(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146118
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】炭化水素の製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20241004BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
C10G2/00
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058842
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆平
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広太郎
(72)【発明者】
【氏名】海野 峻太郎
【テーマコード(参考)】
4G146
4H129
【Fターム(参考)】
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC08
4G146JD01
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC43
4H129BC45
4H129KA15
4H129KD15Y
4H129KD19Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129KD28Y
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素吸収剤に吸蔵されているCO
2を原料とする炭化水素の製造システムにおいて原料の調達コストを削減する。
【解決手段】システムは、原料ガスラインから供給されたH
2とCO
2を含む原料ガスからCOと水蒸気を生成する逆シフト反応器、逆シフト反応生成物を含む第1流体から熱エネルギーを回収する第1熱回収器、第1流体から水蒸気を分離する気液分離器、第1流体からCO
2を分離する二酸化炭素分離器、水蒸気及びCO
2が除去された第1流体とH
2とを含む合成ガスから炭化水素を生成するFT合成反応器、FT合成反応生成物を含む第2流体から熱エネルギーを回収する第2熱回収器、及び、第1流体又は第2流体から回収した熱エネルギーによる加熱で二酸化炭素吸収剤からCO
2を離脱させる吸収剤再生器を備え、二酸化炭素吸収剤から離脱したCO
2が原料ガスラインへ供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と二酸化炭素を含む原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を生成する逆シフト反応器と、
前記逆シフト反応器へ前記原料ガスを供給する原料ガスラインと、
前記逆シフト反応の反応生成物を含む前記逆シフト反応器から排出された第1流体から熱エネルギーを回収する第1熱回収器と、
前記第1流体から水蒸気を分離する気液分離器と、
前記第1流体から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離器と、
一酸化炭素と水素を含む合成ガスからFT合成反応により炭化水素を生成するFT合成反応器と、
水蒸気及び二酸化炭素が除去された前記第1流体と水素とを前記合成ガスとして前記FT合成反応器へ供給する合成ガスラインと、
前記FT合成反応の反応生成物を含む前記FT合成反応器から排出された第2流体から熱エネルギーを回収する第2熱回収器と、
前記第1流体から回収した熱エネルギー及び前記第2流体から回収した熱エネルギーのうち少なくとも一方で二酸化炭素吸収剤を加熱する吸収剤加熱器を有し、加熱により前記二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を離脱させて前記二酸化炭素吸収剤を再生する吸収剤再生器と、を備え、
前記吸収剤再生器で前記二酸化炭素吸収剤から離脱した二酸化炭素が前記原料ガスラインへ供給される、
炭化水素の製造システム。
【請求項2】
前記二酸化炭素分離器は、前記吸収剤再生器で再生した前記二酸化炭素吸収剤で前記第1流体から二酸化炭素を吸収除去する、
請求項1に記載の炭化水素の製造システム。
【請求項3】
前記第1熱回収器は、前記第1流体と熱交換することにより前記第1流体の熱エネルギーを回収する第1熱媒体が流れる第1熱媒体流路を有し、
前記第1熱媒体と熱交換することにより前記原料ガスを加熱する原料ガス加熱器を備え、
