(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146149
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】搬送車及び搬送設備
(51)【国際特許分類】
B61B 10/04 20060101AFI20241004BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B61B10/04 F
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058881
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大本 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 秀英
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA02
3D101BB01
3D101BB25
(57)【要約】
【課題】少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路を車体の向きを維持したまま周回しつつ物品を搬送する場合の搬送効率に優れた搬送車を提供する。
【解決手段】搬送車(1)は、車体(2)と、駆動ユニット(3)と、車体(2)と駆動ユニット(3)とを連結する連結装置(4)とを備える。駆動ユニット(3)は、車輪と、車輪を回転駆動する走行駆動源と、車輪を操舵軸心(Xs)回りに旋回させる操舵装置とを備える。連結装置(4)は、車体(2)に取り付けられる取付部(41)と、車体(2)に対する取付部(41)の取付姿勢を変更することにより車体(2)の前後方向(L)に対して基準方向(R)を操舵軸心(Xs)回りに変更可能な調整機構とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、駆動ユニットと、前記車体と前記駆動ユニットとを連結する連結装置と、を備えた搬送車であって、
前記駆動ユニットは、車輪と、前記車輪を回転駆動する走行駆動源と、前記車輪を上下方向に沿う操舵軸心回りに旋回させる操舵装置と、を備え、
前記操舵装置は、上下方向視で前記車輪の回転軸心に直交する方向である進行方向を、予め定められた基準方向に対して前記操舵軸心回りに±θ°(ここで、θは360未満の予め設定された値である。)の範囲内で旋回可能に構成され、
前記連結装置は、前記車体に取り付けられる取付部と、前記車体に対する前記取付部の取付姿勢を変更することにより前記車体の前後方向に対して前記基準方向を前記操舵軸心回りに変更可能な調整機構と、を備える、搬送車。
【請求項2】
前記調整機構は、前記基準方向を、前記車体の前後方向に対してγ°(ここで、γはθ以上の予め設定された値である。)の範囲内で変更可能である、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記調整機構は、前記基準方向を、前記車体の前後方向に対してγ°(ここで、γは90以上の予め設定された値であり、θは90以上180未満の予め設定された値である。)の範囲内で、90°単位で変更可能である、請求項1に記載の搬送車。
【請求項4】
前記車体に取り付けられた電源装置と、前記電源装置と前記駆動ユニットとを電気的に接続する電力ケーブルと、を備え、
前記電力ケーブルは、前記電源装置に接続されて前記車体に対する位置が不変の固定接続部と、前記駆動ユニットに接続されて操舵される前記車輪と共に旋回する可動接続部と、を備える、請求項1に記載の搬送車。
【請求項5】
前記駆動ユニットは、前輪ユニットと後輪ユニットとを含み、
前記連結装置は、前側連結装置と後側連結装置とを含み、
前記前輪ユニットは、前記車輪として互いに同軸上に配置された右前輪と左前輪とを備え、前記前側連結装置により前記車体に連結され、
前記後輪ユニットは、前記車輪として互いに同軸上に配置された右後輪と左後輪とを備え、前記後側連結装置により前記車体に連結されている、請求項1に記載の搬送車。
【請求項6】
予め定められた走行経路に沿って走行する、請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送車を備えた搬送設備であって、
前記走行経路は、少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路であり、
前記搬送車は、前記車体の向きを維持したまま前記周回経路を走行する、搬送設備。
【請求項7】
前記走行経路は、前記搬送車が走行する走行面に設置された誘導部材によって規定され、
