送信信号S2が得られる。
【0081】
切替回路30aは、アナログ増幅回路17の出力を、アンテナ41または付加装置3に接続する。詳細には、切替回路30aは、無線局2の操作部の操作によって選択された動作形態に応じて、アナログ増幅回路17で生成された第1送信信号S1をアンテナ41または付加装置3に供給する。
【0082】
切替回路30bは、アンテナ41またはアンテナ42に供給される出力信号を第1A/D変換器20aに供給する。詳細には、切替回路30bは、第1送信信号S1または第2送信信号S2を第1A/D変換器20aに供給する。
【0083】
切替回路30a,30bは連動して切り替わる。詳細には、切替回路30aが第1送信信号S1をアンテナ41に供給するときは、切替回路30bは第1送信信号S1を第1A/D変換器20aに供給する。切替回路30aが第1送信信号S1を付加装置3に供給するときは、切替回路30bは第2送信信号S2を第1A/D変換器20aに供給する。
【0084】
一例として、無線局2単体での動作が選択されると、切替回路30aは、第1送信信号S1をアンテナ41に供給する。この結果、第1送信信号S1に基づく出力信号がアンテナ41から他の無線局に送信される。このとき、切替回路30bは、第1送信信号S1を第1A/D変換器20aに供給する。
【0085】
他の一例として、無線局2と無線局2の後段に設けられる付加装置3が連動する動作が選択されると、切替回路30aは、第1送信信号S1を付加装置3に供給する。この結果、付加装置3が第1送信信号S1に信号処理を施して生成した第2送信信号S2に基づく出力信号がアンテナ42から他の無線局に送信される。このとき、切替回路30bは、第2送信信号S2を第1A/D変換器20aに供給する。
【0086】
第1D/A変換器14は、付加装置補償器29で振幅が調節されたデジタル信号Sdをアナログ変換してアナログ信号Saを生成する。
【0087】
アンテナ42は、アンテナ41と同様に、供給される出力信号を他の無線局に送信する。アンテナ42は、第2送信信号S2に基づく出力信号を他の無線局に送信する。
【0088】
第1A/D変換器20aは、アンテナ41またはアンテナ42に供給される出力信号をデジタル変換して、デジタル出力信号を生成する。詳細には、第1A/D変換器20aは、切替回路30bから供給される信号をデジタル変換して、デジタル出力信号を生成する。第1A/D変換器20aは、デジタル出力信号を電力検出部21に送る。
【0089】
無線局2が備える電力検出部21は、デジタル出力信号の電力を検出し、出力信号の電力を示す電力データD2を生成する。詳細には、無線局2が単体で動作するときは、電力検出部21は、第1送信信号S1の電力を示す電力データD2を生成する。無線局2と付加装置3が連動するとき、換言すれば、無線局2が第1送信信号S1を付加装置3に供給し、付加装置3によって生成された第2送信信号S2がアンテナ42から送信されるときは、電力検出部21は、第2送信信号S2の電力を示す電力データD2を生成する。
【0090】
減衰量決定部27は、設定値調節部24から、定められた帰還電力目標値R1,R2を取得する。減衰量決定部27は、無線局2の操作部の操作によって選択された動作形態に応じて、第1減衰量を求める。無線局2が単体で動作するときの減衰量決定部27の動作は、実施の形態1と同様である。減衰量決定部27は、無線局2と付加装置3が連動するとき、電力データD2が示す第2送信信号S2の電力と定められた帰還電力目標値R2との差を低減させる第1減衰量を求める。減衰量決定部27は、求めた第1減衰量を第2D/A変換器23aおよびゲイン決定部28に送る。
【0091】
具体的には、減衰量決定部27は、第2送信信号S2の電力が帰還電力目標値R2以下であるとき、0dBである第1減衰量を第2D/A変換器23aおよびゲイン決定部28に送る。減衰量決定部27は、第2送信信号S2の電力が帰還電力目標値R2より大きいとき、第2送信信号S2の電力と帰還電力目標値R2との差を低減させる第1減衰量を求め、求めた第1減衰量を第2D/A変換器23aおよびゲイン決定部28に送る。
【0092】
ゲイン決定部28は、設定値調節部24から、定められたALC基準値A1、および、帰還電力目標値R1,R2に所定の比率を乗算した値である乗算結果R1’,R2’を取得する。ゲイン決定部28は、デジタル電圧信号V2が示す値と定められたALC基準値A1との差から、第1送信信号S1の電力と第1目標値との差を低減させる目標ゲインG1を求める。
【0093】
実施の形態2では、ゲイン決定部28は、デジタル電圧信号V2が示す値と定められたALC基準値A1との差、電力データD2、および減衰量決定部27で求められた第1減衰量から、目標ゲインG1を求める。ゲイン決定部28は、求めた目標ゲインG1をデジタル増幅回路13に送る。
【0094】
