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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146115
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】飽和水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 7/00 20060101AFI20241004BHJP
   C02F 3/20 20230101ALI20241004BHJP
   B01F 23/234 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 21/20 20220101ALI20241004BHJP
   B01F 25/20 20220101ALI20241004BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
C02F7/00
C02F3/20 B
B01F23/234
B01F35/71
B01F21/20
B01F25/20
C02F1/68 510J
C02F1/68 530A
C02F1/68 520B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058836
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】510173719
【氏名又は名称】学校法人香川学園
(71)【出願人】
【識別番号】501362375
【氏名又は名称】有限会社バブルタンク
(71)【出願人】
【識別番号】305040743
【氏名又は名称】株式会社アースクリエイティブ
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(71)【出願人】
【識別番号】502242368
【氏名又は名称】今井 剛
(71)【出願人】
【識別番号】301077459
【氏名又は名称】藤里 哲彦
(71)【出願人】
【識別番号】523121587
【氏名又は名称】藤里 祥多
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】今井 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤里 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】藤里 祥多
【テーマコード(参考)】
4D029
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4D029AA03
4D029BB06
4D029BB13
4G035AA01
4G035AB22
4G035AC15
4G035AE13
4G037AA02
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】湖沼や魚介類の養殖場、あるいは汚水処理場などにおいて酸素で飽和した状態の水を簡単な構造によって効率良く生成して、水中の溶存酸素濃度を十分に高めることが可能な飽和水生成装置を提供する。
【解決手段】本発明の飽和水生成装置1aは、上面2fが開口するとともに平面視矩形状をなす底板2aと4枚の側板2bによって底面2cと側面2eが閉塞された容器2と、側面視卵形線の一部が切り取られた形状をなすように曲折され、開口部(一対の端部3a、3aによって挟まれた部分)を上に向けた状態で容器2の内部に設置された導水板3と、開口部近傍の内面3bに上方から水を噴射するノズル4と、このノズル4が先端5aに接続された給水管5と、この給水管5の基端に吐出口が接続されている給水ポンプ(図示せず)と、底板2aの近傍の側板2bに設けられた第1の排水口(図示せず)に接続されたオーバーフロー管6を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面が閉塞されるとともに処理水が排出される第1の排水口が下部に設けられ、少なくとも酸素を含む気体によって上部に気相が形成されている容器と、
開口部を上に向けた状態で前記容器内に設置され、前記開口部に続く内面を側面視した場合にその輪郭線が卵形線の一部が切り取られた形状をなしている導水部材と、
前記開口部近傍の前記内面に上方から水を噴射するノズルと、
このノズルが先端に接続されている給水管と、
この給水管の基端に吐出口が接続されている給水ポンプと、を備え、
前記容器の前記下部には前記処理水が貯留されることを特徴とする飽和水生成装置。
【請求項2】
前記容器内に前記気体を供給する給気管と、
この給気管の基端に接続されているコンプレッサと、を備え、
前記容器は上面が閉塞され、給水口、給気口及び開閉可能な排気口が上部に設けられ、
前記給水管及び前記給気管はそれぞれ前記給水口及び前記給気口を通して各先端が前記容器内に差し込まれていることを特徴とする請求項1に記載の飽和水生成装置。
【請求項3】
前記容器は少なくとも一部が水中に没するように設置されるとともに、前記第1の排水口が設けられる代わりに前記底面が開口しており、
前記給水ポンプは水中ポンプであることを特徴とする請求項2に記載の飽和水生成装置。
【請求項4】
前記水中ポンプが収納されているポンプ用加圧タンクと、
前記水中に鉛直方向と平行をなすように設置され、前記ポンプ用加圧タンクが下端に接続されるとともに上端が開口している第1の給水路と、
前記水中に水平方向と平行をなすように設置され、前記ポンプ用加圧タンクが一端に接続されている第2の給水路と、