前記搬送車は、前記誘導部材に案内されて走行する、請求項6に記載の搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車及び搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場や物流設備等で、物品を直接搬送したり、物品を載置した台車を牽引したりするために、搬送車が利用されている。このような搬送車の一例が、特開2005-297809号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の搬送車(台車牽引車100)は、車体(車体1)と、駆動ユニット(駆動輪2、走行モータ5、駆動輪回動モータ6)とを備えており、これらの車体と駆動ユニットとは、通常、車体及び駆動ユニットの両方に対して一定姿勢の連結装置を介して連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、車輪(駆動輪2)を旋回させる操舵装置として、車輪旋回用のモータ(駆動輪回動モータ6)と減速ギヤ機構とを含む装置が例示されているが、搬送車の仕様によっては、車輪の最大舵角が±360°未満の一定角度以下に制限される場合がある。そして、そのような場合に、例えば少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路を、車体の向きを維持したまま周回させようとすると、周回経路の途中で搬送車を停止させて駆動ユニットの舵角を大幅に変更しなければならない場合がある。特許文献1には、このような課題やその解決手段について、何ら記載されていない。
【0006】
そこで、例えば少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路を車体の向きを維持したまま周回しつつ物品を搬送する場合の搬送効率に優れた搬送車の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る搬送車は、
車体と、駆動ユニットと、前記車体と前記駆動ユニットとを連結する連結装置と、を備えた搬送車であって、
前記駆動ユニットは、車輪と、前記車輪を回転駆動する走行駆動源と、前記車輪を上下方向に沿う操舵軸心回りに旋回させる操舵装置と、を備え、
前記操舵装置は、上下方向視で前記車輪の回転軸心に直交する方向である進行方向を、予め定められた基準方向に対して前記操舵軸心回りに±θ°(ここで、θは360未満の予め設定された値である。)の範囲内で旋回可能に構成され、
前記連結装置は、前記車体に取り付けられる取付部と、前記車体に対する前記取付部の取付姿勢を変更することにより前記車体の前後方向に対して前記基準方向を前記操舵軸心回りに変更可能な調整機構と、を備える。
【0008】
この構成によれば、搬送車が、例えば少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路を車体の向きを変更することなく周回する場合に、調整機構を用いて車体に対する取付部の取付姿勢を変更し、円弧状区間の走行中に駆動ユニットを旋回させる側に基準方向を予め偏らせておくことができる。これにより、操舵装置による駆動ユニット(車輪)の最大舵角が左右両側にそれぞれ360°未満に制限される場合であっても、搬送車が、駆動ユニットの舵角を次第に変更させながら連続的に走行することができる円弧状区間の範囲を広く確保することができる。すなわち、搬送車が、円弧状区間の途中で走行を停止して駆動ユニットの舵角を変更する必要が生じる回数を少なく抑えることができる。従って、搬送車による搬送効率を高めることができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】電源装置と駆動ユニットとの電気的接続の様子を示す図
【
図6】基準方向を車体の前後方向に対して直交させた場合の操舵可能範囲を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
搬送車及び搬送設備の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の搬送設備100は、予め定められた走行経路9に沿って走行する搬送車1を備えている。搬送設備100は、共通の走行経路9に沿って走行する複数の搬送車1を備えている。このような搬送設備100は、搬送車1上に載置された被搬送物Cの搬送及び組み立てを行う工場に設置されて利用される。一例として、搬送設備100は、被搬送物Cとしての自動車の車体を載置した搬送車1を走行経路9に沿って移動させながら各種部品を順次取り付けて自動車を組み立てる、自動車製造工場で使用することができる。
【0012】
