(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146140
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧部材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241004BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20241004BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241004BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 E
B32B27/40
B32B7/022
B32B7/12
B32B27/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058871
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真友子
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】木下 一喜
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK03D
4F100AK15B
4F100AK22B
4F100AK25B
4F100AK25E
4F100AK51B
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA02E
4F100CA05E
4F100CA07E
4F100CA13B
4F100CB00C
4F100EJ65
4F100GB07
4F100HB01B
4F100HB31B
4F100JB16C
4F100JB16D
4F100JK02
4F100JK07
4F100JK08
4F100JK09
4F100JL10A
4F100JL11C
4F100JN01C
4F100JN01D
(57)【要約】
【課題】加工適正を向上させることが可能な、化粧シート及び化粧部材を提供する。
【解決手段】化粧部材100が、化粧シート1と基板20を備え、化粧シート1が、着色したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層2と、基材層2の一方の面に積層された絵柄層4と、絵柄層4の一方の面に積層され、且つ透明な接着層である透明接着層8と、透明接着層8の一方の面に積層され、且つ透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された透明樹脂層10と、透明樹脂層10の一方の面に積層された表面保護層12を備え、絵柄層4はウレタン樹脂を含有し、弾性率が100Mpa以上1000Mpa以下の範囲内であり、降伏点強度が5Mpa以上50Mpa以下の範囲内であり、降伏点伸度が1%以上30%以下の範囲内であり、破断伸度が100%以上1500%以下の範囲内である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層と、
前記基材層の一方の面に積層された絵柄層と、
前記絵柄層の一方の面に積層され、且つ透明な接着層である透明接着層と、
前記透明接着層の一方の面に積層され、且つ透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された透明樹脂層と、
前記透明樹脂層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シートであって、
前記絵柄層は、ウレタン樹脂を含有し、
弾性率が100Mpa以上1000Mpa以下の範囲内であり、
降伏点強度が5Mpa以上50Mpa以下の範囲内であり、
降伏点伸度が1%以上30%以下の範囲内であり、
破断伸度が100%以上1500%以下の範囲内である化粧シート。
【請求項2】
前記透明接着層は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成されている請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記基材層の他方の面に積層したプライマー層をさらに備え、
前記プライマー層は、ウレタン樹脂を含有している請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記絵柄層と前記透明接着層との間に形成されたアンカー層をさらに備え、
前記アンカー層は、ウレタン樹脂を含有している請求項1に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層は、トリアジン系の紫外線吸収剤と、光安定剤と、を含む請求項1に記載した化粧シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、前記基材層の他方の面の側に配置された基板と、を備える化粧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、外装用の建材として用いられる化粧シート及び化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートに関する技術としては、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。
