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特開2024-146134コンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146134
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】コンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
E21D11/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058862
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394017446
【氏名又は名称】マック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 勇人
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】宮原 宏史
(72)【発明者】
【氏名】宮地 順吾
(72)【発明者】
【氏名】韓 国栄
(72)【発明者】
【氏名】富川 章
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155DB02
2D155DB05
2D155LA13
(57)【要約】
【課題】切羽面におけるコンクリート材の吹付け厚さを精度良く検出できるコンクリート吹付け装置を提供する。
【解決手段】トンネル2の切羽面3にコンクリート材を吹き付けるコンクリート吹付け装置1であって、切羽面3に向けてコンクリート材を噴出可能なノズル装置20と、切羽面3上に縦方向に沿う直線状のレーザー光Lを照射する照射装置30と、切羽面3までの距離を測定する測距装置40と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの切羽面にコンクリート材を吹き付けるコンクリート吹付け装置であって、
前記切羽面に向けて前記コンクリート材を噴出可能なノズル装置と、
前記切羽面上に縦方向に沿う直線状の光を照射する照射装置と、
前記切羽面までの距離を測定する測距装置と、を備えていることを特徴とするコンクリート吹付け装置。
【請求項2】
前記照射装置は、前記切羽面上に横方向に沿う直線状の光を照射することをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項3】
トンネルの切羽面にコンクリート材を吹き付けるコンクリート吹付け装置であって、
前記切羽面に向けて前記コンクリート材を噴出可能なノズル装置と、
前記切羽面上に縦方向に並ぶ複数の点状の光を照射する照射装置と、
前記切羽面までの距離を測定する測距装置と、を備えていることを特徴とするコンクリート吹付け装置。
【請求項4】
前記照射装置は、前記トンネルの頂面および底面の少なくとも一方にも前記光を照射することを特徴とする請求項1または請求項3に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項5】
前記測距装置は、3Dスキャナーであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項6】
前記測距装置は、保護箱内に収容され、
前記保護箱に形成された開口部を通じて、前記切羽面までの距離を測定するように構成されており、
前記開口部には、開閉自在な扉が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項7】
前記保護箱は、放熱手段を備えていることを特徴とする請求項6に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項8】
前記保護箱には、傾斜計が収容されていることを特徴とする請求項6に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項9】
前記コンクリート材の吹付け作業の前後において、前記測距装置によって測定された前記切羽面までの距離の差に基づいて、前記切羽面における前記コンクリート材の吹付け厚さを算出し、前記切羽面の画像上に作成したメッシュのマス目ごとに前記吹付け厚さを表示した吹付け厚さデータ作成する厚さ算出手段と、
前記吹付け厚さデータを表示する表示手段と、を備えていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のコンクリート吹付け装置。
【請求項10】