本実施形態の走行経路9は、直線状区間91と、円弧状区間92とを含んでいる。また、直線状区間91は、第1直線状区間91Aと、第2直線状区間91Bと、第3直線状区間91Cとを含んでいる。本実施形態では、第1直線状区間91Aと第2直線状区間91Bとが互いに平行に配置され、それぞれの一方端どうしが円弧状区間92によって接続されているとともに、他方端どうしが第3直線状区間91Cによって接続されている。これにより、走行経路9は、第1直線状区間91A→円弧状区間92→第2直線状区間91B→第3直線状区間91Cの順に繋がる、少なくとも一部に直線状区間91と円弧状区間92とを有する周回経路となっている。
【0013】
ここで、走行経路9は、被搬送物C(例えば自動車の車体)を載置した搬送車1が走行する経路である。この走行経路9は、搬送車1が走行する走行面95に設置された誘導部材96(
図2を参照)によって規定される。このような誘導部材96としては、例えばレール等の物理的手段であっても良いし、例えば磁気マーカーや光反射テープ、電磁誘導ケーブル、二次元マーカー等のソフト的な手段であっても良い。すなわち、走行経路9は、物理的手段によって予め定められた物理的な経路であっても良いし、ソフト的な手段によって都度定められる仮想的な経路であっても良い。
【0014】
搬送車1は、誘導部材96に案内されて、走行経路9を周回走行する。本実施形態の搬送車1は、無人での自動走行が可能な無人搬送車として構成されている。このとき、本実施形態では、
図1に示すように、搬送車1は、車体2の向きを維持したまま、周回経路からなる走行経路9を走行する。なお、「車体2の向きを維持」するとは、車体2の全体的な向きを維持するとの意であり、搬送車1の実走行に伴う車体2のごく僅かな姿勢変化を許容する概念である。
【0015】
図2及び
図3に示すように、搬送車1は、車体2と、駆動ユニット3と、連結装置4とを備えている。また、搬送車1は、電源装置51と、制御装置52と、電力ケーブル55とをさらに備えている。
【0016】
車体2は、車体本体21と、収容部22とを備えている。車体本体21は、車体2の本体部分であり、搬送車1の全体の基台となる部位である。車体本体21は、平面視で長方形状(より具体的には四隅の部分が丸みを帯びた長方形状)に形成されている。また、車体本体21は、幅方向Wの長さに比べて前後方向Lの長さが長い縦長の長方形状に形成されている。
【0017】
車体本体21の上面は、被搬送物Cを載置する載置面21aとなっている。載置面21aの一部(例えば、周縁部)は、被搬送物Cに対して所定作業を行うために作業者が立ち入るためのスペース(立入スペース)となっていても良い。
【0018】
収容部22は、車体本体21の前後方向Lの中央部において、車体本体21から下方に突出するように設けられている。収容部22の内部には、電源装置51と制御装置52とが収容されている。電源装置51及び制御装置52は、車体2の中央部付近であって車体本体21よりも走行面95に近い位置に設けられている。
【0019】
駆動ユニット3は、車輪31と、走行駆動源32と、支持部材33と、操舵装置34とを備えている。本実施形態では、駆動ユニット3は、一対の車輪31と、その一対の車輪31に対応する一対の走行駆動源32と、支持部材33と、操舵装置34とを備えている。また、そのような駆動ユニット3が二組設けられており、二組の駆動ユニット3が車体2の前後方向Lに分かれて配置されている。
【0020】
車輪31は、回転軸心Xr周りに回転する。本実施形態の車輪31は、いずれも走行駆動源32に連結された駆動輪となっている。車輪31は、走行駆動源32によって駆動されて、回転軸心Xrに直交する方向である進行方向T(
図4を参照)への推進力を与える。
【0021】
走行駆動源32は、車輪31に駆動力を伝達可能に連結されている。走行駆動源32は、車輪31と一体回転するように連結されていても良いし、変速機(例えば減速機)を介して車輪31に連結されていても良い。いずれにしろ、走行駆動源32は、その駆動力によって車輪31を回転駆動する。本実施形態では、1つの車輪31に対して1つの走行駆動源32が、駆動力を伝達可能に連結されている。走行駆動源32としては、例えば電気モータが例示される。
【0022】
支持部材33は、互いに駆動力を伝達可能に連結された車輪31及び走行駆動源32を、車体2に支持する。本実施形態の支持部材33は、互いに同軸上に配置された一対の車輪31を、共通に支持する。支持部材33は、一対の車輪31の間において、上下方向に沿う操舵軸心Xsに沿って配置されている。
【0023】
操舵装置34は、車輪31を上下方向に沿う操舵軸心Xs回りに旋回させる。本実施形態の操舵装置34は、互いに同軸上に配置された一対の車輪31を、一括的に操舵軸心Xs回りに旋回させる。