特許文献1に開示されている技術では、化粧シートが、熱可塑性樹脂によりシート状に形成された印刷原反と、印刷原反の表面上に形成された絵柄印刷層を備える。これに加え、化粧シートが、絵柄印刷層を含む印刷原反の表面を、凹凸状に加工して形成された凹凸模様と、凹凸模様の表面を印刷原反と同等の樹脂によりラミネートするラミネート層を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、加工適正が低く、例えば、化粧シートを建材にラッピングする際に、化粧シートを用いてラッピングした部品の角部において、割れや白化等が発生するという問題点がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、加工適正を向上させることが可能な、化粧シート及び化粧部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材層と、絵柄層と、透明接着層と、透明樹脂層と、表面保護層を備える化粧シートである。基材層は、着色したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された層である。絵柄層は、基材層の一方の面に積層された層である。透明接着層は、絵柄層の一方の面に積層され、且つ透明な接着層である。透明樹脂層は、透明接着層の一方の面に積層され、且つ透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された層である。表面保護層は、透明樹脂層の一方の面に積層された層である。そして、絵柄層は、ウレタン樹脂を含有している。また、化粧シートは、弾性率が100Mpa以上1000Mpa以下の範囲内であり、降伏点強度が5Mpa以上50Mpa以下の範囲内であり、降伏点伸度が1%以上30%以下の範囲内であり、破断伸度が100%以上1500%以下の範囲内である。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、化粧シートと、基材層の他方の面の側に配置された基板を備える化粧部材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、加工適正を向上させることが可能な、化粧シート及び化粧部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第一実施形態の化粧シートを表す断面図である。
【
図2】第一実施形態の化粧部材を表す断面図である。
【
図3】第一実施形態の変形例における化粧シートを表す断面図である。
【
図4】第一実施形態の変形例における化粧部材を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本発明の第一実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
更に、以下に示す第一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(化粧シートの構成)
図1を用いて、化粧シート1の構成について説明する。
図1に表すように、化粧シート1は、基材層2と、絵柄層4と、アンカー層6と、透明接着層8と、透明樹脂層10と、表面保護層12と、プライマー層16を備える。
【0011】
基材層2の厚さと透明樹脂層10の厚さとの合計値は、例えば、90[μm]以上310[μm]以下の範囲内である。
これにより、基材層2の厚さと透明樹脂層10の厚さとの合計値が90[μm]未満である場合や、310[μm]を超える場合と比較して、遮熱性の低下を抑制することが可能となる。
第一実施形態では、一例として、基材層2の厚さと透明樹脂層10の厚さとの合計値を、120[μm]以上200[μm]以下の範囲内とした場合について説明する。
これにより、基材層2の厚さと透明樹脂層10の厚さとの合計値が120[μm]未満である場合や、200[μm]を超える場合と比較して、遮熱性の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
(基材層)
基材層2は、着色したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
着色したオレフィン系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン・エチレン共重合体を用いる。
【0013】
(絵柄層)
絵柄層4は、化粧シート1に絵柄を付与する層であり、基材層2の一方の面(
図1中では、上側の面)に積層されており、ウレタン樹脂を含有している。
絵柄層4が形成する絵柄模様の種類には、特に制約はなく、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等を単独で、又は、二種類以上を組み合わせて形成してもよい。
【0014】
また、絵柄層4は、例えば、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、酸化チタンのうち少なくとも一つの顔料を用いて形成されている。
なお、絵柄層4が含むバインダー樹脂は、特に限定するものではないが、密着性の良好な樹脂を用いることが好ましい。したがって、ポリ塩化ビニル樹脂と熱融着性を持つ樹脂、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂の単体、又は混合物等が好ましい。
【0015】
(アンカー層)
アンカー層6は、例えば、接着強度を発現させる目的で設けられる層であり、絵柄層4の一方の面(
図1中では、上側の面)に積層されている。
また、アンカー層6は、例えば、アクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系アンカー剤を用いて形成する。
アクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系アンカー剤としては、例えば、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートを含む二液硬化型ウレタン樹脂を用いることが可能である。
【0016】