この第2の給水路の他端に接続されているストレーナと、を備えていることを特徴とする請求項3に記載の飽和水生成装置。
【請求項5】
前記導水部材は、曲折された板材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の飽和水生成装置。
【請求項6】
前記容器の代わりに、処理水が排出される第2の排水口が下部に設けられ、少なくとも酸素を含み、圧力が大気圧よりも高い前記気体によって上部に気相が形成されている加圧タンクと、
この加圧タンク内に前記気体を供給する給気管と、
この給気管に接続されているコンプレッサと、
前記第2の排水口に接続され前記加圧タンク内に溜まった前記処理水を排出する排水管と、を備え、
前記導水部材は、前記開口部を上に向けた状態で前記加圧タンク内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の飽和水生成装置。
【請求項7】
前記導水部材は、曲折された板材と、この板材の両側面を閉塞する一対の側板と、を有することを特徴とする請求項6に記載の飽和水生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼や魚介類の養殖場、あるいは汚水処理場などに設置されて、溶存酸素量が飽和状態に達した水(飽和水)を生成する装置に係り、特に、飽和水を簡単な構造によって効率良く生成することが可能な飽和水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
池や沼などの水底等に存在する有機汚泥は微生物によって分解されるが、水中の溶存酸素量が少ないと、その有機汚泥が嫌気分解される結果、硫化物やメタンガスなどが生成されてしまう。これらの有害物質が生成されないようにするには、水中の溶存酸素量を高める技術が必要であるが、それに関し、既に幾つかの発明や考案が開示されている。
例えば、特許文献1には、「水中への酸素供給装置」という名称で、貧酸素水域に酸素を供給することによって、水質の改善を図る目的で水中に設置される装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、水中に設置されるとともに、得られた酸素溶解水を任意の水深層に排出する溶解タンクと、任意の水深層における水を吸引して溶解タンクに供給するポンプと、このポンプの吸引側や吐出側において、汲み上げられた水に酸素を含む気体を注入する気体注入手段と、ポンプが設置された状態で湖沼などの水面に配置されるフロート体を備えた構造となっている。
このような構造によれば、水中に設置される溶解タンクの上部近傍にポンプが設置されることから、水圧を利用して溶解タンクの圧力を上昇させられるとともに、未溶解の気体を気体注入手段に還流させることにより、気体の有効利用を進めることができる。
【0003】
また、特許文献2には、「深層曝気装置」という名称で、曝気本体の内外の差圧や浮遊物の影響を受けず、緊急排気管による緊急排気を確実に行うことができる装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、ダム湖等の湖底に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体と、この曝気本体の上部に設置された排気管及び緊急排気管と、緊急排気管の下端口に設置されて曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁を備えており、緊急排気管は、上端口が曝気本体外の近傍に設けられるとともに、下端口が排気管の下端口よりも下方で、かつ曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に設けられ、フロート弁は、水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じるととともに、水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、緊急排気管の下端口を開くような構造となっている。
特許文献2に開示された発明は、内外の差圧により弁を開閉させる構造ではなく、曝気本体内のフロート弁を水位の昇降により開閉させる構造であることから、開閉圧の調整が不要である。したがって、緊急排気を確実に行うことができる。また、フロート弁が曝気本体内に配置されていることから、泥砂の浮遊物が作動部分に詰まるおそれや、落ち葉やプラスチック袋等の浮遊物が弁の開口部分を塞ぐおそれがないため、緊急排気を確実に行うことができる。
【0004】
さらに、特許文献3には、「水中撹拌曝気装置」という名称で、排水処理施設等の水槽の中に設置され、水槽内の水を撹拌しながら曝気させる装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、下方に末広がり状のお碗型をなし、開口部が下を向くように配置された回転コーンと、この回転コーンの内部に形成された圧縮空気室と、回転コーンの下方に配設された上面が平板状で円板状をなす底部整流板を備えており、回転コーンの開口部の周縁部の下端部と底部整流板の上面との上下方向の隙間と、回転コーンの開口部の周縁部全周にわたって多数形成された細幅状スリットを圧縮空気室に貯留されている圧縮空気の吹き出し口とする構造となっている。
このような構造によれば、回転コーンの回転力によりせん断された大量の微細気泡が発生することにより、水との接触面積が増加するため、酸素溶解効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-230713号公報
【特許文献2】特開2012-61423号公報