図4に示すように、操舵装置34は、上下方向視で車輪31の回転軸心Xrに直交する方向である進行方向Tを、予め定められた基準方向Rに対して操舵軸心Xs回りに±θ°の範囲内で旋回可能に構成されている。ここで、θは、360未満の予め設定された値である。
図4には、90よりもやや大きい値にθが設定されている場合の例が示されている。
【0024】
また、
図4の例では、一般的な仕様に準じて、車体2の前後方向Lが基準方向Rとされている。なお、基準方向Rと車体2の前後方向Lとのなす角をγ°とすると、本例ではγ=0である。このような構成では、操舵装置34が車輪31を操舵軸心Xs回りに旋回させることで、左右両側にそれぞれθ°の範囲内で、駆動ユニット3の舵角を変更することができる。
【0025】
操舵装置34は、車輪31を操舵軸心Xs回りに旋回させ得るものであればその具体的手段は限定されない。操舵装置34は、例えば操舵用の駆動源(例えば操舵用モータ)と伝達機構(例えばギヤ機構やリンク機構)とを含む有体手段(例えば駆動伝達機構)で構成されても良いし、一対の車輪31に対する制御を含む無体手段によって構成されても良い。
【0026】
本実施形態では、後者の構成が採用されており、より具体的には一対の車輪31の回転数を異ならせることによってそれらを操舵軸心Xs回りに旋回させるように構成されている。この場合、制御装置52と走行駆動源32とが協働して行う車輪31の回転数制御によって操舵装置34が構成される。
【0027】
図2及び
図3に示すように、駆動ユニット3は、後述する連結装置4を介して車体2に連結されている。本実施形態では、連結装置4が2つ設けられており、2つの連結装置4が車体2の前後方向Lに分かれて配置されている。本実施形態では、前後方向Lの前側に設けられた連結装置4を「前側連結装置4F」と言い、前後方向Lの後側に設けられた連結装置4を「後側連結装置4R」と言う。前側連結装置4Fと後側連結装置4Rとは、前後方向Lにおいて電源装置51及び制御装置52を間に挟んで互いに反対側に位置するように配置されている。
【0028】
上述したように、本実施形態では、二組の駆動ユニット3が車体2の前後方向Lに分かれて配置されている。本実施形態では、前後方向Lの前側に設けられた駆動ユニット3を「前輪ユニット3F」と言い、前後方向Lの後側に設けられた駆動ユニット3を「後輪ユニット3R」と言う。前輪ユニット3Fと後輪ユニット3Rとは、前後方向Lにおいて電源装置51及び制御装置52を間に挟んで互いに反対側に位置するように配置されている。
【0029】
前輪ユニット3Fは、車輪31として互いに同軸上に配置された右前輪31FRと左前輪31FLとを備えている。また、前輪ユニット3Fは、走行駆動源32として、右前輪31FRに連結された右前輪走行駆動源32FRと、左前輪31FLに連結された左前輪走行駆動源32FLとを備えている。また、前輪ユニット3Fは、支持部材33として、右前輪31FRと左前輪31FLとを共通に支持する前輪支持部材33Fを備えている。また、前輪ユニット3Fは、操舵装置34として、右前輪31FR及び左前輪31FLを操舵軸心Xs回りに旋回させる前輪操舵装置34Fを備えている。前輪ユニット3Fは、前側連結装置4Fにより車体2に連結されている。
【0030】
後輪ユニット3Rは、車輪31として互いに同軸上に配置された右後輪31RRと左後輪31RLとを備えている。また、後輪ユニット3Rは、走行駆動源32として、右後輪31RRに連結された右後輪走行駆動源32RRと、左後輪31RLに連結された左後輪走行駆動源32RLとを備えている。また、後輪ユニット3Rは、支持部材33として、右後輪31RRと左後輪31RLとを共通に支持する後輪支持部材33Rを備えている。また、後輪ユニット3Rは、操舵装置34として、右後輪31RR及び左後輪31RLを操舵軸心Xs回りに旋回させる後輪操舵装置34Rを備えている。後輪ユニット3Rは、後側連結装置4Rにより車体2に連結されている。
【0031】
電源装置51は、搬送車1を駆動するための電力を供給する。電源装置51は、少なくとも走行駆動源32及び制御装置52に電力を供給する。電源装置51は、それ以外にも、例えば車体2の各部に設けられた各種センサ等の他の部品に電力を供給しても良い。電源装置51としては、例えばリチウムイオン電池等の二次電池や、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等を用いることができる。
【0032】
制御装置52は、主に走行駆動源32を制御する。制御装置52は、例えば、半導体素子を含むドライバ回路を有するドライバユニットと、そのドライバユニットに含まれる半導体素子の動作を制御するための制御基板とを含んでいる。制御装置52は、図示が省略されている上位コントローラ(搬送設備100の全体を制御する上位の制御装置)からの指令を受けて走行駆動源32の駆動制御を実行し、搬送車1を走行経路9に沿って走行させる。