二液硬化型ウレタン樹脂としては、アクリルポリオール系樹脂を主成分とする主剤100質量部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート化合物を3質量部以上10質量部以下の範囲内で添加したものが好適である。
なお、アクリル系の材料を用いてアンカー層6を形成することで、耐候性を向上させることが可能となる。
【0017】
アクリルポリオール系樹脂は、ガラス転移温度が95℃以上105℃以下の範囲内であるものが、密着性及び耐熱性の観点から好ましい。これは、ガラス転移温度が低すぎる場合には耐熱性が劣るため、温水に浸漬されることによりアンカー層6の内部にて樹脂に空隙が発生し、密着力が低下することに起因する。
また、アンカー層6には、化粧シート1の用途により、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等、各種の添加剤が少なくとも一種類、添加されていてもよい。
【0018】
(透明接着層)
透明接着層8は、アンカー層6の一方の面(
図1中では、上側の面)に積層されており、透明な接着層である。すなわち、アンカー層6は、絵柄層4と透明接着層8との間に形成されている。
第一実施形態では、一例として、透明接着層8が、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成されている場合について説明する。
【0019】
(透明樹脂層)
透明樹脂層10は、透明接着層8の一方の面(
図1中では、上側の面)に積層されている。
また、透明樹脂層10は、透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン・エチレン共重合体を用いる。
【0020】
(表面保護層)
表面保護層12は、化粧シート1に、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層であり、透明樹脂層10の一方の面(
図1中では、上側の面)に積層されている。
表面保護層12を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系等の樹脂材料から適宜選択して用いることが可能となる。なお、表面保護層12は、必要に応じて、例えば、熱安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。
また、表面保護層12は、トリアジン系の紫外線吸収剤と、光安定剤を含む。
【0021】
〈トリアジン系の紫外線吸収剤〉
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系を用いる。ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を用いることで、トリアジン骨格がブリードを抑制すること、また、トリアジン骨格がベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の骨格と比較して化学的に安定であること等により、長期に亘る紫外線吸収性能を保持することが可能となる。
【0022】
ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-(2ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-エチル-ヘキサノイックアシッド、2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、オクタノイックアシッド、2-[4-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシ-フェノキシ]-エチルエステル、2,4,6-トリス{2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)}-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0023】
第一実施形態においては、表面保護層12に、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(以下、便宜的に「紫外線吸収剤A」と称する)を含有させてもよい。なお、紫外線吸収剤Aとした、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジンは、「チヌビン479:BASFジャパン(株)製」の主成分として、一般に知られている。
【0024】
また、第一実施形態においては、上述したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の添加量を、アクリル系樹脂組成物100質量部に対して1質量部以上30質量部以下の範囲内とすることが好ましい。紫外線吸収剤の添加量を1質量部以上とすることで、耐候性を向上させる効果が発揮され、30質量部以下とすることで、表面保護層12の耐候性以外の物性への影響を、実用上問題が無いレベルに抑制することが可能となる。
【0025】
特に、表面保護層12に添加する紫外線吸収剤として、紫外線吸収剤Aを用いた場合には、紫外線吸収剤Aの添加量は、アクリル系樹脂組成物100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下の範囲内であることがより好ましく、8質量部以上12質量部以下の範囲内であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤Aの添加量を1質量部以上とすることで、耐候性を向上させる効果が発揮され、20質量部以下とすることで、表面保護層12の耐候性以外の物性への影響を実用上問題の無いレベルに抑制することが可能となる。
【0026】
