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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146136
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20241004BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20241004BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60N2/58
B68G7/05 A
A47C31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058867
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 修一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】表皮材を容易に取り付けることが可能な乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シートSは、乗員を支持する支持部材16と、支持部材16の上に配置されたパッド部材30と、パッド部材30を覆い、表皮材31と、を備え、前記表材は、端部に支持部材16と係合する係合部32を有し、支持部材16は、表皮材31の係合部32と係合する被係合部40と、被係合部40に向かうように係合部32を案内する係合案内部41と、を有する。係合案内部41により係合部32を案内して係合部32を被係合部40に係合させることができるので、表皮材31の取り付けが容易になる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を支持する支持部材と、
該支持部材の上に配置されたパッド部材と、
該パッド部材を覆う表皮材と、を備え、
前記表皮材は、端部に前記支持部材と係合する係合部を有し、
前記支持部材は、前記表皮材の前記係合部と係合する被係合部と、前記係合部を前記被係合部に向かうように案内する係合案内部と、を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記係合案内部は、前記被係合部に向けて延びる誘い込み部材と、
前記係合部が前記被係合部と係合する係合方向において、前記誘い込み部材より奥側に配置されるストッパと、を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記誘い込み部材は、前記係合方向に対する垂直方向の距離が奥側に行くほど大きくなるように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ストッパは、前記係合方向において前記誘い込み部材の奥側の端部と当接して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ストッパの高さは、前記係合部の厚みより大きいことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記誘い込み部材の高さは、前記係合部の厚みより大きいことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記被係合部と前記係合案内部は、前記支持部材の外周部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記被係合部と前記係合案内部は、前記支持部材の後方端部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記支持部材は、底部の端部から斜め上方に延びる斜面部を有し、
前記被係合部と前記係合案内部は、前記斜面部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記被係合部の幅は、前記係合部の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記ストッパの延在方向に対する前記誘い込み部材の延在方向の傾斜角度は70度であることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、フレーム等に係合する表皮を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗物に設置される車両用シートは、フレームに配されるパッドを被覆して、フレームに固定される表皮を備えている。表皮の端部には複数のフック片(トリムコード)が縫着されていて、複数のフック片をフレーム等に掛けることにより表皮を固定していた(例えば、特許文献1参照)。