【特許文献3】特許第6600779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明は、気体注入手段によって酸素が注入された水を溶解タンク内に供給する構造となっているが、そのような構造では、水中の溶存酸素濃度を十分に高めることができない。また、図1と明細書には実施例1として、ノズルから溶解タンク内に噴出されて邪魔板に衝突した水が激しく泡立つことにより気液接触表面積が大きくなると記載されているが、酸素が注入された水を泡立てることによっても、溶存酸素濃度を高めることは困難である。
また、特許文献2に開示された発明では、緊急排気を確実に行うことができるという効果は有しているものの、散気管によるエアレーションだけでは、水中の溶存酸素濃度を効率良く高めることができない。
さらに、特許文献3に開示された発明は、大量の微細気泡を発生させて拡散させる構造となっているが、微細気泡を発生させる方法では、水中の溶存酸素濃度を十分に高めることは難しい。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、湖沼や魚介類の養殖場、あるいは汚水処理場などにおいて酸素で飽和した状態の水を簡単な構造によって効率良く生成して、水中の溶存酸素濃度を十分に高めることが可能な飽和水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る飽和水生成装置は、底面と側面が閉塞されるとともに処理水が排出される第1の排水口が下部に設けられ、少なくとも酸素を含む気体によって上部に気相が形成されている容器と、開口部を上に向けた状態で容器内に設置され、開口部に続く内面を側面視した場合にその輪郭線が卵形線の一部が切り取られた形状をなしている導水部材と、開口部近傍の内面に上方から水を噴射するノズルと、このノズルが先端に接続されている給水管と、この給水管の基端に吐出口が接続されている給水ポンプと、を備え、容器の下部には処理水が貯留されることを特徴とするものである。
なお、卵形線は凸閉曲線とも呼ばれ、平面上の単一閉曲線であって、内部のどの2点を結んだ線分についてもその線分上の点がすべて内部にあるような曲線として定義されているが、第1の発明における卵形線には、曲線の一部が直線で置き換えられたような略卵形線も含まれるものとする。
第1の発明において、導水部材に対して開口部近傍の内面に向けてノズルから水を噴出させると、この水は容器の上部に気相を形成している気体を巻き込みながら導水部材の内面に沿って下降した後、内面の最下部で反転し、再び導水部材の内面に沿って上昇する。その後、導水部材の開口部の近くに達した水と気泡は、一部がノズルから噴出される水によって導水部材の下方へ押し込まれ、残りは導水部材の開口部から溢れ出す。そして、導水部材の下方へ押し込まれた水と気泡は、再び上述の気体を巻き込みながら導水部材の内面に沿って下降した後、その最下部で反転して上昇し、開口部の近くにおいて、ノズルから噴出された水によって再び導水部材の下方へ押し込まれる水と気泡及び導水部材から溢れ出す水と気泡に分かれる。
【0009】
このように、第1の発明では、ノズルから噴出された水が酸素を含む気体を巻き込みながら導水部材の内面に沿って何度も下降と上昇を繰り返すことによって、導水部材内が気泡で充満する。これにより、空気に含まれる酸素がその水に溶解する量が増加していく結果、最終的に溶存酸素量が飽和状態に達した水(飽和水)が生成されるという作用を有する。また、導水部材の内部で生成されて開口部から溢れ出し、導水部材の下方へ移動した飽和水が処理水として第1の排水口から容器の外部へ排出されるという作用を有する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、容器内に気体を供給する給気管と、この給気管の基端に接続されているコンプレッサと、を備え、容器は上面が閉塞され、給水口、給気口及び開閉可能な排気口が上部に設けられ、給水管及び給気管はそれぞれ給水口及び給気口を通して各先端が容器内に差し込まれていることを特徴とするものである。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、容器の上面が閉塞されていることから、コンプレッサによって圧力を大気圧よりも高くした空気を容器内に供給することで、容器内に圧力が大気圧よりも高い気相が形成されるという作用を有する。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、容器は少なくとも一部が水中に没するように設置されるとともに、第1の排水口が設けられる代わりに底面が開口しており、給水ポンプは水中ポンプであることを特徴とするものである。
第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、容器が設置される水深を変えることで、容器内に形成される気相の圧力が変化するとともに、気液境界面の位置が容器に対する排気口の位置によって決まるという作用を有する。また、第3の発明においては、排気口を開いた状態にして給気管から容器内に気体を供給し続けると、余分な気体が排気口から排出されて容器内の気体が常に入れ替わることになり、その組成が一定に保たれるという作用を有する。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、水中ポンプが収納されているポンプ用加圧タンクと、水中に鉛直方向と平行をなすように設置され、ポンプ用加圧タンクが下端に接続されるとともに上端が開口している第1の給水路と、水中に水平方向と平行をなすように設置され、ポンプ用加圧タンクが一端に接続されている第2の給水路と、この第2の給水路の他端に接続されているストレーナと、を備えていることを特徴とするものである。
