(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146130
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】サイフォン誘発部材、配管部材、配管システム
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20241004BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16L55/00 G
E04D13/08 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058858
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】土田 嘉治
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 純一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 晋太郎
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025BA02
3H025BA08
3H025BB02
(57)【要約】
【課題】サイフォン現象による作用を安定的に促進させることができる、サイフォン誘発部材、配管部材及び配管システムを提供する。
【解決手段】サイフォン誘発部材は、流路を構成する配管システムの一部を構成する。サイフォン誘発部材は、配管システムの上流側及び下流側にそれぞれ向けられる第1及び第2端を有し、流路断面積を規定する内周面を有する筒状である。サイフォン誘発部材は、第1端から第2端に向かうにつれて流路断面積が減少する縮径部と、縮径部から第2端に向かうにつれて流路断面積が増加する拡径部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を構成する配管システムの一部を構成するサイフォン誘発部材であって、
前記配管システムの上流側及び下流側にそれぞれ向けられる第1及び第2端を有し、流路断面積を規定する内周面を有する筒状であり、
前記第1端から前記第2端に向かうにつれて前記流路断面積が減少する縮径部と、
前記縮径部から前記第2端に向かうにつれて前記流路断面積が増加する拡径部と、
を備える、
サイフォン誘発部材。
【請求項2】
前記サイフォン誘発部材の外径をP、前記サイフォン誘発部材において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、0.50≦P1/P≦0.75である、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項3】
前記内周面に位置する突起を備え、
前記突起は、前記縮径部に位置する第1先端と前記拡径部に位置する第2先端とを有し、
前記第1先端と前記第2先端とを結ぶ直線は、前記サイフォン誘発部材の中心軸に対して傾斜している、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項4】
前記縮径部内では、前記突起の幅は、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて広くなり、
前記拡径部内では、前記突起の幅は、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて狭くなる、
請求項3のサイフォン誘発部材。
【請求項5】
前記縮径部内では、前記突起の高さは、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて高くなり、
前記拡径部内では、前記突起の高さは、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて低くなる、
請求項3のサイフォン誘発部材。
【請求項6】
複数の前記突起を備え、
前記複数の突起は、前記サイフォン誘発部材の中心軸の方向から見て前記中心軸の周りに均等な間隔で位置する、
請求項3のサイフォン誘発部材。
【請求項7】
前記第1端及び前記第2端で外径が最大になる、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項8】
前記縮径部の長さと前記拡径部の長さとは等しい、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項9】
前記縮径部と前記拡径部とは別部材であり、
前記縮径部は、前記第1端とは反対側の第3端に第1凹凸部を有し、
前記拡径部は、前記第2端とは反対側の第4端に、前記第1凹凸部に機械的に結合する第2凹凸部を有し、
前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを機械的に結合することで前記縮径部と前記拡径部とが互いに結合される、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項10】
前記縮径部と前記拡径部とは、同じ形状及び寸法の部品として構成される、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項11】
前記サイフォン誘発部材の長さをH、前記サイフォン誘発部材において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、H≧P1である、
請求項1のサイフォン誘発部材。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一つのサイフォン誘発部材と、
前記サイフォン誘発部材が内側に配置される直管部材と、
前記配管システムの上流側に向けられ前記直管部材が接続される第1受け口及び前記配管システムの下流側に向けられ前記直管部材と同じ外径の配管要素が接続可能な第2受け口を有する継手部材と、
を備える、
配管部材。
【請求項13】
前記直管部材の上流側の端部と前記第1受け口との間の距離は、50mm以上1000mm以下である、
請求項12の配管部材。
【請求項14】
建物の壁面に固定される竪管と、
前記建物からの雨水の集水口と前記竪管との間にある横管と、
前記横管と前記竪管との間にある第1屈曲管と、
前記集水口と前記横管との間にある第2屈曲管と、
請求項12の配管部材と、
を備え、
前記配管部材は、前記直管部材が前記第1屈曲管に接続され、前記竪管が前記継手部材の前記第2受け口に接続されるようにして、前記第1屈曲管と前記竪管との間に位置する、
配管システム。
【請求項15】
前記竪管の長さは、1.0m以上である、
請求項14の配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サイフォン誘発部材、配管部材、及び、配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、雨樋システムを開示する。特許文献1に開示された雨樋システムは、軒樋と、竪樋と、軒樋よりも下流側に配置され、竪樋の上端部に連なる接続継手と、縮径部を有し竪樋に設けられたサイフォン継手と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の雨樋システムでは、縮径部が圧力損失を生じさせ、縮径部の直下において乱流が発生し、よってサイフォン現象がサイフォン継手で途切れるような構成である。