前記第1熱媒体は、前記原料ガス加熱器を経由して前記吸収剤加熱器へ供給される、
請求項1又は2に記載の炭化水素の製造システム。
【請求項4】
前記第1熱媒体と熱交換することにより前記合成ガスを加熱する合成ガス加熱器を備え、
前記第1熱媒体は、前記原料ガス加熱器及び前記合成ガス加熱器を経由して前記吸収剤加熱器へ供給される、
請求項3に記載の炭化水素の製造システム。
【請求項5】
前記第2熱回収器は、前記第2流体と熱交換することにより前記第2流体の熱エネルギーを回収する第2熱媒体が流れる第2熱媒体流路を有し、
前記第2熱媒体と熱交換することにより前記合成ガスを加熱する合成ガス加熱器を備え、
前記第2熱媒体は、前記合成ガス加熱器を経由して前記吸収剤加熱器へ供給される、
請求項1又は2に記載の炭化水素の製造システム。
【請求項6】
前記第2熱媒体と熱交換することにより前記原料ガスを加熱する原料ガス加熱器を備え、
前記第2熱媒体は、前記合成ガス加熱器及び前記原料ガス加熱器を経由して前記吸収剤加熱器へ供給される、
請求項5に記載の炭化水素の製造システム。
【請求項7】
水素と二酸化炭素を含む原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を含む第1流体を生成すること、
前記第1流体から熱エネルギーを回収すること、
前記第1流体から水蒸気及び二酸化炭素を分離すること、
水蒸気及び二酸化炭素が除去された前記第1流体と水素を含む合成ガスからFT合成反応により炭化水素を含む第2流体を生成すること、
前記第2流体から熱エネルギーを回収すること、
前記第1流体から回収した熱エネルギー及び前記第2流体から回収した熱エネルギーの少なくとも一方で二酸化炭素吸収剤を加熱することにより前記二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を離脱させて前記二酸化炭素吸収剤を再生すること、及び、
前記二酸化炭素吸収剤から離脱した二酸化炭素を前記原料ガスの材料とすること、を含む、
炭化水素の製造方法。
【請求項8】
前記第1流体から二酸化炭素を分離することが、再生された前記二酸化炭素吸収剤で前記第1流体から二酸化炭素を吸収除去することを含む、
請求項7に記載の炭化水素の製造方法。
【請求項9】
前記第1流体から回収された熱エネルギーで、前記原料ガス及び前記合成ガスのうち少なくとも一方を加熱してから、前記二酸化炭素吸収剤を加熱する、
請求項7又は8に記載の炭化水素の製造方法。
【請求項10】
前記第2流体から回収された熱エネルギーで、前記原料ガス及び前記合成ガスのうち少なくとも一方を加熱してから、前記二酸化炭素吸収剤を加熱する、
請求項7又は8に記載の炭化水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FT(フィッシャー・トロプシュ)法で炭化水素を製造する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
FT法とは、CO(一酸化炭素)とH2(水素)を含む合成ガスから「FT合成反応」と称される触媒反応を利用して液体炭化水素を合成する方法である。FT法を利用して炭化水素を製造する炭化水素製造システムが知られている。炭化水素製造システムで製造された炭化水素は、石油代替燃料や化学品の生成に利用される。
【0003】
特許文献1では、FT法を用いた工業的プロセスが開示されている。この工業的プロセスでは、先ず、CO及びCO2(二酸化炭素)を含む第1ガス流から化学吸収剤でCO2を分離して、第1ガス流と比較して高いCOガス濃度と低いCO2ガス濃度を有する第2ガス流を生成する。続いて、COを含む第2ガス流とH2からFT合成反応で液体炭化水素を合成する。FT合成反応で生じる熱の少なくとも一部は、化学吸収剤からCO2を離脱させるために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、第1ガス流は燃焼プロセスで生成されたCO及びCO2を含む排ガスであり、COは燃焼により生じたものである。従来の炭化水素製造システムには、二酸化炭素吸収剤に吸蔵されているCO2を原料として用いるものがある。このような従来の炭化水素製造システムでは、原料ガスの調達のために、特に、二酸化炭素吸収剤からCO2を離脱させるためにシステム外から多大なエネルギーの供給を受けることから、コストが嵩むことが課題となっている。
【0006】