また、第一実施形態においては、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤として、紫外線吸収剤Aと、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール(以下、便宜的に「紫外線吸収剤B」と称する)とを併用することで、更に優れた耐候性を付与することが可能となる。これは、紫外線吸収剤Bが、紫外線の中でも相対的に高エネルギーである短波長領域の紫外線吸収能力が高く、且つほぼ同等の波長領域を吸収する他の紫外線吸収剤と比較して化学的に安定なため、併用により紫外線を吸収する波長領域が広くなるためである。
なお、紫外線吸収剤Bとした、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールは、「アデカスタブLA-46:(株)ADEKA製」の主成分として一般に知られている。
【0027】
第一実施形態においては、紫外線吸収剤Aの添加量を、紫外線吸収剤Bの質量100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下の範囲内とすることが好ましく、20質量部以上100質量部以下の範囲内とすることがより好ましく、40質量部以上80質量部以下の範囲内とすることがさらに好ましい。紫外線吸収剤Aの添加量を上記数値範囲内とすることで、さらに優れた耐候性を付与することが可能となる。
【0028】
〈表面保護層の一例〉
以下、表面保護層12の構成の一例について、具体例を挙げて説明する。
表面保護層12は、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系樹脂組成物を主成分としてもよい。なお、シクロヘキシル(メタ)アクリレートとは、シクロヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートを意味する。シクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有させることで、水に対する親和性を低下させることが可能となり、加水分解等による劣化を抑制することが可能となる。
【0029】
シクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量としては、表面保護層12の主成分となるアクリル系樹脂組成物のモノマー成分のうち、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが5質量[%]以上50質量[%]以下の範囲内となることが望ましい。シクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量を5質量[%]以上とすることで、充分な劣化抑制効果を得ることが可能となる。また、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量を50質量[%]以下とすることで、表面硬度維持向上や耐汚染性向上や表面の艶調節という表面保護層12の性能を大きく変化させることなく、経時的な高い耐候性を付与することが可能になる。ここで、上述した「主成分」とは、表面保護層12を構成するアクリル系樹脂組成物の含有量が、表面保護層12全体の質量に対して、50質量[%]以上であることを意味する。
【0030】
表面保護層12に用いることが可能なアクリル系樹脂組成物のモノマー成分としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの他に、例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキサンモノ(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキサンモノ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内、異性体を含むものは、各異性体単独及び各異性体混合物のうち少なくとも一方としてもよい。
【0031】
また、表面保護層12は、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系樹脂組成物と、後述する紫外線吸収剤等の耐候剤とを含む塗液を、化粧シート1の最表面に塗工して形成してもよい。例えば、上述したアクリル系樹脂組成物と耐候剤とを含む塗液を、
図1に表す凹部14を備えた透明樹脂層10に塗工した後、ワイピングすることで、凹部14の内部へ塗液を埋め込んで表面保護層12を形成してもよい。
【0032】
表面保護層12を形成するための塗液の硬化方法としては、例えば、一液硬化タイプ、硬化剤を用いる二液硬化タイプ、又は紫外線や電離放射線等を照射して硬化する活性エネルギー線硬化タイプのいずれも使用することが可能である。特に、耐候性を考慮すると、二液硬化タイプ又は活性エネルギー線硬化タイプが好ましく、各種基材に貼り合わされて化粧部材となった後の後加工性を考慮すると、イソシアネート硬化によって架橋される二液硬化タイプが望ましい。
なお、化粧シート1の構成を、
図1に示すように、透明樹脂層10及び表面保護層12に凹部14を形成した構成とすることで、化粧シート1の最表面にエンボス意匠を施すことが可能となる。
【0033】
二液硬化タイプのアクリル系樹脂組成物としては、例えば、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基から選択した一種以上の官能基を一分子内に2個以上有するアクリル系樹脂と、その官能基と反応し得るイソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物とを含有する組成物が好ましい。特に好ましくは、水酸基を一分子内に2個以上有するアクリルポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを含有する組成物である。
【0034】