第4の発明において、水中ポンプを稼働させて給水管を通して容器内に水を供給すると、ポンプ用加圧タンク内が負圧になるため、第1の給水路内の水が下方へ移動するとともに、第2の給水路内の水がポンプ用加圧タンクに向かって移動する。そして、第2の給水路内の水が移動すると、ストレーナの周囲の水が第2の給水路内に吸い込まれる。すなわち、第4の発明では、第3の発明の作用に加え、水中ポンプによってポンプ用加圧タンク内の水が吸い込まれるのに伴って、第2の給水路内の水がポンプ用加圧タンクに向かって移動する結果、ストレーナの周囲の水が第2の給水路に吸い込まれるという作用を有する。
【0013】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、導水部材は、曲折された板材からなることを特徴とするものである。
第5の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、導水部材の構造が簡単で加工コストが安いという作用を有する。
【0014】
第6の発明は、第1の発明において、容器の代わりに、処理水が排出される第2の排水口が下部に設けられ、少なくとも酸素を含み、圧力が大気圧よりも高い気体によって上部に気相が形成されている加圧タンクと、この加圧タンク内に気体を供給する給気管と、この給気管に接続されているコンプレッサと、第2の排水口に接続され加圧タンク内に溜まった処理水を排出する排水管と、を備え、導水部材は、開口部を上に向けた状態で加圧タンク内に設置されていることを特徴とするものである。
第6の発明においては、容器の代わりに加圧タンクの内部に導水部材が設置されていることから、第1の発明の作用に加え、第2の発明の場合よりも圧力が高い気相を加圧タンクの内部と導水部材内の上部に形成することが容易であるという作用を有する。
【0015】
第7の発明は、第6の発明において、導水部材は、曲折された板材と、この板材の両側面を閉塞する一対の側板と、を有することを特徴とするものである。
第7の発明においては、第6の発明の作用に加え、導水部材の構造が簡単で加工コストが安いという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、酸素で飽和した状態の水(飽和水)を効率良く生成して、水中の溶存酸素濃度を十分に高めることができる。また、第1の発明は構造が簡単であるため、安価に製造することが可能である。なお、容器の上面が開口している場合には、容器の上面に形成される気相の圧力が大気圧と等しくなり、容器を耐圧構造にしなくとも良いため、製造コストを更に安くすることができる。
【0017】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、容器内に圧力が大気圧よりも高い気相が形成された状態で、開口部近傍の導水部材の内面に向けてノズルから水を噴出させることにより、第1の発明の場合よりも溶存酸素濃度の高い処理水をワンパスで生成することができるという効果を奏する。
【0018】
第3の発明では、容器が設置される水深によって容器内に形成される気相の圧力が変化するため、その圧力を一定に保つための制御機構等が不要であるとともに、気液境界面の位置が容器に対する排気口の位置によって決まるため、気液境界面の位置を検出するためのセンサも不要であることから、第2の発明の効果に加え、製造コストが削減されるという効果を奏する。また、第3の発明では、排気口を開いた状態にして給気管から容器内に気体を供給し続けると、容器内の気体が常に入れ替わり、その組成が一定に保たれるため、容器から排出される処理水の溶存酸素濃度が変動し難いという効果を奏する。さらに、容器の底面が開口しており、容器の内面と外面に同じ水圧が加わるため、容器を耐圧構造にする必要がない。したがって、第3の発明によれば、製造コストが更に削減される。
【0019】
一端にストレーナが取り付けられた給水用配管の他端を水中ポンプの吸込口に接続した場合、ストレーナを設置可能な範囲は水中ポンプの吸い込み能力によって決まり、例えば、水中ポンプの吸い込み能力が低い場合には、ストレーナを水中ポンプの近くに設置せざるを得ない。これに対し、第4の発明では、水中ポンプによってポンプ用加圧タンクの内部の水が吸い込まれると、第2の給水路内の水がポンプ用加圧タンクに向かって移動する結果、水中ポンプの吸い込み能力に関係なく、ストレーナの周囲の水が第2の給水路に吸い込まれる。
すなわち、第4の発明では、第3の発明の効果に加え、池や沼などの水底にポンプ用加圧タンクと第2の給水路を設置する際に、水中ポンプの吸い込み能力に関係なく、ストレーナを水中ポンプから離れた場所に設置することで、広範囲の水を処理できるという効果を奏する。なお、その際に容器をストレーナと同じ高さに設置すれば、ストレーナから第2の給水路に吸い込まれた低層水と容器から排出される処理水の温度差が小さく、処理水が中層水や上層水に混ざり難いため、低層水域の水だけを処理することが可能である。
【0020】
第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、導水部材の構造が簡単で加工コストが安いため、製造コストが削減されるという効果を奏する。
【0021】
第6の発明によれば、第1の発明の効果に加え、第2の発明の場合よりも圧力の高い気相が加圧タンク内に形成された状態で、開口部近傍の導水部材の内面に向けてノズルから水を噴出させることにより、第2の発明の場合よりも溶存酸素濃度の高い処理水をワンパスで生成することができるという効果を奏する。また、第6の発明では、導水部材の上面が開口しており、その内部に存在する気体の圧力が加圧タンク内で気相を形成している気体の圧力と等しいため、導水部材を加圧タンクと同じような耐圧構造にする必要がない。したがって、第6の発明によれば、導水部材をシンプルな構造にすることで、製造コストの削減を図ることが可能である。