本開示は以上に鑑みてなされたものであり、炭化水素の製造システム及び方法であって、二酸化炭素吸収剤に吸蔵されているCO2を原料として用いるものにおいて、原料の調達に係るコストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る炭化水素の製造システムは、
水素と二酸化炭素を含む原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を生成する逆シフト反応器と、
前記逆シフト反応器へ前記原料ガスを供給する原料ガスラインと、
前記逆シフト反応の反応生成物を含む前記逆シフト反応器から排出された第1流体から熱エネルギーを回収する第1熱回収器と、
前記第1流体から水蒸気を分離する気液分離器と、
前記第1流体から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離器と、
一酸化炭素と水素を含む合成ガスからFT合成反応により炭化水素を生成するFT合成反応器と、
水蒸気及び二酸化炭素が除去された前記第1流体と水素とを前記合成ガスとして前記FT合成反応器へ供給する合成ガスラインと、
前記FT合成反応の反応生成物を含む前記FT合成反応器から排出された第2流体から熱エネルギーを回収する第2熱回収器と、
前記第1流体から回収した熱エネルギー及び前記第2流体から回収した熱エネルギーのうち少なくとも一方で二酸化炭素吸収剤を加熱する吸収剤加熱器を有し、加熱により前記二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を離脱させて前記二酸化炭素吸収剤を再生する吸収剤再生器と、を備え、
前記吸収剤再生器で前記二酸化炭素吸収剤から離脱した二酸化炭素が前記原料ガスラインへ供給されるものである。
【0008】
また、本開示の一態様に係る炭化水素の製造方法は、
水素と二酸化炭素を含む原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を含む第1流体を生成すること、
前記第1流体から熱エネルギーを回収すること、
前記第1流体から水蒸気及び二酸化炭素を分離すること、
水蒸気及び二酸化炭素が除去された前記第1流体と水素を含む合成ガスからFT合成反応により炭化水素を含む第2流体を生成すること、
前記第2流体から熱エネルギーを回収すること、
前記第1流体から回収した熱エネルギー及び前記第2流体から回収した熱エネルギーの少なくとも一方で二酸化炭素吸収剤を加熱することにより前記二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を離脱させて前記二酸化炭素吸収剤を再生すること、及び、
前記二酸化炭素吸収剤から離脱した二酸化炭素を前記原料ガスの材料とすること、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、炭化水素の製造システム及び方法であって、二酸化炭素吸収剤に吸蔵されているCO2を原料として用いるものにおいて、原料の調達に係るコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る炭化水素製造システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、変形例1に係る炭化水素製造システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、変形例2に係る炭化水素製造システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
図1は本開示に係る炭化水素製造システム100の全体的な構成を示すブロック図である。
図1に示す炭化水素製造システム100は、H
2(水素)とCO
2(二酸化炭素)を原料として炭化水素97を製造するものである。炭化水素97は合成燃料や化成品の原料となる。
【0012】
《炭化水素製造システム100の構成》
炭化水素製造システム100は、逆シフト反応器11とFT合成反応器12とを備える。
【0013】
逆シフト反応器11は、逆シフト反応が行われる反応容器である。逆シフト反応器11には、逆シフト反応用触媒が充填されている。逆シフト反応用触媒は、CO2とH2からCOと水蒸気を生成する逆シフト反応(CO2+H2→CO+H2O)を進行させる。逆シフト反応用触媒は、特に限定されないが、Ni,Co,Fe等のVIII族触媒、Mo等のVI族触媒、Cu系触媒などの金属錯体触媒が知られている。
【0014】
逆シフト反応器11には、原料ガスライン21と、第1生成物ライン22とが接続されている。
【0015】