具体的には、ゲイン決定部28は、デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値A1未満になると、目標ゲインG1を減少させる。また、ゲイン決定部28は、第1減衰量の絶対値が0より大きい、換言すれば、第1減衰器15による減衰が行われていると、目標ゲインG1を減少させる。また、ゲイン決定部28は、電力データD2が乗算結果R2’より大きければ、目標ゲインG1を減少させる。ゲイン決定部28は、(i)デジタル電圧信号V2が示す値がALC基準値A1以上、(ii)第1減衰量の絶対値が0であり、かつ、(iii)電力データD2が乗算結果R2’以下であれば、目標ゲインG1を増大させる。
【0095】
設定値調節部24は、精度よく歪を補償するための各種パラメータを保持している。設定値調節部24は、帰還電力目標値R1,R2をFB制御部22が有する減衰量決定部27に送り、ALC基準値A1、および帰還電力目標値R1,R2に所定の比率を乗算した値である乗算結果R1’,R2’をFB制御部22が有するゲイン決定部28に送り、出力電力目標値P1をFF制御部12に送り、付加装置補償量C1を付加装置補償器29に送る。設定値調節部24は、第1目標値に応じたデジタル領域の電圧値を第3D/A変換器23bに送る。
【0096】
設定値調節部24は、図2に示すALC基準値設定処理、図3に示す出力電力目標値設定処理、および図4に示す帰還電力目標値設定処理の終了後に、図7に示す帰還電力目標値および付加装置補償量設定処理を開始する。設定値調節部24は、付加装置補償量C1を下限値に設定し、下限値である付加装置補償量C1を付加装置補償器29に送る(ステップS41)。例えば、設定値調節部24は、付加装置補償量C1に0を設定し、0である付加装置補償量C1を付加装置補償器29に送る。この結果、付加装置補償器29の増幅率は最小とみなせる。換言すれば、付加装置補償器29の減衰量は最大とみなせる。
【0097】
設定値調節部24は、付加装置補償量C1を増加させる(ステップS42)。線形増幅器である付加装置3が無線局2の後続に設けられるときに、第2送信信号S2の電力を一定に維持するためには、付加装置補償器29で予めデジタル信号Sdを減衰させる必要がある。このため、設定値調節部24は、ステップS42において、付加装置補償量C1の値を0から増大させて1倍未満の値とする。このように設定値調節部24が付加装置補償量C1を調節することで、付加装置補償器29の減衰量が減少する。
【0098】
設定値調節部24は、電力データD2が示す値が目標範囲にあるか否かを判別する(ステップS43)。目標範囲は、第2送信信号S2の目標値を含む予め定められた範囲である。例えば、目標範囲は、付加装置3として用いられる線形増幅器の定格電力範囲に応じて定められる。
【0099】
電力データD2が示す値が目標範囲に到達していないときは(ステップS43;No)、ステップS42から上述の処理が繰り返される。
【0100】
電力データD2が示す値が目標範囲に到達したときは(ステップS43;Yes)、設定値調節部24は、電力データD2が示す値を帰還電力目標値R2に設定する(ステップS44)。設定値調節部24は、このときの付加装置補償量C1を、定められた付加装置補償量C1として記憶する(ステップS45)。換言すれば、付加装置補償器29の減衰量が最大とみなせる状態から、付加装置補償量C1を調節して付加装置補償器29の減衰量を減少させていき、電力データD2が示す値が目標範囲に到達したときの付加装置補償量C1の値および電力データD2が示す値が、定められた付加装置補償量C1および定められた帰還電力目標値R2として記憶される。ステップS45の処理が終了すると、設定値調節部24は、付加装置補償量および帰還電力目標値設定処理を終了する。
【0101】
無線局2には、無線局2単体での動作と、後段に接続される付加装置3と協働する動作と、を含む複数の動作形態がある。また、無線局2には、複数の使用周波数帯が設定されている。
【0102】
付加装置3として線形増幅器A、線形増幅器B、および線形増幅器Cのいずれかが設けられ、無線局2に3つの使用周波数帯、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3が設定されている場合を例にして、ALC基準値、出力電力目標値、帰還電力目標値、および付加装置補償量の設定値の一例を図8に示す。線形増幅器A、線形増幅器B、および線形増幅器Cは、動作電圧と定格電力との組合せが互いに異なる。線形増幅器A、線形増幅器B、および線形増幅器Cの動作電圧はそれぞれ、200V,200V,100Vである。線形増幅器A、線形増幅器B、および線形増幅器Cの定格電力はそれぞれ、1kW,500W,500Wである。
【0103】