請求項1または請求項3に記載のコンクリート吹付け装置を用いたコンクリート吹付け方法であって、
前記コンクリート吹付け装置を前記切羽面に対峙させる設置工程と、
前記照射装置から前記切羽面に向けて光を照射する照射工程と、
前記切羽面上の光の位置と、前記切羽面上に設定された基準点との位置関係に基づいて、前記切羽面に対する前記測距装置の相対位置を確認する相対位置確認工程と、
前記相対位置に基づいて、前記測距装置が前記切羽面に対して垂直方向に正対するように前記コンクリート吹付け装置の位置を調整する位置調整工程と、
前記切羽面までの距離を測定する第一測距工程と、
前記ノズル装置から前記切羽面に前記コンクリート材を吹付ける吹付け工程と、
前記切羽面までの距離を測定する第二測距工程と、
前記第一測距工程および前記第二測距工程において測定した距離の差に基づいて、前記切羽面への前記コンクリート材の吹付け厚さを算出する吹付け厚さ算出工程と、を備えていることを特徴とするコンクリート吹付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの切羽面にコンクリート材を吹き付けるためのコンクリート吹付け装置としては、切羽面に向けてコンクリート材を噴出可能なノズル装置と、切羽面までの距離を測定する測距装置と、を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
このようなコンクリート吹付け装置では、コンクリート材の吹付け作業の前後において、測距装置によって測定された切羽面までの距離の差に基づいて、切羽面におけるコンクリート材の吹き付け厚さを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-95716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のコンクリート吹付け装置において、測距装置が切羽面に対して垂直方向に正対しておらず、測距装置が切羽面に斜めに対峙している場合には、測距装置から切羽面までの距離の測定精度が低下するという問題がある。
本発明は、前記した問題を解決し、切羽面におけるコンクリート材の吹付け厚さを精度良く検出できるコンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、第一の発明は、トンネルの切羽面にコンクリート材を吹き付けるコンクリート吹付け装置であって、前記切羽面に向けて前記コンクリート材を噴出可能なノズル装置と、前記切羽面上に縦方向に沿う直線状の光を照射する照射装置と、前記切羽面までの距離を測定する測距装置と、を備えている。
【0006】
前記課題を解決するため、第二の発明は、トンネルの切羽面にコンクリート材を吹き付けるコンクリート吹付け装置であって、前記切羽面に向けて前記コンクリート材を噴出可能なノズル装置と、前記切羽面上に縦方向に並ぶ複数の点状の光を照射する照射装置と、前記切羽面までの距離を測定する測距装置と、を備えている。
【0007】
前記課題を解決するため、第三の発明は、コンクリート吹付け装置を用いたコンクリート吹付け方法であって、前記コンクリート吹付け装置を前記切羽面に対峙させる設置工程と、前記照射装置から前記切羽面に向けて光を照射する照射工程と、前記切羽面上の光の位置と、前記切羽面上に設定された基準点との位置関係に基づいて、前記切羽面に対する前記測距装置の相対位置を確認する相対位置確認工程と、前記相対位置に基づいて、前記測距装置が前記切羽面に対して垂直方向に正対するように前記コンクリート吹付け装置の位置を調整する位置調整工程と、前記切羽面までの距離を測定する第一測距工程と、前記ノズル装置から前記切羽面に前記コンクリート材を吹付ける吹付け工程と、前記切羽面までの距離を測定する第二測距工程と、前記第一測距工程および前記第二測距工程において測定した距離の差に基づいて、前記切羽面への前記コンクリート材の吹付け厚さを算出する吹付け厚さ算出工程と、を備えている。
【0008】
本発明のコンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法では、切羽面上の光と、切羽面に設定した基準点との差異に基づいて、切羽面に対する測距装置の相対位置を確認できる。測距装置が切羽面に対して斜めに対峙している場合には、測距装置が切羽面に対して垂直方向に正対するように、コンクリート吹付け装置を移動させる。なお、切羽面上の基準点としては、例えば、切羽面に設けたアーチ状の支保工における鉄骨の頂部の継ぎ目を基準点とすることができる。