原料ガスライン21を通じて、H2とCO2を含む原料ガス91が逆シフト反応器11へ供給される。原料ガスライン21には、原料ガス加熱器31が設けられている。原料ガス加熱器31は、原料ガス91を逆シフト反応に適した温度まで加熱する。逆シフト反応の反応温度は600-700℃である。
【0016】
第1生成物ライン22には、逆シフト反応器11から排出された第1流体92が流入する。第1流体92には、逆シフト反応の反応生成物であるCO及び水蒸気の他、未反応のH2やCO2が含まれる。
【0017】
第1生成物ライン22には、第1熱回収器32が設けられている。第1熱回収器32は、第1流体92の持つ熱エネルギーを回収する。例えば、第1熱回収器32は第1熱媒体36が流れる第1熱媒体流路360を有し、第1熱媒体36は第1流体92と熱交換することにより第1流体92の熱エネルギーを回収する。
図1において、第1熱媒体36の移動の様子が鎖線で示されている。第1熱媒体36の流路は配管等で形成される。第1流体92の熱エネルギーを回収した第1熱媒体36は、原料ガス加熱器31で原料ガス91と熱交換する。即ち、第1熱回収器32において第1流体92から回収された熱エネルギーは原料ガス91の加熱に利用される。
【0018】
第1生成物ライン22の第1熱回収器32より下流には、気液分離器41が設けられている。気液分離器41は、第1生成物ライン22を流れる第1流体92から水蒸気を分離除去する。
【0019】
第1生成物ライン22の気液分離器41より下流には、二酸化炭素分離器42が設けられている。二酸化炭素分離器42は、第1生成物ライン22を通過する第1流体92からCO2を選択的に分離除去する。
【0020】
第1生成物ライン22の終端は合成ガスライン25と接続されている。水蒸気及びCO2が分離された第1流体92、即ち、COとH2が、第1生成物ライン22から合成ガスライン25へ流入する。水蒸気及びCO2が分離された第1流体92は、合成ガスライン25で別途供給されたH2と混合して合成ガス95となる。
【0021】
FT合成反応器12には、合成ガスライン25と第2生成物ライン26とが接続されている。
【0022】
FT合成反応器12は、FT合成反応が行われる反応容器である。FT合成反応器12には、FT合成反応用触媒が充填されている。FT合成反応用触媒は、COとH2を含む合成ガスから炭化水素及び水蒸気を合成するFT合成反応(nCO+2nH2→CnH2n+nH2O)を進行させる。FT合成反応用触媒は、特に限定されないが、Fe系触媒とCo系触媒が知られている。
【0023】
FT合成反応器12へは、合成ガスライン25を通じて合成ガス95が供給される。合成ガスライン25には、圧縮機45が設けられている。圧縮機45は、合成ガス95をFT合成反応に適した圧力に圧縮して、FT合成反応器12へ送り出す。合成ガスライン25の圧縮機45より下流には、合成ガス加熱器33が設けられている。合成ガス加熱器33は、合成ガス95をFT合成反応に適した温度に加熱する。FT合成の反応条件は、触媒によって異なるが、圧力1.0-4.0MPaG程度、温度200-400℃程度である。
【0024】
第2生成物ライン26には、FT合成反応器12から排出された第2流体96が流入する。第2流体96には、FT合成反応の反応生成物である炭化水素や水蒸気が含まれる。
【0025】
第2生成物ライン26には、第2熱回収器34が設けられている。第2熱回収器34は第2流体96の持つ熱エネルギーを回収する。例えば、第2熱回収器34は第2熱媒体37が流れる第2熱媒体流路370を有し、第2熱媒体37は第2流体96と熱交換することにより第2流体96の持つ熱エネルギーを回収する。
図1において、第2熱媒体37の移動の様子が二点鎖線で示されている。第2熱媒体37の流路は配管等で形成される。第2流体96の熱エネルギーを回収した第2熱媒体37は、合成ガス加熱器33で合成ガス95と熱交換する。即ち、第2熱回収器34において第2流体96から回収された熱エネルギーは合成ガス95の加熱に利用される。
【0026】
第2生成物ライン26の第2熱回収器34より下流には、気液分離器44が設けられている。気液分離器44は、第2流体96から水蒸気を分離除去する。
【0027】
第2生成物ライン26は、製品ライン27と接続されている。製品ライン27には、水蒸気が分離された第2流体96、即ち、炭化水素97が流入する。製品である炭化水素97は製品ライン27を通じて次の工程へ送られる。炭化水素製造システム100によって製造された炭化水素97は、例えば、合成燃料の原料として使用される。この場合、炭化水素97は製品ライン27を通じて水素化分解反応器へ送られ、水素化分解により合成燃料に転化される。