そして、シートクッションに表皮を取り付ける場合、例えば受圧部材の下面中央に設けられた引掛部にフック片を掛けるため、一旦、シート全体を前方に倒し、シートクッションの底面にある受圧部材を作業員から見える状態として、表皮の取り付けを実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-206522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートクッションに表皮を取り付ける際、シート全体を一旦倒さないと組付作業ができないことから、工数が増加し、要員の編成が困難であった。そのため、乗物用シートを製造する際、シートを倒すことなく表皮を取り付ける手段が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば製造段階において乗物用シートを倒すことなく、表皮を容易に取り付けることが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、乗員を支持する支持部材と、該支持部材の上に配置されたパッド部材と、該パッド部材を覆う表皮材と、を備え、前記表皮材は、端部に前記支持部材と係合する係合部を有し、前記支持部材は、前記表皮材の前記係合部と係合する被係合部と、前記係合部を、前記被係合部に向かうように案内する係合案内部と、を有することにより解決される。
【0007】
係合部を被係合部に向かうように案内する係合案内部を有することで、作業者は触感だけで係合部を被係合部に係合させることができ、容易に表皮を取り付けることができる。そのため、組立時において乗物用シートを倒すことなく表皮を支持部材に取り付けることが可能になる。
【0008】
また、上記の構成において、前記係合案内部は、前記被係合部に向けて延びる誘い込み部材と、前記係合部が前記被係合部と係合する係合方向において、前記誘い込み部材より奥側に配置されるストッパと、を有するとよい。
係合部を被係合部に取り付ける際、ストッパに接触してから、誘い込み部材に沿わせることで、係合部が被係合部に向かうようになり、係合部を係合させやすくなる。目視作業の必要がなくなり、生産性が向上する。
【0009】
また、上記の構成において、前記誘い込み部材は、前記係合方向に対する垂直方向の距離が奥側に行くほど大きくなるように傾斜して配置されているとよい。
係合部が誘い込み部材によって誘導されるため、被係合部により係合させやすくなり、生産性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、上記の構成において、前記ストッパは、前記係合方向において前記誘い込み部材の奥側の端部と当接して配置されているとよい。
ストッパと誘い込み部材とが当接することで、取り付ける際、確実に係合部をストッパに当接させることができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記ストッパの高さは、前記係合部の厚みより大きいとよい。
ストッパの高さを係合部の厚みより大きくすることで、取り付ける際、より確実に係合部をストッパに当接させることができる。
【0012】
また、上記の構成において、前記誘い込み部材の高さは、前記係合部の厚みより大きいとよい。
誘い込み部材の高さを係合部の厚みより大きくすることで、取り付ける際、より確実に係合部を被係合部に案内することができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記被係合部と前記係合案内部は、前記支持部材の外周部に配置されているとよい。
被係合部を、支持部材の外周部に配置することで、係合部の取付が容易になり、シートを倒す必要がなく、生産性が向上する。
【0014】
また、上記の構成において、前記被係合部と前記係合案内部は、前記支持部材の後方端部に配置されているとよい。
被係合部を、支持部材の後方端部に配置することで、係合部の取付が容易になり、シートを倒す必要がなく、生産性が向上する。
【0015】
また、上記の構成において、前記支持部材は、底部の端部から斜め上方に延びる斜面部を有し、前記被係合部は、前記斜面部に配置されているとよい。
支持部材の斜面部に被係合部を配置することで、係合部の取付が容易になり、シートを倒す必要がなく、生産性が向上する。
【0016】
また、上記の構成において、前記被係合部の幅は、前記係合部の幅より大きいとよい。
被係合部の幅を、係合部の幅より大きくすることで、係合部を係合させやすくなり、生産性が向上する。
【0017】
また、上記の構成において、前記ストッパの延在方向に対する前記誘い込み部材の延在方向の傾斜角度は70度であるとよい。
傾斜角度を70度とすることで係合部を誘導しやすくなり、生産性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乗物用シートによれば、係合部を被係合部に向かうように案内する係合案内部を有することで、作業者は触感だけで係合部を被係合部に係合させることができ、容易に表皮を取り付けることができる。そのため、組立時において、乗物用シートを倒すことなく表皮を支持部材に取り付けることが可能になる。