【0022】
第7の発明によれば、第6の発明の効果に加え、導水部材の構造が簡単で加工コストが安いため、製造コストが削減されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る飽和水生成装置の外観を示した正面図及び側面図である。
図2】(a)は図1(a)及び図1(b)に示した飽和水生成装置の作用を説明するための模式図であり、(b)はその飽和水生成装置の変形例の正面図である。
図3】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る飽和水生成装置の外観図であり、(b)は同図(a)におけるA-A線矢視断面図である。
図4】(a)は図3(a)及び図3(b)に示した導水部材の外観斜視図であり、(b)は導水部材の変形例の外観斜視図であり、(c)は同図(b)におけるB-B線矢視断面図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る飽和水生成装置の外観図である。
図6】本発明の第4の実施の形態に係る飽和水生成装置の外観図である。
図7図2(b)に示した飽和水生成装置によって処理された水に溶存する酸素の量(DO値)と水深の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の飽和水生成装置について、図1乃至図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、飽和水生成装置が実際に設置される状態を想定して、「上端」や「下端」あるいは「底板」や「底面」などの表現を用いている。
【実施例0025】
図1(a)及び図1(b)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る飽和水生成装置1aの外観を示した正面図及び側面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、飽和水生成装置1aは、上面2fが開口するとともに平面視矩形状をなす底板2aと4枚の側板2bによって底面2cと側面2eが閉塞された容器2と、側面視卵形線の一部が切り取られた形状をなすように曲折され、開口部(一対の端部3a、3aによって挟まれた部分であり、図4(a)に示した開口部9aに相当する。)を上に向けた状態で容器2の内部に設置された導水板3と、開口部近傍の内面3bに上方から水を噴射するノズル4と、このノズル4が先端5aに接続された給水管5と、この給水管5の基端に吐出口が接続されている給水ポンプ(図示せず)と、底板2aの近傍の側板2bに設けられた第1の排水口(図示せず)に接続されたオーバーフロー管6を備えている。
そして、導水板3は互いに平行をなす一対の側板2b、2bによって両側面が閉塞されるとともに、当該側面に垂直な一対の側板2b、2bのうち、開口部から遠い側板2bに接触することなく、かつ、ノズル4によって水が吹き付けられる開口部近傍の内面3bの一方が上方を向くように傾斜した状態で容器2の内部に設置されている。なお、導水板3は上述の開口部に続く内面3bを側面視した場合にその輪郭線が卵形線の一部が切り取られた形状をなしているが、その切り取られる箇所は、図1(a)に示すように卵形線の中で曲率半径が最も小さい部分であることが望ましい。
【0026】
図1(a)に矢印で示すように給水管5からノズル4に供給された水は容器2の下部に溜まるが、気液境界面(水面7)が所定の高さに達するとオーバーフロー管6の開口端6aから溢出する。そして、容器2は上面2fが開口しており、大気が内部へ自由に出入り可能な状態になっているため、容器2の上部(気液境界面よりも上の部分)には、大気によって気相が形成されている。そして、飽和水生成装置1aでは、容器2の上部に気相が形成されるように、オーバーフロー管6が容器2の内部における水面7を一定の高さに維持するという作用を有している。
【0027】
図2(a)は飽和水生成装置1aの作用を説明するための模式図である。なお、図2(a)では容器2の正面に配置された側板2bの図示を省略している。
飽和水生成装置1aにおいて、細い矢印で示すように給水管5の内部を通ってノズル4に供給された水は導水板3に対して開口部近傍の内面3bに向けて噴出され、容器2の上部に気相を形成している空気を巻き込みながら図2(a)に太い矢印で示すように一対の端部3a、3a(図1(a)を参照)の一方の近くから導水板3の内面3bに沿って下降した後、内面3bの最下部で反転して再び内面3bに沿って上昇する。その後、一対の端部3a、3aの他方の近くに達した水と気泡は、一部がノズル4から噴出される水によって導水板3の下方へ押し込まれ、残りは導水板3から溢れ出す。そして、導水板3の下方へ押し込まれた水と気泡は、再び空気を巻き込みながら内面3bに沿って下降した後、内面3bの最下部で反転して上昇し、開口部の近くにおいて、ノズル4から噴出された水によって再び導水板3の下方へ押し込まれる水と気泡及び導水板3から溢れ出す水と気泡に分かれる。
このように、飽和水生成装置1aでは、ノズル4から噴出された水が、容器2の上部に気相を形成している空気を巻き込みながら導水板3の内面3bに沿って何度も下降と上昇を繰り返すことによって導水板3の内部が気泡で充満する。これにより、空気に含まれる酸素がその水に溶解する量が増加していく結果、最終的に溶存酸素量が飽和状態に達した水(飽和水)が生成されるのである。
【0028】