【0028】
《二酸化炭素分離器42及び吸収剤再生器46の構成》
本開示に係る二酸化炭素分離器42では、第1流体92からCO2を分離するために、化学吸収法によりCO2を可逆的に吸収する二酸化炭素吸収剤43が用いられる。CO2を吸収した二酸化炭素吸収剤43からCO2を脱着させることにより二酸化炭素吸収剤43を再生するために、吸収剤再生器46が炭化水素製造システム100に備えられる。吸収剤再生器46は、二酸化炭素吸収剤43を加熱する吸収剤加熱器53を有し、加熱により昇温した二酸化炭素吸収剤43はCO2を放出する。このようにしてCO2の離脱によって再生された二酸化炭素吸収剤43は、再び二酸化炭素分離器42でCO2の分離に用いられる。本開示では、二酸化炭素分離器42と吸収剤再生器46とを分けて記載しているが、二酸化炭素分離器42と吸収剤再生器46は一つの設備であってよい。但し、本実施形態において、吸収剤再生器46と二酸化炭素分離器42で二酸化炭素吸収剤43を相互利用するように説明されているが、吸収剤再生器46と二酸化炭素分離器42は二酸化炭素吸収剤43を共用しなくてもよい。また、吸収剤再生器46と二酸化炭素分離器42で、使用される二酸化炭素吸収剤43が異なっていてもよい。
【0029】
二酸化炭素吸収剤43としては、液体状のアミン系の二酸化炭素吸収剤43(即ち、二酸化炭素化学吸収液)が用いられる。但し、二酸化炭素吸収剤43として、固体状の二酸化炭素吸収剤43(即ち、二酸化炭素化学吸収材)が用いられてもよい。固体状の二酸化炭素吸収剤43は、ゼオライト等の多孔質支持体にCO2を可逆的に吸収するアミン化合物を担持させたものである。二酸化炭素吸収剤43に典型的に用いられるアミンとしては、モノエタノールアミン及びメチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどの立体障害型アミン、及びピペラジンなどの環状アミンが挙げられる。二酸化炭素吸収剤43のCO2の吸収温度と放出温度は、二酸化炭素吸収剤43の性状やアミン化合物の種類などによって異なる。例えば、アルカノールアミン水溶液とCO2との中和反応を利用した二酸化炭素吸収剤43は、40-50℃でCO2を吸収し、110-130℃でCO2を放出する。二酸化炭素吸収剤43からCO2を離脱させる方法は、二酸化炭素吸収剤43の種類に応じた適切な手法が採用される。例えば、液体状の二酸化炭素吸収剤43を間接的に加熱することによってCO2を離脱させることができる。また、例えば、固体状の二酸化炭素吸収剤43を間接的に加熱したり、二酸化炭素吸収剤43を水蒸気と接触させたりすることによってCO2を離脱させることができる。
【0030】
二酸化炭素分離器42及び二酸化炭素吸収剤43の構成は特に限定されないが、次のように例示できる。
(i)液体状の二酸化炭素吸収剤43が採用される場合、二酸化炭素分離器42に吸収容器が設けられ、吸収剤再生器46に放出容器が設けられ、放出容器に吸収剤加熱器53が設けられる。吸収容器と放出容器は連通されており、収容された二酸化炭素吸収剤43が互いを移動する。第1流体92が吸収容器を通過するうちに二酸化炭素吸収剤43によってCO2が吸収され、第1流体92からCO2が分離除去される。CO2が分離された第1流体92は吸収容器から排出され、CO2を吸収した二酸化炭素吸収剤43は放出容器へ移動する。放出容器では、二酸化炭素吸収剤43が加熱されることにより二酸化炭素吸収剤43はCO2を放出する。CO2を放出した二酸化炭素吸収剤43は吸収容器へ移動する。
(ii)固体状の二酸化炭素吸収剤43が採用される場合、二酸化炭素分離器42及び吸収剤再生器46は、二酸化炭素吸収剤43が流動する一連の反応容器を有し、一部の二酸化炭素吸収剤43がCO2の吸収に利用されている間、残りの二酸化炭素吸収剤43の一部は吸収剤加熱器53の加熱によりCO2の放出が行われる。
(iii)固体状の二酸化炭素吸収剤43が採用される場合、二酸化炭素分離器42及び吸収剤再生器46は、二酸化炭素吸収剤43が充填された複数の反応容器を有し、一部の反応容器がCO2の吸収に利用されている間、残りの一部の反応容器は吸収剤加熱器53の加熱によりCO2の放出が行われる。
【0031】
上記のように、吸収剤再生器46では、二酸化炭素吸収剤43の再生に伴い、二酸化炭素吸収剤43に吸蔵されていたCO2が二酸化炭素吸収剤43から離脱する。二酸化炭素吸収剤43から離脱したCO2は、原料ガスライン21へ供給されて原料ガス91の材料として使用される。
【0032】