水酸基を一分子内に2個以上有するアクリルポリオールとしては、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレートに加えて、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が利用可能となる。一方、イソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びこれらの水添化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらから選ばれる1種類以上の化合物を公知の技術により合成した3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプ等が挙げられる。
【0035】
また、これらの異なるタイプのポリイソシアネートから選択した1種類以上を混合した組成物を使用することが可能となる。中でも、HDI、又はHDIの3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプが耐候性の観点からも好ましい。上述した樹脂成分に対するイソシアネート化合物の含有量は任意に設定可能であるが、水酸基/イソシアネート基の当量比が1/1~1/3程度となるように設定することが望ましい。特に水酸基の当量がイソシアネート基の当量よりも多くなると、架橋が充分に進まずに表面保護層12に所望の性能が付加されず、好ましくない場合がある。
【0036】
表面保護層12を形成するための塗液の硬化方法を活性エネルギー線硬化とする場合は、活性エネルギー線硬化タイプのアクリル系樹脂組成物として、公知の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマー等が使用可能である。そして、公知の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマーに加え、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレートを配合すれば良い。
【0037】
<プライマー層>
プライマー層16は、絵柄層2の他方の面(
図1では、下側の面)に積層して形成されており、接着を行う場合の下地処理を施した層である。
また、プライマー層16は、ウレタン樹脂を含有している。
具体的に、プライマー層16には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール、ポリイソシアネートのうちいずれかのウレタン樹脂を、バインダー樹脂として含有する。
【0038】
<化粧シートの弾性率、降伏点強度、降伏点伸度、破断伸度>
化粧シート1の弾性率は、100[Mpa]以上1000[Mpa]以下の範囲内である。
これは、弾性率が100[Mpa]未満であると、化粧シート1のコシ(例えば、低い剛性)が無くなり、化粧シート1の取り扱い易さが低下することに起因する。これに加え、降伏点強度が1000[Mpa]を超えると、化粧シート1の剛性が高くなりすぎ、加工時等に化粧シート1に損傷が発生しやすくなることに起因する。
【0039】
化粧シート1の降伏点強度は、5[Mpa]以上50[Mpa]以下の範囲内である。
これは、降伏点強度が5[Mpa]未満であると、化粧シート1のコシ(例えば、低い剛性)が無くなり、化粧シート1の取り扱い易さが低下することに起因する。これに加え、降伏点強度が50[Mpa]を超えると、化粧シート1の剛性が高くなりすぎ、加工時等に化粧シート1に損傷が発生しやすくなることに起因する。
【0040】
化粧シート1の降伏点伸度は、1[%]以上30[%]以下の範囲内である。
これは、降伏点伸度が1[%]未満であると、化粧シート1のコシ(例えば、低い剛性)が無くなり、化粧シート1の取り扱い易さが低下することに起因する。これに加え、降伏点伸度が30[%]を超えると、化粧シート1の剛性が高くなりすぎ、加工時等に化粧シート1に損傷が発生しやすくなることに起因する。
【0041】
化粧シート1の破断伸度は、100[%]以上1500[%]以下の範囲内である。
これは、破断伸度が100[%]未満であると、化粧シート1が少し伸びただけで、化粧シート1に割れや白化、ハネ(剥離、めくれ)等が発生してしまうことに起因する。これに加え、破断伸度が1500[%]を超えると、化粧シート1のコシ(例えば、低い剛性)が無くなり、化粧シート1の取り扱い易さが低下することに起因する。
【0042】
また、化粧シート1の弾性率、降伏点強度、降伏点伸度、破断伸度は、例えば、JIS K 7161に準拠して測定した値である。
降伏点強度と白化開始伸び率の測定条件としては、例えば、温度が20[℃]、引張速度が50[mm/min]又は1000[mm/min]、チャック間の距離が70[mm]、標準間の距離が40[mm]である。これに加え、試験片の厚さが130[μm]、試験片の幅が10[mm]である。
また、化粧シート1の弾性率、降伏点強度、降伏点伸度、破断伸度は、例えば、透明樹脂層10の結晶化度を、60[%]以上95[%]以下の範囲内とすることで制御する。
【0043】
(化粧部材の構成)
図1を参照しつつ、
図2を用いて、化粧部材100の構成を説明する。
図2中に表すように、化粧部材100は、例えば、板状に形成されており、化粧シート1と、接着剤層18と、基板20を備える。
(接着剤層)
接着剤層18は、例えば、プライマー(下塗り剤)を基材層2の他方の面(
図1及び
図2中では、下側の面)に塗布することで、基材層2の他方の面に積層されている。
【0044】
(基板の構成)
基板20は、化粧シート1のうち、接着剤層18を間に挟んで、基材層2の他方の面の側に配置されている。
また、基板20は、木質系材料、又は、金属系材料を用いて形成されている。
木質系材料としては、木材単板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板等を用いることが可能である。
金属系材料としては、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板等を用いることが可能である。