また、係合部を被係合部に取り付ける際、ストッパに接触してから、誘い込み部材に沿わせることで、係合部が被係合部に向かうようになり、係合部を係合させやすくなる。目視作業の必要がなくなり、生産性が向上する。
また、係合部が誘い込み部材によって誘導されるため、被係合部により係合させやすくなり、生産性をさらに向上させることができる。
また、ストッパと誘い込み部材とが当接することで、取り付ける際、確実に係合部をストッパに当接させることができる。
また、ストッパの高さを係合部の厚みより大きくすることで、取り付ける際、より確実に係合部をストッパに当接させることができる。
また、誘い込み部材の高さを係合部の厚みより大きくすることで、取り付ける際、より確実に係合部を被係合部に案内することができる。
また、被係合部を、支持部材の外周部に配置することで、係合部の取付が容易になり、シートを倒す必要がなく、生産性が向上する。
また、被係合部を、支持部材の後方端部に配置することで、係合部の取付が容易になり、シートを倒す必要がなく、生産性が向上する。
また、支持部材の斜面部に被係合部を配置することで、係合部の取付が容易になり、シートを倒す必要がなく、生産性が向上する。
また、被係合部の幅を、係合部の幅より大きくすることで、係合部を係合させやすくなり、生産性が向上する。
また、傾斜角度を70度とすることで係合部を誘導しやすくなり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る乗物用シートを後方から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る乗物用シートのフレームを示す斜視図である。
図3図1のA-A線に沿ったシートクッションの断面図である。
図4】受圧部材の下面図であり、被係合部及び係合案内部の位置を示す図である。
図5図4の部分Bを拡大して示す図で係合案内部を示す図である。
図6図5のC-C線に沿った断面図である
図7A】係合案内部の別例を示す図である。
図7B】係合案内部の別例を示す図である。
図8図3の部分Eを拡大して示す断面図であり、パンフレームに設けられた被係合部及び係合案内部を示す図である。
図9】被係合部及び係合案内部が別の受圧部材に配置された例を示す図である。
図10】被係合部及び係合案内部が別の受圧部材に配置された例を示す図である。
図11】被係合部及び係合案内部が別の受圧部材に配置された例を示す図である。
図12】被係合部及び係合案内部がパンフレームに配置された例を示す図であり、前面側から表皮を取り付ける別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0021】
なお、以下では、乗物用シートの一例として自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、車両用シートに限定されるものではなく、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0022】
また、以下の説明において、「シート前後方向」とは、乗物用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、乗物用シートの幅方向であり、乗物用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、乗物用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、以下の説明において、「シート幅方向」、「シート高さ方向」のように各種方向に「シート」を付して記載する場合には、乗物用シートに対する方向を示し、「車両内側」、「車両外側」のように「車両」を付して記載する場合には、車両に対する方向を示すものとする。
また、以下に説明する乗物用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、乗物用シートが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<乗物用シートSの基本構成>
本実施形態に係る乗物用シート(以下、乗物用シートS)の基本構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は乗物用シートSを斜め後方から見た斜視図であり、図2は、乗物用シートSのフレームFを示す斜視図である。図1中、乗物用シートSの一部については図示の都合上、表皮材21,31を外した構成で図示している。
【0024】