二酸化炭素吸収剤43からのCO2の離脱には、第1流体92から回収した熱エネルギー、即ち、逆シフト反応で発生した熱の一部が利用される。この場合、第1熱回収器32で第1流体92の熱エネルギーを回収した第1熱媒体36は、原料ガス加熱器31を経由して原料ガス91と熱交換して原料ガス91を加熱したのち、吸収剤再生器46の吸収剤加熱器53へ供給されて二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。
【0033】
更に、二酸化炭素吸収剤43からのCO2の離脱には、第2流体96から回収した熱エネルギー、即ち、FT合成反応で発生した熱の一部が利用される。この場合、第2熱回収器34で第2流体96の熱エネルギーを回収した第2熱媒体37は、合成ガス加熱器33を経由して合成ガス95と熱交換して合成ガス95を加熱したのち、吸収剤再生器46の吸収剤加熱器53へ供給されて二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。
【0034】
吸収剤再生器46では、二酸化炭素吸収剤43からCO2を離脱させるために、第1流体92から回収した熱エネルギー及び第2流体96から回収した熱エネルギーのうち少なくとも一方が用いられてよい。但し、系内の熱エネルギーをより有効に活用するために、第1流体92から回収した熱エネルギー及び第2流体96から回収した熱エネルギーの両方が二酸化炭素吸収剤43からCO2を離脱させるために利用されることが好ましい。
【0035】
二酸化炭素吸収剤43のCO2の放散温度はFT合成反応温度よりも低く、FT合成反応温度は逆シフト反応温度よりも低い。また、FT合成反応及び逆シフト反応はいずれも発熱反応であり、FT合成反応器12から排出される第2流体96の温度は逆シフト反応器11から排出される第1流体92の温度よりも低い。このような系内の温度関係から、系内の熱エネルギーを更に有効に利用するために、第1熱回収器32で回収した第1流体92の熱エネルギーを原料ガス91及び合成ガス95の加熱に利用してから二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用してもよい。同様に、第2熱回収器34で回収した第2流体96の熱エネルギーを原料ガス91及び合成ガス95の加熱に利用してから二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用してもよい。
【0036】
図2に示す変形例1に係る炭化水素製造システム100(100A)では、第1熱回収器32で第1流体92の熱エネルギーを回収した第1熱媒体36は、先ず、原料ガス加熱器31を経由して原料ガス91と熱交換して原料ガス91を加熱し、次に、合成ガス加熱器33を経由して合成ガス95と熱交換して合成ガス95を加熱し、最後に、吸収剤再生器46の吸収剤加熱器53へ供給されて二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。また、第2熱回収器34で第2流体96の熱エネルギーを回収した第2熱媒体37は、先ず、原料ガス加熱器31を経由して原料ガス91と熱交換して原料ガス91を加熱し、次に、合成ガス加熱器33を経由して合成ガス95と熱交換して合成ガス95を加熱し、最後に、吸収剤再生器46の吸収剤加熱器53へ供給されて二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。
【0037】
図3に示す変形例2に係る炭化水素製造システム100(100B)では、第1熱回収器32で第1流体92の熱エネルギーを回収した第1熱媒体36は、先ず、原料ガス加熱器31を経由して原料ガス91と熱交換して原料ガス91を加熱し、次に、合成ガス加熱器33を経由して合成ガス95と熱交換して合成ガス95を加熱し、最後に、吸収剤再生器46の吸収剤加熱器53へ供給されて二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。また、第2熱回収器34で第2流体96の熱エネルギーを回収した第2熱媒体37は、先ず、合成ガス加熱器33を経由して合成ガス95と熱交換して合成ガス95を加熱し、次に、原料ガス加熱器31を経由して原料ガス91と熱交換して原料ガス91を加熱し、最後に、吸収剤再生器46の吸収剤加熱器53へ供給されて二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。なお、
図2及び
図3に示す変形例では、上記実施形態に係る炭化水素製造システム100から第1熱媒体36及び第2熱媒体37の流れが異なるが、余の構成は実質的に同一である。