また、基板20は、折り曲げ加工が施されている構造、又は、三次元の構造を有している。
基板20に化粧シート1を積層する際には、必要に応じて適宜選択した接着剤を介して積層しても良いし、接着剤等を介さずに直接積層しても良い。
【0045】
化粧シート1を基板20に積層して接着する方法としては、金属板を当接して平圧プレスする方法や、円圧式の連続ラミネート方式を用いることが可能である。特に、金属製の無端ベルトを使用した連続ラミネート方式を用いると、表面の反りや波打ち等が無く、さらに、層間の密着性が良く、稠密に硬化一体化された高品質の化粧部材100を、高速で連続的に製造することが可能となる。
なお、化粧部材100は、例えば、化粧シート1を用いて基板20をラッピングすることで形成する。
【0046】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0047】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層2と、基材層2に積層され、且つウレタン樹脂を含有する絵柄層4と、絵柄層4に積層され、且つ透明な接着層である透明接着層8を備える。これに加え、透明接着層8の一方の面に積層され、且つ透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された透明樹脂層10と、透明樹脂層10に積層された表面保護層12を備える。そして、弾性率が100[Mpa]以上1000[Mpa]以下の範囲内であり、降伏点強度が5[Mpa]以上50[Mpa]以下の範囲内である。さらに、降伏点伸度が1[%]以上30[%]以下の範囲内であり、破断伸度が100[%]以上1500[%]以下の範囲内である。
その結果、加工適正を向上させることが可能な、化粧シート1を提供することが可能となる。
【0048】
なお、化粧シートは、例えば、部材にラッピングされて建装材として用いられ、化粧シートの機械物性は、加工時(ラッピング等)の適性に大きく影響する。加工適性とは、具体的には、角部の割れや白化のしにくさ、シートのハネや浮きにくさ、切削性(切削し易さ)、耐傷性(傷つきにくさ)、生産時における取り扱い易さ等である。
そして、例えば、一般的に、硬い化粧シートは、耐傷性や切削性は良好であるものの、ラッピング時に角部の割れや白化が生じ易く、ハネや浮きも生じ易い。また、柔らかい化粧シートは、ラッピング時における角部の割れや白化が生じにくく、ハネや浮きも生じにくいものの、耐傷性や切削性は低い。
これに対し、第一実施形態の化粧シート1であれば、機械物性(弾性率、降伏点強度、降伏点伸度、破断伸度)の範囲を設定することで、加工適性の良好な化粧シート1を提供することが可能となる。
【0049】
(2)表面保護層12が、トリアジン系の紫外線吸収剤と、光安定剤とを含む。
その結果、化粧シート1が、長期に亘る紫外線吸収性能を保持することが可能となる。
【0050】
また、第一実施形態の化粧部材100であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(3)化粧シート1と、基材層2の他方の面の側に配置された基板20とを備える。
その結果、加工適正を向上させることが可能な、化粧部材100を提供することが可能となる。
これにより、化粧部材100を使って加飾を施した樹脂サッシや窓枠に発生する変形や膨張等を低減させることが可能となる。
【0051】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、化粧シート1の構成を、凹部14を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧シート1の構成を、
図3に示すように、凹部14を備えていない構成としてもよい。
(2)第一実施形態では、化粧部材100の構成を、凹部14を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧部材100の構成を、
図4に示すように、凹部14を備えていない構成としてもよい。
【実施例0052】
第一実施形態を参照しつつ、以下に記載する実施例により、実施例1から実施例3の化粧部材と、比較例1から比較例2の化粧部材について説明する。
(実施例1)
実施例1の化粧部材は、以下の構成を有する。
・基材層
材料:着色したオレフィン系熱可塑性樹脂
【0053】
・絵柄層
材料:塩ビ用印刷インキ、ウレタン樹脂、顔料
バインダー樹脂:アクリル樹脂と塩化ビニル樹脂-酢酸ビニル樹脂共重合体樹脂
顔料:イソインドリノンと、ポリアゾと、フタロシアニンと、ペリレンブラックを含む顔料
絵柄:木目柄
印刷方法:グラビア印刷
・アンカー層
材料:アクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系アンカー剤、ウレタン樹脂
・透明接着層
材料:ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ウレタン系接着剤
・透明樹脂層
材料:透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂
【0054】
・表面保護層
材料:アクリル系樹脂組成物、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、溶剤
塗布量:3[g/m2]
主剤:メチルメタクリレートと2ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体
配合比:メチルメタクリレート/2ヒドロキシエチルメタクリレート=95/5
主剤の添加量:90質量部
紫外線吸収剤:BASFジャパン(株)製の「チヌビン479」
紫外線吸収剤の添加量:9質量部
光安定剤:BASFジャパン(株)製の「チヌビン123」