乗物用シートSは、車体フロアFL上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、乗物用シートSは、車両の前部座席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、乗物用シートSは、車両のリアシートであってもよく、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシート又は三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0025】
乗物用シートSは、図1に示すように、着座する乗員(以下、着座者と呼ぶ場合がある)の臀部を支える着座部分となるシートクッション1、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック2、及び、シートバック2の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートクッション1とシートバック2とはリクライニング装置6を挟んで連結されている。また、シートクッション1の下部にはレール装置4が設けられており、このレール装置4により、乗物用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアFLに固定されている。
【0026】
乗物用シートSの中には、図2に示すフレームFが設けられている。フレームFは、主にクッションフレーム10とバックフレーム20とにより構成される。クッションフレーム10は、フレームFにおけるシートクッション1の骨格をなし、バックフレーム20は、フレームFにおけるシートバック2の骨格をなしている。
【0027】
フレームFのクッションフレーム10は、図2に示すように、略方形枠状の外形形状をなす。そして、クッションフレーム10は、シート幅方向左右の端部をそれぞれ構成する一対のクッションサイドフレーム12,12と、クッションフレーム10の前端部を構成するパンフレーム15と、受圧部材16を主たる構成要素としている。
【0028】
一対のクッションサイドフレーム12,12は、クッションフレーム10の幅を規定するため、左右方向に離間して、車両の前後方向に延びるように配置されている。そして、2本のクッションサイドフレーム12,12を連結するフロントパイプ13が前端部に、リアパイプ14が後端部に取り付けられている。
【0029】
パンフレーム15は、一対のクッションサイドフレーム12,12の前方側において固着接合されている。より詳細には、パンフレーム15の左右方向の端部は、それぞれ、溶接などの固定手段によりクッションサイドフレーム12,12に設けられたフランジに固定される。
パンフレーム15は、主として着座者(乗員)の大腿部を支持するためのものであり、その上面がほぼ平坦な略矩形形状に形成された金属製の板材から形成されるフレームである。パンフレーム15は、本発明の支持部材に相当する。
【0030】
左右のクッションサイドフレーム12,12の間には、受圧部材16が設けられている。この受圧部材16は、板状に形成される樹脂製の受圧板17と、受圧板17の下面に設けられ、シート前後方向に延びる複数のワイヤ18とから構成されている。ワイヤ18の前端部がフロントパイプ13に固定され、後端部がリアパイプ14に留められている。ワイヤ18は、後述するようにSバネ19a~19cで構成されてもよい。また、受圧部材16には、表皮材31の端部に取り付けられたトリムコード33を取り付けるための被係合部40が複数形成されている。被係合部40の構成については、後程詳述する。
受圧部材16は、下面部16cと、下面部16cから斜め上方に向けて傾斜して延びる斜面部16dが設けられている。
【0031】
<バックフレーム20>
バックフレーム20は、主に、方形枠状に加工されたパイプからなり、図2に示すように、バックフレーム20は、逆さU字形のアッパフレーム23と、シート幅方向左右の端部をなす一対のバックサイドフレーム24,24と、一対のバックサイドフレーム24,24の下端部を連結するロアフレーム25と、を備える。
【0032】
また、バックフレーム20には、バックフレーム20に懸架された受圧プレート26が設けられていて、受圧プレート26を懸架するための懸架フレーム27がアッパフレーム23の下端に渡るよう設けられている。アッパフレーム23の上端中央部には、筒型状のヘッドレストガイド29が取り付けられている。このヘッドレストガイド29に、ヘッドレスト3の下端から延びるヘッドレストピラー(不図示)が挿入されることで、ヘッドレスト3がシートバック2に取り付けられる。
【0033】
シートクッション1は、その後端部がシートバック2の下端部に連結されている。また、シートクッション1は、クッションフレーム10に、クッションパッド32を配し、さらにクッションパッド32をクッション用の表皮材31により覆うことで構成される。シートバック2は、バックフレーム20に、バックパッド22を配し、さらにバックパッド22をシートバック用の表皮材21により覆うことで構成される。