設定値調節部24は、ALC基準値A1として、第1送信信号S1に基づく出力信号がアンテナ41から送信される場合と付加装置3が第1送信信号S1に信号処理を施して生成する第2送信信号S2に基づく出力信号がアンテナ42から送信される場合とで共通であり、かつ、異なる使用周波数帯に対して共通の値を設定する。換言すれば、ALC基準値は、無線局2の使用周波数帯および動作形態によらず、同じ値である。図8の例では、設定値調節部24は、ALC基準値に、無線局2の使用周波数帯および動作形態によらず、同じ値ALC1を設定する。
【0104】
設定値調節部24は、使用周波数帯のそれぞれに対して、第1送信信号S1に基づく出力信号がアンテナ41から送信される場合と付加装置3が第1送信信号S1に信号処理を施して生成する第2送信信号S2に基づく出力信号がアンテナ42から送信される場合とで共通である出力電力目標値を設定する。換言すれば、出力電力目標値は、動作形態によらず、使用周波数帯ごとに定められる。設定値調節部24は、使用周波数帯のそれぞれに対して、図3に示す出力電力目標値設定処理を行う。
【0105】
図8の例では、設定値調節部24は、動作形態によらず、使用周波数帯がバンドB1であれば、出力電力目標値にP1を設定する。同様に、設定値調節部24は、動作形態によらず、使用周波数帯がバンドB2であれば、出力電力目標値にP1を設定する。同様に、動作形態によらず、使用周波数帯がバンドB3であれば、出力電力目標値にP1が設定される。
【0106】
設定値調節部24は、図4に示す帰還電力目標値設定処理によって、無線局2が単体で動作するときの帰還電力目標値を設定する。実施の形態1と同様に、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、帰還電力目標値R1にR1,R1,R1を設定する。
【0107】
設定値調節部24は、無線局2の使用周波数帯ごとに、付加装置3の定格電力、または、付加装置3の動作電圧と定格電力との組合せに応じて、帰還電力目標値を設定する。実施の形態2では、設定値調節部24は、図7に示す帰還電力目標値および付加装置補償量設定処理によって、無線局2の使用周波数帯ごとに、付加装置3の動作電圧と定格電力との組合せに応じた帰還電力目標値を設定する。
【0108】
具体的には、動作電圧が200Vで定格電力が1kWの線形増幅器Aである付加装置3が無線局1の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、帰還電力目標値に、R2a1,R2a2,R2a3を設定する。同様に、動作電圧が200Vで定格電力が500Wの線形増幅器Bである付加装置3が無線局2の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、帰還電力目標値に、R2b1,R2b2,R2b3を設定する。同様に、動作電圧が100Vで定格電力が500Wの線形増幅器Cである付加装置3が無線局1の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、帰還電力目標値に、R2c1,R2c2,R2c3を設定する。
【0109】
設定値調節部24は、図7に示す帰還電力目標値および付加装置補償量設定処理によって、無線局2の使用周波数帯ごとに付加装置3の動作電圧と定格電力との組合せに応じた付加装置補償量を設定する。
【0110】
具体的には、動作電圧が200Vで定格電力が1kWの線形増幅器Aである付加装置3が無線局2の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、付加装置補償量に、C1a1,C1a2,C1a3を設定する。同様に、動作電圧が200Vで定格電力が500Wの線形増幅器Bである付加装置3が無線局2の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、付加装置補償量に、C1b1,C1b2,C1b3を設定する。同様に、動作電圧が100Vで定格電力が500Wの線形増幅器Cである付加装置3が無線局1の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、付加装置補償量に、C1c1,C1c2,C1c3を設定する。
【0111】
以上説明した通り、実施の形態2に係る無線局2は、付加装置3のゲインに基づいて定められた付加装置補償量C1に応じてデジタル信号Sdの振幅を調節する。これにより、無線局2において歪を補償し、付加装置3がアンテナ42に供給する第2送信信号S2の電力を一定に維持することが可能となる。
【0112】
無線局2の後段に設けられる付加装置3として、動作電圧および定格電力が互いに異なる多種多様な電子機器が採用され得るが、無線局2が備える設定値調節部24は、付加装置3の動作電圧および定格電力によらず、共通のALC基準値A1および使用周波数帯ごとの出力電力目標値P1を保持する。これにより、歪補償のために必要な設定値の個数を低減することができ、設定値の保持に必要な記憶容量を低減することが可能となる。