導水板3の内部で生成された飽和水は、導水板3の開口部から溢れ出した後、導水板3の外面3c(図1(a)を参照)に沿って下降し、容器2の下部に溜まる。その後、容器2の下部に溜まった飽和水は、その水面7が所定の高さに達した時点で処理水(容器2の内部において処理された水)としてオーバーフロー管6の開口端6aから排出される。
このように、飽和水生成装置1aでは、酸素で飽和した状態の水(飽和水)を効率良く生成して、水中の溶存酸素濃度を十分に高めることができる。また、飽和水生成装置1aは構造が簡単であるため、安価に製造することが可能である。さらに、飽和水生成装置1aでは、容器2の上面2fが開口しており、その内部に形成されている気相の圧力が大気圧と等しいため、容器2を後述の加圧タンク8のような耐圧構造にする必要がない。これにより、製造コストが更に削減される。
【0029】
図2(b)は飽和水生成装置1aの変形例に係る飽和水生成装置1bの正面図である。
図2(b)に示すように、飽和水生成装置1bは飽和水生成装置1aにおいて上面2fを閉塞する上板2dに設けられた給水口(図示せず)及び給気口(図示せず)を通して給水管5の先端5a及び給気管16の一端がそれぞれ容器2の内部に差し込まれており、上板2dに設けられた排気口(図示せず)には排気管17が接続され、給気管16の他端にコンプレッサ18が接続されるとともに、排気管17に電磁弁19aが設置された構造となっている。
このような構造によれば、容器2の上面2fが閉塞されていることから、コンプレッサ18によって圧力を大気圧よりも高くした空気を容器2の内部に供給することができる。これにより、容器2の内部に圧力が大気圧よりも高い気相が形成されるため、開口部の近傍の導水板3の内面3bに向けてノズル4から水を噴出させることにより、飽和水生成装置1aの場合よりも溶存酸素濃度の高い処理水をワンパスで生成することができる。
【実施例0030】
図3(a)は本発明の第2の実施の形態に係る飽和水生成装置1cの外観図であり、図3(b)は図3(a)におけるA-A線矢視断面図である。なお、図が煩雑になるのを避けるため、図3(a)及び図3(b)では一部の締結部材に対してのみ符号を付している。また、図1(a)及び図1(b)に示した構成要素については同一の符号を付することにより適宜その説明を省略する。
図3(a)及び図3(b)並びに図4(a)に示すように、飽和水生成装置1cでは、処理水が排出される第2の排水口20aが下部に設けられ、圧力が大気圧よりも高い空気によって上部に気相が形成される加圧タンク8の内部に3つの導水部材9が設置されている。そして、加圧タンク8は、両端にフランジ10aがそれぞれ設けられ、軸方向が水平となるように設置される円筒状のタンク本体10と、フランジ11aがそれぞれ設けられた一対のカバー体11、11からなり、タンク本体10のフランジ10aとカバー体11のフランジ11aがボルト及びナットからなる締結部材12を用いて連結される構造となっている。
導水部材9は、側面視卵形線の一部が切り取られた形状をなすように曲折された導水板3と、この導水板3の両側面を閉塞する一対の側板13、13によって構成され、開口部9a(図4(a)を参照)を上に向けた状態で加圧タンク8の側面8aの下部に連結具14を介して連結されている。
【0031】
加圧タンク8の上部に設けられた給水口(図示せず)を通して加圧タンク8の内部に差し込まれた3本の給水管5の先端5a(図3(b)を参照)には、開口部9a(図4(a)を参照)の近傍の導水板3の内面3b(図3(b)を参照)に上方から水を噴射するノズル4がそれぞれ接続されている。また、給水管5の基端には、給水ポンプ15の吐出口が接続されており、加圧タンク8の側面8aの上部に設けられた給気口(図示せず)及び排気口(図示せず)には、給気管16及び排気管17の一端がそれぞれ接続されている。そして、給気管16の他端にはコンプレッサ18が接続されており、排気管17には電磁弁19aが設置されている。
また、第2の排水口20aには、電磁弁19cが設置された排水管20が接続されており、加圧タンク8のカバー体11には、内部に溜まった水の上限水位と下限水位を検出するための水位センサ21と、この水位センサ21の検出結果に基づいてコンプレッサ18の動作と電磁弁19aの開度を制御する制御ユニット(図示せず)が設置されている。すなわち、飽和水生成装置1cは、水位センサ21によって検出された加圧タンク8の内部の水面7に基づいて、給気管16を介して加圧タンク8の内部へ供給される気体の量及び排気管17を介して加圧タンク8の外部へ排出される気体の量を制御することにより、水面7の高さを一定に保つ構造となっている。
【0032】
飽和水生成装置1cでは、飽和水生成装置1bとは異なり、容器2の代わりに加圧タンク8の内部に導水部材9が設置されているため、飽和水生成装置1bの場合よりも圧力の高い気相を容易に加圧タンク8の内部と導水部材9の上部に形成することができる。そして、この状態で、導水部材9の導水板3に対して開口部9aの近傍の内面3bに向けてノズル4から水を噴出させると、上述の気相の圧力が飽和水生成装置1bの場合よりも高いため、飽和水生成装置1bの場合よりも溶存酸素濃度の高い処理水をワンパスで生成することができる。また、飽和水生成装置1cでは、導水部材9の上面が開口しており、その内部に存在する空気の圧力が加圧タンク8の上部で気相を形成している空気の圧力と等しいため、導水部材9を加圧タンク8と同じような耐圧構造にする必要がない。すなわち、飽和水生成装置1cでは、導水部材9が導水板3と一対の側板13、13からなるシンプルな構造で良いため、製造コストの削減を図ることができる。
【0033】
図4(a)は導水部材9の外観斜視図であり、図4(b)は導水部材9の変形例の外観斜視図である。また、図4(c)は図4(b)におけるB-B線矢視断面図である。