【0038】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係る炭化水素製造システム100は、
水素と二酸化炭素を含む原料ガス91から逆シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を生成する逆シフト反応器11と、
逆シフト反応器11へ原料ガス91を供給する原料ガスライン21と、
逆シフト反応の反応生成物を含む逆シフト反応器11から排出された第1流体92から熱エネルギーを回収する第1熱回収器32と、
第1流体92から水蒸気を分離する気液分離器41と、
第1流体92から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離器42と、
一酸化炭素と水素を含む合成ガス95からFT合成反応により炭化水素97を生成するFT合成反応器12と、
水蒸気及び二酸化炭素が除去された第1流体92と水素とを合成ガス95としてFT合成反応器12へ供給する合成ガスライン25と、
FT合成反応の反応生成物を含むFT合成反応器12から排出された第2流体96から熱エネルギーを回収する第2熱回収器34と、
第1流体92から回収した熱エネルギー及び第2流体96から回収した熱エネルギーのうち少なくとも一方で二酸化炭素吸収剤43を加熱する吸収剤加熱器53を有し、加熱により二酸化炭素吸収剤43から二酸化炭素を離脱させて二酸化炭素吸収剤43を再生する吸収剤再生器46と、を備え、
吸収剤再生器46で二酸化炭素吸収剤43から離脱した二酸化炭素が原料ガスライン21へ供給されるものである。
【0039】
本開示に係る炭化水素製造システム100では、炭化水素97の製造プロセスで発生した熱が、原料ガス91に含まれるCO2の供給のため、即ち、原料ガス91の調達のために有効に利用される。よって、原料ガス91の調達のためにシステム外から供給されるエネルギーを低減することができ、原料ガス91の調達に係るコストを削減できる。また、エネルギーはシステム内で循環利用され、エネルギーのロスが少なく、結果としてCO2の排出が抑えられる。
【0040】
本開示の第2の項目に係る炭化水素製造システム100は、第1の項目に係る炭化水素製造システム100において、二酸化炭素分離器42は、吸収剤再生器46で再生した二酸化炭素吸収剤43で第1流体92から二酸化炭素を吸収除去するものである。
【0041】
これにより、CO2が循環利用され、CO2の排出量を低減できる。
【0042】
本開示の第3の項目に係る炭化水素製造システム100は、第1又は2の項目に係る炭化水素製造システム100において、
第1熱回収器32は、第1流体92と熱交換することにより第1流体92の熱エネルギーを回収する第1熱媒体36が流れる第1熱媒体36流路を有し、
第1熱媒体36と熱交換することにより原料ガス91を加熱する原料ガス加熱器31を備え、
第1熱媒体36は、原料ガス加熱器31を経由して吸収剤加熱器53へ供給されるものである。
【0043】
上記の炭化水素製造システム100では、第1流体92から回収された熱エネルギーが、原料ガス91の加熱に利用されたのち、二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。二酸化炭素吸収剤43からのCO2の放出温度は、逆シフト反応に好適な原料ガス91の温度と比較して十分に低い。よって、原料ガス91の加熱に利用した後の熱エネルギーであってもCO2の離脱に利用可能であり、第1流体92の熱エネルギーを有効に利用できる。
【0044】
本開示の第4の項目に係る炭化水素製造システム100は、第3の項目に係る炭化水素製造システム100において、
第1熱媒体36と熱交換することにより合成ガス95を加熱する合成ガス加熱器33を備え、
第1熱媒体36は、原料ガス加熱器31及び合成ガス加熱器33を経由して吸収剤加熱器53へ供給されるものである。
【0045】
上記構成の炭化水素製造システム100では、第1流体92から回収された熱エネルギーが、原料ガス91及び合成ガス95の加熱に利用されてから、二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。二酸化炭素吸収剤43からのCO2の放出温度はFT合成反応に好適な合成ガス95の温度より低く、FT合成反応に好適な合成ガス95の温度は逆シフト反応に好適な原料ガス91の温度よりも低い。よって、第1流体92が原料ガス加熱器31及び合成ガス加熱器33の両方を経由することで、系内の熱エネルギーを更に有効に利用できる。
【0046】