【0034】
クッションフレーム10及びバックフレーム20を構成する各部材の構成材料としては、荷重を受けたときに大きく変形しないよう十分な剛性をもつ材料、例えば、鋼材やアルミニウム合金等の金属材料が挙げられる。クッションフレーム10及びバックフレーム20を構成する各部材同士の接合手段は溶接であるが、接合手段としては、ボルト、接着剤による接合を併用してもよい。
【0035】
バックパッド22及びクッションパッド32は、例えばウレタン発泡剤を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。バックパッド22及びクッションパッド32及びは、本発明のパッド部材に相当する。また、クッション用の表皮材31及びバック用の表皮材21は、本発明の表皮材に相当し、布、フィルム、クロス、革やシート等により構成される。また、表皮材21,31は、所定のテンションが掛かるように張られた状態でクッションパッド32、バックパッド22を覆うよう取り付けられる。
本実施形態においてクッション用の表皮材31をクッションパッド32に覆う際には、表皮材31の端部を所定箇所に取り付けることになる。以下では、表皮材31を受圧部材16等に取り付ける構成について説明する。
【0036】
次に、クッション用の表皮材31を取り付ける係合部及び被係合部の構成について、図3から図8を参照しながら説明する。図3は、図1のA-A線に沿ったシートクッション1の断面図である。図4は、受圧部材16の下面図であり、被係合部40及び係合案内部41の位置を示す図である。図5は、図4の部分Bを拡大して示す図で、被係合部40にトリムコード33を取り付けた状態を示している。図6は、図5のC-C線に沿った断面図である。図7A及び図7Bは係合案内部41の別例を示す図であり、図8は、図3の部分Eを拡大して示す断面図で、パンフレーム15に設けられた被係合部50及び係合案内部51を示す図である。
【0037】
表皮材31は、シートクッション1のクッションパッド32を覆う部材である。表皮材31が、受圧部材16及びパンフレーム15等に固定されることにより、クッションパッド32を覆った状態で取り付けられる。
図3に示すように、表皮材31の後端に設けられたトリムコード33が、受圧部材16の後端に設けられた被係合部40と係合し固定される。また、表皮材31の前端に設けられたトリムコード33が、パンフレーム15の前端に設けられた被係合部50と係合し、固定される。
【0038】
トリムコード33は、断面がフック状に形成された樹脂製の部材であり、縫製により表皮材31に固定される。トリムコード33は、本発明の係合部に相当する。トリムコード33は、表皮材31の端部において、受圧部材16等の被係合部40と対応して、係合可能な位置に複数設けられている。
トリムコード33の鍵状部の先端32aは、図6に示すように被係合部40を挿入しやすいように傾斜しており、鉤状部の開口部を開くことにより引掛けやすくしている。
トリムコード33は硬質合成樹脂、例えばポリプロピレン樹脂又は塩化ビニル樹脂により形成されている。トリムコード33は鉄又はアルミニウム等の金属製であってもよい。また、トリムコード33の厚みTは、1~8mmであることが好ましく、1.5~5mmであることがより好ましい。
【0039】
被係合部40は、トリムコード33が係合する部分であり、受圧部材16の外周端部に配置される。より具体的に述べると、被係合部40は、トリムコード33が挿入される挿入孔40aと、挿入孔40aにより形成された受圧板17の端部40bにより構成される。端部40bにトリムコード33を掛けることにより、表皮材31を受圧部材16に固定することができる。本実施形態において、端部40bは受圧板17の一部であるが、これに限定されず、例えば被係合部40を、挿入孔40aを形成することで露出したワイヤであってもよい。
なお、図5に示すように、被係合部40の幅W1、すなわち係合方向Gに対して直交する方向の長さは、トリムコード33の幅W2よりも大きいとよい。被係合部40の幅W1をトリムコード33の幅W2より大きくすることで、トリムコード33を被係合部40に掛けやすくなり生産性が向上する。
【0040】
<係合案内部41>
受圧部材16の後端部には、被係合部40に近接して、トリムコード33を被係合部40に向かうように案内する係合案内部41が設けられている。
【0041】
従来の乗物用シートは、組立中において、シートクッションにトリムコードを取り付ける場合、受圧部材を直接見ることができず、一旦、乗物用シート全体を倒し、受圧部材を視認できるようにしてからトリムコードを取り付け、元の状態に戻していた。乗物用シートを倒したり起こしたりする工程が必要であるため、生産性が低下するという課題があった。
【0042】