これにより、本発明のコンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法では、測距装置が切羽面に対して垂直方向に正対させた状態で、測距装置から切羽面までの距離を測定できるため、切羽面におけるコンクリート材の吹付け厚さを精度良く検出できる。
【0009】
前記した第一の発明のコンクリート吹付け装置において、前記照射装置は、前記切羽面上に横方向に沿う直線状の光を照射することをさらに備えている場合には、切羽面上の縦横の光(十字状の光)と、切羽面に設定した基準点との差異に基づいて、水平面に対する測距装置の傾斜を把握できる。
【0010】
前記したコンクリート吹付け装置において、前記照射装置が前記トンネルの頂面および底面の少なくとも一方にも前記光を照射するように構成した場合には、トンネルの頂面や底面に照射された光と、切羽面に照射された光との位置関係に基づいて、切羽面に対する測距装置の相対位置を把握できる。
【0011】
前記したコンクリート吹付け装置において、前記測距装置が3Dスキャナーである場合には、測距装置から切羽面までの距離を三次元で精度良く計測できるので、切羽面の形状を精度良く把握できる。
前記したコンクリート吹付け装置において、前記測距装置を保護箱内に収容し、前記保護箱に形成された開口部を通じて、前記切羽面までの距離を測定するように構成し、前記開口部に開閉自在な扉を設けた場合には、トンネル内の粉塵、水沫、飛石や結露から測距装置を保護できる。
また、前記保護箱に放熱手段を設けて、測距装置の温度を抑えることが好ましい。なお、放熱手段の構成は限定されるものではなく、例えば、保護箱の壁部をアルミニウム材によって形成したり、保護箱の外面に複数のフィンを形成したりすることで、放熱機能を持たせることができる。
さらに、前記保護箱に傾斜計を収容することで、トンネル内の粉塵、水沫、飛石や結露から傾斜計を保護することが好ましい。
【0012】
前記したコンクリート吹付け装置には、前記コンクリート材の吹付け作業の前後において、前記測距装置によって測定された前記切羽面までの距離の差に基づいて、前記切羽面における前記コンクリート材の吹付け厚さを算出し、前記切羽面の画像上に作成したメッシュのマス目ごとに前記吹付け厚さを表示した吹付け厚さデータ作成する厚さ算出手段と、前記吹付け厚さデータを表示する表示手段と、を設けることが好ましい。
この構成では、切羽面上に設定した複数の領域ごとに吹付け厚さを把握できるため、吹付け厚さが不足している領域に対してコンクリート材を吹付けることで、切羽面におけるコンクリート材の吹付け厚さを均一に施工できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の本発明のコンクリート吹付け装置およびコンクリート吹付け方法では、切羽面におけるコンクリート材の吹付け厚さを精度良く検出して、切羽面にコンクリート材を所定の厚さに均一に吹き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置における照射装置および測距装置を示した正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置における照射装置および測距装置を示した図で、保護箱の扉を開いた状態の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置における厚さ算出手段および表示手段を示した構成図である。
図5】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した図で、測距装置が切羽面の中央部から幅員方向にずれている状態の斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した図で、測距装置が切羽面に対して斜めに対峙している状態の斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した図で、測距装置がトンネル軸線に平行な軸回りに回転している状態の斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、トンネルの切羽面にコンクリート材を吹き付けるためのコンクリート吹付け装置およびそのコンクリート吹付け装置を用いたコンクリート吹付け方法について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した斜視図である。
コンクリート吹付け装置1は、図1に示すように、トンネル2(山岳トンネル)の切羽面3に対して所定の吹付け厚でコンクリート材を吹付けるものである。
切羽面3の縁部には、アーチ状の支保工5が設けられている。支保工5は、複数の鉄骨6を連続させた骨組みである。本実施形態の支保工5では、頂部と左右の側部の三箇所に鉄骨6,6同士の継ぎ目5a,5bが配置されている。