【0005】
本開示は、サイフォン現象による作用を安定的に促進させることができる、サイフォン誘発部材、配管部材、及び、配管システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかるサイフォン誘発部材は、流路を構成する配管システムの一部を構成する。サイフォン誘発部材は、配管システムの上流側及び下流側にそれぞれ向けられる第1及び第2端を有し、流路断面積を規定する内周面を有する筒状である。サイフォン誘発部材は、第1端から第2端に向かうにつれて流路断面積が減少する縮径部と、縮径部から第2端に向かうにつれて流路断面積が増加する拡径部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様にかかる配管部材は、上記のサイフォン誘発部材と、サイフォン誘発部材が内側に配置される直管部材と、配管システムの上流側に向けられ直管部材が接続される第1受け口及び配管システムの下流側に向けられ直管部材と同じ外径の配管要素が接続可能な第2受け口を有する継手部材と、を備える。
【0008】
本開示の一態様にかかる配管システムは、建物の壁面に固定される竪管と、建物からの雨水の集水口と竪管との間にある横管と、横管と竪管との間にある第1屈曲管と、集水口と横管との間にある第2屈曲管と、上記の配管部材と、を備える。配管部材は、直管部材が第1屈曲管に接続され、竪管が継手部材の第2受け口に接続されるようにして、第1屈曲管と竪管との間に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様は、サイフォン現象による作用を安定的に促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施の形態にかかる配管システムの一部を省略した側面図
【
図3】一実施の形態にかかる配管システムの一部を省略した断面図
【
図4】一実施の形態にかかる配管システムの一部を省略した分解斜視図
【
図5】一実施の形態にかかる配管システムの配管部材の分解斜視図
【
図6】一実施の形態にかかる配管部材のサイフォン誘発部材の上方から見た分解斜視図
【
図7】一実施の形態にかかるサイフォン誘発部材の下方から見た分解斜視図
【
図8】一実施の形態にかかるサイフォン誘発部材の上面図
【
図9】一実施の形態にかかるサイフォン誘発部材の下面図
【
図10】一実施の形態にかかるサイフォン誘発部材の縮径部の下面図
【
図11】一実施の形態にかかるサイフォン誘発部材の拡径部の上面図
【
図12】一実施の形態にかかるサイフォン誘発部材の断面図
【
図13】一実施の形態にかかる配管部材の継手部材の上面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0013】
なお、以下の説明において、複数ある構成要素を互いに区別する必要がある場合には、「第1」、「第2」等の接頭辞を構成要素の名称に付すが、構成要素に付した符号により互いに区別可能である場合には、文章の読みやすさを考慮して、「第1」、「第2」等の接頭辞を省略する場合がある。
【0014】
[1.1 構成]
図1は、本実施の形態にかかる配管システム1の斜視図である。配管システム1は、排水システムとして用いられる。配管システム1は、建物の屋根からの雨水を受けて、地面のます部に流す雨樋システムである。配管システム1は、雨水の流路を構成する。建物は、例えば、店舗、オフィス、工場、ビル、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設の建物である。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。
【0015】
配管システム1は、軒樋2と、竪管3と、横管4と、屈曲管5-1,5-2と、配管部材6と、ドレン10と、を備える。
【0016】
軒樋2は、建物の屋根からの雨水を受ける。軒樋2は、建物の屋根の下に設置される。一例として、軒樋2は、屋根の軒先に配置される。特に、軒樋2は、屋根の軒先に沿って延びるように配置される。軒樋2は、長尺の桶状である。軒樋2は、底壁2aを有する。底壁2aには、配管システム1の全体の設計に応じて、集水口2bが形成される。集水口2bは、例えば、円形の開口である。集水口2bは、排水口又は落とし口ともいわれる。一例として、軒樋2は、樹脂材料の押出成形により形成され得る。軒樋2は、軒樋2全体の強度の補強のための芯材を備えてよい。芯材は、例えば、金属製であり得る。別例として、軒樋2は、金属板、例えば鋼板(コイルとも呼ばれる)により形成されてもよい。
【0017】
ドレン10は、軒樋2の集水口2bに配置される。ドレン10は、集水口2bでの渦の発生及び空気の巻き込みを低減する。ドレン10は、サイフォン現象の発生に寄与し得る。ドレン10は、周知の構成であってよい。
【0018】
竪管3は、鉛直方向の流路を規定する。竪管3は、雨樋システムにおいては、竪樋ともいわれる。竪管3は、集水口2bから雨水を排水するために設置される。竪管3は、集水口2bからの雨水を垂直に流す。竪管3は、直管状である。竪管3の中心軸に直交する断面は円形状である。竪管3は、竪管3の中心軸の方向が上下方向(鉛直方向)に一致するように配置される。竪管3は、建物の壁面に固定される。竪管3は、上流側の端部3aと下流側の端部3bとを有する。上流側の端部3aは、竪管3において集水口2bに接続される端部(
図1での上端部)である。下流側の端部3bは、竪管3において、ます部に挿入される端部(
図1での下端部)である。一例として、竪管3の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。竪管3の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。
【0019】
図2は、配管システム1の一部を省略した側面図であり、
図3は、配管システム1の一部を省略した断面図である。配管システム1では、竪管3は、集水口2bに直接的に接続されておらず、横管4及び屈曲管5-1,5-2を介して、集水口2bに接続される。
【0020】
横管4は、鉛直方向に交差する方向の流路を規定する。横管4は、雨樋システムにおいては、呼び樋ともいわれる。横管4は、集水口2bから竪管3に雨水を流すための部分である。横管4は、集水口2bと竪管3との間にある。横管4は、直管状である。横管4の中心軸に直交する断面は円形状である。横管4は、横管4の中心軸の方向が上下方向(鉛直方向)に対して傾斜するように固定される。横管4は、上流側の端部4aと下流側の端部4bとを有する。上流側の端部4aは、横管4において集水口2bに接続される端部(
図1での左端部)である。下流側の端部4bは、横管4において竪管3に接続される端部(
図1での右端部)である。一例として、横管4の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。横管4の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。