本開示の第5の項目に係る炭化水素製造システム100は、第1乃至4のいずれかの項目に係る炭化水素製造システム100において、
第2熱回収器34は、第2流体96と熱交換することにより第2流体96の熱エネルギーを回収する第2熱媒体37が流れる第2熱媒体37流路を有し、
第2熱媒体37と熱交換することにより合成ガス95を加熱する合成ガス加熱器33を備え、
第2熱媒体37は、合成ガス加熱器33を経由して吸収剤加熱器53へ供給されるものである。
【0047】
上記の炭化水素製造システム100では、第2流体96から回収された熱エネルギーが、合成ガス95の加熱に利用されたのち、二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。二酸化炭素吸収剤43からのCO2の放出温度は、FT合成反応に好適な合成ガス95の温度と比較して十分に低い。よって、合成ガス95の加熱に利用した後の熱エネルギーであってもCO2の離脱に利用可能であり、第2流体96の熱エネルギーを有効に利用できる。
【0048】
本開示の第6の項目に係る炭化水素製造システム100は、第5の項目に係る炭化水素製造システム100において、
第2熱媒体37と熱交換することにより原料ガス91を加熱する原料ガス加熱器31を備え、
第2熱媒体37は、合成ガス加熱器33及び原料ガス加熱器31を経由して吸収剤加熱器53へ供給されるものである。
【0049】
上記構成の炭化水素製造システム100では、第2流体96から回収された熱エネルギーが、原料ガス91及び合成ガス95の加熱に利用されてから、二酸化炭素吸収剤43の加熱に利用される。二酸化炭素吸収剤43からのCO2の放出温度はFT合成反応に好適な合成ガス95の温度より低く、FT合成反応に好適な合成ガス95の温度は逆シフト反応に好適な原料ガス91の温度よりも低い。よって、第2流体96が原料ガス加熱器31及び合成ガス加熱器33の両方を経由することで、系内の熱エネルギーを更に有効に利用できる。
【0050】
本開示の第7の項目に係る炭化水素97の製造方法は、
水素と二酸化炭素を含む原料ガス91から逆シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を含む第1流体92を生成すること、
第1流体92から熱エネルギーを回収すること、
第1流体92から水蒸気及び二酸化炭素を分離すること、
水蒸気及び二酸化炭素が除去された第1流体92と水素を含む合成ガス95からFT合成反応により炭化水素97を含む第2流体96を生成すること、
第2流体96から熱エネルギーを回収すること、
第1流体92から回収した熱エネルギー及び第2流体96から回収した熱エネルギーの少なくとも一方で二酸化炭素吸収剤43を加熱することにより二酸化炭素吸収剤43から二酸化炭素を離脱させて二酸化炭素吸収剤43を再生すること、及び、
二酸化炭素吸収剤43から離脱した二酸化炭素を原料ガス91の材料とすること、を含むものである。
【0051】
上記の炭化水素97の製造方法において、第1流体92から回収された熱エネルギーで、原料ガス91及び合成ガス95のうち少なくとも一方を加熱してから、二酸化炭素吸収剤43を加熱してよい。また、第2流体96から回収された熱エネルギーで、原料ガス91及び合成ガス95のうち少なくとも一方を加熱してから、二酸化炭素吸収剤43を加熱してよい。
【0052】
本開示に係る炭化水素97の製造方法では、炭化水素97の製造プロセスで発生した熱が、原料ガス91に含まれるCO2の供給のため、即ち、原料ガス91の調達のために有効に利用される。よって、原料ガス91の調達のためにシステム外から供給されるエネルギーを低減することができ、原料ガス91の調達に係るコストを削減できる。また、エネルギーはシステム内で循環利用され、エネルギーのロスが少なく、結果としてCO2の排出が抑えられる。
【0053】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0054】
11 :逆シフト反応器
12 :FT合成反応器
21 :原料ガスライン
25 :合成ガスライン
31 :原料ガス加熱器
32 :第1熱回収器
33 :合成ガス加熱器
34 :第2熱回収器
36 :第1熱媒体
360 :第1熱媒体流路
37 :第2熱媒体
370 :第2熱媒体流路
41 :気液分離器
42 :二酸化炭素分離器
43 :二酸化炭素吸収剤
44 :気液分離器
46 :吸収剤再生器
53 :吸収剤加熱器
91 :原料ガス
92 :第1流体
95 :合成ガス
96 :第2流体
97 :炭化水素
100 :炭化水素製造システム