頂部の継ぎ目5aは、切羽面3のセンターライン上に配置され、左右の継ぎ目5b,5bは、切羽面3のスプリングライン上に配置されている。この継ぎ目5a,5bは、後記するように、切羽面3に対する測距装置40の相対位置を確認する際の基準点となる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置における照射装置および測距装置を示した正面図である。図4は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置における厚さ算出手段および表示手段を示した構成図である。
コンクリート吹付け装置1は、自走式の台車10と、ノズル装置20と、照射装置30と、測距装置40と、傾斜計60(図2参照)と、厚さ算出手段70(図4参照)と、表示手段80(図4参照)と、を備えている。
ノズル装置20は、台車10に取り付けられたノズルブーム21を有しており、ノズルブーム21の先端部に設けられたノズル22から切羽面3に向けてコンクリート材を噴出可能である。ノズルブーム21は、台車10に対して鉛直方向および水平方向に旋回自在に取り付けられ、さらに、軸方向に伸縮自在である。
【0018】
照射装置30は、台車10の前端部に設けられた保護箱50の上面に設置されている(図2参照)。
照射装置30は、縦方向に沿う直線状の縦線L1と、横方向に沿う直線状の横線L2と、を直交させた十字形状のレーザー光Lを切羽面3上に照射する。縦線L1は、照射装置30の設置面に垂直かつレーザー光Lの光軸を含む面と切羽面3との交線であり、横線L2は、照射装置30の設置面に平行かつレーザー光Lの光軸を含む面と切羽面3との交線である。したがって、照射装置30が水平に設置されている場合、縦線L1は、照射装置30を通る鉛直面と切羽面3との交線であり、横線L2は、照射装置30を通る水平面と切羽面3との交線である。
トンネル2の幅員方向の中央部において、照射装置30が水平に設置され、かつ、切羽面3に対して垂直方向に正対している場合には、切羽面3に照射されたレーザー光Lの縦線L1は切羽面3のセンターライン上に配置され、レーザー光Lの横線L2は切羽面3のスプリングライン上に配置される。
また、照射装置30は、トンネル2の頂面および底面にもレーザー光Lを直線状に照射している。トンネル2の頂面および底面に照射されたレーザー光Lは、照射装置30の設置面に垂直かつレーザー光Lの光軸を含む面と頂面および底面との交線に沿って照射され、切羽面3に照射されたレーザー光Lの縦線L1に連続している。照射装置30が水平に設置され、かつ、切羽面3に対して垂直方向に正対している状態では、トンネル2の頂面および底面に照射されたレーザー光Lは、切羽面3に対して垂直方向に延びている。
【0019】
測距装置40は、切羽面3までの距離を測定する3Dスキャナーである。測距装置40は、切羽面3の三次元座標データを取得する。
測距装置40は、図2に示すように、保護箱50内に収容されている。保護箱50は、台車10の前端部の上面に設けられたアルミニウム合金製の箱体である。本実施形態の保護箱50は、熱伝導率が高いアルミニウム合金材を用いることで放熱機能を備えている。
保護箱50の上面には照射装置30が取り付けられている。保護箱50内の測距装置40の中心位置と、照射装置30の中心位置とは、鉛直方向に揃えられている。
図3は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置における照射装置および測距装置を示した図で、保護箱の扉を開いた状態の正面図である。
保護箱50の前面には、開口部51が形成されている(図3参照)。測距装置40は、開口部51を通じて切羽面3(図1参照)までの距離を測定するように構成されている。
保護箱50の前面には、開口部51を開閉自在な扉52が設けられている。扉52は、保護箱50の前面に設けられた横レール53にスライド自在に取り付けられている。扉52は、保護箱50の前面に設けられたシリンダ装置54によって横方向に移動する。
保護箱50内には、傾斜計60が収容されている。傾斜計60は、水平面に対する前後方向の軸回りの傾斜および左右方向の軸回りの傾斜を計測可能である。
【0020】
厚さ算出手段70は、図4に示すように、コンクリート材の吹付け作業の前後において、測距装置40によって測定された切羽面3までの距離の差に基づいて、切羽面3におけるコンクリート材の吹付け厚さを算出する。
厚さ算出手段70は、CPU、RAM、ROM、ディスプレイなどを備えているコンピュータに設けられており、ROMなどに記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