【0021】
屈曲管5-1,5-2は、流路の向きを変える。屈曲管5-1,5-2は、例えば、竪管と横管のように方向が異なる流路を接続する接続継手である。屈曲管5-1,5-2の各々は、上流側及び下流側の配管がそれぞれ接続される受け口51,52と、受け口51,52同士をつなぐ屈曲部50とを有する。受け口51,52の中心軸間の角度は、例えば、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」で規定される91.17°である。屈曲管5-1,5-2の管軸を含む平面での、内周側及び外周側の角部は、R形状ではなくほぼ直角形状である。一例として、屈曲管5-1,5-2の材料は、例えば、硬質ポリ塩化ビニルである。なお、屈曲管5-1,5-2の寸法は、例えば、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」の規格に沿って設定されてよい。屈曲管5-1,5-2は、JIS K 6739で規定される90°曲がりエルボ(所謂、DL)であってよい。
【0022】
屈曲管5-1は、竪管3と横管4とを接続する第1屈曲管である。屈曲管5-1は、竪管3の上流側の端部3aを横管4の下流側の端部4bに接続する。屈曲管5-1では、横管4の下流側の端部4bが受け口51に接続され、竪管3の上流側の端部3aが受け口52に接続される。屈曲管5-1は、必ずしも竪管3の上流側の端部3aを横管4の下流側の端部4bに直接的に接続する部材ではなく、竪管3の上流側の端部3aを横管4の下流側の端部4bに他の部材を介して間接的に接続する部材であってよい。
【0023】
屈曲管5-2は、集水口2bと横管4とを接続する第2屈曲管である。屈曲管5-2は、横管4の上流側の端部4aを集水口2bに接続する。屈曲管5-2では、集水口2bがドレン10を介して受け口51に接続され、横管4の上流側の端部4aが受け口52に接続される。屈曲管5-2は、必ずしも横管4の上流側の端部4aを集水口2bに直接的に接続する部材ではなく、横管4の上流側の端部4aを集水口2bに他の部材を介して間接的に接続する部材であってよい。
【0024】
図4は、配管システム1の一部を省略した分解斜視図である。配管部材6は、屈曲管5-1の受け口52と竪管3の上流側の端部3aとの間に接続される。
【0025】
図5は、配管部材6の分解斜視図である。配管部材6は、サイフォン誘発部材7と、直管部材8と、継手部材9と、を備える。
【0026】
直管部材8は、直管状である。直管部材8の中心軸に直交する断面は円形状である。直管部材8は、上流側の端部8aと下流側の端部8bとを有する。上流側の端部8aは、直管部材8において屈曲管5-1の受け口52に接続される端部(
図4での上端部)である。下流側の端部8bは、直管部材8において、継手部材9に挿入される端部(
図5での下端部)である。一例として、直管部材8の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。直管部材8は、竪管3の代わりに屈曲管5-1の受け口51に接続可能な形状及び寸法である。直管部材8の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。本実施の形態では、直管部材8の外径は、竪管3の外径と等しい。直管部材8の内径は、竪管3の内径と等しい。
【0027】
図3及び
図5を参照すると、サイフォン誘発部材7は、流路を構成する配管システム1の一部を構成する。サイフォン誘発部材7は、配管システム1の上流側及び下流側にそれぞれ向けられる第1及び第2端7a,7bを有し、流路断面積を規定する内周面70を有する筒状である。サイフォン誘発部材7は、縮径部71と、拡径部72と、突起73と、を備える。
【0028】
図6~
図12を参照して、サイフォン誘発部材7について更に説明する。
図6は、サイフォン誘発部材7の上方から見た分解斜視図である。
図7は、サイフォン誘発部材7の下方から見た分解斜視図である。
図8は、サイフォン誘発部材7の上面図である。
図9は、サイフォン誘発部材7の下面図である。
図10は、サイフォン誘発部材7の縮径部71の下面図である。
図11は、サイフォン誘発部材7の拡径部72の上面図である。
図12は、サイフォン誘発部材7の断面図である。
【0029】
図12を参照すると、縮径部71は、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて流路断面積が減少する。拡径部72は、縮径部71から第2端7bに向かうにつれて流路断面積が増加する。これによって、サイフォン誘発部材7は、配管システム1においてサイフォン現象を誘発する効果、又は、配管システム1においてサイフォン現象による作用を安定的に促進する効果を奏し得る。
【0030】
本実施の形態では、縮径部71と拡径部72とは別部材である。縮径部71は、サイフォン誘発部材7の上流側の部位を構成する。拡径部72は、サイフォン誘発部材7の下流側の部位を構成する。縮径部71及び拡径部72の材料は、例えば、硬質ポリ塩化ビニルである。
【0031】
図6及び
図7を参照すると、縮径部71は、第1鍔部71aと、第1筒部71bと、を有する。
【0032】
第1鍔部71aは、円環状である。第1鍔部71aは、第1端7aを規定する。
【0033】
第1筒部71bは、第1鍔部71aの内周部から第2端7b側に延びる。第1筒部71bは、第1端7aとは反対側の第3端7cを規定する。第1筒部71bは、流路断面積を規定する第1内周面70aを有する筒状である。第1内周面70aは、サイフォン誘発部材7の内周面70の上流側の部位である。第1筒部71bは、第1端7aから第3端7cに向かうにつれて流路断面積が減少するように内径及び外径が減少する。詳しくは後述するが、第1筒部71bには、突起73の第1突起部73aが形成される。第1筒部71bの内径は、第1筒部71bの第1内周面70aにおいて第1突起部73aが存在しない部分に対する内接円の直径である。第1筒部71bの外径は、第1筒部71bの外周面において第1突起部73aが存在しない部分に対する外接円の直径である。
【0034】
第1鍔部71aの外径が、縮径部71の外径の最大値である。第1筒部71bの内径の最小値(第3端7cでの内径にあたる)、縮径部71の内径の最小値である。
【0035】
図8及び
図10を参照すると、縮径部71は、第1貫通孔74aを有する。第1貫通孔74aは、第1鍔部71aを貫通する。本実施の形態では、4つの第1貫通孔74aがある。4つの第1貫通孔74aは、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向から見て中心軸C1の周りに均等な間隔で位置する。
【0036】
図8及び
図10を参照すると、縮径部71は、拡径部72との結合に用いられる第1凹凸部を有する。本実施の形態では、4つの第1凹凸部751a~751dがある。4つの第1凹凸部751a~751dは、第1端7aとは反対側の第3端7cに位置する。4つの第1凹凸部751a~751dは、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向から見て中心軸C1の周りに均等な間隔で位置する。本実施の形態では、第1凹凸部751a,751bは、円形状の穴であり、第1凹凸部751c,751dは、円形状の突起である。