【0113】
実施の形態2の無線局2は、以上説明した以外に様々な変形が可能である。
【0114】
第1に、アンテナ41,42は、1つのアンテナで実現されてもよい。この場合、アンテナは、無線局2から供給される第1送信信号S1に基づく出力信号または付加装置3から供給される第2送信信号S2に基づく出力信号を他の無線局に送信する。
【0115】
第2に、切替回路30aは、付加装置3に設けられてもよい。この場合、無線局2は、単体で動作するときは、付加装置3に設けられる切替回路30aを介して第1送信信号S1をアンテナ41に供給すればよい。
【0116】
第3に、無線局2が備える設定値調節部24は、付加装置3の動作電圧によらず、定格電力に応じて帰還電力目標値R2を設定してもよい。この場合、設定値調節部24は、付加装置3の動作電圧および定格電力の組合せごとに図7に示す帰還電力目標値および付加装置補償量設定処理を行うが、対象の定格電力について帰還電力目標値が既に設定されているときは、ステップS44の処理を行う必要はない。このとき、設定値調節部24は、付加装置3の定格電力に応じて使用周波数帯ごとの帰還電力目標値R2を保持する。具体的には、定格電力が500Wの線形増幅器Bまたは線形増幅器Cである付加装置3が無線局2の後段に設けられるとき、設定値調節部24は、バンドB1、バンドB2、およびバンドB3のそれぞれに対応して、帰還電力目標値に、R2b1,R2b2,R2b3を設定する。これにより、歪補償のために必要な設定値の個数を低減することができ、設定値の保持に必要な記憶容量を低減することが可能となる。
【0117】
実施の形態1で説明した、様々な変形は、実施の形態2にも適用できる。詳細には、無線局2は、FF制御部12で振幅が調節されたデジタル信号を固定ゲインに応じて増幅する固定増幅器をさらに備えてもよい。また、無線局2において、第1減衰器15と第2減衰器16とは、1つの減衰器で実現されてもよい。また、設定値調節部24は、FPGA100に実装されてもよい。また、無線局2は、上述の送信機能に加えて、受信機能を有してもよい。
【0118】
その他、上述のハードウェア構成および回路構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0119】
FPGA100に実装されている無線局1,2の制御処理を行う中心となる部分、一例として、FF制御部12、FB制御部22、および設定値調節部24は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、上述の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc-Read Only Memory)等に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する無線局1,2を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで無線局1,2を構成してもよい。
【0120】
また、無線局1,2を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合等には、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体または記憶装置に格納してもよい。
【0121】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に上記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,2 無線局
3 付加装置
4 無線システム
11 変調部
12 FF制御部
13 デジタル増幅回路
14 第1D/A変換器
15 第1減衰器
16 第2減衰器
17 アナログ増幅回路
18 電力検出回路
19 差動増幅器
20a 第1A/D変換器
20b 第2A/D変換器
21 電力検出部
22 FB制御部
23a 第2D/A変換器
23b 第3D/A変換器
24 設定値調節部
25 調節器
26 調節量決定部
27 減衰量決定部
28 ゲイン決定部
29 付加装置補償器
30 切替回路
41,42 アンテナ
100 FPGA
101 アナログALC回路
A1 ALC基準値
ATT1 第1減衰量
C1 付加装置補償量
D1,D2 電力データ
G1 目標ゲイン
P1 出力電力目標値
R1,R2 帰還電力目標値
R1’,R2’ 乗算結果
S1 第1送信信号
S2 第2送信信号
Sa アナログ信号
Sd デジタル信号
T1 第1目標電圧
V1 アナログ電圧信号
V2 デジタル電圧信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8