【0033】
電源装置51及び制御装置52は、車体2の前後方向Lの中央部に取り付けられている。電源装置51及び制御装置52は、車体2の前後方向Lの中央部に設けられた収容部22に設けられている。
図2及び
図3には、電源装置51と制御装置52とが上下に積み重ねられた構成が示されているが、これらは前後方向Lに並んで配置されていても良い。
【0034】
図5に示すように、電力ケーブル55は、電源装置51と駆動ユニット3とを電気的に接続する。なお、
図5は、車体本体21よりも下方側の配置構成に注目した平面図であって、車体本体21については外形だけを示すとともに連結装置4の表示を省略している。電力ケーブル55は、車体2に固定されている電源装置51と、車体2に対して操舵軸心Xs回りに旋回可能に支持されている駆動ユニット3とを電気的に接続する。電力ケーブル55は、一方の端部に固定接続部55fを有しているとともに、他方の端部に可動接続部55mを有している。電力ケーブル55は、固定接続部55fにより電源装置51に接続され、可動接続部55mにより駆動ユニット3に接続されている。
【0035】
ここで、固定接続部55fは、電源装置51に接続されて車体2に対する位置が不変であるのに対して、可動接続部55mは、駆動ユニット3に接続されて操舵される車輪31と共に旋回する。可動接続部55mは、駆動ユニット3の旋回状態に応じて、平面視での位置が変化し得る。そして、可動接続部55mの位置に応じて電力ケーブル55の平面視形状も変化し得る。このため、電力ケーブル55は、チェーン状に連結されて外形形状が変形可能に構成された保護カバー56に収容された状態で配設されている。
【0036】
なお、電源装置51と駆動ユニット3との電気的接続を、ロータリコネクタやスリップリング等によって行うことも考えられる。ロータリコネクタやスリップリング等を使用すれば、駆動ユニット3を360°自在に旋回させることができる点で好ましい。しかし、これらの手段を用いる場合には、駆動ユニット3を駆動するための電力が比較的小さな制限電力以下に制限されてしまう。このため、本実施形態のように被搬送物Cとして例えば自動車の車体等の重量物を搬送する搬送車1には、ロータリコネクタやスリップリングではなく、大電力にも対応可能な電力ケーブル55の使用が必要となっている。
【0037】
電力ケーブル55を使用することで、大電力にも対応可能となっている一方、上述したように、操舵装置34が車輪31を操舵軸心Xs回りに旋回させる場合の最大舵角が、左右両側にそれぞれθ°に制限される結果となっている(
図4を参照)。このような制約があるため、
図1に示すような周回経路からなる走行経路9を搬送車1が走行する場合には、駆動ユニット3が左に最大舵角まで旋回した時点で搬送車1を一旦停止させ、駆動ユニット3の向きをリセットする必要があった。
【0038】
この点、本実施形態の搬送車1は、車体2と駆動ユニット3とを連結するために設けられている連結装置4を一部改変することによって、途中での停車及び駆動ユニット3の向きのリセットの必要回数を低減している。
【0039】
図2及び
図3に示すように、連結装置4は、車体2に取り付けられる取付部41を備えている。取付部41は、例えばプレート状の部材で構成され、車体本体21の下面に固定されている。取付部41は、平面視において、先端が切り落とされた変形ホームベース状ないし台形と長方形とが合体した変形台形状に形成されている。取付部41には、支持部材33を介して駆動ユニット3が取り付けられている。
【0040】
上述したように、本実施形態では連結装置4は前側連結装置4Fと後側連結装置4Rとを含んでおり、前側連結装置4Fは前側取付部41Fを備え、後側連結装置4Rは後側取付部41Rを備えている。前側取付部41Fには、前輪支持部材33Fを介して前輪ユニット3Fが取り付けられ、後側取付部41Rには、後輪支持部材33Rを介して後輪ユニット3Rが取り付けられている。
【0041】
連結装置4は、車体2に対する取付部41の取付姿勢を変更することにより車体2の前後方向Lに対して基準方向Rを操舵軸心Xs回りに変更可能な調整機構42をさらに備えている。連結装置4が調整機構42を備えることにより、
図4と
図6との比較から良く理解できるように、車体2に対する操舵軸心Xsの位置は不変としたままで、変形ホームベース状ないし変形台形状の取付部41の向きが変更可能となっている。そしてそれに応じて、車体2の前後方向Lに対する駆動ユニット3の基準方向Rが変更可能となっている。
【0042】