【0037】
図6及び
図7を参照すると、拡径部72は、第2鍔部72aと、第2筒部72bと、を有する。
【0038】
第2鍔部72aは、円環状である。第2鍔部72aは、第2端7bを規定する。
【0039】
第2筒部72bは、第2鍔部72aの内周部から第1端7a側に延びる。第2筒部72bは、第2端7bとは反対側の第4端7dを規定する。第2筒部72bは、拡径部72の流路断面積を規定する第2内周面70bを有する筒状である。第2内周面70bは、サイフォン誘発部材7の内周面70の下流側の部位である。第1内周面70aと第2内周面70bとで、内周面70が構成される。第2筒部72bは、第4端7dから第2端7bに向かうにつれて流路断面積が増加するように内径及び外径が増加する。詳しくは後述するが、第2筒部72bには、突起73の第2突起部73bが形成される。第2筒部72bの内径は、第2筒部72bの第2内周面70bにおいて第2突起部73bが存在しない部分に対する内接円の直径である。第2筒部72bの外径は、第2筒部72bの外周面において第2突起部73bが存在しない部分に対する外接円の直径である。
【0040】
第2鍔部72aの外径が、拡径部72の外径の最大値である。第2筒部72bの内径の最小値(第4端7dでの内径にあたる)、拡径部72の内径の最小値である。
【0041】
図9及び
図11を参照すると、拡径部72は、第2貫通孔74bを有する。第2貫通孔74bは、第2鍔部72aを貫通する。本実施の形態では、4つの第2貫通孔74bがある。4つの第2貫通孔74bは、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向から見て中心軸C1の周りに均等な間隔で位置する。
【0042】
図9及び
図11を参照すると、拡径部72は、縮径部71との結合に用いられる第2凹凸部を有する。本実施の形態では、4つの第2凹凸部752a~752dがある。4つの第2凹凸部752a~752dは、第2端7bとは反対側の第4端7dに位置する。4つの第2凹凸部752a~752dは、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向から見て中心軸C1の周りに均等な間隔で位置する。本実施の形態では、第2凹凸部752a,752bは、円形状の突起であり、第2凹凸部752c,752dは、円形状の穴である。4つの第2凹凸部752a~752dは、4つの第1凹凸部751a~751dに、それぞれ機械的に結合される。つまり、第2凹凸部752aが第1凹凸部751aに挿入され、第2凹凸部752bが第1凹凸部751bに挿入され、第1凹凸部751cが第2凹凸部752cに挿入され、第1凹凸部751dが第2凹凸部752dに挿入される。第1凹凸部751a~751d及び第2凹凸部752a~752dは、縮径部71と拡径部72との結合及び位置合わせを可能にする。
【0043】
図8及び
図9を参照すると、突起73は、サイフォン誘発部材7の内周面70に位置する。本実施の形態では、サイフォン誘発部材7は、複数(図示例では12)の突起73を備える。複数の突起73は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向から見て中心軸C1の周りに均等な間隔で位置する。換言すると、複数の突起73は、内周面70において、中心軸C1の方向から見て中心軸C1に対して回転対称となる位置にある。
【0044】
複数の突起73は、流体(雨樋システムでは雨水)の整流に用いられる。すなわち、複数の73は、サイフォン誘発部材7に流入する流体に、整流作用を生じさせる整流部材として機能する。本実施の形態では、複数の突起73は、形状及びサイズが同じである。
【0045】
図12を参照すると、突起73は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1に沿って延びる板状ではない。突起73は、縮径部71に位置する第1先端731と拡径部72に位置する第2先端732とを有する。第1先端731と第2先端732とを結ぶ直線C2は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1に対して傾斜している。これによって、突起73は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の周りに流体を旋回させる効果が期待できる。そのため、突起73は、流体の流速を増加又は維持する効果が期待できる。これによって、排水能力を向上できる。
【0046】
図8及び
図9を参照すると、突起73は、幅が一様な板状ではない。縮径部71内では、突起73の幅は、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて広くなる。拡径部72内では、突起73の幅は、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて狭くなる。これによって、突起73は、幅が一様な場合に比べて、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の周りに流体を旋回させやすくできる。そのため、突起73は、流体の流速を増加又は維持する効果の向上が期待できる。これによって、排水能力を向上できる。
【0047】
図8及び
図9を参照すると、突起73は、高さが一様な板状ではない。縮径部71内では、突起73の高さは、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて高くなる。拡径部72内では、突起73の高さは、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて低くなる。これによって、突起73は、高さが一様な場合に比べて、流体の流れに対する抵抗を低減できる。そのため、突起73は、流体の流速を増加又は維持する効果が期待できる。これによって、排水能力を向上できる。
【0048】
本実施の形態では、突起73は、第1突起部73aと、第2突起部73bとで構成される。
【0049】
図6、7、8及び10を参照すると、第1突起部73aは、縮径部71の第1内周面70aに位置する。第1突起部73aは、突起73の上流側の部位に対応する。第1突起部73aは、縮径部71の第1内周面70aに一体的に形成される。本実施の形態では、縮径部71の第1筒部71bを部分的に突出させるようにして第1突起部73aが第1内周面70aに一体的に形成される。
【0050】
図6、7、9及び11を参照すると、第2突起部73bは、拡径部72の第2内周面70bに位置する。第2突起部73bは、突起73の下流側の部位に対応する。第2突起部73bは、拡径部72の第2内周面70bに一体的に形成される。本実施の形態では、拡径部72の第2筒部72bを部分的に突出させるようにして第2突起部73bが第2内周面70bに一体的に形成される。
【0051】
本実施の形態では、第1突起部73aと第2突起部73bとは同じ形状である。
【0052】
サイフォン誘発部材7は、縮径部71と拡径部72とを結合することで組み立てられる。より詳細には、縮径部71の第3端7cと拡径部72の第4端7dとを互いに向かい合わせにし、第1凹凸部751a~751d及び第2凹凸部752a~752dを互いに器械的に結合する。これによって、縮径部71と拡径部72とが互いに結合され、