また、厚さ算出手段70は、切羽面3の画像上に作成したメッシュのマス目ごとに吹付け厚さを色分けで表示した吹付け厚さデータ作成する。
表示手段80は、厚さ算出手段70から出力された吹付け厚さデータを表示するモニタである。
【0021】
次に、前記したコンクリート吹付け装置1を用いたコンクリート吹付け方法について説明する。
[設置工程]
まず、図1に示すように、コンクリート吹付け装置1をトンネル2内に移動させ、照射装置30および測距装置40を切羽面3に対峙させる。
【0022】
[照射工程]
続いて、照射装置30から切羽面3に向けてレーザー光Lを照射する。このとき、トンネル2の幅員方向の中央部において、照射装置30が切羽面3に対して垂直方向に正対し、さらに、照射装置30が水平である場合(図1の状態)には、切羽面3に照射されたレーザー光Lの縦線L1の上端部は、支保工5の頂部の継ぎ目5aに重なる。つまり、切羽面3に照射されたレーザー光Lの縦線L1が切羽面3のセンターライン上に配置される。
また、切羽面3に照射されたレーザー光Lの横線L2の左右の端部は、支保工5の左右の継ぎ目5b,5bに重なる。つまり、切羽面3に照射されたレーザー光Lの横線L2が切羽面3のスプリングライン上に配置される。
さらに、トンネル2の頂面および底面に照射されたレーザー光Lは、切羽面3に対して垂直に延びている状態となる。
【0023】
[相対位置確認工程]
レーザー光Lが切羽面3のセンターライン上およびスプリングライン上に配置されるとともに、トンネル2の頂面および底面に照射されたレーザー光Lが切羽面3に対して垂直に延びていることを、作業者が視認することで、トンネル2の幅員方向の中央部において、照射装置30が切羽面3に対して垂直方向に正対し、さらに、照射装置30が水平であることを確認できる。このとき、測距装置40もトンネル2の幅員方向の中央部において、切羽面3に対して垂直方向に正対し、水平であることになる。
このように、切羽面3上のレーザー光Lの位置と、切羽面3上に設定された基準点(継ぎ目5a,5b)との位置関係に基づいて、切羽面3に対する測距装置40の相対位置を確認する。
【0024】
[位置調整工程]
図5は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した図で、測距装置が切羽面の中央部から幅員方向にずれている状態の斜視図である。図6は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した図で、測距装置が切羽面に対して斜めに対峙している状態(ヨーイングしている状態)の斜視図である。
図5に示すように、切羽面3に照射されたレーザー光Lの縦線L1が、支保工5の頂部の継ぎ目5aに対して幅員方向にずれている場合(すなわち、トンネル縦断面(切羽面3のセンターラインを通る鉛直面)に対して幅員方向にずれている場合)には、照射装置30および測距装置40が切羽面3の幅員方向の中央部から幅員方向にずれていることになる。
また、図6に示すように、レーザー光Lの縦線L1の上端部は支保工5の頂部の継ぎ目5aに配置されているが、切羽面3上のレーザー光Lの縦線L1が、支保工5の頂部の継ぎ目5aに対して幅員方向にずれている場合には、照射装置30および測距装置40が切羽面3に対して斜めに対峙(すなわち、照射装置30の設置面に垂直な面であってレーザー光Lの光軸を含む面がトンネル縦断面に斜交)していることになる。この状態では、トンネル2の頂面および底面に照射されたレーザー光Lが切羽面3に対して斜めに延びることになる。
照射装置30および測距装置40が、トンネル2の幅員方向の中央部に位置していない場合、および、切羽面3に対して垂直方向に正対していない場合には、コンクリート吹付け装置1を移動させて、図1に示すように、照射装置30および測距装置40を、トンネル2の幅員方向の中央部において、切羽面3に対して垂直方向に正対させる。
【0025】
図7は、本発明の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した図で、測距装置がトンネル軸線に平行な軸回りに回転している状態(ローリングしている状態)の斜視図である。
図7に示すように、レーザー光Lの縦線L1が切羽面3のセンターラインに対して傾斜するとともに、レーザー光Lの横線L2がスプリングラインに対して傾斜している場合には、照射装置30および測距装置40が水平面に対して前後方向の軸回りに傾斜していることになる。