飽和水生成装置1cは、図4(a)に示すように導水部材9が導水板3と一対の側板13、13からなり、一対の端部3a、3a(図1(a)を参照)と一対の側板13、13で囲まれた部分によって開口部9aが形成された構造の導水部材9を備えているが、飽和水生成装置1cは、このような構造に限定されるものではない。例えば、飽和水生成装置1cは、図4(b)及び図4(c)に示すように開口部23aに続く内面23bを側面視した場合にその輪郭線が卵形線の一部が切り取られた形状をなす空洞部23を有するブロック状の導水部材22を備えた構造であっても良い。この場合、導水部材22における空洞部23の内面23bの輪郭線は、導水部材9の導水板3において開口部9aに続く内面3bの輪郭線に相当する。
なお、飽和水生成装置1cだけでなく、飽和水生成装置1aや飽和水生成装置1bについても導水板3の代わりに導水部材22が容器2の内部に設置された構造とすることができる。ただし、導水部材22の代わりに導水板3を備えた導水部材9を用いた場合には、構造が簡単で加工コストが安いため、製造コストが削減されるというメリットがある。
【実施例0034】
図5は本発明の第3の実施の形態に係る飽和水生成装置1dの外観図である。なお、図1(a)及び図1(b)並びに図3(a)及び図3(b)に示した構成要素については同一の符号を付することにより適宜その説明を省略する。
図5に示すように、飽和水生成装置1dでは、飽和水生成装置1aにおいて第1の排水口(図示せず)とオーバーフロー管6が設けられる代わりに、底面2cが開口し、少なくとも一部が水中に没するように設置される容器2の側板2bに電磁弁19bが介装された排気管24が設けられるとともに、容器2の上面2fを閉塞する上板2dに給水口(図示せず)及び給気口(図示せず)が設けられている。そして、給水口を通して給水管5の先端5a(図2(b)を参照)が容器2の内部に差し込まれており、給気口に一端が接続された給気管16の他端にはコンプレッサ18が接続されている。また、給水管5の基端には、電源ケーブル25aを介してAC電源25から電力が供給される水中ポンプ26の吐出口が接続されており、給水管5の先端5a(図2(b)を参照)には、開口部9aの近傍の導水板3の内面3bに上方から水を噴射するノズル4が接続されている。なお、給気管16から分岐して水中ポンプ26のモーターの回転機構の空洞部に繋がるような管を設けるとともに、この管を通して、コンプレッサ18によって圧力が高められた空気を上記空洞部に送るようにすれば、上記空洞部に周囲の水が侵入してモーターが故障するという事態を防ぐことができる。この場合、水中ポンプ26は耐圧性を有する高価なものでなくとも良いため、汎用の安価な構造のものを水中ポンプ26として用いることができる。
【0035】
飽和水生成装置1dにおいて、容器2の内部が水で満たされている状態でコンプレッサ18を用いて大気圧よりも高い圧力にされた空気が給気管16から容器2の内部へ供給されると、水の一部が底面2cから押し出されて、気液境界面(水面7)が下方へ移動する結果、容器2の上部に気相が形成される。
このとき、電磁弁19bを開いておくと、排気管24が接続された排気口(図示せず)に気液境界面が達した時点で、給気管16から容器2に供給される空気が排気管24を通って容器2の外部へ排出されるため、気液境界面は下方へ移動することなく、排気管24が接続された排気口(図示せず)の位置に留まる。これにより、容器2の内部に形成された気相の圧力は大気圧よりも高い状態で一定に保たれる。例えば、水面7から排気管24が接続された排気口(図示せず)までの深さが3mの場合、上述の気相の圧力は約30kPa(ゲージ圧)となる。
【0036】
このように、飽和水生成装置1dでは、容器2が設置される水深を変えることで、容器2の内部に形成される気相の圧力が変化するため、当該気相を一定の圧力に維持するための制御機構等を設置する必要がない。また、気液境界面の位置は容器2に対する排気口の位置によって決まるため、気液境界根面の位置を検出するためのセンサも必要ない。これにより、製造コストが削減される。さらに、飽和水生成装置1dにおいては、排気口を開いた状態にして給気管16から容器2の内部に空気を供給し続けると、余分な空気が排気口から排出されて容器2の内部の空気が常に入れ替わることになる。これにより、容器2の内部の気相の組成が一定に保たれるため、容器2から排出される処理水の溶存酸素濃度が変動し難い。加えて、容器2の底面2cが開口しており、容器2に対して内側と外側から同じ水圧が加わるため、容器2を耐圧構造にする必要がない。したがって、飽和水生成装置1dでは、飽和水生成装置1bの場合よりも製造コストが削減されるというメリットがある。
【実施例0037】
図6は本発明の第4の実施の形態に係る飽和水生成装置1eの外観図である。なお、図1(a)及び図1(b)、図3(a)及び図3(b)並びに図5に示した構成要素については同一の符号を付することにより適宜その説明を省略する。
図6に示すように、飽和水生成装置1eは、飽和水生成装置1dにおいて、水中ポンプ26が収納されているポンプ用加圧タンク27と、鉛直方向と平行をなし、ポンプ用加圧タンク27が下端28aに接続されるとともに上端28bが開口した状態で水中に設置されている第1の給水路28と、水中に水平方向と平行をなすように設置されてポンプ用加圧タンク27が一端に接続されている第2の給水路29と、この第2の給水路29の他端に接続されているストレーナ30を備えた構造となっている。
【0038】
飽和水生成装置1eにおいて、水中ポンプ26を稼働させて給水管5を通して容器2の内部に水を供給すると、ポンプ用加圧タンク27の内部が負圧になるため、第1の給水路28の内部の水が下方へ移動するとともに、第2の給水路29の内部の水がポンプ用加圧タンク27に向かって移動する。そして、第2の給水路29の内部の水が移動すると、ストレーナ30の周囲の水が第2の給水路29の内部に吸い込まれる。