図5に示すように、サイフォン誘発部材7が得られる。サイフォン誘発部材7では、縮径部71の第1内周面70aと拡径部72の第2内周面70bとによって、内周面70が構成される。サイフォン誘発部材7では、縮径部71の第1突起部73aと拡径部72の第2突起部73bとによって、突起73が構成される。
【0053】
本実施の形態では、縮径部71と拡径部72とは、同じ形状及び寸法の部品として構成される。サイフォン誘発部材7では、同じ形状及び寸法の2つの部品の一方が縮径部71、他方が拡径部72として用いられる。縮径部71の形状は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1に直交する回転軸に対して180度回転させると、拡径部72の形状に一致し得る。より詳細には、縮径部71の第1鍔部71a、第1筒部71b、第1突起部73a及び第1貫通孔74aと、拡径部72の第2鍔部72a、第2筒部72b、第2突起部73b及び第2貫通孔74bとが、それぞれ同じ形状及び寸法である。第1凹凸部751a~751dと第2凹凸部752a~752dについては、第1凹凸部751a,751bと第2凹凸部752c,752dとが同じ形状及び寸法であり、第1凹凸部751c,751dと第2凹凸部752a,752bとが同じ形状及び寸法である。第1凹凸部751a,751bの2つの穴は、第1凹凸部751c,751dの2つの突起が嵌る形状である。同様に、第2凹凸部752c,752dの2つの穴は、第2凹凸部752a,752bの2つの突起が嵌る形状である。これによって、縮径部71と拡径部72とのために異なる形状の部品を2つ用意しなくて済み、同じ形状及び寸法の2つの部品でサイフォン誘発部材7を構成できる。そのため、例えば、金型の用意に必要なコストが大幅に低減されることが期待できる。これにより、サイフォン誘発部材7の組み立ての簡易化及び製造コストの低減が期待できる。したがって、この構成は、サイフォン誘発部材7の製造の容易化を可能にする。
【0054】
サイフォン誘発部材7は、第1端7a及び第2端7bで外径が最大になる。第1鍔部71aの外径及び第2鍔部72aの外径は、直管部材8の内径以下である。サイフォン誘発部材7は、第1端7a及び第2端7bで内径が最大になり、第3端7c及び第4端7dで内径が最小になる。
【0055】
サイフォン誘発部材7が直管部材8内にある状態では、サイフォン誘発部材7の第1鍔部71a、第1筒部71b、第2鍔部72a及び第2筒部72bと、直管部材8との間には空間が形成され得る。この空間には、直管部材8と第1鍔部71aの隙間から流体が入り込む場合がある。流体が水である場合には、気温の低下により凍結する場合がある。この場合には水が氷になることで膨張し、これによって、サイフォン誘発部材7又は直管部材8の破損が生じる可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、サイフォン誘発部材7は、第2鍔部72aを貫通する第2貫通孔74bを備える。そのため、上記の空間に入り込んだ水は、第2貫通孔74bより排水され得る。これによって、上記空間に水がたまることに起因するサイフォン誘発部材7又は直管部材8の破損の可能性を低減できる。つまり、第2貫通孔74bは水抜き孔として作用する。
【0056】
図4を参照すると、継手部材9は、第1受け口91と、第2受け口92と、を有する。第1受け口91は、配管システム1の上流側に向けられ直管部材8が接続される受け口である。第2受け口92は、直管部材8と同じ外径の配管要素が接続可能な受け口である。本実施の形態では、直管部材8と同じ外径の配管要素は、竪管3である。
【0057】
図13は、継手部材9の上面図である。
図14は、継手部材9の下面図である。
図15は、継手部材9の断面図である。
【0058】
継手部材9は、本体部90と、隔壁部93と、周壁部94と、を備える。継手部材9の材料は、例えば、硬質ポリ塩化ビニルである。
【0059】
本体部90は、直管状である。本体部90の中心軸に直交する断面は円形状である。本体部90は、上流側の端部9aと下流側の端部9bとを有する。本体部90の寸法、例えば、外形と厚さは、例えば、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」のソケットの規格に沿って設定されてよい。本実施の形態では、本体部90の内径は、直管部材8の外径以上である。
【0060】
図13及び
図15を参照すると、隔壁部93は、本体部90の内周面90aから本体部90の中心軸側に延びる。隔壁部93は、厚みが一様な板状である。隔壁部93は、開口93aを有する。開口93aは、隔壁部93の中央にある。
図13及び
図14を参照すると、本体部90の中心軸の方向から見て、開口93aは円形状であり、隔壁部93は、円環状である。開口93aの内径は、サイフォン誘発部材7の第1端7a及び第2端7bでの内径に等しい。
【0061】
図15を参照すると、周壁部94は、隔壁部93の開口93aの縁から下流側の端部9b側に突出する。
図14を参照すると、周壁部94は、開口93aの全周を囲う。本実施の形態において、周壁部94は、円筒状である。周壁部94の外径は、本体部90の内径より小さい。これによって、本体部90の内周面90aと周壁部94との間に、円環状の隙間95が存在する。隙間95には、竪管3の上流側の端部3aが挿入される。
【0062】
図15を参照すると、継手部材9において、隔壁部93と、本体部90における隔壁部93より上流側の端部9a側の部位とが、第1受け口91を構成し、隔壁部93と、本体部90における隔壁部93より下流側の端部9b側の部位とが、第2受け口92を構成する。
【0063】
以上述べたように、配管部材6は、サイフォン誘発部材7と、直管部材8と、継手部材9とを備える。
図3を参照すると、配管部材6において、サイフォン誘発部材7は、直管部材8内に位置する。例えば、サイフォン誘発部材7は、第1鍔部71a及び第2鍔部72aの外周部分と直管部材8の内周面との間に接着剤を塗布して固定され得る。直管部材8の下流側の端部8bは、継手部材9の第1受け口91に挿入される。直管部材8は、下流側の端部8bの外周部分と第1受け口91の内周面との間に接着剤を塗布して固定され得る。
【0064】
配管部材6は、配管システム1において、直管部材8が第1屈曲管5-1に接続され、竪管3が継手部材9の第2受け口92に接続されるようにして、第1屈曲管5-1と竪管3との間に位置する。直管部材8は、上流側の端部8aの外周部分と第1屈曲管5-1の受け口52の内周面との間に接着剤を塗布して固定され得る。継手部材9は、第2受け口92の内周面と竪管3の上流側の端部3aの外周部分との間に接着剤を塗布して固定され得る。
【0065】