このように、照射装置30および測距装置40がトンネル軸線に平行な軸回りに回転している場合(ローリングしている場合)には、傾斜計60(図2参照)によって、照射装置30および測距装置40の傾斜角度を測定する。なお、図示は省略するが、照射装置30および測距装置40がトンネル軸線に平行な軸に直交する水平軸回りに回転している場合(ピッチングしている場合)にも、傾斜計60(図2参照)によって、照射装置30および測距装置40の傾斜角度を測定する。
【0026】
[第一測距工程]
図2に示す保護箱50の扉52を移動させて、図3に示すように、開口部51を開口させる。そして、開口部51を通じて測距装置40から切羽面3(図1参照)までの距離を測定する。
[吹付け工程]
図1に示すように、測距装置40から切羽面3までの距離を測定した後に、ノズル装置20のノズル22から切羽面3に対してコンクリート材を噴出して、切羽面3にコンクリート材を吹き付ける。
[第二測距工程]
切羽面3にコンクリート材を吹き付けた後に、再度、測距装置40から切羽面3までの距離を測定する。
【0027】
[吹付け厚さ算出工程]
図4に示す厚さ算出手段70では、コンクリート材の吹付け作業の前後において、測距装置40によって測定された切羽面3までの距離の差に基づいて、切羽面3におけるコンクリート材の吹付け厚さを算出し、切羽面3の画像上に作成したメッシュのマス目ごとに吹付け厚さを色分けで表示した吹付け厚さデータ作成する。
そして、表示手段80では、厚さ算出手段70から出力された吹付け厚さデータを表示する。なお、図7に示すように、測距装置40がローリングまたはピッチングしている場合には、測距装置40の傾斜角度(傾斜計60の計測値)に基づいて、吹付け厚さデータを補正することで、表示手段80にコンクリート材の吹付け厚さを精度良く表示できる。
【0028】
以上のようなコンクリート吹付け装置1およびコンクリート吹付け方法では、図1に示すように、切羽面3上およびトンネル2の頂面および底面のレーザー光Lと、切羽面3に設定した基準点(継ぎ目5a,5b)との差異に基づいて、切羽面3に対する測距装置40の相対位置を確認できる。
これにより、トンネル2の幅員方向において、測距装置40が切羽面3に対して垂直方向に正対するように、コンクリート吹付け装置1を移動させて、3Dスキャナーである測距装置40を用いて切羽面3までの距離を測定できるため、切羽面3におけるコンクリート材の吹付け厚さを精度良く検出できる。
そして、図4に示す表示手段80において、切羽面3の画像上に作成したメッシュのマス目ごとに吹付け厚さを表示し、吹付け厚さが不足している領域に対してコンクリート材を吹付けることで、切羽面3におけるコンクリート材の吹付け厚さを均一に施工できる。
【0029】
本実施形態のコンクリート吹付け装置1では、図2に示すように、測距装置40および傾斜計60は保護箱50内に収容されているため、トンネル2(図1参照)内の粉塵、水沫、飛石や結露から測距装置40および傾斜計60を保護できる。また、保護箱50はアルミニウム材によって放熱手段を有しているため、測距装置40の温度を抑えて、測定精度を保つことができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
図8は、本発明の他の実施形態に係るコンクリート吹付け装置を示した斜視図である。
本実施形態のコンクリート吹付け装置1では、図1に示すように、照射装置30から縦横に直交させた十字形状のレーザー光Lを切羽面3上およびトンネル2の頂面および底面に照射しているが、縦線のみの直線状のレーザー光を照射してもよい。また、図8に示すように、切羽面3上およびトンネル2の頂面および底面に縦方向に並ぶ複数の点状のレーザー光Lを照射してもよい。
本実施形態のコンクリート吹付け装置1では、図1に示すように、照射装置30が切羽面3に向けてレーザー光Lを照射しているが、照射装置30から切羽面3に向けて照射する光の光源は限定されるものではない。
本実施形態のコンクリート吹付け装置1では、測距装置40が3Dスキャナーであるが、切羽面3までの距離を測定する手段は限定されるものではなく、各種の測距手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 コンクリート吹付け装置
2 トンネル
3 切羽面
5 支保工
5a 継ぎ目
5b 継ぎ目
6 鉄骨
10 台車
20 ノズル装置
21 ノズルブーム
22 ノズル
30 照射装置
40 測距装置
50 保護箱
51 開口部
52 扉
53 横レール
54 シリンダ装置
60 傾斜計
70 吹付け厚さ算出手段
80 表示手段
L レーザー光
L1 縦線
L2 横線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8