本実施形態の乗物用シートSでは、受圧部材16の後端部に係合案内部41を設けることで、トリムコード33が被係合部40に案内されるため、受圧部材16が直接見えなくても、作業員はトリムコード33を被係合部40に取り付けることができる。すなわち、表皮材31を取り付けるために、乗物用シートSを倒したり起こしたりする必要がなく、従来必要であった工程を削減できるため、生産性を向上させることができる。また、従来の取付位置より後方に被係合部40の位置を変更することで、表皮材31を短くすることができ、不織布等が減少するためコストを削減することができる。
【0043】
係合案内部41の構造について、より詳細に説明する。係合案内部41は、一か所の被係合部40に向けて延びる誘いリブ42と、トリムコード33が被係合部40と係合する係合方向(図4図5の矢印G方向)において、誘いリブ42より奥側に配置される壁リブ43とから構成されている。言い換えれば、壁リブ43は、シート前後方向において誘いリブ42より前方に配置されている。誘いリブ42は、本発明の誘い込み部材に相当し、壁リブ43は本発明のストッパに相当する。誘いリブ42及び壁リブ43は、図6に示すように受圧板17の底面から立設する壁部として形成されている。
【0044】
図5に示すように、一か所の被係合部40に対し、一対の誘いリブ42が係合案内部41の両側に設けられている。誘いリブ42のそれぞれは係合方向Gに対して傾斜しており、全体としてハの字状になるように配置されている。言い換えれば、一対の誘いリブ42は、係合方向Gに対する垂直方向の距離が奥側に行くほど大きくなるように、係合方向Gに対して配置されている。このように誘いリブ42を設けることで、一対の誘いリブ42の間に挿入されたトリムコード33の移動方向が規制され、トリムコード33が被係合部40に案内されることで引掛けることが容易にできるようになる。
なお、壁リブ43の延在方向に対する誘いリブ42の延在方向の傾斜角度αは60度から80度の間がよく、好ましくは70度であるのがよい。傾斜角度αをこのような角度とすることで、トリムコード33を誘導しやすくなり、生産性が向上する。
【0045】
また、壁リブ43を誘いリブ42よりも奥側に配置することで、トリムコード33を取り付ける際、トリムコード33が壁リブ43に当接し、作業員は被係合部40が壁リブ43よりも手前側にあることが触感で分かる。そのため、作業員は被係合部40の位置を目視できなくてもトリムコード33を被係合部40に取り付けることができる。
【0046】
また、壁リブ43は、係合方向Gにおいて、誘いリブ42の奥側端部42aと当接して配置されている。また、壁リブ43の高さH1は、トリムコード33の厚みTより大きくなるように形成されている。壁リブ43をこのような配置、大きさにすることで、取り付ける際、壁リブ43にトリムコード33を確実に当接させることができる。
【0047】
また、誘いリブ42の高さH2も、トリムコード33の厚みTより大きくなるように形成されている。トリムコード33の厚みTより大きくすることで、取り付ける際、より確実にトリムコード33を被係合部40に案内することができる。
【0048】
被係合部40及び係合案内部41は、受圧部材16の外周部16aに配置されているとよい。特に、図4に示すように、受圧部材16の後方端部16b、より詳細には、受圧部材16の斜面部16dに配置されているのがよい。
また、図示しないが、被係合部40及び係合案内部41は、受圧部材16の前方端部、側方端部に配置されてもよい。トリムコード33の取付が容易になり、表皮材31の取り付けのために乗物用シートSを倒す必要がなく、生産性が向上する。
【0049】
係合案内部41の別例について図7A及び図7Bを用いて説明する。図7Aに示す係合案内部41Aは、壁リブ43の代わりに、受圧板17の一部を切り起した傾斜部44を設けている。傾斜部44は、本発明のストッパに相当する。傾斜部44にトリムコード33を当接させることにより、触感で傾斜部44より手前に被係合部40があることが分かり、目視しなくてもトリムコード33を被係合部40に引掛けることができる。
【0050】
また、図7Bに示す、係合案内部41Bは、被係合部40との間に段差45を設けている。段差45を設けることで、手前側に被係合部40があることが触感で分かり、目視しなくても、トリムコード33を被係合部40に係合させることができる。
【0051】
<パンフレーム15の被係合部50>
被係合部及び係合案内部は、受圧部材16だけでなく、図8に示す被係合部50及び係合案内部51のように、パンフレーム15の下面に設けられてもよい。シート前方から挿入した表皮材31のトリムコード33を、パンフレーム15の取付ブラケット15aに形成された係合案内部51の傾斜部54に当接させた後、被係合部50にトリムコード33を掛けることで、触感により表皮材31を取り付けることができる。
【0052】