次に、サイフォン誘発部材7の作用について説明する。上述したように、サイフォン誘発部材7は、縮径部71を有し、配管システム1の流路の流路断面積を部分的に縮小する。そのため、縮径部71から流路の下流側に流れ出る雨水の流量よりも、流路の上流側から縮径部71に流れ込む雨水の流量が多くなりやすい。このため、雨水は縮径部71内に溜まりやすい。縮径部71内に雨水が溜まると、縮径部71よりも流路の下流側において満水状態になりやすい。これによって、縮径部71内の雨水が縮径部71よりも流路の下流側の雨水に引っ張られてサイフォン現象が発生し、配管システム1内の雨水が下流側に勢い良く流れると考えられる。なお、満水状態は、厳密な意味で使用されておらず、満水状態と同等とみなせる程度に水で満たされた状態(満水状態に近い状態)も含む。サイフォン誘発部材7は、縮径部71の下流に拡径部72を有し、配管システム1の流路の流路断面積を部分的に縮小した後に増加させる。縮径部71を通過する雨水をサイフォン誘発部材7の中心軸C1から離れる向きに誘導しやすくなり、サイフォン現象による作用を更に安定的に促進させることができる。
【0066】
次に、配管システム1におけるサイフォン誘発部材7の配置について説明する。配管システム1では、配管部材6は、直管部材8が第1屈曲管5-1に接続され、竪管3が継手部材9の第2受け口92に接続されるようにして、第1屈曲管5-1と竪管3との間に位置する。サイフォン誘発部材7は、配管部材6の直管部材8内にある。これによって、サイフォン誘発部材7は、配管システム1の流路において第1屈曲管5-1の直下にある直管部材8内にある。配管システム1の設計上、第1屈曲管5-1は人の頭部よりも上方に位置する場合が多い。よって、サイフォン誘発部材7も人の頭部よりも上方に位置することになる。つまり、サイフォン誘発部材7が第1屈曲管5-1から下方に離して配置される場合に比べれば、配管システム1の外観において、サイフォン誘発部材7を目立たなくすることができる。これによって、外観への影響を低減しながら排水能力を向上できる。本開示において、「直管部材8は、流路において第1屈曲管5-1の直下にある」とは、第1屈曲管5-1と直管部材8との間に、流路の構成に実質的な影響を及ぼさない部材等が存在することを排除しない。流路の構成に実質的な影響を及ぼさない部材は、接着剤等の接続部材、パッキン等の封止部材等を含み得る。別の言い方をすれば、流路の構成に実質的な影響を及ぼさない部材は、流路の一部を構成可能な配管要素を含まない。換言すれば、直管部材8は、別の配管要素を挟まずに、直接的に、第1屈曲管5-1に接続されるともいえる。
【0067】
本実施の形態において、サイフォン誘発部材7は、直管部材8で隠される。よって、配管システム1の外観からは、サイフォン誘発部材7を直接視認することはできない。そのため、サイフォン誘発部材7を配置したとしても、配管システム1の外観に実質的な影響がない。つまり、外観への影響を低減しながら排水能力を向上できる。
【0068】
次に、配管システム1における各種の寸法についてさらに説明する。
【0069】
[縮径比率]
本実施の形態において、サイフォン誘発部材7の外径は、直管部材8の内径に対応する。直管部材8の内径は、竪管3の内径に対応する。サイフォン誘発部材7の外径は、配管システム1の流路の内径に対応する。
図8~
図11を参照し、ここで、サイフォン誘発部材7の外径をP、サイフォン誘発部材7において流路断面積が最小となる内径をP1とする。サイフォン誘発部材7において流路断面積が最小となる内径は、第3端7c又は第4端7dにおける内径である。縮径比率をRとすると、R=P1/Pである。Rを変化させた場合の配管システム1の排水能力(排水性、排水性能)を、排水実験により評価したところ、下表1の結果が得られた。下表1において、排水能力は、「〇」、「△」、「×」の3段階で評価した。「〇」は、オーバーフローが生じなかったことを示す。「△」は、オーバーフローが生じる場合があることを示す。「×」は、高確率でオーバーフローが生じることを示す。
【0070】
【0071】
表1から、Rは、0.50以上0.75以下であることが好ましい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。また、Rは、0.50以上0.67以下であってよい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。また、Rは、0.55以上0.70以下であってよい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。また、R1は、0.55以上0.67以下であってよい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。
【0072】
[サイフォン誘発部材の内径に対する長さの比]
図12を参照すると、サイフォン誘発部材7は、縮径部71に加えて、拡径部72を有する。サイフォン誘発部材7の長さをH、縮径部71の長さをH1、拡径部72の長さをH2とすると、H=H1+H2である。本実施の形態では、H1=H2である。ここでいう長さは、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向の寸法である。サイフォン誘発部材7において流路断面積が最小となる内径P1に対するサイフォン誘発部材7の長さHの比(=H/P1)を変化させた場合の配管システム1の排水能力を、排水実験により評価した。その結果、H/P1が1未満である場合には、オーバーフローの発生が見られたが、H/P1が1以上である場合には、オーバーフローの発生が確認できなかった。したがって、H/P1は、1以上であるとよい。言い換えれば、サイフォン誘発部材7の長さをH、サイフォン誘発部材7において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、H≧P1であるとよい。この構成は、排水能力を向上できる。
【0073】
[直管部材の上流側の端部と第1受け口との間の距離]
サイフォン誘発部材7を第1屈曲管5-1の直下ではなく、第1屈曲管5-1から下方に離して配置する場合、サイフォン誘発部材7と第1屈曲管5-1の距離とが大きくなるほど排水能力の向上が見られるとの知見がある。
図3を参照すると、サイフォン誘発部材7と第1屈曲管5-1の距離は、直管部材8の上流側の端部8aと第1受け口91との間の距離Lにより制限される。サイフォン誘発部材7が第1屈曲管5-1の直下にある場合でも、サイフォン誘発部材7が存在しない場合に比べれば、排水能力の2倍程度の向上が見込めることが実験により確認できている。例えば、建物が比較的小規模な建物である場合には、排水能力の2倍程度の向上で十分対応できると考えられる。本開示にいう比較的小規模な建物の条件としては、屋根面積が200m
2以上700m
2以下であること、及び、竪管3の長さが2m以上3m以下であることの少なくとも一方を満たすことが挙げられる。このような比較的小規模な建物において要求される排水能力を考慮すると、直管部材8の上流側の端部8aと第1受け口91との間の距離Lは、50mm以上であるとよい。一方で、距離Lを大きくすると、継手部材9が人目に付きやすくなり、配管システム1の外観上、好ましくない。そこで、直管部材8の上流側の端部8aと第1受け口91との間の距離Lは、1000mm以下であるとよく、200mm以下であるとさらによい。このように、配管システム1は、小規模な物件において、外観を阻害する事なく、かつ、施工の制約を緩和しながら排水能力を得る事ができ得る。つまり、配管システム1によれば、外観向上と排水能力向上の両方を獲得できる。
【0074】
[竪管の長さ]