調整機構42は、基準方向Rを、車体2の前後方向Lに対してγ°の範囲内で変更可能である。ここで、γの大きさは特に限定されない(すなわち、少しでも変更できれば良い)が、本実施形態のようにθが90よりも大きい値(かつ180未満の値)に設定されている場合には、γは90以上の値に予め設定されていることが好ましい。さらに、γは、90の倍数(すなわち、90、180、又は270)に設定されていることが好ましい。
図6の例では、調整機構42は、基準方向Rを、車体2の前後方向Lに対して左に90°変更させている。これにより、基準方向Rと車体2の前後方向Lとのなす角γ°が90°となっている。
【0043】
図6の例を参照して説明を加えると、駆動ユニット3は、車体2の前後方向Lに対して左に90°向きを変えた基準方向Rに対して、操舵軸心Xs回りに±θ°の範囲内で旋回可能である。そして、本例では、上述したようにθは90よりもやや大きい値に設定されている。このため、例えば
図1の搬送設備100において、搬送車1を、駆動ユニット3による進行方向Tを基準方向Rに対して右に90°変向させた状態で第1直線状区間91Aを走行させることができる。
【0044】
搬送車1が円弧状区間92に進入すると、搬送車1の位置に応じて、進行方向Tが円弧状区間92の接線方向を向くように、駆動ユニット3の舵角を次第に変化させることができる。
図6から理解できるように、進行方向Tを基準方向Rに対して右に90°変向させた状態から、基準方向Rに対して左に90°変向させた状態まで、途中で停止することなく連続的に変化させることができる。よって、搬送車1を、第1直線状区間91Aから円弧状区間92を経由して第2直線状区間91Bまで、連続的に走行させることができる。
【0045】
なお、第2直線状区間91Bから第3直線状区間91Cへの移行時や、第3直線状区間91Cから再度の第1直線状区間91Aへの移行時には、駆動ユニット3の向きをリセットする必要がある。それでも、周回経路からなる走行経路9の全体として見た場合には、搬送車1が連続走行できる距離が長く確保(言い換えれば、停車せざるを得ない回数が低減)されており、搬送車1による搬送効率が向上されている。
【0046】
本実施形態の調整機構42は、
図7に示すように、取付部41を厚み方向に貫通するように形成された貫通孔42Bと、その貫通孔42Bに挿通されて車体本体21に締結固定される固定ボルト42Aとを含んでいる。車体本体21には、固定ボルト42Aが締結される螺合孔が形成されており、この螺合孔も、調整機構42の一部を構成している。このように、調整機構42の一部が、車体本体21に設けられていても良い。
【0047】
本実施形態では、4つの貫通孔42Bが、操舵軸心Xsの位置を中心とする正方形の頂点の位置に形成されている。これにより、基準方向Rを90°単位で容易に変更することが可能となっている。
【0048】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、調整機構42が基準方向Rを車体2の前後方向Lに対して90°単位で変更可能に構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば調整機構42が基準方向Rを車体2の前後方向Lに対して45°、22.5°、又は60°等の所定角度単位で変更可能に構成されていても良い。或いは、調整機構42が基準方向Rを車体2の前後方向Lに対してリニアに角度変更可能に構成されていても良い。
【0049】
(2)上記の実施形態では、調整機構42が、搬送車1の停車中にのみ基準方向Rを車体2の前後方向Lに対して変更可能な構成を想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば調整機構42が、搬送車1の走行中に自動的に基準方向Rを車体2の前後方向Lに対して変更可能であっても良い。このような構成は、例えば調整用の駆動源(例えば調整用モータ)と伝達機構(例えばギヤ機構やリンク機構)とを含んで構成されても良い。
【0050】
(3)上記の実施形態において、搬送車1が、基準方向Rが変更された際に制御装置52に対してその旨を通知するための通知手段をさらに備えていても良い。通知手段としては、例えばトグルスイッチやノブ等の物理的な機構を用いることができる。この場合、作業者が、調整機構42の向きを変更する作業を行う際に、通知手段を併せて操作するようにしても良い。或いは、通知手段は、基準方向Rが変更されたことを示す信号の送信機等であっても良い。基準方向Rの変更信号は、搬送車1に設けられたインターフェースから直接通知されても良いし、上位コントローラ等を介して間接的に通知されても良い。
【0051】
(4)上記の実施形態において、搬送車1が、各駆動ユニット3の向きを検知するための回転角センサをさらに備えていても良い。この回転角センサは、車体2の前後方向Lを常に絶対的な基準とするよう構成されていても良い。この場合、例えば搬送車1の起動時等に各駆動ユニット3を左右に限界まで旋回させることにより、その検知された可動範囲に基づき、制御装置52が各駆動ユニット3の基準方向Rを把握することができる。