光安定剤の添加量:1質量部
硬化剤:三井化学(株)の「タケネートD170」
硬化剤の添加量:10質量部
溶剤:酢酸エチル
溶剤の添加量:240質量部
【0055】
・接着剤層
材料:ウレタン系接着剤
・基板
材料:木質系材料
・弾性率:300[Mpa]
・降伏点強度:30[Mpa]
・降伏点伸度:15[%]
・破断伸度:1200[%]
【0056】
(実施例2)
実施例2の化粧部材は、弾性率が900[Mpa]である点と、降伏点強度が40[Mpa]である点と、降伏点伸度が25[%]である点と、破断伸度が500[%]である点を除き、実施例1の化粧部材と同様の構成である。
(実施例3)
実施例2の化粧部材は、弾性率が600[Mpa]である点と、降伏点強度が35[Mpa]である点と、降伏点伸度が20[%]である点と、破断伸度が800[%]である点を除き、実施例1の化粧部材と同様の構成である。
【0057】
(比較例1)
比較例1の化粧部材は、弾性率が50[Mpa]である点と、降伏点強度が5[Mpa]である点と、降伏点伸度が5[%]である点と、破断伸度が2000[%]である点を除き、実施例1の化粧部材と同様の構成である。
(比較例2)
比較例2の化粧部材は、弾性率が1300[Mpa]である点と、降伏点強度が60[Mpa]である点と、降伏点伸度が50[%]である点と、破断伸度が90[%]である点を除き、実施例1の化粧部材と同様の構成である。
【0058】
(性能評価)
実施例1から実施例3の化粧部材と、比較例1から比較例2の化粧部材に対し、それぞれ、加工適正について性能評価を行った。評価結果は、表1に表す。
(加工適正)
実施例の化粧部材と、比較例の化粧部材に対し、割れ・白化、浮き・ハネ、切削性、耐傷性をそれぞれ測定して、総合的な加工適正を評価した。
なお、総合的な加工適正を評価する基準として、「◎」と「○」は合格とし、一つの項目でも「×」が存在するものは不合格とした。
【0059】
<割れ・白化>
化粧シートを用いてラッピングした化粧部材の角部を観察し、化粧シートの割れ及び白化が生じていないものを「◎」と評価し、割れは生じていないが白化が生じているものを「○」と評価し、割れ及び白化が生じているものを「×」と評価した。
【0060】
<浮き・ハネ>
化粧シートを用いてラッピングした化粧部材の角部を観察し、化粧シートが基板から浮かず、端部にハネが生じていないものを「◎」と評価し、化粧シートが基板から浮いていないが、端部に小さなハネが生じているものを「○」と評価した。さらに、化粧シートが基板から浮いており、端部にハネが生じているものを「×」と評価した。
【0061】
<切削性>
化粧シートを用いて部品をラッピングして化粧部材を形成する加工時において、化粧シートを容易に素早く切断することが可能であるものを「◎」と評価した。また、化粧シートを素早く切断することは困難であるものの、容易に切断することが可能であるものを「○」と評価した。さらに、化粧シートが伸びており、素早く切断することも容易に切断することも困難であるものを「×」と評価した。
【0062】
<耐傷性>
化粧シートを用いて部品をラッピングして形成した複数の化粧部材に対し、化粧部材同士が接触しても化粧シートが損傷しないものを「◎」と評価し、化粧部材同士が接触すると化粧シートに目立たない程度の小さな損傷が発生したものを「○」と評価した。また、化粧部材同士が接触すると化粧シートに目立つ大きな損傷が発生したものを「×」と評価した。
【0063】
【0064】
(評価結果)
表1中に表されるように、実施例1から実施例3の化粧部材は、全て、加工適正が良好であった。
一方、比較例1から比較例2の化粧部材は、加工適正が悪いことが確認された。
したがって、実施例1から実施例3の化粧部材1は、比較例1から比較例2の化粧部材よりも、加工適正が良好であることが確認された。
【0065】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
着色したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層と、
前記基材層の一方の面に積層された絵柄層と、
前記絵柄層の一方の面に積層され、且つ透明な接着層である透明接着層と、
前記透明接着層の一方の面に積層され、且つ透明なポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成された透明樹脂層と、
前記透明樹脂層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シートであって、
前記絵柄層は、ウレタン樹脂を含有し、
弾性率が100Mpa以上1000Mpa以下の範囲内であり、
降伏点強度が5Mpa以上50Mpa以下の範囲内であり、
降伏点伸度が1%以上30%以下の範囲内であり、
破断伸度が100%以上1500%以下の範囲内である化粧シート。
(2)
前記透明接着層は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いて形成されている前記(1)に記載した化粧シート。
(3)
前記基材層の他方の面に積層したプライマー層をさらに備え、
前記プライマー層は、ウレタン樹脂を含有している前記(1)又は(2)に記載した化粧シート。
(4)
前記絵柄層と前記透明接着層との間に形成されたアンカー層をさらに備え、
前記アンカー層は、ウレタン樹脂を含有している前記(1)~(3)のいずれかに記載した化粧シート。
(5)
前記表面保護層は、トリアジン系の紫外線吸収剤と、光安定剤と、を含む前記(1)~(4)のいずれかに記載した化粧シート。
(6)
前記(1)~(5)のいずれかに記載した化粧シートと、前記基材層の他方の面の側に配置された基板と、を備える化粧部材。
1…化粧シート、2…基材層、4…絵柄層、6…アンカー層、8…透明接着層、10…透明樹脂層、12…表面保護層、14…凹部、16…プライマー層、18…接着剤層、20…基板、100…化粧部材