配管システム1においては、第1屈曲管5-1と竪管3との間に、サイフォン誘発部材7を備える配管部材6が配置される。サイフォン誘発部材7の高さは、竪管3の長さにより制限される。そこで、竪管3の長さに関して、配管システム1の排水能力を、排水実験により評価した。当該評価により、下表2の結果が得られた。下表2において、排水能力は、「〇」、「△」、「×」の3段階で評価した。「〇」は、オーバーフローが生じなかったことを示す。「△」は、オーバーフローが生じる場合があることを示す。「×」は、高確率でオーバーフローが生じることを示す。
【0075】
【0076】
表2から、竪管3の長さは、1.0m以上であることが好ましい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。また、竪管3の長さは、1.1m以上であってよい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。また、竪管3の長さは、1.2m以上であってよい。これによって、配管システム1の排水能力をさらに向上できる。
【0077】
[1.2 効果等]
以上述べたサイフォン誘発部材7は、流路を構成する配管システム1の一部を構成する。サイフォン誘発部材7は、配管システム1の上流側及び下流側にそれぞれ向けられる第1及び第2端7a,7bを有し、流路断面積を規定する内周面70を有する筒状である。サイフォン誘発部材7は、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて流路断面積が減少する縮径部71と、縮径部71から第2端7bに向かうにつれて流路断面積が増加する拡径部72と、を備える。この構成は、サイフォン現象による作用を安定的に促進させることができる。
【0078】
サイフォン誘発部材7において、サイフォン誘発部材7の外径をP、サイフォン誘発部材7において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、0.50<P1/P<0.75である。この構成は、排水能力をさらに向上できる。
【0079】
サイフォン誘発部材7は、内周面70に位置する突起73を備える。突起73は、縮径部71に位置する第1先端731と拡径部72に位置する第2先端732とを有する。第1先端731と第2先端732とを結ぶ直線C2は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1に対して傾斜している。この構成は、排水能力をさらに向上できる。
【0080】
サイフォン誘発部材7において、縮径部71内では、突起73の幅は、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて広くなる。拡径部72内では、突起73の幅は、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて狭くなる。この構成は、排水能力をさらに向上できる。
【0081】
サイフォン誘発部材7において、縮径部71内では、突起73の高さは、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて高くなる。拡径部72内では、突起73の高さは、第1端7aから第2端7bに向かうにつれて低くなる。この構成は、排水能力をさらに向上できる。
【0082】
サイフォン誘発部材7は、複数の突起73を備える。複数の突起73は、サイフォン誘発部材7の中心軸C1の方向から見て中心軸C1の周りに均等な間隔で位置する。この構成は、排水能力をさらに向上できる。
【0083】
サイフォン誘発部材7は、第1端7a及び第2端7bで外径が最大になる。この構成は、サイフォン誘発部材7の製造の容易化を可能にする。
【0084】
サイフォン誘発部材7において、縮径部71の長さと拡径部72の長さとは等しい。この構成は、サイフォン誘発部材7の製造の容易化を可能にする。
【0085】
サイフォン誘発部材7において、縮径部71と拡径部72とは別部材である。縮径部71は、第1端7aとは反対側の第3端7cに第1凹凸部751a~751dを有する。拡径部72は、第2端7bとは反対側の第4端7dに、第1凹凸部751a~751dに機械的に結合する第2凹凸部752a~752dを有する。第1凹凸部751a~751dと第2凹凸部752a~752dとを機械的に結合することで縮径部71と拡径部72とが互いに結合される。この構成は、サイフォン誘発部材7の製造の容易化を可能にする。
【0086】
サイフォン誘発部材7において、縮径部71と拡径部72とは、同じ形状の部材で構成される。この構成は、サイフォン誘発部材7の製造の容易化を可能にする。
【0087】
サイフォン誘発部材7において、サイフォン誘発部材7の長さをH、サイフォン誘発部材7において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、H≧P1である。この構成は、排水能力をさらに向上できる。
【0088】
以上述べた配管部材6は、サイフォン誘発部材7と、サイフォン誘発部材7が内側に配置される直管部材8と、配管システム1の上流側に向けられ直管部材8が接続される第1受け口91及び配管システム1の下流側に向けられ直管部材8と同じ外径の配管要素(竪管3)が接続可能な第2受け口92を有する継手部材9と、を備える。この構成は、外観への影響を低減しながら、サイフォン現象による作用を安定的に促進させることができ、排水能力を向上できる。
【0089】
配管部材6において、直管部材8の上流側の端部8aと第1受け口91との間の距離は、50mm以上1000mm以下である。この構成は、排水能力を向上できる。
【0090】
以上述べた配管システム1は、建物の壁面に固定される竪管3と、建物からの雨水の集水口2bと竪管3との間にある横管4と、横管4と竪管3との間にある第1屈曲管5-1と、集水口2bと横管4との間にある第2屈曲管5-2と、配管部材6と、を備える。配管部材6は、直管部材8が第1屈曲管5-1に接続され、竪管3が継手部材9の第2受け口92に接続されるようにして、第1屈曲管5-1と竪管3との間に位置する。この構成は、外観への影響を低減しながら、サイフォン現象による作用を安定的に促進させることができ、排水能力を向上できる。
【0091】
配管システム1において、竪管3の長さは、1.0m以上である。この構成は、排水能力を向上できる。
【0092】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0093】
一変形例において、サイフォン誘発部材7の一部又は全部の形状及び大きさは、異なっていてよい。例えば、上記実施の形態とは異なり、サイフォン誘発部材7において、中心軸C1に直交する面内での、縮径部71及び拡径部72の形状は、円形状ではなく、多角形状であってよい。上記の実施の形態では、中心軸C1を含む平面での断面において、縮径部71の第1内周面70a及び拡径部72の第2内周面70bは曲線状であるが、変形例においては、直線状又は折線状であってよい。
【0094】
一変形例において、サイフォン誘発部材7の縮径部71と拡径部72とは、連続一体に形成されてもよい。
【0095】
一変形例において、サイフォン誘発部材7の縮径部71と拡径部72とは、異なる形状であってよい。一例として、縮径部71の長さH1と拡径部72の長さH2とは同じでなくてもよい。