なお、図8に示すようにパンフレーム15の上に、エアバッグ60が取り付けられてもよい。エアバッグ60をパンフレーム15の上に載置することで、エアバッグ60を保護することができる。
【0053】
図3から図7Bに示す、被係合部40及び係合案内部41は、受圧板17とワイヤ18からなる受圧部材16に設けられていたが、受圧部材16はこれに限らず、図9から図12に示すように、Sバネ19a~19cで構成された受圧部材16A~16Cに設けられてもよい。なお、図9図12に示す実施例において、図1から図8に示す実施形態と同じ構成については同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0054】
図9に示す受圧部材16Aは、4つのSバネ19a,19bからなり、中央にはシート表面から空気を送出又は吸引するエアベンチレーションシステム(AVS61)が配置されている。Sバネ19aとSバネ19bとは、突出部又は凹部の突出する方向が異なるだけで他の構成は同様である。
図9に示すように、被係合部40及び係合案内部41は、受圧部材16Aの後端に配置される受圧板17Aに設けられている。この場合、被係合部40及び係合案内部41は、シート前後方向においてAVS61と重なる位置に配置されてよい。このように配置することで、例えば受圧部材16Aの大型化を抑制することができる。
【0055】
また、図9に示すように、Sバネ19a、19bの突出部分が同じ方向(図9の例では外側)突出している箇所に、受圧板171Aを設け、被係合部40及び係合案内部41を受圧板171Aに配置してもよい。同じ方向に突出するSバネ19a、19bの箇所に、被係合部40及び係合案内部41を設けることで、取付剛性を向上させることができる。
【0056】
また、図10に示す受圧部材16Bは、四つのSバネ19a、19bからなり、中央にAVS61が配置されている。図9の受圧部材16Aと比較して、左右に配置されたSバネ19a、19bの突出方向が対向していることが異なっている。
また、被係合部40及び係合案内部41が、受圧部材16Bの後端に配置される受圧板17Bに設けられているが、図10に示すように、シート前後方向において被係合部40及び係合案内部41はAVS61と重ならない位置に配置されている。このように配置することで、AVS61との距離が離れるため干渉することが抑制される。また、例えば前後方向のコンパクト化に寄与することができる。
【0057】
また、Sバネ19a、19bの突出方向が互いに対向し、最も近づいている箇所に受圧板171Bを設け、被係合部40及び係合案内部41を設けてもよい。このように配置することで、例えば、乗物用シートSのコンパクト化に寄与することができる。
【0058】
また、図11に示すように、受圧部材16Cがシート幅方向に延びるSバネ19cから構成される場合がある。Sバネ19cの端部は、例えば左右のクッションサイドフレーム12,12に固定される。このような受圧部材16Cにおいては、Sバネ19cの突出方向が同じ方向に向いている位置に、受圧板171Cを設け、被係合部40及び係合案内部41を設けてもよい。このように配置することで、例えば取付剛性を向上させることができる。また、図11に示すように、Sバネ19cの一部に、シート前方から延びる表皮材31のトリムコード33を係合させてもよい。
図12に示すように、エアバッグ60がパンフレーム15の上に配置されている場合、表皮材31によりエアバッグ60を保護することができる。
【符号の説明】
【0059】
S 乗物用シート
F フレーム
FL 車体フロア
1 シートクッション
2 シートバック
3 ヘッドレスト
4 レール装置
6 リクライニング装置
10 クッションフレーム(フレーム)
12 クッションサイドフレーム
13 フロントパイプ
14 リアパイプ
15 パンフレーム
15a 取付ブラケット
16、16A、16B、16C 受圧部材(支持部材)
16a 外周部
16b 後方端部
16c 下面部
16d 斜面部
17、17A、17B 受圧板
171A、171B、171C 受圧板
18 ワイヤ
19a、19b、19c Sバネ
20 バックフレーム(フレーム)
21 表皮材(シートバック用)
22 バックパッド(パッド部材)
23 アッパフレーム
24 バックサイドフレーム
25 ロアフレーム
26 受圧プレート
27 懸架フレーム
31 表皮材(シートクッション用)
32 クッションパッド(パッド部材)
33 トリムコード(係合部)
33a 端部
40 被係合部
40a 挿入孔
41 係合案内部
42 誘いリブ(誘い込み部材)
42a 奥側端部
43 壁リブ(ストッパ)
44 傾斜部(ストッパ)
50 被係合部(パンフレーム用)
51 係合案内部(パンフレーム用)
54 傾斜部(ストッパ)
60 エアバッグ
61 AVS
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12