【0052】
(5)上記の実施形態において、搬送車1が、制御装置52と駆動ユニット3とを接続する制御用ケーブル(制御用信号線やセンサ用配線等を含む)をさらに備えていても良い。この場合、制御用ケーブルは、電力ケーブル55と共に保護カバー56内に収容されても良い。また、搬送車1が、例えば障害物の存在を検出する障害物センサ等の各種センサ類をさらに備えていても良い。この場合、各種センサと制御装置52とを接続する検出用ケーブル(センサ用配線等を含む)がさらに備えられても良く、当該検出用ケーブルは、電力ケーブル55と共に保護カバー56内に収容されても良い。
【0053】
(6)上記の実施形態では、電力ケーブル55が保護カバー56内に収容された状態で配設されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、電力ケーブル55が保護なしの状態で配設されていても良い。
【0054】
(7)上記の実施形態では、操舵装置34による車輪31の旋回軸である操舵軸心Xsが鉛直方向に沿っている構成を想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、操舵軸心Xsは、鉛直方向に対してやや傾斜して(例えば、鉛直方向に対して10°以内の傾斜角度で傾いて)いても良い。操舵軸心Xsに関して、このような鉛直方向に対してやや傾斜して配置される態様も、「上下方向に沿う」の概念に含まれる。
【0055】
(8)上記の実施形態では、1台の搬送車1あたり、4つの車輪31が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、1台の搬送車1あたりの車輪31の個数は、例えば3個であっても良いし、5個以上であっても良い。複数の車輪31のうちの一部は、走行駆動源32に連結された駆動輪ではなく、単に遊転するだけの補助輪であっても良い。
【0056】
(9)上記の実施形態では、走行経路9に含まれる円弧状区間92が、真円の円弧の一部(具体的には、半円)に相当する形状に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、円弧状区間92は、例えば中間部に直線状部分を有する形状であっても良いし、部位によって曲率が変化する形状であっても良い。
【0057】
(10)上記の実施形態では、搬送車1が、無人での自動走行が可能な無人搬送車である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、搬送車1は、人が運転操作を行う有人搬送車(例えばフォークリフト等)であっても良い。
【0058】
(11)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0059】
〔実施形態のまとめ〕
以上をまとめると、本開示に係る搬送車は、好適には、以下の各構成を備える。
【0060】
車体と、駆動ユニットと、前記車体と前記駆動ユニットとを連結する連結装置と、を備えた搬送車であって、
前記駆動ユニットは、車輪と、前記車輪を回転駆動する走行駆動源と、前記車輪を上下方向に沿う操舵軸心回りに旋回させる操舵装置と、を備え、
前記操舵装置は、上下方向視で前記車輪の回転軸心に直交する方向である進行方向を、予め定められた基準方向に対して前記操舵軸心回りに±θ°(ここで、θは360未満の予め設定された値である。)の範囲内で旋回可能に構成され、
前記連結装置は、前記車体に取り付けられる取付部と、前記車体に対する前記取付部の取付姿勢を変更することにより前記車体の前後方向に対して前記基準方向を前記操舵軸心回りに変更可能な調整機構と、を備える。
【0061】
この構成によれば、搬送車が、例えば少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路を車体の向きを変更することなく周回する場合に、調整機構を用いて車体に対する取付部の取付姿勢を変更し、円弧状区間の走行中に駆動ユニットを旋回させる側に基準方向を予め偏らせておくことができる。これにより、操舵装置による駆動ユニット(車輪)の最大舵角が左右両側にそれぞれ360°未満に制限される場合であっても、搬送車が、駆動ユニットの舵角を次第に変更させながら連続的に走行することができる円弧状区間の範囲を広く確保することができる。すなわち、搬送車が、円弧状区間の途中で走行を停止して駆動ユニットの舵角を変更する必要が生じる回数を少なく抑えることができる。従って、搬送車による搬送効率を高めることができる。
【0062】
一態様として、