【0096】
一変形例において、突起73の形状、数及び配置は特に限定されない。サイフォン誘発部材7は、突起73を備えていなくてもよい。
【0097】
一変形例において、第1貫通孔74aの形状、数及び配置は特に限定されない。サイフォン誘発部材7は、第1貫通孔74aを備えていなくてもよい。第2貫通孔74bの数は特に限定されない。サイフォン誘発部材7は、第2貫通孔74bを備えていなくてもよい。
【0098】
一変形例において、第1凹凸部751a~751d及び第2凹凸部752a~752dの形状、数及び配置は特に限定されない。サイフォン誘発部材7は、第1凹凸部751a~751d及び第2凹凸部752a~752dを備えていなくてもよい。
【0099】
一変形例において、サイフォン誘発部材7材料は、必ずしも硬質ポリ塩化ビニルでなくてもよい。サイフォン誘発部材7の材料は、配管システム1に求められる要件にしたがって決定されてよく、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂であってもよいし、合成樹脂ではなく、金属であってもよい。
【0100】
一変形例において、ドレン10は、一般的にサイフォン現象の発生に寄与しないと考えられる構造のドレンであってよい。一変形例において、ドレン10は必須ではない。
【0101】
一変形例において、第1屈曲管5-1及び第2屈曲管5-2は、90°曲がりエルボに限らず、例えば、45°エルボ(45L)であってよい。
【0102】
一変形例において、サイフォン誘発部材7は、直管部材8とは別部材ではなく、一体的に形成されてもよい。直管部材8は、継手部材9とは別部材ではなく、一体的に形成されてもよい。
【0103】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0104】
[態様1]
流路を構成する配管システムの一部を構成するサイフォン誘発部材であって、
前記配管システムの上流側及び下流側にそれぞれ向けられる第1及び第2端を有し、流路断面積を規定する内周面を有する筒状であり、
前記第1端から前記第2端に向かうにつれて前記流路断面積が減少する縮径部と、
前記縮径部から前記第2端に向かうにつれて前記流路断面積が増加する拡径部と、
を備える、
サイフォン誘発部材。
【0105】
[態様2]
前記サイフォン誘発部材の外径をP、前記サイフォン誘発部材において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、0.50≦P1/P≦0.75である、
態様1のサイフォン誘発部材。
【0106】
[態様3]
前記内周面に位置する突起を備え、
前記突起は、前記縮径部に位置する第1先端と前記拡径部に位置する第2先端とを有し、
前記第1先端と前記第2先端とを結ぶ直線は、前記サイフォン誘発部材の中心軸に対して傾斜している、
態様1又は2のサイフォン誘発部材。
【0107】
[態様4]
前記縮径部内では、前記突起の幅は、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて広くなり、
前記拡径部内では、前記突起の幅は、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて狭くなる、
態様3のサイフォン誘発部材。
【0108】
[態様5]
前記縮径部内では、前記突起の高さは、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて高くなり、
前記拡径部内では、前記突起の高さは、前記第1端から前記第2端に向かうにつれて低くなる、
態様3又は4のサイフォン誘発部材。
【0109】
[態様6]
複数の前記突起を備え、
前記複数の突起は、前記サイフォン誘発部材の中心軸の方向から見て前記中心軸の周りに均等な間隔で位置する、
態様3~5のいずれか一つのサイフォン誘発部材。
【0110】
[態様7]
前記第1端及び前記第2端で外径が最大になる、
態様1~6のいずれか一つのサイフォン誘発部材。
【0111】
[態様8]
前記縮径部の長さと前記拡径部の長さとは等しい、
態様1~7のいずれか一つのサイフォン誘発部材。
【0112】
[態様9]
前記縮径部と前記拡径部とは別部材であり、
前記縮径部は、前記第1端とは反対側の第3端に第1凹凸部を有し、
前記拡径部は、前記第2端とは反対側の第4端に、前記第1凹凸部に機械的に結合する第2凹凸部を有し、
前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とを機械的に結合することで前記縮径部と前記拡径部とが互いに結合される、
態様1~8のいずれか一つのサイフォン誘発部材。
【0113】
[態様10]
前記縮径部と前記拡径部とは、同じ形状及び寸法の部品として構成される、
態様1~9のいずれか一つのサイフォン誘発部材。
【0114】
[態様11]
前記サイフォン誘発部材の長さをH、前記サイフォン誘発部材において流路断面積が最小となる内径をP1とすると、H≧P1である、
態様1~10のいずれか一つのサイフォン誘発部材。
【0115】
[態様12]
態様1~11のいずれか一つのサイフォン誘発部材と、
前記サイフォン誘発部材が内側に配置される直管部材と、
前記配管システムの上流側に向けられ前記直管部材が接続される第1受け口及び前記配管システムの下流側に向けられ前記直管部材と同じ外径の配管要素が接続可能な第2受け口を有する継手部材と、
を備える、
配管部材。
【0116】
[態様13]
前記直管部材の上流側の端部と前記第1受け口との間の距離は、50mm以上1000mm以下である、
態様12の配管部材。
【0117】
[態様14]
建物の壁面に固定される竪管と、
前記建物からの雨水の集水口と前記竪管との間にある横管と、
前記横管と前記竪管との間にある第1屈曲管と、
前記集水口と前記横管との間にある第2屈曲管と、
態様12又は13の配管部材と、
を備え、
前記配管部材は、前記直管部材が前記第1屈曲管に接続され、前記竪管が前記継手部材の前記第2受け口に接続されるようにして、前記第1屈曲管と前記竪管との間に位置する、
配管システム。
【0118】
[態様15]
前記竪管の長さは、1.0m以上である、
態様14の配管システム。
【0119】
態様2~11、13及び15は、任意の要素であり、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本開示は、サイフォン誘発部材、配管部材、及び、配管システムに適用可能である。具体的には、サイフォン現象を誘発するためのサイフォン誘発部材、サイフォン誘発部材を備える配管部材、及び、配管部材を備える配管システムに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 配管システム
2b 集水口
3 竪管
4 横管
5-1 第1屈曲管
5-2 第2屈曲管
6 配管部材
7 サイフォン誘発部材
7a 第1端
7b 第2端
70 内周面
71 縮径部
72 拡径部
73 突起
731 第1先端
732 第2先端
751a~751d 第1凹凸部
752a~752d 第2凹凸部
8 直管部材
9 継手部材
91 第1受け口
92 第2受け口
C1 中心軸
C2 直線(第1先端と第2先端とを結ぶ直線)