第2の給水路29のように一端にストレーナ30が取り付けられた給水用配管の他端を水中ポンプ26の吸込口(図示せず)に接続した場合、ストレーナ30を設置可能な範囲は水中ポンプ26の吸い込み能力によって決まる。例えば、水中ポンプ26の吸い込み能力が低い場合には、ストレーナ30を水中ポンプ26の近くに設置せざるを得ない。これに対し、上記構造の飽和水生成装置1eでは、水中ポンプ26によってポンプ用加圧タンク27の内部の水が吸い込まれるのに伴って、第2の給水路29の内部の水がポンプ用加圧タンク27に向かって移動する結果、ストレーナ30の周囲の水が第2の給水路29に吸い込まれる。すなわち、水中ポンプ26によってポンプ用加圧タンク27の内部の水が吸い込まれると、ストレーナ30が水中ポンプ26から離れた場所に設置されていたとしても水中ポンプ26の吸い込み能力に関係なく、ストレーナ30の周囲の水は第2の給水路29に吸い込まれることから、水中ポンプ26は高い吸い込み能力を必要としない。したがって、飽和水生成装置1eでは、例えば、水中ポンプ26の吸い込み能力が低い場合でもストレーナ30を水中ポンプ26から離れた場所に設置することができる。
【0039】
このように、飽和水生成装置1eでは、池や沼などの水底にポンプ用加圧タンク27と第2の給水路29を設置する場合に、水中ポンプ26の吸い込み能力に関係なく、ストレーナ30を水中ポンプ26から離れた場所に設置することで、広範囲の水を処理することができる。その際に、容器2をストレーナ30と同じ高さに設置すれば、ストレーナ30から第2の給水路29に吸い込まれた低層水と容器2から排出される処理水の温度差が小さく、処理水が中層水や上層水に混ざり難いため、低層水域の水だけを処理することができる。また、水中ポンプ26の稼働中は第1の給水路28の内部の水面28cが周囲の水面7よりも低い状態になることから、飽和水生成装置1eでは、水面28cの高さを目視することによって、湖や沼などの水底の近くに設置された水中ポンプ26の稼働状況を容易に確認することができる。
なお、図6には飽和水生成装置1eを構成する容器2として図5に示した飽和水生成装置1dを構成する容器2が示されているが、飽和水生成装置1eの容器2には、図2(b)に示した飽和水生成装置1bを構成する容器2を用いることもできる。
【0040】
表1は1気圧下において蒸留水に溶存する酸素の飽和量を温度ごとに示したものである。ただし、横列は温度の小数点以下の部分を表し、縦列は温度の整数部分を表している。例えば、蒸留水の温度が9.2℃の場合における飽和溶存酸素量(単位はmg/L)は、縦列の9と横列の0.2が交叉する欄に記載されている値(11.14)となる。なお、蒸留水に接触している酸素の圧力が1.04気圧(水深が0.4mの場合に相当)のときの飽和溶存酸素量は、11.14を1.04倍することにより求められる。
表2はそのようにして求めた酸素の圧力及びその圧力が発生する水深及び温度(単位は℃)と飽和溶存酸素量(DO値:単位はmg/L)の理論値を示したものである。また、表中の実測値は飽和水生成装置1bにおいてノズル4から噴出される空気の圧力を変えながら、処理水中の溶存酸素量(DO値:単位はmg/L)を測定した結果を示している。なお、実験では蒸留水の代わりに水道水を用いている。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
図7は表2に示した理論値及び実測値を水深ごとにプロットしたグラフである。ただし、横軸は水深を示し、縦軸はDO値(単位はmg/L)を示している。また、黒丸は実測値を表し、白抜きの菱形は理論値を表している。
図7は、飽和水生成装置1bでは、純酸素ガスを用いなくても所望の水深下における気圧に調節した空気を容器2の内部に供給するだけで、その気圧に対応する飽和水が生成されることを示している。この場合、純酸素ガスを用いる必要がないため、飽和水の生成に要する費用が削減される。すなわち、飽和水生成装置1bによれば、所望の水深下における気圧に対応する飽和水を容易かつ安価に生成することができる。なお、飽和水生成装置1bにおける当該効果は、導水部材9の内部の空気を大気圧よりも高い圧力にすることが可能な飽和水生成装置1c~1eにおいても同様に発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、湖沼や魚介類の養殖場、あるいは汚水処理場などにおいて水中に溶存する酸素の量(DO値)を高めることによって水を浄化する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1a~1e…飽和水生成装置 2…容器 2a…底板 2b…側板 2c…底面 2d…上板 2e…側面 2f…上面 3…導水板 3a…端部 3b…内面 3c…外面 4…ノズル 5…給水管 5a…先端 6…オーバーフロー管 6a…開口端 7…水面 8…加圧タンク 8a…側面 9…導水部材 9a…開口部 10…タンク本体 10a…フランジ 11…カバー体 11a…フランジ 12…締結部材 13…側板 14…連結具 15…給水ポンプ 16…給気管 17…排気管 18…コンプレッサ 19a~19c…電磁弁 20…排水管 20a…第2の排水口 21…水位センサ 22…導水部材 23…空洞部 23a…開口部 23b…内面 24…排気管 25…AC電源 25a…電源ケーブル 26…水中ポンプ 27…ポンプ用加圧タンク 28…第1の給水路 28a…下端 28b…上端 28c…水面 29…第2の給水路 30…ストレーナ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7