前記調整機構は、前記基準方向を、前記車体の前後方向に対してγ°(ここで、γはθ以上の予め設定された値である。)の範囲内で変更可能であることが好ましい。
【0063】
この構成によれば、例えば上記のような場合に、調整機構を用いて、円弧状区間の走行中に駆動ユニットを旋回させる側に基準方向を予め最大舵角まで偏らせておくことができる。これにより、搬送車が、駆動ユニットの向きを次第に変更させながら連続的に走行することができる円弧状区間の範囲を、最大舵角に応じた最大限まで広く確保することができる。
【0064】
一態様として、
前記調整機構は、前記基準方向を、前記車体の前後方向に対してγ°(ここで、γは90以上の予め設定された値であり、θは90以上180未満の予め設定された値である。)の範囲内で、90°単位で変更可能であることが好ましい。
【0065】
この構成によれば、例えば上記のような場合に、調整機構を用いて、円弧状区間の走行中に駆動ユニットを旋回させる側に基準方向を予め90°偏らせておくことで、搬送車が、駆動ユニットの向きを次第に変更させながら円弧状区間を半周連続して走行できるようになる。また、調整機構は、基準方向を90°単位で変更するため、調整機構の構成の簡素化を図ることができる。
【0066】
一態様として、
前記車体に取り付けられた電源装置と、前記電源装置と前記駆動ユニットとを電気的に接続する電力ケーブルと、を備え、
前記電力ケーブルは、前記電源装置に接続されて前記車体に対する位置が不変の固定接続部と、前記駆動ユニットに接続されて操舵される前記車輪と共に旋回する可動接続部と、を備えることが好ましい。
【0067】
この構成によれば、駆動ユニットの駆動用の電力が大きい場合でも、電力ケーブルを用いて、電源装置と駆動ユニットとを適切に電気的に接続することができる。その一方で、電力ケーブルを用いることで駆動ユニット(車輪)の最大舵角が制限されることになるが、これまで説明してきたような調整機構を備えることで、搬送車が、駆動ユニットの向きを次第に変更させながら連続的に走行することができる円弧状区間の範囲を広く確保することができる。
【0068】
一態様として、
前記駆動ユニットは、前輪ユニットと後輪ユニットとを含み、
前記連結装置は、前側連結装置と後側連結装置とを含み、
前記前輪ユニットは、前記車輪として互いに同軸上に配置された右前輪と左前輪とを備え、前記前側連結装置により前記車体に連結され、
前記後輪ユニットは、前記車輪として互いに同軸上に配置された右後輪と左後輪とを備え、前記後側連結装置により前記車体に連結されていることが好ましい。
【0069】
この構成によれば、少なくとも右前輪、左前輪、右後輪、及び左後輪を含む4輪以上の車輪で、搬送車を安定的に走行させることができる。
【0070】
また、本開示に係る搬送設備は、好適には、以下の各構成を備える。
【0071】
予め定められた走行経路に沿って走行する、上述した各構成の搬送車を備えた搬送設備であって、
前記走行経路は、少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路であり、
前記搬送車は、前記車体の向きを維持したまま前記周回経路を走行する。
【0072】
この構成のように、少なくとも一部に円弧状区間を有する周回経路を、車体の向きを変更することなく搬送車が周回するような搬送設備に、これまで説明してきたような搬送車を好適に適用できる。
【0073】
一態様として、
前記走行経路は、前記搬送車が走行する走行面に設置された誘導部材によって規定され、
前記搬送車は、前記誘導部材に案内されて走行することが好ましい。
【0074】
この構成によれば、搬送車は、誘導部材が設置された走行経路に沿って適切に走行することができる。また、例えば誘導部材に沿って搬送車が走行するようにフィードバック制御を行う場合には、搬送車が舵角の原点位置を認識しなくて良くなる。よって、調整機構により基準方向の角度を調整した場合でも、制御設定を変更する手間を削減できる。
【0075】
本開示に係る搬送車及び搬送設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
【符号の説明】
【0076】
1 搬送車
2 車体
3 駆動ユニット
3F 前輪ユニット
3R 後輪ユニット
4 連結装置
4F 前側連結装置
4R 後側連結装置
9 走行経路
21 車体本体
31 車輪
31FR 右前輪
31FL 左前輪
31RR 右後輪
31RL 左後輪
32 走行駆動源
34 操舵装置
41 取付部
42 調整機構
51 電源装置
55 電力ケーブル
55f 固定接続部
55m 可動接続部
91 直線状区間
92 円弧状区間
95 走行面
96 誘導部材
100 搬送設備
Xs 操舵軸心
Xr 車輪の回転軸心
T 進行方向
R 基準方向
L 前後方向
θ 最大舵角
γ 調整角度